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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】液体水素製造設備
(51)【国際特許分類】
   F25J 1/00 20060101AFI20220902BHJP
   C01B 3/00 20060101ALI20220902BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20220902BHJP
   F25J 3/08 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
F25J1/00 C
C01B3/00 Z
C01B3/56 Z
F25J3/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018148801
(22)【出願日】2018-08-07
(65)【公開番号】P2020024067
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 吉洋
(72)【発明者】
【氏名】山下 誠二
【審査官】小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-53192(JP,A)
【文献】特開平8-159653(JP,A)
【文献】特開2005-274127(JP,A)
【文献】特開2016-183827(JP,A)
【文献】特開昭63-315877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25J 1/00-3/08
C01B 3/00,3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料水素を搬送しつつ液化するフィードラインと、
前記フィードラインに設けられ、原料水素を第1純度にまで精製する第1精製装置と、
前記フィードラインに設けられ、第1純度にまで精製された原料水素を第1純度よりも純度の高い第2純度にまで精製する第2精製装置と、
原料水素を冷却するための冷媒水素を循環させるリサイクルラインと、
前記フィードラインの前記第2精製装置よりも下流の部分から原料水素を取り出して前記リサイクルラインへ供給可能な補充ラインと、を備えた液体水素製造設備。
【請求項2】
前記リサイクルラインの所定位置における内部圧力が所定の下限圧力よりも低くなったとき、前記補充ラインを介して前記フィードラインから前記リサイクルラインへ原料水素を供給する制御を行う補充調整部を備える、請求項1に記載の液体水素製造設備。
【請求項3】
前記リサイクルラインの冷媒水素を抜き取る抜取ラインと、
前記リサイクルラインの冷媒水素の純度が所定の下限純度よりも低くなったとき、前記補充ラインを介して前記フィードラインから前記リサイクルラインへ原料水素を供給するとともに、前記抜取ラインを介して前記リサイクルラインから冷媒水素を抜き取る制御を行う補充調整部と、を備える、請求項1に記載の液体水素製造設備。
【請求項4】
前記抜取ラインは前記リサイクルラインから抜き取った冷媒水素を前記フィードラインの第1精製装置よりも上流の部分に供給するように構成されている、請求項3に記載の液体水素製造設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体水素製造設備に関する。
【背景技術】
【0002】
液体水素製造設備では、水素ガスを-253°C以下に冷却することで液化水素を製造する。そのため、水素ガスを冷却する冷媒として使用可能な物質は、凝固点が非常に低い一部のものに限られる。工業用の液体水素製造設備では、費用面等を考慮して冷却対象と同じ水素を冷媒として用いるのが一般的である(例えば、下記の特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-242113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水素を冷媒として使用する場合、冷媒水素(冷媒として使用する水素)に不純物が混入していると、その不純物が凍結して機器類に悪影響を及ぼすおそれがある。そのため、冷媒水素としては、純度が非常に高い水素(例えば、水素の割合が99.9999vol%以上)が使用される。なお、このような冷媒水素は、液体水素製造設備に供給される原料水素よりも純度が高い。
