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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】浮き基礎
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20220902BHJP
   E04B 5/43 20060101ALI20220902BHJP
   F16F 15/04 20060101ALI20220902BHJP
   E04H 9/02 20060101ALN20220902BHJP
【FI】
F16F15/02 A
E04B5/43 H
F16F15/04 A
E04H9/02 351
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018038667
(22)【出願日】2018-03-05
(65)【公開番号】P2019152288
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】小槻 祥江
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-151287(JP,A)
【文献】特開平05-215185(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103511554(CN,A)
【文献】特開2010-255752(JP,A)
【文献】特開2004-044748(JP,A)
【文献】特開2016-109257(JP,A)
【文献】特開2015-166623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/00- 9/16
F16F 15/00-15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制振対象の浮き基礎本体と、前記浮き基礎本体を支持するためのばね要素、減衰要素、慣性質量機構とを備えてなる浮き基礎であって、
前記浮き基礎本体の振動を検知する振動検知手段と、
前記振動検知手段の検知結果を受けた制御手段の動作指令に応じて前記慣性質量機構の慣性質量値を調整制御する振動低減特性可変機構と、を備え、
前記振動低減特性可変機構は、
回転錘を二分割し、一方の回転錘片および他方の回転錘片のそれぞれに雌ネジ孔を形成し、前記雌ネジ孔に雄ネジからなる位置調整ネジを備え、
前記制御手段の動作指令に応じて前記位置調整ネジを回転させると前記一方の回転錘片と前記他方の回転錘片が同時に且つ左右同変位量で回転軸から離間、近接させて前記回転錘の回転中心距離を変更して慣性質量値を調整することを特徴とする浮き基礎。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振床などの浮き基礎に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ライブハウスやコンサートホールで観客が音楽に合わせて動くタテノリに起因する振動によって周囲の建物が揺れたり、輪転機などの鉛直振動を生じる機器の振動が周囲に伝播するなど、床上で生じる加振力によって振動が周囲に伝わり、振動問題を起こすケースがある。
【0003】
従来、このような振動問題に対応する技術として、ばね部材を介して加振源を支持してなる浮き基礎(防振架台や防振床などを含む)が知られている。
【0004】
ここで、図8(a)、図8(b)に示すように、浮き基礎1においては、地盤Gに伝わる反力を加振力に対して1/10程度に低減しようとする場合に加振振動数の1/3~1/5程度の固有振動数を設定する必要がある。
【0005】
一方、この固有振動数の設定は制御対象振動数が十数Hz~数十Hzの高振動数であれば問題ないが、比較的低振動数を制御対象とする場合には固有振動数の小さい柔らかい浮き基礎が必要になる。例えば、図8(b)に示すように、コンサート時のタテノリによる振動は2~4Hz程度であり、2Hzの振動による加振力を1/10程度に低減しようとすると、固有振動数が0.57Hz以下の浮き基礎が必要となる。
【0006】
このような非常に小さな固有振動数の浮き基礎を採用した場合には、上載荷重による過大な沈み込みや床が柔らかく動くことによる歩行時の不快感等の別途不都合を招くおそれがある。
