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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/18 20060101AFI20220902BHJP
   H02K 19/24 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
H02K7/18 B
H02K19/24 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018087325
(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公開番号】P2019193527
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 充夫
(74)【代理人】
【識別番号】100172236
【弁理士】
【氏名又は名称】岩木 宣憲
(72)【発明者】
【氏名】桂 斉士
(72)【発明者】
【氏名】北村 太一
(72)【発明者】
【氏名】植村 公貴
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】西独国特許出願公開第3013424(DE,A1)
【文献】特開2018-009679(JP,A)
【文献】特開平05-153758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/18
H02K 19/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発進装置を内包するケースと前記発進装置との間に位置するブラシレス巻線界磁型回転電機であって、
前記ケースに保持され、交流電流により回転磁界を発生する交流コイルを備えた固定子と、
前記ケースに保持され、直流電流により励磁する界磁コイルを備えた界磁コアと、
前記発進装置の外周に配置され、前記固定子及び前記界磁コイルに対し回転軸周りに回転自在に保持される回転子と
を備え、
前記回転子が、前記回転軸沿いのエンジンと同期回転する同期回転部材に対向する対向面に、前記同期回転部材に対して連結可能な連結部を有し
前記回転子が、
第1円環部から前記回転軸の軸方向に突き出た複数の爪部を持つ第1磁極と、
前記第1磁極の内側に径方向隙間をあけて配置され、前記第1磁極と部分的に重なるように配置された第2円環部の外周面に径方向に突出しかつ周方向には周方向隙間を有して配置された複数の凸部を持つ第2磁極と
で構成され、
前記第1磁極と前記第2磁極とは、互いに接触することなく配置されていると共に、前記第1磁極の前記爪部が前記第2磁極の前記凸部と前記凸部との間の前記周方向隙間内に挿入されて、前記第1磁極の前記爪部と、前記第2磁極の前記凸部とが周方向に交互に配置され、
前記連結部が、前記第2円環部の前記対向面でかつ前記凸部の径方向の内側に配置されている、回転電機。
【請求項2】
前記連結部が、ボルト状またはナット状を有している、請求項1の回転電機。
【請求項3】
前記回転子が、前記回転軸の周方向に間隔を空けて配置された複数の前記連結部を有する、請求項1または2の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発進装置の外周に配置されるブラシレス巻線界磁型回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ドライブプレートが連結されたトルクコンバータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-211591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記トルクコンバータでは、そのケースに溶接されたナットもしくはボルトに対して、ドライブプレートがボルトもしくはナットで締結されているため、部品点数が増加するおそれがある。部品点数が増加すると、トルクコンバータを備えた回転電機の小型軽量化あるいは構造の簡素化を図ることが難しくなる場合がある。
【0005】
本発明の目的は、部品点数の増加を抑制できる回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0007】
