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特許7133951車両用放電制御システム及び車両用放電制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】車両用放電制御システム及び車両用放電制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/04 20060101AFI20220902BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20220902BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20220902BHJP
   B60W 20/50 20160101ALI20220902BHJP
   B60W 20/00 20160101ALI20220902BHJP
   B60L 9/18 20060101ALN20220902BHJP
   B60K 6/48 20071001ALN20220902BHJP
   B60K 6/54 20071001ALN20220902BHJP
【FI】
B60L3/04 E
B60L15/20 S
B60W10/08 900
B60W20/50
B60W20/00
B60L9/18 P
B60K6/48 ZHV
B60K6/54
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018050491
(22)【出願日】2018-03-19
(65)【公開番号】P2019165523
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2021-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】高木 秀寛
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-103953(JP,A)
【文献】特開2006-050764(JP,A)
【文献】特開2010-178595(JP,A)
【文献】特開2016-067147(JP,A)
【文献】特開2015-089269(JP,A)
【文献】特開2013-059192(JP,A)
【文献】特開2005-020952(JP,A)
【文献】特開2014-183687(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0202967(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 10/30
B60W 20/00 - 20/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪に駆動力を付与するフロントモータと、後輪に駆動力を付与するリヤモータと、前記フロントモータ及びリヤモータに電力を供給する電池と、前記電池からの電力を前記フロントモータへの電力信号に変換するフロント駆動回路と、前記フロント駆動回路と前記電池との間に設けられたフロント平滑コンデンサと、前記電池からの電力を前記リヤモータへの電力信号に変換するリヤ駆動回路と、前記リヤ駆動回路と前記電池との間に設けられたリヤ平滑コンデンサと、車両のシステム終了及び車両の衝突の双方又は何れか一方を検出可能な車両状態検出部と、前記車両の動き状態を検出する車両動き状態検出部と、前記フロント平滑コンデンサ及びリヤ平滑コンデンサの電荷の放電を行う放電制御手段と、を備える車両用放電制御システムにおいて、
前記放電制御手段は、
前記車両状態検出部によって、車両のシステム終了及び車両の衝突の少なくとも何れか一方が検出されたときに、
前記フロント平滑コンデンサ及びリヤ平滑コンデンサの何れか一方の電荷を前記フロントモータ及びリヤモータの何れか一方によって放電させる第1放電制御部と、
該第1放電制御部による放電を行った後、更に前記車両動き状態検出部による車両の動き状態を確認した後、前記フロント平滑コンデンサ及びリヤ平滑コンデンサの何れか他方の電荷を前記フロントモータ及びリヤモータの何れか他方によって放電させる第2放電制御部と、
を有し、
前記放電制御手段の第2放電制御部は、
少なくとも前記フロントモータ及びリヤモータの何れか他方による正・逆の車両駆動力を発生させる放電制御及び前記フロントモータ及びリヤモータの何れか他方による車両駆動力を発生させない放電制御の選択が可能であり、
前記フロントモータ及びリヤモータの何れか一方による放電の後、前記車両動き状態検出部によって、車両が動いていると検出された場合、車両の動き方向と逆方向に車両を動かす方向の車両駆動力が発生されるように前記フロント平滑コンデンサ及びリヤ平滑コンデンサの何れか他方の電荷を放電させることを特徴とする車両用放電制御システム。
【請求項2】
前記放電制御手段の第2放電制御部は、
少なくとも前記フロントモータ及びリヤモータの何れか他方による車両駆動力を発生させない前記放電制御が可能であり、
前記フロントモータ及びリヤモータの何れか一方による放電の後、前記車両動き状態検出部によって、車両が動いていないと検出された場合、前記フロントモータ及びリヤモータの何れか他方に駆動力が発生しないように前記フロント平滑コンデンサ及びリヤ平滑コンデンサの何れか他方の電荷を放電させることを特徴とする請求項1に記載の車両用放電制御システム。
【請求項3】
