(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】ウォームねじ形状の加工領域を有する工具の幾何寸法の自動測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 21/06 20060101AFI20220902BHJP
G01B 5/04 20060101ALI20220902BHJP
G01B 11/04 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
G01B21/06
G01B5/04
G01B11/04 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018164933
(22)【出願日】2018-09-03
【審査請求日】2021-03-29
(31)【優先権主張番号】10 2017 121 344.9
(32)【優先日】2017-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】594012634
【氏名又は名称】リープヘル-フェアツァーンテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘルビュルガー ジョセフ
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5521707(US,A)
【文献】特開平5-107048(JP,A)
【文献】特開2000-263440(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0338201(US,A1)
【文献】国際公開第2009/119713(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/00-21/32
G01B 5/00-5/30
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォームねじ形状の加工領域を有する工具(1)、特に研削ウォームの幾何寸法を自動的に測定する方法であって、
距離を検出するために、測定要素(2)を前記工具(1)に向け、
前記工具(1)を、前記測定要素(2)に対して回転させ、
前記工具(1)の回転中に前記測定要素(2)により検出された距離値に基づいて、前記工具(1)の幾何寸法に係る判定を行う
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
回転軸(B1)に沿って停止した状態の前記工具(1)、及び、360°
の倍数の回転中、好ましくは720°回転中の前記工具(1)について検出された距離値を、特定の閾値と比較し、
前記工具(1)のねじ山の数を、前記閾値と比較された距離値に基づいて求める
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、
前記測定要素(2)を、前記工具(1)のねじ幅について中央に配置し、
回転中に固定配置されている測定要素(2)が、距離の測定を行いつつ、ねじ山に向けて継続的に配向されてその配向から外れることがないように、回転軸(B1)に沿って停止している工具(1)を回転及び停止させ、
前記測定要素(2)を、回転後の位置にある前記工具(1)のねじ幅の中央に再度位置決めし、
ねじ幅の2つの中央点の回転前後の移動に基づいて、前記工具(1)のねじ山のピッチ方向を測定し、
好ましくは、前記測定要素(2)を、前記工程の間、前記工具(1)の回転軸(B1)に対して実質的に垂直に位置合わせする
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法において、
前記測定要素(2)を、前記工具(1)の歯末(11)又は歯面(12)に向け、
前記工具(1)を、前記測定要素(2)と噛み合った状態で回転させ、好ましくは、前記工具(1)を、前記工具(1)のねじ山のリード角に従って、回転軸(B1)に沿って接線方向に移動させ、
前記歯末(11)又は前記歯面(12)の状態及び/又は輪郭を、前記測定要素(2)によって検出された距離値に基づいて測定し、
前記歯末(11)又は前記歯面(12)の欠損を、好ましくは、前記工具(1)の特定の接線位置及び角度位置で測定する
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の方法において、
測定結果を、前記工具(1)の測定時に検査し、
前記測定要素を、前記工具(1)のねじ山の中央に位置合わせし、
前記工具(1)を、好ましくはその全長に沿って、検査対象の値を考慮して、測定要素と噛み合った状態で移動させ、
