(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】水平構面補強プレートおよび水平構面補強構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/26 20060101AFI20220902BHJP
E04B 1/19 20060101ALI20220902BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
E04B1/26 G
E04B1/19 F
E04B1/58 505L
E04B1/58 507L
(21)【出願番号】P 2019181193
(22)【出願日】2019-10-01
【審査請求日】2022-01-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公益財団法人日本デザイン振興会主催の2019年グッドデザイン賞に令和1年5月21日付で応募。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505420910
【氏名又は名称】株式会社三栄建築設計
(73)【特許権者】
【識別番号】596036692
【氏名又は名称】株式会社タツミ
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100101982
【氏名又は名称】久米川 正光
(72)【発明者】
【氏名】並木 昭久
(72)【発明者】
【氏名】田所 洋介
(72)【発明者】
【氏名】山田 塁史
(72)【発明者】
【氏名】森山 智子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 透
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-129004(JP,U)
【文献】特開2006-177108(JP,A)
【文献】特開2012-077545(JP,A)
【文献】特開2010-106612(JP,A)
【文献】特開2006-070446(JP,A)
【文献】特開2012-087490(JP,A)
【文献】特開2003-119884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/26
E04B 1/19
E04B 1/38-1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平構面補強プレートにおいて、
直線状に延在する第1のストレート部と、直線状に延在する第2のストレート部とを有し、前記第1のストレート部および前記第2のストレート部の端部同士が屈曲して連結されたプレート本体と、
第1の梁に前記プレート本体を取り付けるために、前記第1のストレート部に設けられた複数の第1の取付孔と、
前記第1の梁と互いに角度をなして突き合わされるように配置された第2の梁に前記プレート本体を取り付けるために、前記第2のストレート部に設けられた複数の第2の取付孔と、
前記第1の梁および前記第2の梁が突き合わされる突合せ部と、柱とを連結する第1の連結部材を貫通させるために、前記プレート本体の屈曲部位に設けられた第1の貫通孔と、
前記突合せ部の上下に配置された柱を互いに連結する第2の連結部材を貫通させるために、前記第1のストレート部における前記柱の側面の近傍に設けられた第2の貫通孔とを有し、
前記第2の貫通孔は、前記第1のストレート部の幅方向の開口長よりも、前記第1のストレート部の延在方向の開口長の方が大きいことを特徴とする水平構面補強プレート。
【請求項2】
前記第2の連結部材を貫通させるために、前記第2のストレート部における前記柱の側面の近傍に設けられ、前記第2の貫通孔と同一の形状を有する第3の貫通孔をさらに有することを特徴とする請求項1に記載された水平構面補強プレート。
【請求項3】
前記第1の貫通孔から前記第3の貫通孔までの距離は、前記第1の貫通孔から前記第2の貫通孔までの距離と同一であることを特徴とする請求項2に記載された水平構面補強プレート。
【請求項4】
水平構面補強構造において、
第1の梁と、
前記第1の梁と互いに角度をなして突き合わされるように配置された第2の梁と、
前記第1の梁および前記第2の梁が突き合わされた突合せ部の上方に配置された上柱と、
前記突合せ部の下方に配置された下柱と、
前記第1の梁および前記第2の梁の上面と、前記上柱の下端との間に介在し、前記突合せ部周りの上面に沿って屈曲して延在しており、かつ、当該上面に固定される水平構内において高剛性の上補強プレートと、
