(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】編機工具、特に編機用編み針
(51)【国際特許分類】
D04B 35/04 20060101AFI20220902BHJP
D04B 35/06 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
D04B35/04
D04B35/06
(21)【出願番号】P 2019570430
(86)(22)【出願日】2018-06-15
(86)【国際出願番号】 EP2018065967
(87)【国際公開番号】W WO2018234183
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-06-01
(32)【優先日】2017-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】598132646
【氏名又は名称】グロツ・ベッケルト コマンディートゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】ウヴェ シュティンゲレ
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-089583(JP,U)
【文献】特開昭56-165052(JP,A)
【文献】特開昭62-215054(JP,A)
【文献】特開平05-005257(JP,A)
【文献】中国実用新案公告第2178245(CN,U)
【文献】国際公開第2006/061989(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 35/04
D04B 35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
編機用編み針(12)である編機工具(11)であって、
長手方向(L)に延び、下側(25)と、前記下側(25)と反対側の上側(27)と、横断方向(Q)に間隔を空けて配置され、前記下側(25)と前記上側(27)とを接続する2つの側面(26)と、を有するシャンク(15)を有し、
針前端部(16)に隣接して編目形成部(M)が配置され、
反対側の針後端部(17)に隣接して駆動部(A)が配置され、前記駆動部(A)にはバット部(24)が設けられ、前記バット部(24)はバット部高(h2)で前記長手方向(L)及び前記横断方向(Q)と直角な高さ方向(H)に延び、編機のカムと協働するように構成され、
前記下側(25)は、平面(E)で少なくとも前記編目形成部(M)以外に延び且つ窪みがない、
編機工具(11)において、
前記駆動部(A)内の前記シャンク(15)は、最大1.1mmのリブ高(h1)を有する少なくとも1つのリブ部(30)を形成し、
少なくとも1つの支持隆起部(31)が前記駆動部(A)内で前記高さ方向(H)に延び、前記バット部(24)から前記長手方向(L)に間隔を空けて配置され、前記リブ高(h1)より高く且つ前記バット部高(h2)より低い隆起高(h3)を有する
ことを特徴とする編機工具。
【請求項2】
2つの支持隆起部(31)からなる少なくとも一つの対(32)が前記駆動部(A)に設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載の編機工具。
【請求項3】
前記
少なくとも一つの対(32)の前記2つの支持隆起部(31)は、前記長手方向(L)に互いに支持間隔(x)を空けて設けられる、ことを特徴とする請求項2に記載の編機工具。
【請求項4】
前記支持間隔(x)は、前記2つの支持隆起部(31)の最高部間の前記長手方向(L)の最小間隔である、ことを特徴とする請求項3に記載の編機工具。
【請求項5】
前記支持間隔(x)は前記長手方向(L)における前記バット部(24)の長さ寸法(y)に一致する、ことを特徴とする請求項3又は4に記載の編機工具。
【請求項6】
前記針後端部(17)は、前記シャンク(15)の端部(49)に配置され、実質的に長方形の輪郭を有する、ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1つに記載の編機工具。
【請求項7】
前記端部(49)の端部高(h5)は、前記高さ方向(H)で前記支持隆起部(31)の前記隆起高(h3)と少なくとも同じである、ことを特徴とする請求項6に記載の編機工具。
【請求項8】
