(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】グラブバケット制御装置
(51)【国際特許分類】
B66C 13/32 20060101AFI20220902BHJP
B66C 13/48 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
B66C13/32 A
B66C13/48 C
(21)【出願番号】P 2018191491
(22)【出願日】2018-10-10
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】503002732
【氏名又は名称】住友重機械搬送システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 健
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-358696(JP,A)
【文献】特開平05-310394(JP,A)
【文献】特開平07-053183(JP,A)
【文献】特開昭61-217492(JP,A)
【文献】特開2017-065870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00 - 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持ワイヤの巻き取りと繰り出しによって昇降し、前記支持ワイヤと開閉ワイヤとの相対的な巻き取り量又は繰り出し量に応じて開閉するグラブバケットを制御する、グラブバケットの制御装置であって、
前記支持ワイヤの巻き取り制御と前記開閉ワイヤの巻き取り制御とを行う制御部と、
前記グラブバケットの荷の掴み上げ運動のパターンを選択する選択部と、
を備え、
前記掴み上げ運動には、前記グラブバケットを閉じる閉運動と、前記グラブバケットの上昇とが含まれ、
前記制御部は、前記選択部により選択されたパターンに応じて、前記閉運動の終端側期間と前記上昇の始端側期間との重複期間の長さを変化させる、
グラブバケットの制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記重複期間が長いほど、前記支持ワイヤの巻き取り開始タイミングを早め、かつ、前記閉運動の終了及び前記上昇の開始の際に前記開閉ワイヤの巻き取り速度を減速及び加速する期間を短くする、
請求項1記載のグラブバケットの制御装置。
【請求項3】
荷の掴み上げの操作指令を入力可能な操作部を更に備え、
前記制御部は、前記操作指令に基づき、前記グラブバケットが前記選択部により選択されたパターンの掴み上げ運動を行うように、前記支持ワイヤと前記開閉ワイヤとの巻き取り制御を実行する、
請求項1又は請求項2記載のグラブバケットの制御装置。
【請求項4】
前記選択部は荷の種類に応じて前記パターンの選択を行う、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のグラブバケットの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラブバケット制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バラ積み貨物などの荷を陸揚げするアンローダなどの荷役装置には、開閉及び昇降されるグラブバケットが設けられる。グラブバケットは船倉においてバケット部を閉じて荷を掴み、荷を掴んだまま上昇及び横行して、ホッパなどの荷回収部まで荷を運ぶ。一般に、グラブバケットは、支持ワイヤの巻き取りにより上昇され、支持ワイヤを固定又は繰り出しながら開閉ワイヤを巻き取ることでバケット部を閉じるように構成される。
【0003】
特許文献1には、グラブバケットを閉じて荷を掴ませるときに、グラブバケットを昇降させる巻上電動機を低速で下降の方向に駆動する制御方法が開示されている(段落0010を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
