(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】モータ駆動制御装置
(51)【国際特許分類】
H02P 25/22 20060101AFI20220902BHJP
【FI】
H02P25/22
(21)【出願番号】P 2018184088
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100110788
【氏名又は名称】椿 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100124589
【氏名又は名称】石川 竜郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166811
【氏名又は名称】白鹿 剛
(72)【発明者】
【氏名】久冨 祐也
(72)【発明者】
【氏名】民辻 敏泰
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-275699(JP,A)
【文献】特開2007-046511(JP,A)
【文献】特開平05-083846(JP,A)
【文献】特開2013-255330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1系統のコイルと第2系統のコイルとを有するモータを駆動させるモータ駆動制御装置であって、
前記第1系統のコイルに通電する制御を行うとともに、前記モータの駆動状態に関する第1の信号を出力する第1の駆動回路と、
前記第2系統のコイルに通電する制御を行うとともに、前記モータの駆動状態に関する第2の信号を出力する第2の駆動回路と、
前記第1の信号と前記第2の信号とに基づいて、前記モータの駆動状態に関する出力信号を出力する信号出力回路とを備え
、
前記出力信号が出力される外部出力端子をさらに備え、
前記信号出力回路は、前記モータが正常に駆動されているとき、第1の出力信号を前記外部出力端子から出力し、前記モータがロック状態であるとき、そのことを示す第2の出力信号を前記外部出力端子から出力し、
前記信号出力回路は、前記第2の信号に応じて前記外部出力端子に所定の電圧を印加するか否かを切り替える切替回路を有し、
前記切替回路は、前記第2の信号に応じて前記外部出力端子と接地電位とを接続するか否かを切り替え、
前記モータがロック状態である場合に、前記切替回路が前記外部出力端子を接地電位に接続することで、前記第2の出力信号として電圧がローレベルに固定される信号が出力される、モータ駆動制御装置。
【請求項2】
第1系統のコイルと第2系統のコイルとを有するモータを駆動させるモータ駆動制御装置であって、
前記第1系統のコイルに通電する制御を行うとともに、前記モータの駆動状態に関する第1の信号を出力する第1の駆動回路と、
前記第2系統のコイルに通電する制御を行うとともに、前記モータの駆動状態に関する第2の信号を出力する第2の駆動回路と、
前記第1の信号と前記第2の信号とに基づいて、前記モータの駆動状態に関する出力信号を出力する信号出力回路とを備え、
前記出力信号が出力される外部出力端子をさらに備え、
前記信号出力回路は、前記モータが正常に駆動されているとき、第1の出力信号を前記外部出力端子から出力し、前記モータがロック状態であるとき、そのことを示す第2の出力信号を前記外部出力端子から出力し、
前記信号出力回路は、前記第1の駆動回路と前記第2の駆動回路との少なくとも一方が動作していないとき、そのことを示す第3の出力信号を前記外部出力端子から出力する、モータ駆動制御装置。
【請求項3】
第1系統のコイルと第2系統のコイルとを有するモータを駆動させるモータ駆動制御装置であって、
前記第1系統のコイルに通電する制御を行うとともに、前記モータの駆動状態に関する第1の信号を出力する第1の駆動回路と、
前記第2系統のコイルに通電する制御を行うとともに、前記モータの駆動状態に関する第2の信号を出力する第2の駆動回路と、
前記第1の信号と前記第2の信号とに基づいて、前記モータの駆動状態に関する出力信号を出力する信号出力回路とを備え、
前記第1の駆動回路は、
外部から指定された目標回転数又は所定の目標回転数に基づいて前記第1系統のコイルに通電する制御を行うように構成されており、
前記目標回転数と前記モータの実回転数との比較結果が所定の条件を満たす場合、前記第1の信号としてハイインピーダンスに設定された信号を出力する、モータ駆動制御装置。
【請求項4】
前記第1の信号は、前記モータの実回転数に対応する周波数を有するFG信号である、
請求項1から3のいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項5】
前記第2の信号は、前記モータがロック状態ではない場合に電圧がローレベルに固定され前記モータがロック状態である場合に電圧がハイレベルに固定される信号、又は前記モータがロック状態ではない場合に電圧がハイレベルに固定され前記モータがロック状態である場合に電圧がローレベルに固定される信号である、請求項1から3のいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項6】
前記外部出力端子は、前記第1の駆動回路の前記第1の信号の出力端子に接続されており、
前記第1の出力信号は、前記第1の信号である、請求項1又は2に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項7】
前記第2の駆動回路の電源供給経路上に設けられたヒューズと、
前記ヒューズの下流側と、前記第2の駆動回路の前記第2の信号の出力端子との間に設けられたオープン判別回路とを備え、