前記移動中に検出された距離値及び/又は前記工具(1)のねじ山の中央に対する移動後の前記測定要素の位置によって、前記工具(1)の幾何形状の測定結果の正確さを判定できる
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の方法において、
前記測定要素は、
レーザ距離測定装置等の光学測定ユニット、
衝撃音装置を有するドレッサ/複合プロフィールローラのような音響測定ユニット、及び
例えば、ドレッサの追従誤差の評価及び/又は消費電流、消費電力、モータ電圧などのドレッサを駆動するためのモータパラメータの評価等を行う物理測定ユニット、
のうちの少なくともいずれか1つである
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の方法において、
衝撃音装置を有するドレッサによって前記測定要素を構成する場合、前記ドレッサは、好ましくは、ドレッシングホイールか複合プロファイルローラであり、前記工具(1)に対して回転中の前記ドレッサが前記工具(1)に衝突すると、前記ドレッサは前記衝撃音装置により検知可能な衝撃音の変化を引き起こし、これにより、前記ドレッサからの最短距離を測定可能である
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項
1から6のいずれか1項に記載の方法において、
回転す
るドレッサと前記工具(1)との接触時の摩擦により遅延が生じ、所望の値と実際の値との比較において前記ドレッサと前記工具(1)との接触を判定可能とする差を検出することで、好ましくはドレッシングホイール又は複合プロファイルローラであるドレッサにより構成される測定要素において、追従誤差を使用して前記ドレッサと前記工具(1)との最短距離を求める
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項
1から6のいずれか1項に記載の方法において、
前記工具(1)との接触時に摩擦が生じ、これにより発生する追加的負荷トルク
がドレッサ又は前記工具(1)の駆動部のモータパラメータ、特に、消費電流、消費電力及び/又はモータ電圧の変化に反映されることを利用し、好ましくはドレッシングホイール又は複合プロファイルローラであるドレッサにより構成される測定要素において、前記モータパラメータの検出を利用して、前記ドレッサと前記工具(1)との最短距離を求める
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
ウォームねじ形状の加工領域を有する工具(1)、特に研削ウォームの幾何形状を測定する方法であって、
ドレッサ又は複合プロファイルローラとして構成された測定要素(2)を、距離を検出するために、前記工具(1)に向け、
前記工具(1)に向けられた前記測定要素(2)により検出された距離値に基づいて、前記工具(1)の幾何形状に関する判定を行い、
前記工具(1)の上側縁部又は下側縁部が、長手方向に歯面に自由にアクセスできるように、前記工具を配置し、
前記測定要素(2)を、前記工具(1)の外径の径方向高さ及び前記工具の縁部の接線方向高さで移動させ、送り出しを、始点から出発して、径方向又は接線方向に小さなストロークで行い、前記工具(1)を、各送り出し毎に接線方向又は径方向に移動させて測定要素(2)に接触させて、歯面の輪郭を非連続的に測定する
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、
径方向又は接線方向に小さなストロークで行う前記送り出しを、前記測定要素(2)が歯元に接触するまで繰り返す
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の方法において、
ドレッサとして構成された前記測定要素(2)を、前記歯面にわたって接線方向に移動させ、この移動中に、前記工具(1)の径方向送り出しを距離測定の出力に従って行うことにより、前記測定要素(2)が前記歯面の輪郭上を接触して移動して、歯面の半連続輪郭を提供する
ことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項10から12のいずれか1項に記載の方法において、
前記ドレッサとして構成された前記測定要素(2)は、衝撃音装置、及び/又は、前記ドレッサの追随誤差評価、及び/又は、消費電流、消費電力、モータ電圧などの前記ドレッサを駆動するためのモータパラメータの評価を利用して、上記距離を検出する
ことを特徴とする方法。
【請求項14】
ウォームねじ形状の加工領域を有する工具と、距離を検出する測定要素とを備える、ワークピースに歯切りを施すための歯切り盤であって、
