IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 清水建設株式会社の特許一覧

特許7134043電源システムおよび電源システムの制御方法
<>
  • 特許-電源システムおよび電源システムの制御方法 図1
  • 特許-電源システムおよび電源システムの制御方法 図2
  • 特許-電源システムおよび電源システムの制御方法 図3
  • 特許-電源システムおよび電源システムの制御方法 図4
  • 特許-電源システムおよび電源システムの制御方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】電源システムおよび電源システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20220902BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20220902BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20220902BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20220902BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20220902BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20220902BHJP
   H01M 8/04694 20160101ALI20220902BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20220902BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20220902BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20220902BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J7/34 D
H02J3/32
H02J3/38 120
H02J3/38 170
H01M8/04537
H01M8/04858
H01M8/04694
H01M10/48 P
H01M10/44 P
G06Q50/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018180123
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020054085
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】沼田 茂生
(72)【発明者】
【氏名】下田 英介
(72)【発明者】
【氏名】杉本 貴之
【審査官】山本 香奈絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-061251(JP,A)
【文献】特開2017-225300(JP,A)
【文献】特開2018-133939(JP,A)
【文献】国際公開第2016/075770(WO,A1)
【文献】特開2018-143045(JP,A)
【文献】特開2018-078702(JP,A)
【文献】国際公開第2012/073383(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/46
H02J 7/34
H02J 3/32
H02J 3/38
H01M 8/04537
H01M 8/04858
H01M 8/04694
H01M 10/48
H01M 10/44
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギーによる発電電力の予測値と電力需要の予測値との差分に基づく余剰電力の予測値に基づき電力の託送計画を策定するとともに、
前記余剰電力の予測値と実際値との比較結果と、蓄電池の充電率と第1設定値との比較結果とに基づき、水素の製造および貯蔵量と、前記蓄電池の充電量と、燃料電池の発電量とを制御する
制御部を
備える電源システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記余剰電力の実際値が前記余剰電力の予測値を超えない場合、前記燃料電池の発電量を増加させ、
前記余剰電力の実際値が前記余剰電力の予測値を超える場合、
前記蓄電池の充電率が前記第1設定値を超えるとき、前記水素の製造および貯蔵量を増加させ、
前記蓄電池の充電率が前記第1設定値を超えないとき、前記蓄電池の充電量を増加させる
請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記水素の貯蔵量が第2設定値を超える場合、その貯蔵されている水素の一部または全部を水素輸送車両が備える水素貯蔵部に充填させる
請求項1または2に記載の電源システム。
【請求項4】
前記託送計画による電力の受け側で、前記水素輸送車両が備える前記水素貯蔵部に貯蔵されている水素を燃料として発電された電力が消費される
請求項3に記載の電源システム。
【請求項5】
制御部によって、
再生可能エネルギーによる発電電力の予測値と電力需要の予測値との差分に基づく余剰電力の予測値に基づき電力の託送計画を策定するとともに、
前記余剰電力の予測値と実際値との比較結果と、蓄電池の充電率と第1設定値との比較結果とに基づき、水素の製造および貯蔵量と、前記蓄電池の充電量と、燃料電池の発電量とを制御する
電源システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源システムおよび電源システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
