(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】レンジフード
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20220902BHJP
【FI】
F24F7/06 101A
(21)【出願番号】P 2018105318
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2021-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】595039852
【氏名又は名称】株式会社渡辺製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】301071893
【氏名又は名称】株式会社ハーマン
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】久保田 光一
(72)【発明者】
【氏名】栗原 淳
(72)【発明者】
【氏名】木曽 隆
(72)【発明者】
【氏名】安平 幸司
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-181727(JP,A)
【文献】特開2003-240300(JP,A)
【文献】特開2011-169544(JP,A)
【文献】特開2016-176652(JP,A)
【文献】特開2001-116312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を吸引して外部に排出するレンジフードにおいて、
当該レンジフード内の空気の流路に設けられる排気用ファンと、前記排気用ファンの下方に配置される
環状のオイルトレーとを備え、
前記オイルトレーは、
該オイルトレーの直径方向で対向する箇所に位置する取っ手を有
しており、
前記オイルトレーの下面には、取付け台座が固定され、前記取っ手の両端部が、前記取付け台座に連結されている、
ことを特徴とするレンジフード。
【請求項2】
空気を吸引して外部に排出するレンジフードにおいて、
当該レンジフード内の空気の流路に設けられる排気用ファンと、前記排気用ファンの下方に配置される環状のオイルトレーとを備え、
前記オイルトレーは、該オイルトレーの直径方向で対向する箇所に位置する取っ手を有しており、
前記オイルトレーの下面には、座面が一体成形され、前記取っ手の両端部が、前記座面に溶接されている、
ことを特徴とす
るレンジフード。
【請求項3】
前記取っ手は、下方に向けて突出する形状を有する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のレンジフード。
【請求項4】
前記取っ手は、前記オイルトレーの中心に向けて突出する形状を有する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のレンジフード。
【請求項5】
前記取っ手は、環状の前記オイルトレーの中央に形成された空気の流路を横断する一対の把持部材を有し、前記一対の把持部材の中央部が、片手把持可能な間隔となるように近接形成されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のレンジフード。
【請求項6】
前記取っ手は、環状の前記オイルトレーの中央に形成された空気の流路を横断する一対の把持部材を有し、前記一対の把持部材が、片手把持可能な間隔で互いに平行に延びている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のレンジフード
【請求項7】
前記取っ手は、一対の把持部材を有し、前記一対の把持部材が、環状の前記オイルトレーの中央に形成された空気の流路を交差して横断している、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のレンジフード。
【請求項8】
前記オイルトレーは、底壁部と周壁部とを備え、前記取っ手は、前記底壁部より下方に位置する、
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載のレンジフード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンジフードに関し、更に詳しくは、例えばガスコンロ、電気コンロ、及び、電磁誘導感熱式クッキングヒータ(IHヒータ)などの加熱調理器具の上方に設置されて、調理中に発生する煙や湯気などの排気を吸い込み捕集して屋外に排出するためのレンジフードに関する。