前記オープン判別回路は、前記ヒューズが切断しているとき、前記第2の駆動回路の前記第2の信号の出力端子をハイインピーダンスに設定する、請求項1に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項8】
前記第3の出力信号は、ハイインピーダンスに設定された信号である、請求項2に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項9】
前記第1の駆動回路と前記第2の駆動回路との一方が動作していないとき、前記第1の駆動回路と前記第2の駆動回路との他方は、所定の電流が前記第1系統のコイル又は第2系統のコイルに流れるように制御を行う、請求項1から3のいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータ駆動制御装置に関し、特に、2系統の駆動回路を有するモータ駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、単相モータを駆動するモータ駆動装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、モータ駆動制御装置の駆動回路に故障が発生してモータを駆動させることができなくなる場合がある。例えば、所定の回転方向(正方向)にモータを駆動させる用途において、上記のようにモータを駆動させることができなくなったとき、外力が作用してモータが所定の回転方向とは反対の方向に強制的に回転する(逆回転する)と、問題が生じる場合がある。
【0005】
例えば、モータ駆動制御装置によりファンモータを駆動する場合において、電源ラインのヒューズが切れるなどしてモータ駆動制御装置の駆動回路が故障すると、ファンモータの駆動が停止する。このような場合において、例えば、当該ファンモータと併用されている他のファンモータの動作に伴って当該ファンモータに風が流入すると、当該ファンモータが逆回転する可能性がある。例えば、複数のファンモータがハウジングで囲まれた装置の冷却用途に用いられている場合において、上記のようにして1つのファンモータが逆回転すると、装置の内圧低下が引き起こされて冷却機能が低下し、装置の機能に影響が発生する可能性がある。そのため、ファンモータの正回転を可能な限り継続させる必要がある。
【0006】
上記の問題を解決する方法としてモータ駆動制御装置として2系統の駆動回路を有するようにすることで、一方の駆動回路が故障した場合においても、他方の駆動回路を用いてファンモータの駆動を継続することが可能になる。
【0007】
ところで、このようにモータ駆動制御回路に2系統の駆動回路が設けられている場合において、それぞれの駆動回路がどのような駆動状態であるか(例えば、正常に駆動している状態であるか否かなど)に応じてモータ駆動制御回路やそれを用いた機器等の制御を行うことができれば、便利である。
【0008】
この発明は、モータの正回転を可能な限り継続させることができ、かつ、駆動状態を外部に報知可能なモータ駆動制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、モータ駆動制御装置は、第1系統のコイルと第2系統のコイルとを有するモータを駆動させるモータ駆動制御装置であって、第1系統のコイルに通電する制御を行うとともに、モータの駆動状態に関する第1の信号を出力する第1の駆動回路と、第2系統のコイルに通電する制御を行うとともに、モータの駆動状態に関する第2の信号を出力する第2の駆動回路と、第1の信号と第2の信号とに基づいて、モータの駆動状態に関する出力信号を出力する信号出力回路とを備える。
【0010】
好ましくは、第1の信号は、モータの実回転数に対応する周波数を有するFG信号である。
【0011】
好ましくは、第2の信号は、モータがロック状態ではない場合に電圧がローレベルに固定されモータがロック状態である場合に電圧がハイレベルに固定される信号、又はモータがロック状態ではない場合に電圧がハイレベルに固定されモータがロック状態である場合に電圧がローレベルに固定される信号である。
【0012】
好ましくは、出力信号が出力される外部出力端子をさらに備え、信号出力回路は、モータが正常に駆動されているとき、第1の出力信号を外部出力端子から出力し、モータがロック状態であるとき、そのことを示す第2の出力信号を外部出力端子から出力する。
【0013】
好ましくは、外部出力端子は、第1の駆動回路の第1の信号の出力端子に接続されており、第1の出力信号は、第1の信号である。
【0014】
好ましくは、信号出力回路は、第2の信号に応じて外部出力端子に所定の電圧を印加するか否かを切り替える切替回路を有する。
【0015】
好ましくは、切替回路は、第2の信号に応じて外部出力端子と接地電位とを接続するか否かを切り替え、モータがロック状態である場合に、切替回路が外部出力端子を接地電位に接続することで、第2の出力信号として電圧がローレベルに固定される信号が出力される。
【0016】
好ましくは、第2の駆動回路の電源供給経路上に設けられたヒューズと、ヒューズの下流側と、第2の駆動回路の第2の信号の出力端子との間に設けられたオープン判別回路とを備え、オープン判別回路は、ヒューズが切断しているとき、第2の駆動回路の第2の信号の出力端子をハイインピーダンスに設定する。
【0017】
好ましくは、信号出力回路は、第1の駆動回路と第2の駆動回路との少なくとも一方が動作していないとき、そのことを示す第3の出力信号を外部出力端子から出力する。
【0018】
好ましくは、第3の出力信号は、ハイインピーダンスに設定された信号である。
【0019】
好ましくは、第1の駆動回路は、外部から指定された目標回転数又は所定の目標回転数に基づいて第1系統のコイルに通電する制御を行うように構成されており、目標回転数とモータの実回転数との比較結果が所定の条件を満たす場合、第1の信号としてハイインピーダンスに設定された信号を出力する。
