(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】耐蝕性コーティングに有用なジシクロペンタジエン変性エステルオリゴマー
(51)【国際特許分類】
C09D 4/00 20060101AFI20220902BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20220902BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20220902BHJP
C08G 63/21 20060101ALI20220902BHJP
C08G 18/67 20060101ALI20220902BHJP
C08G 18/68 20060101ALI20220902BHJP
C08F 290/00 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
C09D4/00
C09D4/02
C09D7/63
C08G63/21
C08G18/67 005
C08G18/68 030
C08F290/00
(21)【出願番号】P 2019572046
(86)(22)【出願日】2018-06-21
(86)【国際出願番号】 US2018038682
(87)【国際公開番号】W WO2019010006
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-04-07
(32)【優先日】2017-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513160707
【氏名又は名称】ピーティーティー グローバル ケミカル パブリック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アーン・マシュー・ターウィルガー
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/112680(WO,A1)
【文献】特開平09-157336(JP,A)
【文献】特開平04-065410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-10/00
C09D 100/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のジシクロペンタジエン変性エステルオリゴマー
と、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TRGDMA)、又はTMPTAとTRGDMAの組み合わせから選択される少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー
と、コバルト、ジルコニウム、及びカルシウムを含む金属乾燥剤とを含むコーティング組成物であって、
前記少なくとも1
種のジシクロペンタジエン変性エステルオリゴマーが、
ジシクロペンタジエンに由来する少なくとも1種の
基及び
ジオールに由来する少なくとも1
種の
基を含み、及び
前記コーティング組成物が、酸化的硬化及び熱硬化のうちの少なくとも1つによって硬化して表面を形成可能である、コーティング組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種のジシクロペンタジエン変性エステルオリゴマーが、ジカルボン酸
に由来する基を更に含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記ジシクロペンタジエン変性エステルオリゴマーが、式(I)
【化1】
[式中、Rは、1~20個の炭素原子を含む炭化水素基であり、R'は、1~20個の炭素原子を含む炭化水素基であり、R''は、1~20個の炭素原子を含む炭化水素基であり、xは、H又はCH
3である]
により表される、請求項1または2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
Rが、6個の炭素原子を含み、R'が、10個の炭素原子を含み、R''が、2個の炭素原子を含み、xが、Hである、請求項
3に記載の
コーティング組成物。
【請求項5】
Rが、6個の炭素原子を含み、R'が、10個の炭素原子を含み、R''が、2個の炭素原子を含み、xが、CH
3である、請求項
3に記載の
コーティング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年7月1日に出願された米国仮特許出願第62/528,088号の優先権を主張する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
該当なし。
【0003】
共同研究契約
該当なし。
【0004】
本発明は、耐蝕性コーティングの分野に関する。より詳細には、本発明は、耐蝕性コーティング用途で有用なエステル又はウレタンDCPD変性オリゴマーに関する。一部の用途では、耐蝕性コーティングは、酸化的硬化によって表面に硬化可能である。