【背景技術】
【0002】
レンジフードにおいては、排気に含まれる油分を捕集回収するために、例えば特許文献1に示されているように、縦軸型シロッコファンからなる排気用ファンの下方に環状のオイルトレーを脱着可能に配備したものが知られている。
【0003】
この特許文献1では、油分の捕集回収に用いられる上記オイルトレーの外周複数個所に鉤形の係合凹部を形成するとともに、フードケース側の固定部位に係合金具を設けている。オイルトレーを持ち上げて、その係合凹部を係合金具の係合突起に下方から係合させた後、オイルトレーを周方向に回動することで、オイルトレーを係合金具に落下不能に装着する。逆に、装着されているオイルトレーを周方向に可動させた後に下方に抜き外すようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにしてオイルトレーを脱着する場合、オイルトレーを周方向に回動操作することになるのであるが、上記従来構造では、オイルトレーにおける下面の対向位置に下向きに開放された一対の指掛け凹部を形成し、これら凹部に両手の指を掛けてオイルトレーを回動操作するようにしていた。
【0006】
しかし、排気通路中に配備されるオイルトレーには排気中の油分が付着しており、指掛け凹部に掛けた指が滑って操作しづらくなることがあった。
【0007】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、排気に含まれる油分をオイルトレーに貯留回収して、簡単に廃棄することができると共に、貯留回収した油液をこぼすことなく廃棄することができる取り扱い性に優れたレンジフードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、上記目的を達成するために、次のように構成している。
【0009】
(1)本発明のレンジフードは、空気を吸引して外部に排出するレンジフードにおいて、当該レンジフード内の空気の流路に設けられる排気用ファンと、前記排気用ファンの下方に配置される環状のオイルトレーとを備え、前記オイルトレーは、該オイルトレーの直径方向で対向する箇所に位置する取っ手を有しており、前記オイルトレーの下面には、取付け台座が固定され、前記取っ手の両端部が、前記取付け台座に連結されている。
【0010】
本発明によると、取っ手を把持することで、手を滑らすことなくオイルトレーを確実に回動操作することができる。
更に、環状のオイルトレーの直径方向で対向する箇所に位置する取っ手を、両手で確実に把持してオイルトレーを回動操作することができる。
【0011】
(2)本発明のレンジフードは、空気を吸引して外部に排出するレンジフードにおいて、当該レンジフード内の空気の流路に設けられる排気用ファンと、前記排気用ファンの下方に配置される環状のオイルトレーとを備え、前記オイルトレーは、該オイルトレーの直径方向で対向する箇所に位置する取っ手を有しており、前記オイルトレーの下面には、座面が一体成形され、前記取っ手の両端部が、前記座面に溶接されている。
【0012】
本発明によると、取っ手を把持することで、手を滑らすことなくオイルトレーを確実に回動操作することができる。
更に、環状のオイルトレーの直径方向で対向する箇所に位置する取っ手を、両手で確実に把持してオイルトレーを回動操作することができる。
【0013】
(3)本発明の他の実施態様では、前記取っ手は、下方に向けて突出する形状を有する。
【0014】
この実施態様によると、オイルトレーの対向位置に設けられた下方へ突出する取っ手を、両手で確実に把持してオイルトレーを回動操作することができると共に、取り外したオイルトレーを水平姿勢に保持して運び出すことが容易となり、油液が多量に溜まっていても、これをこぼすことなく取り扱うことができ、取り扱い性が向上する。
【0015】
(4)本発明の他の実施態様では、前記取っ手は、前記オイルトレーの中心に向けて突出する形状を有する。
【0016】
この実施態様によると、下方に向けて突出する形状の取っ手と同様に、取り扱い性が向上すると共に、下方に向けて突出する形状の取っ手に比べて、取っ手を含めたオイルトレー全体を嵩低くすることができ、パーツとしての梱包、保管、運搬に有利となる。
【0017】
(5)本発明の他の実施態様では、前記取っ手は、環状の前記オイルトレーの中央に形成された空気の流路を横断する一対の把持部材を有し、前記一対の把持部材の中央部が、片手把持可能な間隔となるように近接形成されている。
