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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】地下構造物の頂版の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/045 20060101AFI20220902BHJP
   E02D 29/05 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
E02D29/045 Z
E02D29/05 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018212373
(22)【出願日】2018-11-12
(65)【公開番号】P2020079496
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】梶川 初太郎
(72)【発明者】
【氏名】玉田 康一
(72)【発明者】
【氏名】小坂 琢郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 克智
(72)【発明者】
【氏名】落 宏平
(72)【発明者】
【氏名】米沢 実
(72)【発明者】
【氏名】廣野 淳
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-273939(JP,A)
【文献】特開平08-199510(JP,A)
【文献】特開2017-166229(JP,A)
【文献】特開2002-194705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/045-37/00
E03F 3/04
E04B 1/16
E21D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下構造物の地上側開口部を閉塞する頂版の構築方法であって、
前記地上側開口部を囲む前記地下構造物の躯体上に両端部を支持される支持梁に吊下げて、型枠を、前記地上側開口部内の前記頂版を構築する領域の下面側に設置する工程と、
前記地上側開口部内の前記型枠上にコンクリートを打設する工程と、
を含む、地下構造物の頂版の構築方法において、
前記型枠の設置に先立って、地上にて、前記型枠と、その上方に位置させた支持梁とを、吊材を介して連結する工程を含み、
前記型枠を設置する工程では、前記支持梁と共に前記型枠を吊下げ状態で移動させて、前記地上側開口部を囲む前記地下構造物の躯体上に前記支持梁の両端部を支持させることで、前記型枠を前記地上側開口部内の前記頂版を構築する領域の下面側に設置する、地下構造物の頂版の構築方法
【請求項2】
地下構造物の地上側開口部を閉塞する頂版の構築方法であって、
前記地上側開口部を囲む前記地下構造物の躯体上に両端部を支持される支持梁に吊下げて、型枠を、前記地上側開口部内の前記頂版を構築する領域の下面側に設置する工程と、
前記地上側開口部内の前記型枠上にコンクリートを打設する工程と、
を含む、地下構造物の頂版の構築方法において、
前記コンクリートの打設に先立って、前記型枠上に配筋する工程を含み、
配筋作業は、前記型枠を足場として行う、地下構造物の頂版の構築方法
【請求項3】
前記配筋作業は、前記型枠上に配筋した鉄筋と、前記地下構造物の躯体壁部内の鉄筋とを連結する作業を含む、請求項2に記載の地下構造物の頂版の構築方法。
【請求項4】
前記型枠は、前記型枠上に打設したコンクリートと一体化し、前記頂版の一部として残置する、請求項1~請求項3のいずれか1つに記載の地下構造物の頂版の構築方法。
【請求項5】
地下構造物の地上側開口部を閉塞する頂版の構築方法であって、
前記地上側開口部を囲む前記地下構造物の躯体上に両端部を支持される支持梁に吊下げて、型枠を、前記地上側開口部内の前記頂版を構築する領域の下面側に設置する工程と、
前記地上側開口部内の前記型枠上にコンクリートを打設する工程と、
を含む、地下構造物の頂版の構築方法において、
前記型枠は、前記型枠上に打設したコンクリートと一体化し、前記頂版の一部として残置し、
