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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20220902BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
E02F9/26 A
E02F9/20 M
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018160527
(22)【出願日】2018-08-29
(65)【公開番号】P2020033747
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇治 克将
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/072877(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/173920(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/084161(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な下部走行体と、前記下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、前記上部旋回体に設けられ互いに連結された複数の可動部と、前記各可動部にそれぞれ搭載され互いに直交する3つの座標軸の角速度を検出可能な複数の同一仕様の慣性センサと、前記各慣性センサのセンサ出力を用いて前記各可動部の動作姿勢を演算するコントローラと、前記下部走行体を走行させるための走行操作圧を検出する走行操作圧センサと、前記上部旋回体を旋回させるための旋回操作圧を検出する旋回操作圧センサとを備えた建設機械において、
前記複数の慣性センサは、前記複数の可動部を動作させたときに互いに異なる座標軸で回転するように前記複数の可動部にそれぞれ搭載されており、
前記コントローラは、
前記走行操作圧と前記旋回操作圧とが予め設定されたそれぞれの操作圧閾値以下となっている状態で前記複数の可動部を動作させた場合に、前記複数の慣性センサから出力された前記センサ出力に基づき前記各慣性センサが前記複数の可動部のうちいずれの可動部に搭載されているかを判定し、その判定結果に基づいて前記各可動部と前記各慣性センサとの対応関係を設定することを特徴とする建設機械。
【請求項2】
情報を表示するための表示装置を備え、
前記表示装置は、前記コントローラにより設定された前記各慣性センサの設定情報を表示することを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記各慣性センサの搭載箇所の設定を開始するときに操作される開始操作装置を備え、
前記コントローラは、前記開始操作装置が操作されたときに前記各慣性センサの搭載箇所を設定することを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項4】
前記複数の可動部は、前記上部旋回体に俯仰の動作が可能に連結されたブームと、前記ブームの先端側に連結されたアームと、前記アームの先端側に連結された作業具とからなり、
前記複数の慣性センサは、前記ブームに搭載され前記3つの座標軸のうち第1軸を判定用座標軸とする第1慣性センサと、前記アームに搭載され前記3つの座標軸のうち第2軸を判定用座標軸とする第2慣性センサと、前記作業具に搭載され前記3つの座標軸のうち第3軸を判定用座標軸とする第3慣性センサとにより構成され、
前記コントローラは、前記複数の可動部を動作させた場合に、前記第1軸の角速度が第1軸用判定閾値以上となったときには前記第1慣性センサをブーム用慣性センサと判定し、前記第2軸の角速度が第2軸用判定閾値以上となったときには前記第2慣性センサをアーム用慣性センサと判定し、前記第3軸の角速度が第3軸用判定閾値以上となったときには前記第3慣性センサを作業具用慣性センサと判定することを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば作業姿勢を演算するための複数のセンサを備えた油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械を代表する油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、上部旋回体に俯仰の動作が可能に設けられた作業装置とにより構成されている。作業装置は、上部旋回体に連結されたブームと、ブームの先端側に連結されたアームと、アームの先端側に連結されたバケットとを含んで構成されている。そして、油圧ショベルは、ブーム、アーム、およびバケットを作動することにより、掘削作業を行う。
【0003】
ここで、所定深さの穴を掘削したり、所定勾配の法面を掘削したりする場合の補助装置として、ブーム、アーム、およびバケットに設けられた各シリンダのストローク長さを検出するストロークセンサを用いて、バケットの位置情報を表示装置に表示するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、ブーム、アーム、バケット、および車体に慣性計測装置(Inertial Measurement Unit)をそれぞれ搭載して、これら慣性計測装置(慣性センサ)の検出値から車体および作業装置の姿勢を演算するものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-172431号公報
