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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】木質ボードの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27N 3/02 20060101AFI20220902BHJP
   B32B 21/13 20060101ALI20220902BHJP
   C09K 5/06 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
B27N3/02 B
B27N3/02 C
B32B21/13
C09K5/06 L
C09K5/06 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019057676
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020157533
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000413
【氏名又は名称】永大産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】山野 英治
(72)【発明者】
【氏名】前田 雄介
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-202710(JP,A)
【文献】特開2018-189296(JP,A)
【文献】特開2003-260705(JP,A)
【文献】特開2005-119123(JP,A)
【文献】特開2014-140980(JP,A)
【文献】特開2014-180812(JP,A)
【文献】特開2006-137176(JP,A)
【文献】特開平01-236292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27N 1/00- 9/00
B32B 21/13
C09K 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状の木質材料と、少なくとも前記木質材料同士を接着する接着剤と、潜熱蓄熱材を含む蓄熱粒子と、を混合した混合物に対して、ボード状に熱圧成形を行うことにより、木質ボードを製造する製造方法であって、
前記混合物として、前記潜熱蓄熱材の融点よりも高く、前記潜熱蓄熱材の沸点よりも低い沸点を有した処理液であり、かつ、ボード状に熱圧成形する加熱温度よりも沸点が低い前記処理液が表面に付着した蓄熱粒子と、前記木質材料と、前記接着剤とを混合した混合物を準備し、前記熱圧成形時に、前記処理液を蒸発させながらボード状に前記混合物を成形することを特徴とする木質ボードの製造方法。
【請求項2】
前記蓄熱粒子は、前記潜熱蓄熱材を内方したマイクロカプセルを樹脂に分散させた粒子であることを特徴とする請求項1に記載の木質ボードの製造方法。
【請求項3】
前記蓄熱粒子は、木質粒子の少なくとも表面に前記潜熱蓄熱材が付着した粒子であることを特徴とする請求項1に記載の木質ボードの製造方法。
【請求項4】
前記木質ボードとして、前記木質材料に前記蓄熱粒子を均一に分散した木質ボードを製造するものであり、
前記混合物として、前記蓄熱粒子を除いた前記木質ボードの平均密度が、200~380kg/mの範囲となり、前記木質材料および前記蓄熱粒子の質量に対する、前記蓄熱粒子の質量の割合が、20~44%の範囲となるように、前記混合物を作製することを特徴とする請求項2に記載の木質ボードの製造方法。
【請求項5】
前記木質ボードとして、前記木質材料、前記蓄熱粒子、および前記接着剤で構成される芯層と、前記芯層の両面に形成され、前記木質材料および前記接着剤で構成される表層と、を有した木質ボードを製造するものであり、
前記混合物として、前記木質材料および前記接着剤を混合した表層の混合物と、前記木質材料、前記蓄熱粒子、前記接着剤、および前記処理液を混合した芯層の混合物とを準備し、
前記芯層の混合物として、前記蓄熱粒子を除いた前記芯層の平均密度が、200~380kg/mの範囲となり、前記芯層の前記木質材料および前記蓄熱粒子の質量に対する、前記芯層の前記蓄熱粒子の質量の割合が、20~44%の範囲となるように、前記芯層の混合物を作製することを特徴とする請求項2に記載の木質ボードの製造方法。
【請求項6】
前記処理液は水であり、前記混合物を準備する際に、前記蓄熱粒子の総質量に、前記木質材料の含水率を乗じた質量以上の水を、前記蓄熱粒子の表面に付着させることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の木質ボードの製造方法。
【請求項7】
粒状の木質材料の少なくとも表面に潜熱蓄熱材が付着した蓄熱粒子と、前記蓄熱粒子同士を接着する接着剤と、を混合した混合物に対して、ボード状に熱圧成形を行うことにより、木質ボードを製造する製造方法であって、
前記混合物として、前記潜熱蓄熱材の融点よりも高く、前記潜熱蓄熱材の沸点よりも低い沸点を有した処理液であり、かつ、ボード状に熱圧成形する加熱温度よりも沸点が低い前記処理液が表面に付着した蓄熱粒子と、前記接着剤とを混合した混合物を準備し、前記熱圧成形時に、前記処理液を蒸発させながらボード状に前記混合物を成形することを特徴とする木質ボードの製造方法。
【請求項8】
前記木質ボードは、前記蓄熱粒子同士を接着剤で接着したものであり、
前記混合物として、前記木質ボードの平均密度が、400~900kg/mの範囲となるように、前記混合物を作製することを特徴とする請求項7に記載の木質ボードの製造方法。
【請求項9】
前記木質ボードとして、前記蓄熱粒子および前記接着剤で構成される芯層と、前記芯層の両面に形成され、木質材料および前記接着剤で構成される表層と、を有した木質ボードを製造するものであり、
前記混合物として、前記木質材料および前記接着剤を混合した表層の混合物と、前記木質材料、前記蓄熱粒子、前記接着剤、および前記処理液を混合した芯層の混合物とを準備し、
前記芯層の混合物として、前記木質ボードの前記芯層の平均密度が、400~900kg/mの範囲となるように、前記芯層の混合物を作製することを特徴とする請求項7に記載の木質ボードの製造方法。
【請求項10】
前記蓄熱粒子の表面には、前記処理液を保持する保持材が付着していることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の木質ボードの製造方法。
【請求項11】
前記保持材は、木粉、木質繊維、または紙であることを特徴とする請求項10に記載の木質ボードの製造方法。
【請求項12】
前記接着剤は、熱硬化性樹脂の接着剤であり、前記処理液の沸点は、前記熱硬化性樹脂の熱硬化開始温度以上であることを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の木質ボードの製造方法。
【請求項13】
前記接着剤はイソシアネート系接着剤であり、前記処理液は水であることを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の木質ボードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜熱蓄熱材を含む木質ボードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の木質ボードは、木質材料と、木質材料同士を接着する接着剤と、潜熱蓄熱材を含む蓄熱粒子と、を混合した混合物を作製し、この作製した混合物をボード状に熱圧することにより、製造される。
