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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】減衰機構
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/023 20060101AFI20220902BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
F16F15/023 A
E04H9/02 351
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018091645
(22)【出願日】2018-05-10
(65)【公開番号】P2019196818
(43)【公開日】2019-11-14
【審査請求日】2021-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】磯田 和彦
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-242844(JP,A)
【文献】特表2016-515965(JP,A)
【文献】特開昭59-187124(JP,A)
【文献】特開2004-036677(JP,A)
【文献】特開2016-211602(JP,A)
【文献】特開2016-217367(JP,A)
【文献】特開平05-231030(JP,A)
【文献】特開2007-078062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/023-15/027
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対変位可能な第1構造体と第2構造体との間に設けられる減衰機構において、
前記第1構造体と前記第2構造体との相対変位量に応じて回転する回転部材と、
前記回転部材と互いに回転を伝達可能な油圧モータと、を有し、
前記油圧モータは、作動油が流入・流出する2つのポートを連結する連結管と、
前記連結管の内部に設けられた減衰弁と、を有し、
前記第1構造体および前記第2構造体が第1方向に対向して設けられ、前記第1方向に直交する平面に沿った方向に相対変位可能に構成され、
前記回転部材は、前記第1構造体に支持され、前記第1方向に直交する方向に延びる第1回転軸線まわりに回転するとともに前記第1方向に延びる第2回転軸線まわりに回転しながら前記第2構造体に沿って転動可能に構成されていることを特徴とする減衰機構。
【請求項2】
前記油圧モータは、前記回転部材と同軸に設けられ、かつ前記回転部材に接続され、
前記回転部材は、前記第2構造体と当接していることを特徴とする請求項1に記載の減衰機構。
【請求項3】
相対変位可能な第1構造体と第2構造体との間に設けられる減衰機構において、
前記第1構造体と前記第2構造体との相対変位量に応じて回転する回転部材と、
前記回転部材と互いに回転を伝達可能な油圧モータと、を有し、
前記油圧モータは、作動油が流入・流出する2つのポートを連結する連結管と、
前記連結管の内部に設けられた減衰弁と、を有し、
前記第1構造体および前記第2構造体が第1方向に対向して設けられ、前記第1方向と直交する平面に沿った方向に相対変位可能に構成され、
前記第1構造体と前記第2構造体との間に中間体が設けられ、
前記中間体は、前記第1方向と直交する平面に沿った方向における一の直線に沿った第2方向に前記第1構造体と相対変位可能に構成されるとともに、前記第1方向および前記第2方向それぞれと直交する第3方向に前記第2構造体と相対変位可能に構成され、
前記回転部材は、前記第1構造体と前記中間体との前記第2方向の相対変位量に応じて回転する第1回転部材と、
前記第2構造体と前記中間体との前記第3方向の相対変位量に応じて回転する第2回転部材と、を有し、
前記油圧モータは、前記第1回転部材と互いに回転を伝達可能な第1油圧モータと、
前記第2回転部材と互いに回転を伝達可能な第2油圧モータと、を有し、
前記第1油圧モータおよび前記第2油圧モータは、作動油が流入・流出する2つのポートを連結する連結管と、
前記連結管の内部に設けられた減衰弁と、をそれぞれ有し、
前記第1回転部材は、前記第1構造体に支持され、前記第3方向に延びる第1回転軸線まわりに回転しながら前記中間体に沿って転動可能に構成され、
前記第2回転部材は、前記第2構造体に支持され、前記第2方向に延びる第3回転軸線まわりに回転しながら前記中間体に沿って転動可能に構成されていることを特徴とする減衰機構。
【請求項4】
相対変位可能な第1構造体と第2構造体との間に設けられる減衰機構において、
前記第1構造体と前記第2構造体との相対変位量に応じて回転する回転部材と、
前記回転部材と互いに回転を伝達可能な油圧モータと、を有し、
前記油圧モータは、作動油が流入・流出する2つのポートを連結する連結管と、
前記連結管の内部に設けられた減衰弁と、を有し、
前記減衰機構が互いに対向しない前記第1構造体の第1設置面と前記第2構造体の第2設置面との間に設けられ、
前記第1構造体と前記第2構造体とは、第2設置面に沿った方向に相対変位可能に構成され、
前記第1構造体に前記第2設置面に直交する方向に延びる第4回転軸線まわりに回転可能に支持された第1中間体と、
前記第2構造体に前記第2設置面に直交する方向に延びる第5回転軸線まわりに回転可能に支持された第2中間体と、を有し、
前記第1中間体と前記第2中間体とは、前記第1中間体に沿い、かつ前記第2設置面と平行となる直線に沿った方向に相対変位可能に連結され、
前記回転部材は、前記第1構造体と前記第2構造体との相対変位による前記第1中間体と前記第2中間体との相対変位量に応じて回転することを特徴とする減衰機構。
【請求項5】
前記連結管の内部に設けられたリリーフ弁を有し、