前記第1の梁および前記第2の梁の下面と、前記下柱の上端との間に介在し、前記突合せ部周りの下面に沿って屈曲して延在しており、かつ、当該下面に固定される水平構内において高剛性の下補強プレートと、
前記上補強プレートを貫通して、前記突合せ部に前記上柱を固定する上固定金物と、
前記下補強プレートを貫通して、前記突合せ部に前記下柱を固定する下固定金物と、
平面視で前記上補強プレートにおける
前記第1の梁側の前記上柱が配置されていない
第1部分、
および平面視で前記下補強プレートにおける
前記第1の梁側の前記下柱が配置されていない
第2部分、ならびに
前記第1の梁における前記第1部分と前記第2部分とに挟まれた部分を貫通して配置される棒状部材を含む前記上柱と前記下柱とを補強的に固定する補強金物と
を有することを特徴とする水平構面補強構造。
【請求項5】
前記上補強プレートおよび前記下補強プレートは、請求項1から3のいずれかに記載された水平構面補強プレートであることを特徴とする請求項4に記載された水平構面補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平構面補強プレート、および、これを用いた水平構面補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地価の高騰により土地が細分化され、狭小住宅(都市型住宅)の供給量が年々増えている。限られた敷地の中で最大限の空間と採光を確保するため、都市型木造在来工法の住宅において吹き抜けは必要不可欠になっている。吹き抜けにおいて、構造計算を省略する場合、火打ち材、すなわち、地震や台風時に発生する水平力による変形を防止するための斜材が必要となる。例えば、特許文献1~3には、一対の梁における角部の内側に、斜め方向に延在する火打ち材を取り付けた建築構造が開示されており、特に、特許文献3には、木造建物に火打ち材を用いた部屋構造が開示されている。
【0003】
なお、特許文献4には、既存の木造建築物に吹き抜けを新たに設ける場合において、火打ち材を用いることなく、吹き抜けまわりの剛性を高める補強構造が開示されている。この補強構造では、補強部材として、4つのコーナーフレームと、4つのジョイントフレームとが用いられる。コーナーフレームは、2つの真っ直ぐな鉄骨のそれぞれの一端が直角に連結されたL字状の形状を有し、直交する鉄骨のそれぞれが梁に沿うように、かつ、隣り合う2つコーナーフレームに隙間を生じさせて梁における吹き抜けの四隅に固定される。そして、隣り合うコーナーフレームに生じた隙間に真っ直ぐな鉄骨を備えたジョイントフレームを嵌め入れることによって、隣り合うコーナーフレームが互いに連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-273224号公報
【文献】特開平11-200509号公報
【文献】特開平11-117434号公報
【文献】特開2014-58784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、吹き抜けに火打ち材を使用する場合、
図7に示すように、室内の壁部より露出・突出した火打ち材Aが限られた区間を圧迫するばかりか、火打ち材Aの存在によって、採光が遮られたり、埃が溜まり易くなるといった不都合がある。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、火打ち材を用いることなく水平耐力を確保しつつ、美観に優れた開放的な吹き抜けを実現する新規な構成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決すべく、第1の発明は、プレート本体と、複数の第1の取付孔と、複数の第2の取付孔と、第1の貫通孔と、第2の貫通孔とを有する水平構面補強プレートを提供する。プレート本体部は、直線状に延在する第1のストレート部と、直線状に延在する第2のストレート部とを有する。第1のストレート部および第2のストレート部の端部同士は、屈曲して連結されている。複数の第1の取付孔は、第1の梁にプレート本体を取り付けるために、第1のストレート部に設けられている。複数の第2の取付孔は、第1の梁と互いに角度をなして突き合わされるように配置された第2の梁にプレート本体を取り付けるために、第2のストレート部に設けられている。第1の貫通孔は、第1の連結部材を貫通させるために、プレート本体の屈曲部位に設けられている。第1の連結部材は、第1の梁および第2の梁が突き合わされる突合せ部と、柱とを連結する。第2の貫通孔は、第2の連結部材を貫通させるために、第1のストレート部における柱の側面の近傍に設けられている。第2の連結部材は、突合せ部の上下に配置された柱を互いに連結する。
【0008】
ここで、第1の発明において、上記第2の貫通孔は、第1のストレート部の幅方向の開口長よりも、第1のストレート部の延在方向の開口長の方が大きいことが好ましい。
