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特許7133972アルコール飲料、アルコール飲料の刺激味緩和剤、アルコール飲料の刺激味緩和方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】アルコール飲料、アルコール飲料の刺激味緩和剤、アルコール飲料の刺激味緩和方法
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/04 20190101AFI20220902BHJP
【FI】
C12G3/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018088787
(22)【出願日】2018-05-02
(65)【公開番号】P2019193602
(43)【公開日】2019-11-07
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】591014097
【氏名又は名称】サンエイ糖化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】深見 健
(72)【発明者】
【氏名】林 佳奈子
【審査官】▲高▼岡 裕美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/016049(WO,A1)
【文献】特開2000-055905(JP,A)
【文献】特開2013-059327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G
C12C
A23L2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分を含み、
前記成分の含有量が以下の式1を満たす、アルコール飲料。
y=Ax(式1)
(式1中、yは前記成分の含有量(wt/v%)、Aは0.0125以上5/3以下の定数、xはアルコール濃度(v/v%)をそれぞれ意味する。)
【請求項2】
アルコール濃度が1~10v/v%であり、かつ、前記成分を0.1~10wt/v%含む、請求項1に記載のアルコール飲料。
【請求項3】
前記糖カルボン酸が、マルトビオン酸、イソマルトビオン酸、マルトトリオン酸、イソマルトトリオン酸、マルトテトラオン酸、マルトヘキサオン酸、セロビオン酸、及びパノース酸化物からなる群より選択される少なくとも1つ以上を含む、請求項1又は2に記載のアルコール飲料。
【請求項4】
前記糖カルボン酸が、マルトオリゴ糖酸化物、分岐オリゴ糖酸化物、水飴酸化物、粉飴酸化物又はデキストリン酸化物の形態で含まれる、請求項1から3のいずれかに記載のアルコール飲料。
【請求項5】
前記塩類が、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩、鉄塩、及び銅塩からなる群から選択される少なくとも1つ以上を含む、請求項1から4のいずれかに記載の飲料。
【請求項6】
アルコール刺激味緩和剤であって、
前記アルコール刺激味緩和剤が、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上の成分からなり、
前記成分が、以下の式1を満たすようにアルコール飲料に配合される、アルコール刺激味緩和剤。
y=Ax(式1)
(式1中、yは前記成分の含有量(wt/v%)、Aは0.0125以上5/3以下の定数、xはアルコール濃度(v/v%)をそれぞれ意味する。)
【請求項7】
アルコール飲料において、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分を以下の式1を満たすように含有させることによって、アルコールの刺激味を緩和する方法。
y=Ax(式1)
(式1中、yは前記成分の含有量(wt/v%)、Aは0.0125以上5/3以下の定数、xはアルコール濃度(v/v%)をそれぞれ意味する。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコールの刺激味が緩和され、ボディ感と香味を増強したアルコール飲料、アルコール飲料の刺激味緩和剤、アルコール飲料の刺激味緩和方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコール飲料において、低カロリーでボディ感を付与し、コク味やボディ感を付与し、味質を改善する方法やアルコールの刺激味を改善する方法として、高甘味度甘味料や糖アルコール(特許文献1)、低カロリー及びノンカロリー甘味料(特許文献2)や難消化性グルカン等の水溶性の食物繊維(特許文献3)を配合することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-127839号公報