前記車両動き状態検出手段は、前記フロントモータ及びリヤモータの何れか他方に設けられたモータレゾルバの検出信号に基づいて車両の動きを検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用放電制御システム。
【請求項4】
前記第1放電制御部は、前記フロント平滑コンデンサの電荷を前記フロントモータによって放電させ、
前記第2放電制御部は、前記リヤ平滑コンデンサの電荷を前記リヤモータによって放電させることを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の車両用放電制御システム。
【請求項5】
前輪に駆動力を付与するフロントモータと、後輪に駆動力を付与するリヤモータと、前記フロントモータ及びリヤモータに電力を供給する電池と、前記電池からの電力を前記フロントモータへの電力信号に変換するフロント駆動回路と、前記フロント駆動回路と前記電池との間に設けられたフロント平滑コンデンサと、前記電池からの電力を前記リヤモータへの電力信号に変換するリヤ駆動回路と、前記リヤ駆動回路と前記電池との間に設けられたリヤ平滑コンデンサと、車両のシステム終了及び車両の衝突の双方又は何れか一方を検出可能な車両状態検出部と、前記車両の動き状態を検出する車両動き状態検出部と、前記フロント平滑コンデンサ及びリヤ平滑コンデンサの電荷の放電を行う放電制御手段と、を備える車両用放電制御方法において、
前記放電制御手段は、
前記車両状態検出部によって、車両のシステム終了及び車両の衝突の少なくとも何れか一方が検出されたときに、前記フロント平滑コンデンサ及びリヤ平滑コンデンサの何れか一方の電荷を前記フロントモータ及びリヤモータの何れか一方によって放電させ、
該フロントモータ及びリヤモータの何れか一方による放電を行った後、更に前記車両動き状態検出部による車両の動き状態を確認した後、前記フロント平滑コンデンサ及びリヤ平滑コンデンサの何れか他方の電荷を前記フロントモータ及びリヤモータの何れか他方によって放電させ
少なくとも前記フロントモータ及びリヤモータの何れか他方による正・逆の車両駆動力を発生させる放電制御及び前記フロントモータ及びリヤモータの何れか他方による車両駆動力を発生させない放電制御の選択が可能であり、
前記フロントモータ及びリヤモータの何れか一方による放電の後、前記車両動き状態検出部によって、車両が動いていると検出された場合、車両の動き方向と逆方向に車両を動かす方向の車両駆動力が発生されるように前記フロント平滑コンデンサ及びリヤ平滑コンデンサの何れか他方の電荷を放電させることを特徴とする車両用放電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用放電制御システム及び車両用放電制御方法、特に、前輪及び後輪の夫々にフロントモータ及びリヤモータの夫々から駆動力を付与する車両の放電制御システム及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両を駆動するための駆動力をモータによって発生する電動車両が普及している。電動車両には、車両駆動源としてモータのみを搭載する、所謂電気自動車(EV:Electric Vehicle)を始め、駆動源としてエンジンを併載するハイブリッドカーや、燃料電池を搭載する燃料電池自動車などが含まれる。これら電動車両では、駆動用の電池を搭載し、この駆動用電池からの電力をインバータなどの駆動回路で電力信号に変換してモータに供給(印加)する。なお、駆動回路と駆動用電池の間には、一般的に、駆動用電池からの供給電力を安定化するための平滑コンデンサが設けられる。また、この種の電動車両に搭載される駆動用モータは、駆動用電池に蓄電するための発電機(ジェネレータ)として作動されることも多く、そうした場合、モータジェネレータとも言い表されるが、ここでは、単にモータと称する。
【0003】
車両駆動源として用いられるモータは、一般的に、高電圧大電流特性であり、従ってモータに電力を供給する駆動用電池も高電圧大容量特性であり、同時に平滑コンデンサに蓄積される電荷容量も大きい。例えば、車両が停止している状態、即ち後述するように車両のシステムが停止(終了)している状態では、駆動用電池は駆動用モータの駆動回路から遮断される必要があり、同時に平滑コンデンサの電荷も放電される必要がある。同様に、車両が衝突した際にも、駆動用電池は同じく遮断される必要があり、同時に平滑コンデンサの電荷も同じく放電される必要がある。このうち、上記駆動用電池の遮断は、例えば駆動用電池と駆動回路の間に介装されたスイッチやリレーが、例えば機械的に遮断されることで達成される。
【0004】
従来、車両システム終了時や車両衝突時に平滑用コンデンサの電荷を放電する車両用放電制御システムとしては、例えば下記特許文献1に記載されるものがある。この車両用放電制御システムでは、例えば車両の左右輪の夫々又は前後輪の夫々に個別に駆動力を付与する駆動用モータを2個搭載する場合に、駆動回路の平滑コンデンサの電荷を放電する際、車両の左右輪又は前後輪で夫々逆向きの駆動力が付与されるように平滑コンデンサの電荷を各駆動用モータ(モータコイル)によって放電している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開番号WO2013/014768公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の特許文献1にも記載されるように、平滑コンデンサの電荷を駆動用モータ(モータコイル)によって放電する際、駆動用モータが駆動力(トルク)を発生しないように制御することも可能である。