前記リリーフ弁は前記減衰弁と並列に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の減衰機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減衰機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、免震層に減衰機構としてオイルダンパを設置して、応答加速度をあまり増大させずに免震層の変位を抑制する免震構造物が知られている(例えば、特許文献1参照)。最近ではM8(マグニチュード8)以上の巨大地震で生じる長周期・長時間地震動により免震構造物の免震層変位が過大になり、免震構造物が擁壁に衝突する虞が指摘されている。このため、免震層にオイルダンパを設置し、免震層の変位を抑制することは効果的な対策といえる。オイルダンパには、免震層変位が作用するため、オイルダンパのストロークは、この免震層変位以上確保する必要がある。
【0003】
オイルダンパのストロークS(片振幅)、ピストン長さa、シリンダボトム(縮み側の減衰弁が配置された部分)の長さBとすると、外シリンダ長さcは、鋼板厚さもあるため、c>2S+a+bとなる。
また、オイルダンパが伸びたときの最大長さLmaxは、両端部のクレビス(ピン)取付け用寸法d,eもあるため、Lmax>c+2S>4S+a+b+d+eとなる。
現在、市販されている一般的な免震用オイルダンパでは、a+b+d+e≒0.8mとなるため、Lmax>4S+0.8となる。
【0004】
オイルダンパのストロークを±1mとすると、オイルダンパが伸びたときの最大長さLmax>4.8mとなる。このようにオイルダンパの長さが大きくなると、自重や上下地震動により大きな曲げモーメントが生じ、ピストンやロッドやシール部分が損傷してダンパーが正常に作動しなくなるおそれがある。また、ダンパー長が大きいと設置スペースも大きくなるという問題がある。
このようなことから、現在市販されているオイルダンパのストロークは、1m以下とすることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-293691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、免震構造物に長周期地震動が作用すると、免震層に1m以上の変位が生じる可能性があると指摘されている。このため、大きな設置スペースを要さずに免震層の1m以上の変位に対応できる減衰機構が求められている。なお、棟間に設けられる制振用減衰機構では、さらに大きな2m以上の変位に対応しなくてはならない場合もある。
【0007】
そこで、本発明は、より大きな変位に対応可能な減衰機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る減衰機構は、相対変位可能な第1構造体と第2構造体との間に設けられる減衰機構において、前記第1構造体と前記第2構造体との相対変位量に応じて回転する回転部材と、前記回転部材と互いに回転を伝達可能な油圧モータと、を有し、前記油圧モータは、作動油が流入・流出する2つのポートを連結する連結管と、前記連結管の内部に設けられた減衰弁と、を有し、前記第1構造体および前記第2構造体が第1方向に対向して設けられ、前記第1方向に直交する平面に沿った方向に相対変位可能に構成され、
前記回転部材は、前記第1構造体に支持され、前記第1方向に直交する方向に延びる第1回転軸線まわりに回転するとともに前記第1方向に延びる第2回転軸線まわりに回転しながら前記第2構造体に沿って転動可能に構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明は、第1構造体と第2構造体との相対変位が回転部材によって回転量として油圧モータに伝達される構成である。一般的なオイルダンパを減衰機構として用いる場合は、シリンダの長さによって対応可能な第1構造体と第2構造体との相対変位量が制限されるが、本発明では、油圧モータの回転量に制限がないため第1構造体と第2構造体との相対変位量が制限されることもない。その結果、本発明の減衰機構は、第1構造体と第2構造体のより大きな相対変位に対応することができる。
そして、本発明では、油圧モータの連結管の内部に減衰弁が設けられていることにより、第1構造体と第2構造体とが相対変位した際の相対速度に比例した反力を生じる減衰機構とすることができ、第1構造体と第2構造体との相対変位を低減させることができる。
押しのけ容積(油圧モータが1回転したときに2つのポートから出入りする油量)V(m)の油圧モータの2つのポート間に「圧力差Δpのとき流量qの作動油が通過する減衰弁」を設け、第1構造体と第2構造体との相対速度(下式ではxの上に・)相対変位x、相対変位を回転に変換する回転部材の半径R、回転部材を介して伝えられる力Fとすると、油圧モータのトルクT、回転数n、連結管に設けた減衰弁による減衰係数cp=ΔP/qとおくと、本発明は下式により減衰係数cをもつオイルダンパと等価になることがわかる。
【0010】
【数1】
【0011】
本発明に係る減衰機構は、前記第1構造体および前記第2構造体が第1方向に対向して設けられ、前記第1方向に直交する平面に沿った方向に相対変位可能に構成され、前記回転部材は、前記第1構造体に支持され、前記第1方向に直交する方向に延びる第1回転軸線まわりに回転するとともに前記第1方向に延びる第2回転軸線まわりに回転しながら前記第2構造体に沿って転動可能に構成されている。
このような構成とすることにより、第1方向に対向して設けられた第1構造体と第2構造体との第1方向に直交する平面に沿った方向の相対速度に比例した減衰力を得ることができる。
また、本発明に係る減衰機構では、前記油圧モータは、前記回転部材と同軸に設けられ、かつ前記回転部材に接続され、前記回転部材は、前記第2構造体と当接していてもよい。
また、本発明に係る減衰機構では、前記第1構造体および前記第2構造体が第1方向に対向して設けられ、前記第1方向に直交する一の直線に沿った第2方向に相対変位可能に構成され、前記回転部材は、前記第1構造体に固定された支持架台に前記第1方向および前記第2方向のそれぞれに直交する第3方向に延びる第1回転軸線まわりに回転可能に支持され、前記第1回転軸線まわりに回転しながら前記第2構造体に当接して、かつ前記第2構造体に沿って転動可能に構成されていてもよい。