【文献】特開2003-47453号公報
【文献】特開2017-000106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、糖アルコールは、添加することで甘みが強くなってしまうため添加量に制限がある。また、食物繊維等の高分子糖質素材においては、添加量が多くなると粘性が高くなることや、香味をマスキングしてしまう等の問題がある。
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、甘みを付与することなくボディ感と香味を増強し、アルコール感の刺激味を低減したアルコール飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸を用いることで、アルコール飲料甘みを付与することなくボディ感と香味を増強することで、アルコール飲料のアルコール感の刺激味を低減できることを見出し、本発明に至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0006】
(1)重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分を含む、アルコール飲料。
【0007】
(2)アルコール濃度が1~10v/v%であり、かつ、前記成分を0.1~10wt/v%含む、アルコール飲料。
【0008】
(3)前記糖カルボン酸が、マルトビオン酸、イソマルトビオン酸、マルトトリオン酸、イソマルトトリオン酸、マルトテトラオン酸、マルトヘキサオン酸、セロビオン酸、及びパノース酸化物からなる群より選択される少なくとも1つ以上を含む、(1)又は(2)に記載のアルコール飲料。
【0009】
(4)前記糖カルボン酸が、マルトオリゴ糖酸化物、分岐オリゴ糖酸化物、水飴酸化物、粉飴酸化物又はデキストリン酸化物の形態で含まれる、(1)から(3)のいずれかに記載のアルコール飲料。
【0010】
(5)前記塩類が、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩、鉄塩、及び銅塩からなる群から選択される少なくとも1つ以上を含む、(1)から(4)のいずれかに記載のアルコール飲料。
【0011】
(6)重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなるアルコール刺激味緩和剤。
【0012】
(7)アルコール飲料において、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分を含有させることによって、アルコールの刺激味を緩和する方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、アルコールの刺激味を抑制可能なアルコール飲料、アルコール飲料の刺激味緩和剤、及びアルコール飲料の刺激味緩和方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
【0015】
なお、本明細書において、「v/v%」は、複数の異なる構成要素から全体を構成する場合に、全体体積に対する着目構成要素体積の百分率を意味する。また、「wt/v%」は、全体体積に対する着目構成要素質量の百分率を意味する。「v/w%」は、全体質量に対する着目構成要素体積の百分率を意味する。
【0016】
<アルコール飲料>
本発明のアルコール飲料は、アルコールと、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分(以下、単に「糖カルボン酸」や、「上記成分」と称する場合がある)とを含むものである。
【0017】
本発明のアルコール飲料は、上記成分(重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分)を含むことにより、甘みを付与することなくボディ感と香味を増強することで、アルコール由来の刺激味が低減される。「刺激味」とは、アルコールに由来するピリピリとした喉や舌に刺すような刺激を指す。
さらに所定の上記成分添加量においては、アルコール由来の刺激味の低減に加えて、アルコール飲料として、好ましい香味をも醸し出される。
【0018】
なお、アルコール飲料の一例としては、アルコールと、上記成分と、後述する炭水化物と、を含むものである。また、他の一例としては、アルコールと、上記成分と、後述する他の成分と、を含むものである。
【0019】
(アルコール)