しかしながら、例えば車両の前方又は後方からの衝突を考えた際、例えば衝突による平滑コンデンサ放電システムの故障や或いは誤差の累積によって、平滑コンデンサの電荷を駆動用モータで放電した場合に駆動用モータが車両駆動力を発生してしまう場合もあり得る。即ち、発生する駆動力のバランスによっては車両が動いてしまう可能性があり、このように平滑コンデンサの電荷放電に際して駆動用モータが意図しない車両駆動力を発生した場合の対策は未だ不十分である。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両が動くのを回避しつつ平滑コンデンサの電荷放電を行うことのできる車両用放電制御システム及び車両用放電制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため請求項1に記載の車両用放電制御システムは、
前輪に駆動力を付与するフロントモータと、後輪に駆動力を付与するリヤモータと、前記フロントモータ及びリヤモータに電力を供給する電池と、前記電池からの電力を前記フロントモータへの電力信号に変換するフロント駆動回路と、前記フロント駆動回路と前記電池との間に設けられたフロント平滑コンデンサと、前記電池からの電力を前記リヤモータへの電力信号に変換するリヤ駆動回路と、前記リヤ駆動回路と前記電池との間に設けられたリヤ平滑コンデンサと、車両のシステム終了及び車両の衝突の双方又は何れか一方を検出可能な車両状態検出部と、前記車両の動き状態を検出する車両動き状態検出部と、前記フロント平滑コンデンサ及びリヤ平滑コンデンサの電荷の放電を行う放電制御手段と、を備える車両用放電制御システムにおいて、
前記放電制御手段は、 前記車両状態検出部によって、車両のシステム終了及び車両の衝突の少なくとも何れか一方が検出されたときに、前記フロント平滑コンデンサ及びリヤ平滑コンデンサの何れか一方の電荷を前記フロントモータ及びリヤモータの何れか一方によって放電させる第1放電制御部と、該第1放電制御部による放電を行った後、更に前記車両動き状態検出部による車両の動き状態を確認した後、前記フロント平滑コンデンサ及びリヤ平滑コンデンサの何れか他方の電荷を前記フロントモータ及びリヤモータの何れか他方によって放電させる第2放電制御部と、を有し、
前記放電制御手段の第2放電制御部は、少なくとも前記フロントモータ及びリヤモータの何れか他方による正・逆の車両駆動力を発生させる放電制御及び前記フロントモータ及びリヤモータの何れか他方による車両駆動力を発生させない放電制御の選択が可能であり、前記フロントモータ及びリヤモータの何れか一方による放電の後、前記車両動き状態検出部によって、車両が動いていると検出された場合、車両の動き方向と逆方向に車両を動かす方向の車両駆動力が発生されるように前記フロント平滑コンデンサ及びリヤ平滑コンデンサの何れか他方の電荷を放電させることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、車両のシステム終了や車両の衝突時において、まず、フロント平滑コンデンサ及びリヤ平滑コンデンサの何れか一方の電荷をフロントモータ及びリヤモータの何れか一方によって放電させる制御が行われ、そこで一旦、車両動き状態の検出が行われる。従って、従来のようにリヤとフロントでほぼ同時に放電が行われることによる弊害、例えば、車両のシステム終了や車両の衝突が生じている状況において、放電時に車両に動きが生じてしまうことを的確に回避することができる。
また、フロント平滑コンデンサ及びリヤ平滑コンデンサの何れか一方の放電によって、フロントモータ及びリヤモータの何れか一方が車両に動きを発生させていると検出された時に、フロントモータ及びリヤモータの何れか他方によるフロント平滑コンデンサ及びリヤ平滑コンデンサの何れか他方の放電が、その車両の動きとは逆方向に動かす駆動力を発生させるように行われる。従って、フロント及びリヤの何れか一方の放電による車両の動きをフロント及びリヤの何れか他方の放電によって抑制することができ、フロント、リヤの平滑コンデンサの放電をより動きのない安全なものとすることができる。
【0010】
即ち、各モータによる放電は、一般に、車両に正・逆の駆動力を発生させる放電や駆動力を発生させない放電など、種々選択することが可能であり、車両動き状態検出部による車両の動き状態を確認した後に適切な、フロント平滑コンデンサ及びリヤ平滑コンデンサの何れか他方の放電を行うことが可能となっている。
【0011】
請求項2に記載の車両用放電制御システムは、請求項1に記載の車両用放電制御システムにおいて、前記放電制御手段の第2放電制御部は、少なくとも前記フロントモータ及びリヤモータの何れか他方による車両駆動力を発生させない前記放電制御が可能であり、前記フロントモータ及びリヤモータの何れか一方による放電の後、前記車両動き状態検出部によって、車両が動いていないと検出された場合、前記フロントモータ及びリヤモータの何れか他方に駆動力が発生しないように前記フロント平滑コンデンサ及びリヤ平滑コンデンサの何れか他方の電荷を放電させることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、フロントモータ及びリヤモータの何れか一方による放電が行われても、車両に動きが生じていないことを確認した後に、フロントモータ及びリヤモータの何れか他方による放電を行うので、フロントモータ及びリヤモータの何れか他方によっても駆動力が発生しないように的確なフロント平滑コンデンサ及びリヤ平滑コンデンサの何れか他方の電荷放電が可能となる。従って、確実に車両の動きの発生を防止しつつ平滑コンデンサの放電が可能となる。
