(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】曲管
(51)【国際特許分類】
F16L 43/00 20060101AFI20220902BHJP
F16L 9/22 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
F16L43/00
F16L9/22
(21)【出願番号】P 2018183934
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 賢一郎
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-035827(JP,A)
【文献】特開2015-140867(JP,A)
【文献】特開2003-205551(JP,A)
【文献】実開平02-121697(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 43/00
F16L 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲管であって、
軸方向に連結された複数の管部材であって、隣接する前記管部材の軸線が互いに交差するように、全体として円弧状に連結された複数の管部材と、
隣接する前記管部材の継ぎ目を、当該管部材の内周面において覆うように固定され、シート状に形成された複数の内側FRP材と、
隣接する前記管部材の継ぎ目を、当該管部材の外周面において覆うように固定され、シート状に形成された複数の第1外側FRP材と、
前記複数の管部材の外周面において、前記複数の第1外側FRP材を覆うように固定され、シート状に形成された、少なくとも一つの第2外側FRP材と、
を備
え、
前記第2外側FRP材は、当該曲管の軸方向の全体に亘って設けられておらず、少なくとも当該曲管の軸方向の両端部において、前記管部材が露出している、曲管。
【請求項2】
前記各第1外側FRP材が、それぞれ、一つの前記継ぎ目を覆うように固定されている、請求項1に記載の曲管。
【請求項3】
一つの前記各第2外側FRP材が、すべての前記第1外側FRP材を覆うように固定されている、請求項1または2に記載の曲管。
【請求項4】
前記各内側FRP材が、それぞれ、一つの前記継ぎ目を覆うように固定されている、請求項1から3のいずれかに記載の曲管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲管に関する。
【背景技術】
【0002】
水道管などに用いられる曲管は種々の方法で作製されていた。例えば、特許文献1には、両端部が斜めに切断された直管状の管部材同士を連結することで、曲管を形成する方法が開示されている。そして、この曲管では、隣接する管部材の継ぎ目にFRP材を巻き付けて固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記のような曲管では、FRP材による連結強度を向上するため、軸方向に並ぶFRP材を何層にも重ねている。しかしながら、このような積層状態では、外周面の凹凸が大きく見栄えが悪いという問題がある。本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、FRP材による連結強度の低減を抑制するとともに、見栄えをよくすることが可能な曲管を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る曲管は、軸方向に連結された複数の管部材であって、隣接する前記管部材の軸線が互いに交差するように、全体として円弧状に連結された複数の管部材と、隣接する前記管部材の継ぎ目を、当該管部材の内周面において覆うように固定され、シート状に形成された複数の内側FRP材と、隣接する前記管部材の継ぎ目を、当該管部材の外周面において覆うように固定され、シート状に形成された複数の第1外側FRP材と、前記複数の管部材の外周面において、前記複数の第1外側FRP材を覆うように固定され、シート状に形成された、少なくとも一つの第2外側FRP材と、を備えている。
【0006】
上記各曲管において、前記各第1外側FRP材は、それぞれ、一つの前記継ぎ目を覆うように固定することができる。
【0007】
上記各曲管において、一つの前記各第2外側FRP材は、すべての前記第1外側FRP材を覆うように固定することができる。
【0008】
上記各曲管において、前記各内側FRP材は、それぞれ、一つの前記継ぎ目を覆うように固定することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る曲管によれば、FRP材による連結強度の低減を抑制するとともに、見栄えをよくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る曲管の側面図である。
【
図3】本発明に係る曲管の他の例を示す断面図である。
【
図4】本発明に係る曲管の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る曲管の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。この曲管は、例えば、上下水道管、農業用水管、工業用水管などの各種の用途に用いることができるものである。
【0012】
<1.曲管の概要>
図1は、本実施形態に係る曲管の側面図であり、
図2は
図1の断面図である。
図1及び
図2に示すように、この曲管は、複数の管部材11~14と、この管部材11~14の内周面に固定される複数の内側FRP材21~23と、管部材11~14の外周面に固定される複数の第1外側FRP材31~33と、管部材11~14の外周面において、複数の第1外側FRP材31~33を覆うように固定される一の第2外側FRP材4と、を備えている。以下、各部材について、詳細に説明する。