各前記支持隆起部(31)は、前記高さ方向(H)及び前記長手方向(L)に対して傾斜して延びる2つの側部(33)を有する、ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1つに記載の編機工具。
【請求項9】
前記リブ部(30)又は前記リブ部(30)の1つが、前記少なくとも1つの支持隆起部(31)と前記バット部(24)との間に配置される、ことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1つに記載の編機工具。
【請求項10】
前記駆動部(A)内の前記シャンク(15)は、それぞれ前記リブ高(h1)が同じで
ある複数のリブ部(30)を形成する、ことを特徴とする請求項1乃至9の何れか1つに記載の編機工具。
【請求項11】
前記バット部(24)は2つの支持部(38)の間に配置され、前記支持部(38)は、前記高さ方向(H)に延び、それぞれ前記隆起高(h3)と少なくとも同じ高さの支持部高(h4)を有する、ことを特徴とする請求項1乃至10の何れか1つに記載の編機工具。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1つに記載の複数の編機工具(11)から形成される集団(10)であって、
前記集団(10)内の各編機工具(11)の前記バット部(24)は、この集団(10)内の他の全ての編機工具(11)と比較して、前記針前端部及び/又は前記針後端部(16、17)からの距離が異なるバット位置を有し、
前記集団(10)内の各編機工具(11)は、少なくとも1つの前記支持隆起部を、この集団内の別の編機工具(11)の前記長手方向(L)の前記バット位置の領域内にある位置に有する、ことを特徴とする集団。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編機工具、特に編機用編み針に関する。編機工具は、好ましくは綿紡糸等のステープル繊維糸の編成に用いられるように構成されている。編機工具すなわち編機用編み針は、ベラ針又は複合針であることが好ましい。
【背景技術】
【0002】
多くの編機工具すなわち編機用編み針が既知である。編機用編み針、例えば、特にベラ針は、編機での編成中に案内みぞ内又は針みぞ内で長手方向に移動させられる。このために、各編機用編み針はバット部を備えた駆動部を有する。バット部は編機のカムと協働し、編機用編み針を針みぞ内で長手方向に位置決めし又は移動させる。丸編機の場合、編成シリンダは編機用編み針とともにカムに対して周方向に回転し、編機用編み針のバット部はカム軌道で案内される。ここでは、編機用編み針の長手方向で力がバット部に働くだけでなく、横断方向に横断する力も働く。複合針のフック又はスライダ等のその他の編機工具は、編機での編成の際に適した駆動装置の配置によっても移動又は位置決めされる。
【0003】
この種の編機工具は、相反することもある多くの条件を満たす必要がある。最大限の生産性を達成するために、高速の移動速度、例えば丸編機の編成シリンダの高速の回転速度が必要となり、このことは対応して編機の編機用編み針及びその他の編機工具の加速度及び速度の上昇に繋がる。
【0004】
高加速度を可能にするには、一方では編機工具の質量が少ないと優位性がある。他方では、編機工具の寿命を長くすることも必要であり、加速力の作用の結果として過大な摩耗又は損傷の痕跡が生じてはならない。故障した編機工具の交換には編機の停止が必要となり、生産性の損失に繋がる。編機工具は正確に位置決めされなければならず、編目形成時に誤差が発生しないようにする必要がある。編み目形成プロセスの際の編機工具の案内又は位置決めの精度も、残留している糸、残留している繊維、又はその他の汚物により失われてはならない。
【0005】
これらの様々な制約に対処すべく、編機工具の幅広い実施例がすでに提案されている。針の破損を避けるために、シャンク(針幹)が蛇行するように延びる部分を備えた編機用編み針も知られており、それらは例えば特許文献1又は特許文献2から既知である。この目的は、編機用編み針に対する不安定な加速による影響を低減し、損傷の危険性を排除することである。そこに記載された針は集団を形成し、集団内の針はそれぞれバット部を有し、かかるバット部は同一集団内の他の編機用編み針のバット部とは異なるバット位置を占める。針の1つがバット部を有する箇所で、他の針はそれぞれシャンクブリッジを有する。
【0006】
蛇行するシャンク部を有する編機用編み針は、特許文献3にさらに記載されている。そこで、下側から間隔を空けて配置されたリブ部は最大1.1mm又は0.9mmのリブ高を有する。
【0007】