請求項1から13のいずれか1項に記載の方法を実施するよう構成された制御ユニットを有することを特徴とする、歯切り盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォームねじ形状の加工領域を有する工具、特に、研削ウォームの幾何形状を測定するための方法に関する。このような工具は、典型的には、ワークピースに歯切り加工を行うための歯切り盤に使用される。歯切り加工の品質のためには、工具の幾何形状パラメータを知ること、及び、手作業で行う工程を経ずにこの幾何形状パラメータを測定できることが重要である。
【背景技術】
【0002】
荒削りされたワークピースを加工するために歯切り盤を設定する際には、原則として多段設定プロセスが必要である。工具の幾何寸法は、最初に歯切り盤の外部で、手動で測定しなければならない。又は、工具のデータシートから得ることも可能である。次に、これらのデータを機械制御部に保存する必要がある。これらの幾何形状データの一部は、ドレッシング可能な工具については、例えば先行するドレッシング手順に起因して経時的に変化する。例えばウォームの直径は変化しうるため、プロファイル誤差を回避する目的で、ウォームの直径に修正を追加する必要が生じる。このことは、研削ウォームのリード又は圧力角にも当てはまる。
【0003】
したがって、研削ウォームを使用している間、これらのデータを追跡可能なように記録して、工具の交換の際にこれらのデータを再度利用できるようにすることが従来必要であった。
【0004】
設定プロセスの別の工程では、工具軸の回転位置に対する工具のねじ山の位置を制御部に保存しなければならない。この情報及びワークピース軸の回転位置に対するワークピースの歯溝の位置は、誤差のない、ギヤ連結による歯車加工プロセスを実行可能とするために必要である。これらの工程は、噛合いと呼ばれることが多い。
【0005】
今日まで、この全プロセスのうちの一部は、歯切りプロセスが既に高度に自動化されているにもかかわらず、手動で又は半自動でのみ実施されるので不都合があった。したがって、オペレータは、従来、工具の幾何形状パラメータを実質的に手動で入力した後に、最初の噛合い中に工具をワークピースの歯溝に対して位置決めする必要があった。この目的のためには、工具の歯が衝突せずに歯溝に入り込むまで、工具をその回転軸周りに手動で回転させる。次いで、工具が送り出され、工具を移動又は回転させることにより、工具の左歯面と右歯面との間でそれぞれ接触が起こり、これについての測定値が記録される。これらの接触寸法から、歯溝に対する工具の歯の中央位置を計算することができる。この中央位置をもとに、歯溝に対する工具の回転位置を計算することができる。そして、この回転位置をもとに、工具を衝突させずに既知の歯溝に入り込ませることができる工具回転位置を計算することができる。
【0006】
機械オペレータによるこれらの手動作業工程は、すべて、ドレッシング時間の増加や手動操作によって起こり得る歯切り盤の設定ミスといった不都合を引き起こす。
【0007】
従来技術では、ウォームねじ形状の加工領域を有する工具について、ピッチ及びねじ山の数の自動検出のみが知られている。
【0008】
例えば、特許文献1には、研削ウォームのねじ溝にドレッシング工具をセンタリングさせるための方法及び装置が開示されている。この特許文献には、固定研削ウォームにおけるドレッサによる検知は、その長手方向軸に沿って(すなわち、V1軸に沿って)行われ、後の自動噛合いのために、ねじ溝又は突出する歯面の間隙及び数を測定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明は、公知の先行技術によって測定される幾何形状パラメータよりも優れた、研削ウォームの加工に関する幾何形状パラメータを全自動測定することを目的とする。本発明は、さらに、幾何形状パラメータの測定を可能な限り迅速にかつ高精度で行うことも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、上記の目的は、請求項1に記載の構成又は請求項10に記載の構成を備える方法により達成される。
【0012】
「パラメータ」は、研削ウォームの外径、ウォーム幅、リード角及びリード方向のような各種の幾何寸法に加え、研削ウォームのねじ山の数やピッチ等であると理解することができる。ただし、本発明における「パラメータ」は、他の態様も含み得る。
【0013】
ウォームねじ形状の加工領域を有する工具、特に研削ウォームの幾何寸法を自動測定する方法では、距離を検出するための測定要素を、工具に向け、工具を、測定要素に対して回転させ、工具の回転中に測定要素によって検出された距離値に基づいて、工具の幾何寸法に係る判定がなされる。
【0014】
工具は、回転軸周りに回転する。ワークピースの機械加工を行う際にも、工具はこの回転軸周りに回転する。工具の幾何寸法は、このような回転中に変化する距離を利用して測定できる。
【0015】