企業が事業活動で使う電気全量の再生可能エネルギー(以下、再エネまたは再生可能エネと記す)化を目指す企業連合「RE100」は現在、世界の大企業136社が参加する。我が国からは7社が参画しており、2018年7月には環境省ならびに外務省が申請手続きをしている。「RE100」が定める再生可能エネルギー調達の条件は以下のようである。
【0003】
〇自社設備
・社屋屋上の太陽光発電や工場敷地内の風力発電の自家消費
・他社設備からの購入(他社が屋上に設置した太陽光発電を購入)
〇自社設備以外
・自社敷地外に建設した再エネ発電所から直接調達(自営線利用)
・自社敷地外に建設した他社の再エネ発電所からの直接調達(電力系統を経由)
・再エネ由来電力を扱う電力メニューを契約
・再エネ電力証書の購入
【0004】
現状では、再エネ証書購入による間接的な「再エネ利用」が多いと言われている。わが国でも、既存水力発電等の環境価値を切り出し、特定の需要家に電力メニューとして提供するサービスがあるが、再エネの絶対量が増えたわけではないので、結果的に他の需要家が使用する電力のCO排出係数が上昇することになり、根本的な解決策とは言えない。
【0005】
また我が国では2012年7月の再生可能エネルギーの固定価格買取制度(以下、FIT制度と記す)の導入により、再エネ電力は電力会社が一定期間、固定価格で買取るよう義務付けられ、太陽光発電を主にして再エネ発電量は急激に増加した。但し、電力会社が買取るための費用は、全ての電気利用者から電気料金の一部として集めた「再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)」で賄われている。そのため、FIT電力は電気利用者すべてが費用の負担をしており、その環境価値は電気を使う人のもとに帰属しているため、RE100に利用することは出来ない。
【0006】
以上のような背景から脱炭素化に取組む企業等では、FIT制度を利用せずに、太陽光発電などの再エネ電力を自家消費することによって「自社のCO2削減に役立てたい」というニーズが高まっている。
【0007】
〈自己託送制度〉
さて、電力自由化の一環として2014年4月に自己託送制度が施行された。企業が工場などで自家発電した電力を、電力会社の送配電ネットワークを利用して、離れた場所にある自社事業所へ供給できる一般電気事業者が提供する送電サービスである(図3参照)。図3は、非特許文献1に記載されている「自己託送の制度化による託送供給のイメージ」を示す模式図である。図3に示す構成では、自家用発電設備101で発電された電力が、一般電気事業者が保有する送配電ネットワーク102を介して、別の場所にある自社工場等の設備103へ送電される。
【0008】
自己託送では「計画値同時同量」ルールが適用され、発電・需要の双方において同時同量の義務がある。事前に策定した発電計画または需要計画と、実際の供給における発電実績または需要実績とを30分単位で一致させる必要がある。計画と実績が一致しない場合は、その量に応じた「インバランス料金」を支払う必要がある。
【0009】
需要家の全電力を供給する方法と小売事業者と按分する部分供給があり、部分供給では次の3通りパターンがある。(1)横切型部分供給;小売事業者が一定量のベース供給を行い、自己託送にて負荷追従供給を行う(この逆も可)。(2)縦切型部分供給;自己託送により、一部の時間帯に負荷追従供給し、小売事業者がそれ以外の時間帯の負荷追従供給を行う。(3)通告型部分供給;自己託送により通告値によるベース供給を行い、小売事業者が通告値によるものを除いた負荷追従供給を行う。
【0010】
既に一部の企業では当該制度を活用し、工場に新たに8MW級と5MW級のコージェネ設備を追加設置し発電電力の一部(余剰電力)を電力系統を介して、距離約50kmに遠隔立地する別工場に通告型部分供給方式で自己託送する事例が実施されている。
【0011】
現在の我が国ではFIT制度が実施されており、太陽光発電や風力発電などの再エネ電力を「売電」することが経済合理性を有しており、自家消費を目的として再エネ電力を自己託送する試みは行われていない。
RE100実現を目指す企業の本社が都市部立地の高層建物であり、事業拠点が各地に点在する低層建物である場合を想定する。一般に市街地における高層建物では太陽光発電が設置可能な屋上面積や空地が限られており、再エネ電力で本社の電力需要を賄う事が出来ない。他方、事業拠点である低層建物屋上に太陽光発電を設置すれば、再エネ電力だけで各拠点の電力需要を上回る状況になる可能性があり、再エネ余剰電力の発生が期待できる。
【0012】
RE100実現の方策の一例として、各地に点在する事業拠点の再エネ余剰電力を本社向けに自己託送することが考えられる。通告型部分供給での自己託送を実現するためには、上述の「計画値同時同量」に適合させるために蓄電池等を調整力として再エネ発電電力の出力変動を補償する必要がある(図4参照)。図4は、RE100実現の手段として再エネ電力の自己託送を行う構成の一例を示す模式図である。図4に示す構成例では、事業拠点等の自家用発電設備211および221で発電された電力が、一般電気事業者が保有する送配電ネットワーク231を介して、都市部立地の本社屋等の設備241へ送電される。図4に示す構成例では、自家用発電設備211が太陽光発電システム212と蓄電池システム213を備え、自家用発電設備221が太陽光発電システム222と蓄電池システム223を備える。
【0013】