【背景技術】
【0005】
耐蝕性コーティングで使用される現在の化学物質としては、アルキド樹脂、アクリル、2成分ウレタン、2成分エポキシ、及びそれらの組み合わせが挙げられる。アルキド樹脂及びアクリルは、安価であるが、不良な耐蝕性及び/又は不良な接着性を示し、腐蝕環境、例えば、長期間の太陽からの紫外線(UV)及び塩水からの触媒加水分解にさらされて劣化し、また、剥離することになる。2成分ウレタン及びエポキシは、アルキド樹脂及びアクリルより良好な耐蝕性及び接着性を示すが、有毒な硬化剤が必要であり、塗布することが困難であり、ポットライフが限られている。現在の化学物質を組み合わせると、より良好な特性制御が可能になるが、全体的な性能がの不足をもたらす不可避の代償がある。更に、現在の化学物質の多くは、使用可能な粘度を得るために大量の溶媒を必要とし、それにより有害な揮発性有機化合物(VOC)を生じる。
【0006】
コーティング用途において有用なポリマー樹脂の開発にも関心が高まっている。すべてDesoto Inc.社に帰属する米国特許第3,166,434号;3,340,327号及び3,399,153号は、ジシクロペンタジエン及びシクロペンタジエン変性ポリエステル樹脂を開示している。Chemische Werke社に帰属している米国特許第3,347,806号は、ジシクロペンタジエン変性不飽和ポリエステル及びその調製方法を開示している。PPG Industries Inc.社に帰属している米国特許第3,448,066号は、ポリオール、シクロペンタジエン及びジカルボン酸の付加体から調製した不飽和ポリエステル樹脂の空気乾燥を開示している。どちらもSCM Corporation社に帰属している米国特許第3,883,612号及び3,933,757号は、ジシクロペンタジエン変性ポリエステル樹脂を開示している。すべてDow Chemical Company社に帰属している米国特許第4,029,848号;4,148,765号;4,167,542号;4,348,499号;4,360,647号;4,435,530号;4,443,580号;4,496,688号及び4,540,829号は、ジシクロペンタジエン及び/又はシクロペンタジエン変性エステルオリゴマーを開示している。United States Steel Corporation社に帰属している米国特許第4,233,432号は、大量のジシクロペンタジエンを含有する不飽和ポリエステル樹脂を調製する方法を開示している。Hoechest Aktiengesellschaft社に帰属している米国特許第4,322,504号は、ノルボルナン環系を含有する樹脂バインダーを開示している。武田薬品工業株式会社に帰属している米国特許第4,332,931号は、ジカルボン酸とジシクロペンタジエンの反応生成物の存在下でジカルボン酸無水物をアルキレンオキシドと反応させることによって製造した不飽和ポリエステルを開示している。すべてUnion Carbide Corporation社に帰属している米国特許第4,522,977号;4,522,978号;4,532,296号;4,532,297号及び4,626,570号は、ジシクロペンタジエン及び/又はシクロペンタジエン変性エステルオリゴマーを開示している。Alpha Corporation社に帰属している米国特許第4,525,427号は、ジシクロペンタジエンを用いて変性したポリエステル組成物を開示している。どちらもNippon Shokubai Co.,Ltd.社に帰属している米国特許第5,770,653号及び6,384,151号は、ジシクロペンタジエン変性ポリエステル樹脂を開示している。すべてBASF Aktiengesellschaft社に帰属している米国特許第6,288,146号;6,632,481号及び6,803,393号は、ジシクロペンタジエン又はその誘導体を含むバインダー組成物を開示している。Ashland Inc.社に帰属している米国特許第6,515,071号は、ジシクロペンタジエン変性不飽和ポリエステルの調製方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第3,166,434号明細書
【文献】米国特許第3,340,327号明細書
【文献】米国特許第3,399,153号明細書
【文献】米国特許第3,347,806号明細書
【文献】米国特許第3,448,066号明細書
【文献】米国特許第3,883,612号明細書
【文献】米国特許第3,933,757号明細書
【文献】米国特許第4,029,848号明細書
【文献】米国特許第4,148,765号明細書
【文献】米国特許第4,167,542号明細書
【文献】米国特許第4,348,499号明細書
【文献】米国特許第4,360,647号明細書
【文献】米国特許第4,435,530号明細書
【文献】米国特許第4,443,580号明細書
【文献】米国特許第4,496,688号明細書
【文献】米国特許第4,540,829号明細書
【文献】米国特許第4,233,432号明細書
【文献】米国特許第4,322,504号明細書
