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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】試料分析のための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/14 20060101AFI20220902BHJP
   G01N 33/49 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
G01N15/14 C
G01N15/14 B
G01N15/14 P
G01N33/49 A
G01N33/49 K
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019559845
(86)(22)【出願日】2018-05-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 US2018034181
(87)【国際公開番号】W WO2018217923
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】62/511,237
(32)【優先日】2017-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391008788
【氏名又は名称】アボット・ラボラトリーズ
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】クロッケンバーガー,マーティン
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-515193(JP,A)
【文献】国際公開第2007/095359(WO,A2)
【文献】米国特許第04375615(US,A)
【文献】特開2002-148261(JP,A)
【文献】特表昭63-500398(JP,A)
【文献】特表平09-508703(JP,A)
【文献】特表2016-511424(JP,A)
【文献】特開平10-311785(JP,A)
【文献】国際公開第2016/094720(WO,A1)
【文献】特表2016-508224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/14
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フローサイトメータにおいて血小板イベントをノイズと区別するための方法であって、
前記フローサイトメータのフローセルを通して血小板を含む試料を流すこと、
前記フローセルを通して流れる前記試料を光学的に調査すること、
調査された前記試料から光信号を検出すること、
検出された信号を、赤血球(RBC)イベントに対応する信号とRBCイベントより小さいイベントに対応する信号とに分離すること、
前記RBCイベントより小さいイベントについて、推定血小板イベントと推定ノイズを含む信号から、明らかなノイズ信号を分離するために、第2の閾値を適用すること、
推定血小板イベントおよび推定ノイズに対応する信号に分離すること、を含み、前記推定血小板イベントおよび推定ノイズに対応する信号に分離することが、
推定血小板イベントおよび推定ノイズに対応する信号を対数スケールに変換すること、
前記変換された信号を、ガウス混合モデルを使用してフィッティングし、推定血小板イベントおよび推定ノイズのフィッティング分布を生成すること、及び、
前記フィッティング分布の位置および幅が血小板イベントの範囲内にある場合、前記推定血小板イベントを血小板イベントとして同定することを含む方法。
【請求項2】
前記同定の前に、推定血小板イベントのフィッティング分布の位置および幅を推定ノイズのフィッティング分布の位置および幅と比較し、分布が許容範囲外の場合、ノイズに対して更に高い制約を有するガウス混合モデルでフィッティングすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記信号が、中間角散乱(IAS)、偏光側方散乱(PSS)、または軸方向光損失(ALL)の1つ以上を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記信号が、中間角散乱(IAS)および偏光側方散乱(PSS)を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記試料が、全血試料である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記全血試料が、溶解されていない全血試料である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
粒子を光学的に調査することが、レーザを使用して細胞を励起することを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
コンピューティングデバイスによって実行されたとき、当該コンピューティングデバイスに以下を実行させる命令を記憶した非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記命令が、
調査される試料をフローサイトメータのフローセルを通して流し、流れる試料を光学的に調査することにより生成される光信号を検出すること、
検出された信号を、赤血球(RBC)イベントに対応する信号とRBCイベントより小さいイベントに対応する信号とに分離すること、
前記RBCイベントより小さいイベントについて、推定血小板イベントと推定ノイズを含む信号から、明らかなノイズ信号を分離するために、第2の閾値を適用すること、
推定血小板イベントおよび推定ノイズに対応する信号に分離すること、を含み、前記推定血小板イベントおよび推定ノイズに対応する信号に分離することが、
推定血小板イベントおよび推定ノイズに対応する信号を対数スケールに変換すること、
前記変換された信号を、ガウス混合モデルを使用してフィッティングして、推定血小板イベントおよび推定ノイズのフィッティング分布を生成すること、及び、
前記フィッティング分布の位置および幅が血小板イベントの範囲内にある場合に、前記推定血小板イベントを血小板イベントとして同定すること、を実行させる命令である、
非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項9】
前記命令が、前記コンピューティングデバイスに、
前記同定の前に、推定血小板イベントのフィッティング分布の位置および幅を推定ノイズのフィッティング分布の位置および幅と比較し、前記推定血小板イベントのフィッティング分布および推定ノイズのフィッティング分布が許容範囲外の場合に、ノイズに対して更に高い制約を有するガウス混合モデルでフィッティングすることを実行させる命令を含む、請求項8に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項10】
前記信号が、中間角散乱(IAS)、偏光側方散乱(PSS)、または軸方向光損失(ALL)の1つ以上を含む、請求項8または9のいずれか一項に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項11】
前記信号が、中間角散乱(IAS)および偏光側方散乱(PSS)を含む、請求項8から10のいずれか一項に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項12】
前記試料が、全血試料である、請求項8から11のいずれか一項に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項13】
前記全血試料が、溶解されていない全血試料である、請求項12に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項14】
フローセル、
前記フローセルに光学的に結合された光学粒子調査システム、及び、
請求項8から13のいずれか一項に記載の非一時的コンピュータ可読媒体を備えるフローサイトメータ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年5月25日に出願された米国仮特許出願第62/511,237号の利益を主張し、その出願は全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
序文
本開示は、血液学的システムおよび方法に関する。より具体的には、本開示は、血液試料などの生体試料中の血小板の検出に関する。本開示はまた、血液試料などの生体試料中の血小板凝集塊の検出に関する。
