(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】胆汁うっ滞性及び線維性の疾患の処置方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/426 20060101AFI20220902BHJP
A61K 31/47 20060101ALI20220902BHJP
A61K 31/404 20060101ALI20220902BHJP
A61K 31/366 20060101ALI20220902BHJP
A61K 31/40 20060101ALI20220902BHJP
A61K 31/505 20060101ALI20220902BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220902BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20220902BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
A61K31/426
A61K31/47
A61K31/404
A61K31/366
A61K31/40
A61K31/505
A61P1/16
A61P1/16 101
A61P19/00
A61P19/08
(21)【出願番号】P 2018553087
(86)(22)【出願日】2017-03-13
(86)【国際出願番号】 EP2017055880
(87)【国際公開番号】W WO2017178173
(87)【国際公開日】2017-10-19
【審査請求日】2020-01-21
(32)【優先日】2016-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503067111
【氏名又は名称】ジェンフィ
【氏名又は名称原語表記】GENFIT
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ウォルクザック,ロベール
(72)【発明者】
【氏名】フカール,コリンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥラタイユ,フィリップ
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-518002(JP,A)
【文献】日本臨床,2011年,69、増刊号4,196-200
【文献】胆肝膵,2010年,60(2),213-221
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/426
A61K 31/47
A61K 31/404
A61K 31/366
A61K 31/40
A61K 31/505
A61P 1/16
A61P 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胆汁うっ滞性又は線維性の障害を処置するための医薬組成物であって、
(i)ニタゾキサニド(NTZ)、NTZの重水素化誘導体(NTZ-D)、チゾキサニド(TZ)、若しくはチゾキサニドグルクロニド(TZG)、又はNTZ、NTZ-D、TZ、若しくはTZGの薬学的に許容し得る塩と;
(ii)
少なくとも1つの具体的なスタチンが、ピタバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、ロバスタチン、及びプラバスタチンからなる群から選択される、少なくとも1つのスタチンと
を含む、医薬組成物。
【請求項2】
ニタゾキサニド(NTZ)、NTZの重水素化誘導体(NTZ-D)、チゾキサニド(TZ)、若しくはチゾキサニドグルクロニド(TZG)、又はNTZ、NTZ-D、TZ、若しくはTZGの薬学的に許容し得る塩を含む、胆汁うっ滞性又は線維性の障害を処置するための医薬組成物であって、
少なくとも1つの具体的なスタチンが、ピタバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、ロバスタチン、及びプラバスタチンからなる群から選択される、少なくとも1つのスタチンを含む医薬組成物と組み合わせて使用されることを特徴とする、医薬組成物。
【請求項3】
少なくとも1つの具体的なスタチンが、ピタバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、ロバスタチン、及びプラバスタチンからなる群から選択される、少なくとも1つのスタチンを含む、胆汁うっ滞性又は線維性の障害を処置するための医薬組成物であって、
ニタゾキサニド(NTZ)、NTZの重水素化誘導体(NTZ-D)、チゾキサニド(TZ)、若しくはチゾキサニドグルクロニド(TZG)、又はNTZ、NTZ-D、TZ、若しくはTZGの薬学的に許容し得る塩を含む医薬組成物と組み合わせて使用されることを特徴とする、医薬組成物。
【請求項4】
胆汁うっ滞性又は線維性の障害を処置するためのキットオブパーツであって、
(i)ニタゾキサニド(NTZ)、NTZの重水素化誘導体(NTZ-D)、チゾキサニド(TZ)、若しくはチゾキサニドグルクロニド(TZG)、又はNTZ、NTZ-D、TZ、若しくはTZGの薬学的に許容し得る塩と;
(ii)少なくとも1つの具体的なスタチンが、ピタバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、ロバスタチン、及びプラバスタチンからなる群から選択される、少なくとも1つのスタチンと
のキットオブパーツ。
【請求項5】
前記スタチンが、ピタバスタチン、フルバスタチン、及びシンバスタチンからなる群から選択される、請求項
1~4のいずれか一項記載の
医薬組成物又はキットオブパーツ。
【請求項6】
ピルフェニドン又は受容体チロシンキナーゼ阻害剤(RTKI)
、又はアンギオテンシンII(AT1)受容体ブロッカー、又はCTGF阻害剤、又
は潜在TGFβ複合体の活性化剤を含むTGFβ-及びBMP-活性化経路に干渉しやすい任意の抗線維化化合物、TGFβ受容体I型(TGFBRI)若しくはII型(TGFBRII)、及びこれらのリガンド
、アクチビン、インヒビン、ノーダル、抗ミュラーホルモン、GDF、若しくはBMP、補助共受容体(III型受容体としても知られている)、又は制御性若しくは阻害性のSMADタンパク質を含むSMAD依存性古典的経路の構成要素、又はMAPKシグナル伝達、TAK1、Rho様GTPaseシグナル伝達経路、ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ/AKT経路、TGFβ誘発性EMTプロセス、又はHhリガンド若しくは標的遺伝子を含む古典的及び非古典的なヘッジホッグシグナル伝達経路の様々なブランチを含むSMAD非依存性若しくは非古典的な経路のメンバー、又はTGFβに影響を与えやすいWNT若しくはノッチの経路の任意のメンバーから選択される公知の抗線維化活性を有する少なくとも1つの処置活性剤を更に含む、請求項1~5のいずれか一項記載の医薬組成物又はキットオブパーツ。
【請求項7】
JAK/STAT阻害剤、並びに他の抗炎症性及び/又は免疫抑制性の剤から選択される少なくとも1つの処置活性剤を更に含む、請求項1~
6のいずれか一項記載の
医薬組成物又はキットオブパーツ。
【請求項8】
前記処置活性剤が、グルココルチコイド、NSAIDS、シクロホスファミド、ニトロソ尿素、葉酸類似物、プリン類似物、ピリミジン類似物、メトトレキサート、アザチオプリン、メルカプトプリン、シクロスポリン、ミリオシン、タクロリムス、シロリムス、ミコフェノール酸誘導体、フィンゴリモド及び他のスフィンゴシン-1-リン酸受容体調節因子;炎症促進性サイトカイン及び炎症促進性サイトカイン受容体、T細胞受容体、並びにインテグリン等の標的に対するモノクローナル及び/又はポリクローナルな抗体から選択される、請求項
7記載の
医薬組成物又はキットオブパーツ。
【請求項9】
前記線維性障害が、肝臓、腸、腎臓、皮膚、表皮、内皮、筋肉、腱、軟骨、心臓、膵臓、肺、子宮、神経系、精巣、陰茎、卵巣、副腎、動脈、静脈、結腸、
腸、胆管、軟組
織、骨髄、関節、眼、及び胃の線維症からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項記載の医薬組成物又はキットオブパーツ。
【請求項10】
前記線維性障害が、肝臓、腸、肺、心臓、腎臓、筋肉、皮膚、軟組織、骨髄、小腸、及び関節の線維症からなる群から選択される、
請求項1~9のいずれか一項記載の医薬組成物又はキットオブパーツ。
【請求項11】
前記線維性障害が、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肺線維症、特発性肺線維症、皮膚線維症、眼線維症、心内膜心筋線維症、縦隔線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、進行性塊状線維症、増殖性線維症、新生物線維症、慢性炎症性気道疾患(COPD、喘息、肺気腫、喫煙者肺、結核)となる肺線維症、アルコール又は薬物誘発性の肝線維症、肝硬変、感染誘発性肝線維症、放射線又は化学療法誘発性の線維症、腎原性全身性線維症、クローン病、潰瘍性大腸炎、ケロイド、陳旧性心筋梗塞、強皮症/全身性強皮症、関節線維症、癒着性関節包炎の一部の形態、慢性線維化性胆管症
、原発性硬化性胆管炎(PSC)、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、胆道閉鎖症、家族性肝内胆汁うっ滞症3型(PFIC3)、インプラント周囲線維症、及び石綿肺からなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項記載の医薬組成物又はキットオブパーツ。
【請求項12】
前記胆汁うっ滞性障害が、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、妊娠時肝内胆汁うっ滞症、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症、胆道閉鎖症、胆石症、感染性胆管炎、ランゲルハンス細胞組織球増殖症に付随する胆管炎、アラジール症候群、非症候性腺管不足、薬物誘発性胆汁うっ滞症、及び完全非経口栄養関連胆汁うっ滞症からなる群から選択される、請求項
1~
8のいずれか一項
記載の医薬組成物又はキットオブパーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学、具体的には、胆汁うっ滞性又は線維性の疾患の処置の分野に関する。
【0002】
背景技術
細胞外マトリクスの異常かつ過度の沈着は、肝臓、肺、腎臓、又は心臓の線維症を含む全ての線維性疾患の特徴である。罹患器官のスペクトル、線維化過程の進行性の性質、多数の罹患者、及び有効な処置の欠如は、線維性疾患を処置するときに重大な課題を引き起こす。
【0003】