【0020】
好ましくは、第1の駆動回路と第2の駆動回路との一方が動作していないとき、第1の駆動回路と第2の駆動回路との他方は、所定の電流が第1系統のコイル又は第2系統のコイルに流れるように制御を行う。
【発明の効果】
【0021】
これらの発明に従うと、モータの正回転を可能な限り継続させることができ、かつ、駆動状態を外部に報知可能なモータ駆動制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態の1つにおけるモータ駆動制御装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】モータ駆動制御装置の動作について説明する表である。
【
図3】モータ駆動制御装置により行われる動作を説明する第1のフローチャートである。
【
図4】モータ駆動制御装置により行われる動作を説明する第2のフローチャートである。
【
図5】モータ駆動制御装置により行われる動作を説明する第3のフローチャートである。
【
図6】モータ駆動制御装置により行われる動作を説明する第4のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態におけるモータ駆動制御装置について説明する。
【0024】
[実施の形態]
【0025】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおけるモータ駆動制御装置1の構成を模式的に示す図である。
【0026】
図1に示されるように、モータ駆動制御装置1は、モータ50を有するモータ装置に用いられる。モータ装置は、モータ50の回転位置に応じて位置信号を出力する2個の位置検出器41,42を備えている。モータ駆動制御装置1には、外部から直流の電源電圧Vdcが供給される。
【0027】
モータ駆動制御装置1は、外部の機器から信号が入力される外部入力端子と、外部の機器に信号を出力する外部出力端子29とを有している。モータ駆動制御装置1は、上位装置600に接続されている。
【0028】
モータ駆動制御装置1の外部入力端子には、上位装置600から出力された速度指令信号Scが入力される。モータ駆動制御装置1は、入力された速度指令信号Scに応じて、モータ50を駆動させる。
【0029】
モータ駆動制御装置1の外部出力端子29から、上位装置600に対して、出力信号Soが出力される。後述するように、出力信号Soは、モータ50の駆動状態に関する信号である。例えば、出力信号Soとしてモータ50の実回転数に対応する周波数を有するFG信号が出力される。上位装置600は、モータ駆動制御装置1から出力された出力信号Soに基づいて、モータ50の駆動状態を知ることができる。そして、上位装置600は、モータ50の駆動状態に応じて、速度指令信号Scをモータ駆動制御装置1に出力するなどして、モータ装置の動作を制御することができる。
【0030】
モータ50は、それぞれがティース(図示せず)に巻回された第1系統のコイル80及び第2系統のコイル80bを備えている。なお、第1系統のコイル80及び第2系統のコイル80bは、それぞれ1つのコイルにより構成されていてもよい。
【0031】
本実施の形態において、モータ駆動制御装置1は、第1系統のコイル80に通電する制御を行うとともに、モータ50の駆動状態に関する第1の信号を出力する第1の駆動回路10と、第2系統のコイル80bに通電する制御を行うとともに、モータ50の駆動状態に関する第2の信号を出力する第2の駆動回路10bと、信号出力回路20とを備えている。
【0032】
第1の駆動回路10は、第1系統のコイル80に通電するインバータ回路(不図示)とそのインバータ回路を制御する駆動制御回路とを含む第1の制御回路部12と、電源電圧Vdcから第1の制御回路部12への電源供給経路上に設けられたヒューズ19とを有している。また、第2の駆動回路10bは、第2系統のコイル80bに通電するインバータ回路(不図示)とそのインバータ回路を制御する駆動制御回路とを含む第2の制御回路部12bと、電源電圧Vdcから第2の制御回路部12bへの電源供給経路上すなわち第2の駆動回路10bの電源供給経路上に設けられたヒューズ19bとを有している。
【0033】
第1の制御回路部12と第2の制御回路部12bとは、それぞれ、インバータ回路と駆動制御回路とを含む1つの集積回路(IC)である。なお、第1の制御回路部12や第2の制御回路部12bの構成はこれに限られず、集積回路でなくてもよいし、第1の制御回路部12や第2の制御回路部12bの一部のみが集積回路となっているものであってもよい。
【0034】
本実施の形態において、第1の制御回路部12と第2の制御回路部12bとはともに、ハードウェアとしては同一の構成を有する汎用ICを用いて構成されている。第1の制御回路部12と第2の制御回路部12bとは、それぞれ、Vcc端子(Vcc端子121、Vcc端子121b)、PWM端子(PWM端子125、PWM端子125b)、FG/RD端子(第1出力端子(FG端子)123、第2出力端子(RD端子)123b)、Out1端子、及びOut2端子などを有している。Vcc端子121,121bは、ヒューズ19,19bを介して電源電圧Vdcに接続されている。PWM端子125,125bは、外部入力端子に接続されており、速度指令信号Scが入力される端子である。Out1端子及びOut2端子は、コイル80,80bに通電するための端子であり、コイル80,80bに接続されている。なお、第1の制御回路部12と第2の制御回路部12bとは、ハードウェアとして異なる構成を有していてもよい。
【0035】