【0003】
血小板(トロンボサイト:thrombocyte)とも呼ばれる血小板(プレートレット:platelets)は、核のない小さな無色の円盤状の細胞片であり、血液中に多く見られ、凝固に関与している。非活性化血小板は、直径2~3μmのレンズ状の両凸円盤状構造であり、血液中の最小の細胞である。
【0004】
血小板濃度の低下は血小板減少症であり、産生の低下または破壊の増加に起因する。血小板濃度の上昇は血小板増加症であり、先天性である、(サイトカインに対し)反応性である、または無秩序な産生、すなわち骨髄増殖性新生物または特定の他の骨髄性新生物の1つに起因する。血小板機能の障害は、血小板病症と呼ばれる。
【0005】
多くの場合、血小板の検出は分析装置のノイズによって制限される。ノイズは、光源(レーザ出力の変動など)、増幅電子機器、またはその他の源によって発生し得る。本明細書に開示される方法は、血小板をノイズから分離する。
【0006】
血小板凝集塊は、血液試料中に存在し得るが、多くの場合、採取した試料中に形成し得、細胞数の計測を妨害し得る。本明細書に開示される方法は、試料中の血小板凝集塊の存在を特定する。
【発明の概要】
【0007】
本開示の態様は、フローサイトメータにおいて血小板イベントをノイズと区別するための方法を含む。この方法は、フローサイトメータのフローセルを通して血小板を含む試料を流すこと、フローセルを通して流れる試料を光学的に調査(interrogate)すること、調査された試料から光信号を検出すること、検出された信号を赤血球(RBC)イベントおよびRBCイベントより小さいイベントに対応する信号に分離すること、RBCイベントより小さいイベントに対応する信号を推定血小板イベントおよび推定ノイズに分離すること、推定血小板イベントおよび推定ノイズに対応する信号を対数スケールに変換すること、変換された信号をガウス混合モデルを使用してフィッティングし推定血小板イベントおよび推定ノイズのフィッティング分布を生成すること、及び、フィッティング分布の位置および幅が血小板イベントの範囲内にある場合に推定血小板イベントを血小板イベントとして同定することを含む。
【0008】
他の態様において、方法は、同定の前に、推定血小板イベントのフィッティング分布の位置および幅を推定ノイズのフィッティング分布の位置および幅と比較し、分布が許容範囲外の場合、ノイズに対するより高い制約を有するガウス混合モデルをフィッティングすることを含む
【0009】
いくつかの態様において、変換された信号を、ガウス混合モデルを使用してフィッティングすることは、期待値最大化アルゴリズムを使用することを含み得る。例えば、推定血小板イベントと推定ノイズの対数(log)をヒストグラムとしてプロットし、ガウス混合モデリングを使用してモデル化することができる。
【0010】
いくつかの態様において、コンピュータ実装データ分析システムが、期待値最大化(EM)アルゴリズムを実行して、推定PLTイベントおよび推定ノイズの対数(log)データのガウス混合モデル(GMM)を作成してもよい。いくつかの態様において、GMMのソリューションを改善するために、EMアルゴリズムを繰り返し実行してもよい。
【0011】
いくつかの態様において、コンピュータ実装データ分析システムは、推定PLTイベントおよび推定ノイズ、ならびに推定WBCおよびRBCイベントの対数(log)データのガウス混合モデル(GMM)を作成するために、期待値最大化(EM)アルゴリズムを実行し得る。そのような場合、GMMを使用して、WBCおよびRBCよりも小さいイベントをフィッティングし得る。
【0012】
他の態様において、この方法は、調査された試料からの信号の検出が、100記録/秒、1000記録/秒、10,000記録/秒、または100,000記録/秒の頻度で実行されることを含む。
【0013】
他の態様において、この方法は、信号が、中間角散乱(IAS)、偏光側方散乱(PSS)、または軸方向光損失(ALL)のうちの1つ以上を含む場合もある。
【0014】
他の態様において、この方法は、信号が中間角散乱(IAS)および偏光側方散乱(PSS)を含む場合もある。
【0015】
いくつかの態様において、試料は、全血試料である。いくつかの態様において、試料は、無傷のRBCを含む溶解されていない全血試料である。いくつかの態様において、試料は、核酸に結合しRBCを含む細胞透過性蛍光色素で染色された全血試料である。他の態様において、試料は、核酸に結合し、無傷のRBCを除去するために溶解される細胞透過性蛍光色素で染色された全血試料である。他の態様において、試料は、RBC溶解試薬とともにインキュベートされており、核酸に結合する細胞透過性蛍光色素で染色されていない。
【0016】
他の態様において、この方法は、粒子を光学的に調査することが、レーザを使用して細胞を励起することを含む場合もある。
【0017】
他の態様において、本明細書に開示されるようなフローサイトメータにおいて血小板イベントをノイズと区別するための方法を実行するシステムが提供される。特定の態様において、システムは、フローサイトメータを備えてもよい。
【0018】
本開示の態様は、本明細書で提供されるように、コンピューティングデバイス(computing device)によって実行されるとき、コンピューティングデバイスに、フローサイトメータにおける血小板イベントをノイズと区別するステップを実行させる命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体を含む。
【0019】
本開示の態様は、試料が血小板凝集塊を含むものと同定するための方法を含む。この方法は、試料を、蛍光色素および赤血球溶解剤を含む試薬とともに、赤血球を溶解して核を含む細胞を蛍光染色するのに十分な時間インキュベートすること、フローサイトメータのフローセルを通して試料を流すこと、フローセルを通して流れる試料を光学的に調査すること、調査された試料から光信号を検出すること、閾値を下回る蛍光信号に関連するイベントを同定することであって、当該同定されたイベントは白血球(WBC)からの蛍光信号を下回る蛍光信号を有すること、及び、同定されたイベントのサイズを決定することであって、血小板よりも大きいサイズを有するイベントの存在が、当該試料が血小板凝集塊を含むことを示すこと、を含んでもよい。
【0020】
他の態様において、この方法は、血小板のサイズよりも大きいサイズの同定されたイベントを選択すること、選択されたイベントに線(line)をフィッティングすること、線をWBCに関連する信号に拡張すること、及び、線の近くのWBCを血小板凝集塊として再分類することを含む。再分類は、WBCイベントから血小板凝集塊イベントを除去して、正しいWBC数を提供する。
【0021】
他の態様において、この方法は、信号が、中間角散乱(IAS)、偏光側方散乱(PSS)、軸方向光損失(ALL)、または蛍光(FL)の1つ以上を含む場合もある。
【0022】
他の態様において、この方法は、信号がFLおよびPSSを含む場合もある。
【0023】
いくつかの態様において、試料は全血試料である。他の態様において、試料は核酸に結合する蛍光色素で染色されている。他の態様において、試料はRBC溶解試薬とともにインキュベートされている。
【0024】
他の態様において、この方法は、粒子を光学的に調査することが、レーザを使用して細胞を励起することを含む場合もある。
【0025】
他の態様において、本明細書に開示されるような血小板凝集塊を含むものとして試料を同定する方法を実行するためのシステムが提供される。ある特定の態様において、システムは、フローサイトメータを備えてもよい。
【0026】
本開示の態様は、コンピューティングデバイスによって実行されるとき、本明細書で提供されるように、コンピューティングデバイスに、試料が血小板凝集塊を含むと同定するためのステップを実行させる命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体を含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】血小板を血液分析器で検出されたノイズ信号と区別する例示的な方法を示す。
図2】血液分析器で分析された試料中の血小板(PLT)凝集塊の存在を検出するための例示的な方法を示す。
図3】最初の試料について血液分析器から検出されたPSSおよびIAS信号から得られた対数偏光側方散乱(logPSS)および対数中間角散乱3(logIAS3)のプロットを示す。
図4図3に示すノイズおよび血小板関連データのヒストグラムを示す。
図5】2番目の試料について血液分析器から検出されたPSSおよびIAS信号から得られた、対数偏光側方散乱(logPSS)および対数中間角散乱3(logIAS3)のプロットを示す。