上述の技術課題に関連した研究開発事例として新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)が平成18年度から5年間実施した「大規模電力供給用太陽光発電系統安定化等実証研究」が挙げられる(非特許文献2)。その目的の一つが、太陽光発電電力を受け入れる電力会社の需給計画と整合のとれた出力制御技術開発(計画発電技術開発)であった。数時間オーダーでの大規模太陽光発電(定格5000kW)の出力制御に大容量蓄電池(定格1500kW)を利用し、さらに日射量予測精度の改善等の取り組みにより、最終的には8割程度の確率で計画通りの運転を実現した、と報告されている。実施された計画発電の試験結果を図5に示す。図5は、NEDO「大規模電力供給用太陽光発電系統安定化等実証研究」での計画運転試験結果(平成18~22年度成果報告書、稚内サイト)を示す図である。図5(a)は、発電計画(破線)と実際の発電所出力(実線)の変化を示す図であり、横軸が時刻(目盛りの数値は「年/月/日」)であり、縦軸が出力[kW]である。図5(b)は、PV(太陽光発電)(実線)およびNaS電池(ナトリウム硫黄電池(蓄電池))(破線)の各出力および蓄電池SOC(State Of Charge;充電率)(鎖線)の変化を示す図であり、横軸が時刻(目盛りの数値は「年/月/日」)であり、縦軸が出力[kW]およびSOC[%]である。図5(c)は、日射量予測値(30分値)と実測値(30分平均)の変化を示す図であり、横軸が時刻(目盛りの数値は「年/月/日」)であり、縦軸が日射量[kW/m]である。
【0014】
毎日の計画発電の形は「表彰台」型である。なお、試験タイムフローは次の通りである。すなわち、18時に翌日の発電計画を作成する。当日の運用では1日2回、10時および15時に運用実績ならびに蓄電池SOC推移の予測を実施する。
3日目と5日目(2010年8月21、23日)の結果は日射量実績値と予測値で乖離があるものの、日射量絶対値が低かったため太陽光発電出力が最大でも1000kW程度に止まり、大容量蓄電池が余裕をもって発電計画値に調整できたと考えられる。その一方、2日目(2010年8月20日)は、特に午後に日射量実績値が予測値を大きく超過したため、午後に計画されていなかった発電出力が発生した。また6日目(2010年8月24日)は、午前中に日射量実績値が予測値を大きく超過したため、蓄電池出力上限の制約から、午前中は計画値を大きく逸脱した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【文献】関西電力株式会社、“電気事業法の改正等に伴う託送供給約款の変更届出等について”“<添付資料>電気事業法の改正等に伴う託送供給約款の変更届出等の概要 [PDF 129KB] ”、[online]、2013年12月26日、[2018年9月9日検索]、インターネット〈URL:http://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2013/1226_1j.html〉、インターネット〈URL:http://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2013/__icsFiles/afieldfile/2013/12/26/1226_1j_01.pdf〉
【文献】独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、“平成18年度~平成22年度成果報告書 大規模電力供給用太陽光発電系統安定化等実証研究(稚内サイト)”、[online]、2012年3月27日、[2018年9月9日検索]、インターネット〈URL:http://www.nedo.go.jp/library/seika/shosai_201203/20120000000077.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
解決しようとする課題は、日射量予測技術および蓄電池管理技術が内包する予測誤差の発生を考慮した上で、リスクを最小化する計画発電に資する電源システム構成の構築や、それらの発電計画の最適化は、現在のところまだなされていない、ということである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、再生可能エネルギーによる発電電力の予測値と電力需要の予測値との差分に基づく余剰電力の予測値に基づき電力の託送計画を策定するとともに、前記余剰電力の予測値と実際値との比較結果と、蓄電池の充電率と第1設定値との比較結果とに基づき、水素の製造および貯蔵量と、前記蓄電池の充電量と、燃料電池の発電量とを制御する制御部を備える電源システムである。
【0018】
また、本発明の一態様は、上記電源システムであって、前記制御部は、前記余剰電力の実際値が前記余剰電力の予測値を超えない場合、前記燃料電池の発電量を増加させ、前記余剰電力の実際値が前記余剰電力の予測値を超える場合、前記蓄電池の充電率が前記第1設定値を超えるとき、前記水素の製造および貯蔵量を増加させ、前記蓄電池の充電率が前記第1設定値を超えないとき、前記蓄電池の充電量を増加させる。
【0019】
また、本発明の一態様は、上記電源システムであって、前記制御部は、前記水素の貯蔵量が第2設定値を超える場合、その貯蔵されている水素の一部または全部を水素輸送車両が備える水素貯蔵部に充填させる。
【0020】
また、本発明の一態様は、上記電源システムであって、前記託送計画による電力の受け側で、前記水素輸送車両が備える前記水素貯蔵部に貯蔵された水素を燃料として発電された電力が消費される。
【0021】
また、本発明の一態様は、制御部によって、再生可能エネルギーによる発電電力の予測値と電力需要の予測値との差分に基づく余剰電力の予測値に基づき電力の託送計画を策定するとともに、前記余剰電力の予測値と実際値との比較結果と、蓄電池の充電率と第1設定値との比較結果とに基づき、水素の製造および貯蔵量と、前記蓄電池の充電量と、燃料電池の発電量とを制御する電源システムの制御方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の各態様によれば、水素の製造および貯蔵と、蓄電池の充電と、燃料電池の発電を組み合わせて利用しているので、電力の託送計画を策定する際に基準とした余剰電力の予測値と実際値に誤差が生じた場合に、その誤差を容易に縮小することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る再エネ電力の自己託送制御システムの概略構成を示す構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る再エネ電力の自己託送の制御ロジックの一例を示すフローチャートである。