【0007】
また、剛性の高いばねを用いて0.57Hz以下の浮き基礎を実現することも考えられるが、この場合には大きな質量が必要になり、浮き基礎が大型化するとともに高コスト化、施設全体の大型化などの不都合が生じる。
【0008】
これに対し、図9(a)、図9(b)に示すように、浮き基礎を支持するばね部材と並列に慣性質量ダンパーを付加することにより、浮き基礎の固有振動数を小さくし過ぎることなく制御対象の振動数帯域においてより高い防振性能を発揮する技術手法が提案、実用化されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
また、同様の原理を用いたものとして回転慣性質量を用いて制御対象に対する振動を遮断する技術手法(振動遮断接続機構)も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
上記のような技術は、慣性質量値の設定により制御対象振動数(遮断振動数)を調整し、目的とする振動数域で高い振動低減効果を得ることができる。
【0011】
ちなみに、制御対象振動数は、浮き基礎のばね剛性と慣性質量からなる固有振動数であるので、制御対象振動数をfcnt.、ばね剛性をkとすると、必要慣性質量mは以下の式(1)で求めることができる。
【0012】
【数1】
【0013】
例えば、図9(b)に示すように、固有振動数1.0Hzの浮き基礎において、振動数比(=加振振動数/固有振動数)2.5の振動を低減したい場合、基礎質量に対する慣性質量の比が0.16となる慣性質量ダンパーを付加することで、振動数比2.5(この場合2.5Hz)の応答を大きく低減することができ、その周辺振動数域の応答も1/10程度に低減することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2008-82541号公報
【文献】特開平09-177875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に示された上記従来の浮き基礎においては、慣性質量があらかじめ慣性質量ダンパーに設定した値となる。このため、設置後に制御対象振動数を変えることは難しく、例えばコンサートでのタテノリ動作のように卓越する振動数が曲調によって変化し、制御対象とする振動数が変動するような場合などに対し、十分な振動低減性能が得られないという問題があった。
【0016】
本発明は、上記事情に鑑み、制御対象振動数を設置後でも容易に変更/調整でき、加振振動数が変動する場合に対しても効果的に振動低減性能を発揮できる浮き基礎を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0018】
本発明に係る浮き基礎は、制振対象の浮き基礎本体と、前記浮き基礎本体を支持するためのばね要素、減衰要素、慣性質量機構とを備えてなる浮き基礎であって、前記浮き基礎本体の振動を検知する振動検知手段と、前記振動検知手段の検知結果を受けた制御手段の動作指令に応じて前記慣性質量機構の慣性質量値を調整制御する振動低減特性可変機構と、を備え、前記振動低減特性可変機構は、回転錘を二分割し、一方の回転錘片および他方の回転錘片のそれぞれに雌ネジ孔を形成し、前記雌ネジ孔に雄ネジからなる位置調整ネジを備え、前記制御手段の動作指令に応じて前記位置調整ネジを回転させると前記一方の回転錘片と前記他方の回転錘片が同時に且つ左右同変位量で回転軸から離間、近接させて前記回転錘の回転中心距離を変更して慣性質量値を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の浮き基礎によれば、慣性質量機構の慣性質量値、ひいては制御対象振動数を設置後でも容易に変更/調整でき、例えば、無作為に時々刻々と変化する振動に対しても十分な振動低減性能を付与することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る浮き基礎の回転慣性質量ダンパー(慣性質量機構)、振動低減特性可変機構を示す図である。
図2】本発明の他の実施形態に係る浮き基礎の回転慣性質量ダンパー(慣性質量機構)、振動低減特性可変機構を示す図である。
