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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】電動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/116 20060101AFI20220902BHJP
   F16H 1/16 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
H02K7/116
F16H1/16 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018109759
(22)【出願日】2018-06-07
(65)【公開番号】P2019213413
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】野間 秀樹
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-198290(JP,A)
【文献】特開2006-067695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/116
F16H 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する出力軸と、前記出力軸を回転可能に保持する軸受とを有するモータと、
前記出力軸に取り付けられたウォームと、
前記ウォームと噛み合うウォームホイールと、
前記ウォームホイールの軸線が延びる方向から見て、前記ウォームホイールに対して前記ウォームが近づく向きと離れる向きである接離方向に沿って前記出力軸を付勢する付勢部と
前記ウォームを覆う樹脂製のカバーと
を備え
前記付勢部は、前記カバーと一体構造である、電動アクチュエータ。
【請求項2】
前記付勢部は、前記接離方向において前記ウォームホイールから離れる第1の向きへ前記出力軸を付勢している、請求項1に記載の電動アクチュエータ。
【請求項3】
前記カバーは、前記出力軸に対して前記ウォームホイールとは反対側に隣接する規制部を備え、
前記付勢部は、前記出力軸を挟んで前記規制部と対向する位置に設けられ、
前記規制部及び前記付勢部は、前記カバーから前記出力軸に向けて突出している、請求項1又は2に記載の電動アクチュエータ。
【請求項4】
回転する出力軸と、前記出力軸を回転可能に保持する軸受とを有するモータと、
前記出力軸に取り付けられたウォームと、
前記ウォームと噛み合うウォームホイールと、
前記ウォームホイールの軸線が延びる方向から見て、前記ウォームホイールに対して前記ウォームが近づく向きと離れる向きである接離方向に沿って前記出力軸を付勢する付勢部と、
前記出力軸の先端に位置する配置部を有し、前記モータ、前記ウォーム及び前記ウォームホイールを収容するケースと、
前記ウォームを覆う樹脂製のカバーと
を備え、
前記付勢部は、前記配置部内に配置された板バネからなり、
前記カバーには、前記板バネの移動を規制する規制部が設けられている、電動アクチュエータ。
【請求項5】
前記付勢部は、
前記接離方向において前記ウォームホイールから離れる第1の向きへ前記出力軸を付勢する第1付勢部と、
前記接離方向において前記ウォームホイールに近づく第2の向きへ前記出力軸を付勢する第2付勢部と
を含む、請求項に記載の電動アクチュエータ。
【請求項6】
回転する出力軸と、前記出力軸を回転可能に保持する軸受とを有するモータと、
前記出力軸に取り付けられたウォームと、
前記ウォームと噛み合うウォームホイールと、
前記ウォームホイールの軸線が延びる方向から見て、前記ウォームホイールに対して前記ウォームが近づく向きと離れる向きである接離方向に沿って前記出力軸を付勢する付勢部と
を備え、
前記付勢部は、
前記出力軸の前記ウォームよりも先端側に配置され、前記接離方向において前記ウォームホイールから離れる第1の向きへ前記出力軸を付勢する第1付勢部と、
前記出力軸の前記ウォームよりも基端側に配置され、前記接離方向において前記ウォームホイールに近づく第2の向きへ前記出力軸を付勢する第2付勢部と
を含む、電動アクチュエータ。
【請求項7】
前記出力軸に隣接する配置部を有し、前記モータ、前記ウォーム及び前記ウォームホイールを収容するケースを備え、
前記付勢部は、前記配置部内に配置された板バネからなり、
前記板バネは、
前記出力軸に当接する第1部分と、
前記第1部分に対して前記出力軸から離れる向きに折り曲げられた第2部分と、
前記第2部分に対して前記第1部分と同じ向きに折り曲げられた第3部分と
を備え、
前記第3部分には、前記第1部分とは逆向きに突出し、前記配置部の内壁に係止する係止部が設けられている、請求項に記載の電動アクチュエータ。
【請求項8】
回転する出力軸と、前記出力軸を回転可能に保持する軸受とを有するモータと、
前記出力軸に取り付けられたウォームと、
前記ウォームと噛み合うウォームホイールと、
前記ウォームホイールの軸線が延びる方向から見て、前記ウォームホイールに対して前記ウォームが近づく向きと離れる向きである接離方向に沿って前記出力軸を付勢する付勢部と、
前記出力軸に隣接する配置部を有し、前記モータ、前記ウォーム及び前記ウォームホイールを収容するケースと
を備え、
前記付勢部は、前記配置部内に配置された板バネからなり、
前記板バネは、
前記出力軸に当接する第1部分と、
前記第1部分に対して前記出力軸から離れる向きに折り曲げられた第2部分と、
前記第2部分に対して前記第1部分と同じ向きに折り曲げられた第3部分と
を備え、
