(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】ペグ化バイオアクティブペプチド及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 14/60 20060101AFI20220902BHJP
A61K 38/25 20060101ALI20220902BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20220902BHJP
A61P 5/06 20060101ALI20220902BHJP
C12N 15/18 20060101ALN20220902BHJP
【FI】
C07K14/60 ZNA
A61K38/25
A61K47/60
A61P5/06
C12N15/18
(21)【出願番号】P 2018555634
(86)(22)【出願日】2017-04-18
(86)【国際出願番号】 CA2017050475
(87)【国際公開番号】W WO2017181277
(87)【国際公開日】2017-10-26
【審査請求日】2020-04-17
(32)【優先日】2016-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519367625
【氏名又は名称】グリフォン・ファーマシューティカルズ・アンテルナシオナル・エスアー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナ・ジー・ペリ
【審査官】山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】Advanced Drug Delivery Reviews,2003年,55,p. 1279-1291
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
A61K
A61P
C12N
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
YaDAIFTAC(Peg-2K)YROVLAQLSAROALQDILSKN-NH
2(配列番号14)、
YaDAIFTAC(Peg-2K)YROVLAQLSAROALQDILS-(Har)-NH
2(配列番号18)、
YaDAIFTAC(Peg-2K)YROVLAQLSAROALQDILC(Peg-2K)RN-NH
2(配列番号20)、
YaDAIFTAC(Peg-2K)YROVLAQLSAROALC(Peg-2K)DILSRN-NH
2(配列番号21)、
若しくは
YaDAIFTAC(Peg-2K)YROVLAQLSAROC(Peg-2K)LQDILSRN-NH
2(配列番号22)
(配列中、aがD-Alaであり、OがL-オルニチン(Orn)であり、HarがL-ホモアルギニンであり、C(Peg-2K)が2kDaのPEGポリマーと結合したCysである)
の配列を有するペプチドを含む成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)アナログ、又はその薬学的に許容される
塩。
【請求項2】
YaDAIFTAC(Peg-2K)YROVLAQLSAROALQDILSKN-NH
2(配列番号14)
である、請求項1に記載のGHRHアナログ又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
YaDAIFTAC(Peg-2K)YROVLAQLSAROALQDILS-(Har)-NH
2(配列番号18)
である、請求項1に記載のGHRHアナログ又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
YaDAIFTAC(Peg-2K)YROVLAQLSAROALQDILC(Peg-2K)RN-NH
2(配列番号20)
である、請求項
1に記載のGHRHアナログ又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
YaDAIFTAC(Peg-2K)YROVLAQLSAROALC(Peg-2K)DILSRN-NH
2(配列番号21)
である、請求項
1に記載のGHRHアナログ又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
YaDAIFTAC(Peg-2K)YROVLAQLSAROC(Peg-2K)LQDILSRN-NH
2(配列番号22)
である、請求項
1に記載のGHRHアナログ又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか一項に記載のGHRHアナログ又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項8】
1つ又は複数の薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は希釈剤を更に含む、請求項
7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
対象において成長ホルモンの分泌を誘導するための、請求項
7若しくは
8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
対象において成長ホルモンの分泌を誘導するための医薬を調製するための、請求項1から
6のいずれか一項に記載のGHRHアナログ若しくはその薬学的に許容される塩又は請求項
7若しくは
8に記載の医薬組成物の使用。
【請求項11】
対象においてGH欠乏状態を治療、予防又は診断するための、請求項
7又は
8に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記GHRHアナログ又はその薬学的に許容される塩を0.1mg~10mgの一日用量で投与する、請求項
9又は
11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記GHRHアナログ又はその薬学的に許容される塩を、静脈内、経口、経皮、皮下、粘膜、筋肉内、鼻腔内又は肺経路によって投与する、請求項
9、
11及び
12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全容が参照により本明細書に組み込まれる、2016年4月19日に出願された米国仮出願第62/324,600号の優先権を主張するものである。
【0002】
本開示は、ポリエチレングリコールと結合したバイオアクティブペプチド及びその使用に関する。
【0003】
配列表の参照
37C.F.R.1.821(c)に準じ、2017年4月18日に作製され約26,000バイトのサイズを有する、「Sequence_Listing.txt」という名称のASCII準拠テキストファイルとして、配列表を本明細書と共に提出する。「Sequence_Listing.txt」という名称の前述のファイルの内容は、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
成長ホルモン放出因子(GRF又はGHRF)としても知られる、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)は、ニューロン支配脳下垂体前葉から分泌される44アミノ酸ペプチドであり、成長ホルモン分泌細胞からの(GH;ソマトトロピンとしても知られる)成長ホルモン分泌を誘導する。低効能生物活性がGHRH(1~21)において検出され得る(Lingら、1984a)が、GHRHペプチドの最小生理活性立体配座は完全長ペプチドの最初の29アミノ酸中に存在することは確認された(Frohmanら、1986a)。21アミノ酸より短いGHRHペプチドは不活性であることが分かった。GHは、直線的成長、筋肉、骨及び軟骨塊の増大、並びに脂肪塊の減少に関与する生理同化作用物質である。GH欠乏、又はGH分泌の低下は、子供の低身長、特に腹腔深部貯留脂肪の増加、及び心血管疾患リスクの増大と関連があることが知られている。
【0005】
GHRHの治療有用性は、タンパク質分解によるペプチドの不安定性によって損なわれる。GHRHはin vivoで、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)によるAla2-Asp3間(Frohmanら、1986b)並びに他のプロテアーゼによるArg11-Lys12及びLys12-Val13間における切断を介して、急速に不活性化される(Frohmanら、1989年)。タンパク質分解により安定状態のGHRHアナログを提供するため、アミノ酸置換、アミノ酸側鎖の環化、並びに合成ポリマー及び脂肪酸を用いた修飾を含めた、様々な手法が使用されている。
【0006】
本明細書の記載では幾つかの文書に言及し、それらの内容はその全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】US4914189
【文献】US20090023646
【文献】US20060128615
【文献】US8435945
【文献】US8481489
【文献】US7316997
【文献】US8361964
【文献】US5023322
【文献】US4689318
【文献】US4659693
【文献】US6551996
【文献】US7256258
【文献】US20030148948
【文献】US5084442
【文献】US5137872
【文献】US5846936
【文献】US4622312
【文献】US5696089
【文献】US20050059605
【文献】US5091365
【文献】US5847066
【文献】US9096684
【文献】US5792747
【文献】US20140058068
【文献】US20110288011
【文献】PCT公開WO95/27496
【文献】US7368126B2
【文献】WO2009/009727
【文献】WO2006/042408
【文献】WO2005/037307
【文献】WO2004/105789
【非特許文献】
【0008】
【文献】IRL Oxford University Press 1989年により公開されたE.Atherton及びR.C.SheppardによるSolid Phase Peptide Synthesis:A Practical Approach
【文献】Roweら、Handbook of Pharmaceutical Excipients、Pharmaceutical Press、第6版、2009年
【文献】European J.Biochem.、1984年、138、9~37頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、ポリエチレングリコール(PEG)と結合したバイオアクティブペプチド、例えば1つ又は複数の結合PEG成分を有するGHRHアナログ、及びその使用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様では、式(I)(配列番号1)に記載の配列