線維性疾患を処置するための新規処置ストラテジを提案するための試みにおいて、本発明者らは、合成抗原虫剤である2-[(5-ニトロ-1,3-チアゾール-2-イル)カルバモイル]フェニル]エタノアート(ニタゾキサニド-NTZ)、又はその重水素化誘導体、又はその活性代謝物2-ヒドロキシ-N-(5-ニトロ-2-チアゾリル)ベンズアミド(チゾキサニド、TZとして知られている)をスタチンと組み合わせると相乗的抗線維化活性を示すことを見出した。更に、肝損傷モデルにおけるスタチンと組み合わせられたNTZの評価によって、その血中胆汁酸濃度を低下させる能力が明らかになり、したがって、これは胆汁うっ滞性(例えば、PBC及びPSC)及び線維性の疾患の両方を処置するこの組み合わせの相乗的潜在力を反映している。
【0004】
1975年に最初に報告された(Rossignol and Cavier, 1975)NTZは、嫌気性原虫、蠕虫、並びに嫌気性及び好気性の細菌の両方を含む広範な微生物に対して非常に有効であることが示された(Rossignol and Maisonneuve, 1984;Dubreuil, Houcke et al., 1996;Megraudd, Occhialini et al., 1998;Fox and Saravolatz, 2005;Pankuch and Appelbaum, 2006;Finegold, Molitoris et al., 2009)。NTZは、最初に腸に寄生する条虫を処置するためにヒトで研究され(Rossignol and Maisonneuve, 1984)、そして、現在、寄生原虫クリプトスポリジウム・パルバム(Crystosporidium parvum)及びランブル鞭毛虫(Giardia intestinalis)によって引き起こされる下痢の処置について米国で認可されている(Alinia(登録商標)、Romark laboratories)。また、NTZは、南米及びインドで広く市販されており、そこでは広範な腸内寄生虫感染症の処置に適応がある(Hemphill, Mueller et al., 2006)。提案されている、NTZがその抗寄生虫活性を発揮する作用機序は、嫌気的代謝に必須であるピルビン酸:フェレドキシンオキシドレダクターゼ(PFOR)酵素依存性電子伝達反応の阻害を通じたものである(Hoffman, Sisson et al., 2007)。また、NTZは、PFORのホモログを有しないトリ型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)に対する活性も示し、したがって、これは別の作用機序を示唆する。実際、著者らは、NTZが膜電位及び生物内pHホメオスタシスを乱すアンカップラーとしても作用し得ることを示した(de Carvalho, Darby et al., 2011)。
【0005】
NTZの薬理学的効果はその抗寄生虫又は抗菌の活性に限定されず、そして、近年、NTZが抗ウイルス活性を付与することもできることが幾つかの研究によって明らかになった(Di Santo and Ehrisman, 2014; Rossignol, 2014)。NTZは、赤血球凝集素(インフルエンザ)若しくはVP7(ロタウイルス)のタンパク質の成熟における遮断、又は自然免疫応答に関与するタンパク質PKRの活性化を含む多様な方法によってウイルスの複製に干渉する(概説については、(Rossignol, 2014)を参照)。また、NTZは、重要な代謝及び死促進のシグナル伝達経路に干渉することによって広い抗癌特性を有することも示された(Di Santo and Ehrisman, 2014)。
【0006】
スタチン(3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-補酵素Aレダクターゼ阻害剤)は、高コレステロール血症の処置及び心血管疾患の予防のための医薬として一般的に処方されている。
【0007】
現在、プラバスタチン、シンバスタチン、及びロバスタチン(これらは真菌発酵から天然に得られる)、並びにフルバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン、及びピタバスタチンで構成される化学的に合成されたスタチンの第2の群を含む、7つの独特の処方されているスタチンが存在している。全てのスタチンがHMG-CoAレダクターゼに対する結合について競合するジヒドロキシ-ヘプタン酸HMG-CoA様部分を含有するが、各スタチンは独特であり、そして、化学構造、効力(ex. HMG-CoAレダクターゼ阻害についてのIC50)、組織の透過及び保持、半減期、代謝及び排出、薬物-薬物相互作用、並びに安全性において著しい差を呈する。心血管疾患の予防に対するスタチンの有益な効果に関与する機序は、コレステロールの生合成を阻害するこれら剤の能力に主に起因している。血清コレステロールの60~70%が肝生合成に由来し、そして、HMG-CoAレダクターゼがコレステロールの生合成経路において重要な律速酵素であるという事実から、この酵素の阻害によって血中LDLコレステロールが劇的に減少することは驚くべきことではない。更に、LDLコレステロールの減少は、肝LDL受容体のアップレギュレーション及びLDLクリアランスの増加を引き起こす。臨床的及び実験的なデータはいずれも、スタチン療法によって得られる効果の和が、血清コレステロールレベルに対するその好ましい効果をはるかに超えて拡大し得ることを示唆している。スタチンの多面的効果として説明されるこれらコレステロール非依存性効果は、イソプレノイドの形成減少に関連している。実際、HMG-CoAレダクターゼを阻害すると、細胞内メバロナートだけでなく、ファルネシルピロリン酸(FPP)及びゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)を含む幾つかの下流のイソプレノイド誘導体も欠乏する。FPP及びGGPPはいずれも多数のタンパク質(全細胞タンパク質の約2%、(Wang, Liu et al., 2008))の翻訳後プレニル化に必要である。タンパク質のイソプレニル化によって、適切な細胞内局在及び細胞内分子の輸送が可能になる。例えば、非イソプレニル化GTPaseはサイトゾル性のままであるが、イソプレニル化GTPaseは、FPP又はGGPPの脂質結合(lipid attachment)を有し、これによって細胞膜への挿入及び固定、続いて、シグナル伝達への参加が可能になる。したがって、イソプレニル化を阻害すると、多くの細胞事象(細胞内シグナル伝達、細胞増殖、炎症、運動(概説については、(McFarlane, Muniyappa et al., 2002;Zhou and Liao, 2009;Yeganeh, Wiechec et al., 2014;Kavalipati, Shah et al., 2015)を参照)において必須である低分子GTPase(ex Rho、Ras、Rac、及びCdc42)が不活化する。Rho GTPase及びその標的タンパク質Rockは、線維化プロセスにおける重要な事象である線維芽細胞の筋線維芽細胞への活性化/分化に関与していることが示されている(Ji, Tang et al., 2014)ので、様々な疾病モデルにおいてその抗線維化特性を評価するためにスタチンを用いて幾つかの研究が実施された。シンバスタチンは、ヒト及びラットのHSCにおいて線維化マーカーの発現を減少させ、そして、線維症の様々な動物モデルにおいて抗線維化特性を付与することが示された(Rombouts, Kisanga et al., 2003;Watts, Sampson et al., 2005;Wang, Zhao et al., 2013;Marrone, Maeso-Diaz et al., 2015)。その上、ピタバスタチン(Miyaki, Nojiri et al., 2011)及びフルバスタチン(Chong, Hsu et al., 2015)は、CDAA飼料誘発性NAFLD/NASHモデルにおいて線維症を減少させることができた。スタチンのこれら有益な効果は、肝線維症には限定されない。実際、アトルバスタチンはブレオマイシン誘発性肺線維症に対して著しく強力であることが示され(Zhu, Ma et al., 2013)、一方、シンバスタチンは、ヒト線維症肺に由来する線維芽細胞において線維化マーカーの発現を阻害することが示された(Watts, Sampson et al., 2005)。
【0008】
本発明では、潜在的抗線維化剤を同定するために表現型スクリーニングアッセイを使用して、NTZ又はその重水素化誘導体又はその活性代謝物TZをスタチンと組み合わせると、相加的又は相乗的に、筋線維芽細胞の活性化に干渉することが見出された。この効果は、これら分子について既に報告されている特性に鑑みて全く予想外であった。NTZ又はその重水素化誘導体又はTZと特定のスタチンとの組み合わせは、多様な種類の線維性疾患に対する強力な処置ストラテジであると考えられる。更に、特定のスタチンと組み合わせたNTZ又はその誘導体の評価によって、血中胆汁酸濃度を低下させる予想外の相乗的能力が明らかになり、したがって、これは胆汁うっ滞性疾患(例えば、PBC及びPSC)及び線維性疾患の両方を処置する潜在力を反映している。
【0009】
発明の概要
本発明は、(i)2-[(5-ニトロ-1,3-チアゾール-2-イル)カルバモイル]フェニル]エタノアート(NTZ)、NTZの重水素化誘導体(NTZ-D)、2-ヒドロキシ-N-(5-ニトロ-2-チアゾリル)ベンズアミド(TZ)、又はチゾキサニドグルクロニド(TZG)と、(ii)少なくとも1つのスタチンとを含む相乗的組み合わせに関する。この組み合わせは、胆汁うっ滞性又は線維性の疾患を処置する方法において有用である。
【0010】
したがって、本発明は、
(i)NTZ、NTZ-D、TZ、若しくはTZG、又はNTZ、NTZ-D、TZ、若しくはTZGの薬学的に許容し得る塩;
(ii)スタチン
の相乗的組み合わせに関する。
【0011】
本発明の組み合わせは、医薬組成物又はキットオブパーツの形態であり得る。
【0012】
更に、本発明の相乗的組み合わせの成分は、同時に、逐次、及び別々に投与してよい。
【0013】
具体的な実施態様では、相乗的組み合わせの成分(i)は、NTZ又はその薬学的に許容し得る塩である。
【0014】
本発明の具体的な実施態様では、前記少なくとも1つのスタチンは、メバスタチン、セリバスタチン、ピタバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチン、及びプラバスタチンからなる群から選択される。別の具体的な実施態様では、スタチンは、ピタバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、及びアトルバスタチンからなる群から選択される。別の具体的な実施態様では、スタチンは、ピタバスタチン、フルバスタチン、及びシンバスタチンからなる群から選択される。
【0015】