【0003】
たとえば、特許文献1には、蓄熱粒子として、潜熱蓄熱材を内包したマイクロカプセルと、木質片と、接着剤と、を混合した混合物を、潜熱蓄熱材の相変化温度よりも高い温度で熱圧成形することで、木質ボードが製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-260705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示す如く、マイクロカプセルに潜熱蓄熱材を内包したとしても、熱圧成形時の熱により潜熱蓄熱材が溶融した状態でマイクロカプセルが加圧されるので、潜熱蓄熱材が漏れ出し、蒸発することがあった。このような点を鑑みると、熱圧時間を短縮することも考えられるが、この場合には、接着剤の接着不良などが発生するおそれがあった。
【0006】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、熱圧成形時に、接着剤による接着不良なく、潜熱蓄熱材が漏れ出すことを抑えることができる木質ボードの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を鑑みて、第1発明に係る木質ボードの製造方法は、粒状の木質材料と、少なくとも前記木質材料同士を接着する接着剤と、潜熱蓄熱材を含む蓄熱粒子と、を混合した混合物に対して、ボード状に熱圧成形を行うことにより、木質ボードを製造する製造方法であって、前記混合物として、前記潜熱蓄熱材の融点よりも高く、前記潜熱蓄熱材の沸点よりも低い沸点を有した処理液であり、かつ、ボード状に熱圧成形する加熱温度よりも沸点が低い前記処理液が表面に付着した蓄熱粒子と、前記木質材料と、前記接着剤とを混合した混合物を準備し、前記熱圧成形時に、前記処理液を蒸発させながらボード状に前記混合物を成形することを特徴とする。
【0008】
第1発明によれば、木質材料、接着剤、および蓄熱粒子を混合した混合物において、処理液が蓄熱粒子の表面に付着した混合物を準備する。この処理液は、熱圧成形の処理時に作用する処理液であり、潜熱蓄熱材の融点よりも高く、潜熱蓄熱材の沸点よりも低い沸点を有し、かつ、ボード状に熱圧成形する加熱温度よりも沸点が低い処理液である。
【0009】
このような処理液を蓄熱粒子に付着させることにより、混合物をボード状に熱圧成形する際に、処理液が沸点に到達し蒸発する。一方、処理液が沸点に到達している状態で、蓄熱粒子に含まれる潜熱蓄熱材は、溶融状態(液化した状態)にあるが、処理液が蒸発しているので、処理液の気化熱(潜熱)により、潜熱蓄熱材の温度上昇を抑えることができる。この結果、熱圧成形時に潜熱粒子をさらに加熱したとしても、液化した状態の潜熱蓄熱材からその一部が蒸発することを抑えることができる。
【0010】
また、蓄熱粒子は潜熱蓄熱材を含むものであれば、その構成は特に限定されるものではないが、第1発明の好ましい態様としては、前記蓄熱粒子は、前記潜熱蓄熱材を内方したマイクロカプセルを樹脂に分散させた粒子である。
【0011】
この態様によれば、蓄熱粒子は、潜熱蓄熱材を内方したマイクロカプセルを樹脂に分散させたものであるため、熱圧成形時に、熱可塑性樹脂によりマイクロカプセルの変形を抑制し、マイクロカプセルから潜熱蓄熱材が漏れ出すことを抑えることができる。
【0012】
さらに、第1発明の別の態様としては、前記蓄熱粒子は、木質粒子の少なくとも表面に前記潜熱蓄熱材が付着した粒子である。この態様によれば、木質粒子に潜熱蓄熱材を含浸した蓄熱粒子を容易に作製することができるばかりでなく、その表面に処理液を保持し易い。また、木質粒子に後述する保持材を適用し、保持材が木粉、木質繊維、または紙である場合には、保持材は蓄熱粒子に対して馴染み性が良いので、保持材を蓄熱粒子に容易に付着させることができる。
【0013】
第1発明の好ましい態様としては、前記木質ボードとして、前記木質材料に前記蓄熱粒子を均一に分散した木質ボードを製造するものであり、前記混合物として、前記蓄熱粒子を除いた前記木質ボードの平均密度が、200~380kg/mの範囲となり、前記木質材料および前記蓄熱粒子の質量に対する、前記蓄熱粒子の質量の割合が、20~44%の範囲となるように、前記混合物を作製する。
【0014】
この態様によれば、混合物の木質材料と蓄熱粒子との割合が、このような範囲を満たすことにより、処理液が蒸発した木質ボード内に蒸気が抜ける経路を確保し、蒸気が木質ボードの内部から外部に放出され易い。なお、これらの数値範囲の理由については、以下の実施形態において、詳細に説明する。
【0015】
また、第1発明の別の好ましい態様としては、前記木質ボードとして、前記木質材料、前記蓄熱粒子、および前記接着剤で構成される芯層と、前記芯層の両面に形成され、前記木質材料および前記接着剤で構成される表層と、を有した木質ボードを製造するものであり、前記混合物として、前記木質材料および前記接着剤を混合した表層の混合物と、前記木質材料、前記蓄熱粒子、前記接着剤、および前記処理液を混合した芯層の混合物とを準備し、前記芯層の混合物として、前記蓄熱粒子を除いた前記芯層の平均密度が、200~380kg/mの範囲となり、前記芯層の前記木質材料および前記蓄熱粒子の質量に対する、前記芯層の前記蓄熱粒子の質量の割合が、20~44%の範囲となるように、前記芯層の混合物を作製する。
【0016】
この態様によれば、芯層となる混合物の木質材料と蓄熱粒子との割合が、このような範囲を満たすことにより、木質ボードの芯層内に、処理液が蒸発した蒸気が抜ける経路を確保し、蒸気が木質ボードの芯層内から外部に放出され易い。なお、これらの数値範囲の理由については、以下の実施形態において、詳細に説明する。
【0017】
ここで、木質材の表面に処理液を付着することができるのであれば、その種類および量は特に限定されるものではないが、第1発明の好ましい態様としては、前記処理液は水であり、前記混合物を準備する際に、前記蓄熱粒子の総質量に、前記木質材料の含水率を乗じた質量以上の水を、前記蓄熱粒子の表面に付着させる。なお、本明細書でいう「処理液が水である」とは、熱圧成形時に蒸発するものが水であり、この水に、接着剤に対して親和性の高い添加剤、処理液の沸点または融点を調整する添加剤などが、さらに添加されていてもよい。
【0018】
本発明に係る木質ボードは、蓄熱粒子を有しない通常の木質ボードに対して、一部の木質材料が蓄熱粒子に置換されたボードである。したがって、蓄熱粒子に置換される木質材料が含有する水分量(質量)よりも多い質量の処理液を、蓄熱粒子の表面に付着させれば、潜熱蓄熱材の温度上昇をより確実に抑えることができる。
【0019】
なお、木質材料の密度より蓄熱粒子の密度の方が高いため、蓄熱粒子の総質量に対して木質材料の含水率を乗じた量以上の処理液を、木質材料の表面に付着させれば、熱圧成形時に蒸発するに十分な量の処理液を確保することができる。ここで、木質材料の含水率は、粒状の木質材料に含まれる質量含水率である。木質材料の含水率は、これを管理する温度および湿度等により、調整することができる。なお、蓄熱粒子の表面に処理液を付着させる際には、後述する保持材を蓄熱粒子の表面に付着させ、保持材に水を保持させてもよい。
【0020】