【0005】
ところで、冷媒水素を循環させるリサイクルラインには、圧縮機等の回転機械が設けられており、回転機械のシール部から冷媒水素が漏れてリサイクルラインにおける冷媒水素の総量が減少する。そのため、リサイクルラインには冷媒水素を補充する必要があるが、上記のとおり冷媒水素の純度は原料水素の純度よりも高い。したがって、冷媒として水素を使用する場合、補充用の冷媒水素を保管又は製造するための設備が必要となる。一方で、液体水素製造設備の簡略化の要請もある。
【0006】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、冷媒として水素を用いる液体水素製造設備であって、補充用の冷媒水素を保管又は製造するための設備が不要な液体水素製造設備を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る液体水素製造設備は、原料水素を搬送しつつ液化するフィードラインと、前記フィードラインに設けられ、原料水素を第1純度にまで精製する第1精製装置と、前記フィードラインに設けられ、第1純度にまで精製された原料水素を第1純度よりも純度の高い第2純度にまで精製する第2精製装置と、原料水素を冷却するための冷媒水素を循環させるリサイクルラインと、前記フィードラインの前記第2精製装置よりも下流の部分から原料水素を取り出して前記リサイクルラインへ供給可能な補充ラインと、を備えている。
【0008】
この構成によれば、補充ラインを介してフィードラインの原料水素を冷媒水素としてリサイクルラインに補充することができる。そのため、補充用の冷媒水素を保管又は製造するための設備は不要である。また、冷媒水素として補充する原料水素は、第2精製装置で精製された純度の高い水素であり、冷媒水素として遜色なく使用することができる。
【0009】
上記の液体水素製造設備は、前記リサイクルラインの所定位置における内部圧力が所定の下限圧力よりも低くなったとき、前記補充ラインを介して前記フィードラインから前記リサイクルラインへ原料水素を供給する制御を行う補充調整部を備えていてもよい。
【0010】
リサイクルラインから冷媒水素が漏れたときには、リサイクルラインの内部圧力が低下する。よって、上記の構成では、リサイクルラインの内部圧力が低くなったとき、フィードラインからリサイクルラインに原料水素が供給されることから、リサイクルラインにおける冷媒水素の総量を維持することができる。
【0011】
また、この構成とは異なり、前記リサイクルラインの冷媒水素を抜き取る抜取ラインと、前記リサイクルラインの冷媒水素の純度が所定の下限純度よりも低くなったとき、前記補充ラインを介して前記フィードラインから前記リサイクルラインへ原料水素を供給するとともに、前記抜取ラインを介して前記リサイクルラインから冷媒水素を抜き取る制御を行う補充調整部と、を備えていてもよい。
【0012】
この構成によれば、冷媒水素の純度が低くなったとき、比較的純度の高い原料水素をリサイクルラインに供給するとともに、比較的純度の低い冷媒水素を抜き取るため、冷媒水素の純度を維持することができる。
【0013】
上記の液体水素製造設備は、前記抜取ラインが前記リサイクルラインから抜き取った冷媒水素を前記フィードラインに供給するように構成されていてもよい。
【0014】
抜取ラインが抜き取った冷媒水素を第1精製装置及び第2精製装置で精製して冷却すれば液化水素を製造することができる。よって、上記のようにリサイクルラインから抜き取った冷媒水素をフィードラインに供給すれば、リサイクルラインの冷媒水素を有効に利用することができる。
【発明の効果】
【0015】
上記の構成によれば、補充用の冷媒水素を保管又は製造するための設備が不要な液体水素製造設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、第1実施形態に係る液体水素製造設備の概略構成図である。
図2図2は、第2実施形態に係る液体水素製造設備の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
はじめに、第1実施形態に係る液体水素製造設備100について説明する。図1は、第1実施形態に係る液体水素製造設備100の概略構成図である。図1に示すように、液体水素製造設備100は、フィードライン10と、第1精製装置20と、第2精製装置30と、リサイクルライン40と、補充ライン50と、補充調整部60と、を備えている。以下これらの構成要素について順に説明する。