本発明のアルコール飲料で用いられるアルコールとしては、エチルアルコールと水とを含む。アルコールは、特に種類、製法、原料等に限定されず、例えば、ビール、発泡酒、果実酒、日本酒等の醸造酒、焼酎、ウイスキー、ブランデー、スピリッツ、ラム等の蒸留酒等を1種類又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
また、蒸留酒に糖類等の副原料を混合するリキュール等の混成酒、さらにこれら酒類に果汁やフレーバー、炭酸ガス等を加えたカクテル、フィズ、チューハイ等が挙げられる。
【0020】
(糖カルボン酸)
本発明のアルコール飲料は、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分を含有する。糖カルボン酸は、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化されたものであれば、特に限定されない。澱粉分解物又は転移反応物の重合度は、例えば、2~100等であってもよい。より具体的には、糖カルボン酸は、マルトビオン酸、イソマルトビオン酸、マルトトリオン酸、イソマルトトリオン酸、マルトテトラオン酸、マルトヘキサオン酸、セロビオン酸、パノース酸化物等が挙げられる。これらのうち、香味をマスキングすることなくアルコールの刺激味低減する能力が高い点で、マルトビオン酸、マルトトリオン酸が好ましく、マルトビオン酸がより好ましい。これらは、単独で使用してよく、2種以上を併用してもよい。また、糖カルボン酸は、遊離の酸であってもよく、ラクトンであってもよい。
また、糖カルボン酸は、マルトオリゴ糖酸化物、分岐オリゴ糖酸化物、水飴酸化物、粉飴酸化物又はデキストリン酸化物の形態で、アルコール飲料に含まれてもよいものである。
【0021】
上記成分(重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分)のアルコール飲料全量に対する含有量は、0.1~10wt/v%が好ましい。含有量が0超0.1wt/v%未満の場合は、刺激味抑制に個人差が生じやすい。また、10wt/v%超の場合、後味として酸味が強く感じられ、アルコール飲料としてのバランスが悪く、ふさわしくない。
【0022】
なお、アルコール飲料中のアルコール濃度が10v/v%を超えると、アルコールの刺激味の改善効果はあるものの、アルコールそのものの味感と、上記成分の酸味が競合してしまい、奇異な味と感じられることがある。従って本発明の効果が最も発揮されるアルコール濃度は、アルコール飲料全量に対して、0超10v/v%である。アルコールの感じ方に個人差があり、アルコールを感じにくい低濃度領域を除くと、1~10v/v%である。すなわち、本発明の上記成分(重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分)は、日本国内で、いわゆる低アルコール飲料と呼ばれる飲料に対して、好適に用いることができる。
【0023】
本発明の効果が発揮できる上記成分(重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分)のアルコール飲料に対する含有範囲は、用いるアルコールの種類と、アルコール飲料中のアルコール濃度によって多少異なる。
【0024】
例えば、蒸留酒の一例として、ウオッカの場合では、アルコール濃度が3v/v%程度の場合は、0.1~7wt/v%であり、好ましくは0.5~5wt/v%であり、より好ましくは1~3wt/v%である。
ウオッカであり、アルコール濃度が6v/v%程度の場合は0.5~9wt/v%であり、好ましくは1~7wt/v%であり、より好ましくは3~5wt/v%である。
また、ウオッカであり、アルコール濃度が9v/v%程度の場合では、1~10wt/v%であり、好ましくは3~9wt/v%であり、より好ましくは5~7wt/v%である。
【0025】
また、蒸留酒の別の例として、ウイスキーの場合、アルコール濃度が8v/v%程度の場合では、0.2~5wt/v%であり、好ましくは0.4~3wt/v%、より好ましくは0.5~2wt/v%である。
【0026】
また、蒸留酒の別の例として、焼酎の場合、アルコール濃度が5v/v%程度の場合では、0.1~6wt/v%であり、好ましくは0.25~4wt/v%であり、より好ましくは0.5~2wt/v%である。
【0027】
また、醸造酒の一例として、赤ワインの場合、アルコール濃度が10v/v%程度の場合では、0.1~10wt/v%であり、好ましくは0.5~6wt/v%であり、より好ましくは1~3wt/v%である。
【0028】