前記第3部分には、前記第1部分とは逆向きに突出し、前記配置部の内壁に係止する係止部が設けられている、電動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のステアリングシャフトをモータの動作でロック及びアンロックする、電動ステアリングロック装置が知られている。この電動ステアリングロック装置は、モータと、モータの出力軸に取り付けられたウォームと、ウォームと噛み合うウォームホイールとを含む、電動アクチュエータを備える。モータは出力軸の基端側を回転可能に保持する軸受を備え、出力軸と軸受の間には潤滑用のオイルが充填されている。
【0003】
この電動アクチュエータでは、ウォームとウォームホイールの噛み合いによって、ウォームホイールに対して出力軸が接離する方向(近づく向きと離れる向き)に移動(振れ回り)する。特許文献1には、出力軸の振れ回りを抑制する機構を備える電動アクチュエータが開示されている。この電動アクチュエータの機構は、モータの出力軸の先端に装着されたOリングを備え、このOリングがケースの軸受部に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-67694号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の機構では、モータの負荷(回転抵抗)を考慮すると、Oリングによって出力軸を過度に保持(拘束)できない。よって、モータの出力軸の振れ回りを効果的に抑制することはできない。
【0006】
また、電動アクチュエータは、経時劣化によってモータの軸受のオイルが無くなると(オイル抜け)、出力軸と軸受の衝突を緩和できなくなるため、モータの軸受で異音が発生する。特許文献1の機構では、このオイル抜けによるモータの軸受での異音の発生を抑制することはできない。
【0007】
本発明は、モータの出力軸の振れ回りと、オイル抜けによる異音の発生を効果的に抑制できる電動アクチュエータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、回転する出力軸と、前記出力軸を回転可能に保持する軸受とを有するモータと、前記出力軸に取り付けられたウォームと、前記ウォームと噛み合うウォームホイールと、前記ウォームホイールの軸線が延びる方向から見て、前記ウォームホイールに対して前記ウォームが近づく向きと離れる向きである接離方向に沿って前記出力軸を付勢する付勢部とを備える、電動アクチュエータを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電動アクチュエータでは、ウォームホイールに対する接離方向へ出力軸を付勢する付勢部によって、出力軸の振れ回りを効果的に抑制できる。また、付勢部によって、軸受の定位置に干渉するように出力軸を保持できるため、たとえオイル抜けが生じても、モータの出力軸と軸受の衝突による異音の発生を効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る電動アクチュエータを備える電動ステアリングロック装置の斜視図。
図2図1の電動ステアリングロック装置の断面図。
図3図1の電動ステアリングロック装置を一方から見た分解斜視図。
図4】ケース本体の斜視図。
図5図1の電動ステアリングロック装置の一部分解斜視図。
図6図8の底面の一部断面図。
図7図1の電動ステアリングロック装置の一部断面図。
図8図1の電動ステアリングロック装置の一部斜視図。
図9図8の分解斜視図。
図10】第2実施形態の電動ステアリングロック装置の一部分解斜視図。
図11図10の電動ステアリングロック装置の一部底面図。
図12図10の電動ステアリングロック装置の一部断面図。
図13図10の電動ステアリングロック装置の一部斜視図。
図14】第3実施形態の電動ステアリングロック装置の一部分解斜視図。
図15図14の電動ステアリングロック装置の一部底面図。
図16図14の電動ステアリングロック装置の一部断面図。
図17図14の電動ステアリングロック装置の一部斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1及び図2は、本発明の第1実施形態に係る電動アクチュエータ20を備える車両の電動ステアリングロック装置10を示す。図において、X方向は車幅方向に相当し、Y方向は車長方向に相当し、Z方向は車高方向に概ね相当する。以下の説明における「上向き」、「下向き」、「上部」、及び「下部」のような用語は、ステアリングロック装置10が図1及び図2に示す姿勢の場合を基準とする。つまり、これらの用語は、Z方向の矢印の向きを上向きとし、逆向きを下向きとして使用される。
【0013】
(ステアリングロック装置の概要)
ステアリングロック装置10のケース12は、図1に示すステアリングシャフト1を内部に収容した筒状のステアリングコラム(図示せず)に固定される。図1及び図2を参照すると、ステアリングロック装置10は、電動アクチュエータ20によって駆動されることで、進退移動するロックボルト(ロック部材)16を備える。
【0014】
ロックボルト16は、ステアリングコラムを貫通して進出したロック位置(図1に示す状態)と、ケース12内に退避したアンロック位置との間を直動する。ロック位置では、ロックボルト16の先端が、ステアリングシャフト1に固定されたカラー2の隣接する一対の歯部2aの間(係止溝)に配置される。ロック位置では、ロックボルト16の先端と歯部2aとの干渉により、ステアリングシャフト1の回転が阻止される。アンロック位置では、ロックボルト16の先端が一対の歯部2aの間から退避するため、ステアリングシャフト1の回転が許容される。
【0015】
図2及び図3を参照すると、ケース12は、ケース本体13とケースカバー14とを備える。本実施形態では、ケース本体13とケースカバー14はマグネシウム製又は亜鉛製である。但し、ケース本体13とケースカバー14は樹脂製であってもよい。ケース本体13とケースカバー14に設けられた孔13a,14aに連結ピン15(図1参照)を嵌め込むことで、ケース本体13にケースカバー14が固定される。
【0016】