【文献】国際公開第2015/173920号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車体および作業装置の姿勢を演算するには、各慣性計測装置がブーム、アーム、バケット、および車体のどの位置に取付けられているかを設定する必要がある。この場合、各慣性計測装置を1個ずつ取付けて設定を行う方法があるが、この方法では慣性計測装置の取付け、設定、および取外しという一連の設定作業を慣性計測装置の搭載数分だけ行わなければならず、設定作業の時間および手間がかかる虞がある。
【0006】
また、各慣性計測装置の搭載箇所を予め指定して、それぞれの慣性計測装置が異なる個別のフォーマットで検出値を送信する専用の慣性計測装置とすることで、搭載箇所の設定を不要にすることができる。しかし、各慣性計測装置は、同じ慣性計測装置であるにも拘わらず、それぞれの搭載箇所のデータ送信フォーマットが決められたブーム用、アーム用、バケット用および車体用の慣性計測装置となっているので、搭載箇所の取り違えが発生する虞がある。また、各慣性計測装置が故障した場合に対応するためには、各搭載箇所専用の慣性計測装置を在庫として用意しておかなければならないので、各慣性計測装置の在庫管理および保管のコストが増加する虞がある。
【0007】
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、複数の慣性センサの搭載箇所の設定を簡単に行うことができる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明の建設機械は、自走可能な下部走行体と、前記下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、前記上部旋回体に設けられ互いに連結された複数の可動部と、前記各可動部にそれぞれ搭載され互いに直交する3つの座標軸の角速度を検出可能な複数の同一仕様の慣性センサと、前記各慣性センサのセンサ出力を用いて前記各可動部の動作姿勢を演算するコントローラと、前記下部走行体を走行させるための走行操作圧を検出する走行操作圧センサと、前記上部旋回体を旋回させるための旋回操作圧を検出する旋回操作圧センサとを備えている。
【0009】
そして、本発明の特徴は、前記複数の慣性センサは、前記複数の可動部を動作させたときに互いに異なる座標軸で回転するように前記複数の可動部にそれぞれ搭載されており、前記コントローラは、前記走行操作圧と前記旋回操作圧とが予め設定されたそれぞれの操作圧閾値以下となっている状態で前記複数の可動部を動作させた場合に、前記複数の慣性センサから出力された前記センサ出力に基づき前記各慣性センサが前記複数の可動部のうちいずれの可動部に搭載されているかを判定し、その判定結果に基づいて前記各可動部と前記各慣性センサとの対応関係を設定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、各慣性センサの搭載箇所を簡単に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態による油圧ショベルを示す正面図である。
図2】キャブ内を運転席側からみた斜視図である。
図3】第1実施形態によるコントローラの構成を示すブロック図である。
図4図1中の(IV)部を拡大して示す正面図である。
図5図1中の(V)部を拡大して示す正面図である。
図6図1中の(VI)部を拡大して示す正面図である。
図7】第1実施形態による各慣性センサの搭載箇所設定処理を示す流れ図である。
図8】作業装置を作動したときに各慣性センサから出力されるセンサ出力を示す特性線図である。
図9】各慣性センサの3つの座標軸を示す説明図である。
図10】慣性センサ設定開始時に表示装置に表示される説明図である。
図11】各慣性センサの設定中に表示装置に表示される説明図である。
図12】各慣性センサの設定が終了したときに表示装置に表示される説明図である。
図13】本発明の第2実施形態によるコントローラの構成を示すブロック図であるである。
図14】第2実施形態による各慣性センサの搭載箇所設定処理を示す流れ図である。
図15図14中の搭載箇所設定処理の続きを示す流れ図である。
図16】変形例によるコントローラの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態による建設機械として油圧ショベルを例に挙げて、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
まず、図1ないし図12を参照して、第1実施形態による油圧ショベル1について説明する。図1に示す油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、上部旋回体4の前側に設けられ掘削作業等を行う多関節構造の作業装置5とを備えている。下部走行体2および上部旋回体4は、油圧ショベル1の車体を構成している。
【0014】
下部走行体2は、走行動作を行うための油圧モータ2Aと、前,後方向に巻回して設けられ油圧モータ2Aによって駆動される履帯2Bとを備えている。旋回装置3は、下部走行体2に対して上部旋回体4を旋回動作させるための油圧モータ3Aを備えている。
【0015】
