(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】分子イメージングおよび関連する方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6841 20180101AFI20220902BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20220902BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20220902BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
C12Q1/6841 Z
G01N33/483 C
G01N33/53 D
G01N33/53 M
G01N21/64 F
G01N21/64 E
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019071309
(22)【出願日】2019-04-03
(62)【分割の表示】P 2015561338の分割
【原出願日】2014-03-04
【審査請求日】2019-05-07
(32)【優先日】2013-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517118157
【氏名又は名称】オプティカル バイオシステムズ ホールディング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】ビール マーク
(72)【発明者】
【氏名】クック ロナルド エム.
(72)【発明者】
【氏名】コアッシン ピーター ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】オージャロ アルトゥーロ
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ジェクワン
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-501679(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0228068(US,A1)
【文献】特表2009-513137(JP,A)
【文献】OPTICS LETTERS, 2011, 36(2), pp.148-150
【文献】蛋白質 核酸 酵素、2008年、53巻、15号、1926~1931頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/00-3/00
C12M 1/00-3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブと標的分子との分子複合体である単一分子のイメージングの方法であって、前記方法は、
a)検査試料をプローブに露出することで、プローブと標的分子との分子複合体を得るステップであって、前記プローブは、標的分子に特異的に結合する第1の部分と、1つ以上の波長において光と相互作用する1つ以上の蛍光基の結果として検出可能である第2の部分とを備え、前記プローブは、複合体を提供するために標的分子に結合する、ステップと、
b)前記検査試料の領域を前記1つ以上の蛍光基と相互作用する1つ以上の波長の光に露出するステップと、
c)1つ以上の
プローブと標的分子との分子複合体の画像を提供するために、20×の対物レンズの倍率、および合成開口光学系を用いて、前記1つ以上の蛍光基と相互作用する1つ以上の波長の光の前記相互作用からの結果を検出するステップと、
を備え、
前記画像は、少なくとも1×10
5μm
2の画像化面積にわたって450nmより良好な解像度を保有し、
前記画像は、検出設定を何も変更しない単一の検出ステップにおいて得られ、
前記画像は、少なくとも20個の細胞、および、プローブと標的分子との分子複合体を
別個に少なくとも1×10
2
個含み、
前記検査試料の厚さは、2μm以下である、
方法。
【請求項2】
干渉パターンが、少なくとも4つの光ビーム対の間で重なる部位における、前記検査試料の領域上に生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記
標的分子は、mRNA、lncRNA、snRNA、染色体、BrdUを備えるDNA鎖、EdUを備えるDNA鎖、たんぱく質、および小分子からなる標的分子の群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記蛍光基は、蛍光性有機色素、量子ドット、インターカレータ蛍光色素および発現可能な蛍光タンパク質からなる蛍光化合物の群から選択された蛍光化合物である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記画像化面積は、少なくとも1×10
6μm
2である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記標的分子はmRNA分子であり、かつ、前記プローブは、1つ以上の蛍光基を有するオリゴヌクレオチドプローブである、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記プローブの前記第2の部分は、単一の蛍光標識を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
さらに、少なくとも1×10
5μm
2の画像化面積を有する画像から、前記
分子複合体を定量化するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2013年3月6日出願の米国特許仮出願第61/851,276号の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に、単一分子、または単一分子の1つ以上のコレクションのイメージングと、イメージングに関連する方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
極小面積(すなわち、10nm×100nm未満の面積)において単一分子を約300nmの解像度で検出できる方法が報告されている。例として、蛍光インサイツ・ハイブリダイゼーション(FISH:fluorescence in situ hybridization)は、単一mRNA分子を検出するのに十分に高感度な遺伝子発現の測定方法である。Singerによって最初に記載されたように、この方法は、5つのオリゴヌクレオチド・プローブの各mRNA標的への同時ハイブリダイゼーションを含む。非特許文献1。オリゴヌクレオチドは、それぞれ約50ヌクレオチド長であり、5つまでのフルオロフォアを用いてそれぞれが標識される。mRNA標的は、ハイブリダイゼーションの際に蛍光顕微鏡を用いて回折限界蛍光スポットとして視認可能になる。
【0004】
変更されたFISH法は、Rajによって開発された。非特許文献2を参照。限られた数の複数標識プローブの代わりに多数の単一標識プローブを用いるこの方法は、Singerの元のFISH手順によって提起された、いくつかの問題、すなわち、強く標識されたオリゴヌクレオチドは、合成および精製が難しい;あるフルオロフォアが同じオリゴヌクレオチド上の複数のコピー中に存在するときに、自己消光が生じる;信号が変動しやすい、という問題を克服するために用いられる。非特許文献3を参照。非特許文献4も参照。Rajの変更された方法は、比較的簡易なプローブ生成および精製を用いて、極めて小さい視野で識別できて正確なmRNAカウントを供給する均一な信号を生成する。
【0005】
SingerおよびRajのような科学者の業績にも関わらず、本分野には改良された分子イメージングおよび関連する方法に対するニーズが依然として存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Femino AM, Fay FS, Fogarty K, Singer RH. Visualization of single RNA transcripts in situ. Science. 1998;280:585-590
【文献】Raj A, van den Bogaard P, Rifkin SA, van Oudenaarden A, Tyagi S. Imaging individual mRNA molecules using multiple singly labeled probes. Nat Methods, 2008;5;877-879
【文献】Femino AM, Fogarty K, Lifshitz LM, Carrington W, Singer RH. Visualization of single molecules of mRNA in situ. Methods Enzymol. 2003:361;245-394
【文献】Randolph JB, Waggoner AS. Stability, specificity and fluorescence brightness of multiply-labeled fluorescent DN A probes. Nucleic Acids Res. 1997;25;2923-2929
【発明の概要】
【0007】
方法の態様において、本発明は、単一分子のイメージングの方法を提供する。方法は、a)検査試料をプローブに露出するステップであって、プローブは、標的分子に特異的に結合する第1の部分と、1つ以上の波長において光と相互作用する1つ以上の化学基の結果として検出可能である第2の部分とを備え、プローブは、複合体を提供するために標的分子に結合する、ステップと、b)複合体を1つ以上の化学基と相互作用する1つ以上の波長の光に露出するステップと、c)1つ以上の単一分子の画像を提供するために、1つ以上の化学基と相互作用する1つ以上の波長の光の相互作用からの結果を検出するステップとを備える。画像は、少なくとも1×105μm2の画像化面積にわたって450nmより良好な解像度を保有し、画像は、検出設定を何も変更しない単一の検出ステップにおいて得られる。
【0008】