【0013】
<1-1.管部材>
本実施形態では、一例として4つの管部材を連結した曲管を示しているが、説明の便宜のため、
図1及び
図2の左側から右側へ並ぶ管部材を、この順で、第1管部材11、第2管部材12、第3管部材13、及び第4管部材14と称することとする。各管部材11~14は、それぞれ同径の円筒状に形成されており、両端の開口面が互いに交差し、且つそれぞれ軸線X1~X4に対して交差するように形成されている。このように形成された複数の管部材11~14の開口端面同士を突き合わせることで、全体として円弧状をなすように連結される。
【0014】
本実施形態では、一例として4つの管部材11~14を連結しているが、連結する管部材の数、開口端面の軸線に対する角度などは、適宜設定することができる。但し、例えば、水門鉄管技術基準によれば、管部材11~14ごとの振り角θ(
図1参照)が7度以下、曲管全体の軸線の曲率半径R(
図2参照)が各管部材の内径Dの3倍以上とする必要がある。
【0015】
管部材11~14の呼び径は、例えば、500~2600mmとすることができる。また、管部材11~14の厚みは、呼び径によっても相違するため、特には限定されないが、例えば、5~60mmとすることができ、呼び径の0.2~12%とすることができる。
【0016】
各管部材11~14は、公知の繊維強化プラスチック管(FRP管)や繊維強化プラスチック複合管(FRPM管)等の硬質樹脂管によって構成することができる。FRP管やFRPM管は、例えば、フィラメントワインディング成形法によって作製することができる。
【0017】
<1-2.内側FRP材>
各内側FRP材21~23は、それぞれ、シート状に形成され、突き合わされた管部材11~14の継ぎ目101~103を、内周面側から覆うように配置される。本実施形態では、4つの管部材11~14を用いているため、3つの継ぎ目101~103が形成される。そのため、これら3つの継ぎ目101~103を周方向にそれぞれ覆うように、3つの内側FRP材21~23が準備される。各内側FRP材21~23は、1層で継ぎ目101~103を覆うように配置されるが、各内側FRP材21~23の端部同士が重なって、一部が2層になってもよい。なお、求められる要求耐圧(内圧)によっては全体として2層以上になるように各内側FRP材21~23を積層させてもよい。但し、多層になると、曲管内の液体の流れを阻害する可能性があるため、できるだけ薄くなるようにする必要がある。また、軸方向に隣接する内側FRP材21~23同士が、重ならないように、軸方向の幅を調整することが好ましい。
【0018】
各内側FRP材21~23は、繊維強化プラスチック(FRP)によって構成されている。すなわち、強化繊維と、これに含侵されるマトリックス樹脂とで構成されている。強化繊維は、特には限定されないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維、あるいはアラミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維等の有機繊維を用いることができる。これらの繊維は、単独で、または複数種を組み合わせて用いることができる。また、強化繊維としては、ロービングクロス等の織布のほか、ガラスマット等の不織布を採用することができる。
【0019】
また、マトリックス樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂等の熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。但し、熱可塑性樹脂を特に除外するものではない。例えば、ウレタン、ビニルエステル、不飽和ポリエステル、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ナイロン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフイド、およびポリ(メタ)アクリル酸エステルなどを挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、または複数種を組み合わせて用いることができる。また、必要に応じて、公知の硬化剤や硬化促進剤を添加することができる。
【0020】
内側FRP材21~23の厚みは、特には限定されないが、例えば、0.02~0.2mmとすることができる。
【0021】
<1-3.第1外側FRP材>
各第1外側FRP材31~33は、それぞれ、シート状に形成され、突き合わされた管部材11~14の継ぎ目101~103を、外周面側から周方向に沿って覆うように巻き付けられる。すなわち、上述した各内側FRP材21~23と、管部材11~14を挟んで対向するように配置される。本実施形態では、内側FRP材21~23と同様に3つの第1外側FRP材31~33が用いられ、軸方向に隣接する各第1外側FRP材21~23同士が重ならないように、軸方向の幅が調整されている。その他の具体的な構成は、材料、厚みも含め、内側FRP材21~23と概ね同じであるため、詳しい説明は省略する。
【0022】
<1-4.第2外側FRP材>
第2外側FRP材4は、シート状に形成され、管部材11~14の外周面を覆うように固定される。具体的には、上述した3つの第1外側FRP材31~33の全てを覆うように、管部材11~14の外周面に巻き付けられる。すなわち、第2外側FRP材4は、軸方向に、第1管部材11の中間付近から第4管部材14の中間付近まで延びている。その他の具体的な構成は、材料、厚みも含め、内側FRP材21~23と概ね同じであるため、詳しい説明は省略する。
【0023】
<2.曲管の製造方法>