作業装置5は、上部旋回体4の前側に設けられ互いに連結された複数の可動部を有するフロントアクチュエータ機構である。作業装置5は、複数の可動部として上部旋回体4に俯仰の動作が可能に連結されたブーム5Aと、ブーム5Aの先端側に連結されたアーム5Bと、アーム5Bの先端側に連結された作業具としてのバケット5Cとを含んで構成されている。そして、ブーム5A、アーム5B、およびバケット5Cは、それぞれアクチュエータとしてのブームシリンダ5D、アームシリンダ5E、およびバケットシリンダ5Fによって駆動される。作業装置5は、エンジン6によって駆動する油圧ポンプ7から送出される作動油により駆動される。
【0016】
この場合、ブーム5Aは、ブームシリンダ5Dの伸縮動作により上,下方向に回動する。また、アーム5Bは、アームシリンダ5Eの伸縮動作により前,後方向に回動する。一方、バケット5Cは、アーム5Bの先端側に回動可能に取付けられたバケット本体5C1と、バケットシリンダ5Fの伸縮動作によりバケット本体5C1を回動させるバケットリンク5C2とを含んで構成されている。バケットリンク5C2は、アーム5Bとバケットシリンダ5Fとの間およびバケットシリンダ5Fとバケット本体5C1との間を接続している。なお、作業装置5の作業具は、バケット5Cに限らず、例えばグラップル等でもよい。
【0017】
キャブ8は、上部旋回体4の左前側に設けられ、内部に運転席8Aが備えられている。運転席8Aの前側には、下部走行体2の油圧モータ2Aを駆動するために前,後方向に操作される走行操作レバー装置9が設けられている。一方、運転席8Aの左,右両側には、上部旋回体4の旋回動作および作業装置5の作動を行うために左,右方向および前,後方向に操作される左,右の操作レバー装置10,11が設けられている。左操作レバー装置10は、例えば上部旋回体4を旋回動作させるための油圧モータ3Aおよび作業装置5のアーム5Bを回動動作させるためのアームシリンダ5Eを制御する。一方、右操作レバー装置11は、例えば作業装置5のブーム5Aを回動動作させるためのブームシリンダ5Dおよびバケット5Cを回動動作させるためのバケットシリンダ5Fを制御する。
【0018】
右操作レバー装置11の後側には、エンジン6を駆動するときに操作されるキースイッチ12が設けられている。また、運転席8Aの右前側には、燃料等の残量およびキャブ8内の気温等の油圧ショベル1の状態を示す表示装置13が設けられている。また、この表示装置13には、油圧ショベル1の掘削作業を補助するために、後述する各慣性センサ16~19のセンサ出力から演算された作業装置5の位置情報が表示される。さらに、表示装置13には、図10図12に示すように、後述する各慣性センサ16~19の搭載箇所を設定するときの設定状態が表示される。
【0019】
走行操作レバー装置9を前,後方向に傾転操作すると、下部走行体2の油圧モータ2Aに供給される圧油の流量と方向とを制御する方向制御弁(図示せず)に向けてパイロット圧が供給される。方向制御弁にパイロット圧が供給されると、方向制御弁の弁位置が切換えられて油圧ポンプ7からの圧油が油圧モータ2Aに供給される。これにより、油圧モータ2Aが作動して油圧ショベル1を走行させることができる。
【0020】
走行操作レバー装置9と方向制御弁との間には、走行操作圧センサ14が設けられている。この走行操作圧センサ14は、下部走行体2を走行させるための走行操作圧(パイロット圧)を検出する。即ち、走行操作圧センサ14は、走行操作レバー装置9が操作されて油圧ショベル1が走行しているか否かを検出する。そして、走行操作圧センサ14は、走行操作レバー装置9を操作したときのパイロット圧を後述のコントローラ20に出力する。
【0021】
また、左操作レバー装置10を前,後方向に傾転操作すると、旋回装置3の油圧モータ3Aに供給される圧油の流量と方向とを制御する他の方向制御弁(図示せず)に向けてパイロット圧が供給される。他の方向制御弁にパイロット圧が供給されると、他の方向制御弁の弁位置が切換えられて油圧ポンプ7からの圧油が油圧モータ3Aに供給される。これにより、油圧モータ3Aが作動して上部旋回体4を旋回動作させることができる。
【0022】
左操作レバー装置10と他の方向制御弁との間には、旋回操作圧センサ15が設けられている。この旋回操作圧センサ15は、上部旋回体4を旋回させるための旋回操作圧(パイロット圧)を検出する。即ち、旋回操作圧センサ15は、左操作レバー装置10が操作されて上部旋回体4が旋回動作しているか否かを検出する。そして、旋回操作圧センサ15は、左操作レバー装置10を操作したときのパイロット圧を後述のコントローラ20に出力する。なお、右操作レバー装置11の操作により上部旋回体4が旋回動作する場合には、右操作レバー装置11と他の方向制御弁との間に旋回操作圧センサ15が設けられる。
【0023】
次に、作業装置5に搭載された第1,第2,第3慣性センサ16,17,18と上部旋回体4に搭載された第4慣性センサ19とについて説明する。なお、第1~第4慣性センサ16~19は、同一仕様の慣性センサであるが、説明の便宜のためにブーム5Aに取付けられるセンサを第1慣性センサ16とし、アーム5Bに取付けられるセンサを第2慣性センサ17とし、バケット5Cに取付けられるセンサを第3慣性センサ18とし、上部旋回体4に取付けられるセンサを第4慣性センサ19として説明する。
【0024】