本発明の1つの態様によれば、発進装置を内包するケースと前記発進装置との間に位置するブラシレス巻線界磁型回転電機であって、前記ケースに保持され、交流電流により回転磁界を発生する交流コイルを備えた固定子と、前記ケースに保持され、直流電流により励磁する界磁コイルを備えた界磁コアと、前記発進装置の外周に配置され、前記固定子及び前記界磁コイルに対し回転軸周りに回転自在に保持される回転子とを備え、前記回転子が、前記回転軸沿いのエンジンと同期回転する同期回転部材に対向する対向面に、前記同期回転部材に対して連結可能な連結部を有している、回転電機を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の前記態様によれば、回転子が、同期回転部材に対して連結可能な連結部を有している。このため、発進装置と同期回転部材とを連結するための部材を省略して、部品点数の増加を抑制可能な回転電機を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態にかかる回転電機の回転軸と垂直な方向沿いに大略切断したときの断面図とエンジン及び変速機との配置関係を示す説明図。
図2】第1実施形態にかかる回転電機の回転軸と垂直な方向沿いに切断したときの斜視図。
図3】第1実施形態にかかる回転電機の変速機側から見たときの正面図。
図4】第1実施形態にかかる回転電機の斜視図。
図5】第1実施形態にかかる回転電機の回転子の斜視図。
図6】第1実施形態にかかる回転電機の回転子の分解斜視図。
図7】本発明の第1実施形態の変形例にかかる回転電機の回転軸と垂直な方向沿いに切断したときの斜視図。
図8】本発明の第2実施形態にかかる回転電機の回転軸と垂直な方向沿いに切断したときの斜視図。
図9】本発明の第2実施形態の変形例にかかる回転電機の回転軸と垂直な方向沿いに切断したときの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明における実施形態を詳細に説明する。
【0011】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態にかかる回転電機10は、図1図2Bに示すように、発進装置4を内包するケース5と発進装置4との間に位置するブラシレス巻線界磁型回転電機10である。この回転電機10は、少なくとも、固定子3と、界磁コイル2と、回転子1とを備えている。第1実施形態の回転電機10は、一例として、回転軸7沿いのエンジン8と変速機9との間に配置されているが、このような配置に限られるものではない。例えば、オルタネータと置換して配置してもよいし、変速機9と車輪との間に配置するなど、任意の位置に配置してもよい。
【0012】
固定子3は、ケース5に回転不可に固定保持され、交流コイル14を巻回するための複数のスロットを具備する円筒状の部材で構成され、交流コイル14を備えて、交流コイル14に流れる交流電流により回転磁界を発生する。
【0013】
界磁コイル2は、固定子3及び回転子1よりも回転軸7沿いにずらせて配置されて、固定子3の変速機9側でケース5に固定保持され、直流電流により励磁する。界磁コア6は、界磁コイル2を備えている。なお、界磁コイル2は、固定子3及び回転子1よりも回転軸7沿いに、固定子3の変速機9側ではなく、第2エアギャップ12を介して固定子3のエンジン側にずらせて配置してもよい(図1の一点鎖線の領域89を参照)。
【0014】
回転子1は、発進装置4の外周に固定配置され、回転子1の外周面が固定子3の内周面に対向し、かつ、回転子1の変速機側の端面が界磁コイル2のエンジン側の端面に対向して、回転軸7の周りで固定子3及び界磁コイル2に対し回転自在に保持されている。
【0015】
また、図1に示すように、回転子1は、連結部31を有し、この連結部31を介してエンジン8の出力軸と同期回転する同期回転部材30に連結され、かつ、エンジン8の出力軸の中心軸を回転軸7としている。よって、エンジン8の出力軸と回転電機10の回転軸7とは、同一中心軸を持つことになる。
【0016】
第1実施形態は、一例として、発進装置4がトルクコンバータであり、同期回転部材30がトルクコンバータのエンジン側に連結されるドライブプレートである場合について説明する。なお、発進装置4として、摩擦式クラッチ装置を用いることもできる。
【0017】
図2に示すように、連結部31は、回転子1の同期回転部材30に対向する対向面221に設けられている。詳しくは、連結部31は、対向面221から回転軸7の延在方向に突出するボルト状を有し、回転子1の第2磁極22における後述する第2円環部22aの対向面221でかつ後述する凸部22bの径方向内側に配置されている。なお、第1実施形態の回転子1は、一例として、回転軸7の周方向に間隔を空けて配置された複数の連結部31を有している。