第1の駆動回路10には、第1の位置検出器41が接続されている。第2の駆動回路10bには、第2の位置検出器42が接続されている。第1の位置検出器41は、第1系統のコイル80に対応する位置に配置されている。第2の位置検出器42は、第2系統のコイル80bに対応する位置に配置されている。
【0036】
2個の位置検出器41,42は、モータ50のロータの位置に応じて位置検出信号を出力する。第1の位置検出器41は、第1の制御回路部12に位置検出信号を出力する。第2の位置検出器42は、第2の制御回路部12bに位置検出信号を出力する。なお、本実施の形態において、第1,第2の位置検出器41,42は、ホール素子である。各ホール素子は、位置検出信号として正負の極性を有する信号である、ホール信号を出力する。なお、第1,第2の位置検出器41,42は、互いに同じ素子に限られず、また、ホール素子に限られるものではない。
【0037】
FG/RD端子は、FG信号を出力するFG端子として機能するかモータ50がロック状態にあるか否かを示すロック信号を出力するかRD端子として機能するかを予め設定することができるように用意された端子である。本実施の形態において、第1の制御回路部12には、FG信号を出力する第1出力端子123が設けられている。第2の制御回路部12bには、ロック信号を出力する第2出力端子123bが設けられている。第1出力端子123に接続された第1信号線31と、第2出力端子123bに接続された第2信号線32とは、信号出力回路20に接続されている。
【0038】
第1の制御回路部12及び第2の制御回路部12bのそれぞれには、速度指令信号Scと、第1,第2の位置検出器41,42から出力された位置検出信号とが入力される。速度指令信号Scは、モータ50の駆動に関する信号であり、より詳しくは、モータ50を駆動させる回転数(目標回転数)に対応する電圧の信号である。例えば、速度指令信号Scは、ハイレベルが5ボルトである、目標回転数に応じたデューティ(Duty)のPWM(パルス幅変調)信号である。なお、速度指令信号Scは、目標回転数に応じた周波数のクロック信号など、他の種類の信号であってもよい。
【0039】
第1の制御回路部12及び第2の制御回路部12bのそれぞれの駆動制御回路は、位置検出信号に基づいてインバータ回路を動作させる信号を出力してインバータ回路の動作を制御する。第1の制御回路部12及び第2の制御回路部12bのそれぞれは、位置検出信号に基づいてモータ50の実回転数(実際の回転数)を検出し、モータ50の実回転数が入力された速度指令に対応する回転数になるように、インバータ回路に含まれるスイッチング素子のオン、オフ動作を制御する。すなわち、第1の駆動回路10は、外部から指定された目標回転数に基づいて第1系統のコイル80に通電する制御を行うように構成されている。また、第2の駆動回路10は、外部から指定された目標回転数に基づいて、第2系統のコイル80bに通電する制御を行うように構成されている。
【0040】
第1の制御回路部12及び第2の制御回路部12bのそれぞれのインバータ回路は、駆動制御回路から出力された信号に基づいて、位置検出信号に応じたタイミングでモータ50が備えるコイル80,80bに流れる電流の向きが切り替わるようにして、コイル80,80bに通電する。
【0041】
上述の通り、第1の制御回路部12は、第1出力端子123から、モータ50の実回転数に対応する周波数で電圧がハイレベルとローレベルとを繰り返すFG信号を出力する。すなわち、第1の駆動回路10は、モータ50の駆動状態に関する第1の信号としてFG信号を出力する。第1の信号は、第1信号線31を経由して、信号出力回路20に入力される。
【0042】
また、第2の制御回路部12bは、FG信号の出力を行わず、第2出力端子123bから、モータ50がロック状態であるか否かに応じた電圧となるロック信号を出力する。すなわち、第2の駆動回路10bは、モータ50の駆動状態に関する第2の信号としてロック信号を出力する。第2の信号は、第2信号線32を経由して、信号出力回路20に入力される。
【0043】
なお、第2の信号は、モータ50がロック状態ではない場合に電圧がローレベルに固定されモータ50がロック状態である場合に電圧がハイレベルに固定される信号である。第2の信号は、モータ50がロック状態ではない場合に電圧がハイレベルに固定されモータ50がロック状態である場合に電圧がローレベルに固定される信号であってもよい。
【0044】
本実施の形態において、第1出力端子123と第2出力端子123bとは、いわゆるオープンドレイン形式で信号を出力するように構成されている。すなわち、第1出力端子123と第2出力端子123bとは、ハイインピーダンス(Hi-Z;オープン状態)のときに電圧がハイレベルとなるように、所定の電圧にプルアップして用いられる。これにより、ハイレベルの電圧又はローレベルの電圧の第1の信号及び第2の信号が出力される。
【0045】
信号出力回路20は、第1の信号(FG信号)と第2の信号(ロック信号)とに基づいて、モータ50の駆動状態に関する出力信号Soを出力する。換言すると、信号出力回路20は、第1の信号と第2の信号とに基づいて、外部出力端子29から出力する出力信号Soの調整動作を行う。
【0046】
本実施の形態において、第1信号線31は、信号出力回路20において、外部出力端子29に接続されている。すなわち、外部出力端子29は、第1信号線31を介して、第1の駆動回路10の第1の信号の出力端子である第1出力端子123に接続されている。
【0047】
また、信号出力回路20は、切替回路24と、オープン判別回路23とを有している。
【0048】
第2信号線32は、信号出力回路20において、オープン判別回路23を通して、切替回路24に接続されている。
【0049】
