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  • 特許-万能作業台 図1
  • 特許-万能作業台 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】万能作業台
(51)【国際特許分類】
   B25H 1/14 20060101AFI20220902BHJP
【FI】
B25H1/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019124381
(22)【出願日】2019-07-03
(65)【公開番号】P2021008021
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】507218704
【氏名又は名称】DCMホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138519
【弁理士】
【氏名又は名称】奥谷 雅子
(74)【復代理人】
【識別番号】100210675
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 潤
(74)【代理人】
【識別番号】230108442
【弁護士】
【氏名又は名称】佐藤 明夫
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 健太郎
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3054791(JP,U)
【文献】特開平09-222110(JP,A)
【文献】特開2000-313374(JP,A)
【文献】米国特許第05924684(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25H 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の脚部と一対の天板部と一対の摺動部とからなる作業台であって、
前記一対の天板部の少なくとも片側は、前記摺動部上を水平方向にスライド可能であり、前記一対の天板の間に空間ができる機構を備えており、
前記一対の摺動部
各摺動部に対応した摺動ハンドル、
各摺動部に対応した摺動部基部、
各摺動部につき少なくとも2つの天板結合部材A,B
各摺動基部につき少なくとも2つの基部結合部材A,B、ならびに
各摺動部につき1つの摺動軸
から構成され、
前記天板結合部材Bは、前記天板をスライドさせる部材であり、
前記基部結合部材Bは、頭部、胴部およびネジ部から構成される半ネジとナットで構成され、かつ前記天板結合部材Bと前記摺動部基部とを連結する部材であり、
前記半ネジの頭部は、前記摺動部のネジ山とかみ合う溝が設けられたネジ穴を有し、
前記半ネジの胴部の長さは、摺動部基部および天板結合部材の接合部の厚みの合計よりも長い、作業台
【請求項2】
対の脚部と一対の天板部と一対の摺動部とからなる作業台製造する方法であって、
前記一対の天板部の少なくとも片側は、前記摺動部上を水平方向にスライド可能であり、前記一対の天板の間に空間ができる機構を備えており、
前記一対の摺動部
各摺動部に対応した摺動ハンドル、
各摺動部に対応した摺動部基部、
各摺動部につき少なくとも2つの天板結合部材A,B
各摺動基部につき少なくとも2つの基部結合部材A,B、ならびに
各摺動部につき1つの摺動軸
から構成され、
前記天板結合部材Bは、前記天板をスライドさせる部材であり、
前記基部結合部材Bは、頭部、胴部およびネジ部から構成される半ネジとナットで構成され、かつ前記天板結合部材Bと前記摺動部基部とを連結する部材であり、
前記半ネジの頭部は、前記摺動部のネジ山とかみ合う溝が設けられたネジ穴を有し、
前記半ネジの胴部の長さは、摺動部基部および天板結合部材の接合部の厚みの合計よりも長く
前記基部結合部材Bをナットで締める工程において、該部材が破損するトルク未満のトルクで締めることを特徴とする方法。
【請求項3】
前記基部結合部材Bをナットで締める工程において、前記胴部において前記ナットの締め付けが前記胴部で留まるよう前記天板結合部材Bを押し付けることで、前記胴部から前記頭部上部までの距離により、前記天板結合部材Bと前記摺動部基部との接触面の圧着の強弱を決定する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ナットの締め付けを製造機器にゆだねることでトルクを公差範囲±0.1mmに管理する、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記トルクが、前記基部結合部材Bの呼び径により、式 T=0.2Qd(d=半ネジの呼び径、Q=締め付け力、T=締め付けトルク)決定される、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業台に関する。特に本発明は組み立て式作業台の天板部を動かすための摺動部に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用DIYのための組み立て式の作業台が販売されている。このような作業台は、脚部、天板部、脚部と天板部を結合し天板部の一部を水平方向にスライド可能に結合することができる摺動部との3つの部分からなるものが主流である。
【0003】
例えば、2つの同じ大きさの天板の1つが水平方向にスライドすることにより、天板の間に空間ができる。天板の上にはストッパが設置可能になっており、この空間に板、柱等の作業対象物を置き、逆方向にスライドさせることにより万力のように固定することができる。天板自体は水平位置から所定の確度に傾けることができるものも存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