荷役の際、グラブバケットは何度も往復するため、1回のグラブバケットの荷の掴み上げ時間が長いと、その分、荷役に要する総合的な作業時間が長くなる。一方、荷の種類に応じてグラブバケットが荷を掴み上げるのに適した動作は異なる。
【0006】
本発明は、荷の種類に応じて荷役に要する総合的な作業時間を短くできるグラブバケットの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、支持ワイヤの巻き取りと繰り出しによって昇降し、前記支持ワイヤと開閉ワイヤとの相対的な巻き取り量又は繰り出し量に応じて開閉するグラブバケットを制御する、グラブバケットの制御装置であって、
前記支持ワイヤの巻き取り制御と前記開閉ワイヤの巻き取り制御とを行う制御部と、
前記グラブバケットの荷の掴み上げ運動のパターンを選択する選択部と、
を備え、
前記掴み上げ運動には、前記グラブバケットを閉じる閉運動と、前記グラブバケットの上昇とが含まれ、
前記制御部は、前記選択部により選択されたパターンに応じて、前記閉運動の終端側期間と前記上昇の始端側期間との重複期間の長さを変化させる構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、荷の種類に応じて荷役に要する総合的な作業時間を短くできるグラブバケットの制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るグラブバケットにおいてバケット部が開いている状態(A)と閉じている状態(B)とを示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るグラブバケットの制御装置を示す図である。
【
図3】第1パターンの掴み上げ運動を説明するタイムチャートである。
【
図4】第2パターンの掴み上げ運動を説明するタイムチャートである。
【
図5】第3パターンの掴み上げ運動を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るグラブバケットを示す図であり、(A)はバケット部が開いている状態を示し、(B)はバケット部が閉じている状態を示す。
図2は、本発明の実施形態に係るグラブバケットの制御装置を示す図である。
【0011】
本実施形態に係るグラブバケット10及び制御装置60は、例えば、港湾施設で貨物船からバラ積み貨物を荷揚げするアンローダに設けられる。
【0012】
グラブバケット10は、支持ワイヤWa、Wbに連結された支持部11と、開閉運動可能に支持部11に支持されたバケット部13と、開閉ワイヤWc、Wdに接続されてバケット部13を開閉駆動する駆動機構19とを有する。
【0013】
支持部11は、グラブバケット10の各要素を支持し、支持部11が昇降することで、グラブバケット10の全体が昇降する。支持部11は、支持ワイヤWa、Wbが巻き取り又は繰り出されることで昇降する。
【0014】
駆動機構19は、バケット部13に接続されたフレーム12と、支持部11とフレーム12とに回転自在に支持された複数の滑車15、16とを含む。複数の滑車15、16には、開閉ワイヤWcが掛けられている。開閉ワイヤWcが巻き取り又は繰り出されると、開閉ワイヤWcの巻き量の数分の一の長さで支持部11とフレーム12とが近接又は離間され、これによりバケット部13が開閉する。なお、
図1では、2つの滑車15、16が示されているが、開閉ワイヤWcが掛けられる一組目の滑車15、16と、もう一本の開閉ワイヤWdが掛けられる二組目の滑車15、16とが、
図1の紙面の垂直方向に設けられている。また、各組の滑車15、16は、2個に限られず、3個以上設けられていてもよい。
【0015】
図2に示すように、制御装置60は、演算装置71と、オペレータが各種の運転指令を入力する操作部62と、各種信号を入出力するI/O67とを備える。
【0016】
I/O67には、駆動回路52が接続され、制御装置60からの制御信号に基づいて駆動回路52を動作させることができる。駆動回路52は、モータMa~Mdに電流を流して、モータMa~Mdを駆動する。また、I/O67には、駆動回路52から駆動量及び駆動方向を示す信号が入力され、制御装置60はこれらの信号に基づいてモータMa~Mdの駆動量を求めることができる。