上述したように、アルコール濃度に対して、アルコール刺激味を低減するのに必要な上記成分の含有量は正の関係(正の相関)にあり、高いアルコール濃度では、高い上記成分の含有量で用いるのがよい。アルコールの種類にもよるが、その正の関係は、関数で表すことができる。具体的には、アルコール濃度をx(単位はv/v%)、刺激味を低減するのに必要な上記成分の含有量をy(単位はwt/v%)とした時に、y=Axで表すことができる。実際には、低減効果がみられる範囲に幅があることから、y=Axと、y=Axと、の両関数に挟まれた範囲として、アルコール刺激味低減効果のある範囲を示すことができる(ここでx>0、y>0)。
【0029】
例えば、蒸留酒、醸造酒を含むアルコール全般について示すと、A=0.01であるy=Axと、A=2.33であるy=Axとで挟まれた範囲が、アルコールの刺激味を低減できる範囲である(ここでx>0、y>0)。別の表現をすれば、y=Axにおいて、A=0.01~2.33で示す範囲である。
xy平面を仮定したときに、直線y=0.01xと、直線y=2.33xは、互いに原点(x=y=0)で交わるが、両直線(両関数)に挟まれ、かつxとyがともに正である領域(象限)に、上述した蒸留酒及び醸造酒(ウオッカ、ウイスキー、焼酎、及び赤ワイン)のアルコール刺激味低減効果の得られる範囲は、すべて含まれている。
【0030】
本発明のアルコール飲料は、さらに、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸の塩を含有してもよい。糖カルボン酸の塩としては、特に限定されないが、上述で説明した糖カルボン酸の、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩、鉄塩、銅塩等が挙げられる。これらのうち、特に、カルシウム塩を含むことが好ましい。
これらは、単独で使用してよく、2種以上を併用してもよい。通常、塩類の味質は、マグネシウム塩やカルシウム塩では苦味を、ナトリウム塩は、塩辛さを感じるが、糖カルボン酸はこれら塩の持つ苦味等をマスキングすることができる。アルコール飲料へ、糖カルボン酸塩を配合することで、糖カルボン酸塩の僅かな雑味が、アルコール飲料中ではコクとして感じられ、さらにアルコールの刺激味を低減する。
【0031】
糖カルボン酸の含有量は、HPAED-PAD法(パルスドアンペロメトリー検出器、CarboPac PA1カラム)により測定する。測定は、溶出:35℃、1.0ml/min、水酸化ナトリウム濃度:100mM、酢酸ナトリウム濃度:0分-0mM、5分-0mM、10分-40mM、30分-50mMの条件で行う。
【0032】
(炭水化物)
本発明のアルコール飲料で用いられる炭水化物としては、特に限定されないが、砂糖、異性化糖、ぶどう糖、果糖、果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖果糖液糖、はちみつ、水飴、粉飴、マルトデキストリン、ソルビトール、マルチトール、還元水飴、マルトース、トレハロース、黒糖、難消化性デキストリン、ポリデキストロース等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
炭水化物の量としては、糖カルボン酸を含め、アルコール飲料全体に対して20wt/v%超となると、とろみが出たり、甘くなりすぎたり、香味がマスキングされる等味のバランスが悪くなる。このため、炭水化物量としては、0.5~20wt/v%が好ましく、0.7~18wt/v%がより好ましく、1~15wt/v%とするのがさらに好ましい。
【0034】
(他の成分)
また、本発明のアルコール飲料は、上記以外の従来公知のいずれの成分を加えてもよく、加えなくてもよい。このような成分としては、例えば、植物エキス、香料、有機酸、乳清飲料、高甘味度甘味料、機能性成分、保存料、安定剤、酸化防止剤、ビタミン類等が挙げられる。これらの成分の添加量は、得ようとする効果に応じて適宜調整できる。
【0035】
例えば、植物エキスの植物としては、果実類、茶類、ハーブ・薬草類、野菜類、穀物類、豆類、竹類、木の実類(種実類)、花木類等が挙げられ、天然の植物から採取されたものが使用される。例えば、原料である植物から搾取した搾汁や、水やエタノール等の溶媒と混合し、必要に応じて加熱、加圧、減圧、乾燥、遠心分離等による固液分離、濃縮、発酵等を行って、抽出した抽出物が使用され、搾取や抽出方法については特に限定されない。これらのうち、果実類から搾汁された果汁や、茶類から抽出された茶汁、ハーブ・薬草類から抽出されたハーブ汁は、好適に用いることができる。
例えば、果汁としては、リンゴ、バナナ、トマト、セロリ、赤ピーマン、ブドウ、ブルーベリー、ラズベリー、ミカン、オレンジ、グレープフルーツ、パイナップル、レモン、ライム、ウメ、アンズ、モモ、キウイフルーツ、イチジク、ザクロ、アセロラ、サクランボ、シークワーサー、ユズ、スダチ、カボス、キンカン、イヨカン等が挙げられる。果汁含有量としては、アルコール飲料全体に対して0.1~60wt/v%が好ましく、0.5~40wt/v%がより好ましく、1~20wt/v%がより好ましい。