軽作業用 万能作業台,取扱説明書,T-18CN001,発売元:DCMホールディングス株式会社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のような作業台において、天板をスライドさせる機構がいろいろある。例えば図1のような作業台において、図2のようなスライドベース(以下、摺動部)と呼ばれる部品が2つ使用されている。
【0006】
該摺動部において、可動側の天板に結合される部位はこの摺動部の基体部分をスライドする機構を備えていなければならない。したがって、摺動部と天板に結合される部分の接触面における摩擦力が、人がハンドルを回すことにより摺動部に伝わる外力を上回るように固定されると天板の移動がスムーズに行われないことになり製品としての機能を果たし得ない。
【0007】
このため、可動側の天板に結合される部位と摺動部との結合部分には一定の緩みが必要であり、この結合される部位と摺動部とがネジにより結合される場合、製造現場において人手により緩みを調整する必要があった。そのため、製造効率が悪く、人間差が製品に反映されることも否めない状況にあった。
【0008】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、図1および図2に記載のような構造の作業台において品質、特に摺動部の可動性、を一定に保ち、機械により組み立てが自動化ともすることができる、組み立て容易な摺動部を備える作業台を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、以下を提供することにより上記課題を解決するものである。
<1>
一対の脚部と一対の天板部と一対の摺動部とからなる作業台であって、
前記一対の天板部の少なくとも片側は、前記摺動部上を水平方向にスライド可能であり、前記一対の天板の間に空間ができる機構を備えており、
前記一対の摺動部
各摺動部に対応した摺動ハンドル、
各摺動部に対応した摺動部基部、
各摺動部につき少なくとも2つの天板結合部材A,B
各摺動基部につき少なくとも2つの基部結合部材A,B、ならびに
各摺動部につき1つの摺動軸
から構成され、
前記天板結合部材Bは、前記天板をスライドさせる部材であり、
前記基部結合部材Bは、頭部、胴部およびネジ部から構成される半ネジとナットで構成され、かつ前記天板結合部材Bと前記摺動部基部とを連結する部材であり、
前記半ネジの頭部は、前記摺動部のネジ山とかみ合う溝が設けられたネジ穴を有し、
前記半ネジの胴部の長さは、摺動部基部および天板結合部材の接合部の厚みの合計よりも長い、作業台
<2>
対の脚部と一対の天板部と一対の摺動部とからなる作業台製造する方法であって、
前記一対の天板部の少なくとも片側は、前記摺動部上を水平方向にスライド可能であり、前記一対の天板の間に空間ができる機構を備えており、
前記一対の摺動部
各摺動部に対応した摺動ハンドル、
各摺動部に対応した摺動部基部、
各摺動部につき少なくとも2つの天板結合部材A,B
各摺動基部につき少なくとも2つの基部結合部材A,B、ならびに
各摺動部につき1つの摺動軸
から構成され、
前記天板結合部材Bは、前記天板をスライドさせる部材であり、
前記基部結合部材Bは、頭部、胴部およびネジ部から構成される半ネジとナットで構成され、かつ前記天板結合部材Bと前記摺動部基部とを連結する部材であり、
前記半ネジの頭部は、前記摺動部のネジ山とかみ合う溝が設けられたネジ穴を有し、
前記半ネジの胴部の長さは、摺動部基部および天板結合部材の接合部の厚みの合計よりも長く
前記基部結合部材Bをナットで締める工程において、該部材が破損するトルク未満のトルクで締めることを特徴とする方法。
<3>
前記基部結合部材Bをナットで締める工程において、前記胴部において前記ナットの締め付けが前記胴部で留まるよう前記天板結合部材Bを押し付けることで、前記胴部から前記頭部上部までの距離により、前記天板結合部材Bと前記摺動部基部との接触面の圧着の強弱を決定する、<2>に記載の方法。
<4>
前記ナットの締め付けを製造機器にゆだねることでトルクを公差範囲±0.1mmに管理する、<2>または<3>に記載の方法。
<5>
前記トルクが、前記基部結合部材Bの呼び径により、式 T=0.2Qd(d=半ネジの呼び径、Q=締め付け力、T=締め付けトルク)決定される、<2>~<4>のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本願発明により、一対の脚部と一対の天板部と一対の摺動部とからなる、作業台の摺動部において、頭部、胴部、およびネジ部から構成される半ネジとナットで構成される基部結合部材を用いることにより、天板結合部材の摺動部基部への締め付けにおいて物理的な規制が生じることにより、スライド部材の動きを常にスムーズに保つことができる。また、本願発明の作業台の製造工程において、頭部、胴部、ネジ部から構成される半ネジとナットで構成される基部結合部材とナットの締め付けトルクを一定に管理することが容易になる。また、胴部においてナットの締め付けがとまるので、作業員の感覚による力加減を
必要としなくなった。また、頭部、胴部、ネジ部から構成される半ネジとナットで構成される基部結合部材の構成により締め付けトルクを管理することができるので、公差範囲を狭くすることができる。作業員の感覚による調整では、公差範囲は±1mmであったが、製造機器にゆだねることで公差範囲が±0.1mmとすることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本願発明に係る作業台の一例を示す。
図2図1の作業台における摺動部の一例を示す。