オープン判別回路23は、第2の駆動回路10bにおいて、ヒューズ19bの下流側すなわち第2の制御回路部12bのVcc端子121bと、第2の駆動回路10bの第2の信号の出力端子である第2出力端子123bとの間に設けられている。本実施の形態において、オープン判別回路23は、一端がVcc端子121bに接続されており他端が第2信号線32に接続されている抵抗23rで構成されている。
【0050】
切替回路24は、第2信号線32のほか、接地電位(グランド電位)と、第1出力端子123と外部出力端子29とを結ぶ第1信号線31上のポイントP1に接続されている。切替回路24には、第2出力端子123bから出力される第2の信号が入力される。切替回路24は、第2の信号に応じて、外部出力端子29に所定の電圧を印加するか否かを切り替える。本実施の形態においては、切替回路24は、第2の信号に応じて、外部出力端子29と接地電位とを接続するか否かを切り替える。
【0051】
具体的には、切替回路24は、ベースが抵抗を介して第2出力端子123bに接続されたトランジスタ24tを有している。トランジスタ24tのエミッタとベースとの間は、抵抗で接続されている。トランジスタ24tのエミッタは、接地電位に接続されている。トランジスタ24tのコレクタは、ポイントP1に接続されている。トランジスタ24tのスイッチング動作が行われることで、外部出力端子29と接地電位とを接続するか否かが切り替えられる。
【0052】
なお、オープン判別回路23がヒューズ19bの下流側と第2出力端子123bとの間に設けられているので、ヒューズ19bが導通している場合においては、第2出力端子123bがプルアップされている状態となる。そのため、第2出力端子123bからモータ50のロック状態に応じたロック信号が出力される。他方、ヒューズ19bが切断している場合には、オープン判別回路23がハイインピーダンスの状態となる。また、この場合、第2の制御回路部12bにも電源が供給されないため、第2出力端子123bはハイインピーダンスの状態となる。すなわち、オープン判別回路23は、ヒューズ19bが切断しているとき、第2の駆動回路10bの第2出力端子123bをハイインピーダンスに設定する。
【0053】
また、本実施の形態においては、第1の制御回路部12は、目標回転数とモータ50の実回転数との比較結果が所定の条件を満たす場合、第1の信号として、FG信号ではなく、ハイインピーダンスに設定された信号を出力する。ここで、所定の条件は、目標回転数に応じた出力でモータ50を駆動しても、モータ50の実回転数が目標回転数に所定の程度だけ及ばないこと(例えば、実回転数が目標回転数に所定の係数を乗じた回転数に達しないことなど)である。具体的には、2つの駆動回路10,10bのうち一方が動作せず他方のみでモータ50を駆動する場合に、満足されるような条件が所定の条件となっている。このような所定の条件に該当する場合には、第1の信号としてFG信号は出力されず、ハイインピーダンスに固定された信号が出力される。
【0054】
また、本実施の形態においては、第1の駆動回路10は、第2の駆動回路10bが故障するなどして動作していないとき、速度指令信号Scに関わらず、所定の電流が第1系統のコイル80に流れるように制御を行う。同様に、第2の駆動回路10bは、第1の駆動回路10が故障するなどして動作していないとき、速度指令信号Scに関わらず、所定の電流が第2系統のコイル80bに流れるように制御を行う。これにより、第1の駆動回路10と第2の駆動回路10bとの一方が故障しても、他方によりモータ50を一定程度だけ動作させる補償動作を行わせることができる。第1の駆動回路10は、第2の駆動回路10bが故障しているか否かを、例えば、目標回転数とモータ50の実回転数との比較結果が上記の所定の条件を満たすか否かによって判断することができる。同様に、第2の駆動回路10bは、第1の駆動回路10が故障しているか否かを、例えば、目標回転数とモータ50の実回転数との比較結果が上記の所定の条件を満たすか否かによって判断することができる。
【0055】
信号出力回路20が上記のような回路構成を有していることにより、本実施の形態においては、信号出力回路20は、モータ50が正常に駆動されているとき、第1の出力信号を外部出力端子29から出力する。第1の出力信号は、第1の信号である。また、信号出力回路20は、モータ50がロック状態であるとき、そのことを示す第2の出力信号を外部出力端子29から出力する。また、信号出力回路20は、第1の駆動回路10と第2の駆動回路10bとの少なくとも一方が動作していないとき、そのことを示す第3の出力信号を外部出力端子29から出力する。
【0056】
すなわち、第1出力端子123から第1の信号が出力されている場合において、切替回路24が外部出力端子29と接地電位とを接続しない場合には、外部出力端子29から出力信号Soとして第1の信号(第1の出力信号)が出力される。モータ50が正常に駆動されているとき、切替回路24が外部出力端子29と接地電位とを接続しないので、第1の信号が出力信号Soとして出力される。
【0057】
また、第1出力端子123から第1の信号が出力されている場合において、切替回路24が外部出力端子29と接地電位とを接続した場合には、外部出力端子29から出力信号Soとして電圧がローレベルに固定される信号(第2の出力信号)が出力される。モータ50がロック状態であるとき、切替回路24が外部出力端子29を接地電位に接続することで、出力信号Soとして電圧がローレベルに固定される信号が出力される。この出力信号Soは、モータ50がロック状態であることを示す信号であり、上位装置600は、出力信号Soの電圧がローレベルに固定されている場合に、モータ50がロック状態であることを検知することができる。
【0058】