また、茶汁としては、紅茶、緑茶、白茶、黄茶、青茶、黒茶等が挙げられる。
【0036】
例えば、香料としては、リンゴ、バナナ、トマト、セロリ、赤ピーマン、ブドウ、ブルーベリー、ラズベリー、ミカン、オレンジ、グレープフルーツ、パイナップル、レモン、ライム、ウメ、アンズ、モモ、キウイフルーツ、イチジク、ザクロ、アセロラ、サクランボ、シークワーサー、ユズ、スダチ、カボス、キンカン、イヨカン等の香料が挙げられる。香料の含有量は、アルコール飲料全体に対して0.005~1wt/v%が好ましく、0.02~0.5wt/v%がより好ましく、0.05~0.3wt/v%がさらに好ましい。
【0037】
例えば、有機酸としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、酢酸、リン酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、イタコン酸、グルコン酸等が挙げられる。
【0038】
(希釈及びアルコール濃度)
本発明のアルコール飲料は、飲料として適切な濃度になるよう、希釈してよい。希釈には、飲料用として用いられているものであれば特に制限されず用いることができ、特に蒸留水、炭酸水、水素水、お湯を好適に用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよく、例えば炭酸水と蒸留水によって希釈してよい。
本発明のアルコール飲料におけるアルコール濃度は、特に限定されるものではなく、適宜変更できるが、上述したとおり、アルコール濃度を1~10v/v%以下とすることで、本発明の効果がより発揮できる。
ここで、アルコール濃度とは、アルコール飲料全体に対する、エチルアルコールの体積濃度(v/v%)である。例えば、スピリッツの一例として、ウオッカを用いる時、40°ウオッカ15mlを用い、水により希釈して合計100mlのアルコール溶液(アルコール飲料)を得る場合には、アルコール濃度は6v/v%と計算される。
【0039】
(容器詰めアルコール飲料)
本発明のアルコール飲料は、各種容器に入れて提供することができる。各種容器にアルコール飲料を収容することにより、長期間の保管による品質の劣化を防止することができる。なお、容器は密閉できるものであれば特に制限はなく、金属製の缶容器やいわゆる樽型容器を適用することができる。使用する金属は、アルミニウム製、スチール製のいずれも使用することができる。また、収容容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器等を適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているあらゆるものも適用することができる。なお、金属製の容器は、気体、水、及び光線を遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点で、好ましい。
【0040】
(アルコール飲料の製造方法)
本発明のアルコール飲料の製造方法を説明する。本発明のアルコール飲料の製造方法は、混合工程と、後処理工程と、を含む。
混合工程では、混合タンクに、アルコール、水、糖カルボン酸等を投入し、撹拌することで混合溶液を製造する。混合する量については、各構成材料が、上述した含有量となるように選択することができる。
後処理工程では、ろ過、殺菌、容器への充填等の処理を、必要に応じて選択的に行う。なお、ろ過処理は、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。また、殺菌処理は、プレート殺菌によって行うのが好ましいが、これに限定されることなく適用可能である。また、充填処理は、埃が混入しないよう、飲料製造用クリーンルームにて充填するのがよい。
なお、製造方法においては、品質管理上必要なサンプリングとサンプリング品の品質検査を行うことができる。
【0041】
<アルコール飲料のアルコールの刺激味緩和剤>
本発明の果汁又は野菜汁含有食品組成物の呈味向上剤は、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上の成分からなる、アルコール飲料におけるアルコールの刺激味緩和剤である。
本発明のアルコール飲料のアルコールの刺激味緩和剤によれば、上記成分を用いることにより、アルコール飲料のアルコールの刺激味緩和でき、甘みを付与することなくボディ感と香味を増強することで、アルコール由来の刺激味の改善が可能となる。