X1-X2-Asp-Ala-Ile-Phe-Thr-X8-X9-Tyr-X11-X12-Val-Leu-X15-Gln-Leu-X18-Ala-X20-X21-X22-Leu-X24-X25-X26-X27-X28-X29-X30 (I)
(式中、
X1がTyr、His、N-メチルTyr又はデスアミノTyrであり、
X2がAla、D-Ala、Ser又はαアミノイソ酪酸(Aib)であり、
X8がAsn、Asp、Ala、Gln、Ser又はAibであり、
X9がSer、Asp、Ala又は約5kDa以下のPEGポリマーと結合したCysであり、
X11がArg又はL-ホモアルギニン(Har)であり、
X12がLys又はL-オルニチン(Orn)であり、
X15がGly又はAlaであり、
X18がSer又はAlaであり、
X20がArg又はHarであり、
X21がLys又はOrnであり、
X22がLeu、Val、Ala又は約5kDa以下のPEGポリマーと結合したCysであり、
X24がGln又は約5kDa以下のPEGポリマーと結合したCysであり、
X25がAsp又はAlaであり、
X26がIle又はAlaであり、
X27がMet、Leu又はノルロイシンであり、
X28がSer、Ala又は約5kDa以下のPEGポリマーと結合したCysであり、
X29がLys、Arg、Orn、Har又はアグマチンであり、
X30がNH2基又はAsn-NH2であり、
X9、X22、X24及びX28の少なくとも1つが約5kDa以下のPEGポリマーと結合したCysである)
を有するペプチドを含む成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)アナログ、
又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0011】
一実施形態では、X9は約5kDa以下のPEGポリマーと結合したCysである。別の実施形態では、X22は約5kDa以下のPEGポリマーと結合したCysである。別の実施形態では、X24は約5kDa以下のPEGポリマーと結合したCysである。更に別の実施形態では、X28は約5kDa以下のPEGポリマーと結合したCysである。
【0012】
一実施形態では、X9とX22がそれぞれ独立して約5kDa以下のPEGポリマーと結合したCysである。別の実施形態では、X9とX24がそれぞれ独立して約5kDa以下のPEGポリマーと結合したCysである。更に別の実施形態では、X9とX28がそれぞれ独立して約5kDa以下のPEGポリマーと結合したCysである。
【0013】
幾つかの実施形態では、X1はTyrである。幾つかの実施形態では、X2はAla又はD-Alaである。一実施形態では、X2はD-Alaである。幾つかの実施形態では、X8はAlaである。幾つかの実施形態では、X9はSerである。幾つかの実施形態では、X11はArg又はHarであり、一実施形態では、X11はArgである。幾つかの実施形態では、X12はLys又はOrnであり、一実施形態では、X12はOrnである。幾つかの実施形態では、X15はAlaである。幾つかの実施形態では、X18はSerである。幾つかの実施形態では、X20はArg又はHarであり、一実施形態では、X20はArgである。幾つかの実施形態では、X21はLys又はOrnであり、一実施形態では、X21はOrnである。幾つかの実施形態では、X22はAlaである。幾つかの実施形態では、X24はGlnである。幾つかの実施形態では、X25はAspである。幾つかの実施形態では、X26はIleである。幾つかの実施形態では、X27はLeuである。幾つかの実施形態では、X28はSerである。幾つかの実施形態では、X29はLys、Orn又はHarであり、一実施形態では、X29はLysであり、別の実施形態では、X29はHarである。幾つかの実施形態では、X30はAsn-NH2である。
【0014】
式(I)の幾つかの実施形態では、本明細書に記載する約5kDa以下のPEGポリマーは約2kDaのPEGポリマーである。
【0015】
幾つかの実施形態では、本明細書で提供するGHRHアナログは、
YaDAIFTAC(Peg-5K)YROVLAQLSAROALQDILSZ(配列番号2)、
YaDAIFTASYROVLAQLSAROC(Peg-5K)LQDILSZ(配列番号3)、
YaDAIFTASYROVLAQLSAROALC(Peg-5K)DILSZ(配列番号4)、
YaDAIFTASYROVLAQLSAROALQDILC(Peg-5K)Z(配列番号5)、
YaDAIFTAC(Peg-5K)YROVLAQLSAROC(Peg-5K)LQDILSZ(配列番号6)、
YaDAIFTAC(Peg-5K)YROVLAQLSAROALC(Peg-5K)DILSZ(配列番号7)、若しくは
YaDAIFTAC(Peg-5K)YROVLAQLSAROALQDILC(Peg-5K)Z(配列番号8)
(配列中、aがD-Alaであり、OがL-オルニチン(Orn)であり、C(Peg-5K)が約5kDa以下のPEGポリマーと結合したCysであり、ZがLys、Arg、Har又はアグマチンである)
であるペプチド、又はその薬学的に許容される塩を含む。幾つかの実施形態では、GHRHアナログは、配列番号2~8のいずれか1つに記載の配列を有するペプチドを含み、幾つかの実施形態では、このようなアナログは、Zと結合した1つ又は複数の追加的アミノ酸を更に含む。
【0016】
幾つかの実施形態では、本明細書で提供するGHRHアナログは、
YaDAIFTASYROVLAQLSAROALQDILC(Peg-2K)KN-NH2(配列番号9)、
YaDAIFTASYROVLAQLSAROALC(Peg-2K)DILSKN-NH2(配列番号10)、
YaDAIFTASYROVLAQLSAROC(Peg-2K)LQDILSKN-NH2(配列番号11)、
YaDAIFTASYROVLAQLSC(Peg-2K)ROALQDILSKN-NH2(配列番号12)、
YaDAIFTASYROVLC(Peg-2K)QLSAROALQDILSKN-NH2(配列番号13)、
YaDAIFTAC(Peg-2K)YROVLAQLSAROALQDILSKN-NH2(配列番号14)、
YaDAIFTC(Peg-2K)SYROVLAQLSAROALQDILSKN-NH2(配列番号15)、
YaDAIFTASYROVLAQLSAROALQDC(Peg-2K)LSKN-NH2(配列番号16)、
YaDAIFTASYROVLAC(Peg-2K)LSAROALQDILSKN-NH2(配列番号17)、
YaDAIFTAC(Peg-2K)YROVLAQLSAROALQDILS-(Har)-NH2(配列番号18)、
YaDAIFTAC(Peg-2K)YROVLAQLSAROALQDILSRNC(Peg-2K)-NH2(配列番号19)、
YaDAIFTAC(Peg-2K)YROVLAQLSAROALQDILC(Peg-2K)RN-NH2(配列番号20)、
YaDAIFTAC(Peg-2K)YROVLAQLSAROALC(Peg-2K)DILSRN-NH2(配列番号21)、
YaDAIFTAC(Peg-2K)YROVLAQLSAROC(Peg-2K)LQDILSRN-NH2(配列番号22)、
YaDAIFTAC(Peg-5K)YROVLAQLSAROALQDILS(Har)-NH2(配列番号23)、若しくは
YaDAIFTAC(Peg-40K)YROVLAQLSAROALQDILS(Har)-NH2(配列番号24)
(配列中、aがD-Alaであり、OがL-オルニチン(Orn)であり、C(Peg-2K)が約2kDaのPEGポリマーと結合したCysであり、C(Peg-5K)が約5kDa以下のPEGポリマーと結合したCysであり、C(Peg-40K)が約40kDaのPEGポリマーと結合したCysであり、HarがL-ホモアルギニンである)
又はその薬学的に許容される塩である。
【0017】
幾つかの実施形態では、GHRHアナログ又はその塩は、本明細書で定義する配列番号1~11、14、及び18~24のいずれか1つに記載の配列を有するペプチド、又はその薬学的に許容される塩を含む。
【0018】
幾つかの実施形態では、GHRHアナログ又はその塩は、本明細書で定義する配列番号1~11、14、及び18~24のいずれか1つに記載の配列を有するペプチド、又はその薬学的に許容される塩からなる。
【0019】
幾つかの実施形態では、本明細書で提供するGHRHアナログは、配列番号9、10、11、14、18、20、21、及び22のいずれか1つ、又はその薬学的に許容される塩である。
【0020】
幾つかの実施形態では、本明細書で提供するGHRHアナログ又はその塩は、(i)アミノ末端修飾基、(ii)カルボキシ末端修飾基、又は(iii)(i)と(ii)の両方を更に含む。一実施形態では、カルボキシ末端修飾基はNH2である。
【0021】
更なる態様では、本明細書で提供するGHRHアナログ又はその塩を含む医薬組成物を提供する。一実施形態では、医薬組成物は、1つ又は複数の薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は希釈剤を更に含む。
【0022】
更なる態様では、それを必要とする対象において成長ホルモンの分泌を誘導するための方法であって、本明細書に記載するGHRHアナログ若しくはその塩又は本明細書に記載する医薬組成物を有効量、対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0023】
更なる態様では、それを必要とする対象において成長ホルモンのレベルを上昇させるための方法であって、本明細書に記載するGHRHアナログ若しくはその塩又は本明細書に記載する医薬組成物を有効量、対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0024】
更なる態様では、対象において成長ホルモンの分泌を誘導するための、本明細書に記載するGHRHアナログ若しくはその塩又は本明細書に記載する医薬組成物の使用を提供する。
【0025】
更なる態様では、対象において成長ホルモンのレベルを上昇させるための、本明細書に記載するGHRHアナログ若しくはその塩又は本明細書に記載する医薬組成物の使用を提供する。
【0026】
更なる態様では、対象において成長ホルモンの分泌を誘導するため、又は成長ホルモンのレベルを上昇させるための医薬を調製するための、本明細書に記載するGHRHアナログ若しくはその塩又は本明細書に記載する医薬組成物の使用を提供する。
【0027】