特許文献4は、編機用編み針の蛇行部の代わりに、開口部をシャンクの2つの側面の間に配置し、その開口部の構成及び形状は同じでなくてもよいとすることを提案している。蛇行シャンク部と比較すると、針の上側及び下側の窪み又は凹部の形成がこのように回避される。
【0008】
特許文献5は、例えば、ベラ針の形態の打抜き編機工具を記載している。シャンクは複数の開口部を有し、かかる開口部は横断方向にシャンクを完全に貫き、シャンクの各側面で開放されている。環状に閉止された室がこのようにして形成される。これらは、長手方向に互いに平行に伸びる2つのリブにより区切られる。そのため、不安定な加速は効率よく吸収され、針の破損は避けられる。
【0009】
特許文献6から、請求項1の前文に記載された機能を有する編機用編み針が既知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第5231855号明細書
【文献】独国特許出願第69218303号翻訳明細書(T2)
【文献】独国特許出願公開第2820925号明細書
【文献】米国特許第4036036号明細書
【文献】独国特許出願公開第3014751号明細書
【文献】中国実用新案第2178245号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の1つの目的は、先行技術を改良して、前述した制約に十分に対応し、精密な案内で高加速度を可能とする編機工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、請求項1に記載の特徴を有する編機工具により達成される。
【0013】
本発明では、編機工具及び特に長手方向に延びるシャンク(針幹)を有する編機用編み針が提案されている。この編機工具のシャンクは、下側と、下側と反対側の上側と、下側と上側とを接続する2つの側面とを有する。側面は、長手方向に直角な横断方向に間隔を空けて配置されている。2つの側面は、互いに平行であることが好ましい。
【0014】
シャンクすなわち編機工具は、針前端部と、反対側の針後端部とを有する。編目形成部は、針前端部に隣接する。編機工具を編機用編み針とする態様において、針フックは編目形成部に配置される。編機用編み針がベラ針として形成されている場合、可動に装着されたベラが編目形成部に設けられることができ、このベラが開位置と閉位置との間を動くことができる。
【0015】
編機工具の駆動部は、針後端部に隣接する。この駆動部において、編機工具は少なくとも1つのバット部を有する。バット部は長手方向に及び横断方向に直角な高さ方向に延び、下側を起点とするバット部高を有する。バット部は、編目形成の際に編機のカムと協働するよう構成されている。この編機工具は、バット部により移動及び/又は位置決めすることができる。
【0016】
シャンク又はシャンクの特定の部分の高さが参照されている場合は、いずれの高さも常に下側を基準として定められる。
【0017】
編機工具の下側は、編目形成部の少なくとも外側で、長手方向と横断方向に広がる単一平面において延びる。この下側には、この面に対して膨らみ、窪み、又は開口部は存在しない。
【0018】
側面は、少なくとも駆動部において、凹部すなわち窪みがない状態で形成されることが好ましい。そのため、下側の凹部若しくは窪み又は側面の凹部若しくは窪みに埃が堆積することはない。埃の堆積は、編機用編み針の位置決め精度に悪影響を与え得る。凹部での埃の蓄積が過剰な場合、編機工具の動作中に摩擦が増加し、摩耗を発生させることもあり得る。この編機工具は、特にステープル糸又は綿紡糸の編成に用いられるよう構成されている。この種の糸の場合、残留しているステープル繊維糸により、編機に特に多量の汚れが発生する。この編機工具はこの種の汚れの影響を受けない。
【0019】
駆動部において、シャンクは下側から最大1.1mmのリブ高を有する少なくとも1つのリブ部を形成する。駆動部の下側は共通の平面内に延びているため、リブ部が編機の案内みぞで案内される場合は、案内みぞの基部で対応面に当接する。リブ部は、低い高さで形成される。そのため、針の重さが減少し、針シャンクの弾力性が増加する。不安定な加速が発生すると、加速が加わるバット部への荷重は減少し、バット部の破損の危険性は低下する。リブ部は下側から間隔を空けることなく延びており、従って、その下側全体が編機の表面で当接することができるため、いかなる加えられた振動も十分に減衰される。下側からの間隔が空いたリブ又はシャンク部は設けられていない。
【0020】