第2発明に係る木質ボードの製造方法は、粒状の木質材料の少なくとも表面に潜熱蓄熱材が付着した蓄熱粒子と、前記蓄熱粒子同士を接着する接着剤と、を混合した混合物に対して、ボード状に熱圧成形を行うことにより、木質ボードを製造する製造方法であって、前記混合物として、前記潜熱蓄熱材の融点よりも高く、前記潜熱蓄熱材の沸点よりも低い沸点を有した処理液であり、かつ、ボード状に熱圧成形する加熱温度よりも沸点が低い前記処理液が表面に付着した蓄熱粒子と、前記接着剤とを混合した混合物を準備し、前記熱圧成形時に、前記処理液を蒸発させながらボード状に前記混合物を成形することを特徴とする。
【0021】
第2発明によれば、蓄熱粒子および接着剤を混合した混合物において、処理液が蓄熱粒子の表面に付着した混合物を準備する。この処理液は、熱圧成形の処理時に作用する処理液であり、潜熱蓄熱材の融点よりも高く、潜熱蓄熱材の沸点よりも低い沸点を有し、かつ、ボード状に熱圧成形する加熱温度よりも沸点が低い処理液である。
【0022】
このような処理液を蓄熱粒子に付着させることにより、混合物をボード状に熱圧成形する際に、処理液が沸点に到達し蒸発する。一方、処理液が沸点に到達している状態で、蓄熱粒子に含まれる潜熱蓄熱材は、溶融状態(液化した状態)にあるが、処理液が蒸発しているので、処理液の気化熱(潜熱)により、潜熱蓄熱材の温度上昇を抑えることができる。この結果、熱圧成形時に潜熱粒子をさらに加熱したとしても、液化した状態の潜熱蓄熱材からその一部が蒸発することを抑えることができる。
【0023】
第2発明の好ましい態様としては、前記木質ボードは、前記蓄熱粒子同士を接着剤で接着したものであり、前記混合物として、前記木質ボードの平均密度が、400~900kg/mの範囲となるように、前記混合物を作製する。
【0024】
この態様によれば、木質ボードの平均密度が、このような範囲を満たすことにより、木質ボード内に、処理液が蒸発した蒸気が抜ける経路を確保し、蒸気が木質ボードの内部から外部に放出され易い。なお、これらの数値範囲の理由については、以下の実施形態において、詳細に説明する。
【0025】
第2発明の好ましい態様としては、前記木質ボードとして、前記蓄熱粒子および前記接着剤で構成される芯層と、前記芯層の両面に形成され、木質材料および前記接着剤で構成される表層と、を有した木質ボードを製造するものであり、前記混合物として、前記木質材料および前記接着剤を混合した表層の混合物と、前記木質材料、前記蓄熱粒子、前記接着剤、および前記処理液を混合した芯層の混合物とを準備し、前記芯層の混合物として、前記木質ボードの前記芯層の平均密度が、400~900kg/mの範囲となるように、前記芯層の混合物を作製する。
【0026】
この態様によれば、木質ボードの芯層の平均密度がこのような範囲を満たすことにより、木質ボードの芯層内に、処理液が蒸発した蒸気が抜ける経路を確保し、蒸気が木質ボードの芯層内から外部に放出され易い。なお、これらの数値範囲の理由については、以下の実施形態において、詳細に説明する。
【0027】
ここで、熱圧成形時に蓄熱粒子に処理液を付着した状態を保持することができるのであれば、蓄熱粒子の表面の状態は特に限定されるものではない。しかしながら第1および第2発明の好ましい態様としては、前記蓄熱粒子の表面には、前記処理液を保持する保持材が付着している。
【0028】
この態様によれば、蓄熱粒子の表面に付着した保持材により、蓄熱粒子の表面に処理液を保持することができる。これにより、処理液の気化熱により、潜熱蓄熱材の温度上昇をより確実に抑えることができる。また、保持材の材質等を選定し、保持材の付着量を調整することにより、蓄熱粒子の表面に保持する処理液の量を、所望の量に設定することができる。保持材は、蓄熱粒子の表面を被覆していることがより好ましい。これにより、蓄熱粒子の表面から均一に処理液が蒸発するので、蓄熱粒子の温度が局所的に増加することはない。
【0029】
また、保持材は、処理液を保持することができるのであれば、その材質は特に限定されるものではない。第1および第2発明の好ましい態様としては、前記保持材は、木粉、木質繊維、または紙である。これらの保持材は、処理液の保持性が高く、かつ、木質材料に付着し易い。なお、処理液が水である場合には、保持材はシリカゲルの粉末であってもよい。
【0030】
さらに、少なくとも木質材料同士を接着することができるのであれば、接着剤の種類は特に限定されるものではないが、第1および第2発明の好ましい態様としては、前記接着剤は、熱硬化性樹脂の接着剤であり、前記処理液の沸点は、前記熱硬化性樹脂の熱硬化開始温度以上である。
【0031】
この態様によれば、熱圧成形時に処理液が沸点に到達する前に、熱硬化性樹脂の熱硬化が開始するので、処理液の蒸発により、接着剤の接着性が阻害されることを抑えることができる。
【0032】
さらに、木質材料同士を接着することができるのであれば、接着剤の種類は特に限定されるものではないが、第1および第2発明の好ましい態様としては、前記接着剤はイソシアネート系接着剤であり、前記処理液は水である。接着剤がイソシアネート系接着剤であるので、熱圧成形時に、処理液である水と反応し、接着剤の硬化が促進される。これにより、接着剤による木質材料同士の接着性を高めることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る蓄熱ボードの製造方法によれば、熱圧成形時に、潜熱蓄熱材が漏れ出すことを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】第1発明の第1実施形態に係る木質ボードを説明するための部分的拡大断面図である。
図2】(a)~(d)は、第1発明の第1実施形態に係る蓄熱粒子の断面図である。
図3図1に示す木質ボードに熱圧成形する前の混合物の状態を説明するための部分的拡大断面図である。
図4】第1発明の第1実施形態に係る処理液、潜熱蓄熱材、接着剤の温度の関係を示したグラフである。
図5】(a)は、第1発明の第1実施形態に係る潜熱蓄熱材と木質ボード表面の温度変化を示したグラフであり、(b)は、比較となる潜熱蓄熱材と木質ボード表面の温度変化を示したグラフである。
図6】(a)~(c)は、第1発明の第2実施形態に係る蓄熱粒子の断面図である。
図7】(a)は、第1発明の第2実施形態に係る木質ボードに熱圧成形する前の混合物の状態を説明するための部分的拡大断面図であり、(b)は、(a)に示す混合物を熱圧成形した木質ボードの断面図である。
図8】(a)は、第1発明の第3実施形態に係る木質ボードに熱圧成形する前の混合物の状態を説明するための部分的拡大断面図であり、(b)は、(a)に示す混合物を熱圧成形した木質ボードの断面図である。
図9】(a)は、第2発明の第1実施形態に係る木質ボードに熱圧成形する前の混合物の状態を説明するための部分的拡大断面図であり、(b)は、(a)に示す混合物を熱圧成形した木質ボードの断面図である。
図10】(a)は、第2発明の第2実施形態に係る木質ボードに熱圧成形する前の混合物の状態を説明するための部分的拡大断面図であり、(b)は、(a)に示す混合物を熱圧成形した木質ボードの断面図である。
図11】実施例1、2および比較例に係る木質ボードの内部温度の変化を示したグラフである。
図12】実施例4、5に係る木質ボードの密度を示したグラフである。
【0035】
〔第1発明の第1実施形態〕
図1は、第1発明の第1実施形態に係る木質ボードを説明するための部分的拡大断面図である。以下に、木質ボード10を説明した後、その製造方法について説明する。
【0036】
1.木質ボード10について