図2及び図3に示すように、ケース12の内部、つまりケース本体13とケースカバー14とによって画定される空間には、電動アクチュエータ20と伝達機構40が収容されている。伝達機構40は、電動アクチュエータ20の回転出力、より具体的には後述するウォームホイール35の回転を、ロックボルト16の直動進退移動に変換する。
【0017】
ケース本体13には、電動アクチュエータ20と伝達機構40を配置するための構造が設けられている。具体的には、図4に示すように、ケース本体13の頂壁13bには隔壁13cが立設されており、この隔壁13cによって、モータ本体配置部13dと出力軸配置部13eとが画定されている。モータ本体配置部13dと出力軸配置部13eは空間的に連通している。出力軸配置部13eは、ウォーム配置部13fと軸受部配置部13gとを備える。また、ケース本体13の頂壁13bには、隔壁13cと隣接して円筒壁13hが立設されており、この円筒壁13hによって伝達機構配置部13iが画定されている。円筒壁13hは部分的に隔壁13cと一体化されており、伝達機構配置部13iはウォーム配置部13fと空間的に連通している。ケース本体13には、円筒壁13hの内部に位置するように、頂壁13bを貫通する挿通孔13jが設けられている。
【0018】
図2を参照すると、ケースカバー14には、円筒壁13hと対向する位置に、円形の浅い窪みからなる回転保持部14bが設けられている。回転保持部14bは、後述するスプリング44の一端を位置決めする位置決め突起14cを備える。
【0019】
(電動アクチュエータの概要)
図3、並びに図5から図9に示すように、電動アクチュエータ20は、回転型のモータ22、ウォーム24、軸受部27、及びウォームホイール35を備える。ウォームホイール35は、伝達機構40の一要素としても機能する。
【0020】
モータ22は、回転子と固定子が収容されたモータ本体22aと、モータ本体22aから突出する出力軸22bとを備える。図6を参照すると、モータ本体22aは、出力軸22bの基端側を回転可能に保持する軸受22cを備える。軸受22cは、出力軸22bを突出させる貫通孔22dを備える。貫通孔22dの直径R1は、出力軸22bの直径R2よりも大きい。この隙間には、出力軸22bと軸受22c(貫通孔22dの周壁)の衝突を緩和する潤滑剤として、オイルが充填されている。出力軸22bは回転子に機械的に連結されており、モータ22が給電(駆動)されると回転子と一緒に回転する。出力軸22bの両端はモータ本体22aから突出している。
【0021】
ウォーム24は出力軸22bの一端側に固定されている。ウォーム24は、出力軸22bが貫通している本体24aと、本体24aの外周面に形成された螺旋状の歯部24bとを備える。
【0022】
モータ本体22aはモータ本体配置部13dに配置され、出力軸22bは出力軸配置部13eに配置され、ウォーム24はウォーム配置部13fに配置されている。
【0023】
図7を参照すると、モータ22の出力軸22bのうち、ウォーム24から突出する先端部は、軸受部27に回転可能に保持されている。軸受部27は、出力軸配置部13e、ウォーム配置部13f、軸受部配置部13g、及び伝達機構配置部13iを覆うカバー26に設けられている。なお、軸受部27の具体的構成については、後で詳述する。
【0024】
カバー26は、ウォームホイール35のギア部35bを覆うことで、ギア部35bに塗布した潤滑剤(グリス)が周囲に飛散することを防ぐ。図8及び図9を参照すると、カバー26には、出力軸22bのウォーム24よりも基端側を支持する支持部26aと、ウォームホイール35の筒状部35cを貫通させる貫通孔26bとが設けられている。
【0025】
図2図8及び図9に示すように、ウォームホイール35は、概ね両端開口の円筒体である。本実施形態のウォームホイール35は樹脂製である。ウォームホイール35は、外周に斜歯35aが形成された円筒状のギア部35bと、ギア部35bから下向きに突出する筒状部35cとを備える。ギア部35bの斜歯35aと、ウォーム24の歯部24bとが噛み合っている。筒状部35cが、カバー26の貫通孔26bを貫通し、ケースカバー14の回転保持部14bに保持されることで、ウォームホイール35がケース12内に回転可能に保持されている。
【0026】
モータ22の出力軸22bが回転すると、出力軸22bに固定されたウォーム24が回転する。ウォーム24の歯部24bとウォームホイール35の斜歯35aとの噛み合いにより、出力軸22bの回転がウォームホイール35に伝達され、ウォームホイール35が軸線Aを中心として回転する。
【0027】
(伝達機構の概要)
図2及び図3に示すように、伝達機構40は、ウォームホイール35、及びスライダ42を備えている。
【0028】
ウォームホイール35の筒状部35cの内面には、螺旋状のネジ溝35dが形成されている。
【0029】
スライダ42は、ウォームホイール35内に配置された挿入部42aと、ウォームホイール35から上側に突出した保持部42cとを備える。
【0030】
挿入部42aは概ね円筒状で、下部の外周面にネジ溝35dに噛み合うネジ突起42bが形成されている。挿入部42a内に配置されたスプリング44によって、スライダ42が上向きに付勢されている。スプリング44の一端はケースカバー14の位置決め突起14cに位置決めされ、スプリング44の他端は挿入部42aの内壁に当接している。
【0031】
保持部42cは、上端を開放した受皿状で、内部にロックボルト16の基端側を収容保持する。径方向に貫通するように保持部42cに配置された連結ピン45をロックボルト16の連結孔16aに挿入することで、スライダ42にロックボルト16が機械的に連結されている。ロックボルト16の連結孔16aは上下方向に延びる長円からなる。これによりロックボルト16が、保持部42c(連結ピン45)に対して進退可能な構成となっている。保持部42c内に配置されたスプリング46によって、ロックボルト16が上向きに付勢されている。スプリング46の一端は保持部42cの内壁の下端に当接し、スプリング46の他端はロックボルト16の下端に当接している。