駆動部内の、特に少なくとも1つのリブ部におけるシャンクの低い高さ(少なくともいくつかの場所で)は、長手方向に平行に延びる長手方向軸の周りのねじれ剛性も低下させる。丸編機で編機工具をカムに対して横断方向に動かすと、横断方向に向けられた力がバット部に加わり、よってこの長手方向軸の周りでバット部の傾斜又はずれが発生し得る。これを打ち消して編機工具を支持できるようにするために、駆動部には少なくとも1つの支持隆起部が設けられ、支持隆起部は高さ方向に延び、隆起高を有する。隆起高は、リブ高よりも高く、バット部高より低い。支持隆起部は、長手方向にバット部と間隔を空けて配置される。支持隆起部の領域では、シャンクは高さが比較的高く、下側が案内面にある状態において編機で支持され、支持効果が改善される。
【0021】
編機の案内みぞのみぞ壁は、隣接する編機工具の間に配置される。編機工具は、支持隆起部によってみぞ壁で支えられる。バット部への局所的な荷重が軽減され、損傷が回避され、及び/又は編機工具の寿命が長くなる。編機工具だけでなく、特に編機(編成シリンダ、針床)のみぞ壁でも、編機工具の破損又は劣化を受けて損傷が発生し得る。このような損傷を修復するには多大な労力と費用が必要となる。
【0022】
本発明による編機工具すなわち本発明による編機用編み針は、高速編成が可能で、汚れの影響を受けない構成である。構成上の特徴は相互に調整されており、請求されている組み合わせにより編機工具の特別に適切な構造が実現する。閉鎖された下側及び/又は好ましくは閉鎖された側面は、残留した糸又は他の埃粒子が蓄積されることが比較的少ない。少なくとも1つのリブ部により、編機工具はバット部で加わる不安定な加速の影響を受けない。リブ部は、編機の案内面、例えば、針みぞの基部の下側で支持されるため、そこに生じる振動は効果的に減衰され、高い案内精度が達成される。隣接する編機工具を支持隆起部により編機のみぞ壁で支持することができ、長手方向に平行な軸の周りの編機工具の傾斜又はねじれを制限することができる。
【0023】
少なくとも一対(それぞれについて)を成す2つの支持隆起部が駆動部に配置されると都合がよい。シャンクの上側の凹状の窪み又は溝を、支持隆起部の間に配置し得る。同じ対の2つの支持隆起部は、互いに長手方向に支持間隔を空けて配置し得る。この支持間隔は、特に2つの支持隆起部の最高部間の長手方向の最小間隔である。例えば、支持間隔は、長手方向におけるバット部の長さ寸法に一致させても、又はバット部の長さ寸法よりわずかに大きくしてもよい。
【0024】
例えば、各支持隆起部は、高さ方向及び長手方向に対して傾斜して延びる2つの側部を有してよい。これにより、洗浄効果が得られる。すなわち埃は、編機の案内みぞから側部の傾斜により排出される。従って、汚染物は案内みぞから排出され、針シャンクの下の埃粒子又は他の汚染物の浸入が減少又は回避される。
【0025】
編機工具の針後端部は、シャンクの端部に設けることができる。横断方向に見たとき、端部は、例えば長方形の輪郭を有する。端部は、端部長を長手方向に有することができる。端部長は、一対を成す2つの支持隆起部間の支持間隔に少なくとも対応させてよい。
【0026】
リブ部すなわち設けられたリブ部の1つが、少なくとも1つの支持隆起部とバット部との間に配置されると好ましい。
【0027】
駆動部のシャンクがそれぞれ同じリブ高を有する複数のリブ部を形成するとさらに都合がよい。このようにして、各リブ部の曲げ荷重を減らすことができる。
【0028】
他の優位性のある態様において、バット部は2つの支持部の間に配置される。各支持部は、高さ方向Hに支持部高で延びており、少なくとも隆起高と同じである。2つの支持部の支持部高は、同じでも、同じでなくともよい。支持部は、編機工具を、バット部と隣接する編機の案内みぞのみぞ壁で支持するために用いることができる。
【0029】
編機工具は集団を形成することができる。同一集団内の全ての編機工具は、バット部のバット位置がそれぞれ異なる。バット部のバット位置は、バット部の針前端部及び/又は針後端部からの距離を規定する。同一集団内の各編機工具は、少なくとも1つの支持隆起部をこの集団内の別の編機工具のバット位置の領域内にある位置に有する。
【0030】
本発明の優位性のある態様は、従属項、発明の詳細な説明、及び図面から明らかになろう。以下で好ましい実施例について添付の図面に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】編機用編み針として形成された編機工具の集団の斜視図である。
【
図4】
図3のIV-IV線に基づく編機用編み針のシャンクの断面である。
【