本実施形態では、図1に示すように、木質ボード10は、木質材料としての木質片2と、少なくとも木質片2同士を接着する接着剤3と、潜熱蓄熱材を含む蓄熱粒子4と、含んでいる。なお、後述する処理液5は製造時(熱圧成形時)に蒸発するため、木質ボード10には含まれない。
【0037】
本実施形態では、木質ボード10の木質片2同士は、接着剤3を介して接着されており、木質ボード10の内部には複数の蓄熱粒子4が分散している。蓄熱粒子4は、たとえば、後述する図2(a)~(d)に示す形態で木質ボード10の内部に存在する。このような木質ボード10は、以下に示す一連の工程により製造することができる。
【0038】
2.木質ボード10の製造方法について
2-1.準備工程について
この工程では、まず、以下に示す、熱圧成形時に、ボード状に熱圧成形する前の混合物10aを構成する材料として、木質片2、接着剤3、蓄熱粒子4、および処理液5を準備する。なお、ここで示す符号は、図3に示すものである。以下に、これらの材料について詳述する。
【0039】
2-2.木質片2について
本実施形態では、木質片2は、木質ボード10の基材となる材料であり、チップ、フレーク、ウエハー、およびストランドから選択される少なくとも1種の形態のものを含む。本実施形態では、木質材料として木質片2を例示したが、たとえば、木質繊維から造粒した木質粒子や、木材を粉砕した木粉などであってもよい。木質片2の材料としては、マツ、スギ、ヒノキ等の針葉樹、ラワン、カポール、ポプラ等の広葉樹等を挙げることができる。本実施形態では、木質片2は、木材等を破砕機や切削機によって破砕や切削して小片化してチップとしたものである。
【0040】
2-3.接着剤3について
接着剤3は、少なくとも木質片2同士を接着するものである。木質片2の代わりに木質系材料として、木質繊維または木粉を用いる場合には、接着剤は、少なくともこれらを相互に接着するものある。なお、接着剤3により、木質片2と蓄熱粒子4とが接着されてもよく、蓄熱粒子4、4同士が接着されてもよい。
【0041】
接着剤3は特に限定されないが、本実施形態では、接着剤3は、熱硬化性樹脂の接着剤であることが好ましい。接着剤3としては、たとえば、ユリア樹脂接着剤、尿素樹脂接着剤、メラミン樹脂接着剤、ユリア・メラミン共縮合樹脂接着剤、またはフェノール樹脂接着剤などを挙げることができる。より好ましい接着剤3は、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、TDI(トリレンジイソシアネート)、MDIプレポリマー、TDIプレポリマー、およびこれらの2種以上混合したもの等のイソシアネート系接着剤である。
【0042】
後述するように、イソシアネート系接着剤は、水分と反応し硬化する湿気硬化型の接着剤であるので、処理液5が水である場合には、後述する熱圧成形時に、接着剤3の硬化が促進される。これにより、木質片2同士の接着性を高めることができる。
【0043】
2-4.蓄熱粒子4について
蓄熱粒子4は、潜熱蓄熱材を含む粒子である。たとえば、蓄熱粒子4としては、図2(a)に示すように、潜熱蓄熱材41をマイクロカプセル42に内包したもの、さらには、図2(b)に示すように、潜熱蓄熱材41をマイクロカプセル42に内包した粒子43を、粒状の樹脂基材44内に分散させたものであってもよい。マイクロカプセル42および樹脂基材44は、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂のいずれであってもよく、熱圧時に、マイクロカプセル42から潜熱蓄熱材41が流出しなければ、その樹脂は限定されるものではない。樹脂基材44は、熱圧時の加熱温度以下で軟化する(軟化する)熱可塑性樹脂であってもよい。
【0044】
さらに、蓄熱粒子4としては、図2(c)に示すように、蓄熱粒子4は、木質粒子45に潜熱蓄熱材41を含浸した粒子であってもよく、これに、樹脂がさらにコーティングされていてもよい。ここで、木質粒子45としては、木質繊維により成形された造粒粒子、木材等から得られる木質片、木粉などを挙げることができる。蓄熱粒子4は、木質粒子45に、第1実施形態で例示した潜熱蓄熱材41が含浸されたものであるが、たとえば、木質粒子45の表面に潜熱蓄熱材41が付着したものであってもよく、付着した潜熱蓄熱材41の一部が、木質粒子45に含浸されていてもよい。たとえば、図2(d)に示すように、木質繊維により成形された造粒粒子(木質粒子)46に潜熱蓄熱材41が含浸されたものであってもよく、その表面に潜熱蓄熱材41が付着していてもよい。また、この他にも、樹脂粒子34を構成する樹脂の分子構造に、潜熱蓄熱材が保持された蓄熱粒子であってもよい。木質粒子45の表面には微細な凹凸が形成されているため、処理液5を保持し易い。
【0045】
潜熱蓄熱材41の液相から固相への相変化温度(融点)は、18~25℃であることが好ましい。潜熱蓄熱材としては、n-ヘキサデカン、n-ヘプタデカン、n-オクタデカン、n-ノナデカン等或いはこれらの混合物で構成される、典型的には炭素数16~24の、n-パラフィンやパラフィンワックス等の飽和脂肪族炭化水素;1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン等或いはこれらの混合物で構成される、典型的には炭素数16~24の、直鎖α-オレフィン等の一価又は多価不飽和脂肪族炭化水素;オクタン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸等或いはこれらの混合物で構成される長鎖脂肪酸;上記脂肪酸のエステル、ポリエチレングリコール等のポリエーテル化合物等を挙げることができる。たとえば28℃で融解するものであれば、n-オクタデカンを選択し、18℃で融解するものであれば、n-ヘキサデカンを選択する。さらに、上述した融点の異なる複数の潜熱蓄熱材を混合して用いてもよい。
【0046】
2-5.処理液5について
図4に示すように、本実施形態において、混合物10aに添加する処理液は、上述した如く、潜熱蓄熱材41の融点MP2よりも沸点BP1が高い処理液であり、かつ、混合物10aをボード状に熱圧する加熱温度HPよりも沸点BP1が低い処理液である。なお、処理液5は、混合物10aを作製する際に液体であることから、処理液5の融点MP1は、潜熱蓄熱材の融点MP2よりも高い。なお、加熱温度HPとは、後述するように、熱圧成形時に、混合物10aの表面に接触する台座61と押圧部材62の表面の温度である。
【0047】
ここで、具体的には、潜熱蓄熱材41の融点MP2が、たとえば18~25℃であり、混合物10aをボード状に熱圧する加熱温度HPが、たとえば120~220℃である場合には、処理液の沸点BP1は、70~110℃程度であることが好ましい。このような条件を満たす処理液5として、エタノール、1-プロパノール、2‐プロパノール、2-ブタノールなどのアルコール、水などを挙げることができる。
【0048】
ここで、接着剤3が、上述した熱硬化性樹脂の接着剤である場合には、処理液5の沸点MP1は、熱硬化性樹脂の熱硬化開始温度SP以上である。熱圧成形時に処理液5が沸点MP1に到達する前に、熱硬化性樹脂の熱硬化が開始するので、処理液5の蒸発により、接着剤の接着性が阻害されることを抑えることができる。
【0049】