【0032】
スライダ42の上端には、ケース本体13に対するスライダ42の回転を規制する回り止め部42dが設けられている。回り止め部42dは、ケース本体13内に設けられたガイド溝13kに嵌め込まれている。ガイド溝13kは、ウォームホイール35の軸線Aに沿って上下方向に延びている。
【0033】
ウォームホイール35が回転すると、回転が規制されたスライダ42のネジ突起42bに対してネジ溝35dが相対的に回転する。これにより、ウォームホイール35の回転軸方向に対応する向きにスライダ42が直動する。この直動により、挿通孔13jに挿通されたロックボルト16が進退移動する。このように、スライダ42とそれに連結されたロックボルト16からなるアセンブリは、上下方向の直動のみが可能であり、ウォームホイール35とは異なり回転しない。
【0034】
ロックボルト16の進出時、ロックボルト16の先端がカラー2の一対の歯部2a間に位置しない場合、ロックボルト16の先端が1個の歯部2aの外端に当接するため、ロックボルト16の進出が途中で阻止される。この状態で、ステアリングシャフト1が回転され、ロックボルト16がカラー2の一対の歯部2a間に一致すると、ロックボルト16は、スプリング46の付勢力によって進出し、一対の歯部2a間に係止される。
【0035】
また、ロックボルト16の退避時、ステアリングシャフト1の据え切りトルクによって、歯部2aの側面がロックボルト16に強く押し当てられていることがある。この場合、その摩擦力によって、ロックボルト16を作動させる電動アクチュエータ20と伝達機構40に通常作動時よりも大きい過度な力が作用する。
【0036】
図2を参照すると、ケース12内には、制御基板50が配置されている。この制御基板50には、モータ22への給電、モータ22の作動制御、及びロックボルト16の進退位置の検出を含む種々の機能を実現するための、電気素子と電子素子が実装されている。また、制御基板50には、車両のECU(Electronic Control Unit)に電気的に接続するコネクタ51が配置されている。図3を参照すると、コネクタ51の接続口は、ケースカバー14の貫通孔14dを通して外部に露出される。
【0037】
(軸受部の概要)
図5から図9に示すように、軸受部27は、出力軸22bに向けて突出するように樹脂製のカバー26に一体に設けられている(一体構造)。軸受部27は、カバー26をケース本体13に配置することで、軸受部配置部13g内に配置され、モータ22の出力軸22bの先端を回転可能に保持する。
【0038】
軸受部27は、出力軸22bの移動を規制する第1から第3の規制部28~30と、出力軸22bを付勢する付勢部31とを備える。付勢部31は、ウォームホイール35に対する接離方向Bへ出力軸22bを付勢する。本実施形態の出力軸22bは、ケース12に対してX方向に延びるように配置されている。図6に示すように、接離方向Bとは、ウォームホイール35の軸線Aが延びる方向から見て、出力軸22bに交差する方向であり、本実施形態ではY方向に相当する。
【0039】
第1の規制部28は、YZ平面に沿って延びる四角形状の板体からなる。図6を参照すると、規制部28は、出力軸22bの先端に対して、出力軸22bの軸方向(X方向)に対向する位置に設けられている。規制部28と出力軸22bの先端との間には、定められた間隔I1が設定されている。この間隔I1は、モータ22の駆動によって出力軸22bにスラスト方向の力が作用した際、X方向における出力軸22bの過度の移動を阻止可能な距離に設定されている。規制部28のX方向の厚みは、出力軸22bが当接(衝突)しても変形しない寸法に設定されている。つまり、規制部28は、出力軸22bのX方向移動を規制可能な剛性を有する。
【0040】
第2の規制部29は、XZ平面に沿って延びる四角形状の板体からなる。この規制部29は、接離方向Bにおいて、出力軸22bに対してウォームホイール35とは反対側に隣接する位置に設けられている。規制部29のZ方向の全高は、出力軸22bの直径R2よりも大きく、第1の規制部28のZ方向の全高よりも低い図8参照)図6を参照すると、規制部29のX方向の一端は第1の規制部28に連続し、規制部29のX方向の他端はウォーム24の端に定められた間隔I2をあけて対向している。この間隔I2は、第1の規制部28と出力軸22bの間隔I1よりも大きく設定されている。つまり、出力軸22bがX方向に移動しても、規制部29にはウォーム24が干渉しないように構成されている。
【0041】
第2の規制部29のY方向の厚みは、モータ22の駆動によって出力軸22bにY方向の力が作用した際、出力軸22bがウォームホイール35から離れる向き(第1の向き)B1へ移動して押圧しても変形しない寸法に設定されている。つまり、規制部29は、出力軸22bのY方向移動を阻止(規制)可能な剛性を有する。規制部29と出力軸22bとの間には、定められた間隔が設定されている。この間隔は、モータ22の駆動によって出力軸22bにラジアル方向の過度な力が作用した際、Y方向における出力軸22bの過度の移動を阻止可能な距離に設定されている。つまり、出力軸22bは、ラジアル方向に過度な力が作用しない限り、規制部29に当接しない。出力軸22bが当接する規制部29の支持面29aは、凹凸が無い平坦面であり、僅かに撓んだ出力軸22bの外周面に対して線接触する。
【0042】
第3の規制部30は、XY平面に沿って延び、カバー26から膨出した平面視L字形状の膨出部からなる。図6を参照すると、規制部30の第1辺には第1の規制部28が連続し、規制部30の第2辺には第2の規制部29が連続している。図7を参照すると、規制部30のZ方向の厚みは、出力軸22bが当接(衝突)した際に変形することなく、出力軸22bに対して定められた間隔をあけて位置する寸法に設定されている。この間隔は、モータ22の駆動によって出力軸22bにラジアル方向に過度な力が作用した際、Z方向における出力軸22bの過度の移動を阻止可能な距離に設定されている。つまり、モータ22の出力軸22bは、通常作動時には第2の規制部29及び第3の規制部30とは当接することがないため、出力軸22bの回転抵抗を増やすことがない。