【0015】
請求項に記載の車両用放電制御システムは、請求項1又は2に記載の車両用放電制御システムにおいて、前記車両動き状態検出手段は、前記フロントモータ及びリヤモータの何れか他方に設けられたモータレゾルバの検出信号に基づいて車両の動きを検出することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、フロントモータ及びリヤモータの何れか他方の回転制御のために一般的に備えられているモータレゾルバの検出信号を用いて車両の動きを検出することにより、コストや構造の増加を伴うことなく、可及的速やかに且つ正確に車両の動きを検出することができ、より的確に車両の動きを発生させない平滑コンデンサの放電が可能となる。
【0017】
請求項に記載の車両用放電制御システムは、請求項1乃至の何れか1項に記載の車両用放電システムにおいて、前記第1放電制御部は、前記フロント平滑コンデンサの電荷を前記フロントモータによって放電させ、前記第2放電制御部は、前記リヤ平滑コンデンサの電荷を前記リヤモータによって放電させることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、車両の前方からの衝突でフロント平滑コンデンサに異常がある場合でも、車両の動きの発生を確実に防止することが可能となる。
【0019】
請求項に記載の車両用放電制御方法は、前輪に駆動力を付与するフロントモータと、後輪に駆動力を付与するリヤモータと、前記フロントモータ及びリヤモータに電力を供給する電池と、前記電池からの電力を前記フロントモータへの電力信号に変換するフロント駆動回路と、前記フロント駆動回路と前記電池との間に設けられたフロント平滑コンデンサと、前記電池からの電力を前記リヤモータへの電力信号に変換するリヤ駆動回路と、前記リヤ駆動回路と前記電池との間に設けられたリヤ平滑コンデンサと、車両のシステム終了及び車両の衝突の双方又は何れか一方を検出可能な車両状態検出部と、前記車両の動き状態を検出する車両動き状態検出部と、前記フロント平滑コンデンサ及びリヤ平滑コンデンサの電荷の放電を行う放電制御手段と、を備える車両用放電制御方法において、
前記放電制御手段は、前記車両状態検出部によって、車両のシステム終了及び車両の衝突の少なくとも何れか一方が検出されたときに、前記フロント平滑コンデンサ及びリヤ平滑コンデンサの何れか一方の電荷を前記フロントモータ及びリヤモータの何れか一方によって放電させ、該フロントモータ及びリヤモータの何れか一方による放電を行った後、更に前記車両動き状態検出部による車両の動き状態を確認した後、前記フロント平滑コンデンサ及びリヤ平滑コンデンサの何れか他方の電荷を前記フロントモータ及びリヤモータの何れか他方によって放電させ、少なくとも前記フロントモータ及びリヤモータの何れか他方による正・逆の車両駆動力を発生させる放電制御及び前記フロントモータ及びリヤモータの何れか他方による車両駆動力を発生させない放電制御の選択が可能であり、前記フロントモータ及びリヤモータの何れか一方による放電の後、前記車両動き状態検出部によって、車両が動いていると検出された場合、車両の動き方向と逆方向に車両を動かす方向の車両駆動力が発生されるように前記フロント平滑コンデンサ及びリヤ平滑コンデンサの何れか他方の電荷を放電させることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、車両のシステム終了や車両の衝突時において、まず、フロント平滑コンデンサ及びリヤ平滑コンデンサの何れか一方の電荷をフロントモータ及びリヤモータの何れか一方によって放電させる制御が行われ、そこで一旦、車両動き状態の検出が行われる。従って、従来のようにリヤとフロントでほぼ同時に放電が行われることによる弊害、例えば、車両のシステム終了や車両の衝突が生じている状況において、放電時に車両に動きが生じてしまうことを的確に回避することができる。
また、フロント平滑コンデンサ及びリヤ平滑コンデンサの何れか一方の放電によって、フロントモータ及びリヤモータの何れか一方が車両に動きを発生させていると検出された時に、フロントモータ及びリヤモータの何れか他方によるフロント平滑コンデンサ及びリヤ平滑コンデンサの何れか他方の放電が、その車両の動きとは逆方向に動かす駆動力を発生させるように行われる。従って、フロント及びリヤの何れか一方の放電による車両の動きをフロント及びリヤの何れか他方の放電によって抑制することができ、フロント、リヤの平滑コンデンサの放電をより動きのない安全なものとすることができる。
【0021】
即ち、各モータによる放電は、一般に、車両に正・逆の駆動力を発生させる放電や駆動力を発生させない放電など、種々選択することが可能であり、車両動き状態検出部による車両の動き状態を確認した後に適切な、フロント平滑コンデンサ及びリヤ平滑コンデンサの何れか他方の放電を行うことが可能となっている。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、まず、フロント平滑コンデンサ及びリヤ平滑コンデンサの何れか一方の電荷をフロントモータ及びリヤモータの何れか一方によって放電した後、車両の動きを検出した上で、的確なフロントモータ及びリヤモータの何れか他方によるフロント平滑コンデンサ及びリヤ平滑コンデンサの何れか他方の電荷の放電が可能となり、モータを用いた放電を車両の動きを回避しつつ的確に行うことができる。車両システム終了時や衝突時における不要な車両の動きを防止し安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の車両用放電制御システムが適用された車両の一実施の形態を示す概略平面図である。