更に、本発明の相乗的組み合わせは、ピルフェニドン又は受容体チロシンキナーゼ阻害剤(RTKI)、例えば、ニンテダニブ、ソラフェニブ、及び他のRTKI、又はアンギオテンシンII(AT1)受容体ブロッカー、又はCTGF阻害剤、又はMMP2、MMP9、THBS1、若しくは細胞表面インテグリン等の潜在TGFβ複合体の活性化剤を含むTGFβ-及びBMP-活性化経路に干渉しやすい任意の抗線維化化合物、TGFβ受容体I型(TGFBRI)若しくはII型(TGFBRII)、及びこれらのリガンド、例えば、TGFβ、アクチビン、インヒビン、ノーダル、抗ミュラーホルモン、GDF、若しくはBMP、補助共受容体(III型受容体としても知られている)、又は制御性若しくは阻害性のSMADタンパク質を含むSMAD依存性古典的経路の構成要素、又はMAPKシグナル伝達、TAK1、Rho様GTPaseシグナル伝達経路、ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ/AKT経路、TGFβ誘発性EMTプロセス、又はHhリガンド若しくは標的遺伝子を含む古典的及び非古典的なヘッジホッグシグナル伝達経路の様々なブランチを含むSMAD非依存性若しくは非古典的な経路のメンバー、又はTGFβシグナル伝達に影響を与えやすいWNT若しくはノッチの経路の任意のメンバーから選択される公知の抗線維化活性を有する少なくとも1つの処置活性剤を更に含み得る。
【0016】
あるいは、本発明に係る相乗的組み合わせは、JAK/STAT阻害剤、並びに他の抗炎症剤及び/又は免疫抑制剤から選択される少なくとも1つの処置活性剤を更に含み得る。例えば、処置活性剤は、グルココルチコイド、NSAIDS、シクロホスファミド、ニトロソ尿素、葉酸類似物、プリン類似物、ピリミジン類似物、メトトレキサート、アザチオプリン、メルカプトプリン、シクロスポリン、ミリオシン、タクロリムス、シロリムス、ミコフェノール酸誘導体、フィンゴリモド及び他のスフィンゴシン-1-リン酸受容体調節因子;炎症促進性サイトカイン及び炎症促進性サイトカイン受容体、T細胞受容体、インテグリン等の標的に対するモノクローナル及び/又はポリクローナルな抗体から選択され得る。
【0017】
また、本発明は、医薬として使用するための、本発明に係る相乗的組み合わせに関する。
【0018】
更に、本発明は、線維性障害を処置する方法において使用するための、本明細書に記載される相乗的組み合わせに関する。具体的な実施態様では、線維性障害は、肝臓、腸、腎臓、皮膚、表皮、内皮、筋肉、腱、軟骨、心臓、膵臓、肺、子宮、神経系、精巣、陰茎、卵巣、副腎、動脈、静脈、結腸、腸(例えば、小腸)、胆管、軟組織(例えば、縦隔又は後腹膜)、骨髄、関節、眼、及び胃の線維症からなる群から選択される。更に具体的な実施態様では、線維性障害は、肝臓、腎臓、皮膚、表皮、内皮、筋肉、腱、軟骨、心臓、膵臓、肺、子宮、神経系、精巣、卵巣、副腎、動脈、静脈、結腸、腸(例えば、小腸)、胆管、軟組織(例えば、縦隔又は後腹膜)、骨髄、関節、及び胃の線維症からなる群から選択される。更に具体的な実施態様では、線維性障害は、肝臓、腸、肺、心臓、腎臓、筋肉、皮膚、軟組織、骨髄、腸、及び関節の線維症からなる群から選択される。更に別の実施態様では、線維性障害は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肺線維症、特発性肺線維症、皮膚線維症、眼線維症(例えば、莢膜線維症)、心内膜心筋線維症、縦隔線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、進行性塊状線維症(炭坑夫塵肺の合併症)、増殖性線維症、新生物線維症、慢性炎症性気道疾患(COPD、喘息、肺気腫、喫煙者肺、結核)となる肺線維症、アルコール又は薬物誘発性の肝線維症、肝硬変、感染誘発性肝線維症、放射線又は化学療法誘発性の線維症、腎原性全身性線維症、クローン病、潰瘍性大腸炎、ケロイド、陳旧性心筋梗塞、強皮症/全身性強皮症、関節線維症、癒着性関節包炎の一部の形態、慢性線維化性胆管症、例えば、原発性硬化性胆管炎(PSC)、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、胆道閉鎖症、家族性肝内胆汁うっ滞症3型(PFIC3)、インプラント周囲線維症、及び石綿肺からなる群から選択される。
【0019】
本発明の具体的な実施態様によれば、胆汁うっ滞性疾患は、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、妊娠時肝内胆汁うっ滞症、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症、胆道閉鎖症、胆石症、感染性胆管炎、ランゲルハンス細胞組織球増殖症に付随する胆管炎、アラジール症候群、非症候性腺管不足、薬物誘発性胆汁うっ滞症、及び完全非経口栄養関連胆汁うっ滞症からなる群から選択される。具体的な実施態様では、胆汁うっ滞性疾患はPBCである。
【0020】
具体的な実施態様によれば、本明細書に記載される各態様及び実施態様では、NTZ、NTZ-D、若しくはTZ、又はNTZ;NTZ-D、若しくはTZの薬学的に許容し得る塩が使用される。
【0021】
図及び表の説明
図、表、及び文章において用いられる略語:
α-SMA:α平滑筋アクチン
ATORVA:アトルバスタチン
BDL:胆管結紮
BMP:骨形成タンパク質
cDNA:相補的デオキシリボヌクレオチド酸
COL1A1:1型コラーゲンα1
CDAA:コリン欠乏Lアミノ酸
CDAAc:コレステロール補給コリン欠乏Lアミノ酸制限飼料
CHOL:コレステロール
CSAA:コリン補給Lアミノ酸制限
DDC:3,5-ジエトキシカルボニル-1,4-ジヒドロコリジン
DMSO:ジメチルスルホキシド
DTT:ジチオスレイトール
ELISA:酵素結合免疫吸着測定法
EMT:上皮間葉転換
EOB:Bliss超過(Excess Over Bliss)
FBS:ウシ胎仔血清
FDA:食品医薬品局
FLUVA:フルバスタチン
FPP:ファルネシルピロリン酸
GDF:増殖分化因子
Hh:ヘッジホッグ
GGPP:ゲラニルゲラニルピロリン酸
HMG-CoA:3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-補酵素A
hHSC:ヒト肝星細胞
HSC:肝星細胞
IC50:半値阻害濃度
InMyoFib:腸筋線維芽細胞
MMP2:マトリクスメタロペプチダーゼ2
MMP9:マトリクスメタロペプチダーゼ9
μL:マイクロリットル
LDL:低密度リポタンパク質
LOVA:ロバスタチン
NHLF:正常ヒト肺線維芽細胞
NTZ:ニタゾキサニド
PBC:原発性胆汁性胆管炎
PBS:リン酸緩衝生理食塩水
PITA:ピタバスタチン
PSC:原発性硬化性胆管炎
qPCR:定量ポリメラーゼ連鎖反応
pMol:ピコモル
PRAVA:プラバスタチン
rhFGF:組み換えヒト塩基性線維芽細胞増殖因子
ROSU:ロスバスタチン
RNA:リボ核酸
RT:逆転写酵素
SIMVA:シンバスタチン
SmBM:平滑筋細胞基本培地
SteCGS:星細胞増殖補給剤
STeCM:星細胞培地
TBA:全胆汁酸
TGFβ1:腫瘍増殖因子ベータ1
TGFBRI:TGFb I型受容体
TGFBRII:TGFb II型受容体
THBS1:トロンボスポンジン1
TMB:テトラメチルベンジジン
TZ:チゾキサニド
TZG:チゾキサニドグルクロニド
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】ニタゾキサニド及びその代謝物チゾキサニドは、ヒトHSCにおいてα-SMAタンパク質のTGFβ1誘導性発現を阻害する。 血清除去したHSCをNTZ(A)又はTZ(B)と共に1時間プレインキュベートした後、線維化促進性サイトカインTGFβ1(1ng/mL)で活性化した。48時間インキュベートした後、α-SMAの発現をELISAによって測定した。得られた値を、TGFβ1対照に対する阻害率に変換した。データを平均(トリプリケート)±標準偏差(SD)として提示する。Sigma Plot 11.0ソフトウェアを使用して、一元配置分散分析、続いて、ボンフェローニ事後検定によって統計解析を実施した。[
*:p<0.05;
**:p<0.01;
***:p<0.001(1ng/mL TGFβ1群に対する比較)]。曲線当てはめ及び半値阻害濃度(IC
50)の計算は、XLFitソフトウェア5.3.1.3で実施した。
【
図2】TGFβ誘導性hHSCにおけるスタチン薬の差異的抗線維化効果 血清除去したhHSCを、ピタバスタチン(A)、フルバスタチン(B)、シンバスタチン(C)、アトルバスタチン(D)、ロバスタチン(E)、ロスバスタチン(F)、及びプラバスタチン(G)と共に1時間プレインキュベートした後、線維化促進性サイトカインTGFβ1(1ng/mL)で活性化した。48時間インキュベートした後、α-SMAの発現をELISAによって測定した。得られた値を、TGFβ1対照に対する阻害率に変換した。データを平均(トリプリケート)±標準偏差(SD)として提示する。Sigma Plot 11.0ソフトウェアを使用して、一元配置分散分析、続いて、ボンフェローニ事後検定によって統計解析を実施した。[
*:p<0.05;
**:p<0.01;
***:p<0.001(1ng/mL TGFβ1群に対する比較)]。曲線当てはめ及び半値阻害濃度(IC
50)の計算は、XLFitソフトウェア5.3.1.3で実施した。
【
図3】NTZとピタバスタチンとの組み合わせは、TGFβ1誘導性hHSCにおいてα-SMAを相乗的に阻害する 組み合わせを用量応答マトリクスフォーマットにおいて試験し、そして、Bliss超過相加性モデルに従って分析した。それぞれのDMSO対照を含む、NTZ(縦列)及びピタバスタチン(横列)の希釈系列を調製した。得られた混合物を血清除去したHSCに添加し、1時間後、線維化促進性サイトカインTGFβ1(1ng/mL)で活性化した。(A)全ての組み合わせ対についての、TGFβ1対照に対するα-SMAの阻害率。データをクアドルプリケートの平均として提示する。(B)材料及び方法に記載の通りEOBスコアを計算した。正のEOB値を有する任意の化合物対を相乗的であるとみなした(薄灰色~黒色に着色)。(C)相乗的組み合わせ対から得られたデータ値を棒グラフ表現でプロットした。データを平均(クアドルプリケート)±標準偏差(SD)として提示する。Sigma Plot 11.0ソフトウェアを使用して、スチューデントt検定又はマンホイットニー順位和検定によって、単剤対製品の組み合わせ間の統計解析を実施した。[
*:p<0.05;
**:p<0.01;
***:p<0.001]。
【