図6図5に示すノイズおよび血小板関連データのヒストグラムを示す。
図7A】フローサイトメータで記録したPSS(X軸)およびFL(Y軸)のプロットを示す。FL信号がWBCの信号より低いイベントは、「+」で示されている。
図7B】同定されたPLT凝集塊にフィッティングされた線をWBCの信号に拡張することによる、追加のPLT凝集塊の分類を示す。
図8A】フローサイトメータで記録されたPSS(X軸)およびFL(Y軸)のプロットを示す。FL信号がWBCの信号より低いイベントは、「+」で示されている。
図8B】同定されたPLT凝集塊にフィッティングされた3D線をWBCの信号に拡張することによる、追加のPLT凝集塊の分類を示す。
【0028】
定義
「評価」という用語には、あらゆる形式の測定が含まれ、要素が存在するかどうかの判断も含まれる。「決定する」、「測定する」、「判断する」、「評価する」および「分析する」は互換的に使用され、定量的および定性的決定を含む。評価は、相対的または絶対的であってもよい。
【0029】
「体液」という用語は、本明細書で使用される場合、一般に、個体または個体集団から得られ、診断、モニタリングまたはスクリーニングアッセイで使用され得るさまざまな種類の試料を包含する「生体試料」に由来する液体を指す。この定義には、血液および生物学的起源の他の液体試料が包含される。また、この定義には、個々の試料の混合もしくはプール、試薬による処理、可溶化、または有核細胞、非有核細胞、病原体などの特定の成分の濃縮など、調達後に何らかの方法で操作された試料も含まれる。
【0030】
「生体試料」という用語は、臨床試料を包含し、培養物中の細胞、細胞上清、細胞溶解物、血清、血漿、生体液、および組織試料も含む。「生体試料」という用語は、尿、唾液、脳脊髄液、間質液、眼液、滑液、全血、血漿および血清などの血液画分などを含む。
【0031】
本明細書で使用される場合、「イベント」という用語は、例えばIAS検出器などの少なくとも1つの検出器をトリガするのに十分な信号を生成する粒子を意味し、それにより少なくとも1つの検出器は、分析器、例えばALL、IAS、PSS、およびDSSにおいて有効化された検出器のすべてにおけるその粒子の測定値を収集するように分析器に信号を送る。粒子は、白血球(WBC)、赤血球(RBC)、赤血球片、血小板(PLT)、脂質、および血小板(PLT)凝集塊を含むが、これらに限定されない。
【0032】
本明細書で使用される場合、「希釈剤」、「シース」、および「希釈剤/シース」などの用語および語句は、CELL-DYN(登録商標)Sapphire(商標)、CELL-DYN(登録商標)Ruby(商標)、CELL-DYN(登録商標)3000シリーズ、およびCELL-DYN(登録商標)4000シリーズの血液分析器での使用に適した種類のシース希釈剤を意味し、このシース希釈剤は、カリフォルニア州サンタクララのAbbott Laboratoriesから市販されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
本明細書で使用される場合、「DNA」という用語は、生細胞核の高分子染色体構成要素であるデオキシリボ核酸を意味する。本明細書で使用される場合、「RNA」という用語は、リボ核酸を意味する。
【0034】
詳細な説明
本開示は、方法を含む。また、開示された方法を実行するように構成されたシステム、および開示された方法のステップを実行するための命令を記憶するコンピュータ可読媒体も提供される。
【0035】
本発明をより詳細に説明する前に、本発明は記載された特定の実施形態に限定されず、したがって、当然のことながら変更され得ることを理解されたい。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲のみによって限定されるため、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のみのものであり、限定的であることは意図されないこともまた理解されたい。
【0036】
値の範囲が提供される場合、文脈上明確に指示されていない限り、下限の単位の10分の1まで、それぞれの介在値は、その範囲の上限と下限との間であり、その記載された範囲内の記載された他の値または介在値は、本発明に包含されることを理解されたい。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立して、より小さい範囲に含めてもよく、また本発明に包含され、記載された範囲内で特に除外されたいかなる制限も受ける。記載された範囲が一方または両方の制限を含む場合、それらの含まれる制限のうちのいずれかまたは両方を除外する範囲もまた、本発明に含まれる。
【0037】
ある特定の範囲は、数値の前に用語「約」が付された状態で本明細書に提示される。「約」という用語は、それが先行する正確な数字、およびその用語が先行する数字に近接または近似する数字に逐語的支持を提供するために本明細書において使用される。数が特定の列挙された数に近接しているか近似しているかを決定するにあたり、近接または近似の列挙されていない数は、それが提示されている文脈において、具体的に列挙された数と実質的に等価であることを示す数であり得る。
【0038】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者に一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または同等の任意の方法および材料はまた、本発明の実施または試験においても使用することができるが、代表的で例示的な方法および材料をここで説明する。
【0039】
本明細書に引用されるすべての刊行物および特許は、それぞれ個々の刊行物または特許が参照により組み込まれるように具体的かつ個別に示されているかのように参照により本明細書に組み込まれ、刊行物が引用される関連する方法および/または材料を開示かつ記載するために、参照により本明細書に組み込まれる。任意の刊行物の引用は、出願日前のその開示に関するものであり、本発明が先行発明のためにその刊行物に先行する権限を有しないことを認めるものと解釈されるべきではない。さらに、提示された公開日は実際の公開日とは異なる場合があり、別個に確認する必要があり得る。
【0040】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。特許請求の範囲は任意の要素を排除するように作成されてもよいことにさらに留意されたい。このように、この記述は、特許請求の要素の列挙に関連して「専ら」、「唯一の」などのような排他的な用語の使用または「否定的な」制限の使用のための先行基準としての役割を果たすことを意図している。
【0041】
本開示を読むと当業者には明らかであるように、本明細書に説明され例証される個々の実施形態のそれぞれは、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離され得るか、または組み合わせられ得る個別の要素および特徴を有する。任意の列挙された方法は、列挙されたイベントの順序で、または論理的に可能な他の順序で実施することができる。
【0042】
方法
血小板イベントをノイズと区別するための方法
本開示は、フローサイトメータにおいて血小板イベントをノイズと区別するための方法を含む。本方法は、ノイズによって隠されている可能性のある血小板(PLT)集団を明らかにするのに有用であり、したがって従来技術の方法よりも正確なPLT数を提供する。
【0043】
PLTイベントをノイズと区別するための方法の態様は、フローサイトメータのフローセルを通して血小板を含む試料を流すこと、フローセルを通して流れる試料を光学的に調査すること、調査された試料から光信号を検出すること、検出された信号を、赤血球(RBC)イベントおよびRBCイベントより小さいイベントに対応する信号に分離すること、RBCイベントより小さいイベントに対応する信号を推定血小板イベントおよび推定ノイズに分離すること、推定血小板イベントおよび推定ノイズに対応する信号を対数スケールに変換すること、変換された信号をガウス混合モデルを使用してフィッティングし推定血小板イベントおよび推定ノイズのフィッティング分布を生成すること、及び、フィッティング分布の位置および幅が血小板イベントの範囲内にある場合に推定血小板イベントを血小板イベントとして同定することを含む。
【0044】
本方法は、従来の方法よりも低い閾値を使用することを含み、このより低い閾値は、ノイズも含み得るPLTデータの包含を可能にする。次いで、本方法は、ノイズにより隠されていたこれらのPLTを検出するために、ノイズからPLTデータを解析する。いくつかの態様において、検出された信号は、1センチリットルのサイズ閾値を超える信号である。対照的に、従来技術の方法はより高い閾値を有し、これはノイズを減少させると同時にPLT数も誤って減少させる。