【文献】米国特許第4,332,931号明細書
【文献】米国特許第4,522,977号明細書
【文献】米国特許第4,522,978号明細書
【文献】米国特許第4,532,296号明細書
【文献】米国特許第4,532,297号明細書
【文献】米国特許第4,626,570号明細書
【文献】米国特許第4,525,427号明細書
【文献】米国特許第5,770,653号明細書
【文献】米国特許第6,384,151号明細書
【文献】米国特許第6,288,146号明細書
【文献】米国特許第6,632,481号明細書
【文献】米国特許第6,803,393号明細書
【文献】米国特許第6,515,071号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の理由のため、当該技術分野における既存の問題及び制限を克服する耐蝕性コーティングが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、酸化的硬化によって表面に硬化可能であるジシクロペンタジエン変性エステルオリゴマー(DMEO)、コーティング組成物に有用なジシクロペンタジエン変性エステルウレタンオリゴマー(DMEUO)、及び酸化的硬化によって表面に硬化可能であるジシクロペンタジエン変性エステルウレタンオリゴマーを含むコーティング組成物を対象として含む。
【0010】
本発明は、改善された耐蝕性、改善された接着性、より低い毒性、制限のないポットライフ、及びより少ない揮発性有機化合物(VOC)を含めた、既存の技術を超える多くの利点をもたらす。典型的なアルキド樹脂は、腐蝕に対する保護を示す。優れた保護を得るためには、より高価なウレタン又はエポキシに変更しなければならない。本発明は、低コスト及び使いやすさと共に優れた耐蝕性を提供する。コーティングが腐蝕からいかに良好に保護するかに関わらず、接着性が不十分な場合は、腐蝕性雰囲気は、コーティングの下に簡単に侵入し、金属を侵蝕し、それによって剥離を引き起こす可能性がある。本発明は、優れた接着性を示す。高性能の用途のための現在の技術は、二成分系及び有毒な硬化剤、例えば、ポリウレタン用のイソシアネート及びエポキシ用のアミンを必要とする。本発明は、有毒な硬化剤を必要としない。二成分系の別の欠点は、ポットライフ現象である。有毒な硬化剤をひとたび加えると、混合ポットは最終的には硬化する。使用しないものは廃棄しなければならず、さもなければ関連機器が損なわれる。本明細書に記載される一成分系を用いる場合、材料を日光から遠ざけて保存したと仮定すると、ポットライフは、実質的に無限である。アルキド樹脂、ポリウレタン及びエポキシは、通常、ポリマーのより高い粘度のため、効果的に塗布するために大量の溶媒を必要とする。本発明は、希釈剤として反応性モノマーを利用し、それによって必要な溶媒の量を大幅に削減し、時には溶媒を完全に省く。
【0011】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されたすべての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によりその全体を本明細書に組み込む。矛盾する場合には、定義を含めて、明細書が設定することになる。本明細書に含まれる材料、方法、実施例、及び図面は、単に例示的であり、限定的であることを意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】ジシクロペンタジエン変性エステルオリゴマーの一般的な2工程の調製方法を示す図である。工程Aでは、無水マレイン酸は、水と反応して、マレイン酸を生じ、マレイン酸は、次いでジシクロペンタジエンと反応して、マレイン酸-ジシクロペンタジエン半エステルを生じる。工程Bでは、マレイン酸-ジシクロペンタジエン半エステルは、1種又は複数のジオール及び任意選択で場合によっては1種又は複数のジカルボン酸と反応して、ジシクロペンタジエン変性エステルオリゴマーを生じる。Rは、1~20個の炭素原子、好ましくは3~8個の炭素原子を含む炭化水素である。R'は、1~20個の炭素原子、好ましくは3~8個の炭素原子を含む炭化水素である。nは、0~10、好ましくは0~3である。
【
図2】ジシクロペンタジエン変性エステルウレタンオリゴマーの一般的な化学式を示す図である。Rは、1~20個の炭素原子、好ましくは3~8個の炭素原子を含む炭化水素である。R'は、1~20個の炭素原子、好ましくは8~12個の炭素原子を含む炭化水素である。R''は、1~20個の炭素原子、好ましくは1~3個の炭素原子を含む炭化水素である。xは、CH
3又はHである。
【