この実施態様によると、一対の把持部材における離れた端部近くの二箇所を両手で把持してオイルトレーを軽快に回動操作することができ、また、一対の把持部材の中央部を片方の手で把持し、他方の片手でオイルトレーの適所を支えることで、オイルトレーを安定した姿勢に保持して、係合位置合わせの目視確認などを確実に行うことができる。
【0018】
(6)本発明の更に他の実施態様では、前記取っ手は、環状の前記オイルトレーの中央に形成された空気の流路を横断する一対の把持部材を有し、前記一対の把持部材が、片手把持可能な間隔で互いに平行に延びている。
【0019】
この実施態様によると、一対の把持部材における端部近くの二箇所を両手で把持してオイルトレーを軽快に回動操作することができ、また、一対の把持部材の中央部を片方の手で把持し、他方の片手でオイルトレーの適所を支えることで、オイルトレーを安定した姿勢に保持して、係合位置合わせの目視確認などを確実に行うことができる
(7)本発明の他の実施態様では、前記取っ手は、一対の把持部材を有し、前記一対の把持部材が、環状の前記オイルトレーの中央に形成された空気の流路を交差して横断している。
【0020】
この実施態様によると、一対の把持部材における離れた端部近くの二箇所を両手で把持してオイルトレーを軽快に回動操作することができ、また、一対の把持部材の交差部分を片方の手で把持し、他方の片手でオイルトレーの適所を支えることで、オイルトレーを安定した姿勢に保持して、係合位置合わせの目視確認などを確実に行うことができる。
【0026】
(8)本発明の更に他の実施態様では、前記オイルトレーは、底壁部と周壁部とを備え、前記取っ手は、前記底壁部より下方に位置する。
【0027】
この実施態様によると、取っ手は、オイルトレーの底壁部より下方に位置しているので、把持し易く、オイルトレーを容易に回動操作することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明に係るレンジフードによれば、排気に含まれる油分をオイルトレーに貯留回収して、簡単に廃棄することができると共に、貯留回収した油液をこぼすことなく廃棄することができる。特に、オイルトレーを脱着する際、取っ手を把持して確実にオイルトレーを回動操作することができ、油分が付着して滑りやすくなっていても、脱着に手間取ったり、誤ってオイルトレーを落としたりするおそれもなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図2】レンジフードを下方から見た分解斜視図である。
【
図12】本発明の他の実施形態のオイルトレーを上方から見た斜視図である。
【
図15】係合連結部分における係合開始状態の縦断面図である。
【
図16】係合連結部分における回動途中状態の縦断面図である。
【
図17】係合連結部分における乗り越え通過状態の縦断面図である。
【
図18】係合連結部分における係合終了状態の縦断面図である。
【
図19】別実施形態のオイルトレーを下方から見た斜視図である。
【
図20】他の実施形態のオイルトレーを下方から見た斜視図である。
【
図21】更に他の実施形態のオイルトレーを下方から見た斜視図である。
【
図22】他の実施形態のオイルトレーを下方から見た斜視図である。
【
図23】更に他の実施形態のオイルトレーを下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0031】
図1は本発明の一実施形態のレンジフード1を下方から見た斜視図であり、
図2はその分解斜視図であり、
図3は要部を縦断した正面図である。
【0032】
本実施形態のレンジフード1は、図示しない台所等に設置されるコンロ等の加熱調理器具の上方に配設されるものであり、空気を吸引して外部に排出する。このレンジフード1は、排気用ファン2を内装した箱形の本体ハウジング3、本体ハウジング3の下端に連設されたフードケース4、フードケース4の内側に装着された内装パネル5、及び、整流板6、等が備えられている。
【0033】
本体ハウジング3の内部には、ファンケーシング7が固定配備されると共に、このファンケーシング7の天井部に一部入り込む状態で、ファン駆動用のモータ8が縦向きに固定配備され、モータ8から下向きに延出された回転軸9に、縦軸型のシロッコファンからなる排気用ファン2が着脱可能に連結されている。
【0034】
ファンケーシング7の底面には、排気用ファン2の下端吸気部に臨む吸込み口10が形成されると共に、ファンケーシング7は、本体ハウジング3の外方に延出された排気ダクト11に連通接続されている。