図3】自己託送の制度化による託送供給のイメージを示す模式図である。
図4】再エネ電力の自己託送の構成例を示す模式図である。
図5】大規模電力供給用太陽光発電系統安定化等実証研究での計画運転試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る再エネ電力の自己託送制御システムの概略構成を示す構成図である。図1に示す再エネ(再生可能エネルギー)電力の自己託送制御システム(電源システム、以下、自己託送制御システムという)1は、自己託送の送り側である太陽光発電等の再生可能エネ電力託送供給計画システム2(制御部)と、自己託送の受け側である建物エネルギー制御システム(BEMS(Building and Energy Management System))3を備える。再生可能エネ電力託送供給計画システム2および建物エネルギー制御システム3は、サーバ等のコンピュータとその周辺装置から構成され、そのコンピュータで所定のプログラムを実行することで動作する。再生可能エネ電力託送供給計画システム2および建物エネルギー制御システム3を構成するコンピュータは、例えば、CPU(中央処理装置)、記憶装置、入出力装置、通信装置等を有する。
【0025】
再生可能エネ電力託送供給計画システム2は、同システム2を構成するコンピュータと周辺装置等のハードウェアと所定の記憶装置に記憶されているプログラム、データ等のソフトウェアの組み合わせから構成される機能的構成要素として、再エネ発電電力予測システム21、電力需要予測システム22、託送供給計画部23、設備運転計画部24、インバランス監視部25、リアルタイム制御部26、および、所定の記憶装置に記憶された実績データ27を有する。また、再生可能エネ電力託送供給計画システム2は、自己託送の送り側にそれぞれ設けられている、電気負荷71、水素製造・貯蔵システム72、太陽光発電システム73、蓄電池システム74、および燃料電池システム75の動作を管理する。本実施形態において動作を管理するとは、例えば、制御可能な電力の入出力(発電電力、充放電電力、消費電力や各電力量等)を制御すること、水素の製造および貯蔵量と放出量を制御することや、電力の入出力量の実績値を計測して記録すること等を意味する。
【0026】
本実施形態において再生可能エネ電力託送供給計画システム2は、日射量予測に基づいて太陽光発電の再エネ発電電力および建物電力需要を予測し、余剰電力および自己託送電力を計画立案する。その際、再生可能エネ電力託送供給計画システム2は、通告型部分供給での自己託送に適合した、例えば、矩形や表彰台型の自己託送電力を計画する。また、再生可能エネ電力託送供給計画システム2は、余剰電力発生が予測される場合、日射量予測技術および蓄電池管理技術が内包する予測誤差の存在を考慮して水電解装置等による水素製造および高圧水素タンクや水素吸蔵合金を利用した水素貯蔵装置の運転計画を立案し、各装置の準備を完了させる。また、再生可能エネ電力託送供給計画システム2は、同様に、水素貯蔵装置および燃料電池の運転計画を立案し、各装置の準備を完了させる。また、再生可能エネ電力託送供給計画システム2は、同様に、主たる調整力である蓄電池SOCの調整を実施し、準備を完了させる。また、再生可能エネ電力託送供給計画システム2は、余剰電力の予測値と実際値との差異をモニタリングして、実際値が大きい場合は水素製造を稼働させ、逆に実際値が小さい場合は燃料電池発電のリアルタイム制御を行い、例えば、矩形や表彰台型の託送電力に整形する。また、再生可能エネ電力託送供給計画システム2は、余剰電力発生が予測されない場合でも、実際に余剰電力が発生した際には水素製造を稼働させ、水素貯蔵を実行する。
【0027】
図1に示す電気負荷71は、再生可能エネ電力託送供給計画システム2が管理する電気機器等の電力を消費する複数の装置をひとつにまとめたものである。
【0028】
水素製造・貯蔵システム72は、水電解装置等の水素製造装置、高圧水素タンク、水素吸蔵合金タンク等の水素貯蔵装置、制御装置等を備え、設備運転計画部24が策定した水素製造・貯蔵・放出計画に基づき、水素を製造して貯蔵したり、貯蔵した水素を放出したりする。また、水素製造・貯蔵システム72は、リアルタイム制御部26からの指示に応じて、水素の製造および貯蔵量や放出量を調整する。また、水素製造・貯蔵システム72は、水素貯蔵量等の情報を設備運転計画部24やリアルタイム制御部26へ通知する。水素製造・貯蔵システム72に貯蔵された水素は、燃料電池システム75へ向けて放出されたり、放出されて水素輸送車両6に充填されたりする。
【0029】
太陽光発電システム73は、太陽電池パネル、電力変換装置等を備え、太陽光によって発電した電力を出力する発電システムである。太陽光発電システム73が発電した電力は、例えば、電気負荷71、水素製造・貯蔵システム72や蓄電池システム74へ供給されたり、一般電気事業者等が保有する図示していない送配電ネットワークを介して建物エネルギー制御システム3が管理する電気負荷81へ供給されたりする。電気負荷81は、建物エネルギー制御システム3が管理する電気機器等の電力を消費する複数の装置をひとつにまとめたものである。
【0030】
蓄電池システム74は、蓄電池、充放電装置、制御装置等を備え、設備運転計画部24が策定した充放電計画に基づき、電力を充放電する。また、蓄電池システム74は、リアルタイム制御部26からの指示に応じて、電力の充放電量を調整する。また、蓄電池システム74は、蓄電池のSOC等の情報を設備運転計画部24やリアルタイム制御部26へ通知する。また、蓄電池システム74は、例えば、太陽光発電システム73や燃料電池システム75から供給された電力で蓄電池を充電する。また、蓄電池システム74が放電した電力は、電気負荷71や水素製造・貯蔵システム72へ供給されたり、図示していない送配電ネットワークを介して電気負荷81へ供給されたりする。