【0018】
フィードライン10は、原料水素を搬送しつつ液化するラインである。フィードライン10は、常温の原料水素が供給され、供給された原料水素を精製するとともに極低温にまで冷却して液化する。本実施形態では、フィードライン10の下流に液化水素タンク11が設置されており、液化した水素(液化水素)はこの液化水素タンク11に向かって搬送される。
【0019】
また、フィードライン10には、圧縮機12が設けられている。フィードライン10に供給された原料水素は、この圧縮機12によって圧縮され、圧縮機12よりも下流に位置する第1精製装置20に供給される。
【0020】
第1精製装置20は、原料水素を精製する装置である。第1精製装置20は、フィードライン10の圧縮機12よりも下流の部分に位置している。本実施形態の第1精製装置20は、圧力変動吸着(Pressure Swing Adsorption;PSA)法によって、原料水素を第1純度(例えば、水素の割合が99.999vol%以上)にまで精製する。第1純度は後述する第2純度よりも純度が低く、精製純度を第1純度に抑えれば、精製過程における原料水素ロス(廃棄する原料水素の割合)を例えば20%未満に抑えることができる。
【0021】
第1精製装置20により精製された原料水素は第1熱交換器21によって冷却される。第1熱交換器21は、フィードライン10の第1精製装置20よりも下流の部分に位置するとともに、極低温に維持されたコールドボックス22の内部に配置されている。なお、前述した圧縮機12及び第1精製装置20は、コールドボックス22の外部に配置されている。
【0022】
第2精製装置30は、第1精製装置20で精製された原料水素をさらに精製する装置である。第2精製装置30は、フィードライン10の第1熱交換器21よりも下流の部分に位置し、コールドボックス22の内部に配置されている。本実施形態の第2精製装置30は、熱変動吸着(Thermal Swing Adsorption:TSA)法によって、原料水素を第1純度よりも純度の高い第2純度(例えば、水素の割合が99.9999vol%以上)にまで精製する。
【0023】
また、第2精製装置30により精製された原料水素は第2熱交換器31によって冷却される。第2熱交換器31は、フィードライン10の第2精製装置30よりも下流の部分に位置するとともに、コールドボックス22の内部に配置されている。原料水素は、この第2熱交換器31を通過することにより、さらに冷却される。
【0024】
さらに、フィードライン10の第2精製装置30よりも下流の部分には膨張弁13が設けられている。この膨張弁13はコールドボックス22の内部に配置されている。原料水素は、この膨張弁13を通過することにより膨張して温度が沸点以下にまで低下する。これにより原料水素は液化する。液化した原料水素(液化水素)は、上述のとおり液化水素タンク11に供給されて保管される。
【0025】
リサイクルライン40は、原料水素を冷却するための冷媒水素を循環させるラインである。なお、冷媒水素の純度は前述した第1純度よりも高く、第2純度と同程度(例えば、99.9999vol%以上)である。冷媒水素の純度が第2純度と同程度でなければ、冷媒水素に混入する窒素や酸素などの不純物が凍結して、リサイクルライン40に設けられた各機器に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0026】
リサイクルライン40には、圧縮機41、冷却部42、膨張タービン43が設けられている。圧縮機41は、冷媒水素を圧縮して高温高圧の状態にする装置である。圧縮機41は回転部を有する回転機械であり、回転部と静止部の間に設けられたシール部を介して冷媒水素がリサイクルライン40の外部へ漏れる。そのため、リサイクルライン40には、漏れた冷媒水素と同じ量の冷媒水素を補充する必要がある。なお、圧縮機41及び後述の冷却部42は、コールドボックス22の外部に配置されている。
【0027】
冷却部42は、冷媒水素を冷却する部分である。圧縮機41によって圧縮されることで温度が上昇した冷媒水素は、はじめに冷却部42によって冷却される。冷却部42では、冷却水を用いて冷媒水素を冷却する。また、冷却部42を通過した冷媒水素は、コールドボックス22の内部に配置された第1熱交換器21及び第2熱交換器31を通過し、これらによってさらに冷却される。