【0043】
付勢部31は、XZ平面に沿って延びる四角形状の板体からなる。付勢部31は、出力軸22bのウォームホイール35側隣接する位置に設けられている。付勢部31は、接離方向Bにおいて出力軸22bを挟んで第2の規制部29と対向し、この規制部29に対して平行に配置されている。付勢部31は、カバー26から突出し、第3の規制部30に対してX方向及びY方向に隙間をあけて位置している。
【0044】
出力軸22bに当接する付勢部31の当接面31aは、凹凸が無い平坦面である。図6に破線で示すように、当接面31aは、出力軸22bの非保持状態で、第2の規制部29の支持面29aに対して定められた間隔I3をあけて位置している。この間隔I3は、出力軸22bの直径R2よりも小さい。これにより付勢部31は、第2の規制部29との間に出力軸22bが配置されることで、ウォームホイール35に近づく向き(第2の向き)B2へ変形し、弾性的な復元力によって、ウォームホイール35から離れる向きB1へ出力軸22bを付勢する。ここでの変形とは、カバー26側に位置する付勢部31の基部が撓むことを意味し、付勢部31全体としては、出力軸22bに対して線接触した平板状を維持する。
【0045】
付勢部31のY方向の厚みは、規制部28~30の厚みよりも薄く、接離方向Bへの弾性的な変形が可能な寸法である。この厚みの設定によって付勢部31による付勢力を調整できる。本実施形態では、出力軸22bの回転を阻害しない範囲で、出力軸22bが軸受22cの定位置に干渉し、その干渉が維持されるように出力軸22bを保持可能な付勢力に設定されている。
【0046】
付勢部31による出力軸22bの保持位置は、モータ22の出力軸22bが軸受22cの定位置に干渉する位置である。また、保持位置は、ウォーム24の歯部24bの先端とウォームホイール35のギア部35bとの間、及びウォームホイール35の斜歯35aの先端とウォーム24の本体24aとの間に、所定の隙間が形成される位置に設定されている。この隙間は、ウォーム24の歯部24bとウォームホイール35の斜歯35aとの噛み合いを確保できる範囲内に設定される。
【0047】
(軸受部の機能)
軸受部27は、ウォーム24を含むモータ22と伝達機構40を配置したケース本体13に対して、カバー26を配置することで、軸受部配置部13g内に配置される。このカバー26の配置によって、軸受部27がケース本体13に固定され、第2の規制部29と付勢部31の間に出力軸22bが保持される。この際、付勢部31がウォームホイール35に近づく向きB2へ撓み、この撓みによって出力軸22bが、ウォームホイール35から離れる向きB1へ弾性的に付勢される。これにより、出力軸22bが軸受22cの定位置に干渉した状態で保持される。また、ウォーム24の歯部24bとウォームホイール35の斜歯35aとの間に、噛み合いを確保できる範囲で所定の隙間が確保される。
【0048】
図7を参照すると、出力軸22bの径方向の位置は、付勢部31によって第1の向きB1へ付勢されているだけで、完全には固定されていない。また、図6を参照すると、モータ22の出力軸22bの軸方向の位置は、完全には固定されていない。つまり、出力軸22bの径方向と軸方向の位置には、実質的に不可避な遊びがある。
【0049】
モータ22が駆動され、ウォーム24の歯部24bとウォームホイール35の斜歯35aとの噛み合いによって、出力軸22bが接離方向Bに移動(振れ回り)すると、出力軸22bが軸受22cに衝突し、異音が発生することがある。但し、接離方向Bにおける出力軸22bの両側に、弾性的な変形が不可能な規制部を設ければ、出力軸22bの振れ回りと、それに起因する異音の発生を抑制できる。しかし、この場合、出力軸22bに対して接離方向Bに作用する力によって、出力軸22bの回転抵抗が過度になるため、モータ22に加わる負荷が増大する。
【0050】
これ対して本実施形態の電動アクチュエータ20では、付勢部31によって出力軸22bの先端を付勢することで、ウォームホイール35に近づく向きB2への出力軸22bの移動を所定範囲で許容しつつ、抑制している。よって、ウォーム24とウォームホイール35の噛み合いを確保したうえで、出力軸22bの接離方向Bの振れ回りを効果的に抑制できる。また、第2の規制部29と付勢部30によって、軸受22cに干渉する定められた位置に出力軸22bを保持(維持)できる。その結果、出力軸22bと軸受22cの干渉と離間の繰り返しによる衝突音を低減できる。これにより、たとえ軸受22cにオイル抜けが生じたとしても、出力軸22bと軸受22cの衝突による異音の発生を効果的に抑制できる。
【0051】
付勢部31によって出力軸22bの先端をウォームホイール35から離れる向きB1へ付勢しているため、ウォーム24の歯部24bとウォームホイール35の斜歯35aとの間に所定の隙間を確保できる。よって、ウォーム24とウォームホイール35との摩擦抵抗を軽減できるため、ウォーム24を円滑に回転できる。その結果、モータ22に加わる負荷を効果的に軽減できる。
【0052】
モータ22の駆動時、付勢部31と対向する第2の規制部29によって、ウォームホイール35からの反力による出力軸22bの傾きを規制できる。つまり、出力軸22bの傾きが第2の規制部29によって規制され、出力軸22bの振れ回りが付勢部31によって抑制される。また、第1の規制部28によって出力軸22bのX方向の移動を規制でき、第3の規制部30によって出力軸22bのZ方向の移動を規制できる。よって、出力軸22bを定められた位置に確実に保持できるため、軸受22cにオイル抜けが生じたとしても、出力軸22bと軸受22cの衝突による異音の発生を効果的に抑制できる。