【0042】
なお、アルコール飲料のアルコールの刺激味緩和剤の糖カルボン酸は、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化されたものであれば、特に限定されず、上述のアルコール飲料における糖カルボン酸と同様のものを例示できるが、澱粉分解物又は転移反応物の重合度は、例えば、2~100等であってもよい。より具体的には、糖カルボン酸は、マルトビオン酸、イソマルトビオン酸、マルトトリオン酸、イソマルトトリオン酸、マルトテトラオン酸、マルトヘキサオン酸、セロビオン酸、パノース酸化物等が挙げられる。これらは、単独で使用してよく、2種以上を併用してもよい。また、糖カルボン酸は、遊離の酸であってもよく、及びラクトンであってもよい。
【0043】
<アルコール飲料のアルコールの刺激味を緩和する方法>
本発明のアルコール飲料のアルコールの刺激味を緩和する方法は、果汁又は野菜汁含有飲食品組成物において、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分を含有させることによって、アルコール飲料のアルコールの刺激味を緩和する方法である。
【0044】
本発明のアルコール飲料のアルコールの刺激味緩和方法によれば、上述のとおり、糖カルボン酸を用いることにより、アルコールの刺激味緩和することで、飲み易くアルコール飲料本来の香味を活かした呈味改善が可能となる。
【0045】
なお、アルコール飲料のアルコールの刺激味緩和方法の糖カルボン酸は、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化されたものであれば、特に限定されず、上述のアルコール飲料における糖カルボン酸と同様のものを例示できるが、澱粉分解物又は転移反応物の重合度は、例えば、2~100等であってもよい。より具体的には、糖カルボン酸は、マルトビオン酸、イソマルトビオン酸、マルトトリオン酸、イソマルトトリオン酸、マルトテトラオン酸、マルトヘキサオン酸、セロビオン酸、パノース酸化物等が挙げられる。これらは、単独で使用してよく、2種以上を併用してもよい。
【実施例
【0046】
以下、本発明の実施例を含む、試験例1~7について説明する。各試験例は、アルコールとして、蒸留酒の一例として、ウオッカ、ウイスキーや焼酎を、醸造酒の一例として赤ワインを用い、評価試験用にアルコール飲料サンプル(100ml)を作成して、味覚の評価を行った。具体的には、乳清アルコール炭酸飲料を構成した飲料(試験例1)、グレープ風味のアルコール炭酸飲料を構成した飲料(試験例2~4)、ウイスキーの炭酸割りであるハイボールを構成した飲料(試験例5)、レモン果汁含有アルコール飲料を構成した飲料(実施例6)、オレンジ果汁含有赤ワインであるサングリアを構成した飲料(試験例7)である。
【0047】
(糖カルボン酸試験物質)
以下の評価試験(試験例1~4)では、マルトビオン酸シロップ(70wt%)、マルトビオン酸カルシウム(粉末)、及びマルトオリゴ糖酸化物シロップ(70wt%)を用いた。なお、マルトオリゴ糖酸化物シロップ中(HPLC法;固形分換算)には、マルトビオン酸70wt%に加えて、グルコン酸1wt%、マルトトリオン酸15wt%及びマルトテトラオン酸(重合度4)以上のマルトオリゴ糖酸化物14wt%を含む。
【0048】
従って、これら糖カルボン酸試験物質中の糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンの成分の総含有量(g)は、例えばマルトビオン酸シロップ(70wt%)が100gの場合は、70gと算出される。
マルトオリゴ糖酸化物シロップ(70wt%)が100gの場合は、含まれるグルコン酸を除いて、マルトビオン酸糖カルボン酸及びそのラクトンの成分の総含有量(g)は69gと算出される。
マルトビオン酸カルシウムが100gの場合は、糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンの成分の総含有量(g)は100gと算出される。
【0049】
なお糖カルボン酸試験物質中や、アルコール飲料中の糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンの成分の総含有量(g)は、定量分析によって測定することもでき、例えば、HPAED-PAD法(パルスドアンペロメトリー検出器、CarboPac PA1カラム)により、溶出:35℃、1.0ml/min、水酸化ナトリウム濃度:100mM、酢酸ナトリウム濃度:0分-0mM、5分-0mM、55分-40mMの条件で測定すれば、マルトビオン酸を定量することが可能である。
