(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】浮上油回収装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/40 20060101AFI20220902BHJP
【FI】
C02F1/40 B
(21)【出願番号】P 2018160457
(22)【出願日】2018-08-29
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】澁藤 暢一
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 敏治
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-132860(JP,A)
【文献】特開昭49-132862(JP,A)
【文献】実開昭48-023242(JP,U)
【文献】登録実用新案第3157476(JP,U)
【文献】特公昭48-15182(JP,B1)
【文献】特開平11-285686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液面に浮かぶフロート部と、
前記フロート部に支持される吸引管部と、
前記吸引管部に接続されて前記液面に配置されるノズル部と、
前記吸引管部と繋がり、前記吸引管部を通して前記ノズル部から前記液面の浮上油を吸引する吸引源と、を備え、
前記ノズル部は、前記吸引管部から水平方向に離れるにしたがい下側へ向けて傾斜して延び、前記液面に挿入される底壁を
複数有
し、
複数の前記底壁同士は、前記吸引管部から水平方向に離れる向きに互いに隙間をあけて隣り合って配置される、浮上油回収装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の浮上油回収装置であって、
前記底壁は、前記液面に対して前記底壁が傾斜する方向に移動可能に前記ノズル部に支持される、浮上油回収装置。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の浮上油回収装置であって、
前記底壁は、前記底壁の上面に液体戻し溝を有する、浮上油回収装置。
【請求項4】
液面に浮かぶフロート部と、
前記フロート部に支持される吸引管部と、
前記吸引管部に接続されて前記液面に配置されるノズル部と、
前記吸引管部と繋がり、前記吸引管部を通して前記ノズル部から前記液面の浮上油を吸引する吸引源と、を備え、
前記ノズル部は、前記吸引管部から水平方向に離れるにしたがい下側へ向けて傾斜して延び、前記液面に挿入される底壁を有し、
前記吸引管部は上下方向に延び、
前記底壁は、前記吸引管部の軸線回りに広がる円錐形状であり、
前記底壁は、前記軸線回りの周方向に延びる油保持溝を複数有し、
複数の前記油保持溝は、前記軸線に直交する径方向に配列する、浮上油回収装置。
【請求項5】
液面に浮かぶフロート部と、
前記フロート部に支持される吸引管部と、
前記吸引管部に接続されて前記液面に配置されるノズル部と、
前記吸引管部と繋がり、前記吸引管部を通して前記ノズル部から前記液面の浮上油を吸引する吸引源と、を備え、
前記ノズル部は、前記吸引管部から水平方向に離れるにしたがい下側へ向けて傾斜して延び、前記液面に挿入される底壁を有し、
前記吸引管部は上下方向に延び、
前記底壁は、前記吸引管部の軸線回りに広がる円錐形状であり、
前記底壁は、前記軸線に直交する径方向に延びる液体戻し溝を有する、浮上油回収装置。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の浮上油回収装置であって、
前記フロート部は、
前記液面に浮かぶフロート本体と、
前記フロート本体を支持し、前記吸引管部の上下方向に延びる部分に、上下方向の位置が調整可能とされて固定されるフロート支持部と、を有する、浮上油回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮上油回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1の浮上油吸引装置が知られる。この浮上油吸引装置は、液体と油が混合した混合液の浮上油を吸引する。浮上油吸引装置は、混合液との比重差によってまたはフロートによって混合液の表面近傍に浮上する筒状の吸引ノズルを備える。
吸引ノズルは、上面開口部と、側面開口部と、を有する。上面開口部は、吸引ノズルの上面に配置され、混合液の表面の泡を吸う。側面開口部は、吸引ノズルの側面に配置され、浮上油を吸う。吸引ノズルから吸われた泡および浮上油は、吸引ノズルの内側のパイプを経由して回収ポンプに吸引される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の浮上油回収装置では、浮上油とともに水等の液体が多く吸い込まれる。このため、水等の液体の回収量(割合)を減らして、浮上油の回収効率を高める点に改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、浮上油の回収効率を高められる浮上油回収装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の浮上油回収装置の一つの態様は、液面に浮かぶフロート部と、前記フロート部に支持される吸引管部と、前記吸引管部に接続されて前記液面に配置されるノズル部と、前記吸引管部と繋がり、前記吸引管部を通して前記ノズル部から前記液面の浮上油を吸引する吸引源と、を備え、前記ノズル部は、前記吸引管部から水平方向に離れるにしたがい下側へ向けて傾斜して延び、前記液面に挿入される底壁を複数有し、複数の前記底壁同士は、前記吸引管部から水平方向に離れる向きに互いに隙間をあけて隣り合って配置される。
【0007】
本発明の一つの態様によれば、ノズル部の底壁が、吸引管部から水平方向に離れるにしたがい下側へ向けて傾斜して延び、液面に対して斜めに挿入される。このため、底壁に乗り上げた浮上油および水等の液体を、底壁の傾斜に沿って斜め上側へ向けて吸引するときに、底壁上の水等の液体については、底壁の傾斜によって液面に戻されやすくなる。また、底壁上の浮上油については、底壁の傾斜に沿って斜め上側へ引き上げやすくなる。これにより、水等の液体の回収量(割合)を減らして、浮上油の回収効率を高めることができる。
【0008】
上記浮上油回収装置において、前記ノズル部は、前記底壁を複数有し、複数の前記底壁同士は、前記吸引管部から水平方向に離れる向きに互いに隙間をあけて隣り合って配置される。
【0009】
この場合、ノズル部が複数の底壁を有するので、底壁上において浮上油と液体との分離をより促して、浮上油の回収効率を向上させることができる。すなわち、浮上油および液体が、複数の底壁を乗り越えつつ吸引管部へ向けて吸引されるときに、複数の底壁同士の間において、液体が液面に戻される。つまり、浮上油は、複数の底壁を乗り越えて吸引管部に吸引されるが、液体は、複数の底壁を乗り越える際に、底壁同士の間において液面に戻されやすくなる。したがって、浮上油の回収効率がより高められる。
【0010】
上記浮上油回収装置において、前記底壁は、前記液面に対して前記底壁が傾斜する方向に移動可能に前記ノズル部に支持されることが好ましい。
【0011】
この場合、例えば液面に浮かぶ浮上油の状態や量などに応じて、底壁を、底壁が傾斜する方向に移動させることにより、液面に対する底壁の(上下方向の)位置を調整できる。これにより、浮上油の回収効率を向上させることができる。
【0012】
上記浮上油回収装置において、前記底壁は、前記底壁の上面に液体戻し溝を有することが好ましい。
【0013】