【0031】
燃料電池システム75は、水素製造・貯蔵システム72に貯蔵されている水素を燃料として、装置内で水素と空気中の酸素を化学反応させ、設備運転計画部24が策定した発電計画に基づき、発電する。また、燃料電池システム75は、リアルタイム制御部26からの指示に応じて、発電量を調整する。また、燃料電池システム75が発電した電力は、例えば、電気負荷71や蓄電池システム74へ供給されたり、図示していない送配電ネットワークを介して電気負荷81へ供給されたりする。
【0032】
再エネ発電電力予測システム21は、天気予報、日射量予測や過去の実績等に基づき、将来の所定の期間における所定の時間帯毎の太陽光発電システム73の発電電力を予測する。
【0033】
電力需要予測システム22は、天気予報や過去の実績等に基づき、将来の所定の期間における所定の時間帯毎の電気負荷71の需要電力(消費電力)を予測する。
【0034】
託送供給計画部23は、再エネ発電電力予測システム21の予測結果と電力需要予測システム22の予測結果に基づき、余剰電力が発生するか否かを予測し、余剰電力が発生すると予測される場合に余剰電力に基づき電力の自己託送の計画(以下、託送電力計画という)を策定する。余剰電力は、再エネ発電電力予測システム21が予測した発電電力が電力需要予測システム22が予測した需要電力を上回る部分の電力である。なお、本実施形態において電力の自己託送とは、太陽光発電システム73が発電した電力、あるいは、太陽光発電システム73が発電した電力で水素を製造して貯蔵し、貯蔵した水素を燃料として燃料電池システム75で発電した電力、あるいは、太陽光発電システム73が発電した電力を蓄電池システム74に充電し、蓄電池システム74から放電した電力を、一般電気事業者等の送配電ネットワークを利用して建物80(電気負荷81)へ送電することである。託送電力計画では、将来の所定の期間における所定の時間帯毎に託送する電力が定められる。また、託送供給計画部23は、前日スポット市場等を利用する託送電力計画を電力広域的運営推進機関システム4へインターネット等の通信ネットワーク5を介して通知する。また、託送供給計画部23は、電力広域的運営推進機関システム4から計画承認の可否を示す通知を受信する。
【0035】
設備運転計画部24は、再エネ発電電力予測システム21の予測結果と電力需要予測システム22の予測結果と託送供給計画部23が立案した託送電力計画等に基づき、水素製造・貯蔵の運転計画と蓄電池・燃料電池の運転計画を立案する。水素製造・貯蔵の運転計画は、水素製造・貯蔵システム72における水素の製造および貯蔵量を、将来の所定の期間において所定の時間帯毎に定める。蓄電池・燃料電池の運転計画は、蓄電池システム74における充放電電力と燃料電池システム75における発電電力を、将来の所定の期間において所定の時間帯毎に定める。水素製造・貯蔵の運転計画と蓄電池・燃料電池の運転計画は、例えば、水素の貯蔵量、蓄電池のSOC等が所定の範囲内の値となることを目標として策定することができる。なお、蓄電池・燃料電池の運転計画は、水素製造・貯蔵システム72からの水素の放出量についての計画を含む。また、設備運転計画部24は、託送供給計画部23と連携して、水素製造・貯蔵の運転計画と蓄電池・燃料電池の運転計画と託送電力計画を相互に調整しながら策定してもよい。設備運転計画部24は、策定した水素製造・貯蔵の運転計画と蓄電池・燃料電池の運転計画に基づき、例えばリアルタイム制御部26を介して、水素製造・貯蔵システム72、蓄電池システム74、および燃料電池システム75を制御する。
【0036】
インバランス監視部25は、余剰電力の実際値と予測値を比較し、例えば、実際値と予測値の乖離が所定の範囲を超える場合、リアルタイム制御部26に対して水素製造・貯蔵の運転計画と蓄電池・燃料電池の運転計画に基づく各計画値の調整を指示する。その際、インバランス監視部25は、余剰電力の実際値が余剰電力の予測値を超えない比較結果を得た場合、燃料電池の発電量を増加させ、余剰電力の実際値が余剰電力の予測値を超える比較結果を得た場合、蓄電池の充電率が予め決められた設定値(第1設定値)を超える比較結果を得たとき、水素の製造および貯蔵量を増加させ、蓄電池の充電率が予め決められた設定値(第1設定値)を超えない比較結果を得たとき、蓄電池の充電量を増加させる。また、インバランス監視部25は、水素を製造および貯蔵させた際に、水素貯蔵量が予め定めた設定値(第2設定値)を超えた場合には、水素移送のスケジュールを設定し、水素移送の準備と水素輸送車両6への水素の充填の実行を指示する。なお、水素移送のスケジュールでは、例えば、水素の移送時刻や移送量等が定められる。
【0037】
リアルタイム制御部26は、設備運転計画部24が策定した水素製造・貯蔵の運転計画と蓄電池・燃料電池の運転計画に基づく各計画値に従い、水素製造・貯蔵システム72における水素製造および貯蔵量と放出量、蓄電池システム74における充放電量、ならびに燃料電池システム75における発電量を制御する。また、リアルタイム制御部26は、インバランス監視部25から各計画値の調整を指示された場合、実際値と予測値の乖離が所定の範囲内に収まるように各計画値を調整し、調整後の各計画値に基づき水素製造・貯蔵システム72、蓄電池システム74、および燃料電池システム75を制御する。
【0038】
実績データ27は、電気負荷71、水素製造・貯蔵システム72、太陽光発電システム73、蓄電池システム74、および燃料電池システム75における電力の入出力量(発電電力、充放電電力、消費電力や各電力量等)や水素の製造および貯蔵量と放出量、日射量等の気象情報等の過去の実績値を示すデータである。
【0039】