たとえば、MDI等のイソシアネート化合物を含むポリウレタン樹脂接着剤の場合、熱硬化開始温度SPを80℃程度に調整されることが一般的であるので、処理液5の沸点BP1は、その温度以上である水(沸点100℃)を用いることが好ましい。なお、この場合、後述する熱圧成形時に、この水はその沸点以上に加熱されて蒸気となるが、上述したポリウレタン樹脂接着剤は、完全に硬化していないので、水蒸気と反応し、その硬化が促進される。これにより、接着剤3による木質片2同士の接着性を高めることができる。
【0050】
3.混合物作製工程について
木質片2、接着剤3、蓄熱粒子4、および処理液5を混合する。これにより図3に示す混合物10aを作製する。本実施形態では、後述する熱圧成形時に、蓄熱粒子4の表面に処理液5が付着している状態を確保することができるのであれば、その混合方法は特に限定されるものではない。
【0051】
本実施形態では、木質片2、接着剤3、蓄熱粒子4、および処理液5を同時に混合してもよいが、たとえば、木質片2と接着剤とを混合後、処理液5を塗布した蓄熱粒子4または処理液5に浸漬した蓄熱粒子4をさらに混合してもよい。これにより、木質片2の表面に接着剤3が被覆された後、処理液5を含む蓄熱粒子4が混合されるので、木質片2に処理液5が浸透することを抑えることができる。また、この他にも、木質片2、接着剤3、および蓄熱粒子4を混合した後、処理液5を塗布してもよい。
【0052】
本実施形態では、図3に示すプレス装置の台座61の上に、混合物10aを配置して、これをマット状に成形する(フォーミングマットに成形する)。なお、本実施形態では、混合物10aには、表面に処理液5が付着した蓄熱粒子4が混合されているが、木質片2と接着剤3とを混ぜ合わせた混合層と、処理液5が付着した蓄熱粒子4を撒き散らした蓄熱層とを交互に積層することにより、これらの混合物10aをマット状に成形してもよい。この際、蓄熱層を形成する際に、処理液5をこの層に散布してもよい。さらに、木質片2と蓄熱粒子4の混合物を準備し、これをマット状に積層しながら、接着剤5と処理液4を散布してもよく、木質片2と蓄熱粒子4と処理液5の混合物を準備し、これをマット状に積層しながら、接着剤5を散布してもよい。このように、熱圧成形前の状態(マット状の状態)で、木質片2、接着剤3、蓄熱粒子4、および処理液5が混ざり合っていれば、混合物10aの作製方法は特に限定されるものではない。
【0053】
4.熱圧成形工程について
次に、図3に示すように、マット状に形成された混合物10aに対してホットプレス装置の加熱された押圧部材62で、熱圧成形を行うことにより木質ボード10を製造する。この際、台座61も加熱する。これにより、処理液5を蒸発させながらマット状の混合物10aを熱圧し、木質ボード10を製造する。マット状の混合物10aをボード状に成形する温度(加熱温度)は、接着剤3の種類にもよるが、たとえば120~220℃の範囲であり、熱圧時の加圧力は、たとえば2~5MPa程度である。
【0054】
ここで、図5(b)に示すように、処理液5を含まない混合物から木質ボードを熱圧成形すると、木質ボードの表面の温度は、熱圧成形の加熱温度HPに向かって増加し、あるタイミングから、液化した潜熱蓄熱材41が蒸発し易い。
【0055】
しかしながら、本実施形態では、図5(a)に示すように、熱圧成形時に、時刻t1で、処理液5は、その沸点BP1に到達し、処理液5が蒸発する。一方、蓄熱粒子4に含まれる潜熱蓄熱材41は、その融点MP2を超えているため、すでに液化している。この状態では、蓄熱粒子4に付着した処理液5が蒸発しているため、液化した蓄熱粒子4は処理液5の気化熱により吸熱され、潜熱蓄熱材41の温度上昇を抑えることができる(時刻t2以降参照)。したがって、熱圧成形時に、潜熱蓄熱材41が融点よりも高い温度で液化したとしても、潜熱蓄熱材41が蒸発することを抑えることができる。
【0056】
ここで、熱圧時に処理液5が蒸気となり、この蒸気が木質ボード10の内部から外部に放出され易いことが好ましい。たとえば、蓄熱粒子4を除いた木質ボード10の密度が高い場合、または、木質片2および蓄熱粒子4の総質量に対する蓄熱粒子4の割合が高い場合、木質片2同士の隙間から蒸気が外部に抜け難い。なお、接着剤3は、木質ボード10の総質量に対して、微量であるため、木質片2と蓄熱粒子4との総質量に対する蓄熱粒子4の質量の割合を特定すれば、蒸気が木質ボード10の内部から外部に放出され易い条件を導くことができる。
【0057】
このような観点から、混合物10aとして、蓄熱粒子4を除いた木質ボードの平均密度が、200~380kg/mの範囲となり、木質片2および蓄熱粒子4の質量に対する、蓄熱粒子4の質量の割合が、20~44%の範囲となるように、混合物を作製する。これにより、木質ボード10内に蒸気が抜ける経路を確保し、蒸気が木質ボード10の内部から外部に放出され易くなる。
【0058】
なお、蓄熱粒子4を除いた木質ボードの密度は、熱圧成形された木質ボード10の質量から含有する蓄熱粒子4の総質量を減算し、これを、木質ボード10の体積で除算することにより得ることができる。
【0059】
ここで、蓄熱粒子4を除いた木質ボードの平均密度が、200kg/m未満である場合、木質ボード10自体の曲げ強度等が確保できない場合がある。一方、蓄熱粒子4を除いた木質ボードの平均密度が、380kg/mを超えた場合、木質ボード10内の空隙が小さくなるため、たとえ蓄熱粒子4の割合を減らしたとしても、蒸気が上手く抜けないことがある。
【0060】
一方、木質片2の質量に対する、蓄熱粒子4の質量の割合が、20%未満である場合、蓄熱機能が十分でないことがある。一方、木質片2の質量に対する、蓄熱粒子4の質量の割合が、44%を超えた場合、木質ボード10内の蒸気が抜ける流路を蓄熱粒子4が塞いでしまい、たとえ蓄熱粒子4を除いた木質ボードの平均密度を小さくしても、蒸気が上手く抜けないことがある。
【0061】
〔第1発明の第2実施形態〕
以下に、図6および図7を参照しながら、第1発明の第2実施形態に係る木質ボードの製造方法を説明する。第2実施形態が、第1実施形態と相違する点は、蓄熱粒子4の表面に処理液を保持するための保持材6が付着している点である。したがって、第1発明の第1実施形態と同じ構成については、その詳細な説明を省略する。
【0062】
具体的には、本実施形態では、蓄熱粒子4の表面に処理液5を保持する保持材6が付着している。より具体的には、本実施形態では、蓄熱粒子4の表面が処理液5を保持する保持材6で被覆されている。保持材6は、木粉、木質繊維、または紙であり、処理液5を保持することができるのであれば、その材料は特に限定されるものではない。したがって、処理液5がたとえば水である場合には、保持材6にシリカゲルを挙げることができる。
【0063】
このような保持材6は、接着剤または粘着剤を介して蓄熱粒子4を覆っている。蓄熱粒子4を保持材6で被覆する際には、蓄熱粒子4に接着剤または粘着剤を塗布または浸漬等により被覆した後、保持材6である木粉、木質繊維、または紙を敷き詰めた上に、この蓄熱粒子4からなる粉末を押圧しながら転動する。これにより、蓄熱粒子4の表面に均一に保持材6を被覆することができる。
【0064】
たとえば、木粉、木質繊維、または紙の種類、被覆厚さ等を調整することにより、1つの蓄熱粒子4に被覆される保持材6の量を調整することができる。この保持材6の量の調整により、1つの蓄熱粒子4に対して、保持可能な処理液5の量を調整することができる。
【0065】
たとえば、図6(a)に示すように、潜熱蓄熱材41をマイクロカプセル42に内包した粒子43を、樹脂基材44内に分散させた蓄熱粒子4に、保持材6を被覆してもよい。また、図6(b)に示すように、木質粒子45に潜熱蓄熱材41を含浸した蓄熱粒子4に、保持材6を被覆してもよい。図6(c)に示すように、木質繊維により成形された造粒粒子46に潜熱蓄熱材41を含浸した蓄熱粒子4に、保持材6を被覆してもよい。木質粒子45、造粒粒子46の表面には微細な凹凸が形成されているため、保持材6を付着させやすい。