【0053】
1つのカバー26に第1から第3の規制部28~30と付勢部31が一体に設けられているため、電動アクチュエータ20を構成する部品点数を低減できる。また、カバー26の取り付けによって軸受部27及び付勢部31を簡単に定められた位置に配置できるため、電動アクチュエータ20を備える電動ステアリングロック装置10の組立性を向上できる。
【0054】
(第2実施形態)
図10及び図11は第2実施形態の電動アクチュエータ20を備える電動ステアリングロック装置10を示す。この第2実施形態では、軸受部27は、カバー26とは別体の付勢部材(付勢部)55を備え、この付勢部材55によって、モータ22の出力軸22bの先端を接離方向Bへ付勢するようにした点で、第1実施形態と相違する。
【0055】
ケース本体13には、第1実施形態と同様に、軸受部配置部(配置部)13gが形成されている。図12を参照すると、軸受部配置部13gは、Z方向上向きに窪む凹溝からなる。図11を参照すると、X方向における軸受部配置部13gの全長は、付勢部材55と第1の規制部28を配置可能な寸法である。
【0056】
図10を参照すると、カバー26には、第1の規制部28と第3の規制部30とが設けられ、第1実施形態に示す第2の規制部29は設けられていない。図11を参照すると、第1の規制部28は、出力軸22bの先端に対してX方向に対向し、Y方向における軸受部配置部13gの一端から他端にかけて延びる寸法である。図12を参照すると、第3の規制部30は、付勢部材55のZ方向下側に位置する。第1の規制部28と第3の規制部30は、別体の付勢部材55の脱落を防ぐ要素としても機能する。
【0057】
図11から図13に示すように、付勢部材55は、第1の規制部28と隣接するように、軸受部配置部13gのモータ本体22a側に配置されている。付勢部材55は金属製の板バネからなり、ウォームホイール35から離れる向きB1へ出力軸22bを付勢する第1付勢部56Aと、ウォームホイール35に近づく向きB2へ出力軸22bを付勢する第2付勢部56Bとを備える。これらは線対称な形状であり、軸受部配置部13gへの配置によって、一方が第1付勢部56Aを構成し、他方が第2付勢部56Bを構成する。
【0058】
図12及び図13に示すように、付勢部材55は、軸受部配置部13gの底面13mに沿って配置された連続部55aと、連続部55aの両側に連続した一対の側部55bとを備える。一対の側部55bは、連続部55aに対して同じ向きに折り曲げられており、軸受部配置部13gの一対の側面13nに沿って配置されている。
【0059】
一対の付勢部56A,56Bは、付勢部材55に形成された傾斜部55c、保持部55d、及びテーパ部55eによって、それぞれ構成されている。付勢部56A,56Bの付勢力は、付勢部材55の形成材料と厚みの設定によって、出力軸22bの回転を阻害しない範囲で、出力軸22bを定められた位置に保持可能な大きさに設定されている。
【0060】
傾斜部55cは、側部55bの先端に連続している。一対の傾斜部55cは、連続部55aから離れるに従って次第に近づくように、側部55bに対してY方向内向きに屈曲されている。側部55bと傾斜部55cの間の屈曲部分を支点として傾斜部55cがY方向外向きに湾曲することで、付勢部56A,56Bに弾性的な付勢力が生じる。
【0061】
保持部55dは、傾斜部55cの先端に連続し、接離方向B(Y方向)に対して直交方向に延びるように、傾斜部55cに対して屈曲されている。つまり、一対の保持部55dは、平行に位置するようにXZ平面に沿って延びている。保持部55dは出力軸22bに対して線接触し、一対の保持部55d間に出力軸22bが保持されている。出力軸22bを未保持の状態では、一対の保持部55dの間隔は、出力軸22bの直径よりも小さい。Z方向における保持部55dの全長は、出力軸22bの直径よりも大きく、ケース本体13に配置した出力軸22bを保持可能な寸法で形成されている。
【0062】
また、図12に示すように、付勢部材55の連続部55aが軸受部配置部13gの底面13mに接触している状態で、保持部55dの出力軸22bに接触している位置から保持部55dと傾斜部55cの間の屈曲部分までの長さL1は、テーパ部55eの先端から第3の規制部30の上面までの長さL2よりも長く形成されている。これにより、例えば、付勢部材55が軸受部配置部13g内で下側に位置がずれても、第3の規制部30がテーパ部55eの先端に当接することで、そのずれを規制でき、付勢部材55がずれた状態でも、保持部55dにて出力軸22bを保持することができる。
【0063】
テーパ部55eは、保持部55dの先端に連続している。一対のテーパ部55eは、連続部55aから離れるに従って次第に離れるように、保持部55dに対してY方向外向きに屈曲されている。テーパ部55eの外側から付勢部56A,56Bに向けて出力軸22bを押し込むことで、テーパ部55eの傾斜に従って一対の保持部55dの間隔が広げられる。
【0064】
(軸受部の機能)
ケース本体13に対して、軸受部配置部13gに付勢部材55を配置した状態で、ウォーム24を含むモータ22と伝達機構40を配置した後、カバー26を配置することで軸受部配置部13g内に規制部28,30が配置される。これにより、ケース本体13に対して付勢部材55が離脱不可能に固定され、一対の付勢部56A,56B間に出力軸22bが保持される。付勢部56A,56Bが接離方向Bにおいて出力軸22bから離れる向きにそれぞれ撓み、この撓みによって出力軸22bがウォームホイール35に対して離れる向きB1と近づく向きB2へ弾性的に付勢される。
【0065】