図3】ジシクロペンタジエン変性ポリエステルウレタンオリゴマーの一般的な4工程の調製方法を示す図である。工程Aでは、無水マレイン酸は、水と反応して、マレイン酸を生じ、マレイン酸は、次いでジシクロペンタジエンと反応して、マレイン酸-ジシクロペンタジエン半エステルを生じる。工程Bでは、マレイン酸-ジシクロペンタジエン半エステルは、1種又は複数のジオール及び1種又は複数のジカルボン酸と反応して、ヒドロキシ官能性ジシクロペンタジエン変性エステルオリゴマーを生じる。工程Cでは、ヒドロキシ官能性アクリレートモノマーは、昇温した温度でジイソシアネートに添加される。工程Dでは、ヒドロキシ官能性ジシクロペンタジエン変性エステルオリゴマーは、工程Cのアクリル化ジイソシアネートに添加される。Rは、1~20個の炭素原子、好ましくは3~8個の炭素原子を含む炭化水素である。R'は、1~20個の炭素原子、好ましくは3~8個の炭素原子を含む炭化水素である。R''は、1~20個の炭素原子、好ましくは6~12個の炭素原子を含む炭化水素である。R'''は、1~5個の炭素原子、好ましくは1~3個の炭素原子を含む炭化水素である。nは、0~10、好ましくは0~3である。mは、1又は2である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
定義
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語が、本明細書で定義される。
【0014】
用語「酸化的硬化」は、過酸化物によって開始される機構及び/又は酸素ガスによって開始される機構により架橋ネットワークを作り出す、炭素-炭素二重結合に固有のπ電子の再結合を意味する。酸化的硬化の例は、これに限定されないが、ファイバーグラス樹脂の過酸化物開始硬化及びアルキド樹脂の空気乾燥を含む。
【0015】
用語「熱硬化」は、熱によって開始される機構により架橋されたネットワークを作り出す、炭素-炭素二重結合に固有のπ電子の再結合を意味する。熱硬化の例は、これに限定されないが樹脂のオーブン硬化を含む。
【0016】
用語「金属乾燥剤(金属ドライヤー)」は、一般的な無機金属のリガンドを意味する。金属乾燥剤は、これに限定されないが、コバルトの有機塩、ジルコニウムの有機塩、及びカルシウムの有機塩を含む。
【0017】
一実施形態では、コーティング組成物は、エチレン性不飽和モノマーと混合したジシクロペンタジエン変性エステルオリゴマー、金属乾燥剤、及び溶媒を含む。エチレン性不飽和モノマーは、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TRGDMA)、モノアクリルオキシエチルスクシネート(MAES)、又はTMPTAとTRGDMAの組み合わせであってよい。金属乾燥剤は、コバルト、ジルコニウム、若しくはカルシウム、又は好ましくは3つすべてであってよい。溶媒は、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、又は両方であってよい。別の実施形態では、流動添加剤を使用することができる。
【0018】
別の実施形態では、ジシクロペンタジエン変性エステルウレタンオリゴマーは、ヒドロキシ官能性ジシクロペンタジエンエステルオリゴマー(HDEO)、イソシアネート、及びヒドロキシ官能性アクリレートモノマー(HAM)からなる。HDEOは、ジシクロペンタジエン、水、無水マレイン酸、1種又は複数のグリコール、及び1種又は複数の単官能性エポキシドモノマーを反応させることによって形成される。1種又は複数のグリコールには、以下のものに限定されないが、1,6ヘキサンジオール(HDO);1,4ブタンジオール(BDO);ペンタエリスリトール;ネオペンチルグリコール(NPG);ジエチレングリコール(DEG)、トリエチレングリコール;テトラエチレングリコール;1,2プロパンジオール(PG);1,3-プロパンジオール(PDO);グリセリン;及び2-メチル-1,3-プロパンジオール(MPD);及びトリメチロールプロパン(TMP)が含まれる。1種又は複数の単官能性エポキシドモノマーには、以下のものに限定されないが、C12~C14脂肪族モノグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p-tertブチルフェノールグリシジルエーテル、及びグリシジルネオデカノエートが含まれる。イソシアネートには、以下のものに限定されないが、脂肪族のモノメリック又はポリメリックジイソシアネート、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(HMDI)、及びヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及びそれらの三量体、並びに芳香族のモノメリック又はポリメリックのジイソシアネート、例えば、2,4-2,6トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、及びそれらのトリマーを含む。HAMには、以下のものに限定されないが、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、及びそれらのエトキシル化又はプロポキシル化体が含まれる。好ましい実施形態では、HDEOは、2,5-フランジオンの2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオールとのポリマー、2,5-フランジオンの3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-4,7-メタノ-1H-インデン-5(又は6)-イルエステル、2,5-フランジオンの2,3-ジヒドロキシプロピルネオデカノエートとのエステル(これは、ジシクロペンタジエン、水、無水マレイン酸、トリメチロールプロパン、及びグリシジルネオデカノエートの反応生成物である。)であり;イソシアネートは、イソホロンジイソシアネートであり;HAMはヒドロキシエチルアクリレートである。