また、水素輸送車両6は、水素吸蔵合金タンク等の水素を貯蔵する水素貯蔵部61と燃料電池62を備える車両である。水素輸送車両6は、例えば、燃料電池駆動の水素輸送車両とすることができる。水素輸送車両6は、水素製造・貯蔵システム72から放出された水素を水素貯蔵部61に充填し、電気負荷81の配電設備に燃料電池62の出力部を接続可能な位置(自己託送の受け側の建物80)まで移動する。自己託送の受け側の建物80に到着した水素輸送車両6(例えば水素満充填状態)の直流出力プラグには、建物80内に設置された図示していない同期機能付き電力変換装置から伸びる連結ケーブル(電力線および通信線を装備)が装着される。水素輸送車両6は、連結ケーブルを介して、建物エネルギー制御システム3等から入力された所定の制御信号に基づき、発電を開始したり、終了したり、発電出力を変化させたりするとともに、建物エネルギー制御システム3等に対して水素貯蔵部61における水素の貯蔵量を示す情報を出力したりする。
【0040】
建物エネルギー制御システム3は、例えば建物80内に設置されていて、同システム3を構成するコンピュータ、周辺装置等のハードウェアと所定の記憶装置に記憶されているソフトウェアの組み合わせから構成される機能的構成要素として、電力需要予測システム31、設備運転計画部32、インバランス監視部33、燃料電池発電制御部34、および、所定の記憶装置に記憶された実績データ35を有する。また、建物エネルギー制御システム3は、例えば自己託送の受け側の建物80内に設置されている所定の電気負荷81の動作を管理する。
【0041】
本実施形態において建物エネルギー制御システム3は、例えば、建物80に具備されており、以下の手順で制御動作を行う。すなわち、建物エネルギー制御システム3は、建物電力需要を予測し、送り側で自己託送が計画立案された場合には、残りの電力需要を燃料電池62等の分散型電源で賄うか、あるいは電力会社から買電するか、を計画立案する。また、建物エネルギー制御システム3は、電力需要および自己託送の実績値に基づき、分散型電源をリアルタイム制御し、その結果により買電電力を時々刻々と変化させる。
【0042】
電力需要予測システム31は、天気予報や過去の実績等に基づき、建物80における将来の所定の期間における所定の時間帯毎の電気負荷81の需要電力(消費電力)や熱需要を予測する。
【0043】
設備運転計画部32は、電力需要予測システム31が予測した電気負荷81の需要電力や熱需要、過去の実績、託送供給計画部23が策定した託送電力計画等に基づき、系統からの買電の計画や、水素輸送車両6が備える燃料電池62等の分散型電源の運転計画(以下、分散型電源運転計画という)等を策定する。
【0044】
インバランス監視部33は、電気負荷81の需要電力の実際値および自己託送電力の実際値と、電力需要予測システム31が予測した需要電力および託送電力計画の計画値とを比較し、例えば、実際値と予測値や計画値との乖離が所定の範囲を超える場合、燃料電池発電制御部34に対して設備運転計画部32が策定した分散型電源運転計画に基づく計画値の調整を指示する。
【0045】
燃料電池発電制御部34は、設備運転計画部32が策定した分散型電源運転計画に基づく各計画値に従い、燃料電池62の発電量を制御する。また、燃料電池発電制御部34は、インバランス監視部33から計画値の調整を指示された場合、実際値と予測値の乖離が所定の範囲内に収まるように計画値を調整し、調整後の計画値に基づき燃料電池62を制御する。燃料電池発電制御部34は、例えば、分散型電源運転計画に基づき、あるいは、調整後の分散型電源運転計画に基づき、水素利用のスケジュールを策定する。また、燃料電池発電制御部34は、策定した水素利用のスケジュールに基づき、水素輸送車両6の水素貯蔵部61に水素放出の準備をさせた後、燃料電池62を起動して発電を開始させる。
【0046】
実績データ35は、電気負荷81および燃料電池62における電力の入出力量(消費電力、発電電力や各電力量等)、熱需要、日射量等の気象情報等の過去の実績値を示すデータである。
【0047】
電力広域的運営推進機関システム4は、サーバ等のコンピュータとその周辺装置から構成され、そのコンピュータで所定のプログラムを実行することで動作する。電力広域的運営推進機関システム4を構成するコンピュータは、例えば、CPU、記憶装置、入出力装置、通信装置等を有する。電力広域的運営推進機関システム4は、再生可能エネ電力託送供給計画システム2や建物エネルギー制御システム3から通信ネットワーク5を介して、発電販売計画、需要・調達計画等の申請を受信するとともに、それらの計画の承認の可否を示す通知を返信する。ここで、発電販売計画は、発電した電力を所定の販売先へ販売する計画であり、例えば再生可能エネ電力託送供給計画システム2によって発電計画等に基づいて策定される。需要・調達計画は、電力の需要とその調達先等の計画であり、例えば建物エネルギー制御システム3によって需要計画等に基づいて策定される。
【0048】
次に、図2を参照して、図1に示す自己託送制御システム1の制御ロジックについて説明する。図2は、図1に示す自己託送制御システム1における再エネ電力の自己託送の制御ロジック(託送電力計画の立案と託送電力計画の実行時の各処理等)の一例を示すフローチャートである。図2において、処理S101~S122が再生可能エネ電力託送供給計画システム2によって所定の周期で繰り返し実行され、処理S301~S307が建物エネルギー制御システム3によって所定の周期で繰り返し実行される。また、天気予報データD1は、通信ネットワーク5に接続されている図示していない天気予報情報を提供するサーバ等から提供される。契約電力設定D2は、建物エネルギー制御システム3内の記憶装置に記憶されている。託送(S201)は、実際に電力が託送される電力の流れと、託送が行われることを示すデータの流れに対応する。水素輸送(S202)は、実際に水素輸送車両6による水素の輸送の流れと、水素輸送が行われることを示すデータの流れに対応する。
【0049】