【0017】
支持ワイヤWa、Wbと開閉ワイヤWc、Wdとは、モータMa~Mdにより回転駆動されるドラム51a~51dに巻回されている。制御装置60は、駆動回路52を介してモータMa~Mdを駆動し、ドラム51a~51dを回転させることで、支持ワイヤWa、Wbと開閉ワイヤWc、Wdとを巻き取り又は繰り出すことかできる。これにより、グラブバケット10の昇降と開閉とが実現される。
【0018】
具体的には、制御装置60が、支持ワイヤWa、Wbをドラム51a、51bに巻き取ることで、グラブバケット10が上昇し、制御装置60が、支持ワイヤWa、Wbをドラム51a、51bから繰り出すことで、グラブバケット10が下降する。
【0019】
さらには、制御装置60が、支持ワイヤWa、Wbに対する開閉ワイヤWc、Wdの相対的な巻き取り量又は繰り出し量を変えることで、グラブバケット10が開閉する。詳細には、巻き取りを正の巻き量、繰り出しを負の巻き量で表わせば、開閉ワイヤWc、Wdの巻き量から、支持ワイヤWa、Wbの巻き量を減じた巻き量が正であれば、グラブバケット10のバケット部13が閉じる方向に運動し、負であれば、グラブバケット10のバケット部13が開く方向に運動する。
【0020】
グラブバケット10は、バケット部13を開いて船倉に着床した状態から、バケット部13を閉じかつ上昇することで、荷を掴み上げる。このときの閉運動と上昇とが含まれる運動を掴み上げ運動と呼ぶ。
【0021】
操作部62には、少なくともグラブバケット10の昇降の操作と、掴み上げ運動の操作と、バケット部13を開く操作とが可能な運転レバー63と、グラブバケット10の掴み上げ運動の種類を選択するグラブ動作選択スイッチ64と、荷の種類を入力可能な荷種入力部65とが含まれる。グラブ動作選択スイッチ64と、荷種入力部65とは、例えば、表示パネルの表示と、表示パネル上に設けられたタッチパネルとから構成されてもよい。また、荷種入力部65には、荷の銘柄を入力可能な第1入力部と、荷の粘度とを入力可能な第2入力部とが含まれていてもよい。
【0022】
演算装置71は、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラム及び制御データを格納した記憶装置、及び、CPUがデータを展開するメモリを備える。演算装置71は、CPUが制御プログラムを実行することで、複数の機能モジュールを実現する。複数の機能モジュールには、運転レバー63の操作に応じて複数のドラム51a~51dを駆動するドラム制御部72と、グラブバケット10の掴み上げ運動のパターンを複数種類の中から選択する選択処理部73と、複数の荷種と各荷種に適切な掴み上げ運動との対応関係が示されたデータを記憶した荷種-グラブ動作対応データ記憶部74とが含まれる。選択処理部73及びグラブ動作選択スイッチ64、あるいは、選択処理部73及び荷種入力部65が、本発明に係る選択部の一例に相当する。
【0023】
ドラム制御部72は、運転レバー63が操作に基づくグラブバケット10の横行又は昇降の指令を操作部62から受けると、これらの動作がなされるように、複数のドラム51a~51dを制御する。さらに、ドラム制御部72は、運転レバー63の操作に基づくグラブバケット10の掴み上げ運動の指令を受けると、選択処理部73により選択されたパターンで、複数のドラム51a~51dを制御して、グラブバケット10に閉運動と上昇とを含む掴み上げ運動を実行させる。
【0024】
選択処理部73は、グラブ動作選択スイッチ64又は荷種入力部65の入力に基づいて、グラブバケット10の掴み上げ運動のパターンを、複数パターンの中から選択する。荷種入力部65からの入力があった場合には、選択処理部73は、荷種-グラブ動作対応データ記憶部74のデータに基づいて、入力された荷種に適した掴み上げ運動のパターンを選択する。また、グラブ動作選択スイッチ64の操作があった場合には、選択処理部73は、この操作に応じた掴み上げ運動のパターンを選択する。