【0009】
第1の発明において、第3の貫通孔を設けてもよい。第3の貫通孔は、第2の連結部材を貫通させるために、第2のストレート部における柱の側面の近傍に設けられ、第2の貫通孔と同一の形状を有する。この場合、第1の貫通孔から第3の貫通孔までの距離は、第1の貫通孔から第2の貫通孔までの距離と同一であることが好ましい。
【0010】
第2の発明は、第1および第2の梁と、上下の柱と、上下の補強プレートと、上下の固定金物と、補強金物とを有する水平構面補強構造を提供する。第2の梁は、第1の梁と互いに角度をなして突き合わされるように配置されている。上柱は、第1の梁および第2の梁が突き合わされた突合せ部の上方に配置されている。下柱は、突合せ部の下方に配置されている。上補強プレートは、第1の梁および第2の梁の上面と、上柱の下端との間に介在し、突合せ部周りの上面に沿って屈曲して延在しており、かつ、この上面に固定されており、水平構内において高剛性である。下補強プレートは、第1の梁および第2の梁の下面と、下柱の上端との間に介在し、突合せ部周りの下面に沿って屈曲して延在しており、かつ、この下面に固定されており、水平構内において高剛性である。上固定金物は、上補強プレートを貫通して、突合せ部に上柱を固定する。下固定金物は、下補強プレートを貫通して、突合せ部に下柱を固定する。補強金物は、平面視で上補強プレートにおける第1の梁側の上柱が配置されていない第1部分、および平面視で下補強プレートにおける第1の梁側の下柱が配置されていない第2部分、ならびに第1の梁における第1部分と第2部分とに挟まれた部分を貫通して配置される棒状部材を含み、上柱と下柱とを補強的に固定する。
【0011】
ここで、第2の発明において、上記上下の補強プレートは、第1の発明に係る水平構面補強プレートであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、互いに角度をなして突き合わされるように配置された第1および第2の梁の突合せ部周りに補強プレートを取り付け、これに加えて、固定金物および補強金物を併用する。補強プレートには、固定金物および補強金物の取り付けに支障がないように、第1の貫通孔および第2の貫通孔が予め設けられている。このように、火打ち材の代替として補強プレートを用いることで、実用上必要な水平耐力を確保しつつ、美観に優れた開放的な吹き抜けを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】補強プレートを用いた水平構面補強構造の外観斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本実施形態に係る補強プレートの平面図である。この補強プレート1は、吹き抜けに用いられる火打ち材の代替として、複数の梁を組み合わせることによって構成された水平構面、すなわち、床や屋根などの面を補強する用途で用いられる。水平構面には、地震時や暴風時に加わる水平力に耐えるべく、十分な強度や剛性が要求される。補強プレート1は、プレート本体2を主体に構成され、複数の取付孔3,4と、複数の貫通孔5~7とを有する。
【0015】
プレート本体2は、平板状の金属材によって一体成形された高剛性の部材であって、L字状に屈曲した形状を有する。具体的には、プレート本体2は、図の縦方向に直線状に延在するストレート部2aと、図の横方向に直線状に延在するストレート部2bとを有し、これらのストレート部2a,2bの端部同士は、屈曲部位2cにおいて屈曲して連結されている。プレート本体2の幅は、これが取り付けられる梁の幅に応じて適宜設定され、少なくとも梁からはみ出さないようなサイズを有する。
【0016】
複数の取付孔3は、縦方向に延在するストレート部2aにおける適宜の箇所に設けられており、複数の取付孔4は、横方向に延在するストレート部2bにおける適宜の箇所に設けられている。なお、プレート本体2の幅、板厚、取付孔3,4の個数、取付孔3,4の配置等については、補強プレート1の曲げ変形に対する耐力に大きく影響するため、実験やシミュレーションを通じて最適化されている。
【0017】
貫通孔5は、プレート本体2における屈曲部位2cの略中央に設けられており、プレート本体2の表裏を貫通している。この貫通孔5は、後述する連結部材(シャフト10a,11a)の断面形状に対応すべく、円状の開口形状を有している。
【0018】
貫通孔6は、縦方向に延在するストレート部2aにおける屈曲部位2cの近傍に設けられており、プレート本体の表裏を貫通している。この貫通孔6は、後述する連結部材(ボルト12a)の断面形状に対応すべく、かつ、この連結部材の位置的なバラツキにも対応すべく、楕円状の開口形状を有している。具体的には、