図2図1のパワーコントロールユニット及びモータ駆動システムを示す構成図である。
図3図2のパワー制御装置で行われる演算処理を示すフローチャートである。
図4図3の演算処理による作用の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の車両用放電制御システムが適用されたハイブリッド車両の一実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、この実施の形態のハイブリッド車両の概略平面図である。この車両は、例えばステーションワゴン型の乗用車両である。この車両の駆動源の一つであるエンジン12は、車両前方のエンジンルーム内に配置されており、このエンジン12の車両後方にはトランスミッション14が連結されている。また、この実施の形態では、エンジン12とトランスミッション14の間に、前輪10FL,10FRに駆動力を付与するためのフロントモータ15が介装されている。このフロントモータ15は、例えば3相交流モータで構成され、既存のハイブリッド車両と同様に、後述する駆動用電池24に蓄電するための発電機(ジェネレータ)としても作動されるが、ここでは単にフロントモータと称する。
【0025】
この実施の形態では、トランスミッション14内にフロントデフ(フロントディファレンシャルギヤ)18が内装されており、トランスミッション14及びフロントデフ18を介して、エンジン12単独の駆動力、又はフロントモータ15単独の駆動力、又はエンジン12及びフロントモータ15の組合された駆動力が前輪10FL,10FRに付与される。このフロントモータ15の運転状態は、後述するパワーコントロールユニット33によって、周知のハイブリッド制御と同様に、エンジン12の運転状態と協調制御される。なお、フロントモータ15の配置は、上記に限定されるものではなく、例えばトランスミッション14の内部に内装されるようにすることもできる。また、この実施の形態のフロントモータ15は前輪10FL,10FRに直結されている。
【0026】
また、この実施の形態では、後左右輪10RL,10RRの間にリヤデフ(リヤディファレンシャルギヤ)22が介装されており、このリヤデフ22に、後輪10RL,10RRに駆動力を付与するためのリヤモータ16が接続されている。従って、リヤモータ16の駆動力は、リヤデフ22を介して後輪10RL,10RRに付与される。このリヤモータ16も、既存のハイブリッド車両と同様に、駆動用電池24に蓄電するための発電機(ジェネレータ)として作動されるが、ここでは単にリヤモータと称する。また、このリヤモータ16の運転状態は、後述するパワーコントロールユニット33によって、周知のハイブリッド制御と同様に、エンジン12及びフロントモータ15の運転状態と協調制御される。また、この実施の形態のリヤモータ16は、例えば3相交流モータで構成され、後輪10RL,10RRに直結されている。
【0027】
この車両には、フロントモータ15及びリヤモータ16に電力を供給する駆動用電池24が搭載されている。前述のように、前輪10FL,10FRに駆動力を付与するフロントモータ15も、後輪10RL,10RRに駆動力を付与するリヤモータ16も、車両駆動力を発生するために、高電圧大電流特性である。従って、フロントモータ15及びリヤモータ16に電力を供給する駆動用電池24も高電圧大容量である。そのため、駆動用電池24の作動状態、つまり充放電状態は、後述するパワーコントロールユニット33によって、所謂12Vバッテリ(補機用バッテリ)とは個別に制御される。
【0028】
また、この車両には、車両の作動を許可するスタートスイッチ30が、例えばインストゥルメントパネルに設けられている。このスタートスイッチ30は、オン操作によってエンジン12の運転を許可すると共に、車両としての作動開始を許可する。このスタートスイッチ30は、エンジンだけを駆動源として搭載する車両のイグニッションスイッチに相当するが、ハイブリッド車両では、多くの場合、車両の停車中はエンジンを停止するので、スタートスイッチ30のオン操作でエンジン12の運転が許可される。この実施の形態の車両では、スタートスイッチ30のオン操作で、後述する各種のコントロールユニット31~34が起動し、種々の制御が開始され、スタートスイッチ30がオフ操作されると、それらのコントロールユニット31~34も作動を停止し、制御も終了される。この実施の形態の車両では、これらの制御によって車両システムが作動すると考えられ、従ってスタートスイッチ30のオン操作は車両システムを開始し、スタートスイッチ30のオフ操作は車両システムを終了する。
【0029】
また、この車両では、近年の車両と同様に、エンジン12はエンジンコントロールユニット31によって、トランスミッション14はトランスミッションコントロールユニット32によって、フロントモータ15及びリヤモータ16及び駆動用電池24はパワーコントロールユニット33によって、夫々制御される。また、この車両には、車両の衝突検出手段としてエアバッグ装置が搭載されている。このエアバッグ装置は、図示しない周知の運転席エアバッグや助手席エアバッグなどと共に、例えば車両のフロントバンパに設けられた加速度センサ36と、その加速度センサ36のセンサ信号に基づいて、上記エアバッグを展開するためのインフレータの作動状態を制御するエアバッグコントロールユニット34を備えて構成される。