別の方法の態様において、本発明は、単一分子のイメージングの方法を提供する。方法は、a)検査試料をプローブに露出するステップであって、プローブは、標的分子に特異的に結合する第1の部分と、1つ以上の波長において光と相互作用する1つ以上の化学基を含むように変更可能である第2の部分とを備え、プローブは、複合体を提供するために標的分子に結合する、ステップと、b)プローブの第2の部分を光と相互作用する化学基のうちの1つ以上を含むように変更するステップと、c)複合体を1つ以上の化学基と相互作用する1つ以上の波長の光に露出するステップと、d)1つ以上の単一分子の画像を提供するために、1つ以上の化学基と相互作用する1つ以上の波長の光の相互作用からの結果を検出するステップとを備える。画像は、少なくとも1×105μm2の画像化面積にわたって450nmより良好な解像度を保有し、画像は、検出設定を何も変更しない単一の検出ステップにおいて得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】SAOイメージング・デバイスの一実施形態を示す。
【
図2A】SAOイメージング・デバイスの別の実施形態を示す。
【
図2B】一実施形態による、SAOイメージング・デバイスの照明パターン生成モジュールの内部構造を示す。
【
図2C】別の実施形態による、SAOイメージング・デバイスの照明パターン生成モジュールの内部構造を示す。
【
図4】26mmの視野数を有する光学顕微鏡を用いた視野の直径および面積の表を示す。
【
図5】一定の開口数(0.95)における解像度への光の波長の影響に関する表を示す。
【
図6】標準的な蛍光顕微鏡を用いたmRNA、またはmRNAのコレクションのイメージングの方法と、対照的に、mRNA、またはmRNAのコレクションを画像化するためにSAOイメージング・デバイスを備えるシステムを用いた本発明の方法とを示す。
【
図7】およそ100個の細胞を含む画像領域(image area)内のTOP1 mRNA(高輝度/白色/緑色ドット)のSAO画像の一部を示す。
【
図8】TOP1 mRNAのSAO画像の関心領域の選択を示し、スポット強度および品質に基づく選択処理グラフを含む。
【
図9】MCF7ヒト乳腺癌細胞株からのHER2 mRNA(高輝度/白色ドット)と関連付けられたSAO画像を示す。100個超の細胞を含む画像領域(image area)がその画像領域のおよそ20個の細胞を含む選択画像とともに示される。20個の細胞の画像について、平均すると各細胞がHER2 mRNAのおよそ72個のコピーを含むことが示された。
【
図10】標準的な蛍光顕微鏡(60×/1.41NA 0.1油浸)を用いて得られたA549細胞からのFKBP5 mRNA(高輝度/白色ドット)と関連付けられた2つの画像を示す。「Minus Dex」とラベルされた画像は、24nMデキサメタゾンの添加によるアップレギュレーションより前の細胞(およそ13個の細胞)を示し、画像「Plus Dex」は、8時間にわたる24nMデキサメタゾンの添加後の細胞(およそ14個の細胞)を示す。
【
図11】SAOイメージング・デバイス(20×)を備えるシステムを用いて得られたA549細胞からのFKBP5 mRNA(高輝度/白色ドット))と関連付けられた2つの画像(全画像の1/10)を示す。「Minus Dex」とラベルされた画像は、24nMデキサメタゾンの添加によるアップレギュレーションより前の細胞(50個超の細胞)を示し、画像「Plus Dex」は、8時間にわたる24nMデキサメタゾンの添加後の細胞(50個超の細胞)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、一般に、単一分子または単一分子の1つ以上のコレクションのイメージング、およびイメージングに関連する方法に関する。
【0011】
単一分子のイメージングの方法は、典型的に、1)検査試料(例えば、生物体、エキソソーム、組織または細胞)をプローブに露出するステップであって-プローブは、標的分子(例えば、RNA、タンパク質、小分子)に特異的に結合する部分と、1つ以上の波長において光と相互作用する1つ以上の化学基の結果として検出可能である部分、もしくは、1つ以上の波長において光と相互作用する1つ以上の化学基を含むように変更できて-複合体を提供するために標的分子に結合する-部分のいずれかとを含む、ステップと、2)複合体を1つ以上の化学基と相互作用する1つ以上の波長の光に露出するステップと、3)1つ以上の単一分子の画像を提供するために、1つ以上の化学基と相互作用する1つ以上の波長の光の相互作用からの結果を検出するステップとを含み、イメージング・システムは、単一の検出ステップ(すなわち、1つのデータ・セットが検出設定を何も変更しないで(例えば、光学部品もカメラも移動しないで)収集される)において少なくとも1×105μm2の画像化面積にわたって450nmより良好な検出解像度を提供し、それによって、単一分子または単一分子のコレクションのイメージングを行う。イメージング・システムは、典型的に、合成開口光学系(SAOイメージング(synthetic aperture optics imaging))または蛍光偏光を実現するデバイスを備えるシステムである。
【0012】
「SAOイメージング」は、イメージング機器、例えば、レンズおよびカメラの物理的制約条件によって設定されてしまうものを凌ぐ解像度を達成すべく、一連のパターン化または構造化した光パターンを用いてイメージング対象を照明する光学的イメージング方法を指す。SAOでは、標的に関する空間情報を検出するために、イメージング対象が選択的に励起される。周波数(またはフーリエ)ドメインと標的ドメインとの間に1対1の関係があるため、SAOは、その空間的な周波数情報を得ることによって元のイメージング対象を再構成できる。参照により本明細書に組み込まれる、「Synthetic Aperture Optics Imaging Method Using Minimum Selective Excitation Patterns」と題する、2010年3月19日出願の米国特許出願第12/728,110号を参照。
【0013】
「蛍光偏光」は、フルオロフォアによって放出された光が異なる偏光軸に沿って不均等な強度を有する現象を指す。本明細書において考察する顕微鏡法の用途において、蛍光偏光は、照明光の経路中に、さらに機器のイメージング部/カメラより前に偏光子を用いる。例えば、Lokowicz, J.R., 2006. Principles of Fluorescence Spectroscopy (3rd ed., Springer, Chapter 10-12)を参照。さらに、Valeur, Bernard. 2001. Molecular Fluorescence: Principles and Applications Wiley- VCH, p. 29も参照。
【0014】
図1は、SAOイメージング・デバイスの一実施形態を示す。デバイスは、複数ビーム対光学式スキャナである。このスキャナは、スキャンの取得速度を大幅に向上させる並列データ取得を可能にするため、有利である。n個のビームで構成されたスキャナでは、並列データ取得の度合い、それゆえに既知の光学式スキャナを上回る取得速度の向上の度合いがnの2乗オーダで増加する。これは、既知の光学式スキャナの取得速度が試料もしくは1つのビーム対の機械的回転速度によって制限されることを仮定している。
【0015】
複数ビーム対光学式スキャナ10は、一実施形態において、試料16に向けたn個のソース・ビーム、総体的に14とする、からなるアーク12を備え、nは10に等しく、アーク12は円である。n個のソース・ビーム14のそれぞれは、異なる位相配列または異なる光周波数を有しうる。n個のソース・ビーム14、14’の各対間の位相配列または周波数差は、n個のソース・ビーム14の他の対間の位相配列または周波数差のうちで唯一であるように選ばれる。n個のソース・ビーム14は、空間20の体積中で重なり合う。検出器18は、アーク12内の複数のビーム対のそれぞれからの情報を含む信号を検出して、この信号をその対の位相配列または周波数差に対応する固有の位相配列またはキャリア周波数を用いて符号化する。
【0016】
空間20の体積を通過するn個のソース・ビーム14を用いた複数ビーム対光学式スキャナ10では、n個のソース・ビーム14が重なり合って試料16と相互作用し、このスキャナの検出信号を当分野で知られた方法を用いて算出できる。参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,016,196号を参照。
【0017】
図2Aは、一実施形態による、分子を選択的に励起するためのSAOイメージング・デバイス(構造化照明機器)を示す。
図2Aに示される照明機器は、例示的であるに過ぎず、本発明によるSAO用照明機器の構成には様々な変更がなされてもよい。
図2Aにおける照明機器の例は、図の簡潔さのために2つの干渉パターン生成モジュール(IPGM:interference pattern generation module)112、113のみを示すが、ある用途にはより多くのIPGMが存在することになろう。各IPGMは、モジュール形態であり、k-空間サンプリング点の1つの共役対に対応する所定のピッチおよび方位の1つの選択的励起パターンを生成するように構成される。従って、IPGMおよび所定のピッチおよび方位の2‐D正弦曲線選択的励起パターンと、k-空間サンプリング点の1つの共役対との間には1対1の関係が存在する。選択的励起パターンが多数(N)になるほど、より多くのIPGMがSAO照明機器に必要となるであろう。
【0018】
構造化照明機器100は、複数の相互にコヒーレントなレーザビームを生成し、それらの干渉が干渉パターンを作り出す。かかる干渉パターンは、細胞が固定された基板104上に投射されて、観察102下の細胞および分子を選択的に励起する。干渉パターンを生成するために複数のレーザビームの干渉を用いることは、多くの理由で有利である。例えば、これは、FOV(視野:Field of View)およびDOF(被写界深度:Depth of Field)が極めて大きい高解像度の励起パターンを可能にする。本明細書では
図2Aの構造化照明機器が分子のイメージング用励起パターンを生成する例とともに記載されるが、
図2Aの構造化照明装置は、任意の他のタイプの標的のイメージング用励起パターンを生成する、任意の他のタイプの用途にも使用できることに留意すべきである。
【0019】