前記型枠は、鉄筋コンクリート製又は鋼製であり、ジベルが上面に突出していて、ジベルの突出部が前記型枠上に打設したコンクリート内に埋設される、地下構造物の頂版の構築方法
【請求項6】
地下構造物の地上側開口部を閉塞する頂版の構築方法であって、
前記地上側開口部を囲む前記地下構造物の躯体上に両端部を支持される支持梁に吊下げて、型枠を、前記地上側開口部内の前記頂版を構築する領域の下面側に設置する工程と、
前記地上側開口部内の前記型枠上にコンクリートを打設する工程と、
を含む、地下構造物の頂版の構築方法において、
前記コンクリートの打設に先立って、前記地下構造物の躯体壁部と前記型枠の端縁部との間の隙間を間詰めする工程を含み、
前記隙間を間詰めする工程は、前記型枠の端縁部に埋設されたインサートアンカーにプレートを取付ボルトにより固定し、前記隙間を閉塞するように、前記プレートを前記地下構造物の躯体壁部に当接させるか、あるいは固定することを含む、地下構造物の頂版の構築方法
【請求項7】
前記コンクリートの打設に先立って、前記型枠上に配筋する工程を含み、
配筋作業は、前記型枠を足場として行う、請求項5又は請求項6に記載の地下構造物の頂版の構築方法。
【請求項8】
前記配筋作業は、前記型枠上に配筋した鉄筋と、前記地下構造物の躯体壁部内の鉄筋とを連結する作業を含む、請求項7に記載の地下構造物の頂版の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立坑躯体などの地下構造物の地上側開口部を閉塞する頂版の構築方法に関する。尚、本発明でいう「頂版」とは、地下構造物から見た場合であり、地上側から見れば「床版」ということもできる。
【背景技術】
【0002】
都市部のシールドトンネル工事では、立坑が設けられ、シールド掘進機は立坑の開口を通じて投入され、その後も立坑の開口は資機材の搬入に利用される。そして、トンネル工事の施工完了後に、立坑の開口は頂版により閉止され、地下側と地上側とがそれぞれ利用可能となる。
【0003】
特許文献1には、立坑躯体の築造を含むシールドトンネルの工事手順が開示されている。更に、トンネルの施工完了後に、立坑内部構築工事として、立坑内部に床版や柱を下方から上方へ順に型枠支保工を積み立てつつ構築し、コンクリート強度の発現後に型枠支保工を撤去することが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、地下構造物の中床スラブの構築方法として、下階に型枠支保工を施工し、その上に中床スラブ型枠を設置し、その上にコンクリートを打設して、中床スラブを構築する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-203294号公報
【文献】特開2002-371570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
立坑躯体などの地下構造物の地上側開口部を閉塞する頂版の構築に際し、特許文献1、2に示されるような、下側から型枠支保工を設ける方法では、次のような問題がある。
構築する頂版までの高さが高い場合、支保工が大掛かりとなり、支保工の設置に大量の資材と施工手間がかかる。
また、頂版の構築後は、開口部が閉塞されるため、支保工を地上側から吊上げて撤去することができず、支保工の解体撤去は非常に面倒なものとなる。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑み、立坑躯体などの地下構造物の地上側開口部を閉塞する頂版の構築に際し、頂版の構築作業、並びに、頂版構築後の作業を簡素化できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る地下構造物の頂版の構築方法の第1~第4態様は、
地上側開口部を囲む地下構造物の躯体上に両端部を支持される支持梁に吊下げて、型枠を、前記地上側開口部内の前記頂版を構築する領域の下面側に設置する工程と、
前記地上側開口部内の前記型枠上にコンクリートを打設する工程と、
を含む。
【0009】
本発明に係る地下構造物の頂版の構築方法の第1態様では、前記型枠の設置に先立って、地上にて、前記型枠と、その上方に位置させた支持梁とを、吊材を介して連結する工程を含み、前記型枠を設置する工程では、前記支持梁と共に前記型枠を吊下げ状態で移動させて、前記地上側開口部を囲む前記地下構造物の躯体上に前記支持梁の両端部を支持させることで、前記型枠を前記地上側開口部内の前記頂版を構築する領域の下面側に設置する。