このような構成とすることにより、第1方向に対向して設けられた第1構造体と第2構造体との第2方向の相対速度に比例した減衰力を得ることができる。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る減衰機構は、相対変位可能な第1構造体と第2構造体との間に設けられる減衰機構において、前記第1構造体と前記第2構造体との相対変位量に応じて回転する回転部材と、前記回転部材と互いに回転を伝達可能な油圧モータと、を有し、前記油圧モータは、作動油が流入・流出する2つのポートを連結する連結管と、前記連結管の内部に設けられた減衰弁と、を有し、前記第1構造体および前記第2構造体が第1方向に対向して設けられ、前記第1方向と直交する平面に沿った方向に相対変位可能に構成され、前記第1構造体と前記第2構造体との間に中間体が設けられ、前記中間体は、前記第1方向と直交する平面に沿った方向における一の直線に沿った第2方向に前記第1構造体と相対変位可能に構成されるとともに、前記第1方向および前記第2方向それぞれと直交する第3方向に前記第2構造体と相対変位可能に構成され、前記回転部材は、前記第1構造体と前記中間体との前記第2方向の相対変位量に応じて回転する第1回転部材と、前記第2構造体と前記中間体との前記第3方向の相対変位量に応じて回転する第2回転部材と、を有し、前記油圧モータは、前記第1回転部材と互いに回転を伝達可能な第1油圧モータと、前記第2回転部材と互いに回転を伝達可能な第2油圧モータと、を有し、前記第1油圧モータおよび前記第2油圧モータは、作動油が流入・流出する2つのポートを連結する連結管と、前記連結管の内部に設けられた減衰弁と、をそれぞれ有し、前記第1回転部材は、前記第1構造体に支持され、前記第3方向に延びる第1回転軸線まわりに回転しながら前記中間体に沿って転動可能に構成され、前記第2回転部材は、前記第2構造体に支持され、前記第2方向に延びる第3回転軸線まわりに回転しながら前記中間体に沿って転動可能に構成されていてもよい。
このような構成とすることにより、第1方向に対向して設けられた第1構造体と第2構造体との第1方向に直交する平面に沿った第2方向および第3方向の各々に対し相対速度に比例した減衰力を得ることができる。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係る減衰機構は、相対変位可能な第1構造体と第2構造体との間に設けられる減衰機構において、前記第1構造体と前記第2構造体との相対変位量に応じて回転する回転部材と、前記回転部材と互いに回転を伝達可能な油圧モータと、を有し、前記油圧モータは、作動油が流入・流出する2つのポートを連結する連結管と、前記連結管の内部に設けられた減衰弁と、を有し、前記減衰機構が互いに対向しない前記第1構造体の第1設置面と前記第2構造体の第2設置面との間に設けられ、前記第1構造体と前記第2構造体とは、第2設置面に沿った方向に相対変位可能に構成され、前記第1構造体に前記第2設置面に直交する方向に延びる第4回転軸線まわりに回転可能に支持された第1中間体と、前記第2構造体に前記第2設置面に直交する方向に延びる第5回転軸線まわりに回転可能に支持された第2中間体と、を有し、前記第1中間体と前記第2中間体とは、前記第1中間体に沿い、かつ前記第2設置面と平行となる直線に沿った方向に相対変位可能に連結され、前記回転部材は、前記第1構造体と前記第2構造体との相対変位による前記第1中間体と前記第2中間体との相対変位量に応じて回転する構成としてもよい。
このような構成とすることにより、互いに対向しない第1構造体と第2構造体の相対速度に比例した減衰力を得ることができる。
【0015】
また、本発明に係る減衰機構では、前記連結管の内部に設けられたリリーフ弁を有し、前記リリーフ弁は前記減衰弁と並列に設けられていてもよい。
このような構成とすることにより、第1構造体と第2構造体との相対速度が増加して油圧モータの回転数に比例して作動油の流量が増大した場合でも、油圧モータの2つのポート間の圧力差が頭打ちされ(所定の値以下となり)、リリーフ特性(過負荷防止機能)を付与することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1構造体と第2構造体のより大きな相対変位に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態による減衰機構の一例を示すY方向から見た図である。
図2】本発明の第1実施形態による減衰機構の一例を示すX方向から見た図である。
図3】連結管の内部を説明する図である。
図4】本発明の第2実施形態による減衰機構の一例を示すY方向から見た図である。
図5】本発明の第2実施形態による減衰機構の一例を示すX方向から見た図である。
図6】本発明の第3実施形態による減衰機構の一例を示すY方向から見た図である。
図7】本発明の第3実施形態による減衰機構の一例を示すX方向から見た図である。
図8】本発明の第4実施形態による減衰機構の一例を示す図で、図9のA-A線断面図である。
図9】本発明の第4実施形態による減衰機構の一例を示す図で、図8のB方向矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態による減衰機構について、図1乃至図3に基づいて説明する。
図1および図2に示す第1実施形態による減衰機構1Aは、免震構造物11の免震層12に設けられている。免震層12は、上下方向に対向し一の水平方向(以下、X方向とする)に相対変位可能な上部構造体(第1構造体)13と下部構造体(第2構造体)14との間に設けられ、免震支承(不図示)が設置されている。第1実施形態では、上部構造体13と下部構造体14とは、X方向のみに相対変位可能に構成されている。