図3】本発明の他の実施形態に係る浮き基礎の回転慣性質量ダンパー(慣性質量機構)、振動低減特性可変機構を示す図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る浮き基礎の回転慣性質量ダンパー(慣性質量機構)、振動低減特性可変機構を示す図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る浮き基礎の回転慣性質量ダンパー(慣性質量機構)、振動低減特性可変機構を示す図である。
図6】回転中心距離と慣性質量値の変化率との関係を示す図である。
図7】慣性質量比と浮き基礎の反力応答倍率との関係を示す図である。
図8】従来の浮き基礎を示す図である。
図9】回転慣性質量ダンパー(慣性質量機構)を備えた浮き基礎を示す図である。
図10】従来の回転慣性質量ダンパー(慣性質量機構)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1から図7(及び図9図10)を参照し、本発明の一実施形態に係る浮き基礎について説明する。
【0022】
本実施形態の浮き基礎は、慣性質量を用いた浮き基礎であり、且つその慣性質量値(制振対象振動数)を容易に変動できる振動低減特性可変機構を備え、より効果的な振動低減性能を発揮できるように構成されている。
【0023】
具体的に、本実施形態の浮き基礎Aは、図9(a)に示した浮き基礎と同様、浮き基礎本体1をばね部材(ばね剛性/ばね要素)2と、オイルダンパーなどの減衰(減衰要素)3と、回転慣性質量ダンパー(回転慣性質量M/慣性質量機構)4とで地盤G(床等を含む)に接続支持して構成されている。
【0024】
ここで、図9(a)の浮き基礎1に具備される従来の回転慣性質量ダンパー4は、例えば、図10に示すように、ボールねじ4aと、ボールねじ4aに螺着したボールナット4bと、ボールナット4bにガイド板4dを介して固定した回転錘4eからなる慣性質量装置、および浮き基礎本体1に繋がる連結部材4fと、地盤Gにつながる固定用ハウジング4cを備えて構成されている。
【0025】
この回転慣性質量ダンパー4は、ダンパー両端(連結部材4f、固定用ハウジング4c端部)に相対変位が生じると、ボールねじ4aが軸線O1方向に動き、ボールナット4bが回転する。そして、ボールナット4bに接続した回転錘4eが回転することで慣性抵抗力が生じ、浮き基礎本体1(制振対象)の振動を低減させる。
【0026】
これに対し、本実施形態の慣性質量ダンパー4’は、図1に示すように、振動低減特性可変機構5を備え、回転錘6の回転中心距離rを変更して慣性質量値(制振対象振動数)を調整できるように構成されている。
【0027】
具体的に、本実施形態の慣性質量ダンパー4’(振動低減特性可変機構5)は、まず、一方(左側)の回転錘片6a、他方(右側)回転錘片6bに回転錘6を二分割するとともに、一方の回転錘片6aと他方の回転錘片6bにそれぞれ、ガイド板スライド孔7と雌ネジ孔8とを設けて構成されている。そして、本実施形態の振動低減特性可変機構5は、一方の回転錘片6aと他方の回転錘片6bの雌ネジ孔8にそれぞれ両端部の雄ネジを螺着して軸線O2をボールねじ4a及びボールナット4bの軸線O1と直交する水平方向に向けて設けられた位置調整ネジ(左右ネジ)9とを備えている。なお、一方の回転錘片6aと他方の回転錘片6bをそれぞれ、任意の水平位置で自動的あるいはリモート操作でガイド板4dに固定/解放(着脱)する着脱手段10を備えていてもよい。
【0028】
このように構成した慣性質量ダンパー4’/振動低減特性可変機構5においては、図1(a)、図1(b)、図1(c)に示すように、位置調整ネジ9を軸線O2周りの一方向、他方向にそれぞれ回転させると、一方の回転錘片6aと他方の回転錘片6bが同時に且つ同変位量で(同期し)、ガイド板4dに沿って水平方向に進退し、一方の回転錘片6aと他方の回転錘片6bを自在にボールねじ4a及びボールナット4bの軸線O1中心の左右に離間、近接させることができる。
【0029】
これにより、回転錘6の回転中心距離rを変更して慣性質量値(制振対象振動数)を自在に調整することができる。
【0030】