本発明に係る地下構造物の頂版の構築方法の第2態様では、前記コンクリートの打設に先立って、前記型枠上に配筋する工程を含み、配筋作業は、前記型枠を足場として行う。
本発明に係る地下構造物の頂版の構築方法の第3態様では、前記型枠は、前記型枠上に打設したコンクリートと一体化し、前記頂版の一部として残置する。また、前記型枠は、鉄筋コンクリート製又は鋼製であり、ジベルが上面に突出していて、ジベルの突出部が前記型枠上に打設したコンクリート内に埋設される。
本発明に係る地下構造物の頂版の構築方法の第4態様では、前記コンクリートの打設に先立って、前記地下構造物の躯体壁部と前記型枠の端縁部との間の隙間を間詰めする工程を含み、前記隙間を間詰めする工程は、前記型枠の端縁部に埋設されたインサートアンカーにプレートを取付ボルトにより固定し、前記隙間を閉塞するように、前記プレートを前記地下構造物の躯体壁部に当接させるか、あるいは固定することを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、頂版構築用の型枠を地上側から吊下げて設置するため、地下構造物の内部に大掛かりな支保工を設置したり、頂版構築後に支保工を解体撤去したりする必要がなくなり、頂版の構築作業、並びに構築後の作業を簡素化できるという効果が得られる。
特にまた、型枠を頂版の一部として残置することで、型枠の撤去作業も不要となる。
また、鉄筋コンクリート製の頂版の構築に際し、型枠上での配筋は、型枠を足場として行うことができ、足場の確保も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態として地下構造物の地上側開口部を閉塞する頂版の構築例を示す図
図2】頂版の構築方法(型枠の配置方法)を示す図
図3図2の要部の詳細を示すと共に配筋について示す図
図4】頂版の構築手順を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態として地下構造物の地上側開口部を閉塞する頂版の構築例を示している。
【0013】
本例の地下構造物は、シールドトンネル構築用の立坑1であり、地上Gから鉛直方向に掘削され、掘削部を囲むように鉄筋コンクリート製で有底筒状の立坑躯体2が築造されている。
【0014】
立坑1は、シールド機の搬入に用いられ、シールド機により、立坑1の底部から水平方向に掘進することで、シールドトンネル3を構築する。シールドトンネル3の構築中、立坑1は、各種資機材の搬入や掘削土砂の搬出に用いられる。
【0015】
本例では、シールドトンネル3の完成後に、立坑躯体2の地上側開口部2aに、これを閉塞するように、鉄筋コンクリート製の頂版4を構築する。立坑1の地上側である頂版4の上を公園等として利用可能とするためである。
【0016】
頂版4の構築方法について、以下に説明する。
図2は頂版4の構築方法(型枠5の配置方法)を示している。
基本的には、立坑躯体2の地上側開口部2a内において頂版4を構築する領域の下面側に位置させて、型枠5を配置し、型枠5上にコンクリートを打設(場所打ち)することで、立坑躯体2と一体に、頂版4を構築する。
【0017】
ここでの型枠5の支持方法に特徴があり、次のような支持構造を採用している。
立坑躯体2の地上側開口部2aを囲む立坑躯体2上で、地上側開口部2aを挟んで互いに対向する位置に、対をなすように、受架台6、6を設置する。
そして、受架台6、6上に、トラス構造の支持梁7の両端部を載置して支持させる。
そして、支持梁7により、吊材(例えばPC鋼棒製の吊ボルト)8を介して、型枠5を吊下げて支持する構造としている。
【0018】
また、かかる支持構造ゆえ、型枠5は、該型枠5上に打設したコンクリートと一体化し、頂版4の一部として残置する。これも大きな特徴である。
【0019】
ここで、本例の型枠5について、図3により、詳細に説明する。
図3は、図2の要部の詳細を示すと共に、型枠5の設置後、コンクリート打設前に、型枠5上に配筋した状態を示している。
【0020】
型枠5は、プレキャスト鉄筋コンクリート製で、またPC(プレストレストコンクリート)製であり、工場等で製造され、現場へ搬入される。