上部構造体13には、例えば、免震層12の上部の床スラブや梁を想定し、下部構造体14には、例えば免震層12の床スラブや梁を想定している。
上下方向に対向する上部構造体13の下面13aおよび下部構造体14の上面14aは、それぞれ水平面に形成され、互いに上下方向に離間している。
X方向に直交する水平方向をY方向とする。図面では上下方向を「Z」で示している。
【0019】
減衰機構1Aは、上部構造体13の下部に固定された支持架台2と、支持架台2に回転可能に支持された回転部材3と、回転部材3と同軸に設けられ回転部材3と接続された油圧モータ4と、を有している。
支持架台2は、上部構造体13の下面13aから下側に突出していて、その下端部2aが下部構造体14と干渉しないように離間している。支持架台2は、上部構造体13とともに変位し、下部構造体14とX方向に相対変位可能に構成されている。
【0020】
回転部材3は、所定の厚さを有する円板や車輪などで、回転軸線(第1回転軸線)3bがY方向に延びる向きに支持架台2に支持されている。回転部材3の下端部3aは、支持架台2の下端部2aよりも下側に突出し、下部構造体14の上面14aと当接している。回転部材3は、支持架台2に支持された状態で、下部構造体14の上面14aをX方向に転動可能に構成されている。このため、上部構造体13と下部構造体14とがX方向に相対変位すると、回転部材3が回転するように構成されている。
回転部材3の外周部には、下部構造体14との摩擦を増大させるゴムなどが設けられていてもよい。
【0021】
油圧モータ4は、例えば、歯車型の油圧モータやピストン型の油圧モータなどで、作動油41と、作動油41が収容された油室42と、油室42に流入する作動油41により回転するモータ回転部材43と、を有している。
【0022】
油室42は、作動油41が収容され作動油41が流入・流出する2つのポート44,45が設けられた油室本体部46と、2つのポート44,45を連結する連結管47と、を有している。連結管47の内部は、2つのポート44,45から流出された作動油41が流れるように構成されている。2つのポート44,45のうちの一方を第1ポート44とし、他方を第2ポート45とする。
【0023】
モータ回転部材43は、油圧モータ4の内部において回転軸線(モータの回転軸線)43aまわりに回転可能に構成されている。
モータ回転部材43が回転軸線43aまわりの一方側に回転すると、油室42の作動油41は、第1ポート44を介して油室本体部46から連結管47に流出し、第2ポート45を介して連結管47から油室本体部46に戻るように流動する。モータ回転部材43が回転軸線43aまわりの他方側に回転すると、油室42の作動油41は、第2ポート45を介して油室本体部46から連結管47に流出し、第1ポート44を介して連結管47から油室42に戻るように流動する。
【0024】
モータ回転部材43は、回転軸線43aが回転部材3の回転軸線3bと同軸となるように設けられている。モータ回転部材43と回転部材3とは、それぞれの軸部が連結され、互いに回転を伝達可能に構成されている。
これにより、上部構造体13と下部構造体14とが相対変位して、回転部材3が回転すると、回転部材3の回転がモータ回転部材43に伝達され、モータ回転部材43も回転するように構成されている。回転部材3とモータ回転部材43との間にギアを介して回転数を変えることもできるが、この場合もモータ回転部材43の回転速度は回転部材3の回転速度に比例している。
【0025】
図3に示すように、連結管47の内部には、減衰弁48が設けられている。減衰弁48は、一般的なオイルダンパのピストン内にある減衰弁と同様の構成を有している。連結管47の内部に減衰弁48が設けられていることにより、連結管47の内部を流れる作動油41は、その速度に比例した減衰力を得ることになる。
連結管47の内部を流れる作動油41の速度は、モータ回転部材43の回転速度に比例している。上述したように、モータ回転部材43の回転速度は、上部構造体13と下部構造体14との相対速度に比例した回転部材3の回転速度に比例している。このため、モータ回転部材43は、上部構造体13と下部構造体14との相対速度に比例した減衰力を得るように構成されている。
【0026】
連結管47の内部には、連結管47の第1ポート44側から第2ポート45側に流れる作動油41の速度を低減させる減衰弁48(以下、第1減衰弁481とする)と、連結管47の第2ポート45側から第1ポート44側に流れる作動油41の速度を低減させる減衰弁48(以下、第2減衰弁482とする)と、が設けられている。
モータ回転部材43が回転軸線43aまわりの一方側に回転し、作動油41が連結管47の内部を第1ポート44側から第2ポート45側に向かって流動すると、第1減衰弁481によって作動油41の流速が低減され、モータ回転部材43が回転軸線43aまわりの他方側に回転し、作動油41が連結管47の内部を第2ポート45側から第1ポート44側に向かって流動すると、第2減衰弁482によって作動油41の流速が低減される。
【0027】
第1減衰弁481および第2減衰弁482それぞれの上流側にはオリフィス483,484が設けられ、オリフィス483,484を通過した作動油41が第1減衰弁481および第2減衰弁482を通過するように構成されている。
このように、オリフィス483,484と減衰弁48とをセットで使用することで、速度(流量)に比例した減衰力(圧力)を得ることができる。従って、リリーフ前であれば速度によらず減衰係数をほぼ一定にすることができる。
なお、図示していないが、連結管47の内部に減衰弁48と並列にリリーフ弁を設ければ、油圧モータ4の2つのポート44,45間の圧力差を頭打ちできるため、油圧モータ4のトルクにリリーフ特性(過負荷防止機能)を付与することができる。
【0028】
第1実施形態による減衰機構1Aでは、上部構造体13と下部構造体14とがX方向に相対変位すると、上部構造体13に支持された回転部材3が下部構造体14の上面14aを転動する。回転部材3が下部構造体14の上面14aを転動すると、回転部材3の回転が油圧モータ4のモータ回転部材43に伝達し、モータ回転部材43が回転する。モータ回転部材43が回転すると、作動油41が流動して連結管47の内部を流れる。連結管47の内部を流れる作動油41が第1減衰弁481または第2減衰弁482を通過すると、減衰弁両側に圧力差が生じるため作動油41の流速が制限される。