図2Aを参照すると、構造化照明機器100は、レーザ102、ビームスプリッタ104、シャッタ105、107、ファイバカップラ108、109、一対の光ファイバ110、111(代わりに、レーザビームを送るためにフリービーム・アーキテクチャまたは任意の他の適切な方法を用いることもできるであろう)、および一対の干渉パターン生成モジュール(IPGM)112、113を含む。先に説明したように、各IPGM112、113は、k-空間サンプリング点の1つの共役対に対応する干渉パターン(選択的励起パターン)を生成する。レーザ102のビーム103は、ビームスプリッタ104によって2つのビーム140、142に分割される。1対の高速シャッタ105、107は、各ビーム140、142をそれぞれスイッチ「オン」もしくは「オフ」するために、または各ビーム140、142の振幅をそれぞれ変調するために用いられる。このようにスイッチされたレーザビームは、ファイバカップラ109、108経由で一対の偏光維持型光ファイバ111、110へ結合される。各ファイバ111、110は、それぞれ対応する干渉パターン生成モジュール113、112に接続される。干渉パターン生成モジュール113は、コリメーティング・レンズ114’、ビームスプリッタ116’および平行移動ミラー118’を含み、同様に干渉パターン生成モジュール112は、コリメーティング・レンズ114、ビームスプリッタ116および平行移動ミラー118を含む。
【0020】
光ファイバ110からのビーム144は、コリメーティング・レンズ114によってコリメートされて、ビームスプリッタ116によって2つのビーム124、126に分割される。ミラー118は、ビーム126の光路長を変更するためにアクチュエータ120によって平行移動する。このように、ある1つのビーム126の光路長を変更することにより(すなわち、平行移動ミラー118の使用によってビーム126の光位相を変調することにより)パターンの位相が変化した干渉パターン122が基板104(substrate 204)上の2つのレーザビーム124、126間の重なり領域に生成される。
【0021】
同様に、光ファイバ111からのビーム146は、コリメーティング・レンズ114’によってコリメートされて、ビームスプリッタ116’によって2つのビーム128、130に分割される。ミラー118’は、ビーム128の光路長を変更するためにアクチュエータ120’によって平行移動する。このように、ある1つのビーム128の光路長を変更することにより(すなわち、平行移動ミラー118’の使用によってビーム128の光位相を変調することにより)パターンの位相が変化した干渉パターン122が基板104上の2つのレーザビーム128、130間の重なり領域に生成される。
【0022】
図2Aに示されるように、各IPGM112、113は、本明細書の実施形態によるモジュール形態で実装され、1つのIPGMがk-空間点の1つの共役対に対応する干渉パターンを作り出す。IPGMとk-空間点との間のこのモジュール化された1対1の関係は、本明細書の実施形態によるSAO用ハードウェアの設計プロセスを大幅に簡略化する。SAOに用いられる選択的励起パターンの数が増減するにつれて、SAOハードウェアは、専らIPGMの数をモジュール式に増減させることによって変化する。対照的に、従来のSAO機器は、個別的な干渉パターン生成モジュールは有さず、できるだけ多くの多重干渉を作り出す一連のスプリットビームを有していた。このようにSAO機器を設計する従来の方法は、最適化されない、もしくは冗長なパターンを作り出し、SAOシステムの動作を遅らせて複雑にした。
【0023】
この
図2Aに示される実装は、その簡便さゆえに用いられるが、様々な他のアプローチを本発明の範囲内で用いることができる。例えば、励起パターン122を変化させるために、ビーム124、126、128、130の1つ以上の光振幅および位相に加えてまたはその代わりに、振幅、偏光、方向および波長を変調できる。さらに、励起パターンを変化させるために、固定された細胞に対して構造化照明を専ら平行移動できる。同様に、励起パターンを変化させるために、構造化照明に対して固定された細胞を平行移動できる。さらに、平行移動ミラー118、118’に加えてまたはその代わりに様々なタイプの光変調器、例えば、音響光学変調器、電気光学変調器、ガルバノメータにより変調された回転窓、および微小電気機械システム(MEMS:micro-electro-mechanical system)変調器を用いることができる。加えて、
図2Aの構造化照明機器は、コヒーレント電磁放射用の照明光源としてレーザ102を用いることが本明細書には記載されるが、レーザ102の代わりに他のタイプのコヒーレント電磁放射光源、例えば、SLD(スーパールミネセントダイオード:super-luminescent diode)を用いてもよい。
【0024】
さらに、
図2Aは、干渉パターン122を生成するための4つのビーム124、126、128、130の使用を示すが、光源レーザビームを2つより多いビームに分割することによって、より多数のレーザビームを用いることができる。例えば、干渉パターン122を生成するために64のビームを用いてもよい。加えて、ビームの組み合わせが対による組み合わせに制限される必要はない。例えば、干渉パターン122を生成するために3つのビーム124、126、128、もしくは3つのビーム124、126、130、または3つのビーム124、128、130、もしくは3つのビーム126、128、130(three beams 126,129,130)、あるいはすべての4つのビーム124、126、128、130を用いることができる。通常は、速度を最大にするために必要なビーム組み合わせの最小セット(2つのビーム)が選ばれる。さらに、ビームは、コリメートする、収束させる、または発散させることができる。
図2Aの具体的な実装とは異なるが、異なる用途に関しては、(i)「Multiple Beam Pair Optical Imaging」と題する、2000年1月18日にMermelsteinが特許を取得した米国特許第6,016,196号、(ii)「Optical Synthetic Aperture Array」と題する、2000年10月31日にMermelsteinが特許を取得した米国特許第6,140,660号、および(iii)「Optical Synthetic Aperture Array」と題する、2003年4月15日にMermelsteinが特許を取得した米国特許第6,548,820号において複数のビーム対を用いた干渉パターンの生成に関する追加の背景情報を見ることができ、これらのすべてが参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
図2Bは、一実施形態による、照明パターン生成モジュールの内部構造を示す。
図2Bの実施形態は、ミラー162の後に配置された回転窓160をIPGM150内に有する。光ファイバ110からのビーム170は、コリメーティング・レンズ154によってコリメートされ、コリメートされたビーム144は、ビームスプリッタ156によって2つのビーム173、174に分割される(代わりに、ビームをミラーへ送るためにフリービーム・アーキテクチャを用いることもできるであろう)。ビーム173は、ミラー158によって反射され、反射されたビーム178は、イメージング対象へ投射されて干渉パターン180を生成する。ビーム174は、ミラー162によって反射され、反射されたビーム176の光路長がガルバノメータを用いて回転される光学窓160により変調され、それによって対応するビーム176の光位相を変調して、変調されたビーム177を生成する。2つのレーザビーム177、178間の重なり領域において干渉パターン180が生成され、このパターンは、ある1つのビーム177の光路長を変更することによって変化する。回転窓160をミラー162の後に配置することにより、以下に示される
図2Aおよび
図2Cの実施形態に比較して、IPGM150の幅W
IPGMおよびサイズを縮小できる。このように、例えば、IPGMの幅W
IPGMが半リングの半径に直接に影響するため、IPGMを保持する半リング状構造162をよりコンパクトにできる。
【0026】
図2Cは、別の実施形態による、照明パターン生成モジュールの内部構造を示す。
図2Aおよび2Bの実施形態におけるIPGMは、イメージング対象での干渉点と分離点(すなわち、ビームスプリッタ)との間で等しい経路長を有さない、2つのビームを作り出すであろう。非等経路長は、比較的短いコヒーレンス長のレーザを用いた場合には正弦曲線状コントラストを著しく低下させかねず、さらに、SAOシステムの適用性を特定の波長(例えば、532nm緑色レーザ)のみに制限する。これは、良好な正弦曲線状コントラストのためにかかる非等経路IPGMとともに用いることができる十分に長いコヒーレンス長を有するのは特定の波長をもつ少数のレーザのみであるためである。
図2Aの実施形態と比較して、
図2Cの実施形態は、2つのスプリットビーム間で等しい経路を達成するために追加の折り畳みミラーを用いる。レーザビーム144は、ビームスプリッタ156によってビーム181、180に分割される。ビーム181は、ミラー182によって反射され、その光路長は、ビーム188を生成するための回転窓160によって変調される。他方、ビーム180は、2つのミラー184、187によって2回反射されて、反射されたビーム189を生成する。ビーム188および189は、イメージング対象において最終的に干渉して、選択的励起パターンを生成する。2つのミラー184、186の使用によって、光路144-180-185-189は、光路181-183-188の長さに実質的に等しい長さを有するように構成される。この等しい経路方式は、高コントラストをもつ干渉パターンを短いコヒーレンス長をもつレーザを用いて生成することを可能にする。そのうえ、この等しい経路方式は、SAOシステムを532nm以外の波長とともに用いることを可能にし、結果として多色SAOを実用的にする。
【0027】
図3は、SAOの一般的な一方法を示す。選択的励起(または照明)104がイメージング対象102に加えられ、イメージング対象102から散乱されるかまたは蛍光を発した光が光学的イメージング106によって取り込まれる。選択的励起104は、イメージング対象102上で2つの光ビームの干渉を引き起こすように構成された照明機器によってイメージング対象102に加えられる。励起された対象102は、信号(またはフォトン)を放出し、放出された信号は、対物レンズおよびイメージング・センサ(またはイメージャ)を含む光学的イメージング・システム106に取り込まれる。2D正弦曲線励起パターンの全M位相に対応する画像が得られたかどうかが判定される(ステップ408)。
【0028】