【0035】
前記フードケース4は、下面全体が開口された平面視矩形の浅い箱形に形成されており、
図2に示すように、その奥側側壁部の下端辺に備えられた左右の係止爪12に、内装パネル5の奥端辺を係止した上で、内装パネル5の前端隅部をフードケース4にネジ締め固定するようになっている。
【0036】
フードケース4における奥側壁部には、照明ランプ13や種々の電気機器が装備されており、これらが内装パネル5によって覆い隠されるようになっている。また、内装パネル5には、ガラス板あるいは透光樹脂板からなるランプカバー14が開閉可能に備えられており、パネル装着状態において照明ランプ13の前面がランプカバー14で覆われる。フードケース4における前面には、各種の操作及び設定を行う操作部15が装備され、また、フードケース4と内装パネル5との間に形成される空隙が配線スペースとなっている。
【0037】
内装パネル5の天井部には、吸込み口10から流下する油液を受け止め回収する油溜め部である環状の油溜まり16aを備えたオイルトレー16が脱着可能に装着されている。なお、オイルトレー16の取付け構造の詳細は後述する。
【0038】
整流板6は、フードケース4における下向き開口より一回り小さい略矩形の扁平板状に構成されている。整流板6は、
図2に示すように、その奥端部の左右に備えた孔付きの連結金具19を、内装パネル5の奥側に設けられた左右のフック20に係止し、その係止点を中心にして整流板6を持上げ揺動することで、整流板6における手前側の左右に突設した孔付きの連結金具21に、内装パネル5の左右に備えたロックピン22が付勢係合して、整流板6を内装パネル5に対して所定の装填位置に固定するように構成されている。
【0039】
整流板6が装填位置セットされた状態では、整流板6の外周端と内装パネル5の周壁部との間に環状の流路23が形成されている。また、内装パネル5の下面と整流板6の上面との間は、
図3に示すように、フード内通路24となっており、このフード内通路24を介して流路23と吸込み口10とが連通している。ここで、環状の流路23を狭幅に形成することで、整流板6に当たった排気が狭幅の流路23内ヘと高速で流入するようになり、これにより、ケーシング側方への排気の溢流が抑制されて、吸込み口10を経由する排気の捕集率が向上する。
【0040】
また、整流板6における奥端辺の中央部位には、ランプカバー14に対応する凹入部6aが形成され、照明ランプ13からの光が整流板6で遮られることなく前方下方に広く照射されるようになっている。
【0041】
図4は、
図3におけるAーA断面図であり、
図5は、排気用ファン2を下方から見た斜視図である。
【0042】
図3~
図5を参照して、空気の流路に設けられるシロッコファンからなる排気用ファン2は、扁平リング状に形成された上部支持板25と下部支持板26とに亘って多数のファンブレード27が周方向一定ピッチで支持されると共に、ファンブレード27の上下中間部位が、中間支持板28に貫通支持された構造となっている。
【0043】
中間支持板28の下面中央には、ファンボス29が連結固定されると共に、ファンボス29の中心に、モータ8の下向き回転軸9に下方から挿抜可能な連結ボス部29aが、中間支持板28を貫通して上向きに突設されている。ファンボス29は、周知のワンタッチ着脱手段によって、連結ボス部29aに挿入された回転軸9との連結及び解除が可能となっている。
【0044】
すなわち、回転軸9の上下中間箇所には、トルク伝達用の駆動ピン30が横向きに貫通止着されると共に、回転軸9の下部近くには、連結溝31が形成されている。排気用ファン2を持上げて、ファンボス29の連結ボス部29aを回転軸9に下方から挿嵌すると、連結ボス部29aの上端に十字状に形成されたV形の係合溝32に、回転軸9の駆動ピン31が係入するように回転軸9が追従回転する。回転軸9に連結部29aが所定深さまで挿嵌されて、駆動ピン30が係合溝32に正しく係合されると、ファンボス29に内蔵された図示されていないロック爪が自動的に回転軸9の連結溝31に付勢係合され、これによって、回転軸9と排気用ファン2とが一体回転可能に連結される。
【0045】
また、ファンボス29の外周部に備えられた解除ノブ33を、ボス中心側に押し込み操作すると、内蔵されているロック爪が係合付勢力に抗して係合解除方向に強制後退され、この状態で排気用ファン2を下方に引き下げることで回転軸9から抜き外すことができ、清掃時における排気用ファン2の着脱をワンタッチ操作で行えるようになっている。
【0046】