連結管に減衰弁が追加されることにより、モータ回転部材43の回転速度が低減され、モータ回転部材43と連結された回転部材3の回転も低減される。そして、回転部材3が下部構造体14の上面14aを転動する速度も低減されて、上部構造体13と下部構造体14との相対変位が低減される。
【0029】
続いて、減衰機構1Aの減衰性能について説明する。
油圧モータ4の特性を下記とする(効率η=1とする)。
【0030】
【数2】
【0031】
減衰弁48を、「圧力差Δpのとき流量qの作動油41が通過する」構成とし、作動油41の流量を圧力差に比例した流量であるとすると、下式(4)の関係が得られる。
【0032】
【数3】
【0033】
回転部材3の半径R、回転部材3を介して伝えられる力F、上部構造体13と下部構造体14との相対速度(上部構造体13と下部構造体14との相対変位xを時間に対し1回微分したもので、下式ではxの上に・で示す)は、下式(5)~(7)の関係が得られる。
【0034】
【数4】
【0035】
これは、上部構造体13と下部構造体14との相対速度に対し、上部構造体13と下部構造体14との間に設置され下式(8)の反力Fを生じる「減衰係数cのオイルダンパ」と同じである。
【0036】
【数5】
【0037】
このように、油圧モータ4に減衰弁48を組み合わせれば、オイルダンパと同じ「相対速度に比例した減衰力を生じる装置」を実現できることがわかる。
また、この減衰機構の単位時間当たりの吸収エネルギーは下式(9)となり、油圧モータ4の仕事率Pと同じになる(水平力による仕事をトルクによる仕事に変換するだけなので当然ともいえる)。
【0038】
【数6】
【0039】
なお、減衰機構と並列にリリーフ弁を追加すれば、相対速度が増加して油圧モータ4の回転数nに比例して流量qが増大しても油圧モータ4のポート間の圧力差Δpが頭打ち(所定の値以下)となることから、上記の式(2)や式(7)から油圧モータ4のトルクTや反力Fが頭打ちされるリリーフ特性(過負荷防止機能)を付与することができる。
【0040】
次に、上述した第1実施形態による減衰機構1Aの作用・効果について図面を用いて説明する。
上述した第1実施形態による減衰機構1Aでは、上部構造体13と下部構造体14との相対変位を回転部材3によって回転に変換して油圧モータ4に伝達する構成としている。一般的なオイルダンパを減衰機構1Aに用いる場合は、シリンダの長さによって対応可能な上部構造体13と下部構造体14との相対変位量が制限されるが、本実施形態では、油圧モータ4の回転量に制限がないため上部構造体13と下部構造体14との相対変位量が制限されることもない。その結果、本実施形態の減衰機構1Aは、上部構造体13と下部構造体14のより大きな変位に対応することができる。
そして、本実施形態では、減衰機構1Aにおいて油圧モータ4の連結管47の内部に減衰弁48が設けられていることにより、減衰機構1Aを上部構造体13と下部構造体14とが相対変位した際の相対速度に比例した反力を生じる構成とすることができ、上部構造体13と下部構造体14との相対速度に比例した減衰力を得ることができる。
押しのけ容積(油圧モータ4が1回転したときに2つのポート44,45から出入りする油量)V(m)の油圧モータ4の2つのポート44,45間に「圧力差Δpのとき流量qの作動油41が通過する減衰弁48」を設け、上部構造体13と下部構造体14との相対速度、回転部材3の半径R、回転部材3を介して伝えられる力Fとすると、本発明では、下式により減衰係数cをもつオイルダンパと等価になることがわかる。下式では上部構造体13と下部構造体14との相対速度を「x」の上に「・」で示す。
【0041】
【数7】
【0042】
(第2実施形態)
次に、他の実施形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。
図4および図5に示すように、第2実施形態による減衰機構1Bは、水平方向のいずれの方向(水平面に沿った方向)にも相対変位可能に構成された上部構造体(第1構造体)13と下部構造体(第2構造体)14との間の免震層12に設けられている。上部構造体13と下部構造体14とは、第1実施形態と同様に上下方向に対向している。
【0043】
第2実施形態による減衰機構1Bは、支持架台2Bが上部構造体13に固定されておらず、上部構造体13に対して上下方向に延びる鉛直軸まわりに回転可能に構成されている。
支持架台2Bは、回転部材3および油圧モータ4が取り付けられる支持架台本体部21と、支持架台本体部21の上端部から上方に突出する円柱状の円柱部材22と、を有している。上部構造体13には、下側に開口する円筒状の孔部131が形成されていて、この孔部131に下側から円柱部材22が挿入されている。円柱部材22は、孔部131に挿入された状態で上下方向に延びる回転軸線(第2回転軸線)22aまわりに回転可能に構成されている。支持架台本体部21と円柱部材22とは固定されていて、円柱部材22とともに円柱部材22の回転軸線22aまわりに回転可能に構成されている。
【0044】
回転部材3は、下端部3aが下部構造体14の上面14aと当接するように設けられている。回転部材3は、支持架台2Bとともに円柱部材22の回転軸線22aまわりに回転するように構成されている。
本実施形態では、円柱部材22の回転軸線22aと、回転部材3の回転軸線(第1回転軸線)3bとは交差しない位置に配置されている。回転部材3は、上部構造体13に対して偏芯接合金物で回転自在に接合されたキャスターのように挙動する。なお、円柱部材22の回転軸線22aは、回転部材3の回転軸線(第1回転軸線)3bに直交する方向に延びている。
回転部材3は、支持架台2Bが鉛直軸まわりに回転することにより、任意の方向に転動することが可能となり、下部構造体14の上面14aに沿った水平面内のどの方向に向かって変位するときにも追従可能となっている。