一方、振動低減特性可変機構5は、図2図3に示すように、一方の回転錘片6aと他方の回転錘片6bが二本の位置調整ネジ9を螺着して接続され、位置調整ネジ9が軸線O2周りに回転すると水平方向に進退移動するように構成してもよい。さらに、この場合、二本の位置調整ネジ9は、例えば、各々中央に平歯車11の従動歯車11aが固定され、これら従動歯車11aがステッピングモーター12の回転軸に同軸上に接続した平歯車11の駆動歯車11bと噛合して設けられている。さらに、電動のステッピングモーター12は、浮き基礎本体1の振動(加速度など)を検知する振動検知手段(不図示)の検知結果を受けた制御手段(コントローラ)13からパルス信号が送られ、このパルス信号に応じて駆動するように構成されている。
【0031】
この振動低減特性可変機構5においては、浮き基礎本体1の振動を検知する振動検知手段の検知結果を受けた制御手段13から送られたパルス信号に応じてステッピングモーター12が駆動するため、駆動歯車11b、ひいては従動歯車11aの回転角度と回転速度を正確に制御でき、細かな位置決めが可能になる。また、ステッピングモーター12に通電していれば停止時に位置を保持する保持力もある。
【0032】
ステッピングモーター12が駆動すると、接続した平歯車11が回転して位置調整ネジ9が回り、従動歯車11aの回転量に応じて一方の回転錘片6aと他方の回転錘片6bをそれぞれ正確に進退移動させることができる。このとき、ステッピングモーター12の制御により、回転錘6(一方の回転錘片6aと他方の回転錘片6b)の移動量を制御し、所定の慣性質量となる位置に回転錘を移動させることができ、ステッピングモーター12の保持力によりその位置を保持することができる。このため、着脱手段10を不要にすることができる。
【0033】
なお、ステッピングモーター12は、モーター固定治具15でガイド板4dに固定されており、ダンパー作動時は、ボールナット4b、ガイド板4d、回転錘6、ステッピングモーター12が一体で回転するように設けられている。
【0034】
さらに、図3に示すように、ステッピングモーター12への給電にスリップリング16を用いることが好ましい。
【0035】
スリップリング16は、回転体に配置された金属製のリング16aとブラシ16bを介して電力や信号を伝達するコネクタである(例えば、株式会社東測「スリップリング」参照)。これにより、ステッピングモーター12に直接ケーブルを接続した場合のように、ダンパー4’に軸方向変位が生じて回転錘が回転するとともにケーブルがダンパー4’にからまるような不都合が生じない。
【0036】
また、スリップリング16のリング16aをボールナット4bとガイド板4dをつなぐ回転軸4gに固定し、ブラシ16bは固定用ハウジング4cや床などに固定すればよい。
【0037】
なお、図4に示すように、回転錘6とともに回転するステッピングモーター12への給電にワイヤレス給電を用いてもよい。この場合には、ワイヤレス給電システム17の出力部17aはモータードライバ18と接続して、床などに固定すればよい。
【0038】
また、ワイヤレス給電システム17の伝送部17bは、例えば、ステッピングモーター12と接続し、ダンパー4’のガイド板4dから伸びている接続金物19に固定する。出力部17aから伝送部17bに非接触の状態で電気の供給が可能であり、これにより、ステッピングモーター12を駆動させることができる。また、ワイヤレス給電システム17の出力部17aと伝送部17bをともにダンパー4’のボールねじ4aの軸線O1上に配置すれば、回転錘6が回転しても位置が変わることはなく、ダンパー作動時を含め、常に給電することが可能になる。なお、この場合、ケーブル20はダンパー4’が作動しても不動である床に固定した出力部17aへ接続するだけであるので、ダンパー4’へのからみつきは生じない。
【0039】
さらに、振動低減特性可変機構5は、例えば、図5に示すように、一方の回転錘片6aと他方の回転錘片6bにそれぞれ、ラック21を固定し、二本のラック21の間にピニオン22を噛み合わせて構成してもよい。この場合には、ピニオン22にステッピングモーター12を接続し、ステッピングモーター12が駆動するとピニオン22が回転してラック21が動き、ラック21に接続した一方の回転錘片6aと他方の回転錘片6bがそれぞれ、上記の本実施形態の振動低減特性可変機構5と同様にガイド板4dに沿って進退移動する。
【0040】
次に、本実施形態の慣性質量ダンパー4’を用いた浮き基礎Aの作用効果、すなわち、慣性質量値を変動させ、制御対象振動数を変更することについて説明を行う。
【0041】