第3の出力信号は、ハイインピーダンスに設定された信号である。すなわち、ヒューズ19が切れるなどして第1の駆動回路10が動作していない場合、第1出力端子123からハイインピーダンスに設定された信号が第1の信号として出力される(第1出力端子123がハイインピーダンスとなる)一方で、モータ50が第2の駆動回路10bにより駆動されるので切替回路24が外部出力端子29と接地電位とを接続しない。他方、ヒューズ19bが切れるなどして第2の駆動回路10bが動作していない場合、第2信号線32がハイインピーダンスであるため切替回路24が外部出力端子29と接地電位とを接続しない一方で、上記の所定の条件が満たされているので第1の制御回路部12がハイインピーダンスに設定された信号を第1の信号として出力する。そのため、いずれの場合においても、ハイインピーダンスに設定された第1の信号が出力信号Soとして出力される(第3の出力信号)。
【0059】
このような第1の駆動回路10、第2の駆動回路10b、及び信号出力回路20の各部などの動作や出力される出力信号Soについて、モータ駆動制御装置1及びモータ50の状態毎に整理してまとめると、以下のようになる。
【0060】
図2は、モータ駆動制御装置1の動作について説明する表である。
【0061】
図2に示される表では、行に、「正常」、「ロック状態」、「ヒューズ19オープン」、「ヒューズ19bオープン」、及び「ヒューズ19,19bオープン」の各状態が並び、列に、モータ駆動制御装置1の各部の動作が示されている。列には、第1出力端子123から出力される第1の信号、第2出力端子123bから出力される第2の信号、トランジスタ24tの状態、及び出力信号Soが示されている。「正常」は、モータ駆動制御装置1及びモータ50が正常に駆動されている状態である。「ロック状態」は、モータ50がロックしている状態である。「ヒューズ19オープン」は、ヒューズ19が切れている状態、すなわち第1の駆動回路10が故障している状態(第1の制御回路部12が動作を停止している状態)であり、第2の駆動回路10bは駆動している状態である。「ヒューズ19bオープン」は、ヒューズ19bが切れている状態、すなわち第2の駆動回路10bが故障している状態(第2の制御回路部12bが動作を停止している状態)であり、第1の駆動回路10は駆動している状態である。「ヒューズ19,19bオープン」は、ヒューズ19とヒューズ19bとがともに切れている状態、すなわち第1の駆動回路10及び第2の駆動回路10bが両方とも故障している状態である。
【0062】
図2において、信号や状態の表記は以下の通りである。「FG信号」はFG信号が出力されることを示す。「Low」は電圧がローレベルに固定された信号が出力されることを示す。「Hi-Z」はその端子がハイインピーダンスとなっていること(ハイインピーダンスの信号が出力されること)を示し、この場合、端子がプルアップされていれば、電圧がハイレベルに固定された信号が出力されることとなる。トランジスタ24tについて、「OFF」はオフ状態であること、すなわち切替回路24が外部出力端子29と接地電位とを接続しない状態であることを示し、「ON」はオン状態であること、すなわち切替回路24が外部出力端子29と接地電位とを接続する状態であることを示す。
【0063】
図3は、モータ駆動制御装置1により行われる動作を説明する第1のフローチャートである。
【0064】
モータ駆動制御装置1は、信号出力回路20が上述のような回路構成を有していたり、第1の駆動回路10や第2の駆動回路10bが所定の動作を行うように構成されていたりすることにより、以下のように動作する。
【0065】
ステップS11において、モータ50が定常回転を行うように、モータ駆動制御装置1が動作する。この状態は、
図2に示される表において「正常」の状態に該当する。すなわち、第1出力端子123からFG信号が第1の信号として出力され、第2出力端子123bから電圧がローレベルに固定された信号が第2の信号として出力される。トランジスタ24tはオフ状態となるため、出力信号Soとして第1の信号(FG信号)が外部出力端子29から出力される。上位装置600は、出力信号Soに基づいて、モータ50の回転数を検知することができる。
【0066】
ここで、モータ50が停止したときすなわちモータ50がロックしたときには(ステップS12でYES)、ステップ21(
図4に示す)に進む。また、第1の駆動回路10が故障したとき、例えば過電流によりヒューズ19が切れたときには(ステップS13でYES)、ステップS31(
図5に示す)に進む。また、第2の駆動回路10bが故障したとき、例えば過電流によりヒューズ19bが切れたときには(ステップS14でYES)、ステップS41(
図6に示す)に進む。これらのいずれでもないとき、すなわち正常の状態が続けば(ステップS12、ステップS13、及びステップS14のいずれもNO)、ステップS11の動作が継続する。
【0067】
図4は、モータ駆動制御装置1により行われる動作を説明する第2のフローチャートである。
【0068】
モータ50が停止したときすなわちモータ50がロックしたときには、
図4に示されるようにモータ駆動制御装置1が動作する。この状態は、
図2に示される表において「ロック状態」に該当する。
【0069】
すなわち、ステップS21において、モータ50の駆動中にモータ50が停止したとき、第1出力端子123から、モータ50のロータの停止位置に応じて電圧がハイレベルに固定された信号又は電圧がローレベルに固定された信号が第1の信号として出力され、第2出力端子123bから電圧がハイレベルに固定された信号が第2の信号として出力される。
【0070】
そうすると、第2の信号は電圧がハイレベルに固定された信号であるので、トランジスタ24tはオン状態になり(ステップS22)、第1信号線31が接地電位に接続される(ステップS23)。
【0071】
そのため、外部出力端子29が接地電位になる。すなわち、出力信号Soとして電圧がローレベルに固定された信号が出力される(ステップS24)。上位装置600は、出力信号Soに基づいて、モータ50がロックしている状態であることを検知することができる。