【0066】
第1発明の第1実施形態で示した方法と同様の方法で、準備工程を行い、混合物作製工程で、図7に示す混合物10aを作製する。この際、混合物10aを作製する際には、第1発明の第1実施形態で示した方法と同様の方法で、蓄熱粒子4の表面に処理液5を付着させる。この際、蓄熱粒子4の表面に被覆された保持材6により、保持材6に処理液5が保持される。
【0067】
得られた混合物10aをマット状に成形し、図7(a)に示すように、これを熱圧成形し、図7(b)に示すように木質ボード10を成形する。本実施形態では、蓄熱粒子4の表面に処理液5を保持することにより、蓄熱粒子4の表面に処理液5を確保できるので、潜熱蓄熱材41の温度上昇をより確実に抑えることができる。保持材6は、蓄熱粒子4の表面を被覆しているので、蓄熱粒子4の表面から均一に処理液5が蒸発するので、蓄熱粒子4の温度が局所的に増加することはない。
【0068】
特に、保持材6を、木粉、木質繊維、または紙とすることで、保持材6の処理液の保持性を高めることができる。また、図6(b)、(c)に示す木質粒子45等に対して、保持材6である木粉、木質繊維、または紙とは、馴染み性が良いので、保持材6を蓄熱粒子4に容易に付着させることができる。
【0069】
ここで、本実施形態では、処理液5は水であり、蓄熱粒子4の総質量に、木質片2の含水率を乗じた質量以上の水を、保持材に保持させることが好ましい。本実施形態で成形される木質ボード10は、蓄熱粒子を有しない通常の木質ボードに対して、一部の木質片が蓄熱粒子に置換されたボードである。したがって、蓄熱粒子4に置換される木質片2が含有する水分量(質量)よりも、多い質量の処理液5を保持材6に保持させれば、潜熱蓄熱材41の温度上昇をより確実に抑えることができる。なお、木質片2の含水率は、粒状の木質片2に含まれる質量含水率であり、一般的な含水率測定器に、木質片2の集合物を接触させること、得ることができる。木質片2の含水率は、これを管理する温度および湿度等により、調整することができる。なお、第1発明の第1実施形態において、処理液5を水とし、蓄熱粒子4の総質量に、木質片2の含水率を乗じた質量以上の水を、蓄熱粒子4の表面に付着させてもよい。
【0070】
〔第1発明の第3実施形態〕
以下に、図8を参照しながら、第1発明の第3実施形態に係る木質ボードの製造方法を説明する。第1発明の第3実施形態が、第1発明の第2実施形態と相違する点は、蓄熱粒子が分散した芯層11の両面に、木質片22が接着された表層12が形成された木質ボード10を製造する点である。したがって、第1発明の第2実施形態と同じ構成については、その詳細な説明を省略する。
【0071】
本実施形態では、図8(b)に示すように、木質ボード10は、その厚さ方向に積層された3層構造であり、木質ボード10の両面には、一対の表層12、12が形成されており、その内部には、芯層11が形成されている。本実施形態では、この芯層11は、木質片2、蓄熱粒子4、および接着剤3で構成され、表層12は、木質片2と接着剤3で構成されている。
【0072】
まず、準備工程において、熱圧成形時に、ボード状に熱圧成形する前の混合物を構成する材料として、木質材料としての木質片2、接着剤3、潜熱蓄熱材を含む蓄熱粒子4、および処理液5を準備する。ここで、本実施形態では、表層12の木質片22の粒径と、芯層11の木質片21の粒径とは、同じであってもよいが、芯層11の木質片21の粒径に比べて、表層12の木質片22の粒径が小さいほうがより好ましい。これにより、後述する熱圧成形時に、芯層11内で処理液5が蒸発した蒸気を、芯層11内において、均一に拡散することができる。接着剤31、32としては、上述した接着剤を挙げることができ、本実施形態では、接着剤31は、イソシアネート系接着剤であることが好ましい。接着剤32は、尿素樹脂接着剤またはメラミン樹脂接着剤であることが好ましい。
【0073】
混合物作製工程では、芯層11となる混合物11aと、表層12となる混合物12aとを作製する。芯層11の混合物11aは、木質片21と、接着剤31と、保持材6が保持された蓄熱粒子4と、保持材6に保持された処理液5とを混合した混合物である。表層12の混合物12aは、木質片22と、接着剤32とを混合した混合物である。
【0074】
得られた混合物11a、12aを、図8(a)に示す台座61の上に、マット状に順次積層し、ホットプレス装置の加熱された押圧部材62で、積層されたフォーミングマットに対して熱圧成形を行うことにより木質ボード10を製造する。得られた木質ボード10の芯層11には、蓄熱粒子4が分散している。
【0075】
ここで、芯層11の混合物11aとして、蓄熱粒子4を除いた芯層11の平均密度が、200~380kg/mの範囲となり、芯層11の木質片21および蓄熱粒子4の質量に対する、芯層11の蓄熱粒子4の質量の割合が、20~44%の範囲となるように、芯層11の混合物11aを作製するとよい。この範囲は、第1発明の第1実施形態で示した範囲と同じであり、この範囲を満たすことにより、第1発明の第1実施形態で示した場合と同様に、木質ボード10内に蒸気が抜ける経路を確保し、蒸気が木質ボード10の内部から外部に放出され易い。
【0076】
〔第2発明の第1実施形態〕
図9(a)は、第2発明の第1実施形態に係る木質ボードに熱圧成形する前の混合物の状態を説明するための部分的拡大断面図であり、図9(b)は、図9(a)に示す混合物を熱圧成形した木質ボードの断面図である。
【0077】
本実施形態では、図9(a)、(b)に示すように、木質ボード10は、粒状の木質材料として、上述した図2(c)にように、たとえば木質片などの木質粒子45に潜熱蓄熱材41が含浸された蓄熱粒子4と、接着剤3とを含んでいる。なお、後述する処理液5は製造時(熱圧成形時)に蒸発するため、木質ボード10には含まれない。以下に、第1発明の第1実施形態と同じ機能を有する部材は、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0078】
本実施形態では、木質ボード10の蓄熱粒子4同士は、接着剤3を介して接着されている。蓄熱粒子4は、たとえば図2(d)に示す形態で木質ボード10の内部に存在してもよい。このような木質ボード10は、以下に示す一連の工程により製造することができる。
【0079】
まず、熱圧成形時に、ボード状に熱圧成形する前の混合物10aを構成する材料として、蓄熱粒子4、接着剤3、および処理液5を準備する。以下に、これらの材料について詳述する。
【0080】
本実施形態では、蓄熱粒子4を構成する木質粒子45は、木質ボード10の基材となる粒状の木質材料であり、チップ、フレーク、およびウエハーから選択される少なくとも1種の形態のものを含む。本実施形態では、粒状の木質材料として木質粒子45を例示したが、たとえば、木質繊維から造粒した木質粒子や、木材を粉砕した木粉などであってもよく、潜熱蓄熱材41を付着することができるものであれば、特に限定されるものではない。木質粒子45の材料としては、マツ、スギ、ヒノキ等の針葉樹、ラワン、カポール、ポプラ等の広葉樹等を挙げることができる。本実施形態では、木質粒子45は、木材等を破砕機や切削機によって破砕や切削して小片化してチップとしたものである。
【0081】