本方法によれば、回転軸(B1)に沿って停止した状態の工具、及び、360°の回転中、好ましくは720°回転中の工具について検出された距離値を、特定の閾値と比較することが好ましい。そして、工具のねじ山の数は、閾値と比較された距離値に基づいて測定される。
【0016】
ねじ山の数は、閾値を超え、かつ、低減された距離値に対応するパルスの数から求められる。測定値の検査は、ねじ山の数から予想される工具の歯同士の間の角度間隔を、測定された角度間隔と比較することにより行う。不整合がある場合、測定が繰り返される。この測定では、研削ウォームの(回転軸B1に平行な)動程の各点で、測定ユニットが歯末を未検出である可能性があるからである。ドレッサとして構成された測定ユニットと歯末との接触は、音の変化を介して検出される。したがって、特に誤差が生じ易い。ドレッサも同様に回転させて、工具の回転によってドレッサが歯末に当たると、検出可能な衝撃音が発生するようにしてもよい。1回の回転後に、工具とドレッサの間隔を径方向に20μm縮め、2回目の回転時に衝撃音信号の信頼できるパルスを得るようにしてもよい。正確な検出の可能性を高めるためには、2回の回転を測定することが好ましい。
【0017】
この方法は、研削ウォームのリード角に従って内方に揺動された工具がなくても機能する。これは、検知が外側表面で行われるからである。よって、この方法の使用は、全く未知の研削ウォーム(工具)にも適用できる。研削ウォームが1つの領域を有するようにしさえすればよい。
【0018】
本発明では、ねじ山の数を検出するためのレーザの使用も同様に想定され得る。
【0019】
本発明の別の変形例では、(a)測定要素を、工具のねじ溝に対して中央に位置決めし、(b)回転中に固定配置されている測定要素が、距離測定の対象であるねじ山に向けて継続的に配向されてその配向から外れることがないように、回転軸(B1)に沿って停止している工具を回転及び停止させ、(c)測定要素は、回転後の位置にある工具のねじ幅の中央に再度位置決めされ、ねじ溝の2つの中央点の回転前後の移動に基づいて、工具のねじ山のピッチ方向を測定する。
【0020】
方法ステップ(a)~(c)を、記載された時系列通りの順番で実施するようにしてもよい。
【0021】
方法ステップ(a)~(c)が行われているとき、測定要素は、工具の回転軸(B1)に対して略垂直に配向されることが好ましい。このように配向することは、距離測定の精度に有利である。
【0022】
本発明の方法の別の展開においては、測定要素を、工具の歯末又は歯面に向け、工具を、測定要素と噛み合った状態で回転させ、したがって、好ましくは、工具を、工具のねじ山のリード角に従って、工具の回転軸(B1)に沿って接線方向に移動させ、歯末又は歯面の状態及び/又は輪郭を、測定要素によって検出された距離値に基づいて測定し、歯末又は歯面の欠損を、好ましくは、工具の特定の接線位置及び角度位置で発見する。
【0023】
測定ユニットとの噛み合い回転においては、工具は、回転中に工具のねじ山がしっかり係合しているかのように、回転と長手方向軸に沿った移動とを同時に行う。
【0024】
したがって、中古の研削ウォームを用いて工作機械を設定する場合には、その研削ウォームが(例えば、保管、輸送、以前の機械加工による)損傷を受けている可能性がある。この場合、ドレッシングにおいて損傷領域を考慮するか、又は、除去する必要がある。
【0025】
上記のような損傷を認識するために、噛み合った測定ユニットが、歯末及び/又は歯面を移動してもよい。損傷のない研削ウォームでは、一定不変の距離値が連続的に生成される。一方、ある1点に欠損がある場合、測定ユニットが、一定不変の距離値からの偏差をその1点において記録する。ある距離を超えたときに、工具の接線方向位置と角度位置とを保存することも可能である。これらの位置は、工具の損傷領域の始点及び終点に対応する。
【0026】
工具の幾何形状を測定する際には、好ましくは、測定結果を本発明の方法に従って検査する。この検査は、次のようにして行われる。測定ユニットを、工具のねじ山の中央に位置合わせする。工具は、好ましくはその全長に沿って、検査対象の値を考慮しながら、測定ユニットと噛み合った状態で移動させる。この移動中に検出された距離値及び/又は工具のねじ山の中央に対する移動後の測定ユニットの位置によって、工具の幾何形状の測定結果の正確さを判定することができる。
【0027】
測定結果は、測定プロセス中に監視されてはいるが、それでも、誤った結果が生成されることがあり得る。例えば、歯末が正確に1つおきに検知されない場合には、ピッチの測定が不正確であることが認識されない。このため、研削ウォームについて検出された特性を完全に検査することが好適である。
【0028】