2D正弦曲線励起パターンの全位相に対応する画像がステップ408において得られなかった場合、励起位相を変化させて(ステップ402)、変化した励起位相に対してステップ104、106、408が繰り返される。2D正弦曲線励起パターンの全位相に対応する画像がステップ408において得られた場合には、全2D正弦曲線励起パターンに対応する画像が得られたかどうかが判定される(ステップ410)。全2D正弦曲線励起パターンに対応する画像がステップ410において得られなかった場合、異なる空間周波数を用いる(例えば、2D正弦曲線パターンのピッチおよび方位φを変化させる)ことにより励起パターンを変化させて、ステップ104、106、408、402、410、404が次の選択的励起パターンに対して繰り返される。全2D正弦曲線励起パターンに対応する画像がステップ410において得られた場合には、取り込まれたより低解像度の生画像からイメージング対象102の高解像度画像114を得るべくSAO後処理412および視覚化のために、取り込まれた画像がコンピュータに送られる。先に説明したように、光学的イメージング106によって取り込まれた生画像は、イメージング対象102上の目標物を解像するのに不十分な解像度を有し、一方でSAO後処理(ステップ412)により再構成された高解像度画像114は、イメージング対象102上の目標物を解像するのに十分な解像度を有する。
【0029】
「解像度」は、観察者またはイメージング・システムにより2つの別個の実体として区別できる検査試料/検体中の2点間の最短距離を指す。光学顕微鏡の解像度については、開口数、波長および解像度の間の関係を表すために導出された、いくつかの数式がある、すなわち、
解像度(r)=λ/(2NA) (1)
解像度(r)=0.61λ/NA (2)
解像度(r)=1.22λ/(NA(obj)+NA(cond)) (3)、
ここで「r」は、解像度(2つの目標物間の最小解像可能距離)であり、「NA」は、顕微鏡の開口数に関する一般的な用語であり、「λ」は、イメージング波長であり、「NA(obj)」が対物レンズの開口数に等しく、「NA(cond)」は、集光レンズの開口数である。
【0030】
顕微鏡の対物レンズの「開口数」は、対物レンズが集光して、一定の物体距離において微細な試料の詳細を解像するその能力の尺度である。
【0031】
「視野」は、光学顕微鏡の中間面で測定されて、ミリメートル単位で表された視野の直径である。「視野数(field-of-view number)」、または「視野数(field number)」は、ミリメートル単位で表され、倍率で除したときに実FOV(actual FOV:実視野)を与える。
【0032】
図4は、26mmの視野数を有する光学顕微鏡を用いた視野の直径および面積の表を示す。
【0033】
図5は、一定の開口数(0.95)における解像度への光の波長の影響(effect to the wavelength)に関する表を示す。
【0034】
本発明の方法を用いて画像化される分子の非限定の例は、メッセンジャー・リボ核酸(mRNAs:messenger ribonucleic acids);長鎖ノンコーディング・リボ核酸(lncRNAs:long non-coding ribonucleic acids);核内低分子RNA(snRNAs:small nuclear ribonucleic acids);サブゲノム・リボ核酸(sgRNA:subgenomic ribonucleic acid);ウイルスRNA;低分子干渉RNA(siRNA);ノンコーディングRNA(例えば、tRNAおよびrRNA);トランスファー・メッセンジャーRNA(tmRNA:transfer messenger RNA);マイクロRNA(miRNA:micro RNA);piwi結合RNA(piwi-interacting RNA(rNA)); 核小体低分子RNA(snoRNA:small nucleolar RNA);アンチセンスRNA;二本鎖RNA(dsRNA:double-stranded RNA);ヘテロ核RNA(hnRNA:heterogeneous nuclear RNA);染色体(例えば、染色体彩色による);2本鎖および1本鎖デオキシリボヌクレオチド(DNA:deoxyribonucleotides);増殖している細胞の複製DNA鎖中に取り込まれたBrdUまたはEDU;タンパク質;グリカン;生体および非生体小分子を含む。
【0035】
標的分子に特異的に結合するプローブの部分は、典型的に、DNAまたはRNA分子(例えば、アンチセンス・オリゴマーまたはポリマー);DNAまたはRNA類似体(例えば、非天然ヌクレオチドの包含);抗体またはアプタマーである。プローブの検出可能な部分は、通常、蛍光群(fluorescent group)である。かかる蛍光群の非限定の例は、蛍光性有機色素、例えば、キサンチン(例えば、フルオレセイン、ローダミンなど)、シアニン、発光基(例えば、ランタノイド、キレート、ルテニウムなど)、クマリン、ピレン、ボディピー色素およびFLAsh;非有機クロモフォア、例えば、半導体ナノ結晶(量子ドット)、シリコン、金および金属ナノ粒子;インターカレータ色素、例えば、DAPI、DRAQ-5、およびヘキスト33342;発現可能な蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP:Green Fluorescent Protein)、黄色FP,赤色FPなどを含む。
【0036】
DNAまたはRNA類似体の非限定の例は、以下を保有するものを含む、すなわち、スペルミン・テイル;MGB;LNA;PNA;RNA2’改質糖;アミド化主鎖;モルフォリノ主鎖;チオエート主鎖;およびTSQ色素修正物質。
【0037】
蛍光色素標識された核酸プローブ・タイプの非限定の例は、シンガー・プローブ(多重標識);ステラリス・プローブ(単一標識);DOPE-FISHプローブ(2重標識);MTRTPプローブ;蛍光標識BACプローブ;FRET消光プローブ(例えば、分子ビーコン、リニアF-Qプローブ、Hybプローブ);ECHOプローブ;色素標識デンドリマ;トリガード・フルオレセンス(例えば、Koolプローブ、ライゲーション活性化);ケージド・プローブ(例えば、光トリガFI);プロフルオレセント色素(例えば、化学的に活性化-酸化性、還元性、酸、塩基など)を含む。
【0038】
プローブ/標的分子複合体の検出は、典型的に、光源から異なる光波長を吸収した後のプローブからの1つの光波長の蛍光信号の生成を伴う。蛍光信号生成の非限定の例は、アプタマー消光および酵素により生成された蛍光を含む。信号は、ハイブリダイゼーション・キャプチャ;ローリングサークル増幅;B-DNA;ポリメラーゼ連鎖反応;および酸素により生成された蛍光を含むが、それらに限定されない様々な技術を用いて生成または増幅することもできる。
【0039】
プローブが光と相互作用する化合物を含むように変更されるところでは、化学結合の分野で知られる任意の適切な処理を用いることができる。かかる処理の非限定の例は、ホスホラミダイト、ホスホン酸エステル、トリエステル中間体などを経由した溶液または固相オリゴ合成;クリックケミストリー(銅触媒および銅フリー);ディールス・アルダー反応;シュタウディンガー・ライゲーション;ヒドラゾン・ライゲーション;オキシム・ライゲーション;ネイティブ・ケミカル・ライゲーション;テトラジン・ライゲーション;マレイミド-チオール・ライゲーション;活性エステル-アミン・ライゲーション;カルボジイミド(EDC)ホスファートまたはカルボキシ結合を含む。
【0040】
一態様において、方法は、mRNAまたはmRNAのコレクションを画像化するために用いられる。この方法は、典型的に、1)単一標識オリゴヌクレオチドのセットを提供するために、各オリゴヌクレオチドが単一の蛍光標識を含む、1つ以上のmRNA標的にハイブリダイズすることが可能な多数のオリゴヌクレオチドを得るステップと、2)試料調製物(例えば、複数の生細胞を含む調製物)を得るステップと、3)オリゴヌクレオチド-mRNAハイブリッド生成物のセットを産出するために、実質的な数の単一標識オリゴヌクレオチドが細胞内の1つ以上のmRNA標的とハイブリダイズするように、単一標識オリゴヌクレオチドのセットが試料調製物と相互作用することを可能にするステップと、4)イメージング・システム、例えば、単一の検出ステップ(すなわち、1つのデータ・セットが検出設定を何も変更しないで(例えば、光学部品もカメラも移動しないで)収集される)において少なくとも1×105μm2の画像化面積にわたって450nmより良好な検出解像度を提供する、合成開口光学系(SAOイメージング)または蛍光偏光を実現するデバイスを備えるイメージング・システムを用いてオリゴヌクレオチド-mRNAハイブリッド生成物のセットを画像化することによって、オリゴヌクレオチド-mRNAハイブリッド生成物のセットを検出するステップとを含む。
【0041】
図6は、標準的な蛍光顕微鏡を用いたmRNA、またはmRNAのコレクションのイメージングの方法と、対照的に、mRNA、またはmRNAのコレクションを画像化するために合成開口光学系(SAOイメージング)を実現するデバイスを備えるイメージング・システムを用いた本発明の方法とを示す。
【0042】
プローブを構築するための方法に用いられる多くのオリゴヌクレオチドは、典型的に、少なくとも30個の異なるオリゴヌクレオチドを含む。しばしば、40から60個のオリゴヌクレオチドが用いられ、一般に48個が使用される。オリゴヌクレオチドに含まれるヌクレオチドの数は、通常、15および40個の間である。15~20、17~22または17~25個を含むオリゴヌクレオチドがしばしば用いられる。
【0043】
プローブのオリゴヌクレオチドは、典型的に、適切なソフトウェア・パッケージ、例えば、Probe Designerを用いて設計される。www.singlemoleculefish.comを参照。オリゴヌクレオチドは、自動化されたDNA/RNA合成装置を用いた固相合成を含めて、任意の然るべき方法によって合成できる。プローブを供給する1つの蛍光標識のオリゴヌクレオチドへの付着は、通常、オリゴヌクレオチドをプールして、それぞれを同じ反応で単一のフルオロフォアにカップリングすることによって行われる。
【0044】