図4】NTZとシンバスタチンとの組み合わせは、TGFβ誘導性hHSCにおいてα-SMAを相乗的に阻害する 組み合わせを用量応答マトリクスフォーマットにおいて試験し、そして、Bliss超過相加性モデルに従って分析した。それぞれのDMSO対照を含む、NTZ(縦列)及びシンバスタチン(横列)の希釈系列を調製した。得られた混合物を血清除去したHSCに添加し1時間後、線維化促進性サイトカインTGFβ1(1ng/mL)で活性化した。(A)全ての組み合わせについての、TGFβ1対照に対するα-SMAの阻害率。(B)材料及び方法に記載の通りEOBスコアを計算した。正のEOB値を有する任意の化合物対を相乗的であるとみなした(薄灰色~黒色に着色)。(C)相乗的組み合わせ対から得られたデータ値を棒グラフ表現でプロットした。データを平均(クアドルプリケート)±標準偏差(SD)として提示する。Sigma Plot 11.0ソフトウェアを使用して、スチューデントt検定又はマンホイットニー順位和検定によって、単剤対製品の組み合わせ間の統計解析を実施した。[
*:p<0.05;
**:p<0.01;
***:p<0.001]。
【
図5】NTZとフルバスタチンとの組み合わせは、TGFβ誘導性hHSCにおいてα-SMAを相乗的に阻害する 組み合わせを用量応答マトリクスフォーマットにおいて試験し、そして、Bliss超過相加作用モデルに従って分析した。それぞれのDMSO対照を含む、NTZ(縦列)及びフルバスタチン(横列)の希釈系列を調製した。得られた混合物を血清除去したHSCに添加し、1時間後、線維化促進性サイトカインTGFβ1(1ng/mL)で活性化した。(A)全ての組み合わせについての、TGFβ1対照に対するα-SMAの阻害率。(B)材料及び方法に記載の通りBliss超過(EOB)スコアを計算した。正のEOB値を有する任意の化合物対を相乗的であるとみなした(薄灰色~黒色に着色)。(C)相乗的組み合わせ対から得られたデータ値を棒グラフ表現でプロットした。データを平均(クアドルプリケート)±標準偏差(SD)として提示する。Sigma Plot 11.0ソフトウェアを使用して、スチューデントt検定又はマンホイットニー順位和検定によって、単剤対製品の組み合わせ間の統計解析を実施した。[
*:p<0.05;
**:p<0.01;
***:p<0.001]。
【
図6】NTZとロバスタチンとの組み合わせは、TGFβ誘導性hHSCにおいてα-SMAを相乗的に阻害する 組み合わせを用量応答マトリクスフォーマットにおいて試験し、そして、Bliss超過相加作用モデルに従って分析した。それぞれのDMSO対照を含む、NTZ(縦列)及びロバスタチン(横列)の希釈系列を調製した。得られた混合物を血清除去したHSCに添加し、1時間後、線維化促進性サイトカインTGFβ1(1ng/mL)で活性化した。(A)全ての組み合わせについての、TGFβ1対照に対するα-SMAの阻害率。(B)材料及び方法に記載の通りBliss超過(EOB)スコアを計算した。正のEOB値を有する任意の化合物対を相乗的であるとみなした(薄灰色~黒色に着色)。相乗的対の例を(C)に示した。相乗的組み合わせ対から得られたデータ値を棒グラフ表現でプロットした。データを平均(クアドルプリケート)±標準偏差(SD)として提示する。Sigma Plot 11.0ソフトウェアを使用して、スチューデントt検定又はマンホイットニー順位和検定によって、単剤対製品の組み合わせ間の統計解析を実施した。[
*:p<0.05;
**:p<0.01;
***:p<0.001]。
【
図7】NTZとアトルバスタチンとの組み合わせは、TGFβ誘導性hHSCにおいてα-SMAを相乗的に阻害する 組み合わせを用量応答マトリクスフォーマットにおいて試験し、そして、Bliss超過相加作用モデルに従って分析した。それぞれのDMSO対照を含む、NTZ(縦列)及びアトルバスタチン(横列)の希釈系列を調製した。得られた混合物を血清除去したHSCに添加し、1時間後、線維化促進性サイトカインTGFβ1(1ng/mL)で活性化した。(A)TGFβ1対照に対するα-SMAの阻害率。(B)材料及び方法に記載の通りBliss超過(EOB)スコアを計算した。正のEOB値を有する任意の化合物対を相乗的であるとみなした(薄灰色~黒色に着色)。(C)相乗的組み合わせ対から得られたデータ値を棒グラフ表現でプロットした。データを平均(クアドルプリケート)±標準偏差(SD)として提示する。Sigma Plot 11.0ソフトウェアを使用して、スチューデントt検定又はマンホイットニー順位和検定によって、単剤対製品の組み合わせ間の統計解析を実施した。[
*:p<0.05;
**:p<0.01;
***:p<0.001]。
【
図8】NTZとプラバスタチンとの組み合わせは、TGFβ誘導性hHSCにおいてα-SMAを相乗的に阻害する 組み合わせを用量応答マトリクスフォーマットにおいて試験し、そして、Bliss超過相加作用モデルに従って分析した。それぞれのDMSO対照を含む、NTZ(縦列)及びプラバスタチン(横列)の希釈系列を調製した。得られた混合物を血清除去したHSCに添加し、1時間後、線維化促進性サイトカインTGFβ1(1ng/mL)で活性化した。(A)TGFβ1対照に対するα-SMAの阻害率。(B)材料及び方法に記載の通りBliss超過(EOB)スコアを計算した。正のEOB値を有する任意の化合物対を相乗的であるとみなした(薄灰色~黒色に着色)。(C)相乗的組み合わせ対から得られたデータ値を棒グラフ表現でプロットした。データを平均(クアドルプリケート)±標準偏差(SD)として提示する。Sigma Plot 11.0ソフトウェアを使用して、スチューデントt検定又はマンホイットニー順位和検定によって、単剤対製品の組み合わせ間の統計解析を実施した。[
*:p<0.05;
**:p<0.01;
***:p<0.001]。
【
図9】フルバスタチンは、NTZの代謝物であるチゾキサニドとも相乗作用して、TGFβ誘導性hHSCにおける線維症を低減する。 血清除去したHSCを、最適以下の用量のチゾキサニド(TZ)、フルバスタチン、又は両製品の組み合わせと共に1時間プレインキュベートした。データをクアドルプリケートの平均として提示する。Sigma Plot 11.0ソフトウェアを使用して、一元配置分散分析、続いて、ボンフェローニ事後検定によって統計解析を実施した。[
*:p<0.05;
**:p<0.01;
***:p<0.001(「製品の組み合わせ」群に対する比較)]。
【
図10】NTZとシンバスタチンとの組み合わせは、血中TBA濃度のCCl4誘導性レベルを相乗的に抑制する。 250~275gのラットにオリーブ油(対照群)又はオリーブ油に乳化させたCCl4(CCl4:オリーブ油 1:2v/v、最終CCl4濃度:2mL/kg)を3週間にわたって週2回腹腔内注入した。同時に、オリーブ油注入群を対照飼料で飼育し、一方、CCl4注入群を対照飼料又は30mg/kg/日 NTZ、10mg/kg/日 SIMVA、若しくは30mg/kg/日 NTZ/10mg/kg/日 SIMVAの組み合わせを補給した飼料で飼育した。屠殺後、血中TBA濃度を決定した。データを平均±標準偏差(SD)として提示する。Sigma Plot 11.0を使用して統計解析を実施した:オリーブ油対CCl4:マンホイットニー順位和検定:###:p<0.001;CCl4対CCl4+cpd処理:クラスカル・ワリス検定、続いて、ダン事後(Dunn's post)
***:p<0.001;NTZ/SIMVA組み合わせ対30mpk NTZ又は10mpk SIMVA1:マンホイットニー順位和検定::$$$p<0.001。
【0023】
発明を実施するための形態
本願の実験部分では、(i)NTZ又はTZと(ii)スタチンとの組み合わせが、活性化筋線維芽細胞において抗線維化特性を相乗的に付与し得ることが示される。更に、(i)NTZ又はTZと(ii)スタチンとの組み合わせが、肝損傷モデルにおいて全胆汁酸のレベル変化を低減することもできることが示される。したがって、本発明は、(i)NTZ若しくはNTZの誘導体、例えば、NTZの重水素化誘導体(NTZ-D)、TZ若しくはTZG、又はNTZ、NTZ-D、TZ、若しくはTZGの薬学的に許容し得る塩と(ii)スタチンとを含む活性剤の新規相乗的組み合わせに関する。
【0024】
具体的には、本発明は、胆汁うっ滞性又は線維性の障害を処置する方法において使用するための、(i)NTZ、NTZの重水素化誘導体、若しくはTZ、又はNTZ、TZ、若しくはNTZの重水素化誘導体の薬学的に許容し得る塩と(ii)スタチンとの相乗的組み合わせに関する。
【0025】
更に、本発明は、胆汁うっ滞性及び線維性の障害の処置に有用な医薬を製造するための、(i)NTZ、NTZ-D、TZ、若しくはTZG、又はNTZ、NTZ-D、TZ、若しくはTZGの薬学的に許容し得る塩と(ii)スタチンとを含む、本発明の相乗的組み合わせの使用に関する。また、本発明は、(i)NTZ、NTZ-D、TZ、若しくはTZG、又はNTZ、NTZ-D、TZ、若しくはTZGの薬学的に許容し得る塩と(ii)スタチンとを含む医薬組成物であって、該成分(i)及び(ii)が本明細書に記載される通り相乗的に作用する医薬組成物に関する。本発明に係る医薬組成物は、胆汁うっ滞性又は線維性の障害の処置に有用である。
【0026】
線維性障害の原因物質又は起因事象はかなり多様であり、そして、その発症機序は可変であるが、罹患組織における共通の特徴は、筋線維芽細胞と呼ばれる多数の活性化線維芽細胞の存在である((Rosenbloom, Mendoza et al., 2013))。TGFβ1等の線維化刺激は、線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化を誘導することができる(Leask and Abraham, 2004;Leask, 2007)。筋線維芽細胞は、代謝的に及び形態的に特徴的な線維芽細胞であり、その活性が線維化応答中に重要な役割を果たす。更に、これら筋線維芽細胞は、例えば様々な形態のコラーゲン等の細胞外マトリクスの形成に関与するタンパク質の発現を含む独特の生物学的機能を示す。α-平滑筋アクチン(α-SMA)の発現誘導は、休止状態の線維芽細胞の活性化筋線維芽細胞への分化の認識されている特徴であり、そして、線維化プロセスに干渉する薬物の効力を評価するために生理学的読み出し情報として使用することができる。腫瘍増殖β因子、そして、特に腫瘍増殖因子ベータ1(TGFβ1)は、線維芽細胞の線維化促進性筋線維芽細胞への表現型転換を誘導する認識されている生理学的シグナルであり、当該線維化促進性筋線維芽細胞は、高レベルのα-SMA及び高レベルの細胞外マトリクスタンパク質を発現し、これらは後に分泌され、そして、線維性瘢痕組織を形成する。
【0027】
更に、線維芽細胞の増殖及び活性化は、細胞外マトリクスを構成する幾つかの結合組織成分(例えば、コラーゲン、エラスチン、プロテオグリカン、及びヒアルロナン)の産生に関与していることが知られている(Kendall and Feghali-Bostwick, 2014)。
【0028】
予想外に、NTZだけでなくその活性代謝物TZ及びNTZ重水素化誘導体も抗線維化特性が明らかになったが、その理由は、これら化合物が、TGFβ誘導性肝星細胞及び他の器官由来の初代線維芽細胞におけるα-SMAのレベルを用量依存的に低下させたためである。更に、NTZ及びその代謝物TZは、肝損傷モデルにおいて血中全胆汁酸を低減するその能力によって、抗胆汁うっ滞特性が明らかになった。