【0028】
膨張タービン43は、圧縮された冷媒水素を膨張させることにより、冷媒水素の温度を低下させる装置である。膨張タービン43を通過した冷媒水素は極低温となり、第1熱交換器21及び第2熱交換器31を通過する。これによって、膨張タービン43を通過した冷媒水素は、第1熱交換器21及び第2熱交換器31を介してフィードライン10の原料水素及び膨張タービン43に流入する前の冷媒水素と熱交換してこれらを冷却する。
【0029】
補充ライン50は、フィードライン10とリサイクルライン40を連結するラインである。補充ライン50は、コールドボックス22の内部に配置されている。補充ライン50の一端は、フィードライン10の第2精製装置30と第2熱交換器31の間に接続されている。また、補充ライン50の他端は、リサイクルライン40の膨張タービン43よりも下流であって第1熱交換器21と第2熱交換器31の間に接続されている。そのため、補充ライン50は、フィードライン10の第2精製装置30よりも下流の部分から原料水素を取り出し、取り出した原料水素をリサイクルライン40へ供給することができる。
【0030】
補充調整部60は、フィードライン10からリサイクルライン40へ供給する原料水素の供給量(補充量)を調整する部分である。本実施形態の補充調整部60は、いわゆる圧力指示調節計(Pressure Indication Controller;PIC)であって、圧力測定部61と、補充量調整弁62と、を有している。圧力測定部61は、リサイクルライン40の第1熱交換器21よりも下流であって圧縮機41よりも上流の部分に設置されており、この設置位置におけるリサイクルライン40の内部圧力を測定する。ただし、圧力測定部61の設置位置は上記の位置に限定されない。また、補充量調整弁62は、補充ライン50に設けられている。
【0031】
補充調整部60は、圧力測定部61で測定したリサイクルライン40の内部圧力が所定の下限圧力よりも低くなったとき、補充量調整弁62を開放又は補充量調整弁62の開度を大きくする制御を行う。これにより、補充ライン50を介してフィードライン10からリサイクルライン40へ原料水素が供給される。補充調整部60はこのような制御を行うため、リサイクルライン40から冷媒水素が漏れてリサイクルライン40の内部圧力が低下したときには、リサイクルライン40に補充用の冷媒水素として原料水素が供給される。その結果、リサイクルライン40における冷媒水素の総量を維持することができる。
【0032】
しかも、リサイクルライン40に供給される原料水素は、第2精製装置30を通過した純度の高いものである。そのため、リサイクルライン40に供給される原料水素は冷媒水素として遜色なく使用することができる。以上のとおり、本実施形態に係る液体水素製造設備100では、補充用の冷媒水素を保管又は製造するための設備が不要であることから、液体水素製造設備100を簡略化することができる。
【0033】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る液体水素製造設備200について説明する。図2は、第2実施形態に係る液体水素製造設備200の概略構成図である。なお、図2で示す構成要素のうち、図1で示す構成要素と同一又は対応するものには同じ符号を付している。以下では、本実施形態に係る液体水素製造設備200について第1実施形態に係る液体水素製造設備100と相違する点を中心に説明し、重複する説明は省略する。
【0034】
図2に示すように、本実施形態に係る液体水素製造設備200では、リサイクルライン40から冷媒水素が漏れないように封止ガスを用いて圧縮機41のシール部を封止している。封止ガスとしては、窒素ガスなどを用いることができる。また、本実施形態に係る液体水素製造設備200は、リサイクルライン40に接続された抜取ライン70を備えている。さらに、本実施形態の補充調整部60は、第1実施形態の補充調整部60と構成が異なる。これら以外の点については、本実施形態に係る液体水素製造設備200は、第1実施形態に係る液体水素製造設備100と基本的に同じ構成を備えている。
【0035】
前述のとおり、第1実施形態では冷媒水素が漏れた分だけ冷媒水素と同等の純度の原料水素をリサイクルライン40に供給(補充)している。そのため、リサイクルライン40における冷媒水素の純度は一定であった。これに対し、本実施形態では、リサイクルライン40の圧縮機41から冷媒水素が漏れないように、シール部の外側を圧力の高い封止ガスで満たしている。そのため、封止ガスが圧縮機41のシール部を介してリサイクルライン40に流入する可能性がある。液体水素製造設備200では、これについての対策が施されている。