この目的のために、研削ウォームのような工具は、測定された値を考慮しながら、噛み合った状態で移動される。研削ウォームを、この目的のために測定値から計算されるリード角度だけ内方に揺動させ、それに対応してZ1軸を再調整する。ここで、測定ユニットを、工具のねじ山に噛み合わせる。この姿勢で、噛み合ったドレッサが、研削ウォームのねじ山を移動する。噛み合い要因も同様に、前のプロセスで測定された値から、又は手入力によって入力された値から得ることができる。このプロセス中には、測定ユニットからの距離が監視される。工具の幾何形状について測定された値が誤っている場合には、検査中に歯面との衝突が発生し、この衝突は測定ユニットによって認識される。これに応答して、研削ウォームが後退させられるので、研削ウォームが検査によって(測定ユニットとの起こり得る衝突に起因して)損傷を受けることはない。
【0029】
さらに、測定ユニットを使用して、ねじ溝内の特定の点でのみ測定することも可能である。期待した値がこれによって得られない場合、先に測定された値が誤っていることになる。この方法を用いて検査時間を短縮することは可能であるが、不正確な値が確実に認識されるように距離測定の位置を選択する必要がある。
【0030】
本発明においては、測定ユニットは、レーザ距離測定装置のような光学測定ユニット、音響衝撃装置を有するドレッサのような音響測定ユニット、及び、例えば、ドレッサの追従誤差の評価及び/又は消費電流、消費電力、モータ電圧などのドレッサを駆動するためのモータパラメータの評価などを行う物理測定ユニット、のうちの少なくともいずれか1つであってもよい。
【0031】
レーザ距離測定装置は、工具からの距離値を正確に測定可能なレーザ三角測量用ユニットによって構成することができる。
【0032】
例えば、ドレッサと衝撃音装置とによって構成可能な音響計測ユニットは、典型的に回転するドレッサが工具に接触すると、即座に音の変化を認識する。ドレッサが工具に衝突すると、ドレッサ及び工具に衝撃音が発生し、ドレッサと工具との接触を知らせる。このようにして、工具の幾何形状を検知することができる。
【0033】
さらに、衝撃音装置を有するドレッサによって測定ユニットを構成する場合、このドレッサは、ドレッシングホイールか複合プロファイルローラであることが好ましい。工具に対して回転しているドレッサが工具に衝突すると、ドレッサは、衝撃音装置により検知可能な変化を衝撃音に引き起こす。これによって、ドレッサからの最短距離を測定できるようにしてもよい。
【0034】
回転しているドレッサと工具との接触時の摩擦によりドレッサの遅延が生じ、所望の値と実際の値との比較においてドレッサと工具との接触を判定可能な差を検出できるので、好ましくはドレッシングホイール又は複合プロファイルローラであるドレッサを備える測定ユニットにおいて、追従誤差を利用してドレッサと工具との最短距離を求めることが好ましい。
【0035】
さらには、ドレッサと工具との接触時に摩擦が生じ、これにより生じる追加的負荷トルクが、ドレッサ又は工具を回転させる駆動部のモータパラメータ、特に、消費電流、消費電力及び/又はモータ電圧の変化に反映されるので、好ましくはドレッシングホイール又は複合プロファイルローラであるドレッサを備える測定ユニットにおいて、上記モータパラメータの検出を利用して、ドレッサと工具との最短距離を求めることも可能である。よって、対応するモータパラメータを監視することによって、ドレッサと工具との距離又は接触を測定又は判定することができる。
【0036】
本発明は、ウォームねじ形状の加工領域を有する工具、特に研削ウォームの幾何形状を測定する方法を包含する。この方法では、距離を検出するために、ドレッサとして構成された測定要素を工具に向け、工具のドレッシング中に測定要素によって検出された距離値に基づいて、工具の幾何形状に係る判定がなされ、工具は、その上側縁部又は下側縁部において、歯面への長手方向のアクセスが自由にできるように配置され、測定要素は、工具の外径の径方向高さ及び工具縁部の接線方向高さで移動し、始点から出発して、(i)径方向又は(ii)接線方向に小さなストロークで送り出しが行われ、各送り出し毎に工具が(i)接線方向又は(ii)径方向に移動して測定要素と接触し、歯面の不連続な輪郭が測定される。
【0037】
歯面のプロファイルは、存在する研削ウォームから所望の幾何形状を生成するのに必要なドレッシング量を決定するために必要である。この目的のために、歯面を検知すべきである。工具縁部にある歯面は、原則として、検知のために使用される。ドレッサが、縁部から出発して、ちょうど1つの歯面を検知できるように、すなわち、工具縁部からちょうど半ピッチ離れた位置(非対称歯切りとは異なる比)に歯末が必ずあるように、工具が位置決めされる。
【0038】
歯末位置は、先行する測定プロセスによって測定することができ、既知である。測定プロセスのために、ドレッサを内方に揺動させて、歯面に向ける。測定の開始点は、工具における上述の位置である。その距離で測定された点は、工具(研削ウォーム)の外径の径方向高さ、及び、工具縁部の接線方向の高さに位置する。