図2に示すように、貫通孔6は、プレート本体2の幅方向の開口長r1よりも延在方向の開口長r2の方が大きく設定されている。
【0019】
貫通孔7は、横方向に延在するストレート部2bにおける屈曲部位2cの近傍に設けられており、プレート本体の表裏を貫通している。この貫通孔7は、貫通孔6と同一の形状(開口形状を含む。)を有している。また、
図1に示したように、貫通孔5から貫通孔7までの距離L2は、貫通孔5から貫通孔6までの距離L1と同一に設定されており、貫通孔5を基準として2つの貫通孔6,7は、点対称に配置されている。
【0020】
なお、本実施形態では、補強プレート1に2つの貫通孔6,7を設けているが、これらの役割(詳細について後述する。)に照らせば、最低限、いずれか一方のみを有していれば足りる。
【0021】
図3は、補強プレート1を用いた水平構面補強構造の外観斜視図である。木造在来工法による建築物(構造体)において、互いに角度をなして突き合わされるように配置された複数の梁によって水平構面が構成される。同図に示した構造において、二本の梁8a,8bは、水平方向に延在しており、L字状に屈曲するように端部同士が接合されている。上下の柱9a,9bは、二本の梁8a,8bによって構成される突合せ部の上下にそれぞれが位置している。上下の補強プレート1A,1Bは、
図1に示した構成を有している。上補強プレート1Aは、二本の梁8a,8bの上面と、上柱9aの下端との間に介在している。この上補強プレート1Aは、二本の梁8a,8bの突合せ部周りの上面に沿って屈曲して延在し、二本の梁8a,8bの上面に固定されている。一方、下補強プレート1Bは、二本の梁8a,8bの下面と、下柱9bの上端との間に介在している。この下補強プレート1Bは、二本の梁8a,8bの突合せ部周りの下面に沿って屈曲して延在し、二本の梁8a,8bの下面に固定されている。
【0022】
また、この補強構造では、上下の補強プレート1A,1Bに加えて、上下の固定金物10,11と、補強金物12とが併用されている。上固定金物10は、上補強プレート1Aを貫通して、二本の梁8a,8bの突合せ部に上柱9aを連結して固定する。また、下固定金物11は、下補強プレート1Bを貫通して、二本の梁8a,8bの突合せ部に下柱9bを連結して固定する。さらに、補強金物12は、上下の補強プレート10,11を貫通して、上下の柱9a,9bを連結し、これらを補強的に固定する。
【0023】
図4は、上下の補強プレート1A,1Bの要部説明図である。二本の梁8a,8bの端部同士の接合は、その内部に埋設された金物を用いた金物工法によって行うことができ、これ以外にも、例えば、「ホゾ」と呼ばれる凸部と、「ホゾ溝」と呼ばれる凹部とを係合することで、二本の梁8a,8bを接合してもよい。また、梁8a,8bの上面には、複数の取付穴3,4のそれぞれに挿入された取付ビス13を梁8a,8bの内部に至るまで圧入することによって、上補強プレート1Aが取り付けられている。同様に、梁8a,8bの下面には、複数の取付穴3,4のそれぞれに挿入された取付ビス13を梁8a,8bの内部に至るまで圧入することによって、下補強プレート1Bが取り付けられている。
【0024】
図5は、上下の固定金物10,11の要部説明図である。上固定金物10は、二本の梁8a,8bの突合せ部と上柱9aとを連結する連結部材としてのシャフト10aと、複数のピン10b,10cとを有する。
【0025】
シャフト10aは、梁8aの内部を垂直方向に延在する取付孔(図示せず)と、上柱9aの下端から内部を向かって垂直方向に延在する取付孔(図示せず)とに挿入されている。ここで、上補強プレート1Aの屈曲部位には、シャフト10aと位置的に対応した貫通孔5が設けられており、この貫通孔5にシャフト10aが挿入される。これにより、シャフト10aは、上補強プレート1Aが介在しても挿入が規制されることなく、貫通孔5を介して、梁8bおよび上柱9aの双方の内部に圧入される。
【0026】
ピン10bは、梁8aの側面に露出した取付孔(図示せず)より挿入され、シャフト10aの下端側と係合するように圧入される。また、ピン10cは、上柱9aの側面に露出した取付孔より挿入され、シャフト10aの上端側と係合するように圧入される。その結果、上下のピン10b,10cによって固定されたシャフト10aによって、二本の梁8a,8bの突合せ部に上柱9aが強固に固定される。
【0027】
一方、下固定金物11は、二本の梁8a,8bの突合せ部と下柱9bとを連結する連結部材としてのシャフト11aと、複数のピン11b,11cとを有する。シャフト11aは、梁8aの内部を垂直方向に延在する取付孔(図示せず)と、下柱9bの上端から内部を向かって垂直方向に延在する取付孔(図示せず)とに挿入されている。ここで、下補強プレート1Bの屈曲部位には、シャフト11aと位置的に対応した貫通孔5が設けられており、この貫通孔5にシャフト11aが挿入される。これにより、シャフト11aは、下補強プレート1Bが介在しても挿入が規制されることなく、貫通孔5を介して、梁8bおよび下柱9bの双方の内部に圧入される。