次に、上記のように形成された曲管の製造方法について説明する。まず、上記のように4つの管部材11~14を準備する。管部材11~14の準備方法は、特には限定されないが、例えば、円筒状の直管から、上記のような端面が傾斜した複数の管部材11~14を切断することで準備する。
【0024】
次に、準備された4つの管部材11~14の端面同士を付き合わせ、軸線X1~X4が円弧状に延びるように連結する。そして、この連結状態を保持するように、管部材11~14を治具等で固定する。また、必要に応じて、隣接する管部材11~14の継ぎ目101~103を研磨し、継ぎ目が平坦になるように、バリなどを取り除く。
【0025】
続いて、管部材11~14の内周面において、3つの継ぎ目101~103のそれぞれに沿って、周方向に各継ぎ目101~103を覆うように、上記内側FRP材21~23を配置する。このとき、継ぎ目101~103に配置される各内側FRP材21~23は、周方向の端部のみが重なるように1層とする。各内側FRP材21~23を配置する方法は、特には限定されないが、例えば、ハンドレイアップ法を採用することができる。すなわち、強化繊維を継ぎ目101~103に沿って配置した後、マトリックス樹脂を強化繊維に含浸させる。このとき、熱硬化性樹脂には硬化剤を添加しておく。これにより、所定時間養生すると、継ぎ目101~103に配置された内側FRP材21~23が硬化する。
【0026】
これに続いて、管部材11~14の外周面において、3つの継ぎ目101~103のそれぞれに沿って、周方向に各継ぎ目101~103を覆うように、上記第1外側FRP材31~33を配置する。このとき、継ぎ目101~103に配置される各第1外側FRP材31~33は、周方向の端部のみが重なるように1層とする。各第1外側FRP材31~33も、例えば、ハンドレイアップ法により継ぎ目101~103に配置することができる。そして、内側FRP材21~23と同様に、マトリックス樹脂に硬化剤を添加しておけば、所定時間養生後に、継ぎ目101~103に配置された各外側FRP材31~33が硬化する。
【0027】
最後に、連結された管部材11~14の外周面において、3つの第1外側FRP材31~33のすべてを覆うように、第2外側FRP材4を配置する。第2外側FRP材4は、周方向の端部のみが重なるように1層とする。第2外側FRP材4も、例えば、ハンドレイアップ法により配置することができる。そして、内側FRP材21~23と同様に、マトリックス樹脂に硬化剤を添加しておけば、所定時間養生後に、第1外側FRP材31~33上で、第2外側FRP材4が硬化する。こうして、本実施形態に係る曲管が完成する。
【0028】
なお、FRP材の配置は、ハンドレイアップ法のほか、例えば、フィラメントワインディング法などを採用することもできる。また、マトリックス樹脂の硬化を加熱炉において行うこともできる。
【0029】
<3.特徴>
以上のように構成された曲管は、外周面に配置されたFRP材31~33,4が、最大で2層になっている。すなわち、FRP材の最大の積層数は2であり(第1外側FRP材31~33と第2外側FRP材4の両方が積層されている部分)、最小の積層数は1である(第2外側FRP材4のみが積層されている部分)。したがって、FRP材の積層層の差が1であるため、曲管の外周面に形成される凹凸を小さくすることができる。その結果、曲管の見栄えをよくすることができるとともに、応力分布に大きい差が生じないようにすることができる。また、曲管の外周面の継ぎ目101~103において、FRP材31~33,4は、少なくとも2層積層されているため、連結強度が低下するのを防止することができる。
【0030】
一方、曲管の内周面には、1層の内側FRP材21~23が積層されているため、凹凸が小さく、流体の流れを阻害するのを紡糸することができる。
【0031】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は、適宜組み合わせ可能である。
【0032】
<4-1>
上記実施形態では、各第1外側FRP材31~33が、一つの継ぎ目101~103を覆うように配置されているが、例えば、
図3に示すように、一の第1外側FRP材34を、複数の継ぎ目(例えば、継ぎ目101,102)に亘って配置することもできる。この点は、内側FRP材21~23も同じである。
【0033】
<4-2>
上記実施形態では、一の第2外側FRP材4で、全ての第1外側FRP材31~33を覆っているが、覆うべき軸方向の長さが長い場合には、例えば、
図4に示すように、複数の第2外側FRP材41,42を軸方向に並ぶように配置することもできる。この例では、2つの第1外側FRP材31,32を覆う第2外側FRP材41と、1つの第1外側FRP材33を覆う第2外側FRP材42を用いている。このとき、隣接する第2外側FRP材41,42が、できるだけ重ならないようにしたり、あるいは、
図4に示すように、重なったとしてもわずかであるように軸方向の幅を調整する必要がある。
【0034】
<4-3>
上記実施形態では、内側FRP材21~23、第1外側FRP材31~33、及び第2外側FRP4をいずれも一層としているが、必要に応じて、2層以上にすることもできる。但し、FRP材は、一の第1外側FRP材31~33と、第2外側FRP材4とが重なるようにし、隣接する第1外側FRP材31~33同士が重ならないようにする。これにより、凹凸をできるだけ小さくすることができる。
【0035】
<4-4>
上記実施形態では、管部材11~14の内周面に、内側FRP材21~23のみが配置されているが、外周面の第2外側FRP材4のように、これら内側FRP材21~23を覆うFRP材をさらに設けることもできる。
【符号の説明】
【0036】
11~14 管部材
21~23 内側FRP材
31~33 第1外側FRP材
4 第2外側FRP材