更なる態様では、対象における成長ホルモンの分泌の誘導又は成長ホルモンのレベルの上昇において使用するための、本明細書に記載するGHRHアナログ若しくはその塩又は本明細書に記載する医薬組成物を提供する。
【0028】
更なる態様では、対象において成長ホルモンの分泌を誘導するため又は成長ホルモンのレベルを上昇させるための医薬を調製するための、本明細書に記載するGHRHアナログ若しくはその塩又は本明細書に記載する医薬組成物を提供する。
【0029】
更なる態様では、それを必要とする対象においてGH欠乏状態を治療、予防又は診断するための方法であって、本明細書に記載するGHRHアナログ若しくはその塩又は本明細書に記載する医薬組成物を有効量、対象に投与する工程を含む方法を提供する。本明細書で提供する方法を使用して治療、予防及び/又は診断することができるGH欠乏状態の非制限的な例には、HIV関連脂肪細胞肥大化、HIV関連異形成症/代謝異常症候群(HADDS)、成長ホルモン欠乏症、視床下部GH-RH欠乏症、全身成長発達遅滞、下垂体性小人症、成長遅延、創傷又は骨癒合、骨粗しょう症、ターナー症候群、家族性低身長、慢性腎不全及び重度成長遅延、子宮内胎児発育遅延、下垂体又は視床下部病変の放射線療法後のGH欠乏症、グルココルチコイドを用いた正常以下の成長率関連の長期治療、及び代謝異常症候群又はHIV関連脂肪細胞肥大化関連の腹部肥満症がある。
【0030】
一実施形態では、それを必要とする対象において成長ホルモン欠乏症を診断するための方法であって、本明細書に記載するGHRHアナログ若しくはその塩又は本明細書に記載する医薬組成物を有効量、対象に投与する工程、及び成長ホルモン応答を測定する工程を含む方法を提供する。
【0031】
一実施形態では、それを必要とする対象においてHIV関連リポジストロフィーを治療するための方法であって、本明細書に記載するGHRHアナログ若しくはその塩又は本明細書に記載する医薬組成物を有効量、対象に投与する工程を含む方法を提供する。幾つかの実施形態では、この治療は内臓脂肪蓄積の治療を含む。幾つかの実施形態では、対象に抗ウイルス療法を施す。
【0032】
一実施形態では、それを必要とする対象において下垂体性小人症又は成長遅延を治療するための方法であって、本明細書に記載するGHRHアナログ若しくはその塩又は本明細書に記載する医薬組成物を有効量、対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0033】
一実施形態では、それを必要とする対象において創傷又は骨癒合を治療するための方法であって、本明細書に記載するGHRHアナログ若しくはその塩又は本明細書に記載する医薬組成物を有効量、対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0034】
一実施形態では、それを必要とする対象において骨粗しょう症を治療するための方法であって、本明細書に記載するGHRHアナログ若しくはその塩又は本明細書に記載する医薬組成物を有効量、対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0035】
一実施形態では、それを必要とする対象においてタンパク質同化作用を改善するための方法であって、本明細書に記載するGHRHアナログ若しくはその塩又は本明細書に記載する医薬組成物を有効量、対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0036】
一実施形態では、それを必要とする対象において脂肪分解効果を誘導するための方法であって、本明細書に記載するGHRHアナログ若しくはその塩又は本明細書に記載する医薬組成物を有効量、対象に投与する工程を含む方法を提供する。幾つかの実施形態では、対象は臨床的肥満症に罹患している。
【0037】
一実施形態では、それを必要とする対象においてHIV関連異形成症/代謝異常症候群(HADDS)を治療するための方法であって、本明細書に記載するGHRHアナログ若しくはその塩又は本明細書に記載する医薬組成物を有効量、対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0038】
本明細書で提供する方法及び使用の幾つかの実施形態では、有効量の本明細書に記載するGHRHアナログ若しくはその塩又は本明細書に記載する医薬組成物を対象に投与する。
【0039】
本発明をよりよく理解し、どのようにして本発明を実施できるかを更に明確に示すために、例えば、本発明の実施形態による態様及び特徴を例証する添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】第8の位置(アナログ7-三角形)、第9の位置(アナログ6-四角形)及び第28の位置(アナログ1-円形)にPEG2K鎖を含有するペプチドを投与した後の時間に対する成長ホルモン分泌の刺激を示すグラフである。
【
図2】第9の位置にPEG2K鎖(アナログ10-三角形)、第9の位置にPEG5K鎖(アナログ15-円形)及び第9の位置にPEG40K鎖(アナログ16-四角形)を含有するペプチドを投与した後の時間に対する成長ホルモン分泌の刺激を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
GHRH(又はGRF又はGHRF)は成長ホルモン放出ペプチド又は成長ホルモン放出ホルモンを指す。この視床下部ホルモンは44アミノ酸ペプチドであり、GHRHの生理活性断片は29アミノ酸ペプチド、GHRH1~29である。したがって完全長GHRH1~44と生理活性断片GHRH1~29は、GHRH1~44中の位置30~44に対応する配列が異なる。
【0042】
(GHRH1~44とも呼ばれる)天然ヒトGHRHは以下の構造を有する:
YADAIFTNSYRKVLGQLSARKLLQDIMSRQQGESNQERGARARL-アミド(配列番号26)。
【0043】
GHRH1~29は以下の構造を有する:
YADAIFTNSYRKVLGQLSARKLLQDIMSR-アミド(配列番号25)。
【0044】
天然ヒトGHRHの位置30~44に対応する配列は以下の配列である:
QQGESNQERGARARL(配列番号27)。
【0045】
GHRH1~29とGHRH1~44の間の中間型、例えば前述の位置30~44に対応する配列(配列番号27)の最初の14アミノ酸(幾つかの実施形態において、最初の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14連続アミノ酸)の1つ又は複数のアミノ酸をそのC末端に加えたGHRH1~29もGHRH活性を有する。本明細書に記載する生理活性1~29セグメントを含む全てのGHRHペプチド、又はそれらの変異体には、本明細書に記載する改善及び修飾が施される。
【0046】
臨床上有用な治療剤は、2つの完全長ペプチド、例えばN末端にN-ヘキセノイル修飾を有しテサモレリン又はEgrifta(登録商標)として商業的に公知のN-ヘキセノイル-GHRH(1~44)-アミド、及びサーモレリン又はGEREF(登録商標)として商業的に公知であり、HIV関連脂肪細胞肥大化の治療と成長ホルモン欠乏症の診断にそれぞれ処方されている29アミノ酸のバイオアクティブペプチドGHRH(1~29)-アミドから誘導されている。GHRHの様々な修飾が研究されている(例えば、Campbellら、1991、1992、1994及び1997年、Cerviniら、1998年、Lingら、1984a及び1984b、Kubiakら、1993年、Satoら、1987及び1990年、Felixら、1988及び1995年、Hodateら、1986年、Bokserら、1990年、Zarandiら、1990、1992及び1994年、Kovacsら、1988年、Murphyら、1998年、Freidmanら、1991年、並びにUS特許/公開出願US4914189、US20090023646、US20060128615、US8435945、US8481489、US7316997、US8361964、US5023322、US4689318、US4659693、US6551996、US7256258、US20030148948、US5084442、US5137872、US5846936、US4622312、US5696089、US20050059605、US5091365、US5847066、US9096684、US5792747、US20140058068、及びUS20110288011を参照)。前述の刊行物及び特許中に記載されたGHRHペプチドは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0047】
特定位置におけるGHRHペプチドのペグ化は研究されている。例えば、N末端(Tyr1)、Lys12、Lys21又は(GGC-リンカーを使用した)C末端におけるペグ化が研究されており、内部位置、Lys12及びLys21におけるPEG鎖の結合によって効能は低下したが、生物学的半減期は増大したことが分かった(Campbellら、1997年、Felixら、1995年、Younら、2007年、Luら、1994年、Digilioら、2003年、Luら、1993年、Espositoら、2003年)。Asp8又はLys12におけるPEG鎖(2K、5K又は10K)は生物学的効能を低下させた。カルボキシ末端のペグ化は、分子量(MW)と無関係に、生物学的活性を増大させた(Felixら、1995)。したがって、N末端中のほぼ全ての残基がGHRH受容体内で密接するという事実のため、GHRH分子のN末端半分における多量のPEG鎖での共有結合修飾によって、その生物学的活性が増大し得ると予想することは妥当であった。GHRH受容体のリガンド結合の現在認められている考えを鑑みて、本明細書で提供するように、GHRHの第8のアミノ酸ではなく第9のアミノ酸におけるペグ化によって、生物学的効能があるペプチドが生じたことが分かったのは驚きであった。
【0048】
GHRH1~29ペプチド内のペグ化に関する新規の位置を検索するため、本発明者らは、特定の新規アミノ酸位置でのPEG成分を用いたGHRHの共有結合修飾により新規のGHRHアナログを開発した。ポリエチレングリコール(PEG)は、種々の分子量(例えば、200~50,000kDa以上)で工業生産されるエチレングリコールのポリマーを指す。このような修飾アナログは、適切基反応性試薬で修飾することができる側鎖基を有するアミノ酸を用いた、GHRH中の特定アミノ酸の置換によって調製された。例えば、Cys側鎖はチオール反応性物質で修飾することができ、又はLys側鎖はアミン反応性物質で修飾することができる。例えば、1つ又は複数のCys残基による置換と、それに続くチオール反応性マレイミド-PEGとの反応によって、1つ又は複数のCys置換がありCys側鎖においてPEGで共有結合修飾されたGHRHアナログが生じる。本明細書で記載するように、GHRH1~29(即ち、最初の29アミノ酸を含有し生物学的活性を保持する切断型のGHRH)を使用し、位置8、9、15、16、19、22、24、26、28及び30における、このような置換及びPEG修飾を研究した(後者の場合GHRH1~29のC末端におけるアミノ酸(例えばCys)の付加を表し、その側鎖はPEGにより修飾され、PEG修飾C末端残基を有する30アミノ酸のGHRHアナログが生じる)。本明細書の実施例中に記載したように、(位置8、9、15、16、19、22、24、26、28及び30において)置換されたCysペプチドは、固相ペプチド合成を使用し合成によって生成し、精製しマレイミド-PEG(2000MW)と反応させた。ペグ化ペプチドを精製し、凍結乾燥させ、更なる分析を施した。