【0028】
ピン11bは、梁8bの側面に露出した取付孔(図示せず)より挿入され、シャフト11aの上端側と係合するように圧入される。また、ピン11cは、下柱9aの側面に露出した取付孔より挿入され、シャフト11aの下端側と係合するように圧入される。その結果、上下のピン11b,11cによって固定されたシャフト11aによって、二本の梁8a,8bの突合せ部に下柱9bが強固に固定される。
【0029】
図6は、補強金物12の要部説明図である。この補強金物12は、一般に、ホールダウン金物や引き寄せ金物などと称され、上下の柱9a,9bを連結する連結部材としてのボルト12aと、上下の保持部12b,12cとを有する。ボルト12aは、梁8aの内部を垂直方向に延在する取付孔(図示せず)に挿入されている。ここで、上下の補強プレート1A,1Bの屈曲部位の近傍には、ボルト12aと位置的に対応した貫通孔6が設けられており、この貫通孔6にボルト12aが挿入される。これにより、ボルト12aは、上下の補強プレート1A,1Bが介在しても挿入が規制されることなく、貫通孔6を介して、梁8aの上下を貫通する。
【0030】
ボルト12aは、上下の柱9a,9bの側面に取り付けられた保持部12b,12cに挿通され、これによって、ボルト12aによって連結された上下の柱9a,9bの固定が強化される。保持部12b,12によるボルト12aの固定は、ボルト12aの両端にナットを螺合することによって行われる。
【0031】
補強金物12の市販品の寸法は様々であり、柱9a,9bの側面に対してボルト12aが比較的近接しているものも存在すれば、比較的離れているものも存在する。また、上柱9aや下柱9bの寸法の変更にも対応できることが望ましい。このようなボルト12aの遠近のバラツキや柱の寸法の変更に鑑み、本実施形態では、補強プレート1A,1Bの貫通孔6,7として、上述した楕円状の開口形状としている。これにより、ボルト12aの遠近に関わりなく、各種の市販品に柔軟に対応することが可能になる。また、柱の寸法の変更に関わりなく柔軟に対応することが可能になる。
【0032】
なお、
図6の例では、貫通孔6に補強金物12を貫通させるケースを示しているが、状況に応じて、貫通孔6ではなく、貫通孔7に補強金物12を貫通させてもよい。また、より高い強度が要求される場合には、貫通孔6,7を併用して2組の補強金物12を取り付けてもよい。
【0033】
このように、本実施形態によれば、火打ち材の代替として、互いに角度をなして突き合わされるように配置された二本の梁8a,8bの突合せ部周りに補強プレート1を取り付け、これに固定金物10,11と、補強金物12とを併用する。補強プレート1には、固定金物10,11および補強金物12の取り付けに支障がないように、貫通孔5および貫通孔6,7が予め設けられている。これにより、実用上必要な水平耐力を確保しつつ、美観に優れた開放的な吹き抜けを実現できる。
【0034】
また、本実施形態によれば、火打ち材の使用を省くことで、吹き抜けにおける美観の向上を図ることができ、火打ち材により採光が遮られたり、火打ち材に埃が溜まることを防止することができる。それとともに、現場での施工を簡素化、標準化できるので、水平耐力の平準化(均質化)が可能となる他、火打ち材の耐火被覆施工が不要になるなど、施工作業の効率化を図ることも可能になる。
【0035】
なお、上述した実施形態では、補強プレート1として、2つのストレート部2a,2bを有するL字状の補強プレートを例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくとも2つのストレート部2a,2bを有していれば足りる。したがって、例えば、3つのストレート部によって構成されたT字状の補強プレートや、4つのストレート部によって構成された十字状の補強プレートであってもよい。T字状の補強プレートは、互いに角度をなして突き合わされた3本の柱を補強するために用いられ、十字状の補強プレートは、互いに角度をなして突き合わされた4本の柱を補強するために用いられる。
【符号の説明】
【0036】
1,1A,1B 補強プレート
2 プレート本体
2a,2b ストレート部
2c 屈曲部位
3,4 取付孔
5~7 貫通孔
8a,8b 梁
9a,9b 柱
10,11 固定金物
10a,11a シャフト
10b,10c,11b,11c ピン
12 補強金物
12a シャフト
12b,12c 保持部
13 取付ビス