この場合、底壁上に乗り上げた浮上油および液体のうち、液体が液体戻し溝に流れ込み、液体戻し溝を通して液面に戻される。したがって、浮上油の回収効率をより高められる。
また、本発明の浮上油回収装置の一つの態様は、液面に浮かぶフロート部と、前記フロート部に支持される吸引管部と、前記吸引管部に接続されて前記液面に配置されるノズル部と、前記吸引管部と繋がり、前記吸引管部を通して前記ノズル部から前記液面の浮上油を吸引する吸引源と、を備え、前記ノズル部は、前記吸引管部から水平方向に離れるにしたがい下側へ向けて傾斜して延び、前記液面に挿入される底壁を有し、前記吸引管部は上下方向に延び、前記底壁は、前記吸引管部の軸線回りに広がる円錐形状であり、前記底壁は、前記軸線回りの周方向に延びる油保持溝を複数有し、複数の前記油保持溝は、前記軸線に直交する径方向に配列する。
また、本発明の浮上油回収装置の一つの態様は、液面に浮かぶフロート部と、前記フロート部に支持される吸引管部と、前記吸引管部に接続されて前記液面に配置されるノズル部と、前記吸引管部と繋がり、前記吸引管部を通して前記ノズル部から前記液面の浮上油を吸引する吸引源と、を備え、前記ノズル部は、前記吸引管部から水平方向に離れるにしたがい下側へ向けて傾斜して延び、前記液面に挿入される底壁を有し、前記吸引管部は上下方向に延び、前記底壁は、前記吸引管部の軸線回りに広がる円錐形状であり、前記底壁は、前記軸線に直交する径方向に延びる液体戻し溝を有する。
【0014】
上記浮上油回収装置において、前記吸引管部は上下方向に延び、前記底壁は、前記吸引管部の軸線回りに広がる円錐形状である。
【0015】
この場合、ノズル部は、水平方向の全方位から(吸引管部の軸線回りの全周にわたって)浮上油を回収する。したがって、浮上油の回収効率が安定して高められる。
【0016】
上記浮上油回収装置において、前記底壁は、前記軸線回りの周方向に延びる油保持溝を複数有し、複数の前記油保持溝は、前記軸線に直交する径方向に配列する。
【0017】
この場合、底壁上に乗り上げた浮上油が、複数の油保持溝に保持されて、底壁上にとどまりやすくなる。また、油保持溝の溝底には、浮上油よりも比重の大きい水等の液体が溜まる。この液体については、油保持溝の周方向の端部等を通して液面に戻すことができる。したがって、浮上油の回収効率がより向上する。
【0018】
上記浮上油回収装置において、前記底壁は、前記軸線に直交する径方向に延びる液体戻し溝を有する。
【0019】
この場合、底壁上に乗り上げた浮上油および液体のうち、液体が液体戻し溝に流れ込み、液体戻し溝を通して液面に戻される。したがって、浮上油の回収効率をより高めることができる。
【0020】
上記浮上油回収装置において、前記フロート部は、前記液面に浮かぶフロート本体と、前記フロート本体を支持し、前記吸引管部の上下方向に延びる部分に、上下方向の位置が調整可能とされて固定されるフロート支持部と、を有することが好ましい。
【0021】
この場合、フロート部と吸引管部との上下方向の相対位置を調整でき、液面に対するノズル部の上下方向の位置を調整可能である。したがって、ノズル部の底壁の上下方向の位置を適宜設定して、ノズル部から水等の液体を吸い込みにくくするとともに浮上油を吸い込みやすくして、浮上油の回収効率を安定して向上できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一つの態様の浮上油回収装置によれば、浮上油の回収効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1実施形態の浮上油回収装置を示す上面図である。
【
図2】第1実施形態の浮上油回収装置を示す側面図(一部模式図を含む)である。
【
図3】第1実施形態の浮上油回収装置のノズル部を示す側面図である。
【
図4】
図3のノズル部の第1変形例を示す側面図である。
【
図5】
図3のノズル部の第2変形例を示す側面図である。
【
図6】
図3のノズル部の第3変形例を示す側面図である。
【
図7】
図6のノズル部の底壁部材を示す(a)平面図、(b)側面図、(c)正面図である。
【
図8】第2実施形態の浮上油回収装置のノズル部を示す側面図である。
【
図9】
図8のノズル部の底壁部材を示す上面図である。
【
図10】
図8のノズル部の底壁部材を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態の浮上油回収装置10について、図面を参照して説明する。
図1~
図3は、第1実施形態の浮上油回収装置10を示す図である。
【0025】
本実施形態の浮上油回収装置10は、例えば2ピース缶用の缶胴を製造する工場等の施設の排液(排水)Dの分離槽に配置される。
分離槽に溜められる排液Dには、マイクロバブル処理が施される。これにより、油分やゴミ等(以下、浮上油Fと呼ぶ)が水等の液体から分離されて、液面LSに浮上する。浮上油Fは、液面LSに浮かぶ泡状、液状または固形状等の部分を有する。
浮上油回収装置10は、排液Dの液面LSに浮かべられて、排液Dから浮上油Fを回収する構造を備える。
【0026】
浮上油回収装置10は、吸引管部12と、チューブ18と、フロート部13と、ノズル部14と、吸引源17と、浮上油回収槽19と、を備える。
吸引管部12は、浮上油Fを吸い込むノズル部14と接続される。吸引管部12は、ノズル部14と、吸引ポンプ等の吸引源17との間に設けられる。吸引管部12は、浮上油Fを吸引する吸引管の流路(管路)の一部を構成する。吸引管部12は、吸引管(全体)のうち液面LS近傍に位置する部分である。フロート部13は、液面LSに浮かぶ。フロート部13は、吸引管部12およびノズル部14を支持する。ノズル部14は、液面LSに配置される。フロート部13は、排液Dの水位(液面LSの上下方向の位置)が変動した場合に、この水位に応じて上下方向に移動する。フロート部13は、排液Dの水位(の変動)に係わらず、ノズル部14および吸引管部12を液面LS近傍に配置する。
【0027】
排液Dの液面LSは、水平方向に広がる。本実施形態では、液面LSに直交する方向を高さ方向または上下方向(Z方向)と呼ぶ。高さ方向は、鉛直方向である。高さ方向の上側を単に上側(または上方)、高さ方向の下側を単に下側(または下方)と呼ぶ。
【0028】
水平方向のうち、ノズル部14が延びる方向を前後方向(X方向)と呼ぶ。前後方向のうち、
図1の紙面右側を前側、紙面左側を後側と呼ぶ。
また、前後方向のうち、吸引管部12から離れる方向を外側、吸引管部12に近づく方向を内側と呼ぶ。すなわち、前後方向において、吸引管部12からノズル部14の先端へ向かう方向を外側と呼び、ノズル部14の先端から吸引管部12へ向かう方向を内側と呼ぶ。
【0029】
高さ方向と前後方向に直交する方向を幅方向(Y方向)と呼ぶ。幅方向は、水平方向のうち、前後方向と直交する方向である。幅方向のうち、
図1の紙面上側を左側、紙面下側を右側と呼ぶ。
【0030】
上述した高さ方向(上側、下側)、前後方向(前側、後側、内側、外側)および幅方向(左側、右側)は、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等に限定されない。
【0031】
吸引管部12は、液面LSの上側および液面LSに配置される。吸引管部12は、分離槽の上方から液面LSに向けて延びる部分(本管21)と、液面LSに沿って延びる部分(枝管22)と、を有する。本実施形態の例では、吸引管部12が、断面円形状の管(円管、丸パイプ)である。吸引管部12は、例えば、耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル(HI-PVC)や塩化ビニル等の合成樹脂製である。
【0032】