【0049】
本明細書で提供するのは、PEG修飾GHRHであるGHRHアナログ又はその活性断片及び/又はその変異体、例えば1つ又は複数の共有結合PEG成分を含むGHRH又はその活性断片及び/又はその変異体である。これらのGHRHアナログはGHRH受容体(GHRHr)発現細胞に対するアゴニスト活性を示し、動物モデルにおいてGH分泌を誘導する。用語「GHRH」(成長ホルモン放出ホルモン)と「GRF」(成長ホルモン放出因子)は、本明細書では同義で使用する。同様に、用語「GHRH受容体」、「GHRHr」、「GRF受容体」及び「GRFr」は、本明細書では同義で使用する。
【0050】
一態様では、式(I)(配列番号1)に記載の配列
X1-X2-Asp-Ala-Ile-Phe-Thr-X8-X9-Tyr-X11-X12-Val-Leu-X15-Gln-Leu-X18-Ala-X20-X21-X22-Leu-X24-X25-X26-X27-X28-X29-X30 (I)
(式中、
X1がTyr、His、N-メチルTyr又はデスアミノTyrであり、
X2がAla、D-Ala、Ser又はαアミノイソ酪酸(Aib)であり、
X8がAsn、Asp、Ala、Gln、Ser又はAibであり、
X9がSer、Asp、Ala又は約5kDa以下のPEGポリマーと結合したCysであり、
X11がArg又はL-ホモアルギニン(Har)であり、
X12がLys又はL-オルニチン(Orn)であり、
X15がGly又はAlaであり、
X18がSer又はAlaであり、
X20がArg又はHarであり、
X21がLys又はOrnであり、
X22がLeu、Val、Ala又は約5kDa以下のPEGポリマーと結合したCysであり、
X24がGln又は約5kDa以下のPEGポリマーと結合したCysであり、
X25がAsp又はAlaであり、
X26がIle又はAlaであり、
X27がMet、Leu又はノルロイシンであり、
X28がSer、Ala又は約5kDa以下のPEGポリマーと結合したCysであり、
X29がLys、Arg、Orn、Har又はアグマチンであり、
X30がNH2基又はAsn-NH2である)
を有するペプチドを含む成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)アナログ、
又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0051】
一実施形態では、X9、X22、X24及びX28の少なくとも1つが約5kDa以下のPEGポリマーと結合したCysである。
【0052】
幾つかの実施形態では、GHRHアナログは、本明細書で定義する式(I)に記載の配列を有するペプチド、ペプチドのカルボキシ末端と共有結合した1つ又は複数の(天然又は合成)アミノ酸を更に含むことができる。幾つかの実施形態では、GHRHアナログは、本明細書で定義する式(I)に記載のペプチドのC末端に最大25個の追加的アミノ酸を含む。更なる実施形態では、GHRHアナログは、本明細書で定義する式(I)に記載のペプチドのC末端に最大20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個の追加的アミノ酸を含む。幾つかの実施形態では、GHRHアナログは約60個以下の残基、更なる実施形態では、約55、約50、約45、約40又は約35個以下の残基を含有する。幾つかの実施形態では、GHRHアナログは約29残基~約60残基を含有する。更なる実施形態では、GHRHアナログは約29残基~約50残基を含有する。更なる実施形態では、GHRHアナログは約29残基~約44残基を含有する。
【0053】
幾つかの実施形態では、GHRHアナログはC1~C16アシル基(直鎖又は分岐、飽和又は不飽和)、更なる実施形態ではC1~C10アシル基(直鎖又は分岐、飽和又は不飽和)、更なる実施形態では飽和C1~C6アシル基(直鎖又は分岐)、又は不飽和C3~C6アシル基(直鎖又は分岐)等のN末端基を更に含むことができる。更なる実施形態では、GHRHアナログはアセチル基(CH3-CO-、Ac)を更に含むことができる。他の更なる実施形態では、GHRHアナログは、(C1~C6)アルキル、(C2~C6)アルケニル、(C2~C6)アルキニル、置換(C1~C6)アルキル、置換(C2~C6)アルケニル、置換(C2~C6)アルキニル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキサノイル又はヘキセノイルを更に含むことができる。
【0054】
幾つかの実施形態では、GHRHアナログは、RがC1~C16アシル基(直鎖又は分岐、飽和又は不飽和)、更なる実施形態ではC1~C10アシル基(直鎖又は分岐、飽和又は不飽和)、更なる実施形態では飽和C1~C6アシル基(直鎖又は分岐)又は不飽和C3~C6アシル基(直鎖又は分岐)、更なる実施形態ではアセチル基(CH3-CO、Ac)、更なる実施形態では(C1~C6)アルキル、(C2~C6)アルケニル、(C2~C6)アルキニル、置換(C1~C6)アルキル、置換(C2~C6)アルケニル、又は置換(C2~C6)アルキニルである、式-NH2、-NHR、又は-NRRのC末端基を更に含むことができ、或いは更なる実施形態では、C末端基は2kDaを超える直鎖又は分岐PEG鎖であり得る。
【0055】
幾つかの実施形態では、GHRHアナログ又はその塩は、本明細書で定義する配列番号1~11、14、及び18~24の1つに記載の配列を有するペプチドを含む。
【0056】
ポリエチレングリコール(PEG)及びペグ化
「ポリエチレングリコール」又は「PEG」は、一般式HO(CH2CH2O)nH(式中、nが少なくとも2の整数である)によって表される、分岐又は直鎖のエチレングリコールのポリマーを指す。PEGは、約500~約50,000ダルトン以上の範囲から選択される平均合計分子量を有するエチレングリコールのポリマーを含む。PEG鎖の平均分子量は数字によって表され、例えばPEG-5,000又はPeg-5Kは、約5,000ダルトン、又は約5キロダルトン又はkDa又はK(1kDa=1K=1000ダルトン)の平均合計分子量を有するポリエチレングリコール鎖を指す。様々なサイズのPEGが市販されており、例えば約200、約300、約400、約500、約600、約1,000、約1,500、約2,000、約3,000、約3,350、約4,000、約5,000、約6,000、約8,000、約10,000、約12,000、約20,000、約35,000又は約50,000ダルトンの平均サイズを有するPEGを、本明細書に記載する製品及び方法において使用することができる。
【0057】
一実施形態では、本明細書に記載する1つ又は複数のPEG成分は、(本明細書中5Kとも呼ぶ)約5kDA以下の平均分子量を有する。更なる実施形態では、本明細書に記載する1つ又は複数のPEG成分は、約2kDa~約5kDa、又は約1、約2、約3、約4若しくは約5kDaの平均分子量を有する。更なる実施形態では、本明細書に記載する1つ又は複数のPEG成分は約2kDaである。更に、幾つかの実施形態では、多数のPEG修飾がある本明細書に記載するGHRHアナログは異なるサイズのPEG成分によって修飾され得る、即ち同じアナログに異なるサイズのPEG成分が結合し得る。更なる実施形態では、多数のPEG修飾がある本明細書に記載するGHRHアナログは、ほぼ同じサイズのPEG成分によって修飾され得る。
【0058】
本明細書に記載するGHRHアナログのペグ化(即ち、PEG成分の結合)は、当技術分野で公知の方法によって実施することができる。例えば、特異的アミノ酸側鎖に反応性がある反応性ペグ化試薬を使用することができる。一例は、例えばマレイミド成分(PEG-マレイミド)を有しCys側鎖と反応し得る、チオール又はスルフヒドリル反応性PEGである。更なる一例は、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(PEG-NHSエステル)を有しアミン側鎖(例えばLys)と反応し得るアミン反応性PEGである。幾つかの実施形態では、PEG修飾は、アミン又はカルボキシ反応性である試薬を使用してN及び/又はC末端であってよい。更なる実施形態では、PEG修飾は、リンカー、即ちPEG成分とペプチドの間に位置するリンカー又はスペーサー成分を介したものであってよい。このようなリンカーには、例えばヘテロ二官能性試薬又はホモ二官能性試薬がある。
【0059】
アミノ酸
本明細書で使用する「アミノ酸」は、ペプチドの合成アナログを調製するためペプチド化学において使用される、天然アミノ酸及び他のアミノ酸(例えば、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、核酸配列によってコードされないアミノ酸等)のL-異性体とD-異性体の両方を含む。他のアミノ酸は、例えば非遺伝子コード型のアミノ酸、例えばβ-アラニン、3-アミノ-プロピオン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、α-アミノイソ酪酸(Aib)、4-アミノ-酪酸、N-メチルグリシン(サルコシン)、ヒドロキシプロリン、オルニチン(例えばL-オルニチン)、シトルリン、t-ブチルアラニン、t-ブチルグリシン、N-メチルイソロイシン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、ノルロイシン(Nle)、ノルバリン、2-ナフチルアラニン、ピリジルアラニン、3-ベンゾチエニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、2-フロオロフェニルアラニン、3-フロオロフェニルアラニン、4-フロオロフェニルアラニン、ペニシルアミン、1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン-3-カルボキシル酸、β-2-チエニルアラニン、メチオニンスルホキシド、L-ホモアルギニン(Har)、N-アセチルリシン、2-アミノ酪酸、2-アミノ酪酸、2,4-ジアミノ酪酸(D-又はL-)、p-アミノフェニルアラニン、N-メチルバリン、ホモシステイン、ホモセリン(HoSer)、システイン酸、ε-アミノヘキサノン酸、δ-アミノ吉草酸、又は2,3-ジアミノ酪酸(D-又はL-)等を含む。