ここで、軸受部配置部13gへの付勢部材55の組み付けと、モータ本体配置部13dへのモータ22の組み付けには、避けられない誤差が生じる。よって、モータ22の出力軸22bは、Y方向における軸受部配置部13gの中央を通るように設計しても、付勢部材55の一対の付勢部56A,56B間の中央には位置しない。つまり、出力軸22bに対する付勢部材55の組付位置は、ウォームホイール35から離れる向きB1又は近づく向きB2にずれる。その結果、付勢部56A,56Bによる付勢力は同じであるが、位置ずれした向きへの付勢力が強くなるため、その向きに応じて出力軸22bが軸受22cに干渉し、その干渉状態が付勢部56A,56Bによって維持される。また、ウォーム24の歯部24bとウォームホイール35の斜歯35aとの間に、噛み合いを確保できる範囲で所定の隙間が確保される。
【0066】
モータ22が駆動され、ウォーム24の歯部24bとウォームホイール35の斜歯35aとの噛み合いによって、出力軸22bに対して接離方向Bに移動する力が作用すると、付勢部56A,56Bによって出力軸22bの移動を所定範囲で許容しつつ抑制する。つまり、第1付勢部56Aによって、ウォームホイール35に近づく向きB2への出力軸22bの移動を抑制し、第2付勢部56Bによって、ウォームホイール35から離れる向きB1への出力軸22bの移動を抑制する。よって、ウォーム24とウォームホイール35の噛み合いを確保したうえで、出力軸22bの接離方向Bの振れ回りを効果的に抑制できる。また、付勢部56A又は56Bによって、出力軸22bを軸受22cに干渉する位置に保持できる。その結果、たとえ軸受22cにオイル抜けが生じたとしても、出力軸22bと軸受22cの衝突による異音の発生を効果的に抑制できる。
【0067】
また、第2実施形態では、一対の付勢部56A,56Bによって、ウォームホイール35に対してウォーム24を、出力軸22bを介して定められた位置に保持できる。よって、ウォーム24とウォームホイール35との摩擦抵抗を軽減できるため、ウォーム24を円滑に回転できる。その結果、モータ22に加わる負荷を効果的に軽減できる。
【0068】
ケース本体13にカバー26を取り付けることによって、第1の規制部28と第3の規制部30によって軸受部配置部13gからの付勢部材55の脱落を阻止できる。よって、別体の付勢部材55を用いることによる意図しない不具合の発生を防止できる。
【0069】
(第3実施形態)
図14及び図15は第3実施形態の電動アクチュエータ20を備える電動ステアリングロック装置10を示す。この第3実施形態では、軸受部27は、カバー26とは別体に形成された一対の付勢部材(付勢部)60A,60Bを備え、これらの付勢部材60A,60Bによって、モータ22の出力軸22bを接離方向Bへ付勢するようにした点で、第1実施形態と相違する。
【0070】
ケース本体13には、出力軸22bのウォーム24よりも先端側に、第1実施形態と同様の軸受部配置部13gが形成されている。この軸受部配置部13gは、出力軸22bの先端側かつウォームホイール35側に第1付勢部材配置部(配置部)13oを備える。また、第3実施形態のケース本体13は、出力軸22bのウォーム24よりも基端側、つまりモータ本体22a側に第2付勢部材配置部(配置部)13pを備える。この第2付勢部材配置部13pは、出力軸22bに対してウォームホイール35とは反対側に隣接している。図16を参照すると、第1付勢部材配置部13oは、Z方向上向きに窪む凹溝からなる。この第1付勢部材配置部13oと同様に、第2付勢部材配置部13pもZ方向上向きに窪む凹溝からなる。
【0071】
図14を参照すると、カバー26は、第1実施形態と同様に、出力軸22bの先端の移動を規制する第1から第3の規制部28~30を備える。第1から第3の規制部28~30は、第1付勢部材60Aと協働して1つの軸受部27を構成する。また、第1の規制部28と第3の規制部30は、別体の第1付勢部材60Aの脱落を防ぐ要素としても機能する。また、カバー26が備える支持部26aは、別体の第2付勢部材60Bの脱落を防ぐ要素としても機能する。
【0072】
図14から図16に示すように、第1付勢部材(第1付勢部)60Aは、出力軸22bのウォーム24よりも先端側に位置する第1付勢部材配置部13oに配置されている。第2付勢部材(第2付勢部)60Bは、出力軸22bのウォーム24よりも基端側に位置する第2付勢部材配置部13pに配置されている。個々の付勢部材60A,60Bは金属製の板バネからなる。第1付勢部材60Aは、ウォームホイール35から離れる向きB1へ出力軸22bを付勢し、第2付勢部材60Bは、ウォームホイール35に近づく向きB2へ出力軸22bを付勢する。これらは同一形状であり、第1付勢部材配置部13oに配置した一方が第1付勢部材60Aを構成し、第2付勢部材配置部13pに配置した他方が第2付勢部材60Bを構成する。
【0073】
図16及び図17に示すように、付勢部材60A,60Bは、当接部(第1部分)60a、連続部(第2部分)60b、及び側部(第3部分)60cを備える。当接部60aと連続部60bの間の屈曲部分を支点として当接部60aが湾曲することで、当接部60aに弾性的な付勢力が生じる。付勢力は、付勢部材60A,60Bの形成材料と厚みの設定によって調整される。なお、第2付勢部材60Bの組付状態は、図16に示す第1付勢部材60Aの組付状態と同様である。
【0074】
当接部60aは、概ねXZ平面に沿って配置され、出力軸22bに線接触する。当接部60aは、第2の規制部29との間に出力軸22bが配置されることで、出力軸22bから離れる向きに湾曲している。つまり、当接部60aと第2の規制部29の間隔は、出力軸22bを未保持の状態では、出力軸22bの直径よりも小さい。当接部60aの下端には、出力軸22bから離れる向きに屈曲されたテーパ部60dが形成されている。
【0075】
連続部60bは、当接部60aの上端に連続し、当接部60aに対して出力軸22bから離れる向きに折り曲げられている。連続部60bは、付勢部材配置部13o,13pの底面13qに沿って配置されている。
【0076】