【0030】
これらのコントロールユニット31~34は、例えばマイクロコンピュータなどの演算処理装置を搭載して構成され、高度な演算処理機能を有する。そのため、これらのコントロールユニット31~34は、コンピュータシステムと同様に、演算処理部の他、入出力部、記憶部などを備えて構成される。また、近年の車両と同様に、コントロールユニット31~34同士で、互いに相互通信を行い、互いに協調制御を行ったり、情報を授受・共有したりするように構成されている。また、これらのコントロールユニット31~34は、前述のように、原則として、スタートスイッチ30のオン操作で起動し、オフ操作で作動を停止する。
【0031】
図2は、図1のパワーコントロールユニット33及びモータ駆動システムを示す構成図である。このパワーコントロールユニット33は、前述のように演算処理を司るパワー制御装置33aと、入出力部33b及び記憶部33cを備える。また、このモータ駆動システムは、パワーコントロールユニット33とは個別に、駆動用電池24の充放電状態を制御する駆動用電池制御部41、フロントモータ15の作動状態を制御するフロントモータ制御部42、リヤモータ16の作動状態を制御するリヤモータ制御部43を備え、それらは、パワーコントロールユニット33とは個別の筐体に収納されている。具体的には、駆動用電池制御部41は駆動用電池24の直近に配設され、フロントモータ制御部42はフロントモータ15の直近に配設され、リヤモータ制御部43はリヤモータ16の直近に配設されている。なお、駆動用電池制御部41、フロントモータ制御部42、リヤモータ制御部43は、何れも既存のハイブリッド車両における電池制御部及びモータ制御部と同等のものであるから、構成については簡潔に説明する。
【0032】
駆動用電池制御部41は、駆動用電池24の両極を同時に開閉するメインリレー41aと、駆動用電池24の電力を昇圧したり、フロントモータ15やリヤモータ16の発電を降圧したりするためのコンバータ41bと、駆動用電池24-コンバータ41b間の電力を平滑する電池用コンデンサC1と、メインリレー41a及びコンバータ41bの作動状態を制御する駆動用電池制御装置41cを備えて構成される。コンバータ41bは、スイッチング素子とそれに逆並列に接続されたダイオードからなるパワー素子P1,P2を直列に接続し、それらの接続点と例えば駆動用電池24の正極との間にリアクトルLを介装して構成される。このパワー素子P1,P2の直列接続の両端部が、コンバータ41bの入出力端として、後述するフロントモータ制御部42のフロントモータインバータ42a及びリヤモータ制御部43のリヤモータインバータ43aに接続される。
【0033】
フロントモータ制御部42は、コンバータ41bの入出力端に接続され且つフロントモータ15を構成する3相交流モータのU相、V相、W相の各モータコイル15aの下アーム及び上アームにパワー素子P3~P8を配設したフロントモータインバータ42aと、このフロントモータインバータ42aとコンバータ41bの間に介装されたフロント平滑コンデンサC2と、フロントモータインバータ42aの作動状態を制御するフロントインバータ制御装置42bを備えて構成される。また、リヤモータ制御部43は、コンバータ41bの入出力端に接続され且つリヤモータ16を構成する3相交流モータのU相、V相、W相の各モータコイル16aの下アーム及び上アームにパワー素子P9~P14を配設したリヤモータインバータ43aと、このリヤモータインバータ43aとコンバータ41bの間に介装されたリヤ平滑コンデンサC3と、リヤモータインバータ43aの作動状態を制御するリヤインバータ制御装置43cを備えて構成される。
【0034】
駆動用電池制御装置41c、フロントインバータ制御装置42b、リヤインバータ制御装置43cは、何れもパワーコントロールユニット33からの制御指令に応じて、夫々、コンバータ41b、フロントインバータ、リヤインバータの作動状態を制御するように構成されている。また、フロントモータ15には、フロントモータ15の回転状態を精緻且つ迅速に検出するフロントモータレゾルバ26が設けられ、その出力信号はフロントインバータ制御装置42bに入力される。また、リヤモータ16には、リヤモータ16の回転状態を精緻且つ迅速に検出するリヤモータレゾルバ28が設けられ、その出力信号はリヤインバータ制御装置43cに入力される。これらのモータレゾルバは、周知のように、例えば回転子の周囲に複数のコイルを配設し、そのうちの1つのコイルに交流基準信号を供給し、回転子のコイルが回転したときの他のステータ側コイルの出力信号の位相からモータの回転状態を精緻且つ迅速に検出するものである。
【0035】
パワーコントロールユニット33では、周知のハイブリッド制御と同様に、車両の状態や運転者による操作・入力状態に応じて、エンジン12、駆動用電池24、フロントモータ15、リヤモータ16、或いはトランスミッション14の作動状態を統括的に制御する。具体的には、それらの制御指令(制御指令値)を算出設定し、該当するコントロールユニットや制御装置に出力する。また、このパワーコントロールユニット33では、スタートスイッチ30のオン操作で、車両の全てのシステムを起動(作動)したり、スタートスイッチ30のオフ操作で、車両の全てのシステムを終了したりする制御も司る。なお、車両の全てのシステムが終了しても、完全に車両の機能が停止してしまうわけではなく、例えば揮発性メモリの記憶内容を保持するための電力供給などは継続して行われる。