【0060】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載するGHRHアナログは、機能上同等なアミノ酸残基の置換を含むことができる。例えば、配列内の1つ又は複数のアミノ酸残基を、同様の物理化学的性質を有する別のアミノ酸、即ち1つ又は複数の性質に関して同じグループ又はファミリーのアミノ酸によって置換することができる。1ファミリーのアミノ酸内でなされた置換は一般に保存的置換であると理解される。即ち保存的置換は、以下の5グループ:(i)短鎖、脂肪族、無極性残基:Ala、Gly;(ii)長鎖、無極性残基:Met、Leu、Ile、Val、Pro;(iii)非帯電極性残基:Ser、Thr、Cys、Tyr、Gly;(iv)極性の、負に帯電した残基:Asp、Glu、及びそれらのアミド:Asn、Glu;(v)極性の、正に帯電した残基:His、Arg、Lys及び(vi)長鎖芳香族残基:Phe、Tyr、Trpの1グループ内での交換として定義することができる。アミノ酸置換の他の例は以下の通りである。Tyr(N-メチルTyr、デアミノ-Tyr、His、D-tyr);Ala(D-Ala、Aib、Abu);Val/Leu/Ile(特定位置で交換可能);Asn(Gln);Met(ノルロイシン、Leu);Lys(ホモリシン、アルギニン、ホモアルギニン(Har)、オルニチン、γアミノ酪酸(Gab)、γアミノプロピオン酸(Gap)、アグマチン);Arg(ホモアルギニン、リシン、ホモリシン、オルニチン、γアミノ酪酸(Gab)、γアミノプロピオン酸(Gap)、アグマチン);Asp/Glu(特定位置で交換可能);及びSer/Thr(特定位置で交換可能)。
【0061】
本明細書に記載するGHRHアナログは、全てのL-アミノ酸又はL-アミノ酸とD-アミノ酸の混合物を含むことができる。一実施形態では、本明細書で提供するGHRHアナログは、少なくとも1つのD-アミノ酸、一実施形態ではD-Ala等を含む。一実施形態では、前記少なくとも1つのD-アミノ酸は、本明細書で提供するGHRHアナログのN末端部分(例えば、N末端最後の2又は3残基内)に位置する。1つ又は複数のD-アミノ酸の存在は、プロテアーゼ/ペプチダーゼ切断に対する影響を受けにくいため(例えばin vivoで)高い安定性を有するが、生物学的活性は保持するペプチドを典型的にもたらす。
【0062】
ペプチド合成
当技術分野で周知の手動及び自動固相手順によって、ペプチドを容易に合成することができる。適切な合成は、例えば「T-boc」又は「Fmoc」手順の利用によって実施することができる。固相合成に関する技法及び手順は、例えばIRL Oxford University Press 1989年により公開されたE.Atherton及びR.C.SheppardによるSolid Phase Peptide Synthesis:A Practical Approach中に記載されている。或いは、例えばLiuら、1996年、Bacaら、1995年、Tamら、1995年、Schnolzer及びKent、1992年、Liu及びTam、1994a、Liu及びTam、1994b、並びにYamashiro及びLi、1988年において記載されたように、セグメント縮合によりペプチドを調製することができる。ペプチドを合成するのに有用な他の方法はNakagawaら、1985年において記載されている。
【0063】
遺伝子コードによってコードされる天然アミノ酸を含むペプチド及びペプチドアナログも、標準法を使用する組換えDNA技術を使用して調製することができる。組換え技術によって生じたペプチドは、当技術分野で周知の方法を使用して(例えば、N末端アシル化、アセチル化、C末端アミド化等により)修飾することができる。
【0064】
したがって、幾つかの実施形態では、本明細書に記載するGHRHアナログが遺伝子コードによってコードされる天然アミノ酸を含有する場合、組換え法を使用してGHRHアナログを生成することができ、幾つかの実施形態では、前述の修飾(例えばアシル化、アミド化等)を例えば施すことができる。したがって別の態様では、本明細書で提供するGHRHアナログをコードする核酸を提供する。別の態様では、この核酸を含む組換えベクターを提供し、更なる態様では、この組換えベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0065】
本明細書に記載するGHRHアナログは、例えば逆相クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル電気泳動等の、当技術分野で周知のペプチド精製の多くの技法によって精製することができる。個々のペプチド又はペプチドアナログを精製するために使用する実際の条件は、部分的には合成戦略、及び例えば正味電荷、疎水性、親水性等の要因に依存し、当業者には明らかであろう。アフィニティークロマトグラフィーによる精製用に、そのペプチド又はペプチドアナログと特異的に結合する任意の抗体を例えば使用することができる。
【0066】
薬学的に許容される塩
本明細書に記載するGHRHアナログは塩基性であるが、陰性電荷と陽性電荷の両方を含有する。したがって、カチオンとアニオンの両方を使用して塩が形成され得る。したがって本明細書に記載するGHRHアナログは塩、例えば酸付加塩等の、薬学的に許容される無毒の塩の型であり得る。「薬学的に許容される塩」は、親化合物の生物学的活性を保持し、生物学的又は他に望ましくない状態でない化合物の塩を指す。このような塩はGHRHアナログの最終単離及び精製中にin situで調製することができ、又は遊離塩基性官能基と適切な酸を反応させることによって別々に調製することができる。本明細書で開示するGHRHアナログの多くは、アミノ及び/又はカルボキシル基又はそれらと類似した基の存在によって、酸性及び/又は塩基性塩を形成することができる。薬学的に許容される酸付加塩の例には、塩酸塩、臭化水素塩、硫酸塩、リン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、タンニン酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、アルギン酸塩、パモン酸塩、リンゴ酸塩、アスコルビン酸塩、酒石酸塩等があるが、これらだけには限られない。特に好ましいのは、低溶解度の塩、例えば低級脂肪酸(C4~C12)、パモン酸塩等である。他の塩は、長期の活性を示し得るZn+2及びMg+2等の金属カチオンを含む。
【0067】
組成物/製剤
別の態様では、本明細書に記載するGHRHアナログ又はその塩を含む組成物(例えば、医薬組成物)又は製剤を提供する。一実施形態では、組成物は1つ又は複数の薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は希釈剤を更に含む。
【0068】
本明細書で使用する「薬学的に許容される」(又は「生物学的に許容される」)は、in vivoで毒性若しくは有害な生物学的影響が全く(又はほとんど)ない物質を指す。それは、過剰な毒性、過敏状態、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症がなく妥当なベネフィット/リスク比に見合う、対象(例えば、動物、哺乳動物、ヒト)の体液及び/又は組織及び/又は臓器との接触時に使用するのに適した化合物、組成物及び/又は剤形を指す。
【0069】
用語「薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は希釈剤」は、医薬組成物の調製において一般に使用される添加剤を指し、例えば溶媒、分散媒、生理食塩水溶液、界面活性剤、可溶化剤、潤滑剤、乳化剤、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、キレート剤、pH調節物質、鎮静剤、バッファー、還元剤、抗酸化剤、等張剤、吸収遅延剤等を含む(例えばRoweら、Handbook of Pharmaceutical Excipients、Pharmaceutical Press、第6版、2009年を参照)。
【0070】
本明細書に記載するGHRHアナログをアニオン性又は中性脂質で製剤化して、ペプチドリポソームを形成することもできる。例えば、血管作動性腸管ポリペプチド(VIP)をアニオン性リン脂質で製剤化して、タンパク質分解を妨げ、in vivoでの生物学的活性を向上させた(Gololobovら、1998年)。更に、PCT公開WO95/27496及びGaoら、1994年は、水様液中でのその送達と比較したVIP送達用のリポソームの使用を記載している。リポソームにおけるVIPのカプセル化は、タンパク質分解からペプチドを保護し、VIPの能力を有意に向上させ、高血圧ハムスターにおける水様液中のVIPと比較して平均動脈圧の低下をもたらすことが分かった。当技術分野で周知であり通常利用されている脂質材料の組合せからリポソームを生成して、水溶性ポリマーと共有結合した少なくとも1つの脂質成分を含むリポソームを生成することができる。脂質は、スフィンゴミエリン等の比較的固縮した種類、又は不飽和アシル鎖を有するリン脂質等の流体型を含み得る。
【0071】
本明細書に記載するポリマーは、例えばポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリグリセロール、ポリアクソジリン、又はポリマー頭部基を有する合成脂質を含めた、タンパク質の循環半減期を増大するのに有用であるSSL技術で公知であり通常利用されている任意の化合物を含み得る。幾つかの実施形態では、ポリマーは、約1000~約5000ダルトンの平均分子量を有するPEGである。
【0072】
本明細書に記載するリポソームを生成するための脂質は、PEGと共有結合したジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(PEG-DSPE)、ホスファチジルコリン(PC)、及び/又はホスファチジルグリセロール(PG)、コレステロールとの更なる組合せ(Choi)を含み得る。一実施形態では、リポソームを生成するための脂質とコレステロールの組合せは0.5:5:1:3.5のモル比でPEG-DSPE:PC:PG:Cholを含む。
【0073】
本明細書に記載するGHRHアナログの徐放は、高分子量ポリマーと適切な賦形薬の混合によって達成することもできる。このような技法は、注射用デポー製剤からペプチド及び低分子を徐放という技術分野で周知である。本明細書で提供する方法及び組成物と共に有用であるポリマーは生体内腐食性である。即ち、それらは例えば酵素により徐々に分解し、又は加水分解し、溶解し、物理的に腐食し、又は他の場合は患者の身体の水様液内で崩壊する。一般に、ポリマーは加水分解又は物理的腐食の結果として生体内腐食するが、主な生体内腐食プロセスは典型的には加水分解又は酵素分解である。