本実施形態では、蓄熱粒子4は、木質粒子45に、第1発明の第1実施形態で例示した潜熱蓄熱材41が含浸されたものであるが、たとえば、木質粒子45の表面に潜熱蓄熱材41が付着したものであってもよく、付着した潜熱蓄熱材41の一部が、木質粒子45に含浸されていてもよい。木質粒子45の表面には微細な凹凸が形成されているため、処理液5を保持し易い。なお、本実施形態に係る潜熱蓄熱材41、接着剤3、および処理液5は、第1発明の第1実施形態で例示したものと同じものであり、図4に示す関係を満たすので、これらの詳細な説明を省略する。
【0082】
準備した接着剤3、蓄熱粒子4、および処理液5を混合する。これにより図9(a)に示す混合物10aを作製する。本実施形態では、後述する熱圧成形時に、蓄熱粒子4の表面に処理液5が付着している状態を確保することができるのであれば、第1発明の第1実施形態で例示した如く、その混合方法は特に限定されるものではない。
【0083】
本実施形態では、接着剤3、蓄熱粒子4、および処理液5を同時に混合してもよいが、たとえば、処理液5に蓄熱粒子4を浸漬した後、これに接着剤3を混合してもよく、接着剤3および蓄熱粒子4を混合した後、処理液5を塗布してもよい。この他にも、台座61の上に、混合物10aを層状に形成しながら処理液5を散布し、これをマット状に形成してもよい。また、この蓄熱粒子4を準備し、これをマット状に積層しながら、接着剤5と処理液4を散布してもよく、蓄熱粒子4と処理液5の混合物を準備し、これをマット状に積層しながら、接着剤5を散布してもよい。このように、熱圧成形前の状態(マット状の状態)で、接着剤3、蓄熱粒子4、および処理液5が混ざり合っていれば、混合物10aの作製方法は特に限定されるものではない。
【0084】
次に、図9(a)に示すように、マット状に形成された混合物10aに対してホットプレス装置の加熱された押圧部材62で、熱圧成形を行うことにより木質ボード10を製造する。この際、台座61も加熱する。これにより、処理液5を蒸発させながらマット状の混合物10aを熱圧し、木質ボード10を製造する。マット状の混合物10aをボード状に成形する加熱温度および加圧力の範囲は、第1発明の第1実施形態で例示した範囲と同様である。
【0085】
本実施形態では、第1発明の第1実施形態と同様に、熱圧成形時に処理液5が蒸発する。一方、蓄熱粒子4に含まれる潜熱蓄熱材41は、すでに液化している。蓄熱粒子4に付着した処理液5の蒸発により、液化した蓄熱粒子4は処理液5の気化熱によって吸熱され、潜熱蓄熱材41の温度上昇を抑えることができる。したがって、熱圧成形時に、潜熱蓄熱材41が融点よりも高い温度で液化したとしても、潜熱蓄熱材41が蒸発することを抑えることができる。
【0086】
ここで、熱圧時に処理液5が蒸気となり、この蒸気が木質ボード10の内部から外部に放出され易いことが好ましい。そこで、混合物10aとして、木質ボード10の平均密度が、400~900kg/mの範囲となるように、混合物を作製する。これにより、木質ボード10の曲げ強度を保持しつつ、木質ボード10内に蒸気が抜ける経路を確保し、蒸気が木質ボード10の内部から外部に放出され易くなる。なお、木質ボードの密度は、熱圧成形された木質ボード10の質量を、木質ボード10の体積で除算することにより得ることができる。
【0087】
ここで、木質ボード10の平均密度が、400kg/m未満である場合、木質ボード10自体の曲げ強度等が確保できない場合がある。一方、木質ボード10の平均密度が、900kg/mを超えた場合、木質ボード10内の空隙が小さくなるため、たとえ蓄熱粒子4の割合を減らしたとしても、蒸気が上手く抜けないことがある。
【0088】
〔第2発明の第2実施形態〕
以下に、図10を参照しながら、第2発明の第2実施形態に係る木質ボードの製造方法を説明する。本実施形態が、第2発明の第1実施形態と相違する点は、蓄熱粒子4の表面に処理液を保持するための保持材6が付着している点と、蓄熱粒子4が分散した芯層11の両面に、木質片22が接着された表層12が形成された木質ボード10を製造する点である。したがって、第2発明の第1実施形態と同じ構成については、その詳細な説明を省略する。
【0089】
具体的には、本実施形態では、第2発明の第1実施形態に係る蓄熱粒子4の表面に処理液5を保持する保持材6が付着している。本実施形態では、蓄熱粒子4の表面に処理液5を保持する保持材6が被覆されている。保持材6としては、木粉、木質繊維、または紙であることが好ましい。
【0090】
具体的には、本実施形態では、第1発明の第2実施形態で説明した如く、木質粒子45に潜熱蓄熱材41を含浸した蓄熱粒子4の表面に、保持材6を被覆している(図6(b)参照)。この他にも、図6(c)に示すように、木質繊維により成形された造粒粒子46に潜熱蓄熱材41を含浸した蓄熱粒子4の表面に、保持材6を被覆してもよい。
【0091】
保持材6としては、第1発明の第2実施形態で説明した材料と同様の材料を挙げることができ、蓄熱粒子4に対する保持材6の被覆方法も、第1発明の第2実施形態で説明した材料と同様の方法を挙げることができる。たとえば、保持材6である木粉、木質繊維、または紙の種類、被覆厚さ等を調整することにより、1つの蓄熱粒子4に被覆される保持材6の量を調整することができる。この保持材6の量の調整により、1つの蓄熱粒子4に対して、保持可能な処理液5の量を調整することができる。さらに、保持材6に木粉、木質繊維、または紙を用いた場合には、木質粒子45に対して馴染み性が良いので、保持材6を蓄熱粒子4に容易に付着させることができる。
【0092】
本実施形態では、図10(b)に示すように、木質ボード10は、その厚さ方向に積層された3層構造であり、木質ボード10の両面には、一対の表層12、12が形成されており、その内部には、芯層11が形成されている。本実施形態では、この芯層11は、蓄熱粒子4および接着剤3で構成され、表層12は、木質片22および接着剤3で構成される。
【0093】
まず、準備工程において、熱圧成形時に、ボード状に熱圧成形する前の混合物を構成する材料として、接着剤3、潜熱蓄熱材を含む蓄熱粒子4、および処理液5を準備する。ここで、本実施形態では、表層12の木質片22の粒径と、芯層11の木質粒子45の粒径とは、同じであってもよいが、芯層11の蓄熱粒子4(具体的には木質粒子45)の粒径に比べて、表層12の木質片22の粒径が小さいほうがより好ましい。これにより、熱圧成形時に、芯層11内で処理液5が蒸発した蒸気を、芯層11内において、均一に拡散することができる。
【0094】
ここで、第1発明の第2実施形態で示した方法と同様の方法で、蓄熱粒子4の表面に処理液5を付着させる。この際、蓄熱粒子4の表面に被覆された保持材6により、保持材6に処理液5が保持される。接着剤31、32としては、上述した接着剤を挙げることができ、本実施形態では、接着剤31は、イソシアネート系接着剤であることが好ましい。接着剤32は、尿素樹脂接着剤またはメラミン樹脂接着剤であることが好ましい。
【0095】
混合物作製工程では、芯層11となる混合物11aと、表層12となる混合物12aとを作製する。芯層11の混合物11aは、接着剤31と、保持材6が保持された蓄熱粒子4と、保持材6に保持された処理液5とを混合した混合物である。表層12の混合物12aは、木質片22と、接着剤32とを混合した混合物である。
【0096】