第1慣性センサ16は、互いに直交する3つの座標軸(第1軸A~第3軸C)の角速度ωa~ωcおよび加速度を検出可能となっている。図9に示すように、第1慣性センサ16は、互いに直交する第1軸A、第2軸B、および第3軸Cが予め設定されている。この場合、第1慣性センサ16は、第1軸Aを回転軸とする角速度ωa、第2軸Bを回転軸とする角速度ωb、および第3軸Cを回転軸とする角速度ωcを検出し、これら検出値を後述のコントローラ20に出力する。第2~第4慣性センサ17~19についても第1慣性センサ16と同様である。
【0025】
図1図4に示すように、第1慣性センサ16は、例えばブーム5Aを回動動作させたときに、第1軸Aから所定の大きさの角速度ωaが検出されるようにブーム5Aの上面に取付けられている。図1図5に示すように、第2慣性センサ17は、例えばアーム5Bを回動動作させたときに、第2軸Bから所定の大きさの角速度ωbが検出されるようにアーム5Bの上面に取付けられている。図1図6に示すように、第3慣性センサ18は、例えばバケット5Cを回動動作させたときに、第3軸Cから所定の大きさの角速度ωcが検出されるようにバケットリンク5C2に取付けられている。
【0026】
即ち、第1慣性センサ16~第3慣性センサ18は、同じ仕様の慣性センサであるが、それぞれ90°回転および反転させることにより互いに取付向きを異ならせている。なお、ブーム5Aを回動動作させれば第1慣性センサ16、第2慣性センサ17、および第3慣性センサ18の全てが動作するので、各慣性センサ16~18からそれぞれ角速度ωa~ωcが検出されることになる。
【0027】
即ち、第1慣性センサ16、第2慣性センサ17、および第3慣性センサ18は、油圧ショベル1が停車している状態でブーム5Aに俯仰の動作をさせたときに、搭載箇所を判定するときに用いる判定用座標軸が互いに異なる座標軸となるようにそれぞれの部位に取付けられている。また、第4慣性センサ19は、例えばキャブ8の下側で上部旋回体4に搭載され、車体の傾きにより角速度ωa~ωcが検出される。
【0028】
コントローラ20は、例えばマイクロコンピュータからなり、上部旋回体4に設けられている。このコントローラ20は、第1慣性センサ16~第4慣性センサ19のセンサ出力(角速度ωa~ωc)を用いて作業装置5の動作姿勢を演算する。コントローラ20は、入力側に走行操作圧センサ14、旋回操作圧センサ15、および第1~第4慣性センサ16~19が接続され、出力側に表示装置13および他のコントローラ(図示せず)が接続されている。コントローラ20には、図7に示す各慣性センサ16~19の搭載箇所設定処理が格納されている。そして、コントローラ20は、姿勢演算部21、搭載箇所判定部22、および搭載箇所設定部23を含んで構成されている。
【0029】
姿勢演算部21は、油圧ショベル1の掘削作業時に第1慣性センサ16~第4慣性センサ19から出力されるセンサ出力から車体、ブーム5A、アーム5B、およびバケット5Cの動作姿勢を演算する。姿勢演算部21で演算された動作姿勢は、表示装置13に出力される。そして、表示装置13は、油圧ショベル1の動作姿勢を表示してオペレータによる掘削作業を補助する。
【0030】
この場合、姿勢演算部21は、第1慣性センサ16~第4慣性センサ19がそれぞれどの部位に取付けられているものかを認識する必要がある。そのために、コントローラ20は、油圧ショベル1の掘削作業前に各慣性センサ16~19の搭載箇所を認識するために搭載箇所判定部22と搭載箇所設定部23とを備えている。
【0031】
搭載箇所判定部22は、第1慣性センサ16~第4慣性センサ19の搭載箇所を判定する。搭載箇所判定部22には、走行操作圧センサ14と旋回操作圧センサ15とからそれぞれの操作圧Pa,Pbが入力される。また、搭載箇所判定部22には、第1慣性センサ16~第4慣性センサ19からそれぞれのセンサ出力(角速度ωa~ωc)が入力される。
【0032】
まず、搭載箇所判定部22は、第1慣性センサ16~第4慣性センサ19の搭載箇所を判定する条件として、油圧ショベル1が停止しているか否かを判定する。具体的には、搭載箇所判定部22は、走行操作圧Paが予め設定された走行操作圧閾値Pr以下(Pa≦Pr)となっているか否かを判定することにより油圧ショベル1が停車しているか走行しているかを判定する。また、搭載箇所判定部22は、旋回操作圧Pbが予め設定された旋回操作圧閾値Pt以下(Pb≦Pt)となっているか否かを判定することにより油圧ショベル1の上部旋回体4が旋回しているか停止しているかを判定する。
【0033】
この場合、走行操作圧閾値Prと旋回操作圧閾値Ptとは、油圧ショベル1の振動等の外乱による操作圧検出値の変動から誤判定を避けるために設定されたもので、予め搭載箇所判定部22に格納(記憶)されている。即ち、走行操作圧閾値Prと旋回操作圧閾値Ptとは、油圧ショベル1が停止しているときのノイズによる誤判定を防止するために設定されている。
【0034】
次に、搭載箇所判定部22は、第1慣性センサ16~第4慣性センサ19から出力されたセンサ出力(角速度ωa~ωc)に基づき各慣性センサ16~19が上部旋回体4、ブーム5A、アーム5B、およびバケット5Cのうちいずれの部位に搭載されているかを判定する。具体的には、搭載箇所判定部22は、オペレータが右操作レバー装置11を操作してブーム5Aに俯仰の動作(回動動作)をさせたときに、第1慣性センサ16~第3慣性センサ18が動作することにより検出される角速度ωa~ωcが各閾値ω1~ω3以上となっているか否かを判定して各慣性センサ16~19の搭載箇所を決定する。
【0035】