回転錘6(4e)を持つ慣性質量ダンパー4’(4)の慣性質量mは、例えば、下記の式(2)、式(3)を用いて算出できる。
【0042】
【数2】
【0043】
【数3】
【0044】
ここで、αは単位回転角に対するダンパー軸方向の変位(cm/rad)、Iは回転錘の断面二次モーメント、Aは回転錘の断面積である。
【0045】
図6は、各回転錘片6a、6bが半径100mmの半円型であると仮定した場合の回転中心距離rと慣性質量値の変化率の関係を示している。なお、この図において、慣性質量の変化率は、回転中心距離r=50mmの時の慣性質量値を基準とし、それに対する比率で表している。そして、この図に示す通り、回転中心距離rを30~80mmで変化させると、慣性質量値は0.5~2.0倍程度に変化することがわかる。
【0046】
そして、図7に示すように、固有振動数1.0Hzの浮き基礎Aにおいて、慣性質量比を0.07~0.25(0.125を基準に約0.5~2.0倍)まで変化させると、制御対象振動数を2.0~3.8Hz程度まで変動させることができる。
【0047】
これにより、コンサートホールでのタテノリによる振動数が2~4Hz程度と言われているので、この振動数域において曲調に合わせた効果的な振動低減が可能と言える。
【0048】
また、本実施形態の慣性質量ダンパー4’を用いた浮き基礎Aにおいては、浮き基礎(浮き基礎本体1)上に加速度計などの振動検知手段を設置して加振中の振動を計測し、この検知結果を制御手段13に送って制御対象振動数を変動、制御することで、実測値に対応した慣性質量値に即時にチューニングすることができる。
【0049】
また、慣性質量値の調整を容易に自動的に、あるいはリモートで行えるため、実際に振動が生じている最中に値を変更することが可能である。
【0050】
よって、本実施形態の浮き基礎Aによれば、実振動をモニタし、その卓越振動数に制御対象振動数を合わせるように調整することができ、確実に高い振動低減効果を得ることができる。
【0051】
また、例えばコンサートにおける曲調の違いによる調整等、きめ細かな振動制御対応が可能になる。
【0052】
さらに、振動が生じている最中に自動的あるいはリモートで調整が可能なため、実際の卓越振動数を計測しながら慣性質量値を調整し、実振動に対応した確実な振動低減効果を得ることができる。また、制御手段13はダンパー設置位置から離れた場所に設けることができるため、例えば、ダンパー設置フロア(浮き基礎本体設置位置)にいかなくても、慣性質量を変更することが可能である。
【0053】
さらに、慣性質量ダンパー4’の数が多くても、ステッピングモーター12の制御により一斉に(同期して)調整を行うことができ、信頼性の高い振動低減制御を行うことができる。
【0054】
さらに、電気による制御は、モーター駆動によるギアの回転のみという単純な機構であるので、複雑な制御プログラムを必要としない。
【0055】
また、万一、慣性質量値の調整に不具合が生じても、振動の低減率は低くなるが、一定の振動低減効果は得られるという利点もある。
【0056】
さらに、精密機器、高振動機器等の機械の基礎として使用する場合に、機器の振動特性の変化にもすぐに対応できる。
【0057】
以上、本発明に係る浮き基礎の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 浮き基礎本体
2 ばね要素
3 減衰要素
4 従来の回転慣性質量ダンパー(慣性質量機構)
4’ 回転慣性質量ダンパー(慣性質量機構)
4a ボールねじ
4b ボールナット
4c 固定用ハウジング
4d ガイド板
4e 従来の回転錘
4f 連結部材
4g 回転軸
5 振動低減特性可変機構
6 回転錘
6a 一方の回転錘片
6b 他方の回転錘片
7 ガイド板スライド孔
8 雌ネジ孔
9 位置調整ネジ
10 着脱手段
11 平歯車
11a 従動歯車
11b 駆動歯車
12 ステッピングモーター
13 制御手段
15 モーター固定治具
16 スリップリング
16a リング
16b ブラシ
17 ワイヤレス給電システム
17a 出力部
17b 伝送部
18 モータードライバ
19 接続金物
20 ケーブル
21 ラック
22 ピニオン
A 浮き基礎
O1 ボールねじの軸線
O2 位置調整ネジの軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10