吸引管部12の上端部には、可撓性のチューブ18が繋げられる。チューブ18は、筒状である。チューブ18は、直接または間接的に、吸引源17および浮上油回収槽19と接続される。すなわち、吸引管部12は、チューブ18を介して、吸引源17および浮上油回収槽19と繋がる。チューブ18は軟質であり、浮上油回収装置10の液面LS上における水平方向への移動(流動)を許容する。またチューブ18は、液面LSの水位の変動に応じた浮上油回収装置10の上下移動を許容する。
【0033】
吸引管部12は、本管21と、複数の枝管22と、を有する。
本管21は、吸引管部12のうち、液面LS近傍から上側に延びる部位である。つまり本管21は、吸引管部12において上下方向に延びる部分である。本管21の上端部には、チューブ18が連結される。本管21の下端部は、枝管22と連結される。
本実施形態の例では、枝管22が一対設けられる。枝管22は、吸引管部12のうち、液面LS近傍で本管21から分岐して水平方向(本実施形態では幅方向)に延びる部位である。枝管22は、液面LSに配置され、液面LSに沿って延びる。枝管22は、本管21の下端部に接続し、本管21と連通する。一対の枝管22は、本管21を挟んで幅方向の両側(左側および右側)に配置される。枝管22の先端部(幅方向の端部)には、キャップ23が取り付けられる。キャップ23は、枝管22の管路の幅方向の端部を閉塞する。
【0034】
枝管22の外周面には、吸入孔22hが開口する。吸入孔22hは、枝管22の周壁を貫通する貫通孔であり、本実施形態の例ではスリット状である。吸入孔22hは、枝管22の周壁のうち、枝管22の中心軸Cよりも上側に位置する部分(上側部分)に配置されて、水平方向(本実施形態では幅方向)に延びる。吸入孔22hは、枝管22の上側部分に、前後方向に互いに間隔をあけて複数(本実施形態の例では一対)設けられる。枝管22の中心軸Cおよび吸入孔22hは、液面LSよりも上側に位置する。
【0035】
図3に示すように、枝管22の中心軸Cに沿って見て(中心軸C方向から見て)、中心軸Cを通る鉛直軸VAに対して吸入孔22hの孔中心線HLが傾斜する角度θ1は、例えば35~70°である。角度θ1は、好ましくは45~60°である。なお、図示の例では、1つの枝管22に設けられる一対の吸入孔22hの各角度θ1同士が、互いに同じである。ただしこれに限らず、一対の吸入孔22hの各角度θ1同士は、互いに異なっていてもよい。
枝管22には、吸入孔22hを覆うようにノズル部14が連結される。ノズル部14は、吸入孔22hを上下方向、前後方向および幅方向から囲う。
【0036】
図1および
図2に示すように、フロート部13は、吸引管部12の本管21に接続されて、排液Dの液面LSに浮かぶ。言い換えると、吸引管部12は、フロート部13に支持されることで、液面LSに浮かぶ。
フロート部13は、複数設けられる。本実施形態の例では、フロート部13が4つ設けられ、それぞれ吸引管部12に接続される。複数のフロート部13は、本管21を中心として、前後方向の両側(前側、後側)および幅方向の両側(左側、右側)に配置される。
図1に示す浮上油回収装置10の平面視(上面視)で、4つのフロート部13は、本管21回りに等間隔(90°間隔)をあけて配置される。
【0037】
フロート部13は、液面LSに浮かぶフロート本体31と、フロート本体31を支持するフロート支持部32と、を有する。
フロート本体31は、例えば樹脂製等であり、排液Dよりも比重が小さい。フロート本体31は、例えば発砲スチロール等の発泡樹脂製である。フロート本体31は、例えば樹脂製の外殻を有する中空構造体や、木製等であってもよい。本実施形態の例では、フロート本体31が、樽形状またはラグビーボール形状である。本管21の前側および後側に配置されるフロート本体31は、幅方向に延びる。本管21の左側および右側に配置されるフロート本体31は、前後方向に延びる。フロート本体31は、フロート本体31を水平方向(フロート本体31の長手方向)に貫通する中心孔31hを有する。
【0038】
フロート支持部32は、フロート本体31に連結される。フロート支持部32は、水平方向に延びるシャフト33を有し、シャフト33は、フロート本体31に通される。シャフト33は、フロート本体31の中心孔31hに挿通されて、フロート本体31の長手方向の両端から突出する。フロート支持部32は、フロート本体31と本管21とを接続する。
【0039】
具体的に、フロート支持部32には、フロート支持部32を上下方向に貫通する貫通孔が形成されており、この貫通孔に本管21が挿入されている。本管21には、フロート支持部32の上記貫通孔が形成される部分の上側に配置される上ストッパー35と、フロート支持部32の上記貫通孔が形成される部分の下側に配置される下ストッパー36と、が設けられる。
【0040】
上ストッパー35は、円形リング状であり、上ストッパー35内には本管21が挿入される。上ストッパー35は、上ストッパー35の固定ネジを締め込むことにより、本管21と固定される。上ストッパー35は、フロート支持部32に対して上側から接触する。上ストッパー35は、本管21に対するフロート支持部32の上方への移動を規制する。上ストッパー35の固定ネジを緩めて本管21への固定状態を解除することにより、フロート支持部32は、本管21に対して上方への移動が許容される。
【0041】
下ストッパー36は、円形リング状であり、下ストッパー36内には本管21が挿入される。下ストッパー36は、下ストッパー36の固定ネジを締め込むことにより、本管21と固定される。下ストッパー36は、フロート支持部32に対して下側から接触する。下ストッパー36は、本管21に対するフロート支持部32の下方への移動を規制する。下ストッパー36の固定ネジを緩めて本管21への固定状態を解除することにより、フロート支持部32は、本管21に対して下方への移動が許容される。
このようにフロート支持部32は、吸引管部12の上下方向に延びる部分(本管21)に、上下方向の位置が調整可能とされて固定される。
【0042】
ノズル部14は、排液Dの液面LSに浮かべられて、浮上油Fを吸い込む。ノズル部14は、複数設けられる。ノズル部14は、複数の枝管22にそれぞれ設けられる。本実施形態の例では、ノズル部14の数(2つ)が、枝管22の数(2つ)と同じである。ノズル部14は、一対の枝管22に1つずつ設けられる。一対のノズル部14は、互いに水平方向(本実施形態では幅方向)に離れて配置される。本実施形態では、ノズル部14が、例えば、SUS304等のステンレス製である。
【0043】
図3に示すように、ノズル部14は、枝管22に固定される取り付け部41と、取り付け部41から前後方向に延びる一対の吸引ノズル42と、を有する。
取り付け部41は、板状である。取り付け部41は、枝管22の幅方向の一部を上側から覆う。取り付け部41は、枝管22の上側部分を前後方向に跨ぐアーチ形状であり、枝管22の前側および後側において、一対の吸引ノズル42を支持する。
【0044】
取り付け部41は、固定壁部41aと、固定壁部41aの前後方向の両端に接続する一対の傾斜壁部41bと、を有する。
固定壁部41aは、鉛直方向に垂直な向き(水平方向)に広がる。固定壁部41aは、枝管22の外周面の上端部にネジ止め等により固定される。
【0045】
傾斜壁部41bは、枝管22の吸入孔22hとの間に隙間をあけて、吸入孔22hに対向配置される。傾斜壁部41bは、固定壁部41aとの接続部分から前後方向の外側へ向かうにしたがい、下側に向けて傾斜して延びる。傾斜壁部41bは、吸入孔22hとの間に例えば5~15mm程度の距離をあけて配置される。この距離は、好ましくは8~12mmである。