従って、搭載箇所判定部22には、各慣性センサ16~19の第1軸Aの角速度ωaに対応する第1軸用判定閾値ω1と、各慣性センサ16~19の第2軸Bの角速度ωbに対応する第2軸用判定閾値ω2と、各慣性センサ16~19の第3軸Cの角速度ωcに対応する第3軸用判定閾値ω3とが格納されている。これら閾値ω1~ω3は、振動等の外乱による検出値の誤判定を避けるために、実験およびシミュレーション等により設定されている。
【0036】
そして、搭載箇所判定部22は、第1軸Aの角速度ωaが第1軸用判定閾値ω1以上(ωa≧ω1)となっている慣性センサをブーム5Aに搭載されたブーム用慣性センサであると判定する。また、搭載箇所判定部22は、第2軸Bの角速度ωbが第2軸用判定閾値ω2以上(ωb≧ω2)となっている慣性センサをアーム5Bに搭載されたアーム用慣性センサであると判定する。一方、搭載箇所判定部22は、第3軸Cの角速度ωcが第3軸用判定閾値ω3以上(ωc≧ω3)となっている慣性センサをバケット5Cに搭載されたバケット用慣性センサであると判定する。
【0037】
なお、各搭載箇所に対応する検出軸を第1軸Aから第3軸Cのうちいずれの軸とするかは、各慣性センサ16~18の取付向きが決まっている場合には予め搭載箇所判定部22に格納されていてもよいし、オペレータ等により任意に設定してもよい。そして、搭載箇所判定部22は、第1慣性センサ16~第3慣性センサ18の搭載箇所を判定して後述の搭載箇所設定部23で設定した後に、残った未設定の第4慣性センサ19を車体用慣性センサとして判定する。
【0038】
搭載箇所設定部23は、搭載箇所判定部22の判定結果に基づいてブーム5A、アーム5B、バケット5C、および車体(上部旋回体4)と各慣性センサ16~19との対応関係を設定する。これにより、コントローラ20は、同一仕様の第1慣性センサ16~第4慣性センサ19をそれぞれどの位置に搭載(取付)したかを、ブーム5Aを作動させるだけで一度に設定することができる。
【0039】
第1実施形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、以下その動作について説明する。
【0040】
まず、オペレータは、キャブ8に乗込んで運転席8Aに着座する。この状態で、オペレータは、走行操作レバー装置9を操作することにより、下部走行体2を走行させることができる。一方、左,右の操作レバー装置10,11を操作することにより、上部旋回体4の旋回動作および作業装置5によって土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0041】
また、オペレータは、掘削作業の補助として、表示装置13に表示されるバケット5Cの先端位置を確認することができる。この場合、バケット5Cの先端位置は、コントローラ20の姿勢演算部21がブーム5A、アーム5B、バケット5C、および上部旋回体4に搭載された各慣性センサ16~19のセンサ出力(角速度ωa~ωc)から動作姿勢を演算している。
【0042】
ところで、コントローラ20の姿勢演算部21は、動作姿勢を演算する場合に各慣性センサ16~19がどの位置に搭載されているものかを認識する必要がある。そこで、各慣性センサを1個ずつ取付けて設定を行う方法があるが、この方法では慣性センサの取付け、設定、および取外しという一連の設定作業を慣性センサの搭載数分だけ行わなければならず、設定作業の時間および手間がかかる虞がある。また、各慣性センサを搭載箇所が指定された専用の慣性センサとすることで、搭載箇所の設定を不要にすることができる。しかし、各慣性センサの搭載箇所の取り違えが発生する虞がある。また、各慣性センサが故障した場合に対応するためには、各搭載箇所専用の慣性センサを在庫として用意しておかなければならないので、各慣性センサの在庫管理および保管のコストが増加する虞がある。
【0043】
そこで、本実施形態では、油圧ショベル1の掘削作業前に、例えばブーム5Aを回動動作させるだけで一度に各慣性センサ16~19の搭載箇所を設定することができるようにしている。具体的には、ブーム5Aに搭載された第1慣性センサ16は、例えばブーム5Aを回動動作させたときに、第1軸Aの角速度ωaが第1軸用判定閾値ω1以上となるようにブーム5Aに搭載されている。一方、アーム5Bに搭載された第2慣性センサ17は、例えばブーム5Aを回動動作させたときに、第2軸Bの角速度ωbが第2軸用判定閾値ω2以上となるようにアーム5Bに搭載されている。
【0044】
また、バケット5Cに搭載された第3慣性センサ18は、例えばブーム5Aを回動動作させたときに、第3軸Cの角速度ωcが第3軸用判定閾値ω3以上となるようにバケット5Cに搭載されている。即ち、各慣性センサ16~18は、それぞれ異なる検出軸で所定の大きさの角速度を検出するようにそれぞれの部位に取付けられている。
【0045】
次に、コントローラ20による搭載箇所設定処理について、図7を参照して説明する。なお、図7に示す搭載箇所設定処理は、例えばキースイッチ12がON操作された後、所定の時間内で実行される。
【0046】
まず、ステップ1では、走行、旋回の操作圧が閾値以下か否かを判定する。即ち、コントローラ20の搭載箇所判定部22は、走行操作圧センサ14から出力された走行操作圧Paが走行操作圧閾値Pr以下(Pa≦Pr)となっているか否かを判定することにより、油圧ショベル1の停車状態を判定する。また、搭載箇所判定部22は、旋回操作圧センサ15から出力された旋回操作圧Pbが旋回操作圧閾値Pt以下(Pb≦Pt)となっているか否かを判定することにより、上部旋回体4が旋回動作していない(非旋回状態)ことを判定する。