【0045】
PLTイベントをノイズと区別するための本方法は、RBCに対応する信号を、RBCより小さいイベントに対応する信号から分離する第1の閾値を含んでもよく、このより小さいイベントは、血小板だけでなく、細胞片、破片、およびノイズを含む。
【0046】
RBCより小さいイベントに対応する信号は、さらなる閾値、すなわち第1の閾値よりも低い第2の閾値に供される。第2の閾値は、ノイズに対応し得るいくつかの信号も含まれるように設定される。このより低い閾値は、より高い閾値が使用された場合に破棄された可能性のある、より小さいPLTからのより弱い信号を含めることを可能にする。いくつかの実施形態において、第2の閾値は、1センチリットル未満のサイズを有するイベントまたはノイズに対応するデータを選別するように設定されてもよい。いくつかの場合には、6μm以上の最大直径を有するイベントに対応するデータがより小さなイベントから分離されるように、第1の閾値を設定してもよい。6μm未満の最大直径を有するイベントのデータは、1μm未満の最大直径を有するイベントのデータを1μm~6μm未満の最大直径を有するイベントから分離する第2の閾値に供されてもよい。次いで、1μm~6μm未満の最大直径を有するイベントに対応するこのデータを分析して、これらのイベントのPLTを同定し、それらをノイズと区別してもよい。
【0047】
PLTをノイズと同定して区別するステップは、推定血小板イベントおよび推定ノイズに対応する信号を、対数スケールに変換することを含み得る。
【0048】
本方法は、少なくとも100イベント/秒、例えば少なくとも1000-250,000イベント/秒、10,000-250,000イベント/秒、10,000-250,000イベント/秒、100,000-250,000イベント/秒など、例えば100,000イベント/秒または250,000イベント/秒の速度で収集された信号に対して実行されてもよい。
【0049】
ある特定の態様において、収集された生データは、対数(log)スケールに変換され得る。変換は、アナログデータをデジタルデータに変換するステップを含んでもよい。アナログデータからデジタルデータへの変換は、第1の閾値を適用する前、第2の閾値を適用する前、または第2の閾値を適用した後に実行されてもよい。いくつかの場合では、対数(log)データを生成するためのアナログデータからデジタルデータへの変換は、第1の閾値が適用され、RBCイベントより小さいイベントがRBCイベントから分離された後、および明らかなノイズ信号である信号(例えば、1センチリットル未満のサイズを有する粒子に対応する信号)を分離する第2の閾値を適用する前に実行されてもよい。
【0050】
本方法は、ガウス混合モデルを変換されたデータに適用して、推定PLTイベントをノイズから分離することをさらに含んでもよい。ある特定の場合では、方法は、変換された信号をガウス混合モデルを使用してフィッティングし、推定血小板イベントおよび推定ノイズのフィッティング分布を生成することを含み得る。ある特定の実施形態において、推定PLTイベントのフィッティング分布の位置および幅がPLTイベントの範囲内にある場合、推定PLTイベントは血小板として同定される。
【0051】
ある特定の場合において、本方法は、同定の前に、推定血小板イベントのフィッティング分布の位置および幅を推定ノイズのフィッティング分布の位置および幅と比較することを含んでもよく、分布が許容範囲外の場合、変換されたデータは別の方法でフィッティングされ得る。例えば、変換されたデータは、ノイズに対するより高い制約を有するガウス混合モデルを使用してフィッティングされ、続いてPLTイベントおよびノイズが同定されてもよい。
【0052】
ある特定の場合では、フローサイトメータによって検出され、本方法によって分析される信号は、中間角散乱(IAS)、偏光側方散乱(PSS)、または軸方向光損失(ALL)の1つ以上を含み得る。他の場合では、フローサイトメータによって検出され、本方法によって分析される信号は、中間角散乱(IAS)および偏光側方散乱(PSS)を含み得る。
【0053】
ある特定の場合では、本方法は、全血試料中のWBC、RBC、および血小板を検出および列挙することにより、完全な血液分析を実行する方法と併せて実行されてもよい。全血試料は、溶解および染色されていなくてもよい(例えば、核酸に結合する細胞透過性蛍光色素で染色されていない)。
【0054】
図1は、血液試料中のPLTの同定に関与する例示的なプロセスを示している。第1のステップとして、生データが収集され、大小のイベントのデータに分離される。大きいベントは最終的にRBC(またはWBC)として分類され、小さいイベントはPLTおよびノイズの両方を表す。明らかにノイズであるデータ(例えば、1センチリットル未満の粒子サイズに対応するデータ)を省くために、閾値が適用される。データの残りは対数(log)に変換される。いくつかの場合では、IAS3チャネルを使用してイベントピークが対数(log)に転換され、小さいイベント(すなわちWBCおよびRBCより小さいイベント)にGMM(ガウス混合モデリング)を使用してフィッティングされる。次に、フィッティングPLTおよびノイズ分布の位置および幅が分析され、これらが許容範囲内にあるかどうかが決定される。モデルがフィットする場合、小さいイベントはPLTおよびノイズに分離される。モデルがフィットしない場合、より大きいイベント(例えば、WBCおよびRBCより小さく、3センチリットル、2センチリットル、または1センチリットルより大きい)に限定されたGMMが適用され、PLTおよびノイズが分類される。本明細書に記載されるように、このプロセスは、全血試料の完全な血球数の決定と併せて実行されてもよく、したがってRBCの溶解を伴わなくてもよい。ある特定の場合では、本方法は、血液試料中の細胞の核を蛍光色素で染色することを含まなくてもよい。
【0055】
血小板凝集塊を検出する方法
場合によっては、分析のために試料が血小板計数機器(例えば血液分析器)に送られる前に、試験試料中に血小板凝集塊が形成し得る。その結果、得られる血小板(PLT)数は人為的に低くなる可能性がある。さらに、PLT凝集塊は、WBCとして計数され得る。本開示の態様は、血小板凝集塊を含むものとして試料を同定するための方法を含む。本方法は、PLT凝集塊から信号を差し引いた後、補正されたWBC濃度を提供することをさらに含んでもよい。ある特定の態様において、PLT凝集塊の数がPLT凝集塊の許容数の閾値よりも高い場合、試料にフラグを立て、試料について得られた細胞数を無視してもよい。システムは、失敗した試験を使用者にさらに中継してもよい。
【0056】
ある特定の実施形態において、血小板凝集塊を含むものとして試料を同定する方法は、赤血球を溶解し、核を含む細胞を蛍光染色するのに十分な時間、細胞透過性蛍光色素および赤血球溶解剤を含む試薬と試料をインキュベートすることと、フローサイトメータのフローセルを通して試料を流すことと、フローセルを通って流れる試料を光学的に調査することと、調査された試料から光信号を検出することと、閾値を下回る蛍光信号に関連するイベントを同定することであって、同定されたイベントは、白血球(WBC)からの蛍光信号を下回る蛍光信号を有する、同定することと、同定されたイベントのサイズを決定することであって、血小板よりも大きいサイズを有するイベントの存在は、試料が血小板凝集塊を含むことを示す、決定することとを含んでもよい。
【0057】
ある特定の場合では、サイズの閾値は、8μmを超える最大直径を有し、WBCの閾値よりも小さいFL信号を有する粒子がPLT凝集塊として同定され得るように設定されてもよい。
【0058】
ある特定の態様では、本方法は、血小板のサイズよりも大きいサイズの同定されたイベントを選択することと、選択されたイベントに線をフィッティングすることと、線をWBCに関連する信号に拡張することと、線の近くのWBCを血小板凝集塊として再分類することとをさらに含んでもよい。WBCをPLT凝集塊に再分類すると、WBC数が補正される。
【0059】
ある特定の態様において、PLT凝集塊の数は閾値より高くなり得る。そのような場合、試料には許容され得るよりも多くのPLT凝集塊が含まれているとしてフラグが立てられてもよく、この方法は、この試料に対して決定された細胞数を破棄することを含んでもよい。
【0060】