図5】編機用編み針のバット部を有する
図2の編機用編み針の駆動部の部分図である。
【
図6】一対を成す2つの支持隆起部を有する
図2の編機用編み針の駆動部の部分図である。
【
図7】
図1の編機用編み針の集団を示し、それぞれの編機用編み針を側面図で示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
複数の編機工具11、例えば複数の編機用編み針12、具体的には第1の編機用編み針12a、第2の編機用編み針12b、第3の編機用編み針12c、及び第4の編機用編み針12dの集団10は
図1及び7に示される。集団10当たりの編機工具11の数は可変である。各集団10は、2つ以上の編機工具11を備え得る。
【0033】
同一集団10内の編機工具11又は編機用編み針12は、異なる形態で形成される。差異については、以下でさらに詳しく説明する。
【0034】
編機用編み針12の構造は、第1の編機用編み針12aに基づいて
図2乃至
図6を参照して説明する。
【0035】
編機用編み針12は、針前端部16と針前端部16の反対側である針後端部17との間で長手方向Lに延びるシャンク(針幹)15を有する。編機用編み針12は、実施例に従ってベラ針として実施される。針前端部16において、シャンク15は針フック18を形成する。針フック18はフック内部19を区切り、この実施例においてはベラ20によって開閉することができる。この目的のために、ベラ20はシャンク15の軸受間隙に取り付けられ、ピボット軸Sの周りを旋回可能となっている。ピボット軸Sは、長手方向Lに直角な横断方向Qに延びる。ベラ20は、ピボット軸Sの周りを、
図3に破線で示す閉位置Iと開位置IIの間で旋回させることができる。閉位置Iにおいて、ベラ20は針フック18に当接し、フック内部19を閉鎖する。開位置IIにおいて、ベラ20は針フック18から間隔を空けるとともにフック内部19を解放し、編目をフック内部19で受け取ることも、又はフック内部19から取り外すこともできる。編成プロセス中に、ベラ20は編目又は糸部分に助けられて閉位置Iと開位置IIとの間を移動させられる。
【0036】
実施例において、編機用編み針12の針フック18及びベラ20が配置された領域は、編目形成部Mを形成する。編目形成部Mは、針前端部16に直に隣接する。それは、ベラ20を受け入れるための軸受間隙が終わる点で終わることが好ましい。それに代えて、針前端部16とは反対側の編目形成部Mの端部は、針フック18から最大限に間隔を空いている開位置IIにあるベラ20の自由端が占める位置で形成することができる。
【0037】
軸受間隙とは別に、編機用編み針12のシャンク15は、空洞又は開口部、特にスロット又は孔なしで形成されることが好ましい。シャンク15は、
図4で
図3のIV-IV線に沿った断面で示されており、実施例においては面取りされた隅領域を含む実質的に長方形の断面を有する。断面形状は楕円形、円形、又は他の形状でもよい。
【0038】
針後端部17は、編機用編み針12の駆動部Aに直に続いている。実施例において、編目形成部Mは中間部Zによって駆動部Aに接続される。この実施例の中間部Zは、一方では編目形成部Mに直に隣接し、もう一方では駆動部Aに直に隣接する。
【0039】
編機用編み針12は、駆動部Aに、編機及び特に丸編機のカムと協働するように構成されたバット部24を有する。バット部24により、編機用編み針12は長手方向Lに移動及び/又は位置決めすることができる。丸編機の場合、この目的のために編成シリンダを長手方向Lに平行に延びる回転軸の周りに回転駆動させる。ここで、バット部24は、編機のカムの軌道に突き出て、長手方向Lの軌道の経路に応じて編機用編み針12の移動又は位置決めを行う。
【0040】
編目形成部M以外にあるシャンク15は、長手方向L及び横断方向Qと直角な、高さ方向Hでその高さが異なる。そのシャンク15すなわちその部品の高さは、シャンク15の下側25が延びる平面Eに対してそれぞれ特定される。編目形成部M以外において、下側25は平面E内でシャンク15の各点を通り、この平面Eに対して膨らみや窪みを持たない。針後端部17に直に続く下側25は、単なる曲面又は面取りにより針後端部17の後縁部へと移行することができる。この曲面又はこの面取りは下側25の一部ではなく、下側25は完全に平面E内で延びている。
【0041】
下側25にはシャンク15の2つの側面26が接続し、この2つの側面26は横断方向Qに互いに間隔を空けて配置されている。実施例において、2つの側面26はそれぞれの平面内で延び、これらの平面は互いに平行に配置され、長手方向L及び高さ方向Hで繋がっている。シャンク15は下側25の反対側に、上側27を有する。上側27と下側25とは、2つの側面26によって互いに接続されている。