【0019】
別の実施形態では、HDEOは、ジシクロペンタジエン、水、無水マレイン酸、1種又は複数のグリコール、1種又は複数の単官能性エポキシドモノマー、及び1種又は複数のジカルボン酸を反応させることによって形成される。1種又は複数のジカルボン酸には、以下のものに限定されないが、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水オルトフタル酸、ドデカン二酸、及びそれらのメチルエステルが含まれる。
【0020】
別の実施形態では、コーティング組成物は、エチレン性不飽和モノマーと混合したジシクロペンタジエン変性エステルウレタンオリゴマー、金属乾燥剤、及び溶媒を含む。エチレン性不飽和モノマーは、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TRGDMA)、モノアクリルオキシエチルスクシネート(MAES)、又はTMPTAとTRGDMAの組み合わせであってよい。金属乾燥剤は、コバルト、ジルコニウム、若しくはカルシウム、又は好ましくは3つすべてであってよい。溶媒は、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、又は両方であってよい。別の実施形態では、流動添加剤を使用することができる。
【0021】
酸化的硬化又は熱硬化によってコーティング組成物を表面に硬化することができる。コーティング組成物は、表面の耐蝕性を改善するために、以下のものに限定されないが、金属、コンクリート、木材、プラスチック、セラミック、織物、皮革、紙、ゴム、及びガラスを含む種々の表面に塗布することができる。コーティング組成物を塗布するための方法には、以下のものに限定されないが、噴霧(スプレー)、ロールコーティング、カーテンコーティング、及び平滑化装置、例えば、バードバー又はマイヤーロッドを用いる平滑化が含まれる。塗布方法は、手作業で、自動化により、又はそれらの組み合わせであってよい。
【0022】
塗布したコーティング組成物の最適な最終厚さは、限定するものではないが、表面、表面の輪郭、コーティング組成物の配合、溶媒含量(もしあれば)、及び硬化の手段によって異なる。塗布したコーティング組成物の典型的な最終厚さは、100ミル(2.54mm)以下であるが、前述の要因によって異なり得る。
【0023】
硬化したコーティング組成物は、当技術分野において広く知られている技術を用いて評価することができる。硬化の程度は、特定の定性的方法、例えば、指の爪による表面損傷又は親指で捻った後のフィルムの完全性により容易に測定されるが、いくつかの硬化効率の定量的測定が可能である。例えば、フーリエ変換赤外分光法を用いる1636cm-1におけるアクリレートの炭素-炭素二重結合の消失の測定が、硬化効率の評価の至適基準である。類似の技術を、さまざまなcm-1範囲でマレイン酸の炭素-炭素二重結合及びアリルの炭素-炭素二重結合の消失を測定するために適用できる。更に、いくつかの他の定量試験、例えば、クロスハッチ接着性、テープ接着性、柔軟性、硬度、及び耐衝撃性は、コーティング組成物の硬化効率及び適合性を定量化するために使用することができる。
【0024】
すべての実施形態において、ジシクロペンタジエン変性エステルオリゴマー及び/又はジシクロペンタジエン変性エステルウレタンオリゴマーを、溶媒なしで作成することができる。
【実施例】
【0025】
(実施例1)
ジシクロペンタジエン変性エステルオリゴマーの合成
6バッチのジシクロペンタジエン変性エステルオリゴマーを合成した。
【0026】
バッチ1は、窒素下で846gのジシクロペンタジエン(Sigma Aldrich社、St.Louis、Missouri、USA)を121gの水に添加し、混合物を80℃に加熱することにより調製した。窒素下で627gの無水マレイン酸(Sigma Aldrich社、St.Louis、Missouri、USA)を、このジシクロペンタジエンと水の混合物に徐々に添加し、125℃で2時間保持した。2時間のインキュベーションの終わりに、486gの1,3-プロパンジオール(DuPont社、Wilmington、Delaware、USA)、378gのコハク酸(Myriant社、Woburn、Massachusetts、USA又は川崎化成工業株式会社、神奈川県川崎市、日本)、及び43gのトリメチロールプロパン(Alfa Aesar社、Haverhill、Massachusetts、USA)を添加し、205℃へ徐々に加熱した。最終酸価は、24.7mgKOH/g(試料)であった。