【0074】
このようなポリマーには、ポリラクチド、ポリグリコリド、カプロラクトン系ポリマー、ポリカプロラクトン、ポリ無水物、ポリアミン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタル、ポリカーボネート、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、スクシネート、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリホスホエステル、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、多糖、キチン、キトサン、ヒアルロン酸及びコポリマー、ターポリマー及びこれらの混合物があるが、これらだけには限られない。US7368126B2中に与えられたポリマーの例には、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)50:50RESOMER(登録商標)RG502、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)50:50RESOMER(登録商標)RG502H、ポリD,Lラクチド(RESOMER(登録商標)R202、RESOMER(登録商標)R203)、ポリジオキサノン(RESOMER(登録商標)X210)(Boehringer Ingelheim Chemicals Inc社、Petersburg、Va)があるが、これらだけには限られない。他の例には、DL-ラクチド/グリコリド100:0(MEDISORB(登録商標)ポリマー100DL High、MEDISORB(登録商標)ポリマー100DL Low)、DL-ラクチド/グリコリド85/15(MEDISORB(登録商標)ポリマー8515DL High、MEDISORB(登録商標)ポリマー8515DL Low)、DL-ラクチド/グリコリド75/25(MEDISORB(登録商標)ポリマー7525DL High、MEDISORB(登録商標)ポリマー7525DL Low)、DL-ラクチド/グリコリド65/35(MEDISORB(登録商標)ポリマー6535DL High、MEDISORB(登録商標)ポリマー6535DL Low)、DL-ラクチド/グリコリド54/46(MEDISORB(登録商標)ポリマー5050DL High、MEDISORB(登録商標)ポリマー5050DL Low)、DL-ラクチド/グリコリド54/46(MEDISORB(登録商標)ポリマー5050DL 2A(3)、MEDISORB(登録商標)ポリマー5050DL 3A(3)、MEDISORB(登録商標)ポリマー5050DL 4A(3))(Medisorb Technologies Internationl L.P社、Cincinnati Ohio)、ポリD,L-ラクチド-コ-グリコリド50:50、ポリD,L-ラクチド-コ-グリコリド65:35、ポリD,L-ラクチド-コ-グリコリド75:25、ポリD,L-ラクチド-コ-グリコリド85:15、ポリDL-ラクチド、ポリL-ラクチド、ポリグリコリド、ポリε-カプロラクトン、ポリDL-ラクチド-コ-カプロラクトン25:75、及びポリDL-ラクチド-コ-カプロラクトン75:25(Birmingham Polymers Inc社、Birmingham、Ala)があるが、これらだけには限られない。
【0075】
投与の経路
本明細書に記載するGHRHアナログ又はその塩及びその組成物は、対象(例えば動物、哺乳動物、ヒト)に、皮下(s.c)、筋肉内(i.m.)、静脈内(i.v)、経口若しくは局所、鼻腔内若しくは肺吸入によって、経皮送達によって、又は(D,L-ラクチド-コグリコリド等の)適切な生分解性ポリマーから製剤化したデポー製剤の型(例えばマイクロカプセル、マイクログラニュール、若しくはシリンダーロッド様インプラント)で、投与することができる。一実施形態では、マイクロカプセル又はマイクログラニュールをデポー製剤として使用する。他の同等な投与の形式、即ち例えば持続的点滴、皮膚パッチ、デポー製剤注射、注入ポンプ、及びマイクロカプセル等の徐放形式等も、本明細書で提供する方法及び組成物の範囲内にある。投与は任意の生理的に許容される注射用担体、生理的に許容される生理食塩水であってよいが、当技術分野で公知の他の担体を使用することもできる。
【0076】
GHRHアナログ又はその塩及びその組成物は、等張生理食塩水等の薬学的に許容される担体と共に、非経口、筋肉内、皮下又は静脈内投与することが好ましい。或いは、GHRHアナログ又はその塩及びその組成物は、適切な担体と共に鼻腔内スプレーとして、又は肺吸入によって投与することができる。一実施形態では、適切な投与の経路は適切な生分解性ポリマー、例えばポリ-D,L-ラクチド-コグリコリドから製剤化した、デポー製剤、例えば分散アンタゴニスト化合物を含有するマイクロカプセル、マイクログラニュール又はシリンダー形状インプラント等である。
【0077】
指標
GHRHは下垂体からの拍動性の成長ホルモン(GH)分泌を誘導する。したがって、本明細書に記載するGHRHアナログ又はその塩は、対象におけるGHの分泌を誘導又は刺激するのに有用であり得る。一態様では、(それを必要とする)対象においてGHの分泌を誘導又は刺激するための方法であって、本明細書に記載するGHRHアナログ若しくはその塩又はそれらを含む医薬組成物を有効量、対象に投与する工程を含む方法を提供する。対象においてGHの分泌を誘導又は刺激するための、本明細書に記載するGHRHアナログ若しくはその塩又はそれらを含む医薬組成物の使用も提供する。対象においてGHの分泌を誘導又は刺激するための医薬を調製するための、本明細書に記載するGHRHアナログ若しくはその塩又はそれらを含む医薬組成物の使用も提供する。対象におけるGHの分泌を誘導又は刺激する際に使用するための、本明細書に記載するGHRHアナログ若しくはその塩又はそれらを含む医薬組成物も提供する。
【0078】
本明細書で使用する「誘導」又は「刺激」は測定可能な生物学的活性の増大を指す。幾つかの実施形態では、この増大は、対照と比較して少なくとも約10%、20%、40%、60%、80%、90%、95%、100%(2倍)、又は200%(3倍)の生物学的活性の増大である。例えば、対象(例えば動物、ヒト)へのGHRHアナログ又はその塩の投与後に、投与前の対象における又はGHRHアナログ若しくはその塩を投与しなかった対照対象に関するGHレベルと比較して、GHレベルの増大が測定されるとき、GHRHアナログはGHRHr活性を刺激することが分かっている。
【0079】
肝臓に対するGHの作用は、IGF-1及びその主要結合タンパク質、IGFBP3の生成をもたらし得る。これらの生理活性タンパク質は1つになって、筋肉、骨及び軟骨細胞に対する同化作用をもたらす可能性がある。GHは特に内臓脂肪堆積物からの脂肪分解を刺激することもできる。GHRHには、心機能、虚血後遺症からの保護、認知向上をもたらす神経強化、徐波睡眠及び日中覚醒状態の促進に対する直接的及び間接的作用もあり得る。1つ又は複数のGH及びGHRHの欠如は、GH及びIGF-1関連病状につながる可能性がある。したがって、本明細書で提供するGHRHアナログ又はその塩を使用して、GH欠乏状態を診断、及び治療又は予防することができる。これらの状態は、(1)成長ホルモン欠乏症のスクリーニング、(2)視床下部GH-RH欠乏症の治療、(3)全身成長発達遅滞、(4)ターナー症候群、(5)家族性低身長、(6)慢性腎不全及び重度成長遅延がある思春期前の子供、(7)子宮内胎児発育遅延があった幼児及び子供、(8)下垂体又は視床下部病変の放射線療法後にGH欠乏症があった子供、(9)グルココルチコイドを用いた長期治療中で正常以下の成長率の子供、及び本明細書で前述した他の状態だけには限られないが、これらを含み得る。
【0080】
成人におけるGHRHアナログの更なる臨床用途は、筋肉、骨及び皮膚塊の消失の低減又は予防、(1)老化プロセス、(2)カタボリック状態、(3)創傷治癒、(4)骨折治癒遅延、(5)骨粗しょう症、(6)代謝異常症候群又はHIV関連脂肪細胞肥大化の結果である腹部肥満症、(7)慢性閉塞性肺疾患がある栄養失調患者における完全非経口的過栄養法の副産物、(8)心不全、及び(9)GH分泌の低下を防止するための宇宙飛行中及びその後の使用。宇宙飛行の無重力状態によって成長ホルモンの放出が著しく低下し、これによって多くの宇宙飛行士が長期の宇宙飛行後に経験する骨消失及び筋肉衰弱を説明することができる。(10)正常な老化プロセスの一部である、又はアルツハイマー病若しくは老人性痴呆の前兆である、又は例えばスポーツ、偶発的転倒若しくは自動車事故で被った外傷性脳損傷が原因である軽度認知障害(MCI)を通常伴う体脂肪増大の緩和を非制限的に含み得る。
【0081】
GHRHアナログ又はその塩の投与が有益であり得る疾患及び状態は、当技術分野において広範囲で記載されている(例えばWO2009/009727、WO2006/042408、WO2005/037307、及びWO2004/105789を参照)。このような状態/障害/疾患には、例えば、脂肪蓄積、高コレステロール血症、肥満症、シンドロームX、脂肪細胞肥大化、脂肪組織萎縮症、リポジストロフィー(例えば、HIV関連リポジストロフィー症候群)、認知機能障害、日中覚醒状態障害、免疫系の機能低下(例えば、T細胞欠損等の免疫不全)、筋タンパク質異化作用、サルコペニア等の筋肉衰弱と関連した疾患/状態、虚弱体質、(例えば、HIV感染及びがん患者における)放射線療法及び/又は化学療法関連副作用、(例えば、がん患者における)カヘキシー、視床下部下垂体性小人症、火傷、骨粗しょう症、腎不全、骨折癒合不全、急性/慢性衰弱性疾患又は感染、創傷治癒、術後問題、授乳障害、女性の不妊症、神経変性状態、GHRH受容体依存性腫瘍、及び老化又は睡眠不調/障害と関連した状態がある。
【0082】