【0039】
ドレッサを測定ユニットとして使用する場合、検知の目的で、この点から径方向に小さなストロークで工具を送り出す。各送り出し毎に、工具はドレッサと接線方向に接触する。接触は、ドレッサの1点(接触点)で明白に起こる。接触の認識は、衝撃音を介して行われる。この手順を、径方向送り出し時に、歯元で接触が起こるまで繰り返す。次いで、研削ウォームの他端における他方の歯面の検知が行われる。
【0040】
測定は、接線方向への段階的な送り出しと、径方向の検知とにより同様に行うことができる。
【0041】
径方向又は接線方向に小さなストロークで行われる送り出しが、測定要素が歯元に接触するまで繰り返されてもよい。
【0042】
本発明の、別の選択可能な展開によれば、ドレッサとして構成された測定要素は、歯面上を接線方向に移動し、この移動中に、工具の径方向送り出しが距離測定の出力に応じて行われ、測定要素が歯面輪郭上を接触して移動し、歯面の半連続輪郭を提供する。
【0043】
歯面の輪郭を検出するのに必要な測定時間を短縮するために、走査測定が行われるべきである。ドレッサは、歯面上を接線方向に移動する。この移動中、工具は、衝突音信号に従って径方向にドレッサへ送り出される。これにより、ドレッサは、接触点を有する歯面輪郭上を移動する。移動プロセスが測定され、この移動プロセスにより歯面の半連続輪郭が提供される。
【0044】
なお、この制御を、表面を検知しながら歯面輪郭に追従するように設定することもできる。この表面への応力は、はるかに小さくなる。この制御された検知は、2つのプロセスの利点、つまり、測定速度及び研削工具への応力が小さいことの組み合わせである点で好ましく、歯面輪郭測定の正確さについても満足できるものである。
【0045】
制御ループに起因する不感時間が発生するので、測定中の最大送り出しが制限される。したがって、前進運動量が大きいと、必然的に、研削工具(反応及び制動経路)に対する応力が増大する結果となる。しかし、この制限に起因して、ドレッサが特定の峻度以上では歯面輪郭に追従することができなくなることが起こり得る。したがって、V1軸の実際の位置の接線方向間隔を、制御された検知における直近の測定値の位置(接触位置)と比較し、間隔が大きすぎる場合は、接触が再び起こるまでV1軸を停止させる。
これにより、歯面の峻度とは無関係に、十分に正確な測定が確実に行われる(歯面上に十分な数の接触点が確実に設けられる)。走査測定において、小さな圧力角で正確な歯面測定を確実に行うために、接線方向運動の速度を衝撃音信号に従って制御してもよい。
【0046】
本発明の方法の別の展開では、ドレッサとして構成された測定ユニットは、衝撃音装置、及び/又は、ドレッサの追随誤差の評価、及び/又は、消費電流、消費電力、モータ電圧などのドレッサを駆動するためのモータパラメータの評価を利用して、距離を検出する。
【0047】
本発明は、さらに、ウォームのねじ形状の加工領域を有する工具と、距離を検出する測定要素とを備える、ワークピースに歯切り加工を施すための歯切り盤を包含する。この歯切り盤は、上述の方法のうちのいずれか1つを実施するよう構成された制御ユニットを有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図2】
図2は、2つの異なる位置にある工具及び測定ユニットを示す側面図である。
【
図3】
図3は、研削ウォーム及びドレッサの概略図である。
【
図4】
図4は、研削ウォームを、ピッチ方向を測定するためのドレッサの移動軌跡とともに示す図である。
【
図5】
図5は、歯末の欠損を測定するときの衝撃音信号を表わす図である。
【
図6】
図6は、径方向歯面検知の測定手順を表わす図である。
【
図7】
図7は、衝撃音アナログ信号に従った、走査軸の送り出し制御を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1には、特許請求の範囲に記載された方法を原則として実施可能な研削装置の概要を示す。
【0050】
図1には、研削装置の機能がより理解されるように、研削装置の軸が示されている。この歯切り盤の左側領域には、機械スタンド3と、機械スタンド3から水平方向に離間されたカウンタスタンド4が示されている。シフト軸6(V1軸)を有する機械加工ヘッド5、及び、研削ウォーム1を受容するための駆動モータ7は、機械スタンド3に沿ってZ軸8の方向に垂直移動可能である。本発明によれば、測定ユニットの配設位置2を、自体公知の歯切り盤のカウンタスタンド4の領域内に設けることができる。
【0051】
ドレッサを測定ユニットとして使用する場合は、このドレッサを符号2で示される領域に配置して、特に、B3軸周りに回転させることができる。ただし、測定ユニットの別の実施形態も、カウンタスタンド4に配置することができる。