これにより、上部構造体13と下部構造体14とが相対変位すると、支持架台2Bが鉛直軸まわりに回転して回転部材3の向きが変位方向に転動する向きとなり、回転部材3が下部構造体14の上面14aを転動する。
【0045】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に回転部材3と油圧モータ4のモータ回転部材43とは同軸に連結されている。回転部材3の回転軸線3bとモータ回転部材43の回転軸線43aとは一致している。油圧モータ4は、第1実施形態と同様に連結管47および減衰弁48を有している。
これにより、上部構造体13と下部構造体14とが水平方向に相対変位すると、回転部材3が回転してその回転が伝達してモータ回転部材43が回転し、作動油41の流動によってモータ回転部材43の回転速度に比例した減衰力が生じる。これにより、回転部材3の回転速度も低減し、上部構造体13と下部構造体14との変位も低減する。
【0046】
第2実施形態による減衰機構1Bでは、水平面内のいずれの方向へも相対変位可能に構成された上部構造体13と下部構造体14に対し、相対速度に比例した減衰力を得ることができる。
【0047】
(第3実施形態)
図6および図7に示すように、第3実施形態による減衰機構1Cは、水平方向のどの方向にも相対変位可能に構成された上部構造体(第1構造体)13と下部構造体(第2構造体)14との間に設けられている。
第3実施形態では、減衰機構1Cは、上部構造体13と下部構造体14との間に設けられた中間体5と、上部構造体13の下部に固定され上部構造体13と中間体5との間に設けられた第1減衰部6と、下部構造体14の上部に固定され下部構造体14と中間体5との間に設けられた第2減衰部7と、第1減衰部6と中間体5とをX方向に相対変位可能にガイドする第1ガイド部8と、第2減衰部7と中間体5とをY方向に相対変位可能にガイドする第2ガイド部9と、を有している。
【0048】
中間体5は、例えば、板状やブロック状の部材で、上面が上部構造体13の下面と対向し、下面が下部構造体14の上面と対向するように形成されている。
【0049】
第1減衰部6は、上部構造体13の下部に固定された第1支持架台61と、中間体5の上面に固定されX方向に延びる第1ラックギア62と、第1支持架台61に支持され回転しながら第1ラックギア62に沿ってX方向に移動可能な第1ピニオンギア(回転部材)63と、第1支持架台61に回転可能に支持され第1ピニオンギア63の回転が伝達される第1回転伝達部材64と、第1支持架台61に取り付けられ第1回転伝達部材64との間で互いの回転が伝達される第1油圧モータ65と、を有している。
【0050】
第1支持架台61は、第1実施形態の支持架台2と同様の部材で構成されている。
第1ピニオンギア63は、回転軸線(第1回転軸線)63aがY方向に延びる向きに配置され、回転軸線63aまわりに回転して第1ラックギア62の上側に沿って第1ラックギア62の長さ方向(X方向)に移動可能に構成されている。第1ピニオンギア63は、第1支持架台61に固定された第1ガイド部8の第1ガイドブロック82(後述する)を介して第1支持架台61に支持されている。第1ラックギア62は、上部構造体13と中間体5とのX方向の相対変位に対応した長さに適宜設定されている。
【0051】
第1回転伝達部材64は、円板状やタイヤ状に形成され、回転軸線64aがY方向に延びる向きに配置されている。第1回転伝達部材64は、第1ピニオンギア63の上側に当接して設けられている。第1回転伝達部材64は、第1ピニオンギア63が回転すると、その回転によって回転するように構成されている。図示していないが、第1回転伝達部材64の外周部にはギアが設けられていて、このギアと第1ピニオンギア63とが噛み合うように設けられて、回転数を変換できるようにしてもよい。
【0052】
第1油圧モータ65は、第1実施形態の油圧モータ4と同様に構成され、モータ回転部材651の回転軸線651aがY方向に延びる向きで第1回転伝達部材64と同軸に配置されている。第1回転伝達部材64とモータ回転部材651とは、第1実施形態の回転部材3とモータ回転部材43と同様に互いの回転が伝達されるように構成されている。
第1油圧モータ65は、第1実施形態の油圧モータ4の連結管47および減衰弁48と同様の連結管647および減衰弁648を有している。
【0053】
第1ガイド部8は、リニアガイドで、中間体5の上面に固定されX方向に延びる第1ガイドレール81と、第1支持架台61に固定され第1ガイドレール81に沿ってX方向に移動可能な第1ガイドブロック82と、を有している。第1ガイド部8は、第1ガイドレール81が固定された中間体5と、第1ガイドブロック82が固定された第1支持架台61とがX方向のみに相対変位するように相対変位の方向を規制している。これにより、第1支持架台61と固定された上部構造体13と、中間体5とは、X方向のみに相対変位可能となるように相対変位の方向が規制されている。
【0054】
第2減衰部7は、下部構造体14の上部に固定された第2支持架台71と、中間体5の下面に固定されY方向に延びる第2ラックギア72と、第2支持架台71に支持され回転しながら第2ラックギア72に沿ってY方向に移動可能な第2ピニオンギア73(回転部材)と、第2支持架台71に回転可能に支持された第2回転伝達部材74と、第2支持架台71に取り付けられ第2回転伝達部材74との間で互いの回転が伝達される第2油圧モータ75と、を有している。
【0055】
第2支持架台71は、第1支持架台61と同様の部材で構成され、第1支持架台61とは上下反転し、かつ水平方向に90度回転した向きで下端部が下部構造体14に固定されている。
第2ピニオンギア73は、回転軸線(第3回転軸線)73aがX方向に延びる向きに配置され、回転軸線73aまわりに回転して第2ラックギア72の下側に沿って第2ラックギア72の長さ方向(Y方向)に移動可能に配置されている。第2支持架台71に固定された第2ガイド部9の第2ガイドブロック92(後述する)を介して第2支持架台71に支持されている。第2ラックギア72は、下部構造体14と中間体5とのY方向に相対変位に対応した長さに適宜設定されている。