【0018】
固定子3と回転子1との間には、第1エアギャップ11が形成されて、固定子3と回転子1との間で磁束を受け渡している。第1エアギャップ11は、固定子3の内周面と回転子1の外周面との間で回転軸7の軸方向沿いに延在する隙間である。
【0019】
界磁コア6と回転子1との間には、第2エアギャップ12が形成されて、界磁コイル2と回転子1との間で磁束を受け渡している。第2エアギャップ12は、界磁コア6と回転子1との間で回転子1の回転軸7の軸方向の変速機側の端面と界磁コア6のエンジン側の端面において、回転軸7の軸方向とは垂直な径方向沿いに延在する隙間である。
【0020】
よって、界磁コイル2は、回転子1に対して、第2エアギャップ12を介して回転軸7の軸方向にずらされて並列して配置されている。
【0021】
一方、図3図6に示すように、回転子1は、第1磁極21と、第2磁極22とが組み合わされて構成されている。なお、図3のA-A線断面図が図1の中央の回転電機10と発進装置4などの断面図である。また、図5および図6では、連結部31を省略している。
【0022】
第1磁極21は、例えば鉄などの軟磁性体で構成され、第1円環部21aから回転軸7の軸方向に突き出た複数の例えば矩形薄板状の爪部21bを有している。爪部21bは、周方向に一定間隔、例えば等間隔に配置され、回転軸7の軸方向の長さはすべて同じである。各爪部21bの外周面は第1円環部21aの外周面沿いに配置されている。爪部21bは、第1磁極21と第2磁極22とが組み合わされても、第2磁極22とは非接触であり、径方向には径方向隙間16が形成されている。
【0023】
第2磁極22は、例えば鉄などの軟磁性体で構成され、第1磁極(この実施形態では、第1円環部21a)の内側に径方向隙間16をあけて配置され、第1磁極(この実施形態では、第1円環部21a)と部分的に重なるように配置された第2円環部22aの外周面に径方向に突出しかつ周方向には周方向隙間17を有して配置された複数の例えば矩形板状の凸部22bを有している。凸部22bも、周方向に一定間隔、例えば等間隔に配置され、径方向の高さはすべて同じである。凸部22bの回転軸7の軸方向の長さはすべて同じであり、爪部21bよりも短くなっている。各凸部22bの外周面は回転子1の回転軸心と同一中心の1つの円上に配置されている。各凸部22bは、第2円環部22aのエンジン側の端縁まで延びて第1先端係止部22cを形成する一方、第2円環部22aの変速機側には端縁まで延びずに、凸部22bが無く細幅の円環状のはめ込み部22dを形成している。第1磁極21を第2磁極22に対して軸方向に移動させて、第1磁極21の各爪部21bを隣接する凸部22b間の周方向隙間17の中間部に挿入して、爪部21bと凸部22bとが周方向に交互に配置されように組み付ける。このとき、はめ込み部22dの外側に、径方向隙間16を挟んで第1磁極21の第1円環部21aを配置できるようにしている。組み付けた状態では、図5に示すように、凸部22bと第1円環部21aとの間に軸方向隙間19があり、爪部21bと第2磁極22の凸部22bとの間には、周方向に周方向隙間17があり、かつ、径方向にも径方向隙間16がある。よって、第1磁極21と第2磁極22とは、径方向において第1磁極21と第2磁極22との間に配置された非磁性体の部材により、非接触に維持されている。
【0024】
以上のように構成された回転電機10においては、界磁コイル2が通電されると、界磁コイル磁束15が発生する。界磁コイル磁束15は、界磁コア6から、第2エアギャップ12と回転子1の第1磁極21と第1エアギャップ11と固定子3と第1エアギャップ11と回転子1の第2磁極22と第2エアギャップ12とを介して、界磁コア6に戻ることにより構成されている。このとき、例えば、直流電流が界磁コイル2に通電されれば、界磁コイル磁束15を発生させ、第1磁極21と第2磁極22とは、それぞれ、例えばN極とS極とにそれぞれ磁化されている。
【0025】
このような回転電機10において、まず、回転電機10をスタータとして始動機能を発揮させる場合について説明する。エンジン8の始動指令に基づき、図示しないインバータを駆動して固定子3に三相交流電流を流して固定子3を磁化するとともに、界磁コイル2に電流を流す。界磁コイル2に電流を流して、回転子1の第1磁極21と第2磁極22とを励磁する。この結果、回転子1が固定子3に対して回転を開始するとともに、固定子3において誘起電圧を有する起電力が発生する。