従って、コンクリート製の型枠5は、その内部に、PC鋼材を横方向に配置してなる主鉄筋51を有し、コンクリートは主鉄筋51に対し上下に所定のかぶり厚を確保するようにスラブ状に打設される。主鉄筋51は、PC鋼材を横方向及び縦方向に配置して格子状としてもよい。
【0021】
コンクリート製の型枠5は、また、主鉄筋51の上側にこれにつなげる形でトラス鉄筋(トラス構造の鉄筋)52を有している。トラス鉄筋52は、その一部(下部;主鉄筋51との接続部)がコンクリート内に埋設され、他部(上部)がコンクリート外に露出している。現場にて頂版4として型枠5上に場所打ちされるコンクリートとの結合(一体化)を強化するためである。従って、トラス鉄筋52は、一体化する目的で母材に取付けられるジベル(連結材)に相当する。ジベルとしては、トラス鉄筋、更には鉄筋に限定されるものではなく、スタッドジベルを用いてもよい。
【0022】
コンクリート製の型枠5には、また、適所に、吊材ベースプレート53が埋設されている。そして、吊材ベースプレート53の上面側にはPC鋼棒54を介してカプラー55が連結され、カプラー55はコンクリート外に露出している。カプラー55は吊材(吊ボルト)8の下端部との連結用である。
【0023】
コンクリート製の型枠5には、また、立坑躯体2の壁部と近接する端縁部に、インサートアンカー56が埋設されている。
インサートアンカー56は、立坑躯体2の壁部と型枠5の端縁部との隙間を埋める間詰めプレート57の取付部となる。
【0024】
次に現場での頂版4の一連の構築作業について、主に図4を参照して、工程順に説明する。
【0025】
(1-1)吊下げ準備工程
図4(A)に示すように、地上G側の適当な場所に、対をなすように、吊下げ準備用架台9、9を構築しておき、これらの吊下げ準備用架台9、9の間に、プレキャスト鉄筋コンクリート製の型枠5を搬入する。
【0026】
また、トラス構造の支持梁7を搬入し、吊下げ準備用架台9、9上に、支持梁7の両端部を載置して支持させる。このとき、型枠5と、その上方の支持梁7とが、上下方向に所定の距離を隔てて配置されるようにする。
この状態で、支持梁7と型枠5とを吊材(吊ボルト)8により連結し、支持梁7により型枠5を吊下げ可能とする。このとき、吊材8はその下端部を型枠5側のカプラー55(図3)に連結する。
【0027】
(1-2)受架台設置工程
同じく図4(A)に示すように、地上側開口部2aを囲む立坑躯体2上で、地上側開口部2aを挟んで互いに対向する位置に、対をなすように、受架台6、6を構築して設置する。
尚、上記(1-1)の工程と上記(1-2)の工程は、どちらを先に行ってもよく、あるいは、並行して行ってもよい。
【0028】
(2)型枠設置工程
図4(B)に示すように、クレーン(図示せず)により、支持梁7を持ち上げることで、支持梁7に吊材8により連結された型枠5を持ち上げる。そして、クレーンにより、支持梁7と共に型枠5を移動させ、立坑の上方に位置させた後、支持梁7を吊下ろして、支持梁7の両端部を受架台6、6上に支持させる。このとき、支持梁7に吊材8を介して吊下げられている型枠5は、立坑躯体2の地上側開口部2a内で、頂版4を構築する領域の下面側に位置する。これにより、図2に示した状態となる。
【0029】
尚、本例では、支持梁7としてトラス構造の標準仕様の既製品を用いている。トラス構造とは、厳密には、部材の節点がピン結合しているものをいうが、実際には剛結しているものが汎用されており、本例でも剛結タイプの既製品を用いている。
また、支持梁7は、別体の受架台6、6を用いることなく、立坑躯体2に直接支持させたり、支持梁7と受架台6、6とを予め一体に形成しておいたりすることも可能である。しかし、支持梁7として既製品を用いる場合に、受架台6、6を用いることで、寸法合わせが容易となるなどの効果が得られる。
【0030】
(3)配筋工程
図4(C)に示すように、コンクリートの打設に先立って、型枠5上に配筋する。配筋作業は型枠5を足場として行うことができる。
【0031】
配筋作業については、図3により、説明する。
配筋作業では、主に、頂版4を形成するコンクリート構造体内に埋設される鉄筋籠を構築する。
鉄筋籠は、平面状に配置される下側主鉄筋41と、その上方に平面状に配置される上側主鉄筋42と、上側主鉄筋42と下側主鉄筋41とをつなぐせん断補強鉄筋43と、を含む。