【0036】
液体水素製造設備200は、リサイクルライン40に接続された抜取ライン70を備えている。本実施形態の抜取ライン70は、リサイクルライン40の冷却部42の下流であって第1熱交換器21の上流の部分に接続されている。また、抜取ライン70はコールドボックス22の外部に配置されている。抜取ライン70は、リサイクルライン40との接続位置からリサイクルライン40の冷媒水素を抜き取る。本実施形態では、リサイクルライン40から抜き取った冷媒水素をフィードライン10の第1精製装置20よりも上流(具体的には圧縮機12よりも上流)の部分に供給している。
【0037】
本実施形態の補充調整部60は、圧力測定部61と、補充量調整弁62と、ガス分析部63と、抜取量調整弁64と、を備えている。第1実施形態の場合と同様に、圧力測定部61は、リサイクルライン40の第1熱交換器21よりも下流であって圧縮機41よりも上流の部分に設置されており、この設置位置におけるリサイクルライン40の内部圧力を測定する。また、補充量調整弁62は、補充ライン50に設けられている。
【0038】
さらに、ガス分析部63は、リサイクルライン40の冷却部42よりも下流であって第1熱交換器21よりも上流の部分に配置されており、この設置位置における冷媒水素の成分の割合、すなわち冷媒水素の純度を測定することができる。ただし、ガス分析部63の設置位置は上記の位置に限定されない。また、抜取量調整弁64は、抜取ライン70に設けられている。
【0039】
本実施形態の補充調整部60は、ガス分析部63で測定したリサイクルライン40の冷媒水素の純度が所定の下限純度よりも低くなったとき、補充量調整弁62を開放又は補充量調整弁62の開度を大きくする。これにより、補充ライン50を介してフィードライン10からリサイクルライン40へ原料水素が供給される。このようにリサイクルライン40へ原料水素が供給されると、リサイクルライン40における冷媒水素の総量が増加するため、圧力測定部61で測定したリサイクルライン40の内部圧力が所定の上限圧力よりも高くなる。このとき、補充調整部60は、抜取量調整弁64を開放又は抜取量調整弁64の開度を大きくする。これにより、抜取ライン70を介してリサイクルライン40から所定量の冷媒水素が抜き取られる。
【0040】
以上のとおり、本実施形態では、リサイクルライン40に不純物が流入して冷媒水素の純度が低下した場合、純度の高い原料水素をリサイクルライン40に供給するとともに、純度が低下した冷媒水素をリサイクルライン40から抜き取る。これにより、リサイクルライン40における冷媒水素の純度が上昇し、当該純度を下限純度以上に維持することができる。
【0041】
なお、本実施形態の抜取ライン70は、リサイクルライン40から抜き出した冷媒水素を廃棄するのではなく、フィードライン10へ供給している。そのため、リサイクルライン40から抜き出した触媒水素は、第1精製装置20及び第2精製装置30で精製されるとともに冷却されることで、液化水素が製造される。よって、本実施形態取によれば、取り出した冷媒水素を廃棄することなく有効に利用することができる。
【0042】
また、第2実施形態の補充調整部60は、ガス分析部63の測定結果に基づいて補充量調整弁62を制御し、圧力測定部61の測定結果に基づいて抜取量調整弁64を制御している。しかしながら、補充調整部60は、このような制御に代えて、ガス分析部63の測定結果に基づいて抜取量調整弁64を制御し、圧力測定部61の測定結果に基づいて補充量調整弁62を制御するようにしてもよい。つまり、冷媒水素の純度が低下したときには、はじめに原料水素をリサイクルライン40に供給するのではなく、はじめに純度の低下した冷媒水素を抜き出し、これに伴ってリサイクルライン40の内部圧力が低下したところで原料水素をリサイクルライン40に供給してもよい。この制御であっても同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0043】
10 フィードライン
11 液化水素タンク
20 第1精製装置
30 第2精製装置
40 リサイクルライン
50 補充ライン
60 充填調整部
70 抜取ライン
100、200 液体水素製造設備
図1
図2