ある特定の態様において、PLT凝集塊を同定する方法は、3次元(3D)線を使用して凝集塊を分類することを含んでもよい。例えば、選択されたイベントに線をフィッティングする代わりに、WBCのFL信号の閾値を下回るFL信号を有するイベントに3D線がフィッティングされてもよい。PLT数の5%超がPLT凝集塊である場合、3D線フィッティングが使用され得る。換言すれば、線フィッティングを使用して同定されたPLT凝集塊の数が血液試料中のPLTの数の5%を超える場合、WBCを同定するための閾値よりも低い閾値を有するイベントが3D線を使用してフィッティングされ、3D線をWBCに関連する信号に拡張し、線の近くのWBCを血小板凝集塊として再分類することにより、この方法が繰り返される。WBCをPLT凝集塊に再分類すると、WBC数が補正される。
【0061】
ある特定の場合では、PLT凝集塊を同定するために分析される信号は、蛍光(FL)、中間角散乱(IAS)、偏光側方散乱(PSS)、または軸方向光損失(ALL)の1つ以上であってもよい。いくつかの態様において、PLT凝集塊を同定するために分析される信号は、蛍光(FL)および偏光側方散乱(PSS)であってもよい。
【0062】
いくつかの態様において、試料は、細胞透過性であり、核酸に結合する蛍光色素で染色されてもよい。そのような蛍光色素を使用すると、通常のRBCおよび血小板の標識化ではなくWBCの標識化が保証される。いくつかの場合では、試料を溶解してRBCを除去してもよい。
【0063】
図2は、血液試料中のPLT凝集塊の同定および分類に関与する例示的なプロセスを示している。第1のステップとして、低い蛍光性(すなわち、WBCなどの有核血球に設定された閾値未満)を有する粒子を選択するためにデータが分析される。これらの粒子は、非FL粒子として示される。PLT凝集塊は低い蛍光性を有するが、WBCと同様のサイズを有する。線がPLT凝集塊にフィッティングされ、線は蛍光(FL)粒子に拡張されて、線の近くの粒子の数が決定される。線の近くに粒子がほとんどない場合、これらは(WBCではなく)PLT凝集塊として再分類される。線の近くに多数の粒子が存在することは、3D線のフィットがより正確になることを示し、3D線が上記で定義された低い蛍光性を有する粒子にフィッティングされる。フィッティングされた3D線はFL粒子まで拡張され、線付近の粒子の数が決定され、これらは(WBCではなく)PLT凝集塊として再分類される。
【0064】
本明細書で使用される場合、「トリガ」という用語は、信号の測定値が有効と見なされるために超えなければならない信号の最小値を意味する。トリガ値を超える信号値を提供するイベントが分析される。トリガ値より低い信号値を提供するイベントは、データ分析に含まれない。検出の各チャネルには、0~5000のスケールまたは0~6000のスケールが使用されます。スケール上の各値は、信号の強度のグラデーションを表し、0の値が最低の強度であり、5000(または6000)の値が最高の強度である。本明細書で説明されるように、PLTをノイズと区別する方法において、より低い信号が検出器をトリガするようにトリガを設定してもよく、これによってより多くのノイズを検出しながらPLTからの信号を検出することが保証される。
【0065】
いくつかの態様において、本明細書で開示される方法で血液分析のために収集され得る生データは、時間タグおよびその他の関連情報とともに、少なくとも5つの次元の情報、すなわちALL、IAS、PSS、DSS、およびFL1を有するイベントを含み得る。いくつかの態様において、これらの種類の生データのうちの2つまたは3つのみが、本明細書で開示される方法で使用され得る。例えば、PLTをノイズと区別する方法において、PSSおよびALLに対応する生データが使用され得る。PLT凝集塊を同定する方法など、他の態様において、FLおよびPSSならびにFLおよびALLが使用され得る。
【0066】
検体が取得され得る対象は、人間対象、哺乳類対象(例えば霊長類(類人猿、ゴリラ、サル、ヒヒ、オランウータンなど)、有蹄動物(例えばウマ、ウシ、ラクダ、ブタなど)、イヌ、ネコ、げっ歯類(マウス、ラットなど)などを含むがこれらに限定されない。検体は、例えば希釈、溶解など評価前に処理され得る生体液試料および生体試料(例えば血液学的試料、例えば血液試料)、例えば米国特許第9,011,773号および同第9,028,778号に記載されているものを含んでもよく、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0067】
WBCは、その核内に比較的高濃度のDNAを含む。適切に設計されている場合、蛍光色素を使用して、WBCの異なる亜集団を区別し、WBCを非有核細胞と区別することができる。例えば、リンパ球および好塩基球は、同様の光散乱特性を有するにもかかわらず、異なる蛍光特性を有する。さらに、成熟RBCは、DNAを含まない。したがって、蛍光色素を選択して、血球集団を区別することができる。色素の目的は、生細胞に容易に浸透し、DNAに高い親和性で結合し、色素が適切な光源で励起されたときに適切なストークスシフトで強い蛍光を発することである。色素を適切に励起し、最適な結果を得るために、可視帯域における色素のピーク吸収は、光源の波長に実質的に一致する(光源の波長の50nm以内、より好ましくは光源の波長の25nm以内)。
【0068】
選択される蛍光色素は、1)核酸に結合することができる、2)WBCおよび有核赤血球(nRBC)の細胞膜を透過することができる、3)光源に曝露されたときに選択された波長で励起され得る、4)光源による励起時に蛍光を発する、ならびに5)生体安定性があり、液体に可溶であるような蛍光色素である。色素は、アクリジンオレンジ、SYBR11、SYBR Greenシリーズ色素、ヨウ化ヘキシジウム、SYTO11、SYTO12、SYTO13、SYTO14、SYTO16、SYTO21、SYTO RNA Select、SYTO24、SYTO25およびそれらの任意の同等物からなる群から選択され得る。色素は、WBCおよびnRBCを標識化し、血液分析器において構成された蛍光トリガに基づいて未溶解のRBCならびにRBCおよび血小板の断片を「スクリーニング」し、またWBCの亜集団を区別するために使用される。色素は、典型的には、約0.1ng/mL~約0.1mg/mLの濃度で存在する。さまざまな色素が利用可能であるが、選択された色素は、一般に、血液分析器の励起源と組み合わされているため、単一の排他的な色素を使用して、同定、定量化、および/または分析が意図されるnRBCおよびすべてのWBC亜集団が染色され、その蛍光発光が励起される。したがって、単一の(すなわち排他的な)色素を使用して、WBCの亜集団を一度に同定、定量化、および分析することができる。
【0069】
一実施形態において、蛍光色素は、マイクロリットル当たり最大1,000×103個の細胞の染色および活性化を行うのに十分な量で、1)少なくとも1種の界面活性剤、2)少なくとも1種の緩衝剤、3)少なくとも1種の塩、および/または4)少なくとも抗菌剤の組み合わせとともに試薬中に提供される。「TRITON」X-100またはサポニンなどの少なくとも1種の界面活性剤は、RBCの膜を破壊し、RBCの断片のサイズを小さくするために使用される。少なくとも1種の界面活性剤は、典型的には約0.001%~約5%の濃度で存在する。「TRIADINE」または「PROCLIN」ファミリーのものなどの少なくとも1種の抗菌剤は、微生物による試薬の汚染を防止するために使用される。少なくとも1種の抗菌剤の濃度は、必要な保存期間の間試薬を保存するのに十分である。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)または4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)などの少なくとも1種の緩衝剤は、反応混合物のpHを調整して、RBCの溶解を制御し、WBCを保存するために使用される。少なくとも1種の緩衝剤は、典型的には、約0.01%~約3%の濃度で存在する。pHは、典型的には約3~約12の範囲である。NaClまたはNa2SO4などの少なくとも1種の塩は、浸透圧を調整して、溶解の効果を高める、および/またはWBCの保存を最適化するために使用される。少なくとも1種の塩は、約0.01%~約3%の濃度で存在してもよい。ある特定の場合では、少なくとも1種の緩衝剤が少なくとも1種の塩として機能することができ、または少なくとも1種の塩が少なくとも1種の緩衝剤として機能することができる。
【0070】
一般に、より低い浸透圧、または低張性が、RBCの溶解を促進するために使用される。浸透圧は通常、約20~約250mOsmの範囲である。RBCの溶解は、血液試料および試薬を約1体積部の試料対約35体積部の試薬の比率で混合した後、比較的短時間(例えば約25秒未満、約17秒未満、または更に約9秒未満)にわたって室温より高い温度(例えば約30℃~約50℃の間、約40℃など)で生じるようにすることができる。
【0071】