側部60cは、連続部60bの先端に連続し、連続部60bに対して当接部60aと同じ向きに折り曲げられている。側部60cは、付勢部材配置部13o,13pの側面13rに沿って配置されている。側部60cには、当接部60aとは逆向きに突出し、付勢部材配置部13o,13pの側面(内壁)13rに係止する係止部60eが設けられている。係止部60eは、側部60cに形成した概ねU字状のスリットの内部を、外向きに屈曲させた切起構造である。係止部60eは、下端が側部60cから最も離れて位置するように、傾斜している。
【0077】
(軸受部の機能)
ケース本体13に対して、付勢部材配置部13o,13pに付勢部材60A,60Bをそれぞれ配置した状態で、ウォーム24を含むモータ22と伝達機構40を配置し、その後、カバー26を配置することで軸受部配置部13g内に規制部28~30が配置される。付勢部材60A,60Bが接離方向Bにおいて出力軸22bから離れる向きにそれぞれ撓み、この撓みによって出力軸22bがウォームホイール35に対して離れる向きB1と近づく向きB2へ弾性的に付勢される。付勢部材60A,60Bによる付勢力は同じであるが、出力軸22bに作用する力のモーメントは、出力軸22bの先端側を付勢する付勢部材60Aの方が大きい。これにより、出力軸22bが軸受22cの定位置に干渉した状態で保持される。また、ウォーム24の歯部24bとウォームホイール35の斜歯35aとの間に、噛み合いを確保できる範囲で所定の隙間が確保される。
【0078】
モータ22が駆動され、ウォーム24の歯部24bとウォームホイール35の斜歯35aとの噛み合いによって、出力軸22bに対して接離方向Bに移動する力が作用すると、付勢部材60A,60Bによって出力軸22bの移動を所定範囲で許容しつつ抑制する。つまり、第1付勢部材60Aによって、ウォームホイール35に近づく向きB2への出力軸22bの移動を抑制し、第2付勢部材60Bによって、ウォームホイール35から離れる向きB1への出力軸22bの移動を抑制する。よって、ウォーム24とウォームホイール35の噛み合いを確保したうえで、出力軸22bの接離方向Bの振れ回りを効果的に抑制できる。また、付勢部材60A,60Bによって、出力軸22bを軸受22cの定位置に干渉した状態に保持できる。その結果、出力軸22bと軸受22cの干渉と離間の繰り返しによる衝突音を低減できる。これにより、たとえ軸受22cにオイル抜けが生じたとしても、出力軸22bと軸受22cの衝突による異音の発生を効果的に抑制できる。
【0079】
第3実施形態では、出力軸22bに対して、第1付勢部材60Aが先端側に配置され、第2付勢部材60Bが基端側に配置されているため、出力軸22bに作用する力のモーメントは先端側が強くなる。よって、ウォームホイール35から離れる向きB1へ出力軸22bを付勢した状態に保持でき、ウォーム24とウォームホイール35との摩擦抵抗を軽減できるため、ウォーム24を円滑に回転できる。その結果、モータ22に加わる負荷を効果的に軽減できる。
【0080】
また、第3実施形態の付勢部材60A,60Bは、側部60cから突出する係止部60eを備えるため、付勢部材配置部13o,13pからの付勢部材60A,60Bの脱落を効果的に阻止できる。よって、別体の付勢部材60A,60Bを設けることによる意図しない不具合の発生を防止できる。
【0081】
なお、本発明の電動アクチュエータ20は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0082】
例えば、第2実施形態に示す付勢部56A,56B、及び第3実施形態に示す付勢部材60A,60B(当接部60a)を、第1実施形態の付勢部31のように、カバー26に一体に設けてもよい。また、第1実施形態から第3実施形態に示す第1から第3の規制部28~30は設けなくてもよし、必要に応じていずれかのみを設けてもよい。
【0083】
車両の電動ステアリングロック装置10を例に本発明を説明したが、本発明の電動アクチュエータ20は電動ステアリングロック装置10以外にも適用できる。
【符号の説明】
【0084】
1…ステアリングシャフト
2…カラー
2a…歯部
10…ステアリングロック装置
12…ケース
13…ケース本体
13a…孔
13b…頂壁
13c…隔壁
13d…モータ本体配置部
13e…出力軸配置部
13f…ウォーム配置部
13g…軸受部配置部
13h…円筒壁
13i…伝達機構配置部
13j…挿通孔
13k…ガイド溝
13m…底面
13n…側面
13o…第1付勢部材配置部
13p…第2付勢部材配置部
13q…底面
13r…側面
14…ケースカバー
14a…孔
14b…回転保持部
14c…位置決め突起
14d…貫通孔
15…連結ピン
16…ロックボルト
16a…連結孔
20…電動アクチュエータ
22…モータ
22a…モータ本体
22b…出力軸
22c…軸受
22d…貫通孔
24…ウォーム
24a…本体
24b…歯部
26…カバー
26a…支持部
26b…貫通孔
27…軸受部
28…第1規制部
29…第2規制部
29a…支持面
30…第3規制部
31…付勢部
31a…当接面
35…ウォームホイール
35a…斜歯
35b…ギア部
35c…筒状部
35d…ネジ溝
40…伝達機構
42…スライダ
42a…挿入部
42b…ネジ突起
42c…保持部
42d…回り止め部
44…スプリング
45…連結ピン
46…スプリング
50…制御基板
51…コネクタ
55…付勢部材
55a…連続部
55b…側部
55c…傾斜部
55d…保持部
55e…テーパ部
56A…第1付勢部
56B…第2付勢部
60A…第1付勢部材(第1付勢部)
60B…第2付勢部材(第2付勢部)
60a…当接部
60b…連続部
60c…側部
60d…テーパ部
60e…係止部
A…ウォームホイールの軸線
B…接離方向
B1…離れる向き(第1の向き)
B2…近づく向き(第2の向き)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17