本実施形態においては、上記構成の排気用ファン2に排気中の油分を捕集する機能が与えられており、以下にその油捕集手段について説明する。
【0047】
すなわち、排気用ファン2の下半内部に、排気中の油滴を付着、あるいは、排気中の油分蒸気を結露させて捕集する油捕集部材35が装着固定されている。この油捕集部材35は、例えば、鉄や耐食性に優れるステンレス等の金属製の薄板からなり、筒状部としての円筒状の周部35aと円形の上底部35bとを備えた、下向きに開放された有底円筒状に形成されている。油捕集部材35は、
ファンブレード27群の内周に沿う周部35aと上底部35bのそれぞれに断面積の小さい多数の通気孔36a,36bが密に配列形成されている。通気孔の形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、矩形、十字形、あるいは、スリット状などであってもよい。油捕集部材35は、一様に通気孔群を打ち抜き形成したパンチングメタルや、線材を編んだ網体で構成してもよい。
【0048】
なお、上底部35bの通気孔36bが、中間支持板28に備えられた放射状アーム28aによって塞がれることがないように、上底部35bは中間支持板28から下方に少し離して配備されている。
【0049】
本実施形態に係るレンジフード1は以上にように構成されており、排気用ファン2の回転に伴って発生した負圧によって、整流板6の外周に形成された流路23から排気がフード内の吸込み口10に吸引され、排気用ファン2によって送り出された排気は、ファンケーシング7で案内されて排気ダクト11に導かれてゆく。
【0050】
排気が、油捕集部材35の通気孔36a,36b群を通過する際、排気に含まれる微細な油滴は、油捕集部材35の表面や通気孔36a,36bに付着し、また、排気中に含まれる油分の蒸気は、排気が通気孔36a,36b群を通過する時に発生する乱流に起因する気圧の変動によって結露し、油捕集部材35の表面や通気孔36a,36bに付着する。そして、このようにして油捕集部材35の表面や通気孔36a,36bに付着した油分は、複数の微細な油滴として分散することになるが、分散した複数の微細な油滴同士がその一部でも接触すると、油分の表面張力により合体して一滴あたりの体積が増大した大きな粒状に変形して、ファン停止中に自重により流下して、排気用ファン2の下方に配置されるオイルトレー16の下方に窪んだ環状の油溜まり16aに回収される。
【0051】
また、ファンケーシング7の内面に付着した油は、自重で流下してケーシング底面7aを経て吸込み口10側に導かれ、オイルトレー16の油溜まり16aに回収される。ここで、ファンケーシング7の底面7aは、吸込み口10に向けて先下がり傾斜されており、油は底面7aに滞留することなくオイルトレー16に流下しやすいものとなっている。
【0052】
なお、整流板6、内装パネル5、ファンケーシング7などの排気が触れる各部材の表面は、オイルガード塗装が施されて撥油性が付与されており、付着した油の流動が円滑に行われると共に、付着した油の拭取りを容易に行うことができるようになっている。また、オイルトレー16には親水性塗装が施されて、オイルトレー16を水に浸すことで付着している油が浮き上がって除去しやすくなっている。
【0053】
この実施形態では、オイルトレー16に貯留回収した油液を誤ってこぼすことなく廃棄できるように、オイルトレー16の取付け構造を次のようにしている。
【0054】
図6は、オイルトレー16を上方から見た斜視図であり、
図7は、オイルトレー16を下方から見た斜視図であり、
図8は、オイルトレー16の平面図であり、
図9は、オイルトレー16の底面図であり、
図10は、オイルトレー16の側面図であり、
図11は、
図10におけるBーB断面図である。
【0055】
オイルトレー16は、
図8及び
図9に示すように、平面視円形環状であって、下方へ窪んだ上記油溜まり16aが、円周方向に沿って環状に形成されている。
【0056】
この実施形態では、オイルトレー16を回動操作して脱着するために、底壁部と周壁部とを有するオイルトレー16の外周壁には、円周方向に沿って等ピッチで可動側係合部である係合凹部44が、複数個所(この例では3箇所)に形成されている。また、オイルトレー16の底壁部の下面には、直径方向で対向する位置に、オイルトレー脱着時に両手で把持するための取っ手50が、それぞれ取付けられている。
【0057】