分析のための散乱および蛍光データは、一般に、上述のように複数の光学チャネルおよび少なくとも1つの蛍光チャネルで収集される。
【0072】
ある特定の態様において、蛍光(FL)トリガが使用されてもよい。FLトリガは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,091,625号に詳細に記載されている。
【0073】
したがって、本明細書に提示されるシステムおよび方法の態様は、WBCおよびWBC亜集団を収集および分析するために蛍光トリガを使用する。一実施形態において、血小板(PLT)凝集塊の検出の前に、RBCからの信号とWBC(および存在する場合はnRBC)からの信号との間に蛍光トリガが設定される。次いで、収集された光学情報および蛍光情報は、WBCおよびWBC亜集団をPLC凝集塊と見分ける(または区別する)ために使用され得る。例えば、二次元サイトグラムを使用して、粒子を同定および見分けることができる。本明細書で述べるように、いくつかの態様において、血小板とノイズとの間の重複について分析されるデータについて、FLトリガをより低く設定してもよい。他の場合では、血小板とノイズとの間の重複を分析するための方法において、蛍光信号は使用されず、したがってFLトリガは使用されなくてもよい。
【0074】
本明細書で使用される場合、「蛍光情報」という表現は、血液分析器の蛍光チャネルから収集されたデータを意味する。本明細書で使用される場合、「蛍光チャネル」という表現は、試料から放出される蛍光の量を測定するために適切な波長帯域に設定された光電子増倍管などの検出デバイスを意味する。
【0075】
本明細書に記載の方法は、例えば血液などの液体中の白血球分画、赤芽球、赤血球、ならびに血小板およびPLT凝集塊の同時分析のための自動化された方法を含み得る。例えば、脳脊髄液、腹水、胸膜液、腹膜液、心膜液、滑液、透析液、およびドレナージ液などの他の生体液を使用して、これらの液体のさまざまなパラメータを決定することができる。
【0076】
システム
本開示は、フローサイトメータで血小板イベントをノイズと区別するためのシステムを含む。本開示のシステムは、フローサイトメータで血小板イベントをノイズと区別するための方法を実行するように構成されたコンポーネントを含む。
【0077】
本開示はまた、血小板凝集塊を含むものとして試料を同定し、PLT凝集塊の検出数に基づいてWBC数を任意選択で補正し、および/またはPLT凝集塊の数が正確な細胞分析を妨げる場合、試料にフラグを立てるためのシステムを含む。
【0078】
ある特定の実施形態において、システムは、フローセルを含むフローサイトメータ、フローセルに光学的に結合された光学粒子調査システム、および本明細書でさらに説明される非一時的コンピュータ可読媒体を含んでもよい。そのようなシステムは、本明細書に記載の方法のステップの1つ以上を実行するように構成された回路を含んでもよい。
【0079】
本システムのコンポーネントは、単一のデバイスに組み立てられてもよく、または2つ以上のデバイスに分離されたコンポーネントのシステムとして組み立てられてもよい。いくつかの場合では、機能を実行するデバイス、システム、またはそのコンポーネントは、試料を処理する血液分析器の外部にあってもよいがその近くにあってもよい(すなわち、同じ作業面の、もしくはその上の、または同じ部屋もしくは建物内などの外部筐体に取り付けられてもい)。他の例では、機能を実行するデバイス、システムまたはそのコンポーネントは、検体を処理するおよび/またはデータを取得する血液分析器の内部(すなわちその中、内側、または中に収容されている)に配置されてもよい。
【0080】
本明細書で使用される場合、「データ処理ユニット」とは、それに必要な機能を実行するハードウェアおよび/またはソフトウェアの組み合わせを意味する。例えば、本明細書における任意のデータ処理ユニットは、例えば電子制御装置、メインフレーム、サーバーまたはパーソナルコンピュータ(デスクトップもしくはポータブル)などの形態で利用可能なプログラム可能なデジタルマイクロプロセッサであってもよい。データ処理ユニットがプログラム可能である場合、適切なプログラミングが遠隔地からデータ処理ユニットに伝達されてもよい、またはコンピュータプログラム製品(ポータブルもしくは固定コンピュータ可読記憶媒体など、磁気、光学、もしくはソリッドステートデバイスベースであるかを問わない)に事前に保存されてもよい。
【0081】
本明細書で開示される方法を実行するためのデバイスおよびシステム内で、実質的に任意の回路が機能的な配置に構成され得る。例えば特別に構成されたコンピュータを含むそのような回路のハードウェアアーキテクチャは、当業者に周知であり、1つ以上のプロセッサ(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、内部または外部のデータ記憶媒体(ハードディスクドライブなど)を含むハードウェアコンポーネントを含み得る。そのような回路はまた、グラフィック情報を処理して表示手段に出力するための1以上のグラフィックボードを含み得る。上記のコンポーネントは、回路内、例えば特定用途コンピュータ内のバスを介して適切に相互接続され得る。回路は、モニタ、キーボード、マウス、ネットワークなどの汎用外部コンポーネントと通信するための適切なインターフェースをさらに備えてもよい。いくつかの実施形態において、回路は、本発明の方法およびプログラムの処理能力を高めるために、並列処理が可能であってもよく、または並列もしくは分散コンピューティング用に構成されたネットワークの一部であってもよい。いくつかの実施形態において、記憶媒体から読み出されたプログラムコードは、回路に挿入された拡張ボード、または回路に接続された拡張ユニットに設けられたメモリに書き込み可能であり、拡張ボードまたは拡張ユニットに設けられたCPUなどは、説明された機能を達成するために、プログラミングの命令に従って実際に操作の一部またはすべてを実行し得る。
【0082】
本開示のシステムは、情報が後日コンピュータによってアクセス可能および検索可能になるように情報を記憶することができる「メモリ」をさらに含んでもよい。記憶された情報へのアクセスに使用される手段に基づいて、任意の便利なデータ記憶構造が選択され得る。ある特定の態様において、情報は、「永久メモリ」(すなわち、コンピュータまたはプロセッサへの電力供給の終了によって消去されないメモリ)または「非永久メモリ」に記憶されてもよい。コンピュータハードドライブ、CD-ROM、フロッピーディスク、ポータブルフラッシュドライブおよびDVDはすべて、永久メモリの例である。ランダムアクセスメモリ(RAM)は、非永久メモリの例である。永久メモリ内のファイルは、編集および再書き込み可能である。
【0083】
本開示のデバイスおよびシステムのコンポーネントに加えて、例えば上述したように、本開示のシステムは、データ出力デバイス、例えばモニタおよび/またはスピーカ、データ入力デバイス、例えばインターフェースポート、キーボードなど、流体ハンドリングコンポーネント、スライドハンドリングコンポーネント、電源などのいくつかの追加のコンポーネントを含んでもよい。
【0084】
血液分析器のフローセルを通って流れる試料からの信号を検出するための血液分析器は、血液分析(フローサイトメトリーを含む)に適した装置の照明および検出光学系を含んでもよい。
【0085】
一実施形態において、血液試料分析は、蛍光情報によって任意選択的に強化された多重角度偏光散乱分離技術(MAPSS)を用いて行われる。少なくとも1つのフォトダイオード、または少なくとも1つの光電子増倍管、または少なくとも1つのフォトダイオードおよび少なくとも1つの光電子増倍管の両方を使用して、フローセルを通過する各血球によって散乱される光を検出する。約0°散乱(例えば0°~1°)を測定する軸方向光損失(ALL)信号、および低角度(例えば約3°~約15°)散乱を測定する中間角散乱(IAS)信号を測定するために、2つ以上のフォトダイオードが使用される。90°偏光側方散乱(PSS)信号および90°偏光解消側方散乱(DSS)信号を検出するために、2つ以上の光電子増倍管が使用される。光源の波長の選択に応じて、追加の光電子増倍管が適切な波長範囲内の蛍光(FL1)測定に使用される。したがって、システムで捕捉された各イベントは、ALL、IAS(1つ以上のチャネル、2つまたは3つのチャネルなど)、PSS、DSS、および蛍光(1つ以上のチャネル、2つのチャネルなど)などの複数の次元の情報を示す。これらの検出チャネルからの情報は、血球のさらなる分析に使用される。ある特定の態様において、血液分析に適した装置の照明および検出光学系は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第9,091,625号の図1に示されるコンポーネントを含んでもよい。米国特許第9,091,625号の図1を参照すると、装置10は、光源12、ビーム曲げ用のフロントミラー14およびリアミラー16、第1のシリンドリカルレンズ20および第2のシリンドリカルレンズ22を含むビームエキスパンダモジュール18、集束レンズ24、微細ビーム調整器26、フローセル28、前方散乱レンズ30、ブルズアイ検出器32、第1の光電子増倍管34、第2の光電子増倍管36、ならびに第3の光電子増倍管38を備える。