【0047】
そして、ステップ1で「YES」、即ち油圧ショベル1が停車および停止状態であると判定された場合には、ステップ2に進む。一方、ステップ1で「NO」、即ち油圧ショベル1が走行または旋回動作していると判定された場合には、油圧ショベル1の停車および停止状態となるまで監視する。
【0048】
ステップ2では、センサ出力が閾値以上となった慣性センサがあるか否かを判定する。この場合、図10に示すようなブーム5Aの操作を促す表示を確認したオペレータは、右操作レバー装置11を操作してブーム5Aに回動動作をさせる。搭載箇所判定部22は、第1慣性センサ16~第3慣性センサ18のセンサ出力(角速度ωa~ωc)のうち閾値ω1~ω3以上となっているものがあるか否かを判定する。そして、ステップ2で「YES」、即ち閾値ω1~ω3以上の検出値を出力している慣性センサがあると判定された場合には、ステップ3に進む。一方、閾値ω1~ω3以上の検出値を出力している慣性センサがないと判定された場合には、ステップ1に戻る。
【0049】
ステップ3では、閾値以上となった検出軸は第1軸か否かを判定する。即ち、搭載箇所判定部22は、第1軸用判定閾値ω1以上を検出している第1軸Aの角速度ωa(ω1≦ωa)があるか否かを判定する。そして、ステップ3で「YES」、即ち第1軸Aの角速度ωaが第1軸用判定閾値ω1以上となっていると判定された場合には、ステップ4に進む。一方、ステップ3で「NO」、即ち第1軸Aの角速度ωaが第1軸用判定閾値ω1未満であると判定された場合には、ステップ5に進む。
【0050】
ステップ4では、対応する慣性センサをブーム用に設定する。即ち、コントローラ20の搭載箇所設定部23は、第1軸Aの角速度ωaが第1軸用判定閾値ω1以上を検出している第1慣性センサ16をブーム5Aに搭載されたブーム用慣性センサとして設定する。
【0051】
次のステップ5では、閾値以上となった検出軸は第2軸か否かを判定する。即ち、搭載箇所判定部22は、第2軸用判定閾値ω2以上を検出している第2軸Bの角速度ωb(ω2≦ωb)があるか否かを判定する。そして、ステップ5で「YES」、即ち第2軸Bの角速度ωbが第2軸用判定閾値ω2以上となっていると判定された場合には、ステップ6に進む。一方、ステップ5で「NO」、即ち第2軸Bの角速度ωbが第2軸用判定閾値ω2未満であると判定された場合には、ステップ7に進む。
【0052】
ステップ6では、対応する慣性センサをアーム用に設定する。即ち、コントローラ20の搭載箇所設定部23は、第2軸Bの角速度ωbが第2軸用判定閾値ω2以上を検出している第2慣性センサ17をアーム5Bに搭載されたアーム用慣性センサとして設定する。
【0053】
次のステップ7では、閾値以上となった検出軸は第3軸か否かを判定する。即ち、搭載箇所判定部22は、第3軸用判定閾値ω3以上を検出している第3軸Cの角速度ωc(ω3≦ωc)があるか否かを判定する。そして、ステップ7で「YES」、即ち第3軸Cの角速度ωcが第3軸用判定閾値ω3以上となっていると判定された場合には、ステップ8に進む。一方、ステップ7で「NO」、即ち第3軸Cの角速度ωcが第3軸用判定閾値ω3未満であると判定された場合には、ステップ9に進む。
【0054】
ステップ8では、対応する慣性センサをバケット用に設定する。即ち、コントローラ20の搭載箇所設定部23は、第3軸Cの角速度ωcが第3軸用判定閾値ω3以上を検出している第3慣性センサ18をバケット5Cに搭載されたバケット用慣性センサとして設定する。
【0055】
次のステップ9では、未設定の慣性センサは1個のみか否かを判定する。即ち、搭載箇所判定部22は、搭載箇所設定部23が第1慣性センサ16をブーム用に設定し、第2慣性センサ17をアーム用に設定し、第3慣性センサ18をバケット用に設定したか否かを判定する。そして、ステップ9で「YES」、即ち未設定の慣性センサが1個のみであると判定された場合には、ステップ10に進む。一方、ステップ10で「NO」、即ち未設定の慣性センサが2個以上あると判定された場合には、ステップ1に戻る。
【0056】
なお、ステップ3~ステップ9までの間には、図11に示すように、各慣性センサ16~19の設定状況が表示装置13に表示される。これにより、未設定となっている慣性センサ16~19を認識することができるので、例えば故障して設定不能な慣性センサを特定することができる。
【0057】
ステップ10では、未設定の慣性センサを車体用に設定する。即ち、コントローラ20の搭載箇所設定部23は、第1慣性センサ16~第4慣性センサ19のうち最後に残った第4慣性センサ19を上部旋回体4に搭載された車体用慣性センサとして設定する。この場合、表示装置13には、第1慣性センサ16~第4慣性センサ19の設定が完了したことが表示される。
【0058】
次に、搭載箇所設定処理を行う場合にブーム5Aを回動させたときの第1慣性センサ16~第3慣性センサ18から出力されるセンサ出力(角速度ωa~ωc)について、図8を参照して説明する。
【0059】
まず、オペレータがブーム5Aを下向きに回動させると、図4図6に示すように、第1慣性センサ16~第3慣性センサ18は、それぞれ矢示D方向に動作する。この場合、第1慣性センサ16から出力されるセンサ出力は、第1軸Aの角速度ωaが第1軸用判定閾値ω1以上の値を検出する。一方、第1慣性センサ16から出力される第2軸Bの角速度ωbは、第2軸用判定閾値ω2未満の値を検出し、第3軸Cの角速度ωcは、第3軸用判定閾値ω3未満の値を検出する。