図2に示す制御ロジックでは、再生可能エネ電力託送供給計画システム2において、まず再エネ発電電力予測システム21が、天気予報データD1、実績データ27等に基づいて、太陽光発電出力を予測する(S101)。次に、電力需要予測システム22が、電気負荷71等の建物電力需要を予測する(S102)。次に、託送供給計画部23が、余剰電力が発生するか否かを判断し(S103)、発生する場合には託送電力計画を立案し(S103:yes→S104)、発生しない場合には託送電力計画を立案しない(S103:no→S114)。
【0050】
託送供給計画部23が託送電力計画を立案した場合(S103:yes→S104)、設備運転計画部24が、水素製造・貯蔵の運転計画を立案し(S105)、水素製造・貯蔵準備の処理を実行する(S106)。続いて設備運転計画部24は、蓄電池・燃料電池の運転計画を立案し(S107)、水素放出・燃料電池準備の処理を実行する(S108)。
【0051】
次に、インバランス監視部25が、余剰電力実際値が予測値を超えているか否かを判断し(S109)、超えている場合には蓄電池SOCが予め決められた設定値を超えているか否かを判断する(S109:yes→S110)。一方、インバランス監視部25は、余剰電力実際値が予測値を超えていない場合にはリアルタイム制御部26に対して所定の指示を出して燃料電池システム75の発電量を調整する(S109:no→S122)。S122では余剰電力が予測値を下回る分が、燃料電池システム75の発電量を増加させることで補われる。
【0052】
また、インバランス監視部25は、蓄電池SOCが予め決められた設定値(第1設定値)を超えている場合には水素貯蔵量が予め決められた設定値未満であるか否かを判断する(S110:yes→S111)。一方、インバランス監視部25は、蓄電池SOCが予め決められた設定値を超えていない場合にはリアルタイム制御部26に対して所定の指示を出して蓄電池システム74の充電電力を調整する(S110:no→S121)。インバランス監視部25は、水素貯蔵量が予め決められた設定値未満である場合にはリアルタイム制御部26に対して所定の指示を出して水素製造・貯蔵システム72の水素製造および貯蔵量を調整する(S111:yes→S112)。
【0053】
S112では、水素貯蔵量が予め決められた設定値未満である範囲内で、水素製造・貯蔵システム72の水素製造・貯蔵量を増加させることで余剰電力が予測値を上回る分が消費される。また、S121では、蓄電池SOCが予め決められた設定値未満である範囲内で、蓄電池システム74の充電電力を増加させることで余剰電力が予測値を上回る分が消費される。
【0054】
S112で水素製造および貯蔵による余剰電力の調整がなされた場合、S121で蓄電池充電による余剰電力の調整がなされた場合、または、S122で燃料電池発電による余剰電力の調整がなされた場合、託送供給計画部23は、余剰電力の調整がなされた分を託送電力計画値に適合するよう整形する(S113)。
【0055】
その後、再生可能エネ電力託送供給計画システム2で策定および調整された託送電力計画に基づき、電力が託送されるとともに、託送の内容を示す情報が通信ネットワーク5を介して建物エネルギー制御システム3へ送信される(S201)。
【0056】
一方、託送供給計画部23が、余剰電力が発生しないと判断して託送電力計画を立案しなかった場合(S103:no→S114)、インバランス監視部25は、余剰電力が実際に発生しているか否かを判断する(S115)。インバランス監視部25は、余剰電力が実際に発生していた場合にはリアルタイム制御部26に対して所定の指示を出して水素製造・貯蔵システム72の水素製造および貯蔵量を調整する(S115:yes→S116)。続いてインバランス監視部25は、水素貯蔵量が予め決められた設定値(第2設定値)を超えているか否かを判断する(S117)。
【0057】
水素貯蔵量が予め決められた設定値を超えていると判断した場合(S117:yes)、または、水素貯蔵量が予め決められた設定値未満ではないと判断した場合(S111:no)、インバランス監視部25は、水素移送のスケジュールを設定する(S118)。次に、インバランス監視部25は、水素製造・貯蔵システム72と水素輸送車両6へ所定の指示を出して水素移送を準備させ(S119)、水素製造・貯蔵システム72から放出された水素の一部または全部を水素輸送車両6の水素貯蔵部61に充填する(S120)。
【0058】
その後、再生可能エネ電力託送供給計画システム2で策定された水素移送のスケジュールに基づき、例えば水素が満充填された状態の水素輸送車両6が建物80へ移動することで水素が輸送されるとともに、水素輸送の内容を示す情報が通信ネットワーク5を介して建物エネルギー制御システム3へ送信される(S202)。
【0059】
なお、インバランス監視部25が余剰電力が実際に発生していないと判断した場合(S115:no)および水素貯蔵量が予め決められた設定値を超えていないと判断した場合(S117:no)、再生可能エネ電力託送供給計画システム2は、次の周期で再度、S101から処理を実行する。
【0060】
一方、建物エネルギー制御システム3では、まず、電力需要予測システム31が建物80の電力および熱需要を予測する(S301)。次に、設備運転計画部32は、電力需要予測システム31による予測結果、託送供給計画部23が立案した託送電力計画、契約電力の設定値等に基づいて、買電、分散型電源運転計画を立案する(S302)。
【0061】
次に、燃料電池発電制御部34が、建物80内に設置された図示していない同期機能付き電力変換装置から伸びる連結ケーブル(電力線および通信線を装備)が、自己託送の受け側の建物80に到着した水素輸送車両6の直流出力プラグに連結されているか否かを判断する(S303)。水素輸送車両6が連結されている場合(S303:yes)、燃料電池発電制御部34は、水素輸送車両6に水素が積載されているか否かを判断する(S304)。
【0062】