【0086】
光源は、レーザであってもよい。代替の実施形態において、約350nm~約700nmの間の波長の光を放出するレーザが選択され、例えば、一実施形態において、約488nmで光を放出するレーザが使用される。光源12は、カリフォルニア州サンタクララのCoherent,Inc.から市販されている垂直偏光空冷式コヒーレントキューブレーザであってもよい。350nm~700nmの範囲の波長を有するレーザが使用され得る。レーザの動作条件は、「CELL-DYN」自動血液分析器で現在使用されているレーザの動作条件と実質的に同様である。しかしながら、他の光源、例えばランプ(例えば水銀、キセノン)なども同様に使用され得る。
【0087】
フローセル、レンズ、集束レンズ、微細ビーム調整機構、およびレーザ集束レンズに関する追加の詳細は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,631,165号、特にカラム41、32行目からカラム43、11行目に見出すことができる。米国特許第5,631,165号の図1に示される前方光路システムは、球面平凸レンズ30と、レンズの後焦点面に配置された2素子フォトダイオード検出器32とを含む。この構成では、2素子フォトダイオード検出器32内のそれぞれの点は、フローセル28を通って移動する細胞からの光の特定の収集角度にマッピングされる。検出器32は、軸方向光損失(ALL)および中間角前方散乱(IAS)を検出することができるブルズアイ検出器であってもよい。米国特許第5,631,165号は、カラム43の12~52行目にこの検出器のさまざまな代替を記載している。
【0088】
第1の光電子増倍管34(PMT1)は、偏光解消側方散乱(DSS)を測定する。第2の光電子増倍管36(PMT2)は偏光側方散乱(PSS)を測定し、第3の光電子増倍管38(PMT3)は、選択された蛍光色素および使用される光源に応じて、約360nm~約750nmの蛍光発光を測定する。一実施形態において、PMT3は、約440nm~約680nm、またはより具体的には約500nm~約550nmの蛍光発光を測定する。光電子増倍管は、信号の強度を高めるために、広範囲の波長の蛍光信号を収集する。側面散乱および蛍光発光は、二色性ビームスプリッタ40および42によってこれらの光電子増倍管に向けられ、効率的な検出を可能にするために必要な波長で効率的に透過および反射する。米国特許第5,631,165号は、カラム43、53行目からカラム44、4行目までの光電子増倍管に関するさまざまな追加の詳細を記載している。
【0089】
蛍光を測定する場合、液浸収集システムを使用することにより、光電子増倍管34、36、および38での感度が向上する。液浸収集システムは、屈折率整合層により第1のレンズ30をフローセル28に光学的に結合し、広角にわたる光の収集を可能にするシステムである。米国特許第5,631,165号は、この光学システムのさまざまな追加の詳細を、カラム44、5~31行目に記載している。
【0090】
光電子増倍管34、36、および38は、側方散乱(入射レーザビームにほぼ垂直な軸を持つ円錐で散乱した光)または蛍光(入射レーザビームの波長とは異なる波長で細胞から放出された光)を検出する。
【0091】
米国特許第5,631,165号の選択された部分が上記で参照されているが、米国特許第5,631,165号は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0092】
コンピュータ可読媒体
本開示は、フローサイトメータで血小板イベントをノイズと区別するための命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体を含むコンピュータ可読媒体を含む。本開示の態様は、コンピューティングデバイスによって実行されると、コンピューティングデバイスに、フローサイトメータで血小板イベントをノイズと区別するためのステップの1つ以上を実行させる命令を記憶するコンピュータ可読媒体を含む。
【0093】
ある特定の態様において、非一時的コンピュータ可読媒体は、コンピューティングデバイスによって実行されると、コンピューティングデバイスに、調査された試料からの光信号を検出することであって、フローサイトメータのフローセルを通して試料を流し、流れる試料を光学的に調査することにより生成される光学信号を検出することと、検出された信号を、赤血球(RBC)イベントおよびRBCイベントより小さいイベントに対応する信号に分離することと、RBCイベントより小さいイベントに対応する信号を、推定血小板イベントおよび推定ノイズに分離することと、推定血小板イベントおよび推定ノイズに対応する信号を、対数スケールに変換することと、変換された信号を、ガウス混合モデルを使用してフィッティングし、推定血小板イベントおよび推定ノイズのフィッティング分布を生成することと、フィッティング分布の位置および幅が血小板イベントの範囲内にある場合、推定血小板イベントを血小板イベントとして同定することとを実行させる命令を記憶する。
【0094】
いくつかの例では、命令は、コンピューティングデバイスに、同定の前に、推定血小板イベントのフィッティング分布の位置および幅を推定ノイズのフィッティング分布の位置および幅と比較し、分布が許容範囲外の場合、ノイズに対するより高い制約を有するガウス混合モデルをフィッティングすることを実行させる命令を含む。
【0095】
ある特定の態様において、命令は、収集された生データを対数(log)スケールに変換するための命令を含む。変換は、アナログデータをデジタルデータに変換するステップを含んでもよい。アナログデータからデジタルデータへの変換は、第1の閾値を適用する前、第2の閾値を適用する前、または第2の閾値を適用した後に実行されてもよい。いくつかの場合では、対数(log)データを生成するためのアナログデータからデジタルデータへの変換は、第1の閾値が適用され、RBCイベントより小さいイベントがRBCイベントから分離された後、および明らかなノイズ信号である信号(例えば、1センチリットル未満のサイズを有する粒子に対応する信号)を分離する第2の閾値を適用する前に実行されてもよい。
【0096】
ある特定の態様において、命令は、ガウス混合モデルを変換されたデータに適用して、推定PLTイベントをノイズから分離するための命令を含む。ある特定の場合では、命令は、変換された信号を、ガウス混合モデルを使用してフィッティングし、推定血小板イベントおよび推定ノイズのフィッティング分布を生成することを含むための命令を含む。ある特定の実施形態において、推定PLTイベントのフィッティング分布の位置および幅がPLTイベントの範囲内にある場合、推定PLTイベントは血小板として同定される。
【0097】
ある特定の場合には、命令は、同定の前に、推定血小板イベントのフィッティング分布の位置および幅を推定ノイズのフィッティング分布の位置および幅と比較するための命令を含み、分布が許容範囲外の場合、変換されたデータは別の方法でフィッティングされ得る。例えば、変換されたデータは、ノイズに対してより高い制約を有するガウス混合モデルを使用してフィッティングされ、続いてPLTイベントおよびノイズが同定されてもよい。
【0098】
ある特定の場合では、フローサイトメータによって検出され、本方法によって分析される信号は、中間角散乱(IAS)、偏光側方散乱(PSS)、または軸方向光損失(ALL)の1つ以上を含み得る。他の場合では、フローサイトメータによって検出され、本方法によって分析される信号は、中間角散乱(IAS)および偏光側方散乱(PSS)を含み得る。
【0099】
いくつかの場合では、本開示のコンピュータ可読媒体は、コンピューティングデバイスに、血小板凝集塊を含むものとして試料を同定し、PLT凝集塊の検出数に基づいてWBC数を任意選択で補正し、および/またはPLT凝集塊の数が正確な細胞分析を妨げる場合、試料にフラグを立てるためのステップを実行させる命令を記憶する。
【0100】