したがって、他の態様では、(1)例えば、老化、軽度認知障害(MCI)、前アルツハイマー症状(発症前アルツハイマー)、痴呆及び/又は睡眠障害(例えば、加齢性睡眠障害)と関連した状態において日中覚醒状態及び/又は認知機能を刺激するため、(2)脂肪蓄積及び/又は高コレステロール血症と関連した代謝状態(肥満状態、腹部肥満症/脂肪過多、代謝障害を伴う腹部肥満症、相対的GH欠乏症を伴う腹部肥満症、代謝異常症候群又はシンドロームX、脂肪細胞肥大化、脂肪組織萎縮症、リポジストロフィー(例えば、HIV関連リポジストロフィー症候群)、脂質異常症、高トリグリセリド血症)を改善/予防/治療するため、(3)特に高齢対象において観察される急性又は慢性腎不全(例えば、急性又は慢性腎不全による衰弱)、慢性心不全(例えば、慢性心不全による衰弱)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症(例えば、成人における嚢胞性線維症による衰弱)、虚弱体質、火傷、感染症(敗血症)、筋ジストロフィー、うっ血性心不全、神経変性状態(アルツハイマー病、前アルツハイマー症状、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、AIDS、長期グルココルチコイド治療後や骨折癒合不全後のタンパク質栄養失調、臀部骨折、外傷、又は大手術(術後問題)、骨粗しょう症、長期固定、がん関連カヘキシー、サルコペニア(例えば、加齢性サルコペニア))、GI吸収不良(短腸症候群(SBS)、クローン病)において、例えば筋肉塊及び/又は機能を増大するよう、カタボリック/衰弱状態における同化作用を改善するため、(4)免疫機能を改善する、又は、老化、HIV感染/AIDS、若しくは(HIV感染及びがん患者における)高用量化学療法及び/若しくは放射線療法後と関連がある、免疫不全状態(例えば、T細胞免疫不全)の復元を改善するため、(5)脂質パラメーターを改変するため((a)コレステロールを減少させるため、(b)非HDLコレステロールを減少させるため、(c)トリグリセリドを減少させるため、及び/又は(d)全コレステロール/HDLコレステロールの比を減少させるため、)(6)体組成パラメーターを改変するため((a)除脂肪体重を増加させるため、(b)体幹脂肪を減少させるため、(c)内臓脂肪を減少させるため、(d)腹囲を減少させるため、(e)内蔵脂肪組織(VAT)を減少させるため、及び/又は(f)VAT/皮下脂肪組織(SAT)の比を減少させるため、)、(7)(女性における)妊娠率を増大させるため又は不妊症を治療するため、授乳障害を治療するため、(8)GH欠乏症(例えば、GH欠乏症及び腹部肥満症)を治療するため、GH補充療法を提供するため、例えば成人において突発性低身長(ISS)を治療するため、(9)GHRH受容体関連腫瘍を治療するため、(10)視床下部下垂体性小人症を治療するため、(11)創傷治癒を改善するため、(12)火傷を治療するため、(13)急性/慢性衰弱性疾患又は感染を治療するため、及び/又は(14)骨形成の欠陥又は減少によって特徴付けられる状態(例えば、骨粗しょう症)を予防/治療するための方法を提供する。この方法は、(例えば、薬学的に許容される担体/賦形剤と一緒に)本明細書に記載するGHRHアナログ又はその塩、又はそれらを含む組成物を有効量、それを必要とする対象に投与する工程を含む。
【0083】
本明細書で使用する「治療する」、「治療」又は「治療すること」は、障害又は疾患、及び/又は障害若しくは疾患の症状の進行を治療する、治癒する、軽減する、緩和する、改変する、改善する、回復する、改善する、低減する、又はそれらに影響を与える目的での、障害、疾患、又は障害若しくは疾患の症状を有する対象への施用又は投与を指す。本明細書で使用する「予防する」、「予防」又は「予防すること」は、疾患若しくは障害又はそれらの症状の発症又は出現前に投与するとき、疾患若しくは障害又はそれらの症状の発症を予防若しくは遅延する、又は疾患若しくは障害又はそれらの症状の重症度を低減する目的での、障害若しくは疾患の素因がある、又は障害若しくは疾患を発症するリスクがある対象への施用又は投与を指す。
【0084】
本明細書で使用する「対象」は恒温動物を指す。一実施形態では、対象は哺乳動物である。更なる実施形態では、対象はヒトである。一実施形態では、対象は動物である。
【0085】
用量
本明細書で使用する「有効量」は、必要な用量及び期間で、望ましい生物学的活性(例えば、GHの分泌誘導)及び/又は予防/治療結果(例えば、前述の疾患又は障害の予防及び/又は治療)を得るのに有効な量を指す。本明細書で使用する「治療有効量」は治療の文脈での有効量を指し、「予防有効量」は予防の文脈での有効量を指す。本明細書で提供する化合物又は組成物の有効量は、対象の病状、年齢、性別及び体重、並びに対象において所望の応答を誘発する化合物又は組成物の能力等の要因に応じて変わり得る。用量レジメンを調節して最適な予防/治療応答をもたらすことができる。有効量は、化合物の何らかの毒性又は有害効果より予防/治療ベネフィット効果が重要である量でもある。
【0086】
必要とされるGHRHアナログの量は、医薬組成物のタイプ及び投与の形式に依存する。筋肉内又は皮下注射投与により、又は鼻腔内スプレー又は肺吸入の形で、ヒト対象にGHRHアナログ又はその塩の溶液を与える場合、典型的用量は2~20mg/1日であり、一日一回与えるか又は2~4投与/1日に分ける。GHRHアナログ又はその塩をヒト対象に静脈内投与するとき、典型的用量は8~80μg/体重1kg/1日の範囲であり、1~4ボーラス注射/1日に分けるか又は連続注入として与える。例えば低溶解度のパルミチン酸塩若しくは他の塩の筋肉内注射により、又は生分解性ポリマーで分散したGHRHアナログ又はその塩を含有するマイクロカプセル、マイクログラニュール、若しくはインプラントの筋肉内若しくは皮下投与により、GHRHアナログ又はその塩のデポー剤調製物を使用するとき、典型的用量は1~10mg/1日である。幾つかの実施形態では、GHRHアナログ又はその塩を約0.1mg~約20mgの一日用量で投与する。一実施形態では、GHRHアナログ又はその塩を約1mg又は約2mgの一日用量で投与する。
【0087】
キット/パッケージ
本明細書に記載するGHRHアナログ又はその塩、又はそれらを含む組成物を含むキット又はパッケージも本明細書において提供する。一実施形態では、キット又はパッケージは、対象においてGHの分泌を誘導若しくは刺激するため、又はGH欠乏状態を診断、治療若しくは予防するため等の使用説明書を更に含む。キット又はパッケージは、1つ又は複数の容器を更に含むことができる。
【実施例】
【0088】
以下の非制限的実施例によって、本発明を更に詳細に例証する。これらの実施例は本発明を例証するために提供するものであり、決して本発明の範囲を制限するものとして解釈すべきでない。
【0089】
他に定義しない限り、又は文脈が明らかに他の事を示さない限り、本明細書で使用する全ての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に記載するものと同等又は均等である任意の方法及び材料を、本発明の実施又は試験中に使用することができることは理解されるはずである。
【0090】
略語:
以下の略語を本明細書において使用する:
Abu:αアミノ酪酸
Aib:アミノイソ酪酸
BHA:ベンズヒドリルアミン樹脂
Boc:t-ブトキシカルボニル
COMU:(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロホスフェート
DIEA:ジイソプロピルエチルアミン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
EA:酵素アクセプター
ED:酵素ドナー
EFC:酵素断片相補化
EIA:酵素イムノアッセイ
ELISA:酵素結合免疫吸着アッセイ
FMOC:フルオレニルメトキシカルボニル
HCTU:2-(6-クロロ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
MALDI-TOF:マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析法
Nle:L-ノルロイシン
Orn:L-オルニチン
Har:L-ホモアルギニン
Pbf:2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル
RLU:相対的光単位
RP-HPLC:逆相高速液体クロマトグラフィー
t-Bu:t-ブチル
TFA:トリフルオロ酢酸
Trt:トリチル
【0091】
命名法:
アミノ酸残基及び合成ペプチドを定義するため本明細書で使用する命名法は、IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclature(European J.Biochem.、1984年、138、9~37頁)により指定された命名法である。天然アミノ酸によって、Gly(G)、Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Ser(S)、Thr(T)、Lys(K)、Arg(R)、Asp(D)、Asn(N)、Glu(E)、Gln(Q)、Cys(C)、Met(M)、Phe(F)、Tyr(Y)、Pro(P)、Trp(W)及びHis(H)を含めたタンパク質において見られる一般的な天然アミノ酸の1つを意味する。一文字コードは括弧内に与える。他の略語はNle(ノルロイシン)、Aib(アミノイソ酪酸)、Abu(αアミノ酪酸)、Orn(オルニチン)、及びHar(ホモアルギニン)である。一文字コード中の小文字を使用してD-アミノ酸を示す。例えば「a」はD-Alaを表す。
【0092】
(実施例1)
材料及び方法
GHRHアナログの合成及び調製
本明細書に記載するGHRHアナログは、0.75mmol/gの充填で適切に側鎖保護したフルオレニルメトキシカルボニル保護型αアミノ酸及びベンズヒドリルアミン(BHA)樹脂(Bachem AG社)を使用した、手動又は自動固相ペプチド合成手法を使用して作製した。アミノ酸のカップリング前に、6-アミノヘキサン酸とRinkリンカーを樹脂にカップリングさせ、次いでFmoc-[9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル]保護型アミノ酸を、[2-(6-クロロ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート](HCTU)又は(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロホスフェート(COMU)、及びN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中のジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を使用して約1時間カップリングさせた。Fmoc脱保護を、約0.5時間DMF中20%(v/v)ピペリジンを使用して実施した。本明細書に記載するアセチルを用いたペプチドのNキャッピングに関する一般的手順は、無水酢酸及びDIEAを使用して実施した。合成の終了後、同時側鎖脱保護により固相支持体からペプチドを切断した。粗製線状(直鎖又は非分岐とも呼ばれる)ペプチドを、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)でのアセトニトリル勾配を使用しC18-カラムでの調製RP-HPLCによって更に精製した。ペプチドを真空乾燥させアセトニトリルを除去し0.1%TFAから凍結乾燥させた。分析用高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって純度を評価し、Voyager(商標)装置(PerSeptive Biosystems Inc社)を使用しマトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析法(MALDI-TOF MS)の分析によって質量を測定した。Table 1(表1)に示したように、GHRHアナログ1~16を調製した。