得られた混合物11a、12aを、図10(a)に示す台座61の上に、マット状に順次積層し、ホットプレス装置の加熱された押圧部材62で積層されたフォーミングマットに対して熱圧成形を行うことにより、木質ボード10を製造する。本実施形態では、蓄熱粒子4の表面に処理液5を保持することにより、蓄熱粒子4の表面に処理液5を確保できるので、潜熱蓄熱材41の温度上昇をより確実に抑えることができる。保持材6は、蓄熱粒子4の表面を被覆しているので、蓄熱粒子4の表面から均一に処理液5が蒸発し、蓄熱粒子4の温度が局所的に増加することはない。
【0097】
ここで、芯層11の混合物11aとして、木質ボード10の芯層11の平均密度が、400~900kg/mの範囲となるように、芯層11の混合物11aを作製するとよい。この範囲は、第2発明の第1実施形態で示した範囲と同じであり、この範囲を満たすことにより、第2発明の第1実施形態で示した場合と同様に、木質ボード10内に蒸気が抜ける経路が確保され、蒸気が木質ボード10の内部から外部に放出され易い。
【実施例
【0098】
以下に本発明の実施形態を説明する。
【0099】
〔実施例1(第1発明相当)〕
図8(b)に示す木質ボードを作製した。木質材料として、木質片(木質チップ)を487g準備し、図6(a)に示す木質繊維を保持材として被覆された蓄熱粒子(ペレット:三菱ケミカルインフラテック製)を300g準備した。この蓄熱粒子は、潜熱蓄熱材を内方したマイクロカプセルを樹脂に分散させた粒子である。
【0100】
蓄熱粒子に含まれる潜熱蓄熱材の相変化温度(融点)は、25℃であり、潜熱蓄熱材は、120℃以下では揮発しないものである。各表層の木質材料として、芯層の木質片の粒径よりも小さい木質片(木質チップ)372gを準備した。
【0101】
次に、芯層の混合物として、木質片と蓄熱粒子に、さらに、イソシアネート系接着剤(イソシアネート化合物としてMDIを用いた接着剤)と、水とを混合した。なお、蓄熱粒子の総質量に、木質片の含水率を乗じた質量以上の水を、保持材に保持するように、水を添加した。
【0102】
各混合物を積層し、プレス熱板温度(加熱温度)を、166℃、プレス時間5分として、仕上り厚みを16.2mmの木質ボードを熱圧成形し、表面を研磨して、15mmの厚さにした。この時の熱圧成形時の木質ボード内の温度を測定した。この結果を、図11に示す。
【0103】
〔実施例2(第1発明相当)〕
実施例1と同じように、木質ボードを作製し、木質ボード内の温度を測定した。実施例1と相違する点は、木質材料として、木質片(木質チップ)を387gにした点である。この結果を、図11に示す。
【0104】
〔比較例〕
実施例1と同じように、木質ボードを作製し、木質ボード内の温度を測定した。実施例1と相違する点は、処理液である水を添加しなかった点である。この結果を、図11に示す。
【0105】
〔結果および考察〕
図11に示すように、実施例1および実施例2の木質ボードの内部温度は、100℃を超えたあたりで、一定になったが、比較例の木質ボードの内部温度は、上昇し、最終的には、120℃を超え、潜熱蓄熱材が蒸発した。この結果から、実施例1および2に示すように、蓄熱粒子に付着した処理液が蒸発することにより、この気化熱により蓄熱粒子(潜熱蓄熱材)の温度上昇が抑えることができたことがわかった。
【0106】
〔実施例3~7(第1発明相当)〕
実施例1と同様に、実施例3~7の木質ボードをそれぞれ2体作製した。実施例1と相違する点は、木質材料である木質チップと蓄熱粒子の量と割合を表1に示すように変更した点である。なお、実施例7と実施例1とは同じである。
【0107】
さらに、実施例3~7に対して板厚方向の木質ボード表面から厚さ方向の位置における密度を測定し、ここから、蓄熱粒子を除いた芯層の平均密度(蓄熱粒子を除く芯材の密度)を算出した。図12は、表1の実施例4および実施例5の下欄の木質ボードの密度である。
【0108】
さらに、芯層の木質材料および蓄熱粒子の質量に対する芯層の蓄熱粒子の質量の割合(蓄熱粒子の割合)を算出した。この結果を、表1に示す。さらに、実施例3~7の木質ボードに対して、潜熱蓄熱材の蒸発の状態を確認した。この結果も、表1に示す。
【0109】
〔実施例8、9(第1発明相当)〕
実施例3と同様に、実施例8、9の木質ボードを作製した。実施例1と相違する点は、表1に示すように、芯層の蓄熱粒子に、木質粒子(木質チップ)に潜熱蓄熱材を含浸した蓄熱粒子(図2(c)参照)を用いた点と、木質チップと蓄熱粒子の量と割合を表1に示すように変更した点である。実施例8、9の木質ボードに対して、潜熱蓄熱材の蒸発の状態を確認した。この結果も、表1に示す。
【0110】
〔実施例10(第2発明相当)〕
実施例1と同様に、実施例10の木質ボードを作製した。実施例1と相違する点は、表1に示すように、芯層の蓄熱粒子に、木質粒子(木質チップ)に潜熱蓄熱材を含浸した蓄熱粒子を用い、芯層に木質材料を含めなかった点である。さらに、実施例10の木質ボードに対して、潜熱蓄熱材の蒸発の状態を確認した。この結果も、表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
〔結果および考察〕
蓄熱粒子に、潜熱蓄熱材を内方したマイクロカプセルを樹脂に分散させた粒子を用いた場合、実施例3、4、7では、潜熱蓄熱材がやや蒸発していることが確認できたが、実施例5、6では、潜熱蓄熱材の蒸発はほぼなかった。
【0113】
実施例3、4では、蓄熱粒子を除く芯材の密度が高いため、処理液が蒸発しても、その内部に溜り、この結果、潜熱蓄熱材の温度が上昇したと考えられる。一方、実施例7では、木質粒子に対して、蓄熱粒子の割合が高かったため、処理液が蒸発しても、木質ボード内の蒸気が抜ける流路を蓄熱粒子が塞いでしまい、この結果、潜熱蓄熱材の温度が上昇したと考えられる。
【0114】
以上の点から、芯層の混合物として、蓄熱粒子を除いた前記芯層の平均密度が、363kg/m(実施例5)以下、芯層の木質材料および蓄熱粒子の質量に対する、芯層の蓄熱粒子の質量の割合が、44%(実施例6)以下であれば、芯層から確実に蒸気が抜けると考えられ、発明者の経験から、芯層の平均密度が、380kg/m以下であれば、芯層から蒸気が抜けると予想される。
【0115】
木質粒子に潜熱蓄熱材が含浸した蓄熱粒子を用いた場合、実施例8、9に示すように、蓄熱粒子の割合を増やしても、潜熱蓄熱材の蒸発はほぼなかった。これは、木質粒子に潜熱蓄熱材を含浸することにより、木質ボードの内部に隙間が形成され易くなったからであると考えられる。実施例10に示すように、芯層の蓄熱粒子の割合が100%であっても、潜熱蓄熱材の蒸発はほぼなかった。なお、実施例10の木質ボードの密度は、600kg/m程度であった。ここで、発明者らの経験から、一般的な木質ボードでは、木質ボードの平均密度が、400~900kg/mの範囲であれば、木質ボードの強度を確保しつつ、内部が蒸気の抜けやすい多孔質となることがわかっており、このような範囲に設定することで、潜熱蓄熱材の蒸発を抑えることができる。
【0116】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【0117】
各実施形態では、1種類の蓄熱粒子を用いて、蓄熱ボードを製造したが、これらの実施形態において、たとえば、異なる融点を有した潜熱蓄熱材を含む蓄熱粒子を用いてもよい。
【符号の説明】
【0118】
2,21,22:木質片(木質材料)、3,31,32:接着剤、4:蓄熱粒子、41:潜熱蓄熱材、5:処理液(水)、6:保持材、10:木質ボード、10a,11a,12a:混合物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12