いくつかの態様において、非一時的コンピュータ可読媒体は、コンピューティングデバイスによって実行されると、コンピューティングデバイスに、調査された試料からの光信号を検出することであって、光信号は、フローサイトメータのフローセルを通して試料を流し、流れる試料を光学的に調査することにより生成され、試料は、赤血球を溶解し、核を含む細胞を蛍光染色するのに十分な時間、細胞透過性蛍光色素および赤血球溶解剤を含む試薬とインキュベートされる、検出することと、閾値を下回る蛍光信号に関連するイベントを同定することであって、同定されたイベントは、白血球(WBC)からの蛍光信号を下回る蛍光信号を有する、同定することと、同定されたイベントのサイズを決定することであって、血小板よりも大きいサイズを有するイベントの存在は、試料が血小板凝集塊を含むことを示す、決定することとを実行させる命令を記憶する
【0101】
特定の実施形態では、命令は、コンピューティングデバイスに、血小板のサイズよりも大きいサイズの同定されたイベントを選択することと、選択されたイベントに線をフィッティングすることと、線をWBCに関連付けられた信号に拡張することと、線の近くのWBCを血小板凝集塊として再分類することとを実行させる命令を含む。
【0102】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載の方法による命令は、「プログラミング」の形態でコンピュータ可読媒体にコード化することができ、「コンピュータ可読媒体」という用語は、本明細書で使用される場合、実行および/または処理のためにコンピュータに命令および/またはデータを提供することに関与する任意の記憶または伝送媒体を指す。記憶媒体の例は、フロッピーディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性メモリカード、ROM、DVD-ROM、ブルーレイディスク、ソリッドステートディスク、およびネットワーク接続ストレージ(NAS)(そのようなデバイスがコンピュータの内部または外部にあるかどうかを問わない)を含む。情報を含むファイルは、コンピュータ可読媒体に「記憶」され得る、「記憶」とは、後日コンピュータによってアクセス可能および検索可能になるように情報を記録することを意味する。
【0103】
本明細書に記載のコンピュータ実装方法は、任意の数のコンピュータプログラミング言語のうちの1つ以上で記述され得るプログラミングを使用して実行され得る。そのような言語は、例えば、Java(Sun Microsystems,Inc.、カリフォルニア州サンタクララ)、Visual Basic(Microsoft Corp.、ワシントン州レドモンド)、およびC++(AT&T Corp.、ニュージャージー州ベドミンスター)、ならびに多くの他の言語も含む。
【0104】
以下の実施例は、限定ではなく例示として提供される。
【実施例
【0105】
実施例1:血液分析器を使用して血小板をノイズと区別するための方法
血小板は、血液中の最小の細胞であり、その検出は多くの場合分析装置のノイズによって制限される。ノイズは、光源(レーザ出力の1%の変動)、増幅電子機器、またはその他の源によって発生し得る。ここでは、少数のノイズイベント、およびノイズを超えるすべての血小板について光散乱情報を収集した。このデータでは、EM(期待値最大化)アルゴリズムを使用して、ノイズおよび血小板の最も可能性の高い分布を見つけ出した。このアルゴリズムは、ノイズによって隠された血小板の数を推定できるため、このアルゴリズムにより血小板列挙の精度が改善される。
【0106】
フローセル、前方および側方散乱検出器、ならびにノイズの存在下で血液検体中の血小板数を推定するソフトウェアアルゴリズムを備えた血液分析器が使用される。
【0107】
血液分析器は、トリガチャネルに低い閾値が設定されている。閾値は非常に低く設定されているため、血小板分布の下端で大きなノイズスパイクが見られる。データはまず対数(log)変換され、次いでガウス分布をノイズおよび血小板にフィッティングするEMアルゴリズムにより分析される。アルゴリズムの出力は、データ収集で捕捉されたイベント全体の血小板の割合である。次いで、血液量、希釈、流速およびデータ収集時間を使用して、血小板イベント数が血液中の血小板濃度に変換される。
【0108】
PSSでトリガされ、IAS3およびPSSで対数(log)変換されて表示されたデータを、図3に示す。図3に見られるように、最初の明らかなノイズは、2本の平行線によって除去される。2つの平行線の間にあるイベントのみがさらに考慮される。
【0109】
2本の平行線の間にあるイベントは、ヒストグラムとしてプロットされ、EMアルゴリズムを使用して、最も可能性の高いノイズ(グラフの左側の曲線)および血小板(グラフの右側の曲線)分布が得られる(図4を参照されたい)。
【0110】
図4は、ノイズピーク内の血小板の存在を示している。グラフの左側の曲線はノイズに関連し、グラフの右側の曲線は血小板に対応する。EMアルゴリズムは、観測データにフィットする最も可能性の高いノイズおよび血小板分布を見つけ出す。この場合の最終結果は、フィルタリングされたイベントの25.5%がノイズであり、フィルタリングされたイベントの74.5%が血小板である。これらの数値を用いて、総血小板イベント数および血小板の血中濃度を容易に導出することができる。
【0111】
図5および図6は、図3および図4よりも低い血小板濃度を有する試料において、血小板をノイズと区別するための別の例を示している。図5は、最も明白なノイズを除去するための2本の平行線の使用を示す。2本の平行線の間にあるイベントは、ヒストグラムとしてプロットされ、EMアルゴリズムを使用して、最も可能性の高いノイズ(グラフの左側の曲線)および血小板(グラフの右側の曲線)分布が得られる(図6を参照されたい)。
【0112】
図6に見られるように、グラフの左側の曲線はノイズ分布であり、グラフの右側の曲線は血小板分布である。血小板数のほぼ半分が、ノイズピークの下に隠れている。しかしながら、EMアルゴリズムは、この測定における血小板イベントの良好な推定値を提供する。この場合の最終結果は、フィルタリングされたイベントの72%がノイズであり、フィルタリングされたイベントの28%が血小板である。
【0113】
したがって、より低い閾値を使用すると、ノイズが同定されてフィルタリングにより除去された後、閾値を下回る血小板を計数することができる。
【0114】
実施例2:血液分析器を使用してPLT凝集塊を分類するための方法
図7Aは、フローサイトメータから記録されたPSS(X軸)およびFL(Y軸)のプロットを示す。WBCの信号よりも低いFL信号を有するイベントは、PLT凝集塊として選択され、「+」で示される。図7Bは、図7Aにおける同定されたPLT凝集塊にフィッティングされた線をWBCの信号に拡張することによる、追加のPLT凝集塊の分類を示す。PLT凝集塊として再分類されたWBCは、「+」で表される。
【0115】
図8Aは、フローサイトメータから記録されたPSS(X軸)およびFL(Y軸)のプロットを示す。WBCの信号よりも低いFL信号を有するイベントは、PLT凝集塊として選択され、「+」で示される。図8Bは、同定されたPLT凝集塊にフィッティングされた3D線をWBCの信号に拡張することによる、追加のPLT凝集塊の分類を示す。PLT凝集塊として再分類されたWBCは、「+」で示される。
【0116】
上記の発明は、理解を明確にするために、例示および実施例によってある程度詳細に記載されているが、本発明の教示に照らして当業者には、特定の変更および修正が、添付の特許請求の主旨または範囲から逸脱することなく、本発明に対し実施され得ることは容易に明らかである。
【0117】
したがって、上記の説明は単に本発明の原理を例示するに過ぎない。当業者であれば、本明細書に明示的に記載または図示していないが、本発明の原理を具現化し、その主旨および範囲内に含まれるさまざまな構成を考案できることが理解されよう。さらに、本明細書に列挙されたすべての例および条件的文言は、主として本発明の原理および発明者らにより当該技術の促進のために寄与された概念を理解する上で読者を助けることを意図しており、このような具体的に列挙された例および条件への限定ではないと解釈されるべきである。また、本発明の原理、態様、および実施形態、ならびにその具体的な例を列挙する本明細書におけるすべての記述は、その構造的および機能的等価物の両方を包含することを意図している。加えて、そのような等価物は、現在知られている等価物および将来開発される等価物の両方、すなわち、構造にかかわらず同じ機能を果たすいかなる開発要素も含むことが意図される。したがって、本発明の範囲は、本明細書に図示および記載の例示的な実施形態に限定されることを意図していない。むしろ、本発明の範囲および趣旨は、添付の特許請求の範囲によって具現化される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B