取っ手50は、下方に向けて突出する形状を有している。この実施形態では、取っ手50は、下方へ向けて突出するアーチ形である。具体的には、取っ手50の両端部が、オイルトレー16の底壁部の下面に取付けられ、前記両端部から斜め下方へ延び、水平方向に屈曲されて形成されており、下方へ突出した中央部分は、オイルトレー16の下面に平行に延びている。したがって、取っ手50は、オイルトレー16の底壁部より下方に位置している。
【0058】
この実施形態の取っ手50は、次のようにしてオイルトレー16に取付けられている。すなわち、オイルトレー16の下面には、長短3つの取付け台座51が溶接固定され、この取付け台座51の扁平座面に、両取っ手50の両端部が連結固定されている。
【0059】
取っ手50自体は、金属帯板材を片手で握り込み可能な幅と高さを有し、上記のように、その中央部分が下方へ突出するアーチ形に屈曲形成したものである。この取っ手50の両端部を、取付け台座51にカシメピンを介してカシメ連結、あるいは、ネジ連結するようになっている。また、3つの取付け台座51の内の、周方向に長い取付け台座51の長手方向中央に、回動操作の際の位置合わせ用の三角矢印のマーク46が形成されている。
【0060】
このように、取っ手50を、取付け台座51にカシメピンやネジで連結するので、オイルトレー16自体に取っ手を取付けるための連結孔を形成する必要がない。従って、オイルトレー16に溜まった油が連結孔から漏れだすようなこともない。また、オイルトレー16における油溜まりの底面を、連結孔の無い滑らかなものにすることができ、油液の拭い取りや洗浄が容易となる。
【0061】
なお、取っ手は、下方へ向けて突出する形状を有していればよく、上記形状に限らず、例えば、円弧状や三角状に下方へ向けて突出する形状であってもよい。
【0062】
また、本発明の他の実施形態として、
図12及び
図13の斜視図に示すように、オイルトレー16の底面に、扁平な座面16bを一体成形し、この座面16bに、取っ手50を取付けるようにしてもよい。すなわち、取付け台座51を省略し、オイルトレー16の底面に、取っ手50を直接取付けてもよい。この場合、取っ手50を、オイルトレー16の扁平な座面16bに、例えばスポット溶接で取付けることによって、オイルトレー16自体に取っ手を取付けるための連結孔を形成する必要がない。
【0063】
上記オイルトレー16が、脱着可能に係合連結されるフード側のフードケース4には、
図3に示すように、オイルトレー16を装着するための円形の開口部を有する支持部材としての化粧板40が連結固定されている。この化粧板40の開口部にオイルトレー16が下方から挿入され、周方向に等ピッチで配備された複数箇所(この例では3箇所)の係合連結部分41において、オイルトレー16の上記係合凹部44を、化粧板40に固定された固定側係合部としての係合金具42に脱着可能に係合させるように構成されている。
【0064】
化粧板40にネジ止め固定される係合金具42は、板バネ材からなり、
図14に示すように、逆U字形に屈曲された内外方向に弾性変形可能な湾曲アーム部42aの遊端側に、係合突起43が内方(オイルトレー16に接近する方向)に向けて打出し成形されている。
【0065】
図15は、オイルトレー16と係合金具42との係合連結部分41における係合開始状態の縦断面図であり、
図16は、係合連結部分41における回動途中状態の縦断面図であり、
図17は、係合連結部分41における乗り越え通過状態の縦断面図であり、
図18は、係合連結部分41における係合終了状態の縦断面図である。
【0066】
係合金具42の湾曲アーム部42aの下端部は、
図15及び
図16に示すように、化粧板40の開口部内端縁に起立した周壁40aに当接支持されており、係合突起43が外方(オイルトレー16から離れる方向)へは弾性的に後退変位することができ、内方への変位が所定位置で当接阻止されるようになっている。
【0067】
オイルトレー16の係合凹部44は、
図6、
図10及び
図11等に示すように、上向きに開放された縦溝44aの下端部に、周方向に沿った横溝44bを連設した鉤形に形成されている。これによって、オイルトレー16を持上げて係合金具42の係合突起43を、縦溝44aに導入した後、オイルトレー16を、その環状中心を通る縦軸心周りに水平回動させて、すなわち、環状の油溜まり16aに沿って回動させて係合突起43を横溝44bに導くことで、オイルトレー16を落下不能に係合金具42に係合支持することができる。
【0068】
また、係合終了位置eである横溝44bの奥端位置より少し手前位置の溝底面には小隆起45が設けられている。この小隆起45は、横溝44bに沿って相対移動する係合突起43の先端移動軌跡に少し干渉する高さに設定されており、