【0025】
荷種-グラブ動作対応データ記憶部74のデータは、例えば対応表Aのように、荷の銘柄と、各銘柄の標準的な荷に適した掴み上げの運動のパターンを示すパラメータとを対応づけたデータである。掴み上げ運動のパターンを示すパラメータには、例えば、グラブバケット10の上昇が開始されるときのバケット部13の残り開度に関する量と、掴み上げの運動の短縮時間に関する量とが含まれる。
【表1】
【0026】
荷役装置のオペレータが荷種入力部65で銘柄を入力すると、選択処理部73は、対応表Aから、入力された銘柄の標準的な荷に適した、掴み上げ運動のパターンのパラメータを取得する。荷は、例えば鉄鉱石、石炭、工業塩、化学原料などであり、銘柄はその産地や粒径などにより分類されてもよい。また、オペレータが荷種入力部65で荷の粘度を入力すると、選択処理部73は、対応表Aから取得したパラメータを、粘度に応じて補正し、実際の制御で使用する掴み上げ運動のパラメータとして決定してもよい。粘度が低くなるに従って、適切な残り開度は小さくなる。選択処理部73には、予め、粘度に応じて残り開度の補正量を計算する係数又は関数が与えられており、選択処理部73は、対応表Aから取得したパラメータに、係数又は関数を適用して、その補正量を計算することができる。
【0027】
<複数パターンの掴み上げ運動>
図3~
図5には、第1パターン~第3パターンの掴み上げ運動を説明するタイムチャートを示す。各タイムチャートの1段目から4段目には、グラブバケット10の昇降速度、バケット部13の開閉速度、支持ワイヤWa、Wbの巻き速度、及び、開閉ワイヤWc、Wdの巻き速度の各時間変化が示される。
図3~
図5において、タイミングt0からタイミングt1の期間は、グラブバケットの下降を示しており、下降完了のタイミングt1では、バケット部13が開いてグラブバケット10が荷の上に着床した状態にあるものとする。タイミングt1以降には、グラブバケット10の掴み上げ運動が示され、
図3から
図5のタイミングt4a~t4c、は、グラブバケット10が既定の高さまで上昇したタイミングを示す。
【0028】
第1パターンの掴み上げ運動(
図3)は、グラブバケット10の閉運動の終端側期間T1eと、グラブバケット10の上昇の始端側期間T2fとが重なる重複期間がゼロのパターンである。すなわち、グラブバケット10が上昇を開始するまでに、グラブバケット10が閉運動を完了し、上昇開始時のグラブバケット10の残り開度は0%である。第1パターンの掴み上げ運動は、塊が小さい荷又は粘度が低い荷を掴み上げるのに適する。
【0029】
第1パターンにおいて、ドラム制御部72は、グラブバケット10を上昇させるための支持ワイヤWa、Wbの巻き取り開始タイミングt2を、閉運動期間Tcを経過したタイミングに設定する。さらに、ドラム制御部72は、グラブバケット10の閉運動を終了し上昇を開始するために、開閉ワイヤWc、Wdの巻き取り速度を減速した後に加速する期間Tdを、閉運動の減速期間と上昇の加速期間とを合わせた長い期間に設定する。このような制御により、上述した第1パターンの掴み上げ運動が実現される。
【0030】
第2パターンの掴み上げ運動(
図4)は、グラブバケット10の閉運動の終端側期間T1eと、グラブバケット10の上昇の始端側期間T2fとが重なる重複期間Tjが、長いパターンである。
図4の例では、閉運動の減速期間と上昇の加速期間とが全て重なっている。これにより、グラブバケット10が閉運動を完了する前、残りの開度が大きい(例えば33%)ときに、グラブバケット10が上昇を開始し、上昇の開始後も閉運動が継続されて、上昇中に閉運動が完了(開度0%)する。そして、グラブバケット10が完全に閉じた状態で規定の高さまで上昇する。
【0031】
第2パターンの掴み上げ運動は、塊が大きい荷又は粘度が高い荷を掴み上げるのに適する。このような荷の特性から、グラブバケット10の上昇中に残り開度が大きくても、グラブバケット10から荷がこぼれる量は多くならず、一方で、グラブバケット10が上昇を完了するタイミングt4bを、第1パターンの掴み上げ運動の上昇完了のタイミングt4aよりも大幅に速くできる。すなわち、掴み上げ運動の大幅な時間短縮が図られる。