【0032】
鉄筋籠の組立手順は、次の通りである。
1)型枠5の上に、かぶり厚を規定するスペーサ(図示せず)を配置し、スペーサの上で下側主鉄筋41を組み立てる。
2)下側主鉄筋41の上に、上側主鉄筋組立用の組立筋(図示せず)を配置し、組立筋の上で上側主鉄筋42を組み立てる。
3)せん断補強鉄筋43を、上側主鉄筋42及び下側主鉄筋41の隙間に落とし込み、上側主鉄筋42及び下側主鉄筋41に番線等で結束、固定する。尚、図ではせん断補強鉄筋43として、一端に半円形フック、他端にL形フックを有するものを用いているが、これに限るものではない。
【0033】
また、配筋作業では、立坑躯体2の壁部内の鉄筋に対し、鉄筋機械式継手44を用いて、下側主鉄筋41及び上側主鉄筋42の端部を連結する。すなわち、鉄筋機械式継手44により、立坑躯体2側の鉄筋と頂版4側の鉄筋とを通し鉄筋にしてつなげる。頂版4と立坑躯体2との結合力を強めるためである。
【0034】
また、配筋作業に先立って、あるいは配筋作業と並行して、立坑躯体2の壁部と型枠5の端縁部との間の隙間を埋める間詰め作業を行う(間詰め工程)。具体的には、型枠5のインサートアンカー56に間詰めプレート57を取付ボルト58により固定し、前記隙間を閉塞するように、間詰めプレート57を立坑躯体2の壁部に当接、あるいは固定する。尚、間詰めプレート57の位置調整のため、間詰めプレート57のボルト挿通孔は長孔とするとよい。
【0035】
(4)コンクリート打設工程
図4(C)に示した型枠5上での配筋作業の後、図4(D)に示すように、型枠5の上に、立坑躯体2の上端面と面一となる高さまで、コンクリートを打設する。これにより、コンクリートの固化・養生後に、型枠5を含む形で鉄筋コンクリート製の頂版4が構築される。
【0036】
(5)吊材切断・支持梁撤去工程
図4(E)に示すように、コンクリートの打設後、型枠5を残置する一方、吊材(吊ボルト)8を適当な位置で切断し、クレーンにより、支持梁7を撤去する。また、支持梁7の撤去後、受架台6、6を解体・撤去する。
以上の工程を経て、頂版4の構築が完了する。頂版4は、型枠5を含む形で構築されるので、型枠5の撤去は不要である。
【0037】
本例によれば、地上側開口部2aを囲む立坑躯体2上に両端部を支持される支持梁7に吊下げて、型枠5を、地上側開口部2a内の頂版4を構築する領域の下面側に設置する工程(型枠設置工程)と、地上側開口部2a内の型枠5上にコンクリートを打設する工程(コンクリート打設工程)と、を含んで、立坑躯体2の地上側開口部2aを閉塞する頂版4を構築する。
このように、頂版構築用の型枠5を地上側から吊下げて設置するため、立坑1の内部に大掛かりな支保工を設置したり、頂版4構築後に支保工を解体撤去したりする必要がなくなり、頂版4の構築作業、並びに構築後の作業を簡素化することができる。
【0038】
また、本例によれば、型枠5の設置に先立って、地上にて、型枠5と、その上方に位置させた支持梁7とを、吊材8を介して連結する工程(吊下げ準備工程)を含み、型枠設置工程では、支持梁7と共に型枠5を吊下げ状態で移動させて、地上側開口部2aを囲む立坑躯体2上に支持梁7の両端部を載置して支持させることで、型枠5を所定の位置に設置する。
このように、別の場所で吊下げ状態として、そのまま移動させて、設置することにより、設置作業を効率的に行うことができる。
【0039】
また、本例によれば、型枠5は、型枠5上に打設したコンクリートと一体化し、頂版4の一部として残置する。これにより、型枠5の撤去作業も不要となる。
【0040】
また、本例によれば、型枠5は、鉄筋コンクリート製であり、内部のトラス鉄筋52の一部がジベル(連結材)として上面に突出していて、当該突出部が型枠5上に打設したコンクリート内に埋設される。これにより、頂版4の下面側に残置される型枠5が脱落したりすることがないよう、確実に一体化することができる。
【0041】
また、本例によれば、コンクリートの打設に先立って、型枠5上に配筋する工程(配筋工程)を含み、配筋作業は、型枠5を足場として行う。これにより、作業員の足場の確保が容易となる。
【0042】
また、本例によれば、配筋作業は、前記型枠5上に配筋した鉄筋と、立坑躯体2の壁部内の鉄筋とを連結する作業を含む。これにより、頂版4と立坑躯体2との結合を強固なものとすることができる。