【0056】
第2回転伝達部材74は、第1回転伝達部材64と同様の部材で構成され、回転軸線74aがX方向に延びる向きに配置されている。第2回転伝達部材74は、第2ピニオンギア73の下側に当接していて、第2ピニオンギア73が第2ラックギア72に沿ってY方向に移動して回転軸線74aまわりに回転すると、その回転によって回転するように構成されている。図示していないが、第2回転伝達部材74の外周部にはギアが設けられていて、このギアと第2ピニオンギア73とが噛み合うように設けられていて、回転数を変換できるようにしてもよい。
【0057】
第2油圧モータ75は、第1油圧モータ65と同様に構成され、モータ回転部材751の回転軸線751aがX方向に延びる向きで第2回転伝達部材74と同軸に配置されている。第2回転伝達部材74と第2油圧モータ75とは、第1実施形態の回転部材3とモータ回転部材43と同様に互いの回転が伝達されるように構成されている。
第2油圧モータ75は、第1実施形態の油圧モータ4の連結管47および減衰弁48と同様の連結管747および減衰弁748を有している。
【0058】
第2ガイド部9は、リニアガイドで、中間体5の下面に固定されY方向に延びる第2ガイドレール91と、第2支持架台71に固定され第2ガイドレール91に沿ってY方向に移動可能な第2ガイドブロック92と、を有している。第2ガイド部9は、第2ガイドレール91が固定された中間体5と、第2ガイドブロック92が固定された第2支持架台71とがY方向のみに相対変位するように相対変位の方向を規制している。これにより、第2支持架台71と固定された下部構造体14と中間体5とは、Y方向のみに相対変位するように相対変位の方向が規制されている。
【0059】
第3実施形態による減衰機構1Cでは、上部構造体13と下部構造体14とが水平方向に相対変位すると、上部構造体13と中間体5とがX方向に相対変位するとともに下部構造体14と中間体5とがY方向に相対変位する。
【0060】
上部構造体13と中間体5とがX方向に相対変位することにより、第1ピニオンギア63が第1ラックギア62をX方向に移動して回転し、その回転によって第1回転伝達部材64が回転する。そして、第1回転伝達部材64が回転することによって第1油圧モータ65のモータ回転部材651も回転する。このとき、第1油圧モータ65のモータ回転部材651が回転することにより生じた減衰力が、第1回転伝達部材64を介して第1ピニオンギア63に伝達され、第1ピニオンギア63の回転速度が低減される。これにより、第1ピニオンギア63と第1ラックギア62とのX方向の相対変位も低減される。その結果、上部構造体13と中間体5とのX方向の相対変位が低減される。
【0061】
下部構造体14と中間体5とがY方向に相対変位することにより、第2ピニオンギア73が第2ラックギア72をY方向に移動して回転し、その回転によって第2回転伝達部材74が回転する。そして、第2回転伝達部材74が回転することによって第2油圧モータ75のモータ回転部材751も回転する。このとき、第2油圧モータ75のモータ回転部材751が回転することにより生じた減衰力が、第2回転伝達部材74を介して第1ピニオンギア63に伝達され、第2ピニオンギア73の回転速度が低減される。これにより、第2ピニオンギア73と第2ラックギア72とのY方向の相対変位も低減される。その結果、下部構造体14と中間体5とのY方向の相対変位が低減される。
【0062】
上述したように、上部構造体13と中間体5とのX方向の相対変位が低減され、下部構造体14と中間体5とのY方向の相対変位が低減されることによって、上部構造体13と下部構造体14との相対変位も低減される。
【0063】
第3実施形態による減衰機構1Cによれば、水平方向のどの方向にも相対変位可能に構成された上部構造体13と下部構造体14に対し、水平方向の相対速度に比例した減衰力を得ることができる。
【0064】
(第4実施形態)
図8および図9に示すように、第4実施形態による減衰機構1Dは、柱部材15(第1構造体)と、梁部材16(第2構造体)との間に設けられている。
第4実施形態による減衰機構1Dは、柱部材15に水平面内に回転可能に支持された長尺の第1中間体101と、梁部材16に水平面内に回転可能に支持された第2中間体102と、第1中間体101と第2中間体102との間に設けられた減衰部103と、第1中間体101と第2中間体102とを第1中間体101の長さ方向に相対変位可能にガイドするガイド部104と、を有している。
【0065】
第1中間体101は、長尺の部材で、その長さ方向が水平方向に延びる向きに配置されている。この向きにおける第1中間体101の長さ方向に直交する水平方向を幅方向とする。第1中間体101は、長さ方向の一方の端部がクレビス105を介して柱に連結されている。
クレビス105は、第1固定部1051と、第2固定部1052と、第1固定部1051と第2固定部1052とを同軸に連結する連結軸部1053とを有している。連結軸部1053は、第1固定部1051と第2固定部1052とを軸線まわりに相対回転可能に連結している。クレビス105は、連結軸部1053の軸線(以下、第4回転軸線1054とする)が鉛直方向となる向きで、第1固定部1051が柱に固定され、第2固定部1052が第1中間体101に固定されることで、柱部材15と第1中間体101とを連結軸部1053の第4回転軸線1054まわりに相対回転可能に連結している。
【0066】
第2中間体102は、長さ方向の寸法が第1中間体101の長さ方向の寸法よりも長さ方向の寸法が短く、長さ方向に直交する断面形状がU字形となる部材で、このU字形が上側に開口する向きに配置されている。この向きにおける第2中間体102の長さ方向に直交する水平方向を幅方向とする。第2中間体102は、下側に配置される下板部1021と、下板部1021の幅方向の両端部から上側に延びる一対の側板部1022,1023と、下板部1021の下面から下側に突出する円柱部材1024と、を有している。