【0042】
側面26は、編目形成部M以外では窪みや開口部なく形成され、代わりに連続した閉鎖面を構成する。編目形成部M以外では、シャンク15は、必要に応じて上側27に開放された隆起部及び窪みを有する。
【0043】
シャンク15は、駆動部A内において少なくとも1つのリブ部を形成し、実施例においては、長手方向Lに互いに間隔を空けて配置される複数のリブ部30が設けられる。各リブ部30のリブ高h1は、高さ方向Hに最大1.1mmである。実施例においては、各編機用編み針12は3つのリブ部30を有する。駆動部Aにおいて、シャンク15は、リブ高h1のリブ部30で高さが最も低い。実施例のリブ部30は、高さが全て同じリブ高h1である。2つ以上のリブ部30のリブ高がそれぞれ同じでなくてもよい。
【0044】
1つ、複数、又は全ての存在するリブ部の、長手方向Lの各リブ長vは、長手方向Lにおけるバット部24の長さ寸法yと少なくとも同じであり、例えば、バット部24の長さ寸法yより少なくとも1倍乃至1.5倍大きい。
【0045】
バット部24の高さ方向Hのバット部高h2は、リブ高h1よりもはるかに大きい。バット部24ではシャンク15すなわち編機用編み針12の高さが最も高いので、バット部高h2はシャンク15の最大高を表す。
【0046】
駆動部Aにおいて、シャンク15はさらに少なくとも1つの支持隆起部31を有する。実施例では、2つの支持隆起部31毎に共通の対32が形成されている。支持隆起部31は、長手方向Lにバット部24から間隔を空けて配置される。実施例において、少なくとも1つのリブ部30は、バット部24と少なくとも1つの支持隆起部31との間に配置される。
【0047】
ここで説明する実施例において、編機用編み針12はそれぞれ2つの集団32、従って合計4つの支持隆起部31を有する。各支持隆起部31は、こぶのような形状と、最大高さの位置が隆起高h3を有する(
図6)。各支持隆起部31は、高さが最大の領域又は点(隆起高h3)を起点として長手方向の両側に側部33を有し、側部は高さ方向H及び長手方向Lに傾斜して延びる。同一集団32内の2つの支持隆起部31はその間の長手方向に溝34を画定し、溝は各支持隆起部31の1つの側部33に接続される。2つの支持隆起部31は、それらの高さが隆起高h3となる長手方向Lの最大値間に、2つの支持隆起部31の最大値間の長手方向Lにおける最小間隔を表す支持間隔xを有する。溝34でのシャンクの高さは、リブ部30の高さと少なくとも同じ高さであることが好ましく、実施例ではそれ以上の高さである。
【0048】
実施例においては、支持間隔xは長手方向Lにおけるバット部24の長さ寸法yと少なくとも同じ大きさである(
図2及び
図7)。
【0049】
各支持隆起部31は、針シャンク15と接続する側部33の移行点間の隆起部基準長bを有する(
図6)。単一の支持隆起部31の隆起部基準長bは、好ましくはバット部24の長さ寸法yと少なくとも同じ長さ、そして最大で1.5乃至2倍であり、特にy≦b≦1.5y又はy≦b≦2yが成り立つ。
【0050】
2つの支持隆起部31が成す集団は、針シャンク15と接続する2つの最も外側の側部33の移行点間に集団基準長cを有する(
図6)。集団基準長cは、好ましくはバット部24の長さ寸法yの少なくとも2倍、そして最大で3乃至4倍であることが好ましく、特に2y≦c≦3y又は2y≦c≦4yが成り立つ。
【0051】
ここで説明する実施例において、対32の2つの隆起部31を同一に形成することができる。各編機用編み針12は、2つの同一の支持隆起部31を含む少なくとも1つの集団32を有することが好ましい。集団32の2つの隆起部31は、互いに異なる形態で形成することもできる。
【0052】
駆動部Aにおいて、実施例のバット部24は2つの支持部38の間に配置され、これら2つの支持部38は高さ方向Hにおいてそれぞれ支持部高h4を有する(
図5)。2つの支持部38の支持部高h4は同じであることが好ましい。支持部高h4は、支持隆起部31の隆起高h3と少なくとも同じで、実施例では隆起高h3より高い。支持部高h4はバット部高h2よりも低い。
【0053】
2つの支持部38はそれぞれ、上側27の遷移部39によってバット部24に移行する。遷移部39は、少なくとも部分的に支持部38よりも高さが低く、例えば、上側27の凹状の経路により形成することができる。実施例の各支持部38は、遷移部39の反対側に、実質的に高さ方向Hに延びるか又は高さ方向Hに対して鋭角であって、特に最大10°乃至15°の小さな鋭角の縁40を有する。長手方向Lに対する縁部40の勾配は、支持隆起部31の側部33の勾配よりも大きい。