【0026】
その後、誘起電圧は回転子1の回転速度に応じて増加し、回転速度がエンジン8のアイドリングに対応するアイドリング回転速度より低い初爆の回転速度に到達し、エンジン8の始動を完了したとき、インバータの駆動を停止し、以後、所定の誘起電圧(要求電圧)を保持するように、自動的に発電モード、すなわち、回転電機10を発電機として発電機能を発揮させる場合に移行する。
【0027】
この発電モードでは、界磁コイル2を励磁し続けるときは、誘起電圧が所定の誘起電圧で一定になるように、励磁電流を調整する。励磁電流は、回転速度の上昇にあわせて回転子の磁化力が減じるように調整し、誘起電圧が一定となるようにする。また、界磁コイル2を励磁しないときは、誘起電圧が所定の誘起電圧で一定になるようにインバータで三相交流電流の進角を調整する。さらに、上記2つの方法を組み合わせて調整してもよい。このように制御することで、回転子1が回転すると、回転電機10は発電機として機能することになる。
【0028】
この結果、エンジン8と回転電機10とを連結することで、エンジン始動を可能とし、かつ走行中はジェネレータ(発電機)として機能する事ができる。
【0029】
第1実施形態の回転電機10では、回転子1が、同期回転部材30に対して連結可能な連結部31を有している。このため、発進装置4と同期回転部材30とを連結するための部材を省略して、部品点数の増加を抑制可能な回転電機10を実現できる。
【0030】
また、連結部31が、第2円環部22の対向面221でかつ凸部22bの径方向の内側に配置されている。これにより、第2磁極の磁路が狭くなるのを回避しつつ、連結部31を回転子1に設けることができる。
【0031】
なお、連結部31は、ボルト状に限らず、図7に示すように、ナット状であってもよい。すなわち、連結部31は、ボルト状またはナット状を有することができる。これにより、回転電機10の設計の自由度が高まる。
を有している。
【0032】
また、回転子1が、回転軸7の周方向に間隔を空けて配置された複数の連結部31を有している。これにより、回転子1を同期回転部材30により確実に連結することができる。なお、連結部31は、少なくとも1つ設けられていればよい。
【0033】
(第2実施形態)
図8および図9に示すように、本発明の第2実施形態として、第1実施形態の構成において、連結部31に環状の段部32を設けた構造としてもよい。
【0034】
より具体的には、図8に示すように、連結部31がボルト状である場合は、連結部31の第2円環部22a側の端部に段部32が設けられ、図9に示すように、連結部31がナット状である場合は、第2円環部22aの対向面221に開口する開口部33の周囲に段部32が設けられている。
【0035】
このように構成することで、連結部31の強度を高め連結部31が鉄等の磁性体の場合に第1磁極と第2磁極の間の磁気ショートを防止することができる。これにより、磁気的な悪影響を抑制しながら回転子1を同期回転部材30により確実に連結することができる。
【0036】
なお、前記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施形態同士の組み合わせ又は実施例同士の組み合わせ又は実施形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施形態又は実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の前記態様にかかる回転電機は、例えば、車両、あるいは、発電装置に適用できる。
【符号の説明】
【0038】
1 回転子
2 界磁コイル
3 固定子
4 発進装置
5 ケース
6 界磁コア
7 回転軸
8 エンジン
9 変速機
10 ブラシレス巻線界磁型回転電機
11 第1エアギャップ
12 第2エアギャップ
14 交流コイル
15 界磁コイル磁束
16 径方向隙間
17 周方向隙間
19 軸方向隙間
21 第1磁極
21a 第1円環部
21b 爪部
22 第2磁極
22a 第2円環部
22b 凸部
22c 第2先端係止部
22d はめ込み部
221 対向面
30 同期回転部材
31 連結部
32 段部
33 開口部
89 固定子のエンジン側にずらせて配置した界磁コイルの領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9