図17に示すように、小隆起45との接触反力によって湾曲アーム部42aが外方に撓み変形することで、係合突起43が小隆起45を乗越え通過できるようになっている。
【0069】
従って、小突起45を乗越えて横溝44bの奥端にまで係合突起43を相対移動させた係合終了位置eでは、オイルトレー16は、小隆起45と係合突起43との干渉によって、連結解除方向への回動に乗越え抵抗が与えられることになり、オイルトレー16は不用意に逆回動して外れることなく安定保持される。
【0070】
ここで、
図11に示される縦溝44a及び横溝44bの深さd1は、
図15及び
図16に示すように、溝底と係合突起43の先端との間に僅かな間隙ができる大きさ、すなわち、係合突起43との係合代より大きく設定されると共に、横溝44bの小隆起45より奥側部位での深さd2は、前記深さd1よりも浅く設定されている。従って、係合突起43を縦溝44aに導く挿入行程、及び、係合突起43を横溝44bに沿って移動させる行程では、オイルトレー16を摺接抵抗少なく回動させることができる。また、小隆起45を乗り越えて係合突起43を横溝44bの奥端にまで移動させた係合終了位置eでは、
図18に示すように、係合突起43の先端が溝底面に弾性押圧された状態で接触することになり、これによって、オイルトレー16を水平方向にガタつきなく安定保持することができる。
【0071】
因みに、縦溝44a及び横溝44bの深さd1は、約3mmであり、横溝44bの小隆起45より奥側部位での深さd2は、約2.5mmである。また、縦溝44aの横幅は、約3.5mmであり、横溝44bの縦幅は、約2mmであって、周方向に沿う長さは、約30mmである。
【0072】
上記のように、オイルトレー16は、その外周に形成した係合凹部44に、固定側の係合突起43を周方向からスライド係合させて、所定位置に連結支持されるので、一対の取っ手50を両手で把持してオイルトレー16を周方向に回動操作することで簡単に取り外すことができる。従って、お手入れサインが出た際などには、整流板6を下方に揺動開放した上で、両取っ手50を両手で把持してオイルトレー16を逆向きに回動操作して取り外し、溜まった油を廃棄することができる。
【0073】
オイルトレー16を取り外す場合、係合突起43が小隆起45を乗り越え通過させるために、オイルトレー16を、少し力を入れて逆向きに回動操作することになり、小突起45を乗り越え通過させた係合突起43が縦溝44aまで移動した際に、勢い余って係合突起43を縦溝44aの溝壁に衝突させてしまい、その衝撃で油溜まり16aの油液が流動することがある。この場合、オイルトレー16の油溜まり16aは環状であるので、溜まった油液は、油溜まり16aにおいて周方向に流動するだけであり、油溜まり16から溢れ出ることはない。
【0074】
なお、オイルトレー16を取り付ける場合、下方からは係合突起43や係合凹部44が良く見えないので、係合連結部分41の係合操作を容易にするために、上記の位置合わせ用の三角矢印のマーク46等によって、以下のように位置合わせが行われる。
【0075】
つまり、
図7,
図9に示すように、オイルトレー16の下面には、
図10に示される係合凹部44における縦溝44aの形成位置である係合開始位置sに対応して上記の三角矢印のマーク46が設けられると共に、
図9に示すように、化粧板40の下面には、係合金具42の設置位置に対応した係合開始用の三角矢印のマーク47が設けられており、マーク46をマーク47に合わせて周方向での位置合わせをし、オイルトレー16を持上げることで、
図15に示すように、係合突起43を係合凹部44における縦溝44aに導くことができる。
【0076】
また、
図9に示すように、化粧板40の下面には、係合突起43が小隆起45を乗り越えて横溝44bの奥端、つまり、
図10に示される係合終了位置eに到達した時にマーク46に対向する係合終了用のマーク48が設けられており、オイルトレー16を取付け方向に回動操作する際に、係合突起43が小突起45を乗り越えた正しい取付け位置まで回動操作したことを目視確認することができるようになっている。これによって、係合突起43が小突起45に当接したことで取付けが完了したと勘違いしてしまうことが未然に回避されるようになっている。
【0077】
また、オイルトレー16における下面には、直径方向で対向する箇所に位置するように、上記のように、アーチ形に形成された一対の取っ手50が下向きに突設されているので、両取っ手50を両手でしっかり把持することで、手を滑らすことなく的確にオイルトレー16を回動操作することができる。また、取っ手50を介してしっかりとオイルトレー16を保持することで、油液の溜まったオイルトレー16から油液をこぼすことなく取り扱うことができ、取り扱い性が向上する。