図3に示すように、枝管22の中心軸C方向から見て(または中心軸Cに垂直な断面視で)、傾斜壁部41bと吸入孔22hとの間の距離は、吸入孔22hの孔幅(開口幅)よりも小さい。ただしこれに限らず、傾斜壁部41bと吸入孔22hとの間の距離は、吸入孔22hの孔幅よりも大きくてもよく、または同一でもよい。
【0046】
吸引ノズル42は、水平方向に延びる筒状である。本実施形態の例では、吸引ノズル42が、前後方向に延びる角筒状である。吸引ノズル42は、扁平な角管形状である。吸引ノズル42の前後方向に垂直な断面の形状は、長方形状である。吸引ノズル42の前後方向に垂直な断面の形状は、幅方向の長さが上下方向の長さよりも大きい四角形状である。
【0047】
吸引ノズル42は、液面LSに沿って配置される。吸引ノズル42のうち下端部は、液面LSの下側に位置し、下端部以外の部位(下端部よりも上側に位置する部位)は、液面LSの上側に位置する。つまりノズル部14は、液面LSの下側に位置する部分と、液面LSの上側に位置する部分と、を有する。吸引ノズル42の先端部(前後方向の外側の端部)は、液面LSに開口する。吸引ノズル42は、吸引ノズル42の先端部に開口部を有する。吸引ノズル42の開口部のうち下端部は、液面LS下に浸され、下端部以外の部位は、液面LS上に露出する。液面LSの浮上油Fおよび水等の液体は、開口部を通して吸引ノズル42内に進入可能である。
【0048】
吸引ノズル42は、吸引ノズル42の内部を通して、浮上油Fを枝管22に向けて送る。浮上油Fは、吸引ノズル42の内部空間を通って、枝管22の周壁に設けられた吸入孔22hに吸い込まれる。吸引ノズル42の内部空間は、高さ方向の寸法が、幅方向の寸法および前後方向の寸法よりも小さい扁平状である。吸引ノズル42の内部空間の高さは、吸引ノズル42の先端側(前後方向の外側)の端部に位置する開口部から、枝管22側(前後方向の内側)に向かうにしたがい小さくなる。吸引ノズル42の前後方向に垂直な断面の開口面積は、吸引ノズル42の先端部(開口部)から枝管22側に向かうにしたがい小さくなる。
【0049】
吸引ノズル42は、天壁43と、側壁44と、底壁45と、を有する。つまり、ノズル部14は、天壁43、側壁44および底壁45を有する。
天壁43は、取り付け部41の前後方向の外側の端部に接続し、この端部から前後方向に延びる略平板形状の部位である。天壁43は、略水平方向に広がる。天壁43の先端側(前後方向の外側)の端部は、先端側へ向かうにしたがい僅かに上側に向けて傾斜して延びる。天壁43は、液面LSよりも上方に配置される。天壁43の下面は、液面LSとの間に間隔をあけて、液面LSに上側から対向する。天壁43の下面と液面LSとの間の上下方向の距離は、例えば10~30mmである。この距離は、好ましくは15~25mmである。
【0050】
側壁44は、天壁43の幅方向の両端部に接続して、一対設けられる。側壁44は、幅方向に垂直な向きに広がる平板形状である。側壁44は、天壁43の幅方向の両端部から下側に向けて延びる。側壁44の下端部は、排液Dに浸される。
【0051】
底壁45は、一対の側壁44同士の間に架け渡される平板形状の部位である。底壁45の幅方向の両端部は、一対の側壁44と接続する。底壁45は、一対の側壁44と固定される。底壁45の前後方向の内側の端部は、枝管22の周壁と接続する(接触する)。なお、底壁45の前後方向の内側の端部は、枝管22の周壁との間に僅かに隙間をあけて配置されてもよい。底壁45の前後方向の内側の端部は、枝管22の吸入孔22hの下側に位置し、吸入孔22hに接近して配置される。つまり、底壁45の前後方向の内側の端部は、吸入孔22hの直下に位置して、吸入孔22hに隣接配置される。
【0052】
底壁45は、枝管22から前後方向に離れるにしたがい(つまり前後方向の外側に向かうにしたがい)、下側へ向けて傾斜して延びる。底壁45のうち、前後方向の内側(基端側)の端部は、液面LSよりも上側に位置する。底壁45のうち、前後方向の外側(先端側)の端部は、液面LSよりも下側に位置する。本実施形態の例では、底壁45の先端側の端部が、吸引ノズル42の先端側の端部に位置しており、吸引ノズル42の開口部の一部(下端部)を構成する。
すなわち、ノズル部14は底壁45を有し、底壁45は、吸引管部12から水平方向(本実施形態では前後方向)に離れるにしたがい下側へ向けて傾斜して延び、液面LSに挿入される。このように、底壁45が液面LSに対して斜めに挿入されるため、液面LSに浮かぶ浮上油Fは、底壁45に乗り上げた状態となる。
【0053】
液面LSに対して底壁45が傾斜する角度(水平方向に対する底壁45の傾斜角)θ2は、例えば10~25°である。角度θ2は、好ましくは、15~20°である。
底壁45と天壁43との間の上下方向の距離は、吸引ノズル42の前後方向の外側の端部に位置する開口部から、前後方向の内側に向かうにしたがい徐々に小さくなる。
【0054】
図2において、吸引源17および浮上油回収槽19は、排液Dが溜められる分離槽の外部に設置される。吸引源17は、チューブ18を介して吸引管部12と繋がる。吸引源17は、吸引管部12およびチューブ18を通して、ノズル部14から液面LSの浮上油Fを吸引する。ノズル部14から吸引された浮上油Fは、吸引管部12およびチューブ18を通して、浮上油回収槽19に回収される。
【0055】
具体的に、この浮上油回収装置10では、吸引ポンプ等の吸引源17を作動させると、吸引源17と接続されたノズル部14において、吸引ノズル42の内部空間が負圧となり、吸引ノズル42の開口部から液面LS近傍の排液D(主に浮上油Fであり、以下同様)および外気が吸い込まれる。
浮上油回収装置10は、吸引ノズル42に排液Dおよび外気を吸い込んで、枝管22(吸引管部12)内に導入する。すなわち、排液Dは、吸引源17の流体吸引力(エア吸引力)によって、吸引ノズル42内で底壁45の傾斜に沿って斜め上側へと移動し、吸入孔22hを通して枝管22内に引き込まれる。
【0056】
以上説明した本実施形態の浮上油回収装置10によれば、ノズル部14の底壁45が、吸引管部12から水平方向に離れるにしたがい下側へ向けて傾斜して延び、液面LSに対して斜めに挿入される。このため、底壁45に乗り上げた浮上油Fおよび水等の液体を、底壁45の傾斜に沿って斜め上側へ向けて吸引するときに、底壁45上の水等の液体については、底壁45の傾斜によって液面LSに戻されやすくなる。また、底壁45上の浮上油Fについては、底壁45の傾斜に沿って斜め上側へ引き上げやすくなる。これにより、水等の液体の回収量(割合)を減らして、浮上油Fの回収効率を高めることができる。
【0057】
具体的に、浮上油Fは、水等の液体よりも比重が小さく、液体よりも上側に位置するため、底壁45上に乗り上げやすい。また浮上油Fは、底壁45上に乗り上げたときに、重力によっては斜め下側へと流されにくい(液体よりは底壁45上にとどまりやすい)。そして浮上油Fは、吸引源17の流体吸引力により、底壁45上を斜め上側へと引き上げられやすい。したがって、浮上油Fは、枝管22に吸入される量(回収量)が増大する。
一方、水等の液体は、浮上油Fよりも比重が大きく、浮上油Fよりも下側に位置するため、底壁45上に乗り上げにくい。また液体は、底壁45上に乗り上げても、重力によって斜め下側へと流されやすい(底壁45上にとどまりにくい)。そして液体は、吸引源17の流体吸引力によっては、底壁45上を斜め上側へと引き上げられにくい。したがって、液体は、枝管22に吸入される量(回収量)が減少する。
以上より本実施形態によれば、従来と比較して、浮上油Fの回収効率を高められる。
【0058】
また本実施形態では、角度θ1が35~70°であるので、下記の作用効果が得られる。
角度θ1が35°以上であるので、底壁45の前後方向の内側の端部(基端部)と、吸入孔22hと、の間の距離を小さくできる。このため、底壁45上の浮上油Fに対して、吸入孔22hから強い流体吸引力を作用させることができる。