【0029】
本発明に従って使用されるNTZ、TZ、及びTZGは、それぞれ、以下の式(I)、(II)、及び(III)を有する:
【化1】
【0030】
NTZ及びTZ(G)(「TZ(G)」は、「TZ又はTZG」を指す)は、その抗寄生虫及び抗ウイルスの活性で知られているが、先行技術は、NTZ及びTZ(G)が抗胆汁うっ滞及び抗線維化の効果を有することを教示していない。
【0031】
本発明者らは、これら化合物が胆汁うっ滞又は線維症の処置において処置効果を有することを新規かつ独創的な方法で証明した。
【0032】
先行技術は、NTZの重水素化誘導体(本願の他の箇所では「NTZ-D」とも呼ばれる)が抗胆汁うっ滞効果を有することも抗線維化効果を有することも教示していない。
【0033】
本発明によれば、本発明に係る組成物で使用されるNTZの重水素化誘導体は、以下の式(IV)を有する:
【化2】
(式中、R2は、
【化3】
基を表し、同一であるか又は異なるR2a、R2b、及びR2cは、水素原子又は重水素原子を表すが、ただし、R2a、R2b、R2cは、同時に水素原子ではない)。
【0034】
具体的な実施態様では、R2a、R2b、及びR2cは、重水素原子を表す。
【0035】
具体的な実施態様では、R2a及びR2bは、重水素原子を表し、R2cは、水素原子を表す。
【0036】
具体的な実施態様では、R2aは、重水素原子を表し、R2b及びR2cは、重水素原子を表す。
【0037】
本発明のこのような化合物の例は、
Cpd.1:2-[(5-ニトロ-1,3-チアゾール-2-イル)カルバモイル]フェニル(d3)エタノアート;
Cpd.2:2-[(5-ニトロ-1,3-チアゾール-2-イル)カルバモイル]フェニル(d2)エタノアート;及び
Cpd.3:2-[(5-ニトロ-1,3-チアゾール-2-イル)カルバモイル]フェニル(d1)エタノアート;
を含む。
【0038】
本発明の状況では、「NTZ、NTZ-D、及びTZ(G)、並びにNTZ、NTZ-D、及びTZ(G)の薬学的に許容し得る塩」又は「式(I)、(II)、(III)、及び(IV)の化合物、並びに式(I)、(II)、(III)、及び(IV)の化合物の薬学的に許容し得る塩」は、まとめて「成分(i)」又は「組み合わせの成分(i)」と呼ばれる。
【0039】
本発明の状況では、「成分(ii)」又は「組み合わせの成分(ii)」とは、「少なくとも1つのスタチン」又は「スタチン」を指す。
【0040】
また、本発明者らは、NTZ、NTZ-D、TZ(G)とスタチンとの組み合わせが、ヒトHSCにおいて相乗的な抗胆汁うっ滞及び/又は抗線維化の効果を有し得ることを新規かつ独創的な方法で証明した。
【0041】
本発明では、相乗作用は、複合作用が別々に作用するそれぞれの合計よりも大きくなるような2つ以上の構造の協調又は相関作用によって定義される。
【0042】
したがって、本発明は、(i)NTZ、NTZ-D、TZG、又はNTZ、NTZ-D、若しくはTZ(G)の薬学的に許容し得る塩と(ii)スタチンとの相乗的組み合わせに関する。本発明は、更に、胆汁うっ滞性又は線維性の障害を処置する方法において使用するためのこの組み合わせに関する。
【0043】
本発明の具体的な実施態様によれば、該組み合わせは、(i)NTZ、NTZ-D、若しくはTZ、又はNTZE、NTZ-D、若しくはTZの薬学的に許容し得る塩と(ii)スタチンとを含む。
【0044】
更なる態様では、本発明は、線維芽細胞の増殖及び/又は活性化の阻害において使用するための、本発明の相乗的組み合わせに関する。当技術分野において公知であるように、線維芽細胞は、コラーゲン線維又は細胞外マトリクスの他の結合組織成分の産生に関与する。
【0045】
本発明によれば、用語「線維症」、「線維性疾患」、「線維性障害」、及びこれらの語形変化(declinations)は、器官又は組織における線維性結合組織の過剰の沈着の病的状況を意味する。より具体的には、線維症は、組織損傷に対する応答としての、結合組織による持続的な線維性瘢痕形成及び細胞外マトリクスの過剰産生を含む病理学的プロセスである。生理学的に、結合組織の沈着は、その下に存在する器官又は組織の構造及び機能を消し去り得る。
【0046】
本発明によれば、線維症又は線維性障害は、任意の器官又は組織の線維症に関連している場合がある。具体的な器官線維症の例示的な非限定例は、肝臓、腸、腎臓、皮膚、表皮、内皮、筋肉、腱、軟骨、心臓、膵臓、肺、子宮、神経系、精巣、陰茎、卵巣、副腎、動脈、静脈、結腸、腸(例えば、小腸)、胆管、軟組織(例えば、縦隔又は後腹膜)、骨髄、関節、眼、又は胃の線維症、特に、肝臓、腎臓、皮膚、表皮、内皮、筋肉、腱、軟骨、心臓、膵臓、肺、子宮、神経系、精巣、卵巣、副腎、動脈、静脈、結腸、腸(例えば、小腸)、胆管、軟組織(例えば、縦隔又は後腹膜)、骨髄、関節、又は胃の線維症を含む。
【0047】
本発明によれば、用語「胆汁うっ滞」、又は「胆汁うっ滞性疾患」、又は「胆汁うっ滞性障害」、及びこれらの語形変化は、肝細胞による分泌の障害又は肝内若しくは肝外の胆管を通る胆汁流の閉塞に起因する胆汁流の減少によって定義される病的状況を意味する。したがって、胆汁うっ滞の臨床的定義は、通常は胆汁に排泄される物質が保持される任意の状況である。
【0048】
具体的な実施態様では、線維性障害は、肝臓、腸、肺、心臓、腎臓、筋肉、皮膚、軟組織(例えば、縦隔又は後腹膜)、骨髄、腸、及び関節(例えば、膝、肩、又は他の関節)の線維症からなる群から選択される。
【0049】
好ましい実施態様では、線維性障害は、肝臓、肺、皮膚、腎臓、及び腸の線維症からなる群から選択される。
【0050】
本発明のより好ましい実施態様では、処置される線維性障害は、以下の線維性障害の非網羅的なリストからなる群から選択される:非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肺線維症、特発性肺線維症、皮膚線維症、眼線維症、心内膜心筋線維症、縦隔線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、進行性塊状線維症(炭坑夫塵肺の合併症)、増殖性線維症、新生物線維症、慢性炎症性気道疾患(COPD、喘息、肺気腫、喫煙者肺、結核)となる肺線維症、アルコール又は薬物誘発性の肝線維症、肝硬変、感染誘発性肝線維症、放射線又は化学療法誘発性の線維症、腎原性全身性線維症、クローン病、潰瘍性大腸炎、ケロイド、陳旧性心筋梗塞、強皮症/全身性強皮症、関節線維症、癒着性関節包炎の一部の形態、慢性線維化性胆管症、例えば、原発性硬化性胆管炎(PSC)及び原発性胆汁性胆管炎(PBC)、胆道閉鎖症、家族性肝内胆汁うっ滞症3型(PFIC3)、インプラント周囲線維症、及び石綿肺。
【0051】
本発明の具体的な実施態様によれば、胆汁うっ滞性疾患は、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、妊娠時肝内胆汁うっ滞症、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症、胆道閉鎖症、胆石症、感染性胆管炎、ランゲルハンス細胞組織球増殖症に付随する胆管炎、アラジール症候群、非症候性腺管不足、薬物誘発性胆汁うっ滞症、及び完全非経口栄養関連胆汁うっ滞症からなる群から選択される。好ましい実施態様では、胆汁うっ滞性疾患は、PBC又はPSC、特にPBCである。
【0052】
用語「処置」又は「処置する」とは、それを必要としている被験体における胆汁うっ滞性又は線維性の障害の治癒又は予防を指す。処置は、障害を治癒させるか、障害の進行を遅延、逆行、又は減速させることによって、被験体の状況を改善するために、指定の障害を有する被験体、すなわち、患者に、本発明の組み合わせを投与することを含む。また、処置は、障害を予防又は遅延させるために、健常な又は胆汁うっ滞性若しくは線維性の障害を発現するリスクのある被験体に投与してもよい。
【0053】
したがって、本発明によれば、線維性障害の処置は、該障害を治癒させるか、該障害の進行を遅延、逆行、又は減速させることによって、患者又は健常被験体、特に、胆汁うっ滞性又は線維性の障害を発現するリスクのある被験体の状況を改善するために、指定の障害を有する被験体に、本発明の組み合わせを、例えば、該組み合わせの成分(i)及び(ii)を含有する医薬組成物の形態で投与することを含む。
【0054】
処置される被験体は、哺乳類、好ましくはヒトである。本発明に従って処置される被験体は、以前に行われた薬物処置、関連する病状、遺伝子型、リスク因子に対する曝露、ウイルス感染等の胆汁うっ滞性又は線維性の疾患に関連する幾つかの基準に基づいて、更に、画像診断方法、及び免疫学的、生化学的、酵素的、化学的、又は核酸検出の方法を用いて評価することができる任意の関連するバイオマーカーの検出に基づいて選択することができる。
【0055】
本発明によれば、用語「スタチン」とは、コレステロールの産生において中心的な役割を果たす酵素HMG-CoAレダクターゼを阻害するコレステロール低下薬の分類であるHMG-CoAレダクターゼ阻害剤を指す。血中コレステロールレベルの上昇は、心血管疾患(CVD)に関連しており、そして、CVD事象のリスクは脂質低下療法によって低減し得ることが多くの研究で示されている。当初、脂質低下手段は、低飽和脂肪及びコレステロール食、胆汁酸捕捉剤(コレスチラミン及びコレスチポール)、ニコチン酸(ナイアシン)、フィブラート、及びプロブコールに本質的に限定されていた。残念なことに、これら処置は全て、有効性若しくは耐容性、又は両方が限定されていた。
【0056】
上記HMG-CoAレダクターゼ阻害剤は、3-ヒドロキシラクトン環又は対応する開環したジヒドロキシ開環酸のいずれかとして存在し得る部分を含有する化合物の構造的分類に属する。ジヒドロキシ開環酸の塩を調製することができ、実際、上述の通り、販売されているスタチンのうちの幾つかは、ジヒドロキシ開環酸塩の形態として投与される。
【0057】
例えば、ロバスタチン及びシンバスタチンは、そのラクトン化形態で世界中で販売されている。
【0058】
スタチンは、高いリスクを有する人々において心血管疾患及び死亡率を低下させることが見出されている。スタチンが疾患の初期におけるCVDを処置するため(二次予防)及びCVDのリスクは高いがCVDではない人々において(一次予防)有効であるという証拠は強固である。
【0059】
本発明によれば、用語「スタチン」は、本明細書で使用するとき、フルバスタチン、アトルバスタチン、メバスタチン、セリバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、ロスバスタチン、プラバスタチン、及びピタバスタチンを含むが、これらに限定されない。本発明の具体的な実施態様によれば、スタチンは、ピタバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、及びアトルバスタチンから選択される。
【0060】