図3図2の摺動部における基部結合部材Bに用いる半ネジの図である。
図4図2の摺動部の裏側を示す図である。
図5】本願発明に係る基部結合部材と半ネジを止めるためのナットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に図を参照して本願発明の好ましい態様を説明する。
まず、図1および2を参照して、本願発明の作業台1の概要を説明する。図1のような作業台において、図2のようなスライドベース(以下、摺動部)と呼ばれる部品が2つ使用されている。
【0013】
この摺動部5において、可動側の天板3bに結合される部位はこの摺動部5の基体部分をスライドする機構を備えていなければならない。本願発明に係る作業台では、この摺動部5は、図2に記載のように、摺動ハンドル51、摺動部基部52、天板結合部材A53および天板結合部材B54、基部結合部材A55および基部結合部材B56から構成される。
【0014】
ここにおいて、摺動ハンドル部51は、摺動基部52に設けられた結合穴(図示せず)を介して摺動軸58に結合可能に構成されており、搖動運動により摺動軸58を回転させる。
【0015】
摺動部基部52は、脚部1と天板部3aおよび3bとの間に設けられて天板3aおよび3bの水平スライド運動の土台となる部分である。本発明において、摺動部基部52は、脚部上部に2つお互いに平行になるように設けられる。
【0016】
天板結合部A53および天板結合部B54は、摺動部基部52天板部3aおよび3bとを結合するための略コの字型の両端に平面部位を備えてなる部材であり(図5)、この平面部位には天板部分にネジ等を介して結合するためのネジ穴等の構造を備える。天板結合部材A53は摺動ハンドル部51側に設けられ、天板結合部材B54は摺動軸58にボルト形状の半ネジ6図3を介して結合している。一例として、天板結合部材B54は摺動軸を貫通するネジ穴64を備えた半ネジ6およびナットにより摺動部基部52および摺動軸58と結合されている。このボルト形状の半ネジ6はナットとともに既に説明した基部結合部材B56に相当する。本願発明で用いる半ネジは、嵩高い頭部63を備えた(胴部とネジ部分の合計よりも長い高さの頭部)胴部62およびネジ部61より構成され、この頭部63に設けられた摺動軸のネジ山とかみ合う溝が設けられたネジ穴64を有する。このネジ穴に摺動軸58を貫通させることにより、摺動ハンドル部51により生じる摺動軸58と頭部のネジ穴64の回転運動により、天板結合部材B54は摺動溝57に沿って直線的に移動することができる。
【0017】
この摺動軸58と摺動溝57にそって、ボルト形状の半ネジ6により摺動基部52に結合された天板結合部材B54が直線的に移動するためには、摺動部基部52と天板結合部材B54との接触面における動摩擦力と摺動軸の回転により生じる外力が同じにならなければならない。そのためには静止摩擦力を極力少なくすることが必要である。即ち、摺動部基部52と天板結合部材B54と接触面の接触が半ネジにより必要以上に締め付けられていないことが
必要である。
【0018】
天板結合部材B54は頭部63と胴部62とネジ部61より構成される半ネジ6と、ナットで摺動部基部52と摺動軸58に結合される。この時にナットはネジ部の最後の溝まで移動して天板結合部材B54を摺動部基部52に押し付ける。即ち、半ネジの尖端部分からネジ部61の長さまでナットが移動して胴部62でとまり、胴部62から頭部63上部の距離までは所謂遊び部分となる。この部分の距離により、天板結合部材B54と摺動部基部52との接触面の圧着の強弱が決定される。本願発明において、この遊びの部分の距離は、天板結合部材B54と摺動部基部52を構成する部材の厚みの合計よりもわずかに長ければよい。例えば、天板結合部材B54と摺動部基部52の部材の厚みがそれぞれ2.0mmと3.0mmであった場合、胴部62の長さは5.0mmより長いことが好ましい。ネジ部61の長さは本発明において特に重要ではないが、天板を取り付けるのに邪魔にならない程度であることが好ましい。本願発明において、半ネジとナットは硬度が同じであるか、半ネジの硬度がナットの硬度よりも高いことが好ましい。
【0019】
本願発明における基部結合部材A55は天板結合部材A53と摺動部基部52とを結合する機構を備えている。本願発明の作業台において、摺動部基部52の摺動ハンドル51側に備えられる天板結合部A53はおもに作業者が立つ側に固定されるものである。したがって、固定の手段は特に重要ではないが、全ネジ、接着剤での固定等であることが好ましい。
【0020】
本願発明に係る作業台は、基部結合部材B56の特徴により、製造工程において一定のトルクでナット7を締め付けることにより、容易に製造できる。該トルクは当業者であれば容易に決定することができるが、例えば、本願発明の作業台に用いる半ネジ6とナットがJIS規定のものであれば、JISに締め付けトルクが規定されている。あるいは、半ネジの呼び径がdである場合締め付け力Qを与えるための締め付けトルクTは以下の式で表される。
【0021】
T=0.2Qd (式)
【0022】
上で説明したように、半ネジ6とナットを用いた基部結合部材B56の締め付けは、これまで製品の最終段階で人により確認されていた。本願発明により、この締め付けは上記のように管理することが可能であるから、摺動部5を機械的手段により製造して品質管理することが可能となる。
【符号の説明】
【0023】
1 作業台
2 脚部
3a固定天板
3b稼働天板
4ストッパ
5摺動部
51摺動ハンドル部
52摺動基部
53天板結合部材A
54天板結合部材B
55基部結合部材A
56基部結合部材B
57摺動溝
58摺動軸
6半ネジ
61ネジ部
62胴部
63頭部
64ネジ穴
7ナット

図1
図2
図3
図4
図5