角度θ1が70°以下であるので、吸入孔22hが液面LSに近づき過ぎることを抑制できる。このため、吸入孔22hから枝管22内に、底壁45上を通らずに水等の液体が直接吸引されるようなことが抑制される。
なお、上記作用効果をより顕著なものとするには、好ましくは、角度θ1が45~60°である。
【0059】
また本実施形態では、角度θ2が10~25°であるので、下記の作用効果が得られる。
角度θ2が10°以上であるので、底壁45上から水等の液体が斜め下側へ流れやすい。すなわち、底壁45上から液体を液面LSに戻す作用が安定して得られる。
角度θ2が25°以下であるので、吸引源17の流体吸引力によって、底壁45上から浮上油Fを斜め上側へ引き上げやすい。すなわち、底壁45上から浮上油Fを吸引回収する作用が安定して得られる。
なお、上記作用効果をより顕著なものとするには、好ましくは、角度θ2が15~20°である。
【0060】
また本実施形態では、フロート部13のフロート支持部32が、吸引管部12の上下方向に延びる部分(本管21)に、上下方向の位置を調整可能に固定されている。
これにより、フロート部13と吸引管部12との上下方向の相対位置を調整でき、液面LSに対するノズル部14の上下方向の位置を調整可能である。したがって、ノズル部14の底壁45の液面LSに対する上下方向の位置を良好に維持でき、ノズル部14から水等の液体を吸い込みにくくするとともに浮上油Fを吸い込みやすくして、浮上油Fの回収効率を安定して向上できる。
【0061】
次に、上述した第1実施形態の浮上油回収装置10の変形例(第1~第3変形例)について、説明する。
【0062】
<第1変形例>
図4は、浮上油回収装置10のノズル部14(吸引ノズル42)の第1変形例を示す側面図である。
この第1変形例では、吸引ノズル42が、天壁43、側壁44、底壁45に加えて、底壁46を有する。つまり、ノズル部14は、複数の底壁45,46を有する。複数の底壁45,46同士は、吸引管部12から水平方向に離れる向き(本変形例では前後方向)に互いに隙間をあけて、隣り合って配置される。
【0063】
図示の例では、吸引ノズル42が、2つの底壁45,46を有する。
2つの底壁45,46のうち、枝管22の周壁と接続する(接触する)底壁45は、第1の底壁45である。第1の底壁45の前後方向の外側(先端側)の端部は、吸引ノズル42の前後方向の外側の端部よりも、前後方向の内側(基端側)に配置される。第1の底壁45の上記以外の構成については、前述した第1実施形態の底壁45と同様である。
【0064】
2つの底壁45,46のうち、第1の底壁45よりも前後方向の外側に位置する底壁46は、第2の底壁46である。第2の底壁46は、一対の側壁44同士の間に架け渡される平板形状の部位である。第2の底壁46の幅方向の両端部は、一対の側壁44と接続する。第2の底壁46の前後方向の内側の端部は、枝管22の周壁から前後方向の外側に離れて配置される。第2の底壁46の前後方向の内側の端部は、第1の底壁45の前後方向の外側の端部よりも上側に位置する。上下方向から見て、第2の底壁46の前後方向の内側の端部と、第1の底壁45の前後方向の外側の端部とは、互いに重なって配置される。
【0065】
第2の底壁46は、前後方向の外側に向かうにしたがい(吸引管部12から水平方向に離れるにしたがい)、下側へ向けて傾斜して延び、液面LSに挿入される。第2の底壁46のうち、前後方向の内側の端部は、液面LSよりも上側に位置する。第2の底壁46のうち、前後方向の外側の端部は、液面LSよりも下側に位置する。本変形例では、第2の底壁46の前後方向の外側(先端側)の端部が、吸引ノズル42の前後方向の外側の端部に位置する。
【0066】
第2の底壁46と天壁43との間の上下方向の距離は、吸引ノズル42の前後方向の外側の端部から、前後方向の内側に向かうにしたがい徐々に小さくなる。第2の底壁46が液面LSに対して斜めに挿入されるため、液面LSに浮かぶ浮上油Fは、第2の底壁46に乗り上げた状態となる。
【0067】
液面LSに対して第2の底壁46が傾斜する角度(水平方向に対する第2の底壁46の傾斜角)θ3は、例えば10~25°である。角度θ3は、好ましくは、15~20°である。図示の例では、中心軸C方向から見て、各吸引ノズル42の2つの底壁45,46同士が、互いに平行に延びており、角度θ2と角度θ3とが、互いに同一である。
【0068】
以上説明した第1変形例によれば、前述の第1実施形態と同様の作用効果が得られる。また、ノズル部14が複数の底壁45,46を有するので、底壁45,46上において浮上油Fと液体との分離をより促して、浮上油Fの回収効率を向上させることができる。すなわち、浮上油Fおよび液体が、複数の底壁45,46を乗り越えつつ枝管22(吸引管部12)へ向けて吸引されるときに、複数の底壁45,46同士の間において、液体が液面LSに戻される。つまり、浮上油Fは、複数の底壁45,46を乗り越えて枝管22に吸引されるが、液体は、複数の底壁45,46を乗り越える際に、底壁45,46同士の間において液面LSに戻されやすくなる。したがって、浮上油Fの回収効率がより高められる。
【0069】
詳しくは、吸引ノズル42に吸引された排液Dは、枝管22に到達するまでの間に2つの斜面(底壁45,46)を乗り越えさせられる。このとき、比重が小さい浮上油Fについては、枝管22に到達しやすいが、比重が大きい液体については、2つの斜面(底壁45,46)を乗り越えることができずに液面LSに戻されやすくなる。つまり、液体は、枝管22に導入されにくくなり、回収量が減少する。
このため、浮上油Fと液体の分離がより促されて、浮上油Fの回収効率が高められる。
【0070】
また、角度θ3が10~25°であるので、下記の作用効果が得られる。
角度θ3が10°以上であるので、第2の底壁46上から水等の液体が斜め下側へ流れやすい。すなわち、第2の底壁46上から液体を液面LSに戻す作用が安定して得られる。
角度θ3が25°以下であるので、吸引源17の流体吸引力によって、第2の底壁46上から浮上油Fを斜め上側へ引き上げやすい。すなわち、第2の底壁46上から浮上油Fを吸引回収する作用が安定して得られる。
なお、上記作用効果をより顕著なものとするには、好ましくは、角度θ3が15~20°である。
【0071】
<第2変形例>
図5は、浮上油回収装置10のノズル部14(吸引ノズル42)の第2変形例を示す側面図である。
この第2変形例では、吸引ノズル42が、天壁43、側壁44、底壁45に加えて、底壁部材47を有する。底壁部材47は、底壁48と、一対の耳部49と、を有する。つまり、吸引ノズル42(ノズル部14)は、複数の底壁45,48を有する。複数の底壁45,48同士は、吸引管部12から水平方向に離れる向き(本変形例では前後方向)に互いに隙間をあけて、隣り合って配置される。
【0072】
図示の例では、吸引ノズル42が、2つの底壁45,48を有する。
2つの底壁45,48のうち、枝管22の周壁と接続する(接触する)底壁(第1の底壁)45は、前述した第1実施形態の底壁45と同様の構成を有する。
2つの底壁45,48のうち、底壁45よりも前後方向の外側に配置される底壁(第2の底壁)48は、底壁部材47の一部を構成する。
【0073】
底壁部材47は、板状の部材であり、第1の底壁45上に配置される。底壁部材47は、液面LSに対して底壁45,48が傾斜する方向に移動可能に、ノズル部14に支持される。具体的に、底壁部材47は、吸引ノズル42の天壁43、側壁44および底壁45に対して、中心軸C方向から見て底壁45,48が傾斜する方向(底壁45,48が延びる方向)に沿って、スライド移動可能である。このため、底壁部材47の底壁48も、液面LSに対して底壁45,48が傾斜する方向に移動可能に、ノズル部14に支持される。すなわち、底壁48は、吸引ノズル42の天壁43、側壁44および底壁45に対して、中心軸C方向から見て底壁45,48が傾斜する方向に沿って、スライド移動可能である。