【0050】
(官能評価)
試験例1~4におけるアルコール飲料について、味覚の評価(以下、官能評価ともいう)を行っている。官能評価は、味覚について熟練したパネラ5名により行ない、各パネラが感じた味覚に基づいて、以下の5段階で評価した。このうちA、B、C、Eは、5名のパネラが共通して感じた味覚であり、Dは、5名のパネラに個人差が認められたものである。
A: アルコール感が顕著に低減され、かつ、好ましい香味感と、ボディ感を備え、バランスを有する
B: アルコール感が顕著に低減されており、香味感がある
C: アルコール感が低減されており、ほのかな香味感がある
D: アルコール感低減を感じる、感じないの個人差が認められる
E: アルコール感の低減が感じられない
上記パネラ評価に基づき、A、B、Cは、アルコール感の低減効果が認められると判定し、D、Eは、アルコール感の低減効果が認められない、と判定した。
【0051】
試験例1 <マルトビオン酸による刺激味の評価(アルコール度数3%)>
飲料サンプルは、表1に示したような組成にて、マルトビオン酸 (サンエイ糖化株式会社製)又はデキストリン(商品名NSD700、サンエイ糖化株式会社製)を配合した、アルコール濃度3v/v%の乳清アルコール飲料を調製した。具体的には、アルコールとして40°ウオッカ、糖カルボン酸としてマルトビオン酸又はデキストリン、他の成分として、乳性飲料であるカルピス(登録商標)、及び炭酸水を、それぞれ表1の量で計量し、最終的に蒸留水にて100mlに調製した。よく撹拌した後、上述したパネラによる官能評価を行った。
【0052】
【表1】
【0053】
評価の結果、表1に示すとおり、デキストリン配合した場合には、単調な甘さを感じるも、アルコールの刺激味の効果的な低減は確認されなかった。一方、マルトビオン酸を1wt/v%となるように配合することで、アルコールの刺激味が大きく低減化し、3wt/v%配合では、アルコールの刺激味の低減だけではなく、後味の酸味による乳風味の引立ちが確認された。
【0054】
試験例2 <マルトオリゴ糖酸化物シロップによる刺激味の評価(アルコール度数3%)>
飲料サンプルは、表2に示したような組成にて、マルトオリゴ糖酸化物シロップ(サンエイ糖化株式会社製)又はデキストリン(NSD700、サンエイ糖化株式会社製)を配合した、アルコール濃度3v/v%のグレープ風味のアルコール飲料を調製し、官能評価を行った。
【0055】
【表2】
【0056】
評価の結果、表2に示すとおり、3v/v%のアルコール濃度では、比較例のデキストリンを配合した場合では、アルコールの刺激味の低減効果は確認できなかった。一方、マルトオリゴ糖酸化物シロップを0.1wt/v%以上配合すると、アルコールの刺激味は低減化され、1wt/v%や3wt/v%配合では、後味の酸味がグレープの風味を引き立てることが確認出来た。
【0057】
試験例3 <マルトオリゴ糖酸化物シロップによる刺激味の評価(アルコール度数9%)>
飲料サンプルは、表3に示したような組成にて、マルトオリゴ糖酸化物シロップ(サンエイ糖化株式会社製)又はデキストリン(NSD700、サンエイ糖化株式会社製)を配合した、アルコール濃度9v/v%のグレープ風味のアルコール飲料を調製し、官能評価を行った。
【0058】
【表3】
【0059】
評価の結果、表3示すとおり、9v/v%のアルコール濃度では、比較例のデキストリンを配合した場合では、アルコールの刺激味の低減効果は確認できなかった。一方、マルトオリゴ糖酸化物シロップにおいては1wt/v%以上配合すると、アルコールの刺激味が改善され、5wt/v%や7wt/v%の時には、後味の酸味がグレープの風味を引き立てることが確認出来た。一方、11wt/v%配合においては、アルコールの刺激味は顕著に改善される(評価B)ものの、後味の酸味も強く認識された(評価X)。評価Bと評価Xが共存するため、バランスが悪く、アルコール飲料としてふさわしくないと判定した。
【0060】
試験例4 <マルトビオン酸カルシウムによる刺激味の評価(アルコール度数6%)>
飲料サンプルは、表4に示したような組成にて、マルトビオン酸カルシウム(サンエイ糖化株式会社製)をマルトオリゴ糖酸化物シロップ(サンエイ糖化株式会社製)と併用配合した、アルコール濃度6v/v%のグレープ風味のアルコール飲料を調製し、官能評価を行った。
【0061】
【表4】
【0062】
評価の結果、表4に示すとおり、6v/v%のアルコール濃度では、比較例のデキストリンを配合した場合では、アルコールの刺激味の低減効果は確認できなかった。マルトオリゴ糖酸化物シロップのみの配合においては、アルコール感が低減を感じ、これにマルトビオン酸カルシウムを併用配合することで、アルコールの刺激味は顕著に改善された。