スタチンは、塩、水和物、溶媒和物、多型、又は共結晶の形態であり得る。また、スタチンは、塩の水和物、溶媒和物、多型、又は共結晶の形態であってもよい。また、スタチンは、本発明に係るラクトン形態の遊離酸中に存在し得る。
【0061】
組み合わせの成分(ii)は、1つ以上のスタチン、すなわち、1つのスタチン又はスタチンの混合物を含み得る。
【0062】
本発明によれば、本発明の組み合わせに含まれるスタチンは、該スタチンと本発明の組み合わせの成分(i)との組み合わせが胆汁うっ滞又は線維症に対して相乗作用をもたらすように選択される。このような相乗作用は、実施例に記載されるBliss超過(EOB)法を使用することによる等、当技術分野において周知の方法に従って判定され得る。
【0063】
好ましい実施態様では、本発明の相乗的組み合わせにおけるスタチンは、ロバスタチン、ロスバスタチン、プラバスタチン、ピタバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、及びアトルバスタチンからなる群から選択され、特に、ピタバスタチン、フルバスタチン、及びシンバスタチンからなる群から選択される。
【0064】
本発明の別の態様は、医薬組成物の形態の上記相乗的組み合わせに関する。したがって、本発明は、また、(i)NTZ、NTZ-D、若しくはTZ(G)、又はNTZ、NTZ-D、若しくはTZ(G)の薬学的に許容し得る塩と(ii)スタチンとを含む医薬組成物に関する。
【0065】
更に別の態様では、本発明は、以下により詳細に記載するように、その成分を同時、逐次、又は別々に投与するためのキットオブパーツの形態の、上記相乗的組み合わせに関する。
【0066】
また、本発明は、胆汁うっ滞又は線維症を処置する方法を提供する。
【0067】
該処置は、治癒させるか、進行を遅延又は減速させることによって、患者又は健常被験体、特に、胆汁うっ滞性又は線維性の疾患を発現するリスクのある被験体の状況を改善して、該疾患を予防するために、指定の障害を有する患者に本発明の相乗的組み合わせを投与することを含む。
【0068】
本発明に従って処置される被験体は、以前に行われた薬物処置、関連する病状、遺伝子型、リスク因子に対する曝露、ウイルス感染等の線維性疾患に関連する幾つかの基準、更に、画像診断方法、及び免疫学的、生化学的、酵素的、化学的、又は核酸検出の方法を用いて評価することができる任意の他の関連するバイオマーカーに基づいて選択することができる。
【0069】
NTZ又はTZの合成は、例えば、(Rossignol and Cavier, 1975)、又は当業者に公知の任意の他の合成方法に記載されている通り実施することができる。TZGは、例えば、Wadouachi 2011. S'agit-il de A Wadouachi, J Kovensky, Synthesis of Glycosides of Glucuronic, Galacturonic and Mannuronic Acids: An Overview, Molecules, 2011, 16(5), 3933-3968等の当技術分野において公知の合成方法に従って合成することができる。
【0070】
具体的な実施態様では、胆汁うっ滞性又は線維性の障害の処置は、NTZ、NTZ-D、及びTZ(G)から選択される少なくとも2つの化合物を含む組成物を投与することを含み得る。この実施態様では、投与されるスタチンは、2つの化合物として同じ組成物中に、又は例えば異なる組成物中に別々の形態で提供される。
【0071】
別の実施態様では、本発明の相乗的組み合わせは、療法において同時、逐次、又は別々に投与するためのものであるので、異なる組成物に含まれていてもよい。逐次投与の場合、組み合わせの成分(i)を成分(ii)の前に投与してもよく、又は成分(ii)を成分(i)の前に投与する。したがって、本発明は、また、同時、逐次、又は別々に投与するための、(i)NTZ、NTZ-D、及びTZ(G)、又はNTZ、NTZ-D、及びTZ(G)の薬学的に許容し得る塩と(ii)スタチンとの相乗的組み合わせを含むキットオブパーツに関する。
【0072】
NTZ、NTZ-D、TZ(G)、及びスタチンは、薬学的に許容し得る塩、特に、薬学的使用に適合する酸又は塩基の塩として処方され得る。NTZ、NTZ-D、TZ(G)、及びスタチンの塩は、薬学的に許容し得る酸付加塩、薬学的に許容し得る塩基付加塩、薬学的に許容し得る金属塩、アンモニウム及びアルキル化アンモニウムの塩を含む。これら塩は、化合物の最終精製工程中に、又は既に精製されている化合物に塩を組み込むことによって得ることができる。
【0073】
成分(i)と(ii)、特に、式(I)、(II)、(III)、又は(IV)の化合物と1つ以上のスタチンとの組み合わせは、式(I)、(II)、(III)、(IV)の化合物、又はスタチンの有機又は無機の塩基又は酸から得られる、薬学的に許容し得る非毒性の塩として処方され得る。これら塩は、化合物の最終精製工程中に、又は既に精製されている化合物に塩を組み込むことによって得ることができる。
【0074】
また、成分(i)及び/又は(ii)を含む、特に、式(I)、(II)、(III)の化合物、及び/又は1つ以上のスタチンを含む本発明の医薬組成物は、製薬の状況において許容し得る1つ又は幾つかの賦形剤又はビヒクル(例えば、薬学的用途に適合しかつ当業者に周知である生理食塩水、生理溶液、等張溶液等)を含み得る。
【0075】
また、これら組成物は、分散剤、可溶化剤、安定剤、保存剤等から選択される1つ又は幾つかの剤又はビヒクルを含んでいてもよい。これら製剤(液体及び/又は注射可能及び/又は固体)に有用な剤又はビヒクルは、特に、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリソルバート80、マンニトール、ゼラチン、ラクトース、植物油、アカシア、リポソーム等である。
【0076】
これら組成物は、最終的にガレヌス形態又は持続放出及び/若しくは徐放を保証する装置を用いて、注射可能な懸濁液、ゲル、オイル、軟膏、丸剤、錠剤、坐剤、粉剤、ゲルキャップ、カプセル、エアゾール等の形態で処方され得る。この種の製剤については、セルロース、カーボナート、又はデンプン等の剤を有利に使用することができる。
【0077】
組み合わせの成分(i)及び/又は(ii)、例えば、式(I)、(II)、(III)の化合物及び/又は1つ以上のスタチン(スタチンは、上述の通り、本発明の組み合わせの成分(i)との相乗効果を可能にするものの中から選択される)を含む本発明の医薬組成物は、異なる経路及び異なる形態で投与され得る。例えば、化合物は、全身経路を介して、経口的に、非経口的に、吸入によって、鼻腔内噴霧によって、鼻腔内滴下によって、又は注射によって、例えば静脈内に、筋肉内経路によって、皮下経路によって、経皮経路によって、局所経路によって、動脈内経路によって投与してよい。
【0078】
無論、投与経路は、当業者に周知の手順に従って1つ以上のスタチンと組み合わせられる成分(i)の形態に適応する。
【0079】
具体的な実施態様では、成分(i)及び(ii)は、錠剤として又は表(tables)として処方される。別の具体的な実施態様では、化合物は経口投与される。
【0080】
NTZ、NTZ-D、又はTZ(G)は、1つ以上のスタチンと組み合わせて、処置的に有効な量で投与される。本発明の状況において、用語「有効な量」とは、所望の処置結果を生じさせるのに十分な化合物の量を指す。
【0081】
投与に関連する頻度及び/又は用量は、患者、病状、投与形態等に応じて当業者が適応させることができる。典型的には、(例えば、医薬組成物又はキットオブパーツの形態の)本発明の組み合わせは、0.01mg/日~4000mg/日、例えば50mg/日~2000mg/日、例えば100mg/日~2000mg/日;そして、特に100mg/日~1000mg/日を含む、該組み合わせの成分(i)の用量で胆汁うっ滞性又は線維性の疾患を処置するために投与され得る。具体的な実施態様では、NTZ、TZ(G)、又はこれらの薬学的に許容し得る塩は、約1000mg/日の用量(すなわち、900~1100mg/日の用量)、特に1000mg/日で投与される。具体的な実施態様では、NTZ、TZ(G)、又はこれらの薬学的に許容し得る塩は、特に錠剤として、約1000mg/日の用量、特に1000mg/日で経口投与される。投与は、必要に応じて、毎日、又は更には1日数回行ってよい。一実施態様では、化合物は、少なくとも1日1回、例えば、1日1回、1日2回、又は1日3回投与される。具体的な実施態様では、化合物は1日に1回又は2回投与される。特に、経口投与は、約1000mgの用量、特に1000mgの用量の化合物を含む錠剤を摂取することによって、食事中、例えば、朝食、昼食、又は夕食中に1日1回実施してよい。別の実施態様では、錠剤は、例えば、ある食事中に約500mgの用量(すなわち、450~550mgの用量)、特に500mgの用量の化合物を含む第1の錠剤を投与し、そして、同日の別の食事中に約500mgの用量、特に500mgの用量の化合物を含む第2の錠剤を投与することによって、1日2回経口投与される。
【0082】
前記組み合わせ中のスタチンの用量は、スタチン自体に応じて変動し得る。該用量は、典型的なスタチン投薬計画に従ってスタチンの効率に適応する。
【0083】
例えば、フルバスタチンの場合、10~50mg/日、特に20~40mg/日の用量が含まれ得る。
【0084】
ピタバスタチンの場合、0,1mg/~6mg/日、特に1~4mg/日の用量が含まれ得る。
【0085】
シンバスタチン及びアトルバスタチンの場合、1mg/~100mg/日、特に10~80mg/日の用量が含まれ得る。
【0086】
本発明の好ましい実施態様では、成分(i)、特にNTZは、フルバスタチンと組み合わせて、NTZについては100mg/日~1000mg/日、そして、フルバスタチンについては1~4mg/日を含む用量で使用される。
【0087】
本発明の別の好ましい実施態様では、成分(i)、特にNTZは、ピタバスタチンと組み合わせて、NTZについては100mg/日~1000mg/日、そして、ピタバスタチンについては1~4mg/日を含む用量で使用される。
【0088】
本発明の別の好ましい実施態様では、成分(i)、特にNTZは、シンバスタチン又はアトルバスタチンと組み合わせて、NTZについては100mg/日~1000mg/日、そして、シンバスタチン及びアトルバスタチンについては10~80mg/日を含む用量で使用される。
【0089】
別の好ましい実施態様では、活性成分は、経口摂取が意図される丸剤又は錠剤の形態で1つ以上の医薬組成物として投与される。
【0090】
投与は、必要に応じて、毎日、又は更には1日数回行ってよい。
【0091】
好適には、本発明の組み合わせによる処置過程は、少なくとも1週間、特に少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、若しくは24週間、又はそれ以上である。特に、NTZ、TZ(G)、又はこれらの薬学的に許容し得る塩による処置過程は、少なくとも1年間、2年間、3年間、4年間、又は少なくとも5年間である。