別の態様では、方法は、lncRNA、またはlncRNAのコレクションを画像化するために用いられる。この方法は、典型的に、1)1つ以上のlncRNAプローブを提供するために、各オリゴヌクレオチドが1つ以上の蛍光標識を含む、1つ以上のlncRNA標的にハイブリダイズすることが可能な1つ以上のオリゴヌクレオチドを得るステップと、2)試料調製物(例えば、複数の生細胞を含む調製物)を得るステップと、3)プローブ-lncRNAハイブリッド生成物のセットを産出するために、実質的な数のプローブが細胞内の1つ以上のlncRNA標的にハイブリダイズするように、1つ以上のlncRNAプローブが試料調製物と相互作用することを可能にするステップと、4)イメージング・システム、例えば、単一の検出ステップ(すなわち、1つのデータ・セットが検出設定を何も変更しないで収集される)において少なくとも1×105μm2の画像化面積にわたって450nmより良好な検出解像度を提供する、合成開口光学系(SAOイメージング)または蛍光偏光を実現するデバイスを備えるシステムを用いてプローブ-lncRNAハイブリッド生成物のセットを画像化することによって、プローブ-lncRNAハイブリッド生成物のセットを検出するステップとを含む。
【0045】
別の態様では、方法は、snRNAまたはsnRNAのコレクションを画像化するために用いられる。この方法は、典型的に、1)1つ以上のsnRNAプローブを提供するために、各オリゴヌクレオチドが1つ以上の蛍光標識を含む、1つ以上のsnRNA標的にハイブリダイズすることが可能な1つ以上のオリゴヌクレオチドを得るステップと、2)試料調製物(例えば、複数の生細胞を含む調製物)を得るステップと、3)プローブ-snRNAハイブリッド生成物を産出するために、実質的な数のプローブが細胞内の1つ以上のsnRNA標的にハイブリダイズするように、1つ以上のsnRNAプローブが試料調製物と相互作用することを可能にするステップと、4)イメージング・システム、例えば、単一の検出ステップ(すなわち、1つのデータ・セットが検出設定を何も変更しないで収集される)において少なくとも1×105μm2の画像化面積にわたって450nmより良好な検出解像度を提供する、合成開口光学系(SAOイメージング)または蛍光偏光を実現するデバイスを備えるシステムを用いてプローブ-snRNAハイブリッド生成物のセットを画像化することによって、プローブ-snRNAハイブリッド生成物のセットを検出するステップとを含む。
【0046】
別の態様では、方法は、1つの染色体のすべて、または一部を画像化するために用いられる。方法は、典型的に、1)1つ以上の染色体プローブを提供するために、各オリゴヌクレオチドが1つ以上の蛍光標識を含む、標的染色体内の1つ以上の位置にハイブリダイズすることが可能な1つ以上のオリゴヌクレオチドを得るステップと、2)試料調製物(例えば、複数の生細胞を含む調製物)を得るステップと、3)プローブ-染色体ハイブリッド生成物のセットを産出するために、実質的な数のプローブが細胞内の染色体標的内の1つ以上の位置にハイブリダイズするように、1つ以上の染色体プローブが試料調製物と相互作用することを可能にするステップと、4)イメージング・システム、例えば、単一の検出ステップ(すなわち、1つのデータ・セットが検出設定を何も変更しないで収集される)において少なくとも1×105μm2の画像化面積にわたって450nmより良好な検出解像度を提供する、合成開口光学系(SAOイメージング)または蛍光偏光を実現するデバイスを備えるシステムを用いてそれらを画像化することによって、プローブ-染色体ハイブリッド生成物のセットを検出するステップとを含む。
【0047】
別の様態では、方法は、細胞の複製DNA鎖へのBrdUの取り込みを用いて、細胞増殖を画像化するために用いられる。この方法は、典型的に、1)試料調製物(例えば、複数の生細胞を含む調製物)を得るステップと、2)ある量のBrdUを試料調製物に供給して、増殖している細胞中に実質的な量のBrdUが取り込まれることを可能にする期間にわたって、供給されたBrdUを試料調製物とともにインキュベートするステップと、3)1つ以上の蛍光基を備えるある量の抗BrdU抗体を試料調製物に供給して、実質的な量の抗体の、複製DNA中に取り込まれたBrdUへの結合を可能にする期間にわたって、供給された抗体を試料調製物とともにインキュベートするステップと、4)イメージング・システム、例えば、単一の検出ステップ(すなわち、1つのデータ・セットが検出設定を何も変更しないで収集される)において少なくとも1×105μm2の画像化面積にわたって450nmより良好な検出解像度を提供する、合成開口光学系(SAOイメージング)または蛍光偏光を実現するデバイスを備えるシステムを用いてBrdUに結合された抗体を画像化することによって、BrdUに結合された抗体を検出するステップとを含む。
【0048】
別の様態では、方法は、細胞の複製DNA鎖へのEdUの取り込みを用いて細胞増殖を画像化するために用いられる。この方法は、典型的に、1)試料調製物(例えば、複数の生細胞を含む調製物)を得るステップと、2)ある量のEdUを試料調製物に供給して、増殖している細胞中に実質的な量のEdUが取り込まれることを可能にする期間にわたって、供給されたEdUを試料調製物とともにインキュベートするステップと、3)ある量の蛍光標識されたアジド系クリック試薬を、取り込まれたEdUとクリック試薬との間の反応を可能にする条件下で供給するステップと、4)イメージング・システム、例えば、単一の検出ステップ(すなわち、1つのデータ・セットが検出設定を何も変更しないで収集される)において少なくとも1×105μm2の画像化面積にわたって450nmより良好な検出解像度を提供する、合成開口光学系(SAOイメージング)または蛍光偏光を実現するデバイスを備えるシステムを用いてEdU-クリック試薬生成物を画像化することによって、EdU-クリック試薬生成物を検出するステップとを含む。
【0049】
本発明の方法は、細胞の細胞質および核内の個別の分子(例えば、mRNA、lncRNA、snRNA、染色体、BrdUまたはEdUを含んだDNA鎖、たんぱく質、グリカン、小分子)を定量化する手段を提供する。個別の分子の画像は、450nm、400nm、350nm、300nm、または250nmより良好な解像度で解像される。しばしば、個別の分子は、200nm、150nmまたは100nmより良好な解像度で解像される。これらの解像度は、単一の検出ステップにおいて少なくとも1×105μm2の画像化面積にわたって達成可能である。いくつかの場合には、解像度は、少なくとも1×106μm2、5×106μm2、1×107μm2または5×107μm2の画像化面積に適用される。これらの面積は、数百から数千個の細胞の領域に対応する。
【0050】
本発明の方法は、広い視野面積にわたって高解像度を達成するために、極めて高い分子密度の1つ以上のフルオロフォアは必要としない。例として、個別の分子の画像は、視野面積におけるフルオロフォアの密度がたとえμm2当たり10,000分子未満であっても、単一の検出ステップにおいて少なくとも1×105μm2、1×106μm2、5×106μm2、1×107μm2または5×107μm2の画像化面積が450nm、400nm、350nm、300nm、250nm、200nm、150nmまたは100nmより良好な解像度で解像される。典型的に、この解像度は、領域におけるフルオロフォアの密度がμm2当たり1000分子未満、μm2当たり100分子未満またはμm2当たり10分子未満のところでも達成される。
【0051】
先に考察した面積にわたって、方法は、典型的に、単一の検出ステップにおいて少なくとも1×102個の別個の分子複合体を検出することが可能であり、これらの複合体は、1つの標的分子に結合した少なくとも1つのプローブを備える。ある場合には、本方法は、単一の検出ステップにおいて少なくとも1×103、1×104、1×105、1×106、1×107、1×108または1×109個の別個の分子複合体を検出できる。
【0052】
さらに、先に考察した面積に関係して、方法は、典型的に、単一の検出ステップにおいて20個より多い細胞(標準的な20×対物レンズでのSAO画像)を検出/画像化することが可能である。ある場合には、方法は、単一の検出ステップにおいて50、100、150、200、250、または300個より多い細胞を検出/画像化することが可能である。
【0053】
方法の別の利点は、装置の対物レンズの長い作動距離であり、これにより標準的な60×または100×油浸レンズに対して(機械的に)制約された面積の高解像度画像を得ることが可能である。長い作動距離は、本方法の大きい被写界深度とともに、所望の面積を画像化するために厚い基板を通して焦点を合わせることを可能にする。本方法は、例えば、0.1mmより厚い試料(例えば、プラスチック試料(COP))を通して画像を得ることができる。ある場合には、本方法は、0.25mm、0.50mm、0.75mmまたは1.0mmより厚い試料を通して画像を得ることができる。
【0054】
本発明の方法によって与えられる定量化は、いくつかの異なる態様を含む。細胞の試料全体にわたって、試料の異なる細胞内、および試料の各細胞の異なる領域内で遺伝子発現を定量化できる。同じ細胞もしくは異なる細胞内の特定の遺伝子多様性(例えば、SNP)または変異を定量化できる。さらに、多座遺伝子合成;遺伝要素の転座;および細胞増殖の速度も定量化できる。
【0055】
ある場合には、1つより多いタイプのプローブが方法に同時に用いられる(すなわち、多重化)。これらのプローブ・タイプは、特異的結合部分および化学検出部分の両方が異なる。非限定の例として、単一mRNAの検出のための方法に、各セットがその標識として1つの異なるフルオロフォアを有する、1つより多いセットの単一標識オリゴヌクレオチドを用いることができる。複数の異なるmRNA標的の使用は、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の遺伝子の発現を同時に定量化して、比較することを可能にする。
【0056】
本発明の方法によって提供される定量化は、細胞領域内の分子複合体の数を定量化することを越えてさらに広がり、方法は、多重化を用いた、分子複合体間、または異なるプローブと複合体を形成した1つの染色体の複数の領域間の距離の定量化を提供する。450nm、400nm、350nm、300nm、250n、200nm、150nmまたは100nm以下の複合体間の距離を測定できる。この測定方法を用いると、例えば、単一の染色体上の位置間の距離、または異なる染色体の領域間の距離を定量化することが可能である。これらのタイプの測定は、染色体の「クロストーク」、すなわち、異なる染色体領域が機能活性、例えば、遺伝子発現に対して相互にいかに作用するかを明らかにできる。
【0057】