【0060】
また、第2慣性センサ17から出力されるセンサ出力は、第2軸Bの角速度ωbが第2軸用判定閾値ω2以上の値を検出する。一方、第2慣性センサ17から出力される第1軸Aの角速度ωaは、第1軸用判定閾値ω1未満の値を検出し、第3軸Cの角速度ωcは、第3軸用判定閾値ω3未満の値を検出する。
【0061】
そして、第3慣性センサ18から出力されるセンサ出力は、第3軸Cの角速度ωcが第3軸用判定閾値ω3以上の値を検出する。一方、第1軸の角速度ωaは、第1軸用判定閾値ω1未満の値を検出し、第2軸Bの角速度ωbは、第2軸用判定閾値ω2未満の値を検出する。即ち、第1~第3慣性センサ16~18は、互いに異なる座標軸を判定用座標軸としている。これにより、コントローラ20の搭載箇所判定部22は、その検出軸に対応した慣性センサと搭載箇所とを対応させることができる。
【0062】
かくして、第1実施形態の建設機械(油圧ショベル1)によれば、自走可能な下部走行体2と、前記下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体4と、前記上部旋回体4に設けられ互いに連結された複数の可動部(作業装置5)と、前記各可動部にそれぞれ搭載され互いに直交する3つの座標軸(第1軸A~第3軸C)の角速度(ωa~ωc)を検出可能な複数の同一仕様の慣性センサ(第1慣性センサ16~第3慣性センサ18)と、前記各慣性センサのセンサ出力を用いて前記各可動部の動作姿勢を演算するコントローラ20と、前記下部走行体2を走行させるための走行操作圧Paを検出する走行操作圧センサ14と、前記上部旋回体4を旋回させるための旋回操作圧Pbを検出する旋回操作圧センサ15とを備えている。
【0063】
そして、前記複数の慣性センサは、前記複数の可動部を動作させたときに互いに異なる座標軸で回転するように前記複数の可動部にそれぞれ搭載されており、前記コントローラ20は、前記走行操作圧Paと前記旋回操作圧Pbとが予め設定されたそれぞれの操作圧閾値(走行操作圧閾値Pr、旋回操作圧閾値Pt)以下となっている状態で前記複数の可動部を動作させた場合に、前記複数の慣性センサから出力された前記センサ出力に基づき前記各慣性センサが前記複数の可動部のうちいずれの可動部に搭載されているかを判定し、その判定結果に基づいて前記各可動部と前記各慣性センサとの対応関係を設定する。
【0064】
これにより、複数箇所に搭載された同一仕様の慣性センサをそれぞれどこに搭載したかを簡単に設定することができるので、センサ搭載箇所の設定作業の作業性を向上することができる。また、慣性センサをどの位置にでも搭載することができるので、搭載箇所の取り違えが発生することはなく、また在庫管理等のコストを削減することができる。
【0065】
また、情報を表示するための表示装置13を備え、前記表示装置13は、前記コントローラ20により設定された前記各慣性センサの設定情報を表示する。これにより、オペレータは、各慣性センサ16~19の設定状況を認識することができる。
【0066】
また、前記複数の可動部は、前記上部旋回体4に俯仰の動作が可能に連結されたブーム5Aと、前記ブーム5Aの先端側に連結されたアーム5Bと、前記アーム5Bの先端側に連結された作業具(バケット5C)とからなり、前記複数の慣性センサ16~18は、前記ブーム5Aに搭載され前記3つの座標軸のうち第1軸Aを判定用座標軸とする第1慣性センサ16と、前記アーム5Bに搭載され前記3つの座標軸のうち第2軸Bを判定用座標軸とする第2慣性センサ17と、前記作業具に搭載され前記3つの座標軸のうち第3軸Cを判定用座標軸とする第3慣性センサ18とにより構成され、前記コントローラ20は、前記複数の可動部を動作させた場合に、前記第1軸Aの角速度ωaが第1軸用判定閾値ω1以上となったときには前記第1慣性センサ16をブーム用慣性センサと判定し、前記第2軸Bの角速度ωbが第2軸用判定閾値ω2以上となったときには前記第2慣性センサ17をアーム用慣性センサと判定し、前記第3軸Cの角速度ωcが第3軸用判定閾値ω3以上となったときには前記第3慣性センサ18を作業具用慣性センサと判定する。
【0067】
これにより、例えばブーム5Aを回動させるだけで1度に第1慣性センサ16~第3慣性センサ18の搭載箇所を設定することができるので、各慣性センサ16~18の搭載箇所設定作業の作業性を向上することができる。
【0068】
次に、図13ないし図15は、本発明の第2実施形態を示している。第2実施形態の特徴は、搭載箇所設定処理を開始するときに操作される開始操作装置を設けたことにある。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同一の構成要素は同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0069】
開始操作装置31は、各慣性センサ16~19の搭載箇所の設定を開始するときに操作される。この開始操作装置31は、例えばキャブ8内の表示装置13またはキースイッチ12の周囲に設けられている。開始操作装置31は、コントローラ20の判定モード制御部32に接続され、オペレータが各慣性センサ16~19の搭載箇所を設定するときにON操作される。
【0070】