【0092】
具体的な実施態様では、本発明は、それを必要としている患者における、胆汁うっ滞性又は線維性の疾患、具体的には肝線維症、より具体的にはNASHとなる肝線維症の処置であって、処置的に有効な量の本発明の組み合わせを該患者に投与する、具体的には、特に1日2回、特に2つの異なる食事中にNTZ 500mgを含有する錠剤を投与することによって、1000mg/日の用量のNTZを投与することを含む処置に関する。
【0093】
具体的な実施態様では、本発明は、少なくとも1つの他の処置活性剤、例えば、公知の抗線維化活性を有する他の分子と更に組み合わせられた、本発明の組み合わせに関する。この本発明の更なる組み合わせは、胆汁うっ滞性又は線維性の障害を処置するために有用である。
【0094】
この実施態様の変形例によれば、1つ以上のスタチンと組み合わせられたNTZ、TZ、又はNTZの重水素化誘導体は、ピルフェニドン又は受容体チロシンキナーゼ阻害剤(RTKI)、例えば、ニンテダニブ、ソラフェニブ、及び他のRTKI、又はアンギオテンシンII(AT1)受容体ブロッカー、又はCTGF阻害剤、又はMMP2、MMP9、THBS1、若しくは細胞表面インテグリン等の潜在TGFβ複合体の活性化剤を含むTGFβ-及びBMP-活性化経路に干渉しやすい任意の抗線維化化合物、TGFβ受容体I型(TGFBRI)若しくはII型(TGFBRII)、及びこれらのリガンド、例えば、TGFβ、アクチビン、インヒビン、ノーダル、抗ミュラーホルモン、GDF、若しくはBMP、補助共受容体(III型受容体としても知られている)、又は制御性若しくは阻害性のSMADタンパク質を含むSMAD依存性古典的経路の構成要素、又はMAPKシグナル伝達、TAK1、Rho様GTPaseシグナル伝達経路、ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ/AKT経路、TGFβ誘発性EMTプロセス、又はHhリガンド若しくは標的遺伝子を含む古典的及び非古典的なヘッジホッグシグナル伝達経路の様々なブランチを含むSMAD非依存性若しくは非古典的な経路のメンバー、又はTGFβシグナル伝達に影響を与えやすいWNT若しくはノッチの経路の任意のメンバー等の任意の抗線維化化合物と組み合わせることができる。
【0095】
したがって、本発明は、また、胆汁うっ滞性又は線維性の障害を処置する方法において使用するための、ピルフェニドン又は受容体チロシンキナーゼ阻害剤(RTKI)、例えば、ニンテダニブ、ソラフェニブ、及び他のRTKI、又はアンギオテンシンII(AT1)受容体ブロッカー、又はCTGF阻害剤、又はMMP2、MMP9、THBS1、若しくは細胞表面インテグリン等の潜在TGFβ複合体の活性化剤を含むTGFβ-及びBMP-活性化経路に干渉しやすい抗線維化化合物、TGFβ受容体I型(TGFBRI)若しくはII型(TGFBRII)、及びこれらのリガンド、例えば、TGFβ、アクチビン、インヒビン、ノーダル、抗ミュラーホルモン、GDF、若しくはBMP、補助共受容体(III型受容体としても知られている)、又は制御性若しくは阻害性のSMADタンパク質を含むSMAD依存性古典的経路の構成要素、又はMAPKシグナル伝達、TAK1、Rho様GTPaseシグナル伝達経路、ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ/AKT経路、TGFβ誘発性EMTプロセス、又はHhリガンド若しくは標的遺伝子を含む古典的及び非古典的なヘッジホッグシグナル伝達経路の様々なブランチを含むSMAD非依存性若しくは非古典的な経路のメンバー、又はTGFβシグナル伝達に影響を与えやすいWNT若しくはノッチの経路の任意のメンバーから選択される公知の抗線維化活性を有する少なくとも1つの処置活性剤と組み合わせて、成分(i)から選択される化合物と成分(ii)とを含む、特に胆汁うっ滞性又は線維性の疾患を処置する方法において使用するための医薬組成物に関する。
【0096】
別の具体的な実施態様では、成分(i)及び成分(ii)と組み合わせてもよい分子の他の分類は、JAK/STAT阻害剤、又は他の抗炎症性及び/若しくは免疫抑制性の剤を含む。これら剤の非網羅的なリストは、グルココルチコイド、NSAIDS、シクロホスファミド、ニトロソ尿素、葉酸類似物、プリン類似物、ピリミジン類似物、メトトレキサート、アザチオプリン、メルカプトプリン、シクロスポリン、ミリオシン、タクロリムス、シロリムス、ミコフェノール酸誘導体、フィンゴリモド及び他のスフィンゴシン-1-リン酸受容体調節因子;炎症促進性サイトカイン及び炎症促進性サイトカイン受容体、T細胞受容体、インテグリン等の標的に対するモノクローナル及び/又はポリクローナルな抗体を含むが、これらに限定されない。成分(i)及び成分(ii)と組み合わせてもよい分子の他の分類は、成分(i)及び成分(ii)の曝露又は効果を潜在的に強化することができる分子を含む。
【0097】
別の実施態様では、成分(i)及び成分(ii)は、唯一の活性成分として投与される。
【0098】
更なる実施態様では、本発明は、特に成分(i)及び成分(ii)を含有する医薬組成物又はキットオブパーツの形態の本発明の組み合わせを投与することを含む、胆汁うっ滞性又は線維性の疾患を処置する方法を提供する。
【0099】
本発明は、限定されることなく、以下の実施例を参照して更に説明される。
【0100】
実施例
材料及び方法
化合物は、ジメチルスルホキシド(DMSO、Flukaカタログ番号41640)に溶解させた。ニタゾキサニド(INTERCHIM カタログ番号RQ550U)、チゾキサニド(INTERCHIM カタログ番号RP253)、更に、ピタバスタチン(INTERCHIM カタログ番号15414)、シンバスタチン(Sigma Aldrich カタログ番号S6196)、フルバスタチン(Sigma Aldrich カタログ番号Y0001090)、プラバスタチン(Selleckchem カタログ番号S3036)、ロスバスタチン(Selleckchem カタログ番号S2169)、ロバスタチン(Selleckchem カタログ番号S4223)、アトルバスタチン(Sigma Aldrich カタログ番号PZ0001)は商業的に入手した。
【0101】
hHSC培養
ヒト初代肝星細胞(hHSC)(Innoprot)を、2% ウシ胎仔血清(FBS、ScienCell カタログ番号0010)、1% ペニシリン/ストレプトマイシン(ScienCell カタログ番号0503)、及び星細胞増殖補給剤(SteCGS; ScienCell カタログ番号5352)を補給したSTeCM培地(ScienCell カタログ番号5301)中で培養した。よりよく接着させるために細胞培養フラスコをポリ-L-リジン(Sigma カタログ番号P4707)でコーティングした。
【0102】
組成物の調製
2成分組み合わせマトリクス(NTZ/スタチン又はTZ/スタチン)
チェッカーボードマトリクスを採用した。NTZ又はTZ及びスタチンの原液を、96ウェルプレートの横列(スタチン)及び縦列(NTZ又はTZ)において5点系列でDMSOによって連続希釈した。6番目の点には、化合物を含まない100% DMSOを充填した。続いて、全ての単剤濃度の1:1混合によって6×6組み合わせマトリクスを作成した。各化合物の5つの試験濃度は、TGF-β1で刺激したHSCモデルにおけるα-SMA含量を測定することによって得られる、単剤としての各化合物のそれぞれのIC50に基づいて選択した。次いで、2倍及び4倍高い及び低い濃度を選択した。
【0103】
TGF-β1刺激HSCモデルにおいてそれぞれ不活性及び弱い阻害剤であることが見出されたプラバスタチン及びロスバスタチンについては、用量範囲を任意に選択した(4μMで出発して2倍連続希釈された5つの用量)。
【0104】
TGF-β1及び化合物の処理によるhHSCの活性化
ヒト初代肝星細胞(hHSC)(Innoprot)を、上記の通り標準的な条件下で培養した。続いて、ELISAによってα-SMAを測定するために、細胞を2×104細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートにプレーティングした。次の日、細胞培養培地を除去し、そして、細胞をPBS(Invitrogen カタログ番号14190)で洗浄した。hHSCを無血清かつSteCGS不含培地中で24時間飢餓状態にした。NTZ、スタチン(ピタバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチン、プラバスタチン)、及びそれぞれのNTZ/スタチンの組み合わせによる処理、また、TZ、スタチン(ピタバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、プラバスタチン)、及びそれぞれの組み合わせTZ/スタチンについては、血清除去したhHSCを該化合物と共に1時間プレインキュベートし、続いて、線維化促進性刺激TGFβ1(PeproTech カタログ番号100-21、1ng/mL)を添加し、無血清かつSteCGS不含培地中で更に48時間インキュベートした。
【0105】
処理の最後に、細胞をPBS(Invitrogen、カタログ番号14190)で洗浄した後、溶解バッファ(CelLyticTM MT試薬;Sigma #C3228) 50μLを添加した。次いで、プレートシェーカーを使用して氷上で30分間プレートをインキュベートした後、-20℃で保存した。
【0106】
α-SMAのELISA
サンドイッチELISAを使用してα-SMAのレベルを測定した。簡潔に述べると、まず、ELISAプレートのウェルを4℃で一晩捕捉抗体(マウスモノクローナル抗ACTA2、Abnova)でコーティングした。PBS+0,2% Tween 20で3回洗浄した後、PBS+0.2% BSAからなるブロッキング溶液を1時間にわたって添加し、続いて、別の洗浄サイクルに供した。室温で2時間捕捉抗体に結合させるために、細胞溶解物をウェルに移した。洗浄手順後、検出抗体(ビオチン化マウスモノクローナル抗ACTA2、Abnova)を室温で2時間にわたって添加し、続いて、3回洗浄した。検出するために、まず、HRP標識ストレプトアビジン(R&D Systems カタログ番号DY998)を室温で30分間適用した。洗浄後、HRPの基質であるTMB(;BD、#555214)を添加し、そして、暗条件下、室温で7分間インキュベートした。酸化時に、TMBは水溶性青色反応生成物を形成し、これは硫酸を添加すると黄色になる(溶液停止)ので、分光計を用いて450nmにおける強度を正確に測定することができる。発色は、溶解物中に存在するα-SMAの量と正比例する。
【0107】
Bliss超過(EOB)法による相乗作用の判定