先に考察したように、本発明の方法は、遺伝子に関するいくつかの異なるタイプの情報(例えば、発現レベル)を得るために用いることができる。本方法を用いて調べられる遺伝子の非限定の例は、ABL1;ABL2;ACSL3;AF15Q14;AF1Q;AF3p21;AF5q31;AKAP9;AKT1;AKT2;ALDH2;ALK;ALO17;APC;ARHGEF12;ARHH;ARID1A;ARID2;ARNT;ASPSCR1;ASXL1;ATF1;ATIC;ATM;ATRX;BAP1;BCL10;BCL11A;BCL11B;BCL2;BCL3;BCL5;BCL6;BCL7A;BCL9;BCOR;BCR;BHD;BIRC3;BLM;BMPR1A;BRAF;BRCA1;BRCA2;BRD3;BRD4;BRIP1;BTG1;BUB1B;C12orf9;C15orf21;C15orf55;C16orf75;C2orf44;CAMTA1;CANT1;CARD11;CARS;CBFA2T1;CBFA2T3;CBFB;CBL;CBLB;CBLC;CCDC6;CCNB1IP1;CCND1;CCND2;CCND3;CCNE1;CD273;CD274;CD74;CD79A;CD79B;CDH1;CDH11;CDK12;CDK4;CDK6;CDKN2A;CDKN2a(p14);CDKN2C;CDX2;CEBPA;CEP1;CHCHD7;CHEK2;CHIC2;CHN1;CIC;CIITA;CLTC;CLTCL1;CMKOR1;COL1A1;COPEB;COX6C;CREB1;CREB3L1;CREB3L2;CREBBP;CRLF2;CRTC3;CTNNB1;CYLD;D10S170;DAXX;DDB2;DDIT3;DDX10;DDX5;DDX6;DEK;DICER1;DNM2;DNMT3A;DUX4;EBF1;ECT2L;EGFR;EIF4A2;ELF4;ELK4;ELKS;ELL;ELN;EML4;EP300;EPS15;ERBB2;ERCC2;ERCC3;ERCC4;ERCC5;ERG;ETV1;ETV4;ETV5;ETV6;EVI1;EWSR1;EXT1;EXT2;EZH2;EZR;FACL6;FAM22A;FAM22B;FAM46C;FANCA;FANCC;FANCD2;FANCE;FANCF;FANCG;FBXO11;FBXW7;FCGR2B;FEV;FGFR1;FGFR1OP;FGFR2;FGFR3;FH;FHIT;FIP1L1;FLI1;FLJ27352;FLT3;FNBP1;FOXL2;FOXO1A;FOXO3A;FOXP1;FSTL3;FUBP1;FUS;FVT1;GAS7;GATA1;GATA2;GATA3;GMPS;GNA11;GNAQ;GNAS;GOLGA5;GOPC;GPC3;GPHN;GRAF;H3F3A;HCMOGT-1;HEAB;HERPUD1;HEY1;HIP1;HIST1H4I;HLF;HLXB9;HMGA1;HMGA2;HNRNPA2B1;HOOK3;HOXA11;HOXA13;HOXA9;HOXC11;HOXC13;HOXD11;HOXD13;HRAS;HRPT2;HSPCA;HSPCB;IDH1;IDH2;IGH@;IGK@;IGL@;IKZF1;IL2;IL21R;IL6ST;IL7R;IRF4;IRTA1;ITK;JAK1;JAK2;JAK3;JAZF1;JUN;KDM5A;KDM5C;KDM6A;KDR;KIAA1549;KIF5B;KIT;KLK2;KRAS;KTN1;LAF4;LASP1;LCK;LCP1;LCX;LHFP;LIFR;LMO1;LMO2;LPP;LRIG3;LYL1;MADH4;MAF;MAFB;MALT1;MAML2;MAP2K4;MDM2;MDM4;MDS1;MDS2;MECT1;MED12;MEN1;MET;MITF;MKL1;MLF1;MLH1;MLL;MLL2;MLL3;MLLT1;MLLT10;MLLT2;MLLT3;MLLT4;MLLT6;MLLT7;MN1;MPL;MSF;MSH2;MSH6;MSI2;MSN;MTCP1;MUC1;MUTYH;MYB;MYC;MYCL1;MYCN;MYD88;MYH11;MYH9;MYST4;NACA;NBS1;NCOA1;NCOA2;NCOA4;NDRG1;NF1;NF2;NFE2L2;NFIB;NFKB2;NIN;NKX2-1;NONO;NOTCH1;NOTCH2;NPM1;NP4A3;NRAS;NSD1;NTRK3;NUMA1;NUP214;NUP98;OLIG2;OMD;P2RY8;PAFAH1B2;PALB2;PAX3;PAX5;PAX7;PAX8;PBRM1;PBX1;PCM1;PCSK7;PDE4DIP;PDGFB;PDGFRA;PDGFRB;PER1;PHF6;PHOX2B;PICALM;PIK3CA;PIK3R1;PIM1;PLAG1;PML;PMS1;PMS2;PMX1;PNUTL1;POU2AF1;POU5F1;PPARG;PPP2R1A;PRCC;PRDM1;PRDM16;PRF1;PRKAR1A;PRO1073;PSIP2;PTCH;PTEN;PTPN11;RAB5EP;RAS51L1;RAF1;RALGDS;RANBP17;RAP1GDS1;RARA;RB1;RBM15;RECQL4;REL;RET;ROS1;RPL22;RPN1;RUNDC2A;RUNX1;RUNXBP2;SBDS;SDC4;SDH5;SDHB;SDHC;SDHD;SEPT6;SET;SETD2;SF3B1;SFPQ;SFRS3;SH3GL1;SIL;SLC34A2;SLC45A3;SMARCA4;SMARCB1;SMO;SOCS1;SOX2;SRGAP3;SRSF2;SS18;SS18L1;SSH3BP1;SSX1;SSX2;SSX4;STK11;STL;SUFU;SUZ12;SYK;TAF15;TAL1;TAL2;TCEA1;TCF1;TCF12;TCF3;TCF7L2;TCL1A;TCL6;TET2;TFE3;TFEB;TFG;TFPT;TFRC;THRAP3;TIF1;TLX1;TLX3;TMPRSS2;TNFAIP3;TNFRSF14;TNFRSF17;TNFRSF6;TOP1;TP53;TPM3;TPM4;TPR;TRA@;TRB@;TRD@;TRIM27;TRIM33;TRIP11;TSC1;TSC2;TSHR;TTL;U2AF1;USP6;VHL;VTI1A;WAS;WHSC1;WHSC1L1;WIF1;WRN;WT1;WTX;WWTR1;XPA;XPC;XPO1;YWHAE;ZNF145;ZNF198;ZNF278;ZNF331;ZNF384;ZNF521;ZNF9;ZRSR2を含む。
【0058】
方法の標的分子がmRNAであるところでは、標的とされるmRNAの非限定の例は、CCNB1 mRNA、CENPE mRNA、AURKB mRNA、PLK1 mRNA、PLK4 mRNA、TAGLN mRNA、ACTG2 mRNA、TPM1 mRNA、MYH111 mRNA、DES mRNA、EIF1AX mRNA、AR mRNA、HSPD1 mRNA、HSPCA mRNA、K-ALPHA1 mRNA、MLL5 mRNA、UGT2B15 mRNA、WNT5B5 mRNA、ANXA11 mRNA、FOS mRNA、SFRP1 mRNA、FN1 mRNA、ITGB8 mRNA、THBS2 mRNA、HNT mRNA、CDH10 mRNA、BMP4 mRNA、ANKH mRNA、SEP4 mRNA、SEP7 mRNA、PTN mRNA、VEGF mRNA、SRY mRNA、EGR3 mRNA、FoxP1 mRNA、FoxM1 mRNA、TGCT1 mRNA、ITPKB mRNA、RGS4 mRNA、およびBACE1 mRNAを含む。
【0059】
ある場合には、本発明の方法、および関連するキットは、核酸、タンパク質、抗体またはハプテンのインビボ、インビトロ、および/またはインサイツ分析に用いられる。かかる核酸は、限定なしに、ゲノムDNA、染色体、染色体フラグメントおよび遺伝子(DNA~FISH)を含む。核酸またはタンパク質が分析される方法の非限定の例は、PCR;インサイツPCR;フローサイトメトリー;蛍光顕微鏡;化学発光;免疫組織化学;仮想的核型;遺伝子アッセイ;DNAマイクロアレイ(例えば、アレイ比較ゲノム・ハイブリダイゼーション(アレイCGH:array comparative genomic hybridization));遺伝子発現プロファイリング;遺伝子ID;タイリングアレイ;免疫蛍光;FISSEQ(蛍光インサイツ・シーケンシング:Fluorescence in Situ sequencing);およびインサイツ・ハイブリダイゼーション、例えば、FISH、SISHおよびCISHを含む。
【0060】
ある場合には、本発明の方法、および関連するキットは、染色体異常に関する核酸のインビボ、インビトロまたはインサイツ分析に用いられる。かかる異常の非限定の例は、異数性;潜在的切断点;挿入;反転;欠失;重複;遺伝子増幅;再配列および転座を含む。かかる異常は、しばしば正常状態または疾患(例えば、先天性疾患、癌または感染)と関連付けられる。
【0061】
方法のための検査試料は、限定なしに、ヒト、動物または植物供給源を含む、任意の適切な供給源から得られてもよい。試料は、典型的に、細胞を含み、試料供給源から(インビトロに)取り出されてもよく、または供給源中に(インビボに)保持されてもよい。例えば、試料は、組織生検、血液、尿、排泄物、唾液および汗から導出されてもよい。ある場合には、試料は、試料基板(例えば、スライド、フローセル、マイクロプレート)に固定される。
【0062】
本発明の方法は、疾患または他の状態の診断、モニタリングおよび/または予後診断に用いられる。例として、組織試料内の1つ以上の特異的遺伝子の活性を評価することにより特定の疾患(例えば、乳癌;大腸癌;前立腺癌;精巣癌;感染;およびアルツハイマー病)を診断できる。
【0063】
1つの非限定的な場合には、本発明は、染色体異常と関連付けられた先天的障害、癌、感染を診断する方法を提供する。方法は、組織試料が核酸配列を備える当該組織、エキソソームまたは細胞試料を被検体から得るステップと、核酸配列中に染色体異常が存在するかどうかを判定するステップと、組織、エキソソームまたは細胞試料中に染色体異常が存在する場合に先天的遺伝性障害、癌、または感染を診断するステップとを備える。組織、エキソソームまたは細胞試料は、典型的に、哺乳動物(例えば、ヒト)に由来する。
【0064】