【0067】
梁部材16には、上側に開口し、第2中間体102の円柱部材1024が挿入される孔部161が形成されている。円柱部材1024は、軸線(以下、第5回転軸線1025とする)が鉛直方向に延びる向きで孔部161に挿入され、孔部161内において第5回転軸線1025まわりに回転可能に構成されている。
第2中間体102は、梁部材16に形成された孔部161に挿入された円柱部材1024の第5回転軸線1025まわりに梁部材16と相対回転可能に構成されている。
【0068】
第1中間体101の長さ方向に直交する断面形状は、第2中間体102の断面形状におけるU字形の内側の部分よりも小さくなるように設定されている。
第1中間体101と第2中間体102とは、それぞれの長さ方向が同じ方向となる向きで、第2中間体102の内側に第1中間体101が配置されている。第1中間体101と第2中間体102とは、それぞれの長さ方向が常に同じ方向となり、この長さ方向に相対変位可能に構成されている。
【0069】
減衰部103は、第1中間体101の上面に固定され第1中間体101の長さ方向に延びるラックギア1031と、第2中間体102に支持され回転しながらラックギア1031に沿って第1中間体101の長さ方向に移動可能なピニオンギア1032(回転部材)と、第2中間体102に取り付けられピニオンギア1032との間で互いの回転が伝達される油圧モータ1033と、を有している。
ピニオンギア1032は、回転軸線1032aが第2中間体102の幅方向に延びる向きでラックギア1031の上側に回転軸線1032aまわりに回転可能に配置されている。ピニオンギア1032は、第2中間体102の一対の側板部1022,1023の間に配置され、軸部が一対の側板部1022,1023に支持されている。
【0070】
油圧モータ1033は、第2中間体102の幅方向の一方の側方に、モータ回転部材1034の回転軸線1034aが第2中間体102の幅方向に延びる向きでピニオンギア1032と同軸に設けられている。油圧モータ1033のモータ回転部材1034の軸部は、ピニオンギア1032の軸部と互いの回転が伝達するように連結されている。
油圧モータ1033は、第1実施形態の油圧モータ4の連結管47および減衰弁48と同様の連結管および減衰弁を有している。
【0071】
ガイド部104は、リニアガイドで、第1中間体101の幅方向の両側面それぞれに固定され第1中間体101の長さ方向に延びるガイドレール1041と、第2中間体102の一対の側板部1022,1023の内側それぞれに固定されガイドレール1041に沿って移動可能なガイドブロック1042と、を有している。ガイド部104は、ガイドレール1041が固定された第1中間体101と、ガイドブロック1042が固定された第2中間体102とが第1中間体101の長さ方向のみに相対変位するように相対変位の方向を規制している。
【0072】
上述したように、第1中間体101と柱部材15とは、第4回転軸線1054まわりに水平面内において相対回転可能に構成され、第2中間体102と梁部材16とは、第5回転軸線1025まわりに水平面内において相対回転可能に構成され、第1中間体101と第2中間体102とは第1中間体101の長さ方向に相対変位可能に構成されている。これにより、柱部材15と梁部材16とは、水平方向の相対変位が生じた際に、この相対変位に対して、第1中間体101と柱部材15とが第4回転軸線1054まわりに相対回転し、第2中間体102と梁部材16とが第5回転軸線1025まわりに相対回転し、第1中間体101と第2中間体102とが第1中間体101の長さ方向に相対変位することで追従可能に構成されている。
【0073】
柱部材15と梁部材16とが水平方向に相対変位し、第1中間体101と第2中間体102とが第1中間体101の長さ方向に相対変位することにより、ピニオンギア1032がラックギア1031を第1中間体101の長さ方向に移動して回転し、その回転によって油圧モータ1033のモータ回転部材1034も回転する。このとき、モータ回転部材1034が回転することにより生じた減衰力が、ピニオンギア1032に伝達し、ピニオンギア1032の回転速度が低減される。これにより、ピニオンギア1032とラックギア1031との第1中間体101の長さ方向の相対変位も低減される。その結果、柱部材15と梁部材16との水平方向の相対変位が低減される。
【0074】
第4実施形態による減衰機構1Dによれば、対向して配置されない柱部材15と梁部材16との相対速度に比例した減衰力を得ることができる。
【0075】
以上、本発明による減衰機構の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の第1~第3実施形態による減衰機構1A~1Cは、上下方向に対向する上部構造体13と下部構造体14との間に設けられているが、水平方向や上下方向および水平方向に対して斜めとなる方向に対向する構造体の間に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1A~1D 減衰機構
3 回転部材
3b 回転軸線(第1回転軸線)
4,1033 油圧モータ
5 中間体
13 上部構造体(第1構造体)
14 下部構造体(第2構造体)
22a 回転軸線(第2回転軸線)
41 作動油
43a 回転軸線
44 第1ポート(ポート)
45 第2ポート(ポート)
47 連結管
48 減衰弁
33 第1ピニオンギア(第1回転部材)
63a 回転軸線(第1回転軸線)
64a 回転軸線
65 第1油圧モータ
73 第2ピニオンギア(第2回転部材)
73a 回転軸線(第3回転軸線)
74a 回転軸線
75 第2油圧モータ
101 第1中間体
102 第2中間体
651a 回転軸線
751a 回転軸線
1025 第5回転軸線
1054 第4回転軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9