【0074】
底壁部材47が有する底壁(第2の底壁)48は、平板状であり、第1の底壁45と略平行に広がる。第2の底壁48は、第1の底壁45と隙間をあけて対向する。第2の底壁48は、第1の底壁45に、上側および前後方向の外側から対向する。
【0075】
第2の底壁48の前後方向の内側の端部は、枝管22の周壁から前後方向の外側に離れて配置される。第2の底壁48の前後方向の内側の端部は、第1の底壁45の前後方向の外側の端部よりも上側に位置する。図示の例では、第2の底壁48の前後方向の内側の端部が、第1の底壁45の前後方向の外側の端部よりも、前後方向の内側に位置する。上下方向から見て、第2の底壁48の前後方向に沿う内側部分と、第1の底壁45の前後方向に沿う外側部分とは、互いに重なって配置される。
【0076】
第2の底壁48は、前後方向の外側に向かうにしたがい(吸引管部12から水平方向に離れるにしたがい)、下側へ向けて傾斜して延び、液面LSに挿入される。第2の底壁48のうち、前後方向の内側の端部は、液面LSよりも上側に位置する。第2の底壁48のうち、前後方向の外側の端部は、液面LSよりも下側に位置する。本変形例では、第2の底壁48の前後方向の外側(先端側)の端部が、吸引ノズル42(の天壁43、側壁44および底壁45)の前後方向の外側の端部よりも、前後方向の外側に突出して配置される。
【0077】
第2の底壁48と天壁43との間の上下方向の距離は、前後方向の内側に向かうにしたがい小さくなる。第2の底壁48が液面LSに対して斜めに挿入されるため、液面LSに浮かぶ浮上油Fは、第2の底壁48に乗り上げた状態となる。
【0078】
液面LSに対して第2の底壁48が傾斜する角度(水平方向に対する第2の底壁48の傾斜角)θ4は、例えば10~25°である。角度θ4は、好ましくは、15~20°である。図示の例では、中心軸C方向から見て、各吸引ノズル42の2つの底壁45,48同士が、互いに平行に延びており、角度θ2と角度θ4とが、互いに同一である。
【0079】
底壁部材47が有する一対の耳部49は、第2の底壁48の幅方向の両端部に接続する。耳部49は、幅方向に垂直な向きに広がる平板形状である。耳部49は、第2の底壁48の幅方向の両端部から下側に向けて延びる。耳部49の下端は、第1の底壁45の上面と接触する。耳部49は、液面LSに対して底壁45,48が傾斜する方向に沿って延びる。
【0080】
耳部49は、液面LSに対して底壁45,48が傾斜する方向に沿って配列する複数の位置調整孔49aを有する。位置調整孔49aは、耳部49を幅方向(板厚方向)に貫通する。位置調整孔49aは、位置調整孔49aの内周面に雌ネジ部を有する。複数の位置調整孔49aのうち、所定の(1つの)位置調整孔49aには、側壁44の貫通孔44aに通される図示しないネジ部材が螺着する。これにより底壁部材47は、吸引ノズル42と固定される。
【0081】
以上説明した第2変形例によれば、前述の第1実施形態と同様の作用効果が得られる。また、例えば液面LSに浮かぶ浮上油Fの状態や量などに応じて、底壁部材47とともに底壁48を、底壁45,48が傾斜する方向に移動させることにより、液面LSに対する第2の底壁48の(上下方向の)位置を調整できる。これにより、浮上油Fの回収効率を向上させることができる。
また、角度θ4が10~25°であるので、上述した角度θ3と同様の作用効果が得られる。なお、この作用効果をより顕著なものとするには、好ましくは、角度θ4が15~20°である。
【0082】
<第3変形例>
図6は、浮上油回収装置10のノズル部14(吸引ノズル42)の第3変形例を示す側面図である。
図7(a)~(c)は、
図6の底壁50のスライド壁部52を示す。
この第3変形例では、吸引ノズル42が、天壁43と、側壁44と、底壁50と、を有する。底壁50は、枝管22(吸引管部12)から水平方向(本変形例では前後方向)に離れるにしたがい下側へ向けて傾斜して延び、液面LSに挿入される。底壁50は、支持壁部51と、スライド壁部52と、を有する。
【0083】
支持壁部51は、一対の側壁44同士の間に架け渡される平板形状の部位である。支持壁部51の幅方向の両端部は、一対の側壁44と接続する。支持壁部51は、一対の側壁44と固定される。支持壁部51の前後方向の内側の端部は、枝管22の周壁と接続する(接触する)。なお、支持壁部51の前後方向の内側の端部は、枝管22の周壁との間に僅かに隙間をあけて配置されてもよい。支持壁部51の前後方向の内側の端部は、枝管22の吸入孔22hの下側に位置し、吸入孔22hに接近して配置される。つまり、支持壁部51の前後方向の内側の端部は、吸入孔22hの直下に位置して、吸入孔22hに隣接配置される。
【0084】
支持壁部51は、枝管22から前後方向に離れるにしたがい(つまり前後方向の外側に向かうにしたがい)、下側へ向けて傾斜して延びる。支持壁部51のうち、前後方向の内側(基端側)の端部は、液面LSよりも上側に位置する。支持壁部51のうち、前後方向の外側(先端側)の端部は、液面LSよりも下側に位置する。
すなわち、支持壁部51は、吸引管部12から水平方向(本変形例では前後方向)に離れるにしたがい下側へ向けて傾斜して延び、液面LSに挿入される。
【0085】
スライド壁部52は、板状である。本変形例では、スライド壁部52が、四角形板状である。スライド壁部52の板面(上面52aおよび下面52b)は、上下方向を向く。スライド壁部52は、支持壁部51上に配置される。スライド壁部52の下面52bは、支持壁部51の上面と接触する。スライド壁部52は、支持壁部51の上面に載せられ、支持壁部51に対してスライド移動可能である。スライド壁部52は、支持壁部51上において、液面LSに対して底壁50(支持壁部51)が傾斜する方向に移動可能に、吸引ノズル42に支持される。すなわち、底壁50は、液面LSに対して底壁50が傾斜する方向に移動可能に、ノズル部14に支持される。
【0086】
スライド壁部52の上面52aは、スライド壁部52の下面52bと平行な部分と、下面52bに対して傾斜する部分と、を有する。
スライド壁部52の上面52aのうち、下面52bと平行な部分は、スライド壁部52の前後方向の内側部分に位置する。このため、スライド壁部52の前後方向の内側部分は、前後方向に沿って板厚が一定である。
スライド壁部52の上面52aのうち、下面52bに対して傾斜する部分は、スライド壁部52の前後方向の外側部分に位置する。上面52aのうち、下面52bに対して傾斜する部分は、前後方向の外側へ向かうにしたがい、下面52bとの間の距離が小さくなる。このため、スライド壁部52の前後方向の外側部分は、前後方向の外側へ向かうにしたがい板厚が小さくなる。
【0087】
スライド壁部52は、スライド壁部52の上面52aに、液体戻し溝53を有する。すなわち、底壁50は、底壁50の上面52aに液体戻し溝53を有する。液体戻し溝53は、上面52aにおいて下側に窪み、前後方向に延びる。詳しくは、液体戻し溝53は、上面52aにおいて、液面LSに対して底壁50が傾斜する方向に沿って延びる。液体戻し溝53は、上面52aにおいて幅方向に互いに間隔をあけて複数配置される。
【0088】
図示の例では、液体戻し溝53は、スライド壁部52の前後方向の内側を向く端面および外側を向く端面には開口しない。液体戻し溝53は、スライド壁部52の前後方向の内側の端部と外側の端部との間に位置する中間部分に配置される。なお、液体戻し溝53は、スライド壁部52の前後方向の内側を向く端面および外側を向く端面の少なくともいずれかに開口してもよい。