疾患診断については、方法は、(すべての目的で参照により本明細書に組み込まれる)以下のサイトにおいて議論される疾患を診断できる、すなわち、http://www.cdc.gov/diseasesconditions/az/a.htm;http://www.medicinenet.com/diseases_-and_conditions/alpha_a.html;http://en.wikipedia.org/wiki/Lists_of_diseases;およびhttp://www.rightdiagnosis.com/lists/#undefined。
【0065】
本発明の方法によって診断できる癌のタイプの非限定の例は、膀胱癌;乳癌; 大腸癌;直腸癌;子宮内膜癌;腎臓(腎および細胞)癌;白血病;肺癌;メラノーマ;非ホジキンリンパ腫;膵癌;前立腺癌;および甲状腺癌を含む。
【0066】
本発明の方法によって診断できるウイルスに基づく疾患の非限定の例は、トリインフルエンザ(Flu:Influenza);HIV/AIDS;A型肝炎;B型肝炎;C型肝炎;H1N1インフルエンザ(ブタインフルエンザ);アデノウイルス感染;呼吸器合胞体疾患;ライノウイルス感染;単純ヘルペス;水疱(水痘);麻疹(はしか);風疹(三日ばしか );おたふく風邪(流行性耳下腺炎(Epidemic Protitis));天然痘(痘瘡);疣贅川崎病;黄熱病;デング熱;ウイルス性胃腸炎;ウイルス熱;サイトメガロウイルス性疾患;狂犬病;ポリオ;遅発性ウイルス感染症およびアルボウイルス脳炎(Enephalitis)を含む。前述の疾患に関して検出/診断できるウイルスの非限定の例は、アデノウイルス;コクサッキーウイルス;エプスタイン・バーウイルス;A型肝炎ウイルス;B型肝炎ウイルス;C型肝炎ウイルス;単純ヘルペスウイルス1型;単純ヘルペスウイルス2型;サイトメガロウイルス;ヒトヘルペスウイルス8型;HIV;インフルエンザウイルス;麻疹ウイルス;おたふく風邪ウイルス;ヒトパピローマウイルス;パラインフルエンザウイルス;ポリオウイルス;呼吸器合胞体ウイルス(Respiratory Synctial Virus);風疹ウイルス;および水痘帯状疱疹ウイルスを含む。
【0067】
本発明の方法を用いて診断できる寄生虫病の非限定の例は、(ホスト-例えば、イヌ、ムシ、トリ、植物、動物、ヒトによらず)、アカントアメーバ角膜炎;アメーバ症(赤痢アメーバその他);回虫症(回虫);バベシア症;アライグマ回虫症;シャーガス病(クルーズトリパノソーマ);肝吸虫症;コクリオミイヤ;クリプトスポリジウム症;裂頭条虫症;メジナ虫症(メジナ虫によって生じる);エキノコックス症;象皮症;腸蟯虫症;肝蛭症;肥大吸虫症;フィラリア症;ジアルジア症;顎口虫症;膜様条虫症;鉤虫;イソスポーラ症;片山熱;リーシュマニア症;マラリア(熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫および二日熱マラリア原虫);横川吸虫症;ハエ幼虫症;オンコセルカ症;シラミ寄生症;疥癬;住血吸虫症;睡眠病;糞線虫症;テニア症(嚢虫症によって生じる);トキソカラ症;トキソプラズマ症(トキソプラズマ原虫);旋毛虫症;および鞭虫症を含む。方法を用いて検出できる関連する病原体の非限定の例は、アカントアメーバ;アニサキス;回虫;ウマバエ;大腸バランチジウム;トコジラミ;条虫(サナダムシ);ツツガムシ;ラセンウジバエ;赤痢アメーバ;肝蛭;ランブル鞭毛虫;鉤虫;レーシュマニア;イヌシタムシ;肝蛭;ロア糸状虫;パラゴニムス-肺吸虫;蟯虫;熱帯熱マラリア原虫;住血吸虫;糞線虫 ;ダニ;サナダムシ;トキソプラズマ原虫;トリパノソーマ;鞭虫;およびバンクロフト糸状虫を含む。
【0068】
本発明の方法を用いて検出できるバクテリアの非限定の例は、アシネトバクター;炭疽菌;カンピロバクター;淋病;B群連鎖球菌;肺炎桿菌;メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA:Methicillin-resistant Staphylococcus Aureus);髄膜炎菌;サルモネラ菌;非チフス性セロタイプ;赤痢菌;肺炎球菌;結核;腸チフス熱;バンコマイシン耐性腸球菌(VRE:Vancomycin-Resistant Enterococci);バンコマイシン中等度/耐性黄色ブドウ球菌(VISA/VRSA:Vancomycin-Intermediate/Resistant Staphylococcus Aureus)を含む。
【0069】
別の非限定的な場合には、本発明の方法、および関連するキットは、RNA発現レベル-例えば、mRNAおよびその相補DNA(cDNA)における変化の検出に用いられる。構成は、インビトロ、インビボまたはインサイツ試料(例えば、哺乳動物試料、ヒト試料)上で用いられてもよい。かかる試料は、限定なしに、骨髄スミア;血液スミア;パラフィン埋込型組織調製物;酵素的に分離された組織試料;骨髄;羊膜細胞;サイトスピン・調製物;およびインプリントを含む。
【0070】
別の非限定的な場合には、組織試料は、固定および透過処理され、疾患と関連付けられた標的RNAに特異的な単一標識プローブを用いてプロービングされ、少なくとも1×106μm2の画像化面積にわたって450nmもしくはより良好な(例えば、300nm、または150nmの)解像度を有するSAOイメージングに供される。
【0071】
予後アッセイ(コンパニオン診断)も本発明の方法を用いて実行できる。例えば、ERGおよびETV1遺伝子の再編成を検出して、かつPTEN遺伝子の欠失を測定するために、FISHまたは変更されたFISHを用いることができる。前立腺癌患者に対して化学療法が成功することになるかどうかの指標として、PTEN遺伝子の存在または非存在下でのERG/ETV1遺伝子異常の度合いを用いることができる。本発明の方法を用いたコンパニオン診断法の他の非限定の例は、ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP:Poly ADP ribose polymerase)阻害剤のような治療法に、より反応しやすい患者を同定するためのBRACAnalysis;前立腺癌の攻撃性を評価するための細胞周期増殖;患者が治療に反応しやすいかどうかを示すための様々な癌治療に対する腫瘍細胞の安定性を含む。
【0072】
本発明の方法は、遺伝子発現に対する小分子または大分子の活性を確定するために用いることもできる。かかる場合には、透過処理およびオリゴヌクレオチド・プローブを含む混合物中への浸漬に先立って、1つ以上の小分子または大分子が細胞試料とともに典型的にインキュベートされる。次に、遺伝子発現に対する分子の効果と病状に対する潜在的な治療活性とを相互に関連付けることができる。
【0073】
本方法に用いられるイメージングの速度は、遺伝子発現に対するそれらの効果と関連する小分子および/または大分子の高スループット・スクリーニングも可能にする。典型的に、同じイメージング用SAOシステムを用いて24時間で少なくとも50個の小分子(MW<1000g/m)および/または大分子(MW>1000g/m)をスクリーニングできる。ある場合には、100、150、200、250、300、350、400、450または500個の小分子および/または大分子をスクリーニングできる。
【0074】
本発明の方法は、さらに遺伝子バーコーディング(例えば、DNAおよびRNAバーコーディング)に用いることができる。このように、様々な種を迅速に認識、同定および発見するための診断法として本方法を用いることができる。
【0075】
実験方法
以下の材料、機器および一般的な方法は、本発明の方法の諸態様を示すものである。これらは、開示される発明(単数または複数)を決して限定するものではない。
【0076】
材料および機器
オリゴマー・プローブは、典型的に、然るべきソフトウェア・パッケージ、例えば、www.singlemoleculefish.comにおいてバイオサーチテクノロジーズ(Biosearch Technologies)を通じて利用可能なProbe Designerを用いて設計される。プローブは、自動化されたDNA/RNAシンセサイザー、例えば、Biosearch8700上を含む、任意の適切な方法で合成されてもよい。
【0077】
フルオロフォアは、典型的に、それらの各供給元から購入される。かかるフルオロフォアの非限定の例は、バイオサーチテクノロジーズから入手可能な、CAL FLUOR(登録商標)およびQUASAR(登録商標)色素、アマシャム(Amersham)から入手可能な、Cy3、Cy3.5、Cy5、およびモレキュラープローブズ(Molecular Probes)から入手可能な、Oregon Green488およびAlexa Fluor488を含む。
【0078】
1つの蛍光標識をオリゴヌクレオチドに付着させ、それによって単一標識プローブを作り出すために、オリゴヌクレオチドをプールし、単一の反応において1つのフルオロフォアに結合させて、その後、非結合オリゴヌクレオチドおよび残りの遊離フルオロフォアをHPLC精製によって除去する。米国特許出願第2012/0129165号(Arjin Raj等)を参照。
【0079】
スライドガラスは、任意の適切な供給元から購入するとよい。非限定の例は、フィッシャー(Fisher)からのカタログ番号12-518-103である。
【0080】
複数の単一標識プローブを用いた個別のmRNA分子のイメージングは、典型的に、標的プローブ-mRNAハイブリッド上で合成開口光学系(SAO)を実現するシステムを用いて達成される。例えば、国際公開第2011/116175号を参照。1つのシステムに関する性能仕様は、次の通りである、すなわち、解像度-0.30μm;イメージングFOV-0.83mm×0.7mm;作動距離-7.0mm;被写界深度-1.36μm;試料厚さ-≦2μm;z区分数-1~3;対象媒体-25mm×75mm基板(例えば、顕微鏡スライド)。「解像度」は、532nm励起および600nm放出波長に対する点広がり関数(PSF:point-spread-function)の半値全幅(FWHM)として定義される。解像度は、例えば、4ビーム、6ビーム、または10ビーム送りの解像度を用いることによって向上する。「イメージングFOC」は、対物レンズの倍率が20×のsCMOSカメラ(センサ・サイズ16.6mm×14mm)に基づく。
【0081】