【0032】
第2パターンにおいて、ドラム制御部72は、グラブバケット10を上昇させるための支持ワイヤWa、Wbの巻き取り開始タイミングt2Aを、閉運動期間Tcが経過するよりも早いタイミングに設定する。具体的には、巻き取り開始タイミングt2Aが、閉運動の減速期間の開始タイミングに設定される。さらに、ドラム制御部72は、グラブバケット10の閉運動を終了し上昇を開始するために、開閉ワイヤWc、Wdの巻き取り速度を減速した後に加速する期間を、ゼロに設定する。このような制御により、上述した第2パターンの掴み上げ運動が実現される。
【0033】
第3パターンの掴み上げ運動(
図5)は、グラブバケット10の閉運動の終端側期間T1eと、グラブバケット10の上昇の始端側期間T2fとが重なる重複期間Tjが、第1パターンよりも長く、第2パターンよりも短いパターンである。
図5の例では、閉運動の減速期間と上昇の加速期間との一部が重なっている。これにより、グラブバケット10が閉運動を完了する前、残りの開度が中程度のときに、グラブバケット10が上昇を開始し、上昇の開始後も閉運動が継続されて、上昇中に閉運動が完了(開度0%)する。そして、グラブバケット10が完全に閉じた状態で規定の高さまで上昇する。
【0034】
この掴み上げ運動は、塊が中程度の荷又は粘度が中程度の荷を掴み上げるのに適する。このような荷の特性から、グラブバケット10の上昇中に残り開度が中程度あっても、グラブバケット10から荷がこぼれる量は多くならず、一方で、グラブバケット10が上昇を完了するタイミングt4cを、第1パターンの掴み上げ運動の上昇完了のタイミングt4aよりも速くできる。すなわち、掴み上げ運動の時間短縮が図られる。
【0035】
第3パターンにおいて、ドラム制御部72は、グラブバケット10を上昇させるための支持ワイヤWa、Wbの巻き取り開始タイミングt2Bを、閉運動期間Tcが経過するよりも早いタイミングに設定する。具体的には、巻き取り開始タイミングt2Bが、閉運動の減速期間中に設定される。さらに、ドラム制御部72は、グラブバケット10の閉運動を終了し上昇を開始するために、開閉ワイヤWc、Wdの巻き取り速度を減速した後に加速する期間Tdを短く設定する。具体的には、期間Tdは、閉運動の減速期間の開始から、上昇の加速期間の終了までの期間に設定される。このような制御により、上述した第3パターンの掴み上げ運動が実現される。
【0036】
なお、期間Te1、T2fの重複期間Tjの長さをより多段に分けて設定することで、多数の掴み上げ動作のパターンを作成可能である。そして、各掴み上げ動作のパターンについて、上昇開始時のグラブバケット10の残り開度あるいは短縮時間を計算し、計算された残り開度又は短縮時間と各パターンとを対応づけておくことで、残り開度又は短縮時間をパラメータとして、掴み上げ動作のパターンを多数のパターンの中から指定することが可能となる。
【0037】
<動作説明>
上記のように構成されたグラブバケット10の制御装置によれば、オペレータが、荷種入力部65を介して荷の種類(例えば銘柄及び粘性)を予め入力することで、選択処理部73は、荷の種類に適したグラブバケット10の掴み上げ運動のパターンを選択する。あるいは、オペレータが、荷種に応じてグラブ動作選択スイッチ64を操作することで、選択処理部73は、操作に応じたグラブバケット10の掴み上げ運動のパターンを選択する。
【0038】
そして、選択処理部73の選択が行われた状態で、オペレータが運転レバー63を操作して、グラブバケット10を荷の上に着床させ、さらに、オペレータが運転レバー63で掴み上げ運動の操作を行うと、ドラム制御部72が、選択されたパターンでグラブバケット10の掴み上げ運動が実現されるようにドラム51a~51dを制御する。その後、オペレータが運転レバー63を操作して、グラブバケット10を荷の搬送先へ移動させ、バケット部13を開くことで荷を搬送先へ送ることができる。オペレータは、このような運転を繰り返し行うことで、荷役が遂行される。
【0039】
<実施形態効果>