【0093】
【0094】
【0095】
(実施例2)
細胞ベースHit Hunter(登録商標)(DiscoveRx(商標))アッセイにおけるペグ化GHRHペプチドのアゴニスト効能の測定
DiscoveRx(商標)は、cAMPを介してシグナル伝達する非タグ化GPCRを安定して発現する一群の細胞株を開発した。Hit Hunter(登録商標)cAMPアッセイは、機能的レポーターとしてβ-ガラクトシダーゼ(β-Gal)を用いる、酵素断片相補化(EFC)と呼ばれるDiscoveRx(商標)により開発された技術を使用し、ホモジェナス、非イメージングアッセイ形式でGs二次メッセンジャーシグナル伝達を介してGPCRの活性化をモニタリングする。
【0096】
cAMP Hunter(商標)細胞株を、標準手順に従いフリーザーストックから増殖させた。細胞を、白壁の384ウエルマイクロプレート中に20μLの合計体積で播種し、試験前に適切な時間37℃でインキュベートした。DiscoveRx(商標)Hit Hunter(商標)cAMPXS+アッセイを使用してcAMP転形を測定した。アゴニスト測定用に、細胞を試料とインキュベートして応答を誘導した。細胞から培地を吸引し、15μLの2:1HBSS/10mM Hepes:cAMPXS+Ab試薬と交換した。試料ストックの中間希釈を行いアッセイバッファー中に4×試料を生成した。4.5μLの4×試料を細胞に加えて、30又は60分間37℃又は室温においてインキュベートした。賦形薬の濃度は1%であった。適切な化合物のインキュベーション後、アッセイシグナルを20μLのcAMPXS+ED/CL溶液カクテルを用いた1時間のインキュベーション、次に20μLのcAMPXS+EA試薬を用いた室温で3時間のインキュベーションによって生成した。化学発光シグナル検出用PerkinElmer Envision(商標)装置を用いて、シグナル生成後にマイクロプレートを読み取った。CBISデータ分析スイート(Chemlnnovation社、CA)を使用して化合物の活性を分析した。Gsアゴニストモードアッセイ用に、以下の式:活性%=100%×(試験試料の平均RLU-賦形薬対照の平均RLU)/(MAX対照の平均RLU-賦形薬対照の平均RLU)を使用して活性率を計算した。結果をTable 2(表2)に示す。
【0097】
【0098】
これらの結果は、8、15、16、19及び26位置における幾つかのCys-PEG(2kDa)置換は許容されず、このようなペプチドは低い効能を示したことを示した(例えば、それぞれアナログ7、5、9、4及び8)。この悪影響はペプチドのN末端半分において特に明白であった。驚くことに、N末端部分における位置9(天然GHRH配列内のセリン9)での2kDaPEGの結合は充分許容されただけでなく、ペプチド(アナログ6)の生理活性を123%増大させた。対照的に、位置8(天然GHRH配列内のAsn)でのペグ化は許容されなかった(アナログ7)。
【0099】
位置22(天然GHRH内のLeu22)、24(天然GHRH内のGln24)、及び28(天然GHRH内のSer28)でのペグ化も、天然ペプチドと比較して高い(それぞれ143%、130%、125%)生理活性を有するペプチドを生成した(それぞれアナログ3、2及び1)。
【0100】
【0101】
独立した実験では、第9の位置以外に位置22、24、28及び31において2kDa(2Kとも呼ぶ)PEG鎖を含有するGHRHアナログを生成し、GHRH受容体細胞ベースアッセイにおいて試験した。結果をTable 3(表3)に示す(それぞれアナログ14、13、12、及び11)。これらの結果は、最大有効性を保持しながら、更に二倍ペグ化ペプチドは天然ペプチドより2~4倍超強力であったことを示す。
【0102】
本発明者らは、5kDa(5Kとも呼ぶ)及び40kDa(40Kとも呼ぶ)PEG鎖を含有するGHRHアナログ(それぞれアナログ15及び16)を生成することにより、第9の位置において許容され得るPEG鎖の長さを更に調べた。in vitro試験によって、in vivoでの結果と対照的に、in vitroで生物学的活性を消失せずに第9の位置により長いPEG鎖が結合し得ることを示した(実施例3参照)。しかしながら、2KPEGを含有するアナログ(アナログ10)は天然ペプチドより約14倍強力であり、5K及び40Kペグ化GHRHペプチド(それぞれアナログ15及び16)より2~6倍強力であった。
【0103】
(実施例3)
Sprague-Dawleyラットにおける選択GHRHアナログの皮下注射に応答するGH放出動態
プロトコール:Sprague-Dawleyラット(メス、重量250~300g)をCharles River Inc社から得た。the Canadian Council on Animal Careのthe Guide for the Care and Use of Experimental Animalsの原理に沿ってthe Animal Care Committeeのプロトコールに従い動物を使用した。動物は標準実験食で12:12の明:暗サイクルの下飼育した。動物はケージあたり4ラットの群で維持した。動物にはイソフルラン2.5%で麻酔をかけた。中間部切開を頸部で行い頸動脈を露出させた。ポリプロピレンチューブ(PE-50)を用いて頸動脈にカニューレを挿入して採血を可能にした。術前準備後、20mMのAcONa+5%マンニトール、pH5に溶かしたGHRHアナログ(10~100μg/kg)をラットに皮下注射した。血液試料(400μL/時間地点)を群あたり2~4匹の動物から回収した。血液試料は薬物注射後0、10、20、30、45及び60分で頸動脈用カテーテルを介して回収した。血液はK3EDTAを含有するマイクロテイナーチューブに回収し、混合し、2分間卓上遠心分離機において13,000RPMですぐに遠心分離した。血漿を回収し、スクリューキャップEppendorf(商標)チューブに移し、液体窒素中ですぐに凍結させた。次いで試料はアッセイするまで-80℃に保った。GHレベルの測定を以下に記載したように実施した。
【0104】
血漿試料中のGHレベルの測定:ラット及びマウスの血漿試料を注意深く攪拌し、4℃において2分間9,000RPMにおいて遠心分離した。GHレベルの用量決定はMillipore(商標)からのラット/マウス成長ホルモンELISAキット(カタログ番号EZRMGH-45K)を使用して実施した。試料の上清はGHELISAアッセイバッファーで最初に20倍に希釈し、10μlのこの希釈液を90μlのGHEIAアッセイバッファーと共にELISAプレートに加えた。残りの手順は製造者の説明書に従い実施し、得られたデータはGraphPad Prism(商標)ソフトウェアを使用して分析した。GHRHペプチド内の第8、第9及び第28の位置にPEG2K鎖を含有する3つのペプチドを0.04mg/kgの一回用量で皮下注射した。成長ホルモンレベルを一定時間で得た血液等分試料において測定し、それらを
図1に示す。GHRHペプチドのC末端部分(位置28)におけるPEG2Kの結合はGH分泌を強く刺激した。細胞ベースアッセイにおける効能の結果から予想したように、位置8(Cmax:397ng/ml、AUC(0~90分):15657ng/ml/90分)ではなく、位置9(Cmax:651ng/ml;AUC(0~90分):29075ng/ml/90分)におけるPEG2Kの結合が、ラットにおいてより強いGH分泌の刺激をもたらした。これらのin vivoの結果はin vitroの生物学的アッセイを裏付けし、ペプチドの生物学的活性に重大な影響を与えず短いPEG鎖の結合を許容し得る位置として、GHRH配列内の第9のアミノ酸位置を強調する。
【0105】
GHRHペプチドのN末端部分はGHRH受容体の細胞外ループ及び膜貫通ドメイン中に埋もれていることが公知であり、したがってN末端ドメイン中のほぼ全てのアミノ酸が、受容体とGHRHペプチドの高アフィニティー結合に関与する。Felixら(1995年)は、(GHRHのN末端ドメイン中にある)Asn8及びLys12におけるPEG(2K及び5K)の共有結合は、GHRHの生物学的活性の低減をもたらすことを示している。したがって、第9のアミノ酸でPEG2Kによるペグ化があるGHRHペプチドが、in vitroとin vivoで完全な生物学的活性を保持したことは驚きであった。生物学的活性が阻害される前に、どの長さのPEG鎖が第9のアミノ酸で結合し得るのか調べるため、2K、5K及び40KPEG鎖を含有するペプチドを合成し、前に記載したプロトコールを使用してメスのラットにおいて試験した。簡潔に言うと、ペプチド(0.04mg/kg)をメスのラットに皮下注射し、動物から採血した血液の一定時間で得た血液等分試料で成長ホルモンレベルを測定した。これらの結果を
図2に示す。5K及びより長いPEG鎖を有するペプチドは、第9のアミノ酸位置に2KPEG鎖を含有するペプチドより有意に少ない成長ホルモンをもたらした。この実験は、5Kより長いPEG鎖、及びより短いPEG鎖は、GHRHの第9のアミノ酸位置において許容され得ないことを実証した。
【0106】
本明細書に記載するペプチドの配列を表4に示す。Table 4(表4)では、X1、X2、X8、X9、X11、X12、X15、X18、X20、X21、X22、X24、X25、X26、X27、X28、X29、X30、C(Peg-5K)、C(Peg-2K)及びC(Peg-40K)は本明細書に記載するとおりであり、aはD-アラニンであり、OはL-オルニチンであり、HarはL-ホモアルギニンであり、ZはLys、Arg、Har又はアグマチンである。
【0107】
【0108】
【0109】
以上の記載は本発明を例証するものであり、本発明を制限するものとして解釈すべきでない。本発明をその具体的実施形態により上に記載してきたが、当業者は、本発明の教示及び利点から著しく逸脱せずに、例示的実施形態において多くの変更形態が考えられることを容易に理解し得る。したがって、全てのこのような変更形態は、特許請求の範囲内で定義される本発明の範囲内に含まれることが意図されている。特許請求の範囲では、語句「comprising」は、オープンエンドな用語として使用され、フレーズ「including,but not limited to」と実質的に等しい。単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかに他の事を示さない限り対応する複数形の言及を含む。
【0110】
【配列表】