SAOシステムの構成の観点から、以下のサブシステムおよび主要コンポーネントが典型的に用いられる、すなわち、光源-405nmダイオード・レーザ(100mW)、532nmレーザ(1W、MPB/2RU-VFL-P-1000-532-R)、642 nmレーザ(1W、MPB/2RU-VGL-P-1000-642-R);照明-ビームエキスパンダ/コンバイナ(LSG)、光スイッチ(レオニ(Leoni)/eol 1×4 PM)またはフリービーム・アーキテクチャ、パターン生成器(LSG);イメージング-対物レンズ‐20×/0.45NA(ニコン(Nikon)MRH08230)、カメラ‐(アンドール(Andor)/DG152×-C0E-FI)、フィルタホイール(10スロット、サッター(Sutter)/Lamda 10-B)、フィルタ(サムロック(Samrock))、PI-FOC(PI/P-725.4CD);試料/貯蔵-Zステージ(電動式、PI/P-736.ZR2S)、XYステージ(電動式、PI/M26821LOJ)、スライドまたは35mm皿用試料マウント(PI/P-545.SH3);機器制御-制御盤(LSG)、制御ソフトウェア(LSG);データ解析/UI-解析ソフトウェア(LSG);メインコンピュータ-デスクトップコンピュータ(デル(Dell)/XPS8300); テーブル-防振テーブル(ニューポート(Newport)/VIS3660-RG4-325A)。
【0082】
実験方法
細胞試料を調製するための方法の非限定の例は、次の通りである。www.singerlab.org/protocolsにオンラインで公開されたSinger Lab Protocol(シンガーラボ・プロトコル)を参照。
【0083】
溶液調製
0.5%ゼラチン中のカバーガラス:カバーガラスを0.1N HCl中で20分間煮沸することにより一箱分のカバーガラスを滅菌する。2回蒸留した水(「DDW:doubly distilled water」中でカバーガラスを数回リンスおよび洗浄する。ゼラチン(1.0g)を秤量して200mlのDDWに加える。結果として生じた混合物を攪拌し、温めて溶解を完了する。滅菌したカバーガラスをゼラチン溶液に移して、20分間オートクレーブする。10×PBSストック:500mlの10×PBSに250μLのDEPCを加える。混合物を溶解させるために攪拌し、次にオートクレーブする。1M MgCl2ストック:MgCl2(20.3g)を秤量して、DDWに加える。洗浄溶液(PBSM):100mlの10×PBSストックに5mlの1M MgCl2ストックを加える。結果として生じた混合物をDDWで1Lに希釈する。抽出溶媒(PBST):100mlの10×PBSストックに5mlのTriton X-100を加える。結果として生じた混合物をDDWで1Lに希釈し、静かに攪拌して溶解を完了する。固定液(4% PFA):10mlバイアルの20%パラホルムアルデヒド・ストックに5mlの10×PBSストックを加える。結果として生じた混合物をDDWで50mlに希釈する。
【0084】
細胞および試料調製
細胞を標準的な条件下で成長させて、ペトリ皿におけるゼラチン化したカバーガラス上に播種する。任意の処理ステップ、例えば、飢餓および刺激を行う。細胞を氷冷PBSMで手短かに洗浄する。細胞を室温においてPBST中で60秒間抽出する。細胞を氷冷PBSMで2回手短かに洗浄する。細胞を室温においてPFA固定液で20分間固定する。細胞を氷冷PBSMで2回手短かに洗浄する。固定済カバーガラスをPBSM中に4℃で使用まで貯蔵する。
【0085】
オリゴヌクレオチド・プローブを標的mRNAにハイブリダイズするための方法の非限定の例は、次の通りである。www.singerlab.org/protocolsにオンラインで公開されたSinger Lab Protocolを参照。さらに、Femino AM, Fay FS, Fogarty K, and Singer RH. Visualization of single RNA transcripts in situ. 1998. Science. 280:585-90,及びLevsky JM, Shenoy SM, Pezo RC and Singer RH. 2002. Single-cell gene expression profiling. Science. 297:836-40を参照。
【0086】
溶液調製
洗浄溶液(PBSM):100mlの10×PBSストックに5mlの1M MgCl2ストックを加える。結果として生じた混合物をDDWで1Lに希釈する。プレ/ポストハイブリダイゼーション洗浄液(50%ホルムアミド/2×SSC):250mlホルムアミドに50mlの20×SSCストックを加える。結果として生じた混合物をDDWで500mLに希釈する。プローブ競合溶液(ssDNA/tRNA):50μlの10mg/ml断片化サケ精子DNAに50μlの10mg/ml大腸菌tRNAを加える。ハイブリダイゼーション用バッファー:60μlのDDWに20μlのBSAおよび20μlの20×SSCストックを加える。低塩濃度洗浄溶液(2×SSC):50mlの20×SSCストックに450mlのDDWを加える。核染色溶液(DAPI):100mlの10×PBSストックに50μlの10mg/ml DAPIストック(10mgを1.0mlのDDWに加えることにより固体から調製)を加える。結果として生じた混合物をDDWで1Lに希釈し、振盪してDAPIを溶解させる。封入剤:適切なキットの要素、例えば、Prolongキット(Molecular Probes)を調製するか、または等価な方法を用いる。
【0087】
ハイブリダイゼーション・ステップ
カラーコーディングおよび複数の転写物の検出に先立って、ハイブリダイゼーションの検査を行う。転写部位を示すために2つの高輝度色素を用いる。次に、色素の組み合わせを用いて各遺伝子に任意のカラーコードを割り当て、1つずつ検査を行う。固定したカバーガラスを、ピンセットを用いてコプリン・ジャー中に垂直に配置する。固定した細胞を再水和し、室温においてPBSM中で10分間洗浄する。細胞をプレハイブリダイゼーション溶液中で10分間平衡化する。アッセイされることになる標的の異なる組み合わせごとに、一定分量のオリゴヌクレオチド・プローブ混合物をチューブに加える。競合溶液を100倍超でプローブ混合物(単数または複数)に加える。混合物を真空乾燥する。乾燥したペレットを10μlホルムアミドに再懸濁して、チューブを加熱ブロック上に85℃で5~10分間置き、その後即座に氷上に置く。10μlのハイブリダイゼーション用バッファーを各チューブに加えて、20μlの反応体積を確保する。ガラス・プレートをパラフィルムで包み、反応のための作用空間に充てる。カバーガラスを重ねることなく各体積を覆って配置できるように、各20μlの反応体積を十分遠く離してプレート上に点在させる。カバーガラスをプレハイブリダイゼーション溶液から取り出して、過剰な液体を拭い取る。各カバーガラスを、細胞側を下にしてプレート上に点在するハイブリダイゼーション・ミックス上に置く。反応を封じ込めるために、プレートおよびカバーガラスをパラフィルムの別の層で包む。ハイブリダイゼーション後にカバーガラスを2回洗浄するのに十分な量のプレハイブリダイゼーション溶液とともにプレートを37℃で3時間インキュベートする。カバーガラスの除去を可能にするためにパラフィルムの上部層を除去して下部層を外す。カバーガラスを予熱した洗浄液とともにコプリン・ジャー中に戻して37℃で20分間インキュベートする。洗浄液を変えて、20分間繰り返す。溶液を2×SSCに変えて、室温で10分間インキュベートする。溶液をPBSMに変えて、室温で10分間インキュベートする。溶液を調製したDAPIに変えて、室温で1分間インキュベートし、次にPBSMで洗浄することにより核を対比染色する。PBSMを変えて、取り付けまで室温で保持する。新たに調製した退色防止封入剤を用い、各カバーガラスを細胞側を下にしてスライドガラス上に取り付ける。過剰な液体を拭い取り、スライドを-20℃で保存する。
【0088】
オリゴヌクレオチド・プローブ-標的mRNAハイブリッドの検出は、上記のようにSAOシステムを用いて行う。
【0089】
TOP1 mRNAの定量化
TOP1(トポイソメラーゼ(DNA)1)の発現をA549細胞におけるFISHによって分析し、SAOシステム(20×)を用いて画像化/定量化した。SAOイメージング条件は、次の通りである、すなわち、500mW主出力(532nm);500ms露出/フレーム。SAO画像の一部を
図7に示す。画像は、およそ100個の細胞を含み、mRNAは、画像中に高輝度/白色/緑色ドットとして現れる。画像内の20個の細胞のサンプリングは、次のmRAカウントを示した、すなわち、56;59;58;54;69;60;63;54;74;65;95;52;60;85;66;67;46;36;65;53。
図8は、TOP1 mRNAのSAO画像の関心領域の選択を示し、スポット強度および品質に基づく選択処理グラフを含む。
【0090】
HER2 mRNAの定量化
HER2の発現をMCF7細胞(ヒト乳腺癌細胞株)におけるFISHによって分析し、SAOシステム(20×)を用いて画像化/定量化した。SAOイメージング条件は、次の通りである、すなわち、500mW主出力(532nm);500ms露光/フレーム。結果を
図9に示す。右上の画像は、100個超の細胞を含み、mRNAは、画像中に高輝度/白色ドットとして現れる。他の画像は、およそ20個の細胞を示す選択部である。20個の細胞のサンプリングは、次のカウントを示した、すなわち、62、61、71、97、74、66、69、48、58、87、37、92、103、80、90、21、37、109、57、122(平均72)。
【0091】
FKBP5 mRNAの定量化
FKBP5の発現をA549細胞(ヒト肺腺癌細胞株)におけるFISHによって分析した。
図10は、標準的な蛍光顕微鏡(60×/1.41 NA0.1油浸)からの2つの画像を示す。「Minus Dex」とラベルされた画像は、24nMデキサメタゾンの添加によるアップレギュレーションより前の細胞(およそ13個の細胞)を示す;画像「Plus Dex」は、8時間にわたる24nMデキサメタゾンの添加後の細胞(およそ14個の細胞)を示す。大きい方の、ほぼ卵形の構造は、細胞核であり、個別の検出分子が核中および周りの高輝度/白色ドットとして示される。
図11は、SAOイメージング・デバイス(20×)を備えるシステムを用いた2つの画像(得られた全画像の1/10)を示す。「Minus Dex」とラベルした画像は、24nMデキサメタゾンの添加によるアップレギュレーションより前の細胞(およそ50個の細胞)を示し、画像「Plus Dex」は、8時間にわたる24nMデキサメタゾンの添加後の細胞(およそ50個の細胞)を示す。大きい方の、ほぼ卵形の構造は、細胞核であり、個別の検出分子が核中および周りの高輝度/白色ドットとして示される。