【0054】
各支持部38は、遷移部39と縁部40の間に支持部基準長dを有する(
図5)。支持部基準長dは、バット部24の長さ寸法yと少なくとも同じか、最大で1.5乃至2倍であることが好ましく、特にy≦d≦1.5y又はy≦d≦2yが成り立つことが好ましい。
【0055】
編機用編み針12は、その針後端部17に隣接する端部49を有する。端部49の端部高h5は少なくとも隆起高h3と同じであり、実施例では支持部高h4と少なくとも同じである。端部高h5はバット部高h2よりも低い。
【0056】
いくつかの編機用編み針12の場合、特に第1の編機用編み針12a、第2の編機用編み針12b、及び第3の編機用編み針12cの場合、端部49は実質的に長方形の輪郭を有する。第4の編機用編み針12dの場合、バット部24は針後端部17の近くに配置され、針後端部17とバット部24の間に配置された支持部38は変形形状を有し、その縁部40に代わり面取り部50によって針後端部17へと低下する(
図1及び
図7)。したがって、この第4の編機用編み針12dの端部49は、他の編機用編み針12a、12b、12cの端部49とは異なる。
【0057】
特に
図1及び
図7に見られるように、同一集団10内の各編機用編み針12a、12b、12c、12dの場合、針前端部16とバット部24との間隔及び針後端部17とバット部24との間隔は異なり、従ってこれら編機用編み針12a、12b、12c、12dはそれぞれが異なるバット位置を有する。編機用編み針は、この集団10内の別の編機用編み針のバット部24が位置するシャンクの領域においては、少なくとも1つの支持隆起部31又は2つの支持隆起部31で形成された対32を有する。
図7が示す通り、破線に示すように、例えば、第2の編機用編み針12bのバット部24のバット位置で、この集団10内の他の編機用編み針12a、12c、及び12dはそれぞれ、2つの支持隆起部31を有する対32を備える。丸編機の動作中にバット部24が長手方向Lに平行な軸の周りで傾斜又はずれている場合に、編機用編み針12a、12c、及び12dが案内みぞで支持され得る。動作中に力がバット部24に横断方向Qに作用するためである。この支持の結果として、バット部24及び編機への損傷が回避され、このリスクは低減される。
【0058】
集団10内の全ての編機用編み針12a、12b、12c、及び12dの、長手方向Lにおける針前端部16と針後端部17の間の全長は同じである。
【0059】
記載された編機用編み針12は、ステープル繊維糸、例えば綿紡糸の編成に特に適している。編みプロセス中に編機の案内みぞで発生する汚れ、特に残留している綿又は糸の影響を受けにくい。加えて、編機用編み針12は、バット部24を介して加わる不安定な加速を吸収するように構成されており、長寿命である。
【0060】
本発明は、編機工具11、特に長手方向Lに延びるシャンク15を有する編機用編み針12に関する。編機工具11は、針前端部16に隣接する編目形成部Mと、針後端部17に隣接する駆動部Aとを有する。少なくとも駆動部Aにおいて、シャンク15の下側25は、窪みすなわち凹部を有さず、平面Eに沿って延びる。駆動部Aのシャンク15は、最大1.1mmのリブ高を有する少なくとも1つのリブ部30を形成する。さらに、駆動部Aのシャンク15には少なくとも1つの支持隆起部31が形成され、この支持隆起部31は少なくとも1つのリブ部30のリブ高h1を超えて高さ方向Hに延び、最高点で隆起高h3を有する。
【符号の説明】
【0061】
10 集団
11 編機工具
12 編機用編み針
12a 第1の編機用編み針
12b 第2の編機用編み針
12c 第3の編機用編み針
12d 第4の編機用編み針
15 シャンク(針幹)
16 針前端部
17 針後端部
18 針フック
19 フック内部
20 ベラ
24 バット部
25 下側
26 側面
27 上側
30 リブ部
31 支持隆起部
32 対
33 側部
34 溝
38 支持部
39 遷移部
40 縁
49 端部
50 面取り部
I 閉位置
II 開位置
A 駆動部
b 隆起部基準長
c 集団基準長
d 支持部基準長
E 平面
H 高さ方向
h1 リブ高
h2 バット部高
h3 隆起高
h4 支持部高
h5 端部高
L 長手方向
M 編目形成部
Q 横断方向
S ピボット軸
v リブ長
x 支持間隔
y バット部の長さ寸法
Z 中間部