【0078】
また、取っ手50を介してオイルトレー16を強く回動操作することができるので、係合金具42のバネ強度を大きくして、係合強度の高い係合連結を行うこともできる。
【0079】
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
【0080】
(1)オイルトレー16の脱着時に用いる取っ手50としては種々の形態を採用することができる。その一例を、
図19~
図23に示す。
【0081】
図19は、本発明の他の実施形態のオイルトレーを下方から見た斜視図である。
【0082】
オイルトレー16の直径方向で対向する位置には、オイルトレー16の中心側の空気の流路に向けて突出する形状の取っ手50が、それぞれ取付けられている。この取っ手50は、内方へ向けて突出するアーチ形である。この実施形態では、取っ手50を把持する位置が上記実施形態よりオイルトレー16の中心側に近づくため、オイルトレー16を把持して回動する際の力が少し小さくなるが、取っ手50が下方に大きく突出しない分、取っ手50を含めたオイルトレー16全体の嵩が低いものとなり、パーツとしての梱包、保管、運搬には有利である。
【0083】
図20は、本発明の更に他の実施形態のオイルトレーを下方から見た斜視図である。
【0084】
この実施形態では、取っ手50は、オイルトレー16の中心側の空気の流路を横断するように延びる一対の把持部材50a,50bを有している。この一対の把持部材50a,50bは、その中央部が、片手把持可能な間隔となるように近接形成されている。すなわち、一対の把持部材50a,50bは、その中央部が互いに近接するように、内方へ湾曲形成されている。
【0085】
この場合は、両取っ手50の対向接近部位を片手で把持することができると共に、他方の片手でオイルトレー16の適所を支えて、オイルトレー16の姿勢を安定保持して回動操作、上げ降ろし、位置合わせ、等を行うことができる。
【0086】
図21は、本発明の別実施形態のオイルトレーを下方から見た斜視図である。
【0087】
この実施形態では、取っ手50は、オイルトレー16の中心側の空気の流路を横断するように互いに平行に延びる一対の把持部材50a,50bを有している。すなわち、空気の流路を横断するように直線状の一対の把持部材50a,50bを互いに接近させて平行に架設した形態である。この場合、把持部材50a,50bの両端近くを両手で把持できると共に、両把持部材50a,50bの中央部を片手で把持することもできる。
【0088】
図22は、本発明の他の実施形態のオイルトレーを下方から見た斜視図である。
【0089】
この実施形態では、取っ手50は、一対の把持部材50a,50bを有し、この一対の把持部材50a,50bが、オイルトレー16の中心側の空気の流路を交差して横断している。すなわち、空気の流路を横断するように一対の把持部材50a,50bを十字形に架設した形態である。この場合も、把持部材50を両手、あるいは、片手で把持することができる。
【0090】
図23は、本発明の更に他の実施形態のオイルトレーを下方から見た斜視図である。
【0091】
オイルトレー16の直径方向で対向する位置に、扁平な舌片状の取っ手50を下方へ突設した形態であり、両取っ手50を指先で摘まむように把持して回動操作することになる。
【0092】
なお、舌片状の取っ手の向きは上記に限らず任意であり、屈曲させてもよい。
【0093】
上記
図19~
図23の各実施形態においても、上記
図12,
図13に示される実施形態と同様に、オイルトレー16の底面に、扁平な座面16bを一体成形し、この座面16bに、取っ手50をスポット溶接などで直接取付けるようにし、取付け台座51を省略してもよい
(2)取っ手50は、オイルトレー16を回動操作するに足る強度を有するとともに軽量であり、かつ、排気の流動を妨げない太さや幅であることが望ましく、単純な帯板材の他、コの字断面あるいはC形断面に成型した棒状材、パイプ材、等を利用することができる。
【0094】
(3)取っ手50に、付着した油を容易に拭い取り、あるいは、水洗い除去できる表面処理を施しておくとよい。
【符号の説明】
【0095】
1 レンジフード
2 排気用ファン
4 フードケース
16 オイルトレー
16a 油溜まり
50 取っ手
50a,50b 把持部材
51 取付け台座