【0072】
図5は、モータ駆動制御装置1により行われる動作を説明する第3のフローチャートである。
【0073】
第1の駆動回路10が故障したときには、
図5に示されるようにモータ駆動制御装置1が動作する。この状態は、
図2に示される表において「ヒューズ19オープン」の状態に該当する。
【0074】
すなわち、ステップS31において、第1の駆動回路10の動作が停止すると、第1出力端子123からのFG信号の出力が停止する。このとき、第1出力端子123は、ハイインピーダンスとなる。すなわち、第1の信号としてハイインピーダンスの信号が出力される。
【0075】
また、第1の駆動回路10の動作が停止すると、第1の駆動回路10によるモータ50の駆動力が消失し、モータ50の回転数が低下する。そうすると、ステップS32において、第2の駆動回路10bは、モータ50の回転数の低下を検知する。具体的には、例えば、第2の制御回路部12bは、入力された速度指令信号Scに基づいてモータ50を駆動する動作を行うところ、第1の駆動回路10の動作が停止してモータ50の駆動力が不足したことによりモータ50の実回転数が上がらないとき、すなわち目標回転数と実回転数の乖離が大きくなったとき、これを検知する。
【0076】
ステップS33において、第2の駆動回路10bは、速度指令信号Scに関わらず、出力を所定値に設定してモータ50の回転を維持させる。すなわち、第2の制御回路部12bは、所定の電流が第2系統のコイル80bに流れるように制御を行う。具体的には、通常時において、入力される速度指令信号Scのデューティに応じて第2の制御回路部12bから所定のデューティの駆動電圧が第2系統のコイル80bに印加されるような場合、第1の駆動回路10の動作が停止したときには、入力される速度指令信号Scのデューティに関わらず、デューティが予め設定された値(例えば、50パーセント)の駆動電圧が第2系統のコイル80bに印加される。これにより、モータ50の回転が、第2の駆動回路10bから供給される駆動電圧のみによって適切な状態に制御される。なお、第2の制御回路部12bからモータ50に出力されるデューティの範囲や、このときの第2の駆動回路10bの出力の大きさは、上記に限られるものではない。例えば、モータ50が正回転を維持できる程度の大きさにするなど、モータ駆動制御装置1の用途等に応じて、適度な大きさで出力が行われるようにすればよい。適度な大きさとは、例えば、正回転を維持でき、また、過負荷になることがないような大きさに設定すればよい。
【0077】
このようにしてモータ50の回転が維持されるので、第2の信号は電圧がローレベルに固定された信号となり、トランジスタ24tはオフ状態のままとなる。そうすると、ステップS34において、外部出力端子29はハイインピーダンスとなる。すなわち、ハイインピーダンスの信号が出力信号Soとして出力される。
【0078】
図6は、モータ駆動制御装置1により行われる動作を説明する第4のフローチャートである。
【0079】
第2の駆動回路10bがヒューズ19の断線などで故障したときには、
図6に示されるようにモータ駆動制御装置1が動作する。この状態は、
図2に示される表において「ヒューズ19bオープン」の状態に該当する。
【0080】
すなわち、ステップS41において、第2の駆動回路10bの動作が停止すると、第2出力端子123bからのロック信号の出力が停止する。このとき、第2出力端子123bは、ハイインピーダンスとなる。すなわち、第2出力端子123bからハイインピーダンスの信号が第2の信号として出力される。
【0081】
また、ヒューズ19bが断線すると、第2の駆動回路10bにおけるVcc端子121bが接地電位にショートする(ステップS42)。そうすると、第2の信号がハインインピーダンスであり、トランジスタ24tの入力がプルダウンされるので、トランジスタ24tはオフ状態となる(ステップS43)。
【0082】
一方、第2の駆動回路10bの動作が停止すると、第2の駆動回路10bによるモータ50の駆動力が消失し、モータ50の回転数が低下する。そうすると、ステップS44において、第1の駆動回路10は、モータ50の回転数の低下を検知する。具体的には、例えば、第1の制御回路部12は、入力された速度指令信号Scに基づいてモータ50を駆動する動作を行うところ、第2の駆動回路10bの動作が停止してモータ50の駆動力が不足したことによりモータ50の実回転数が上がらないとき、すなわち目標回転数と実回転数の乖離が大きくなったとき、これを検知する。
【0083】
ステップS45において、第1の駆動回路10は、速度指令信号Scに関わらず、出力を所定値に設定してモータ50の回転を維持させる。すなわち、第1の制御回路部12は、所定の電流が第1系統のコイル80に流れるように制御を行う。具体的には、通常時において、入力される速度指令信号Scのデューティに応じて第1の制御回路部12bからデューティの最大値が50パーセントの駆動電圧が第1系統のコイル80に印加されるような場合、第2の駆動回路10bの動作が停止したときには、入力される速度指令信号Scのデューティに関わらず、デューティが予め設定された値(例えば、50パーセント)の駆動電圧が第1系統のコイル80に印加される。これにより、モータ50の回転が、第1の駆動回路10から供給される駆動電圧のみによって適切な状態に制御される。なお、第1の制御回路部12からモータ50に出力されるデューティの範囲や、このときの第1の駆動回路10の出力の大きさは、上記に限られるものではない。例えば、モータ50が正回転を維持できる程度の大きさにするなど、モータ駆動制御装置1の用途等に応じて、適度な大きさで出力が行われるようにすればよい。