【0089】
スライド壁部52の上面52aのうち、下面52bと平行な部分では、液体戻し溝53の溝深さが、前後方向に沿って一定である。スライド壁部52の上面52aのうち、下面52bに対して傾斜する部分では、液体戻し溝53の溝深さが、前後方向の外側へ向かうにしたがい浅くなる。
【0090】
スライド壁部52の側面52cは、幅方向を向く。側面52cは、スライド壁部52に一対設けられる。一対の側面52cは、スライド壁部52において幅方向の両側を向く。側面52cは、吸引ノズル42の側壁44と対向する。側面52cは、側壁44と接触する。
【0091】
スライド壁部52は、側面52cにネジ穴52dを有する。ネジ穴52dは、側面52cに開口して幅方向に窪む。ネジ穴52dは、側面52cに複数設けられる。複数のネジ穴52dは、側面52cにおいて下面52bと平行に配列する。複数のネジ穴52dは、側面52cにおいて、液面LSに対して底壁50が傾斜する方向に沿って配列する。ネジ穴52dは、ネジ穴52dの内周面に雌ネジ部を有する。複数のネジ穴52dのうち、所定の(1つの)ネジ穴52dには、側壁44の貫通孔44aに通される図示しないネジ部材が螺着する。これによりスライド壁部52は、吸引ノズル42と固定される。
【0092】
以上説明した第3変形例によれば、前述の第1実施形態と同様の作用効果が得られる。また、例えば液面LSに浮かぶ浮上油Fの状態や量などに応じて、底壁50(スライド壁部52)を、底壁50(スライド壁部52および支持壁部51)が傾斜する方向に移動させることにより、液面LSに対する底壁50(スライド壁部52)の(上下方向の)位置を調整できる。これにより、浮上油Fの回収効率を向上させることができる。
また、スライド壁部52上に乗り上げた浮上油Fおよび液体のうち、液体が液体戻し溝53に流れ込み、液体戻し溝53を通して液面LSに戻される。したがって、浮上油Fの回収効率をより高められる。
【0093】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態の浮上油回収装置20について、図面を参照して説明する。
なお、第2実施形態では、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付してその説明を省略し、主として異なる点について説明する。
【0094】
図8~
図10に示すように、浮上油回収装置20は、吸引管部72と、フロート部13と、ノズル部74と、を備える。また、浮上油回収装置20は、チューブ18と、吸引源17と、浮上油回収槽19と、を備える。
吸引管部72は、浮上油Fを吸い込むノズル部74と接続される。吸引管部72は、ノズル部74と、吸引源17との間に設けられる。吸引管部72は、浮上油Fを吸引する吸引管の流路(管路)の一部を構成する。吸引管部72は、吸引管(全体)のうち液面LS近傍に位置する部分である。フロート部13は、吸引管部72およびノズル部74を支持する。ノズル部74は、液面LSに配置される。フロート部13は、排液Dの水位(の変動)に合わせて上下動し、ノズル部74および吸引管部72を液面LS近傍に配置する。
【0095】
吸引管部72は、上下方向に延びる。吸引管部72は、分離槽の上方から液面LSに向けて延びる部分(本管81)を有する。本実施形態の例では、吸引管部72が、断面円形状の管(円管、丸パイプ)である。吸引管部72は、例えば、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)等の合成樹脂製である。吸引管部72の上端部には、チューブ18が繋げられる。吸引管部72は、チューブ18を介して、吸引源17および浮上油回収槽19と繋がる(
図2参照)。
【0096】
吸引管部72は、本管81を有する。
本管81は、上下方向に延びる。つまり本管81は、吸引管部72において上下方向に延びる部分である。本管81の下端は、液面LSよりも下側に位置する。本管81の下端部は、液面LS近傍に配置される。本管81の下端部以外の部位(下端部よりも上側に位置する部位)は、液面LSの上側に配置される。
以下の説明では、吸引管部72(の本管81)の軸線(中心軸)Oに直交する方向を、径方向と呼ぶ。径方向のうち、軸線Oに接近する方向を径方向の内側と呼び、軸線Oから離れる方向を径方向の外側と呼ぶ。また、軸線O回りに周回する方向を、周方向と呼ぶ。
【0097】
本管81は、本管81の周壁に吸入孔81hを有する。吸入孔81hは、本管81の周壁を貫通する貫通孔であり、本実施形態の例では長円孔状である。吸入孔81hは、本管81の下端部に配置され、上下方向に延びる。吸入孔81hは、本管81の周壁の下端部に、周方向に互いに間隔をあけて複数(本実施形態の例では4つ)設けられる。複数の吸入孔81hは、本管81の外周面に、周方向に等間隔で開口する。
【0098】
ノズル部74は、吸引管部72の下端部に1つ設けられる。ノズル部74は、吸引管部72の軸線Oを中心とする略円盤状である。本実施形態では、ノズル部74が、例えば、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)等の合成樹脂製である。
【0099】
ノズル部74は、フロート部13により排液Dの液面LSに浮かべられ(配置され)、浮上油Fを吸い込む。本実施形態のノズル部74は、ノズル部74の外周に、軸線O回りの全周にわたって開口する環状の開口部を有する。ノズル部74の開口部は、ノズル部74の外周面において径方向に開口する。ノズル部74の開口部のうち下端部は、液面LS下に浸され、下端部以外の部位は、液面LS上に露出する。つまりノズル部74は、液面LSの下側に位置する部分と、液面LSの上側に位置する部分と、を有する。液面LSの浮上油Fおよび水等の液体は、開口部を通してノズル部74内に進入可能である。
【0100】
ノズル部74は、天壁部材75と、底壁部材76と、を有する。
天壁部材75は、軸線Oを中心とする略円形リング板状である。天壁部材75は、液面LSよりも上側に配置される。天壁部材75は、天壁部材75を上下方向に貫通する貫通孔を有する。貫通孔には、本管81が挿入される。天壁部材75は、本管81の周壁と固定される。
【0101】
天壁部材75の下面は、軸線Oに垂直な平面状である。天壁部材75の下面は、液面LSと隙間をあけて対向する。天壁部材75の下面と液面LSとの間の上下方向の距離は、例えば10~25mmである。この距離は、好ましくは15~20mmである。また、天壁部材75の下面と、底壁部材76の上端(後述する底壁77の上端)との間の上下方向の距離は、例えば3~12mmである。この距離は、好ましくは6~9mmである。
図示の例では、天壁部材75の上面が、径方向外側へ向かうにしたがい下側へ向けて傾斜するテーパ状である。
【0102】
底壁部材76は、軸線Oを中心とする略円板状である。底壁部材76は、本管81の下端部に固定される。底壁部材76は、天壁部材75から下側に離れて(隙間をあけて)配置される。底壁部材76の上端部は、液面LSの上側に配置され、上端部以外の部位(上端部よりも下側に位置する部位)は、液面LSの下側に配置される。天壁部材75と底壁部材76との間の空間が、ノズル部74の内部空間となる。
【0103】
底壁部材76は、底壁77と、油保持穴78と、管固定穴79と、を有する。
底壁77は、底壁部材76の上面に設けられる。底壁77は、吸引管部72の軸線O回りに広がる円錐形状である。底壁77は、吸引管部72から水平方向(本実施形態では径方向)に離れるにしたがい下側へ向けて傾斜して延び、液面LSに挿入される。底壁77のうち、径方向の内側の端部は、液面LSよりも上側に位置する。底壁77の径方向の内端部は、本管81の吸入孔81hに接近配置される。底壁77のうち、径方向の外側の端部は、液面LSよりも下側に位置する。底壁77の径方向の外端部は、底壁部材76の外周面の上端部と接続する。