【0043】
また、本例によれば、コンクリートの打設に先立って、立坑躯体2の壁部と型枠5の端縁部との間の隙間を間詰めする工程(間詰め工程)を含む。型枠5を吊下げて搬入することから、前記隙間をある程度大きくしなければならないが、間詰めすることで、型枠5の精度を上げることができる。
【0044】
また、本例によれば、型枠5の設置に先立って、地上側開口部2aを囲む立坑躯体2上で、地上側開口部2aを挟んで互いに対向する位置に、受架台6、6を設置する工程(受架台設置工程)を含み、支持梁7の両端部を受架台6、6上に載置して支持させる。これにより、支持梁7としてトラス構造の既製品を用いる場合の寸法合わせが容易となる。
【0045】
また、本例によれば、コンクリートの打設後、吊材8を切断し、支持梁7を撤去する工程(吊材切断・支持梁撤去工程)を含む。これにより、頂版構築後の撤去作業なども容易となる。
【0046】
尚、以上の実施形態では、型枠5はPC型枠としたが、鋼板をベースとし、補強、及び場所打ちコンクリートとの一体化のため、鋼板上に格子状にアングル材を固着してなる鋼製型枠を用いることもできる。この場合は、アングル材がジベルに相当するが、スタッドジベルを用いてもよい。
また、型枠5上での配筋作業については、鉄筋籠の少なくとも一部を地上側で組み立てて、型枠5と一緒に搬入するようにすることで、一部を省略することもできる。
【0047】
また、以上の実施形態では、地下構造物がシールドトンネル構築用の立坑である場合について説明したが、本発明は、各種の地下構造物において、最終的に頂版を形成して地上側開口部を閉塞する場合に適用することができる。
【0048】
また、図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
尚、出願当初の請求項は以下の通りであった。
[請求項1]
地下構造物の地上側開口部を閉塞する頂版の構築方法であって、
前記地上側開口部を囲む前記地下構造物の躯体上に両端部を支持される支持梁に吊下げて、型枠を、前記地上側開口部内の前記頂版を構築する領域の下面側に設置する工程と、
前記地上側開口部内の前記型枠上にコンクリートを打設する工程と、
を含む、地下構造物の頂版の構築方法。
[請求項2]
前記型枠の設置に先立って、地上にて、前記型枠と、その上方に位置させた支持梁とを、吊材を介して連結する工程を含み、
前記型枠を設置する工程では、前記支持梁と共に前記型枠を吊下げ状態で移動させて、前記地上側開口部を囲む前記地下構造物の躯体上に前記支持梁の両端部を支持させることで、前記型枠を前記地上側開口部内の前記頂版を構築する領域の下面側に設置する、請求項1記載の地下構造物の頂版の構築方法。
[請求項3
前記型枠は、前記型枠上に打設したコンクリートと一体化し、前記頂版の一部として残置する、請求項1又は請求項2記載の地下構造物の頂版の構築方法。
[請求項4]
前記型枠は、鉄筋コンクリート製又は鋼製であり、ジベルが上面に突出していて、ジベルの突出部が前記型枠上に打設したコンクリート内に埋設される、請求項3記載の地下構造物の頂版の構築方法。
[請求項5]
前記コンクリートの打設に先立って、前記型枠上に配筋する工程を含み、
配筋作業は、前記型枠を足場として行う、請求項1~請求項4のいずれか1つに記載の地下構造物の頂版の構築方法。
[請求項6]
前記配筋作業は、前記型枠上に配筋した鉄筋と、前記地下構造物の躯体壁部内の鉄筋とを連結する作業を含む、請求項5記載の地下構造物の頂版の構築方法。
[請求項7]
前記コンクリートの打設に先立って、前記地下構造物の躯体壁部と前記型枠の端縁部との間の隙間を間詰めする工程を含む、請求項1~請求項6のいずれか1つに記載の地下構造物の頂版の構築方法。
【符号の説明】
【0049】
1 立坑
2 立坑躯体
2a 地上側開口部
3 シールドトンネル
4 頂版
5 型枠
6 受架台
7 支持梁
8 吊材(吊ボルト)
9 吊下げ準備用架台
41 下側主鉄筋
42 上側主鉄筋
43 せん断補強鉄筋
44 鉄筋機械式継手
51 主鉄筋
52 トラス鉄筋(ジベル)
53 吊材ベースプレート
54 PC鋼棒
55 カプラー
56 インサートアンカー
57 間詰めプレート
58 取付ボルト
図1
図2
図3
図4