判定モード制御部32は、コントローラ20に設けられている。この判定モード制御部32は、開始操作装置31からON操作の出力信号を受信することにより、判定(設定)制御処理を開始する。即ち、オペレータが開始操作装置31をON操作すると、コントローラ20が各慣性センサ16~19の搭載箇所を判定するための判定モードがOFFからONに切換えられる。また、判定モード制御部32は、搭載箇所判定部22の判定処理の進捗情報および操作指示情報を表示装置13に出力する。
【0071】
次に、コントローラ20による搭載箇所設定処理について、図14図15を参照して説明する。なお、図14図15に示す搭載箇所設定処理は、例えば開始操作装置31がON操作された後、所定の時間(周期)内で繰り返し実行される。
【0072】
ステップ11では、判定モードONか否かを判定する。即ち、コントローラ20の判定モード制御部32は、オペレータにより開始操作装置31がON操作されたことを検出したか否かを判定する。そして、ステップ11で「YES」、即ち判定モードONになっていると判定された場合には、ステップ12に進む。一方、ステップ11で「NO」、即ち判定モードOFFになっていると判定された場合には、搭載箇所設定処理は行わずにエンドとなる。
【0073】
ステップ12では、ブーム操作指示情報を表示する。即ち、判定モード制御部32は、判定モードがONとなったことを表示装置13に出力する。そして、例えば図10に示すように、オペレータにブーム5Aを回動動作させることを促す画像情報および文字情報を表示装置13に表示する。これにより、オペレータは次に操作すべきことを認識することができるので、搭載箇所設定処理を円滑に進めることができる。そして、次のステップ13~ステップ22は、第1実施形態の図7に示すステップ1~ステップ10と同様の制御処理が行われるので、その説明を省略する。
【0074】
ステップ23では、判定完了情報を表示する。即ち、各慣性センサ16~19の搭載箇所の設定が完了した場合には、コントローラ20の判定モード制御部32は判定モードをONからOFFに切換え、その信号を表示装置13に出力する。そして、例えば図12に示すように、各慣性センサ16~19の搭載箇所設定が完了したことを表示装置13に表示する。なお、オペレータが開始操作装置31をOFF操作したり、制御処理が進まずに所定時間経過したりする等で搭載箇所設定処理が途中で中断、中止された場合には、表示装置13に搭載箇所設定処理が中断、中止されたことを表示してもよい。
【0075】
かくして、このように構成された第2実施形態では、前記各慣性センサ16~19の搭載箇所の設定を開始するときに操作される開始操作装置31を備え、前記コントローラ20は、前記開始操作装置31が操作されたときに前記各慣性センサ16~19の搭載箇所を設定している。これにより、第2実施形態では、上述した第1実施形態と同様の作用効果を得ることができると共に、オペレータの意思で各慣性センサ16~19の搭載箇所の設定を開始することができる。
【0076】
なお、上述した第2実施形態では、開始操作装置31をキャブ8内に設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図16に示す変形例のように、開始操作装置41A、判定モード制御部41B、および表示装置41Cを備えた携帯端末等の外部端末41を有線または無線によりコントローラ20に接続して、搭載箇所設定処理を行ってもよい。また、搭載箇所設定処理は、キャブ8内の開始操作装置31または外部端末41のどちらでもできるようにしてもよい。
【0077】
また、上述した第1実施形態では、ブーム5Aを回動動作させることにより第1慣性センサ16~第3慣性センサ18を動作させた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばバケット5Cのみを回動動作させて第3慣性センサ18のみを設定した後に、アーム5Bを回動させて第2慣性センサ17を設定し、その後にブーム5Aを回動させて第1慣性センサ16を設定してもよい。このことは、第2実施形態および変形例についても同様である。
【0078】
また、上述した実施形態では、第1慣性センサ16をブーム5Aの上面に取付けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばブーム5Aの下面または側面に取付けてもよい。このことは、アーム5Bに取付けられる第2慣性センサ17およびバケット5Cに取付けられる第3慣性センサ18についても同様である。
【0079】
また、上述した実施形態では、建設機械として油圧ショベル1を例に挙げて説明した。本発明はこれに限らず、例えばホイールローダのような各種の建設機械に適用可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体
4 上部旋回体
5 作業装置
5A ブーム(可動部)
5B アーム(可動部)
5C バケット(可動部)
13,41C 表示装置
14 走行操作圧センサ
15 旋回操作圧センサ
16 第1慣性センサ
17 第2慣性センサ
18 第3慣性センサ
19 第4慣性センサ
20 コントローラ
21 姿勢演算部
22 搭載箇所判定部
23 搭載箇所設定部
31,41A 開始操作装置
A 第1軸
B 第2軸
C 第3軸
ωa 第1軸の角速度
ωb 第2軸の角速度
ωc 第3軸の角速度
ω1 第1軸用判定閾値
ω2 第2軸用判定閾値
ω3 第3軸用判定閾値
Pa 走行操作圧
Pb 旋回操作圧
Pr 走行操作圧閾値
Pt 旋回操作圧閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16