【0036】
次に、パワーコントロールユニット33で行われるフロント平滑コンデンサC2及びリヤ平滑コンデンサC3の電荷放電制御について説明する。図3は、このコンデンサ電荷放電制御のための演算処理を示すフローチャートである。この演算処理は、例えば予め設定された所定サンプリング周期のタイマ割込み処理などによって実行され、まずステップS1で、スタートスイッチ30がオフ操作されたか否かを判定し、スタートスイッチ30がオフ操作された場合、即ち車両のシステム終了時にはステップS3に移行し、そうでない場合にはステップS2に移行する。
【0037】
ステップS2では、前述したように、例えばエアバッグコントロールユニットとの相互通信で、車両の衝突情報があるか否かを判定し、車両の衝突情報がある場合、即ち車両が衝突した場合にはステップS3に移行し、そうでない場合には復帰する。
【0038】
ステップS3では、図示しない個別の演算処理に従って、フロントモータ15(モータコイル15a)によるフロント平滑コンデンサC2の電荷放電制御を行う。この実施の形態では、フロントモータ15が車両の前進方向にも後進方向にも駆動力(トルク)を発生しないように、フロント平滑コンデンサC2の電荷をフロントモータ15のモータコイル15aで放電する。モータが駆動力を発生しないように平滑コンデンサの電荷をモータコイルで放電する制御は、例えば前述した特許文献1にも記載されている。
【0039】
次にステップS4に移行して、リヤモータレゾルバ28の出力信号を、例えば前述したリヤインバータ制御装置43cから読込む。
【0040】
次にステップS5に移行して、ステップS4で読込まれたリヤモータレゾルバ28の出力信号から、車両が動くか否かを判定し、車両が動く場合にはステップS6に移行し、そうでない場合にはステップS9に移行する。
【0041】
ステップS6では、ステップS4で読込まれたリヤモータレゾルバ28の出力信号から、車両の動き(移動)は前進か否かを判定し、車両の動き(移動)が前進である場合にはステップS7に移行し、そうでない場合、即ち車両の動き(移動)が後進である場合にはステップS8に移行する。
【0042】
ステップS7では、図示しない個別の演算処理に従って、リヤモータ16によって車両後進駆動力(トルク)が発生するようにリヤ平滑コンデンサC3の電荷をリヤモータ16(モータコイル16a)で放電する制御を行ってから復帰する。リヤモータ16が後進駆動力(トルク)を発生するようにリヤ平滑コンデンサC3の電荷をリヤモータ16のモータコイル16aで放電する方法は、例えばリヤモータ16で後進駆動力(トルク)を発生する周知のハイブリッドリヤモータ制御と同等である。
【0043】
また、ステップS8では、図示しない個別の演算処理に従って、リヤモータ16によって車両前進駆動力(トルク)が発生するようにリヤ平滑コンデンサC3の電荷をリヤモータ16(モータコイル16a)で放電する制御を行ってから復帰する。リヤモータ16が前進駆動力(トルク)を発生するようにリヤ平滑コンデンサC3の電荷をリヤモータ16のモータコイル16aで放電する方法は、例えばリヤモータ16で前進駆動力(トルク)を発生する周知のハイブリッドリヤモータ制御と同等である。
【0044】
また、ステップS9では、リヤモータ16によって車両駆動力(トルク)が発生しないようにリヤ平滑コンデンサC3の電荷をリヤモータ16(モータコイル16a)で放電する制御を行ってから復帰する。リヤモータ16が車両駆動力(トルク)を発生しないようにリヤ平滑コンデンサC3の電荷をリヤモータ16のモータコイル16aで放電する制御は、前述した特許文献1に記載されるものと同等である。
【0045】
なお、リヤ平滑コンデンサC3の電荷をリヤモータ16(モータコイル16a)で放電する際のリヤモータ16が発生する前進駆動力又は後進駆動力の制御は、例えばフロント平滑コンデンサC2に蓄積される電荷量が予め凡そ分かっており、従ってその放電で生じるフロントモータ15の発生駆動力(トルク)も凡そ算出できるので、そのフロントモータ15の発生駆動力(トルク)を相殺する駆動力(トルク)がリヤモータ16で発生するようにリヤ平滑コンデンサC3の電荷放電を制御してもよい。
【0046】
この演算処理によれば、車両のシステム終了又は車両の衝突が検出された(車両状態検出部)場合に、まずフロント平滑コンデンサC2の電荷をフロントモータ15のモータコイル15aで放電する(第1放電制御部)。周知のように、平滑コンデンサの電荷を駆動回路の素子で放電する方法もあるが、この放電制御は、放電に要する時間が大きい。これに対し、高電圧大電流特性のモータコイルで平滑コンデンサの電荷を放電すれば、その放電所要時間は小さくてよい。従って、フロント平滑コンデンサC2の電荷はフロントモータ15のモータコイル15aによって速やかに放電される。
【0047】
このフロント平滑コンデンサC2の放電に際し、この実施の形態では、フロントモータ15が車両駆動力を発生しないようにフロントモータインバータ42aの作動状態を制御する。しかしながら、前述したように、特に車両が衝突した場合、フロント平滑コンデンサC2の放電システムが故障したり、或いは誤差が累積したりした結果、フロントモータ15が意図しない車両駆動力を発生するおそれがある。この実施の形態では、このフロントモータ15が発生するおそれのある意図しない車両駆動力による車両の動きを、リヤモータ16の回転状態、より正確にはリヤモータレゾルバ28の出力信号から検出する(車両動き状態検出部)。前述のように、モータレゾルバは、モータの回転状態を精緻且つ迅速に検出することが可能であるので、リヤモータレゾルバ28の出力信号から車両の動き、しかもそれが前進か後進かを速やかに且つ正確に検出することができる。