以上のように、本実施形態のグラブバケット10の制御装置60によれば、グラブバケットの掴み上げ運動を、複数のパターンの中から選択する選択処理部73を有する。さらに、ドラム制御部72は、選択処理部73が選択したパターンに応じて、掴み上げ運動の閉運動の終端側期間T1eと、掴み上げ運動の上昇の始端側期間T2fとの重複期間Tjの長さを変化させて、グラブバケット10の掴み上げ運動を制御する。このような制御によれば、選択処理部73に、荷の種類に適した掴み上げ運動のパターンを選択させることで、グラブバケット10による1回の荷の掴み上げ量の低下を抑制しつつ、1回の掴み上げの時間の短縮を図ることができる。したがって、一定量の荷を搬送するのに、総合の作業時間を大幅に低減することができる。
【0040】
さらに、本実施形態のグラブバケット10の制御装置60によれば、ドラム制御部72は、重複期間Tjが長いパターンほど、グラブバケット10を上昇させるために支持ワイヤWa、Wbを巻き取る開始のタイミングt2A、t2Bを早める。さらに、ドラム制御部72は、重複期間Tjが長いパターンほど、グラブバケット10の閉運動を終え上昇を開始するために、開閉ワイヤWc、Wdの巻き取り速度を減速しその後に加速する期間Tdを短くする。このような制御によって、グラブバケット10の閉運動中に上昇を開始し、上昇中に閉運動が完了する動作を、短時間に、かつ、モータMa~Mdの少ない駆動の切替えで実現することができる。
【0041】
さらに、本実施形態のグラブバケット10の制御装置60によれば、荷を掴み上げる操作指令を入力可能な運転レバー63を有し、ドラム制御部72は、この操作指令に基づいて、選択部の選択に応じたパターンでグラブバケット10の掴み上げ運動の制御を実施する。したがって、オペレータは、掴み上げ運動のパターンごとに異なる操作を行う必要なく、共通の掴み上げの操作を行うだけで、荷の種類に応じたパターンでグラブバケット10の掴み上げ運動を実現できる。
【0042】
さらに、本実施形態のグラブバケット10の制御装置60によれば、選択処理部73は、荷の種類に応じて、グラブバケット10の掴み上げ運動のパターンを選択する。したがって、オペレータは荷の種類に応じた最適な掴み上げ運動のパターンが不明であっても、荷の種類を入力することで、選択処理部73により、荷の種類に対応させて最適な掴み上げ運動のパターンを選択させることができる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、橋形荷役装置に搭載されるグラブバケット及びその制御部について説明したが、本発明に係るグラブバケット及びその制御装置は、ジブクレーンなど各種の荷役装置に搭載されてもよい。また、上記実施形態では、選択処理部が、荷の種類に応じて、適した掴み上げ運動のパターンを選択する例を示したが、選択処理部は、様々な条件に基づいて、条件に適した掴み上げ運動のパターンを選択するように構成されてもよい。例えば、選択処理部は、天気及び雨天時の雨量を条件に入れて、掴み上げ運動のパターンを選択してもよい。また、選択処理部は、船倉に積載された荷の量を条件に入れて、掴み上げ運動のパターンを選択してもよい。満杯に荷が積載されているとき、その上部には塊りの大きい荷が多く存在するが、荷が少なくなってくると、塊の小さい荷が残る傾向にある。したがって、荷の量を選択条件に含めることで、荷の塊りの大きさの変化に対応することができる。その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 グラブバケット
13 バケット部
60 制御装置
62 操作部
63 運転レバー
64 グラブ動作選択スイッチ
65 荷種入力部
71 演算装置
72 ドラム制御部
73 選択処理部
74 荷種-グラブ動作対応データ記憶部
51a~51d ドラム
Ma~Md モータ
Wa、Wb 支持ワイヤ
Wc、Wd 開閉ワイヤ
T1e 閉運動の終端側期間
T2f 上昇の始端側期間
Tj 重複期間
t2、t2A、t2B 支持ワイヤの巻き取り開始タイミング
Td 開閉ワイヤの巻き取り速度を減速及び加速する期間