このように、底壁77が液面LSに対して斜めに挿入されるため、液面LSに浮かぶ浮上油Fは、底壁77に乗り上げた状態となる。
【0104】
液面LSに対して底壁77が傾斜する角度(水平方向に対する底壁77の傾斜角)θ5は、例えば10~25°である。角度θ5は、好ましくは、15~20°である。
底壁77と天壁部材75の下面との間の上下方向の距離は、ノズル部74の径方向の外側の端部に位置する開口部から、径方向の内側に向かうにしたがい小さくなる。
【0105】
底壁77は、油保持溝82と、液体戻し溝83と、を有する。
油保持溝82は、底壁77に複数設けられる。油保持溝82は、底壁77において下側に窪み、周方向に延びる。油保持溝82の溝幅は、下側に向かうにしたがい小さくなる。図示の例では、油保持溝82の断面形状(周方向に垂直な断面の形状)が、V字状である。油保持溝82の溝幅は、周方向に沿って一定である。油保持溝82の溝深さは、周方向に沿って一定である。
【0106】
複数の油保持溝82は、径方向に配列する。径方向に隣り合う油保持溝82同士は、互いに隣接して配置される。本実施形態の例では、油保持溝82が、底壁77のうち、液面LSの上側に位置する部位に配置される。
【0107】
液体戻し溝83は、底壁77に複数設けられる。液体戻し溝83は、底壁77において下側に窪み、径方向に延びる。液体戻し溝83は、底壁77の径方向の内端部から外端部にわたって延びる。液体戻し溝83の溝幅は、上下方向に沿って一定である。液体戻し溝83の溝幅は、径方向に沿って一定である。液体戻し溝83の溝幅は、油保持溝82の溝幅よりも大きい。液体戻し溝83の溝底は、軸線Oに垂直な平面状である。液体戻し溝83の溝深さは、径方向の外側に向かうにしたがい小さくなる。液体戻し溝83の溝深さは、油保持溝82の溝深さよりも大きい。
【0108】
複数の液体戻し溝83は、周方向に互いに間隔をあけて配置される。本実施形態の例では、複数(図示の例では8つ)の液体戻し溝83が、周方向に等間隔で配列する。液体戻し溝83は、油保持溝82を周方向に分断するように配置される。油保持溝82の周方向の端部は、液体戻し溝83と繋がる。すなわち、油保持溝82の内部は、液体戻し溝83の内部と連通する。液体戻し溝83のうち上側部分は、液面LSの上側に配置され、下側部分は、液面LSの下側に配置される。
【0109】
油保持穴78は、底壁部材76の上面から下側に窪む有底穴である。油保持穴78は、底壁部材76の上面の中央部に開口する。油保持穴78は、本管81の周壁よりも内径が大きい円穴である。油保持穴78の内周面は、本管81の外周面の下端部と、径方向に隙間をあけて対向する。油保持穴78の内周面は、本管81の吸入孔81hと、径方向に隙間をあけて対向する。油保持穴78内には、底壁77上を径方向内側に乗り越えた浮上油Fが流れ落ちて、一時的に保持される。油保持穴78内に流れ落ちた浮上油Fは、吸入孔81hを通して本管81内に吸い込まれる。
【0110】
管固定穴79は、油保持穴78の底面から下側に窪む有底穴である。管固定穴79は、油保持穴78の底面の中央部に開口する。管固定穴79は、円穴である。管固定穴79の内径は、油保持穴78の内径よりも小さい。管固定穴79には、本管81の下端部が挿入され、固定される。管固定穴79は、本管81の下端開口を塞ぐキャップとしても機能する。
【0111】
この浮上油回収装置20では、吸引源17を作動させると、吸引源17と接続されたノズル部74の内部空間が負圧となり、ノズル部74の開口部から液面LS近傍の排液D(主に浮上油Fであり、以下同様)および外気が吸い込まれる。
浮上油回収装置20は、ノズル部74に排液Dおよび外気を吸い込んで、本管81(吸引管部72)内に導入する。すなわち、排液Dは、吸引源17の流体吸引力(エア吸引力)によって、ノズル部74内で底壁77の傾斜に沿って斜め上側へと移動し、吸入孔81hを通して本管81内に引き込まれる。
【0112】
以上説明した本実施形態の浮上油回収装置20によれば、前述の第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
また、底壁77が吸引管部72の軸線O回りに広がる円錐形状であるので、ノズル部74は、水平方向の全方位から(軸線O回りの全周にわたって)浮上油Fを回収する。したがって、浮上油Fの回収効率が安定して高められる。
【0113】
また本実施形態では、底壁77が、周方向に延びる油保持溝82を複数有し、複数の油保持溝82は径方向に配列するので、下記の作用効果が得られる。
この場合、底壁77上に乗り上げた浮上油Fが、複数の油保持溝82に保持されて、底壁77上にとどまりやすくなる。また、油保持溝82の溝底には、浮上油Fよりも比重の大きい水等の液体が溜まる。この液体については、油保持溝82の周方向の端部に繋がる液体戻し溝83を通して、液面LSに戻すことができる。したがって、浮上油Fの回収効率がより向上する。
【0114】
また本実施形態では、底壁77が径方向に延びる液体戻し溝83を有するので、下記の作用効果が得られる。
この場合、底壁77上に乗り上げた浮上油Fおよび液体のうち、液体が液体戻し溝83に流れ込み、液体戻し溝83を通して液面LSに戻される。したがって、浮上油Fの回収効率をより高めることができる。
【0115】
また本実施形態では、角度θ5が10~25°であるので、下記の作用効果が得られる。
角度θ5が10°以上であるので、底壁77上から水等の液体が斜め下側へ流れやすい。すなわち、底壁77上から液体を液面LSに戻す作用が安定して得られる。
角度θ5が25°以下であるので、吸引源17の流体吸引力によって、底壁77上から浮上油Fを斜め上側へ引き上げやすい。すなわち、底壁77上から浮上油Fを吸引回収する作用が安定して得られる。
なお、上記作用効果をより顕著なものとするには、好ましくは、角度θ5が15~20°である。
【0116】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0117】
前述の実施形態では、ノズル部の縦断面視で、底壁が直線状に延びる例を挙げたが、これに限らない。ノズル部の縦断面視において、底壁は、例えば曲線状に延びていてもよい。ノズル部の底壁は、平面状に限らず、曲面状であってもよい。
【0118】
底壁の傾斜角である角度θ1~θ5のいずれかが、底壁の取り付け角度の調整等により、変更可能であってもよい。すなわち、角度θ1~θ5の各数値範囲において、角度θ1~θ5がそれぞれ調整可能であってもよい。つまり、液面LSに対する底壁の傾きが変更可能でもよい。
【0119】
ノズル部は、吸引管部から水平方向に離れるにしたがい下側へ向けて傾斜して延び、液面LSに挿入される底壁を有していればよく、ノズル部の形状や構造等は、前述の実施形態で挙げた例に限らない。
【0120】
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例およびなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の浮上油回収装置によれば、浮上油の回収効率を高めることができる。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0122】
10,20…浮上油回収装置、12,72…吸引管部、13…フロート部、14,74…ノズル部、17…吸引源、21,81…本管(吸引管部の上下方向に延びる部分)、31…フロート本体、32…フロート支持部、45,46,48,50,77…底壁、52a…上面、53,83…液体戻し溝、82…油保持溝、F…浮上油、LS…液面、O…軸線