【0052】
機械スタンド3及び/又はカウンタスタンド4は、それぞれ、可動式往復台に配置されており、互いに近付く方向に移動可能である。これにより、例えば、ドレッサを研削ウォーム側に送り出して、ドレッシング処理を行うことができる。
【0053】
図2は、カウンタスタンド4に対する機械スタンド3の移動をわかり易く示した側面図である。図中左側には、機械スタンド3がカウンタスタンド4から離れて配置された状態が、右側には、機械スタンド3がカウンタスタンド4に向かって移動した状態が示されている。
【0054】
この例では、測定ユニットとしてドレッサが設けられている。ドレッサ2は、研削ウォーム1との接触を様々な方法で検出することができる。
図2に示す状態では、研削ウォーム1、及び、ドレッシングホイール又は複合プロファイルローラであってもよいドレッサ2の両方が、相対する向きに回転可能であり、ドレッサ2と研削ウォーム1との接触時に研削ウォーム1の外側表面を測定可能である。
【0055】
したがって、
図2から明らかなように、ドレッサ2及びウォーム1は、
図1に示す軸に沿って、互いに近付く方向に移動可能である。
【0056】
図3は、ウォーム1のねじ山の数を検知する方法を説明する図である。
【0057】
ドレッサ2を(複合プロファイルローラで内方に揺動させて)、研削ウォーム1の外側表面の半径方向高さにおいて、好ましくはねじ溝内に、位置決めする。そして、研削ウォームを720度回転させる。なお、ねじ山数の測定は、360度以上の回転又は360度の倍数だけ回転させて行うこともできる。
【0058】
衝撃音信号は、比較器を用いて評価される。閾値を超えるパルスのそれぞれが、原則として、研削ウォーム1の1つのねじ山に対応する。研削ウォーム1を合計1回転以上させるときは、研削ウォーム1は、1回目の回転後に20μmだけ半径方向に進め、2回目の回転においても衝撃音信号中の信頼できるパルスを受ける。この例では、正確な検出の可能性を上げるために、2回の回転が測定される。1回転のみで測定することも当然可能である。
【0059】
ねじ山の数は、パルスの数からわかる。ねじ山の数から予想される歯同士の角度間隔を、測定された又は既知の角度間隔と比較することにより、測定値を検査する。不整合がある場合、測定が繰り返される。これは、この測定では、事前に測定された研削ウォームの径方向高さにおける各点で、歯末への接触が未だなされていない可能性もあるからである。
【0060】
同様に、レーザを使用したねじ山数の検出も想定され、本発明に包含される。前述した方法は、検知が外側表面で行われるので、研削ウォームのリード角に従って揺動された工具を使用しなくても機能する。したがって、これらの方法は、全く未知の研削ウォームに使用することができる。本発明の方法に対する唯一の制限は、ウォーム1が均一に設計された領域を有さなければならない点だけである。
【0061】
図4は、研削ウォームのねじ山のピッチ方向の測定をわかり易く説明する図である。測定ユニットとしては、ドレッサが用いられている。
【0062】
未知の研削ウォーム1のピッチ方向を測定するために、ドレッサ2の最大切削深さ(重なり噛合い深さ)を最初に測定する。この目的のために、ドレッサ2がねじ溝中央の接線高さに来るように、研削ウォーム1を位置決めする。この高さで、研削ウォーム1は回転するドレッサ2に径方向に進んで接触する。そして、接触位置から最大切削深さを測定することができる。左歯面及び右歯面12に移動すること(噛合い)によって、ねじ山の正確な中央位置が、例えば、最大切削深さの1/10であると判定される。次いで、ねじ溝内にドレッサ2がある状態で、研削ウォーム1をB1軸に沿って移動させる。この移動が衝突を伴わずに行われているか否かを衝撃音を利用して検査し、衝突がある場合は、移動を中止する。移動後の位置では、ドレッサ2は、左歯面及び右歯面12に移動することによって再びセンタリングされる。得られる2つのセンタリング位置には接線方向のオフセットがあり、これにより、研削ウォーム1のピッチ方向を判定することができる。
【0063】
ピッチ方向の測定が光学測定ユニットによって行われる場合、歯面との接触は、歯面上に存在することがわかっている特定の距離値の測定と置き換えることができる。
【0064】
図5は、研削ウォーム1の歯末の噛み合い移動の際に得られた線図である。測定ユニットとして、衝撃音装置を有するドレッサ2が用いられている。ただし、測定ユニットの異なる実施形態もまた本発明に包含され、
図5に示されたものと同様の結果が得られる。
【0065】
損傷した工具でワークピースを機械加工すると、満足な結果が得られない可能性がある。したがって、欠損を監視することは非常に重要である。
【0066】