【0048】
そして、このようにフロント平滑コンデンサC2の電荷をフロントモータ15によって放電した結果、車両が前進する場合には、図4に示すように、リヤモータ16によって後進駆動力が発生するようにリヤ平滑コンデンサC3の電荷をリヤモータ16のモータコイル16aで放電する。また、フロント平滑コンデンサC2の電荷をフロントモータ15によって放電した結果、車両が後進する場合には、リヤモータ16によって前進駆動力が発生するようにリヤ平滑コンデンサC3の電荷をリヤモータ16のモータコイル16aで放電する。また、フロント平滑コンデンサC2の電荷をフロントモータ15によって放電した結果、車両が動かない場合には、リヤモータ16によって車両駆動力が発生しないようにリヤ平滑コンデンサC3の電荷をリヤモータ16のモータコイル16aで放電する(以上、第2放電制御部)。
【0049】
このように、この実施の形態の車両用放電制御システムでは、フロント平滑コンデンサC2の電荷をフロントモータ15(モータコイル15a)によって放電した結果、車両が動く場合には、その車両の動きを抑制する車両駆動力、即ち車両が前進するときには後進駆動力が、車両が後進するときには前進駆動力が、夫々、リヤモータ16によって発生するように、リヤ平滑コンデンサC3の電荷をリヤモータ16(モータコイル16a)で放電制御する。また、車両が動かない場合には、車両駆動力がリヤモータ16によって発生しないように、リヤ平滑コンデンサC3の電荷をリヤモータ16(モータコイル16a)で放電制御する。その結果、どのような場合にも、モータ駆動回路の平滑コンデンサの放電に際して、車両が動くのを抑制することができる。
【0050】
また、車両の動きをリヤモータ16に備えられているリヤモータレゾルバ28によって精緻且つ迅速に検出することにより、コストや構造の増加を伴うことなく、可及的速やかに且つ正確に車両の動きを検出することができる。
【0051】
なお、前述の実施の形態では、前輪及び後輪に個別に駆動力を付与するモータ及び駆動回路を備えたハイブリッド車両について説明したが、本発明は、前輪及び後輪に個別に駆動力を付与するモータ及び駆動回路を備えた電動車両であれば、どのような車両にも適用可能であり、そうした電動車両には、例えば電動自動車や燃料電池自動車が挙げられる。
【0052】
また、上記実施の形態では、前左右輪を駆動するためのフロントモータを1つだけ配設し、後左右輪を駆動するためのリヤモータを1つだけ配設した電動車両についてのみ詳述したが、前左右輪を個別に駆動するためのフロントモータを2個設けてもよいし、後左右輪を個別に駆動するためのリヤモータを2個設けてもよい。
【0053】
また、上記実施の形態では、フロントモータ及びリヤモータに電力を供給するための電池(駆動用電池)を1つだけ配設した電動車両についてのみ詳述したが、例えばフロントモータに電力を供給するための電池とリヤモータに電力を供給するための電池を2個設けてもよい。更には、前述のように、フロントモータを2個、リヤモータを2個設けるような場合に、夫々のモータに独立して電力を供給するための電池を設けるようにしてもよい。
【0054】
また、車両のシステム終了は、スタートスイッチのオフ操作に代えて、従来のイグニッションスイッチのオフ操作であってもよく、或いは全く個別のシステム終了入力手段を設けてもよい。
【0055】
また、上記実施の形態におけるフロントモータを、前輪に駆動力を付与するフロントモータと前輪の回転から電力を発電するフロントジェネレータに分割し、夫々を個別のインバータで力行・回生することもできる。
【0056】
また、本発明の平滑コンデンサ電荷放電制御は、例えば車両を廃棄する場合にも、同様に適用することができる。
【0057】
また、上記実施の形態では、フロント平滑コンデンサの電荷をフロントモータで放電し、然る後、リヤ平滑コンデンサの電荷をリヤモータで放電するものについてのみ詳述したが、これら平滑コンデンサの電荷の放電は、例えばリヤ平滑コンデンサの電荷をリヤモータで放電し、然る後、フロント平滑コンデンサの電荷をフロントモータで放電してもよい。更には、フロント平滑コンデンサの電荷をリヤモータで放電した後、リヤ平滑コンデンサの電荷をフロントモータで放電するようにしたり、リヤ平滑コンデンサの電荷をフロントモータで放電した後、フロント平滑コンデンサの電荷をリヤモータで放電するようにしたりすることもできる。これらの場合、例えば図3のフローチャート及び上記説明文における「フロント」と「リヤ」を該当する制御態様に合わせて変更設定するだけで対応可能である。
【0058】
本発明が上記していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当とされる特許請求の範囲に記載された発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0059】
10FL~10RR 車輪
12 エンジン
15 フロントモータ
16 リヤモータ
24 駆動用電池(電池)
26 フロントモータレゾルバ
28 リヤモータレゾルバ
33 パワーコントロールユニット
42a フロントモータインバータ(駆動回路)
43a リヤモータインバータ(駆動回路)
C2 フロント平滑コンデンサ
C3 リヤ平滑コンデンサ
図1
図2
図3
図4