αSMA ELISAアッセイにおいて得られた値を、まず、TGF-β1対照に対する阻害率に変換した。次いで、分率(百分率を100で除したもの)に変換されたこれら阻害率を使用して、EOB(Bliss超過)を判定して薬物組み合わせの相乗効果を規定した。まず、予測Bliss相加性スコア(E)を以下の式によって決定した:
E=(A+B)-(A×B)(式中、A及びBは、所与の用量におけるNTZ(A)及び所与のスタチン(B)の0~1の範囲内の分率に変換された阻害率である)。Bliss予測と、同用量の組み合わせられたNTZ/スタチンで観察された阻害との間の差が「Bliss超過」スコアである。
- Bliss超過スコア=0は、組み合わせ処理が相加的(独立な経路の効果について予測される通り)であることを示し;
- Bliss超過スコア>0は、相加的よりも大きな活性を示し(相乗作用);そして、
- Bliss超過スコア<0は、組み合わせが相加的よりも小さいことを示す(拮抗作用)。
【0108】
各製品の組み合わせ(NTZ+スタチン)について、全てのEOBを合計することによって追加の合計Blissスコアを計算した。
【0109】
相乗作用について検証するために、各NTZ/スタチン組み合わせについて最も高いEOBスコアに対応する実験値を棒グラフでプロットした。NTZ/スタチン又はTZ/スタチンと単剤との間で観察された差の有意性を、Sigma Plot 11.0ソフトウェアを使用してスチューデントt検定又はマンホイットニー順位和検定によって推定した。[*:p<0.05;**:p<0.01;***:p<0.001]。
【0110】
CCl4誘発性肝線維症におけるNTZ/SIMVA組み合わせの相乗的処置効果の評価
CCl4-誘発性肝損傷のラットモデルにおいてNTZ/SIMVA組み合わせの相乗的処置効果を評価した。
【0111】
OFA S;Dawleyラット(初期体重250~275g)をその体重に従って5群に無作為化し、そして、3週間処理した。ラットにオリーブ油(対照群)又はオリーブ油に乳化させたCCl4(CCl4:オリーブ油 1:2v/v、最終CCl4濃度:2mL/kg)を週2回腹腔内注入した。同時に、オリーブ油注入群を対照飼料で飼育し、一方、CCl4注入群を対照飼料又は化合物を補給した飼料で飼育した。30mg/kg/日 NTZ、10mg/kg/日 SIMVA、又は30/10mg/kg/日 NTZ/SIMVAの曝露にそれぞれ対応する3つの投薬計画を調製した。処理の最後の日、6時間の絶食期間後にラットを屠殺した。血液サンプルを回収し、そして、生化学的分析のために血清を単離した。
【0112】
DDC誘発性胆汁うっ滞モデルにおけるNTZ/SIMVA組み合わせの相乗的処置効果の評価:
NTZ/SIMVA組み合わせの相乗的処置効果をDDC誘発性胆汁うっ滞モデルにおいてアッセイする。
【0113】
0,1%DDC補給飼料、又は100mg/kg/日 NTZ若しくは10mg/kg/日 SIMVAの曝露にそれぞれ対応する0,1% DDC補給飼料、又は標準的なマウス飼料(Ssniff)をC57BL/6マウスに8週間給餌する。処理の最後の日、6時間の絶食期間後にマウスを屠殺する。生化学的分析のために血液サンプルを採取し、そして、生化学的及び組織学的な試験のために迅速に肝臓を摘出する。
【0114】
慢性CCl4誘発性肝線維症モデルにおけるNTZ/SIMVA組み合わせの相乗的処置効果の評価
9週齢のC57BL/6マウスを対照飼料又はNTZを補給した飼料で6週間飼育する。それぞれ30若しくは100mg/kg/日 NTZ、又は3若しくは10mg/kg/日 SIMVA、又は30/3;100/3;30/10、100/10mg/kg/日 NTZ/SIMVA組み合わせの曝露にそれぞれ対応する、NTZ及び/又はSIMVAを含有する8つの飼料投薬計画を調製する。同時に、そして、合計6週間にわたって、強制経口飼養によってオリーブ油に溶解させたCCl4又はビヒクルでマウスを週3回処理する。CCl4の量は、0.875mL/kgから2.5mL/kgに次第に増加させる。処理の最後の日、6時間の絶食期間後にマウスを屠殺する。血液サンプルを回収し、そして、生化学的分析のために血清を単離する。生化学的、組織学的、及び発現の試験のために、迅速に肝臓を摘出する。
【0115】
BDLモデルにおけるNTZ/SIMVA組み合わせの相乗的処置効果の評価
肝外胆汁うっ滞、続いて肝線維症を誘発するために、ラットに対して外科的胆管結紮を行う。短い回復期の後、30若しくは100mg/kg/日 NTZ、3若しくは10mpk SIMVA、又は30/3若しくは100/10mg/kg/日NTZ/SIMVA組み合わせで1又は2週間動物を処理する。処理の最後の日、6時間の絶食期間後にマウスを屠殺する。血液サンプルを回収し、そして、生化学的分析のために血清を単離する。生化学的、組織学的、及び発現の試験のために、迅速に肝臓を摘出する。
【0116】
全胆汁酸の血漿濃度の測定
Daytona自動分析機(Randox、カタログ番号BI 3863)に適切なRandoxキットを使用して全胆汁酸(TBA)の血漿濃度を決定した。チオ-NADの存在下において、酵素3-α ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(3-α HSD)は、胆汁酸を3-ケトステロイド及びチオ-NADHに変換する。この反応は可逆性であり、そして、3-α HSDは、3-ケトステロイド及びチオ-NADFH-を胆汁酸及びチオ-NADに変換することができる。過剰のNADHの存在下では、酵素サイクリングが効率的に生じ、そして、405nmにおける吸光度の特異的変化を測定することによって、チオ-NADHの形成速度を決定する。結果をμmol/Lで表す。
【0117】
結果及び結論:
分化した筋線維芽細胞の異常な存続は、多くの線維性疾患の特徴である。肝損傷後、休止状態のHSCは、(α-SMA)陽性筋線維芽細胞への分化を特徴とする活性化プロセスを受ける。新規抗線維化分子を見出す試みにおいて、線維化促進性サイトカインTGF-β1で活性化されたヒトHSCのモデルにおいて、FDAに承認されている薬物のライブラリを表現型でスクリーニングした。線維性病変の特徴であるα-SMAのレベルを使用して、薬物の線維化プロセスに干渉する能力を評価した。スクリーニングキャンペーンによってニタゾキサニド(NTZ)が同定され、これはTGFβ誘導性HSCにおいてα-SMAのレベルを用量依存的に低下させた。全体的にみて、NTZは、0.1~3μMを含むIC
50を示した(
図1A)。
【0118】
NTZはその活性代謝物チゾキサニド(TZ)に急速に加水分解されることが知られている(Broekhuysen, Stockis et al., 2000)ので、この代謝物についてもHSCにおけるその抗線維化活性について評価した。TZは、親薬物と同様のプロファイルを示し、IC
50は0.1~3μMを含んでいた(
図1B)。興味深いことに、全てではないが特定のスタチンもスクリーニングキャンペーン中に同定された。TGFβ誘導性HSCモデルにおいて実施された用量応答分析(
図2)から、7つの試験されたスタチンがその抗線維化特性に関して等価ではないことが明らかになった。
【0119】
典型的には、最も強力な抗線維化スタチンであるピタバスタチン(
図2A)及びフルバスタチン(
図2B)は1μM未満のIC
50を呈したが、シンバスタチン(
図2C)、アトルバスタチン(
図2D)、ロバスタチン(
図2E)のIC
50値は、一般的に、1~3μMに含まれていた。ロスバスタチン(
図2F)は、有意な抗線維化活性が明らかになったが、最も高い用量においてのみであり、そして、プラバスタチン(
図2G)は、試験された用量において唯一不活性であることが見出された。様々なスタチンファミリーのメンバーの抗線維化特性がその脂質低下能に関連しているとは考えられないことは注目に値する。例えば、HMG_CoAレダクターゼ阻害について最も強力なスタチンであると考えられるロスバスタチン(IC50=5.4nM;(McKenney, 2003)は、抗線維化特性が弱いことが明らかになった。
【0120】
スタチンとNTZ又はTZとの組み合わせが相乗的に線維症を減少できるかどうかを評価するために、TGFβ誘導性HSCにおいて組み合わせマトリクス実験を実施した。簡潔に述べると、NTZ又はTZ及びスタチンの溶液を、スタチン/NTZ又はスタチン/TZの比の大きなパネルを網羅する36個の組み合わせマトリクスを作成するチェッカーボードフォーマットで連続希釈した。まず、Bliss超過スコアを計算することによって相乗作用を判定した。その相乗性に基づいて様々なスタチンを順位付けするために、各スタチンについて得られたEOBスコアの合計も計算した。これら実験から、NTZは全てのスタチンと相乗作用することができるが、同じ効力で活性化HSCにおけるα-SMA産生を低減する訳ではないことが明らかになった。
【0121】
最良の相乗作用は、NTZとピタバスタチン(合計EOBスコア337)との組み合わせで得られ、続いて、シンバスタチン(合計EOBスコア255)、フルバスタチン(合計EOBスコア141)、ロバスタチン(合計EOBスコア91)、プラバスタチン(合計EOBスコア88)、及びアトルバスタチン(合計EOBスコア73)である(
図4B、5B、6B、7B、及び8B)。幾つかのNTZ/ROSU比のみで正のEOBスコアが得られ(データ不図示)、これは相乗作用を示すが、他のNTZ/スタチンの組み合わせと比較して弱かった。相乗作用について検証するために、各NTZ/スタチン組み合わせについて高いEOBスコアに対応する実験値を棒グラフでプロットした(
図4C、5C、6C、7C、及び8C)。
【0122】
これらグラフは、NTZとピタバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、アトルバスタチン、及びプラバスタチンとの組み合わせが、最高の単剤(NTZ又はスタチン)と比較して統計的に有意な優れた抗線維化効果を示すことを表す。最も印象的な例は、単剤が最適以下の用量では弱い抗線維化活性(~10~20%阻害)をもたらすが、NTZと組み合わせたときには約60~70%のα-SMA阻害に達するピタバスタチン、シンバスタチン、又はフルバスタチンで表される。NTZとの最良の相乗作用が明らかになったスタチン、すなわち、ピタバスタチン、シンバスタチン、及びフルバスタチンと組み合わせて、NTZの活性代謝物であるチゾキサニドについても評価した。NTZで観察されたように、TZ代謝物もこれら3つのスタチンと相乗作用した(フルバスタチンの例を
図9に示す)。
【0123】
これらの抗線維化特性に加えて、30mg/kg/日 NTZと10mg/kg/日 シンバスタチンとの組み合わせが相乗作用して、CCl4誘発性肝損傷モデルにおいて血中胆汁酸のレベル変化が発生するのを防ぐことが見出された(
図10)。結論として、出願人は、式(I)の化合物とスタチンとの組み合わせの予想外の抗胆汁うっ滞及び抗線維化の活性を見出した。これら結果は、式(I)の化合物とスタチンとの組み合わせが相乗作用し得、そして、複数の種類の胆汁うっ滞性及び線維性の疾患において処置効果を提供し得ることを示唆する。
【0124】