したがって、中古の研削ウォーム1を用いて工作機械の設定を行う場合、その研削ウォーム1が(例えば、保管、輸送、以前の機械加工による)損傷を受けている可能性がある。この場合、ドレッシングにおいて損傷領域を考慮するか、又は、除去する必要がある。噛み合ったドレッサ2が、歯末11を移動し、上記のような損傷が認識される。損傷のない研削ウォーム1を用いる場合は、衝撃音信号が連続的に生成される。ある1点に欠損があると、ドレッサはこの点には接触せず、衝撃音は発生しない。その結果、衝撃音信号が低下する。この処理中に、比較器によって衝撃音信号が評価される。比較器が切り換わると、研削ウォームの接線方向位置と角度位置が記憶される。これらの位置は、研削ウォームの損傷領域の始点及び終点に対応している。
【0067】
この例では、損傷領域はウォーム1の歯末11において、0秒、0.6秒、2秒、2.4秒、及び2.8秒の範囲で検知されている。
【0068】
欠損に対する感度は、
図5の破線と実線との比較により示すように、信号の平滑化又は測定の速度の影響を受け得る。
【0069】
図6に、測定ユニットとしてドレッサを使用する場合における、径方向歯面検知のための可能な測定手順を示す。
【0070】
歯面の輪郭は、存在する研削ウォーム1から所望の幾何形状を生成するのに必要なドレッシング量を決定するために必要である。この目的のために、歯面12の検知を行うべきである。工具縁部にある歯面12が、検出のために利用される。ドレッサ2が、縁部から出発して、ちょうど1つの歯面12を検知できるように、すなわち、工具縁部からちょうど半ピッチ離れた位置(非対称歯切りとは異なる比)に歯末11が必ずあるように、研削ウォーム1が位置決めされる。
【0071】
歯末位置は、予め実施される方法によって測定してもよいし、機械のオペレータが入力してもよい。測定プロセスのために、ドレッサ2を内側に揺動させて、1点のみで歯面12に接触させる。測定の開始点は、研削ウォーム1における上述の位置である。ドレッサ2の接触点は、研削ウォーム1の外径の径方向高さ、及び、工具縁部の接線方向高さに位置する。検知のために、研削ウォーム1を、この点から径方向に小さなストロークで送り出す。各送り出し毎に、研削ウォーム1はドレッサ2に接線方向に接触する。接触は、ドレッサ2の1点(接触点)で明白に起こる。接触の認識は、衝撃音を介して行われる。この手順を、径方向送り出し時に歯元13で接触が起こるまで繰り返す。次いで、研削ウォーム1の他端における他方の歯面12の検知が行われる。測定は、接線方向への段階的な送り出し、及び、径方向の検知により同様に行うことができる。この方法により、歯面12の輪郭が不連続なかたちで提供される。例えば、この輪郭から圧力角を求めることができる。なお、歯面12だけを検知してもよい。図(矢印)からわかるように、歯元13(又は歯末11)の検知時に、内側に揺動した状態のドレッサ2が別の接触点において接触する。ドレッサ2の輪郭は、ヘッドにおいては正確に規定されていないので、ドレッサ2を所望のように揺動させることができず、接触点が再計算される。
【0072】
追従誤差を介して、又は、モータパラメータの観察を介しても、接触を同様に認識することができる。
【0073】
図7は、ドレッサを測定ユニットとして用いた場合の、衝撃音アナログ信号に従った走査軸の送り出し制御を示す。
【0074】
歯面の輪郭を検出するために必要な測定時間を短縮するために、走査測定が行われるべきである。ドレッサ2は歯面上を接線方向に移動する。この移動中、研削ウォーム1は、衝突音信号に従って径方向にドレッサ2側に送り出される。これにより、ドレッサ2は、接触点を伴って歯面輪郭上を移動する。この移動プロセスが測定されて、移動プロセスにより歯面の半連続輪郭が提供される。
【0075】
しかしながら、この制御を、歯面輪郭検知が表面を追跡するように設定することもできる。この表面への応力は、はるかに小さくなる。この制御された検知は、測定の速度及び研削工具への応力が小さい点で有利である。また、歯面輪郭の測定精度に関しても満足できるものである。
【0076】
制御ループに起因する不感時間が発生するので、測定中の最大送り出しが制限される。したがって、前進運動量が大きいと、必然的に、研削工具(反応及び制動経路)に対する応力が増大する結果となる。しかし、この制限に起因して、ドレッサ2が特定の峻度以上では歯面輪郭に追従することができなくなることが起こり得る。したがって、V1軸の実際の位置の接線方向間隔を、制御された検知における直近の測定値の位置(接触位置)と比較し、間隔が大きすぎる場合は、接触が再び起こるまでV1軸を停止させるようにしてもよい。これにより、歯面の峻度とは無関係に、十分に正確な測定が確実に行われる(歯面上に十分な数の接触点が確実に設けられる)。
【0077】
走査測定において、小さな圧力角で確実に歯面を正確に測定するために、接線方向移動の速度を衝撃音信号に応じて制御してもよい。