【0063】
試験例5 マルトオリゴ糖酸化物シロップによる刺激味の評価(アルコール度数8%)
飲料サンプルは、表5に示したような組成にて、マルトオリゴ糖酸化物シロップ(サンエイ糖化株式会社製) 又はデキストリン(NSD700、サンエイ糖化株式会社製)を配合した、アルコール濃度8v/v%のハイボール(アルコール飲料)を調製し、官能評価を行った。
【0064】
【表5】
【0065】
評価の結果、表5に示すとおり、比較例のデキストリンを配合した場合では、アルコールの刺激味の低減効果は確認できなかった。一方、マルトオリゴ糖酸化物シロップにおいては0.5wt/v%配合すると、アルコールの刺激味は顕著に低減され、ウイスキーの風味を引き立てることが確認され、1wt/v%の時には、後味の穏やかな酸味によりスッキリとした味わいになることが確認出来た。
【0066】
試験例6 マルトオリゴ糖酸化物シロップによる刺激味の評価(アルコール度数5%)
飲料サンプルは、表6に示したような組成にて、マルトオリゴ糖酸化物シロップ(サンエイ糖化株式会社製) 又はデキストリン(NSD700、サンエイ糖化株式会社製)を配合した、アルコール濃度5v/v%のレモン果汁(1%)含有アルコール飲料を調製し、官能評価を行った。
【0067】
【表6】
【0068】
評価の結果、表6に示すとおり、比較例のデキストリンを配合した場合では、レモン風味の果汁感がマスキングされ、アルコールの刺激味が引立つ傾向にあった。一方、マルトオリゴ糖酸化物シロップを0.1wt/v%配合することでアルコール刺激味の低減が確認され、0.5wt/v%の時には、レモンの果汁感が引立ち、アルコールの刺激味が大きく低減し、飲みやすくなることが確認出来た。
【0069】
試験例7 マルトオリゴ糖酸化物シロップによる刺激味の評価(アルコール度数10%)
飲料サンプルは、表7に示したような組成にて、マルトオリゴ糖酸化物シロップ(サンエイ糖化株式会社製) 又はデキストリン(NSD700、サンエイ糖化株式会社製)を配合した、アルコール濃度10v/v%のサングリア(アルコール飲料)を調製し、官能評価を行った。
【0070】
【表7】
【0071】
評価の結果、表7に示すとおり、比較例のデキストリンを配合した場合では、ブドウの風味がマスキングされ、アルコールの刺激味が引立つ傾向にあった。一方、マルトオリゴ糖酸化物シロップを0.2wt/v%配合すると、アルコールの刺激味が低減され、1wt/v%配合すると、アルコールの刺激味が顕著に低減されると共に、ワイン由来の渋みがマスキングされ、ブドウの風味も引立ち、より飲みやすくなることが確認出来た。
【0072】
なお、試験例1~8以外にも、アルコール濃度と、糖カルボン酸等の上記成分の含有量の数値範囲について、その両方を可変する多くの試験を行っている。全体的な傾向としては、アルコール濃度の増加に伴い、上記成分も増加させることにより、アルコールのもたらす刺激味は、効果的に抑制(サプレッション)できることが幅広い範囲で確認できている。
【0073】
例えばアルコール濃度が10v/v%を超える場合、サプレッションを得るためには、上記成分を少なくとも10wt/v%を超える量が必要であった。この領域(アルコール濃度:10v/v%超、上記成分:10wt/v%超)では、アルコール刺激味は抑制できているものの、アルコール固有の味感と、上記成分のもたらす酸味感の両方が共存し、競合(コンフリクト)することが分かった。この試験飲料をパネラではない一般者(ユーザ層)に対して幅広く試飲テストしたところ、両者の味を分離して感じることができず、従来感じたことのない奇異な味と判定された。この奇異な味は、ユーザ層の中の、強いアルコールを好むヘビーユーザには、特に不評であった。
【0074】
一方、アルコール濃度が1~10v/v%であり、かつ上記成分が0.1~10wt/v%の領域では、アルコール刺激の低減とともに、上述したように、アルコール固有の味感と、上記成分のもたらす酸味感の両方が協調・調和(ハーモナイズ)し、一般者(ユーザ層)には、香味やボディ感を感じるものとして、好意的に判定された。特に、アルコール飲料に対して、やさしくて飲みやすい味を、楽しみたいという女性層には、好評であった。
【0075】
このように、両者それぞれの量によって、コンフリクトする領域とハーモナイズする領域の両極端に存在する原因は、よく分かっておらず、解明途上にあるが、アルコールと上記成分とでは、舌の感受部位の違い、時間応答性の違い、気化熱の違い等があり、これらの総合的な影響と考えられる。
研究によれば、アルコールは、4基本味質とは違い、口腔後方で感じるものである。本発明の糖カルボン酸は、食品で主に感じる基本味質とは異なる感受部位に何らかの作用を及ぼしている可能性がある。