【0084】
また、第1の駆動回路10は、第1出力端子123からのFG信号の出力を停止し、第1出力端子123をハイインピーダンスに設定する。
【0085】
トランジスタ24tはオフ状態であるので、第1の信号が、出力信号Soとして外部出力端子29から出力される。すなわち、ステップS46において、外部出力端子29はハイインピーダンスとなる。すなわち、出力信号Soとしてハイインピーダンスの信号が出力される。
【0086】
このように、第1の駆動回路10が動作停止中であるときや、第2の駆動回路10bが動作停止中であるときには、出力信号Soとしてハイインピーダンスの信号が外部出力端子29から出力される。上位装置600は、出力信号Soがハイインピーダンスの信号となっていることを検知することで、第1の駆動回路10と第2の駆動回路10bとの少なくとも一方が動作を停止している状態であると検知することができる。
【0087】
以上説明したように、本実施の形態において、モータ駆動制御装置1の1つの外部出力端子29から、モータ50の駆動状態に応じて、3種類の出力信号Soのうちいずれかの出力信号Soが出力される。すなわち、定常回転時にはFG信号が出力され、ロック時にはロック信号が出力され、第1の駆動回路10と第2の駆動回路10bとのうち少なくとも一方が故障したときにはハイインピーダンスの信号が出力される。したがって、3種類のモータ50の駆動状態について、上位装置600が容易に検知可能にすることができる。
【0088】
第1の駆動回路10と第2の駆動回路10bとのうち少なくとも一方が故障しているときには、出力信号Soとしてハイインピーダンスの信号が出力される。また、モータ50がロック状態であるときには電圧がローレベルに固定された信号が出力される。したがって、上位装置600が、2つの駆動回路10、10bの少なくとも一方が故障している異常状態とモータ20がロック状態である異常状態とのどちらの異常状態が発生しているかを容易に識別できるようになる。
【0089】
複数種類のモータ50の駆動状態について、1つの外部出力端子29から出力される出力信号Soのみに基づいて判別することができるようになる。したがって、モータ駆動制御装置1と上位装置600との間を接続する信号線の数を少なくすることができる。
【0090】
モータ駆動制御装置1の内部の回路構成は、簡素である。様々な出力信号Soを出力するために規模の大きい集積回路等を用いる必要はなく、モータ駆動制御装置1の製造コストを低減することができる。また、簡素な小型の集積回路を用いてモータ駆動制御装置1を構成することができるので、モータ駆動制御装置1を小型化することができる。
【0091】
第1の駆動回路10と第2の駆動回路10bとのどちらかがオープン異常状態(ヒューズ19,19bが切れて動作停止した状態)になったとき、異常が発生していない回路において、回転数を補うことができるようにモータ50の駆動が継続して行われる。すなわち、第1の駆動回路10と第2の駆動回路10bとの一方がオープン異常状態となっても、他方でモータ50の駆動力の低下をできるだけ補い、正回転を継続することができる。
【0092】
[その他]
【0093】
モータ駆動制御装置の回路構成は、上述の実施の形態やその変形例に示されるような具体例に限定されない。上述の実施の形態やその変形例における個々の構成を一部変形した構成と適宜組み合わせたり一部を置換したりして本発明の目的に適合するように構成してもよい。また、上述の実施の形態のうち、一部の構成要素や機能が省略されていてもよい。ほかにも、本発明の目的に適合するように構成された、様々な回路構成が適用できる。
【0094】
例えば、切替回路は、電界効果トランジスタ(FET)などを用いて構成されていてもよい。例えば、トランジスタに代えて、NチャンネルFETなどを用いてもよい。また、コンパレータを用いて構成されていてもよい。第1の制御回路部や第2の制御回路部のそれぞれは、インバータ回路を内蔵しているものではなくてもよい。オープン判別回路は、コイル等を用いて構成するようにしてもよい。
【0095】
本実施の形態のモータ駆動制御装置により駆動されるモータは、上記の実施の形態の種類のものに限定されるものではない。モータ駆動制御装置により駆動されるモータは、単相モータではなくてもよく、相数は限定されない。
【0096】
信号出力回路は、ロック状態であるときに外部出力端子を接地電位に接続するものに限られず、例えば外部出力端子に所定の電圧を印加するものであってもよい。
【0097】
各駆動回路部の制御回路部は、汎用ICに限られない。
【0098】
位置検出器の数は、2個に限定されない。より多くの位置検出器を用いるようにしてもよい。モータの回転位置の検出は、ホールセンサによる方法に限定されない。
【0099】
上記実施の形態では、第1の駆動回路及び第2の駆動回路は、どちらかが異常状態であるとき、正常な駆動回路の回転数が最大回転数になるように制御を行うようにしてもよい。このときの正常な駆動回路の回転数は、最大回転数に限定されない。正常な駆動回路の回転数がモータの正回転が維持される回転数になるように、回転数を設定するなどすればよい。
【0100】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0101】
1 モータ駆動制御装置、10 第1の駆動回路、10b 第2の駆動回路、12 第1の制御回路部、12b 第2の制御回路部、19,19b ヒューズ、20 信号出力回路、23 オープン判別回路、24 切替回路、24t トランジスタ、29 外部出力端子、41 第1の位置検出器、42 第2の位置検出器、50 モータ、80 第1系統のコイル、80b 第2系統のコイル、123 第1出力端子、123b 第2出力端子、600 上位装置、Sc 速度指令信号、So 出力信号