水素輸送車両6に水素が積載されている場合(S304:yes)、燃料電池発電制御部34は、設備運転計画部32が策定した分散型電源運転計画に基づき、あるいは、インバランス監視部33が計画値の調整を指示した場合に調整後の分散型電源運転計画に基づき、水素利用のスケジュールを策定する(S305)。そして、燃料電池発電制御部34は、策定した水素利用のスケジュールに基づき、水素輸送車両6の水素貯蔵部61に水素放出の準備をさせ(S306)、燃料電池62を起動する(S307)。
【0063】
一方、水素輸送車両6が連結されていない場合(S303:no)、水素輸送車両6に水素が積載されていない場合(S304:no)、または、燃料電池62を起動した場合(S307)、建物エネルギー制御システム3は、次の周期でS301から再度、処理を実行する。
【0064】
以上ように、本実施形態によれば、水素製造・貯蔵システム72と、太陽光発電システム73と、蓄電池システム74と、燃料電池システム75を組み合わせて託送の送り側のシステムを構成したので、水素の製造および貯蔵と、蓄電池の充電と、燃料電池の発電を利用して、電力の託送計画を策定する際に基準とした余剰電力の予測値と実際値に誤差が生じた場合に、その誤差を容易に縮小することができる。また、本実施形態によれば、水素輸送車両6を用いて水素に変換した形で電力を送り側から受け側に送ることができるので、例えば一般電気事業者等の送配電ネットワークが利用ができないような場合であっても電力を送ることができる。
【0065】
なお、本発明の実施の形態は、上記形態に限定されず、例えば以下の形態とすることができる。すなわち、例えば、太陽光発電システム73に代えてあるいは組み合わせて、風力、水力、地熱等の他の再エネをエネルギー源とする発電システムを用いてもよい。また、図1に示す建物エネルギー制御システム3が有する機能的構成要素の一部を再生可能エネ電力託送供給計画システム2内に設けたり、再生可能エネ電力託送供給計画システム2が有する機能的構成要素の一部を通信ネットワーク5等を介して複数のコンピュータに分散して配置したりしてもよい。
【0066】
また、本実施形態では、自己託送の送り側にて、余剰電力予測値の誤差を補償する目的で製造された水素貯蔵量が満杯なった際には、燃料電池駆動の水素輸送車両6に充填して自己託送の受け側に水素輸送する。また、上述したように、自己託送の受け側の建物80に到着した水素輸送車両6(水素満充填)の直流出力プラグには、建物80内に設置された同期機能付き電力変換装置から伸びる連結ケーブル(電力線および通信線を装備)が装着される。この場合、建物エネルギー制御システム3は、例えば、電力変換装置と通信して車両の有無、水素積載量を確認の上、建物80の時々刻々の電力需要変化を基に、燃料電池駆動の水素輸送車両6からの電力供給の必要性を判断して、水素輸送車両6搭載の燃料電池62に発電指示を出す。建物80の電力需要の変動に応じて、建物エネルギー制御システム3から水素輸送車両6搭載の燃料電池62の発電出力値を時々刻々に指令する。水素輸送車両6の水素積載量の多寡に応じて、水素輸送車両6は例えば、数時間あるいは一日間、建物80側に電力供給を継続する。発電計画量を完了した後、水素輸送車両6は自己託送の送り側に自走する。なお水素輸送車両6は燃料電池駆動に限定する必要はなく、受け側にて水素を貯蔵装置に移送した後、定置された燃料電池利用にて発電するようにしてもよい。
【0067】
また、本実施形態に係る自己託送制御システム1によれば、太陽光発電等の再エネ発電の出力変動を蓄電池に加えて、水電解装置等の水素製造装置、水素吸蔵合金タンク等の水素貯蔵装置および燃料電池を利用して平滑化し、容易に計画値同時同量が実現可能な自己託送に適した平滑化された発電出力に調整することができる。また、自己託送制御システム1によれば、自己託送の送り側での再エネ発電電力および建物電力需要の予測、さらにはこの両者の差分である余剰電力予測を行うことができる。また、自己託送制御システム1によれば、蓄電池SOCを把握しながらの充放電運転計画が策定できる。また、自己託送制御システム1によれば、余剰電力の予測値と実際値との乖離として現れる予測誤差の補償を目的として、水素製造あるいは燃料電池での発電を司るリアルタイム制御を行うことができる。また、自己託送制御システム1によれば、前日スポット市場等を利用する自己託送計画を電力広域的運営推進機関システム4へ通知することができる。また、自己託送制御システム1によれば、自己託送の受け側での建物電力需要の予測に基づき、所定時間帯に託送される電力供給を組み入れた上で、燃料電池等の分散型電源を制御することができる。
【0068】
したがって、本実施形態に係る自己託送制御システム1によれば、各地に点在する企業等の事業拠点の間で自家消費を目的として再エネ余剰電力の自己託送を実現することにより、企業全体として再エネに基づいた電力および環境価値を無駄なく融通することが可能になり、例えばRE100の目標達成を支える技術となる。
【0069】
なお、上記実施形態は、自己託送に関する構成として記述したが、その効果は自己託送に限定されるものではなく、一般性のある再エネ余剰電力の「託送」についても同様な効果を発揮することができる。
【0070】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して説明してきたが、具体的な構成は上記実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1 自己託送制御システム(再エネ電力の自己託送制御システム(電源システム))
2 再生可能エネ電力託送供給計画システム(制御部)
3 建物エネルギー制御システム
4 電力広域的運営推進機関システム
5 通信ネットワーク
6 水素輸送車両
61 水素貯蔵部
62 燃料電池
71、81 電気負荷
72 水素製造・貯蔵システム
73 太陽光発電システム
74 蓄電池システム
75 燃料電池システム
図1
図2
図3
図4
図5