【0027】
バッチ2は、窒素下で1010gのジシクロペンタジエンを44gの水に添加し、混合物を80℃に加熱することにより調製した。窒素下で747gの無水マレイン酸(Sigma Aldrich社、St.Louis、Missouri、USA)を、このジシクロペンタジエンと水の混合物に徐々に添加し、125℃で2時間保持した。2時間のインキュベーションの終わりに、619gの1,3-プロパンジオール、378gのコハク酸、及び43gのトリメチロールプロパンを添加し、205℃へ徐々に加熱した。最終酸価は、5.6mgKOH/g(試料)であった。このバッチは、ウレタン合成に適したヒドロキシ官能基を含有していた。
【0028】
バッチ3は、窒素下で140gのジシクロペンタジエンを20gの水に添加し、この混合物を80℃に加熱することにより調製した。窒素下で104gの無水マレイン酸を、そのジシクロペンタジエンと水の混合物に徐々に添加し、125℃で2時間保持した。2時間のインキュベーションの終わりに、69gのエチレングリコール(Sigma Aldrich社、St.Louis、Missouri、USA)、63gのコハク酸、及び7gのトリメチロールプロパンを添加し、205℃へ徐々に加熱した。最終酸価は、24.1mgKOH/g(試料)であった。
【0029】
バッチ4は、窒素下で126gのジシクロペンタジエンを18gの水に添加し、この混合物を80℃に加熱することにより調製した。窒素下で93gの無水マレイン酸を、そのジシクロペンタジエンと水の混合物に徐々に添加し、125℃で2時間保持した。2時間のインキュベーションの終わりに、101gのジエチレングリコール(SABIC社、Riyadh、Saudi Arabia)、56gのコハク酸、及び6gのトリメチロールプロパンを添加し、205℃へ徐々に加熱した。最終酸価は、24.9mgKOH/g(試料)であった。
【0030】
バッチ5は、窒素下で133gのジシクロペンタジエンを19gの水に添加し、この混合物を80℃に加熱することにより調製した。窒素下で103gの無水マレイン酸を、そのジシクロペンタジエンと水の混合物に徐々に添加し、125℃で2時間保持した。2時間のインキュベーションの終わりに、90gの1,4-ブタンジオール(Sigma Aldrich社、St.Louis、Missouri、USA)、59gのコハク酸、及び7gのトリメチロールプロパンを添加し、205℃へ徐々に加熱した。最終酸価は、25.0mgKOH/g(試料)であった。
【0031】
バッチ6は、窒素下で135gのジシクロペンタジエンを19gの水に添加し、この混合物を80℃に加熱することにより調製した。窒素下で97gの無水マレイン酸を、そのジシクロペンタジエンと水の混合物に徐々に添加し、125℃で2時間保持した。2時間のインキュベーションの終わりに、79gの1,3-プロパンジオール、73gのアジピン酸(Sigma Aldrich社、St.Louis、Missouri、USA)、及び7gのトリメチロールプロパンを添加し、205℃へ徐々に加熱した。最終酸価は、25.5mgKOH/g(試料)であった。
【0032】
(実施例2)
ジシクロペンタジエン変性エステルオリゴマー含有コーティング組成物の混合
混合カップ中で、ポリエステルジシクロペンタジエンオリゴマーを適切なモノマー(1又は複数種)と共に60℃まで加温した。次いで、その混合物を、機械的撹拌を用いて均一になるまで撹拌した。必要に応じて、混合物全体を再加温し、100%均一になるまで再撹拌した。
【0033】
(実施例3)
ジシクロペンタジエン変性エステルウレタンオリゴマーの合成
窒素ブランケット、撹拌、温度制御及びコンデンサーを備えた1L反応フラスコに、312gのDCPD及び45gの水を入れ、80℃に加温した。発熱を125℃未満に制御するために、これに232gの無水マレイン酸を徐々に加えた。すべてのマレイン酸を添加した時点で、211gのトリメチロールプロパンを添加し、205℃に加熱した。酸価を測定して13.0mgKOH/g(試料)になるまで反応を保った。次いで、反応器を120℃に冷却し、46gのグリシジルネオデカノエートを添加した。酸価が0.5mgKOH/g(試料)になるまで反応器を120℃に保った。最終ヒドロキシル価を測定し、142.8mgKOH/g(試料)であった。
【0034】
次いで、乾燥空気スパージャー、撹拌機、コンデンサー及び滴下漏斗を備えた1L反応フラスコ中、96gのIPDIを前記フラスコに入れ、70℃に加温した。発熱を制御するために、これに、50gのヒドロキシエチルアクリレートを徐々に加えた。最後に、168gの前段落における反応生成物並びに135gのイソボルニルアクリレートを添加した。撹拌及び加熱下で反応を最後まで進めた。
【0035】
窒素ブランケット、撹拌機、温度制御及びコンデンサーを備えた3L反応フラスコに、1008gのDCPD及び145gの水を入れ、80℃に加温した。発熱を125℃未満に制御するために、これに748gの無水マレイン酸を徐々に加えた。すべてのマレイン酸を添加した時点で、617gの1,3-プロパンジオールを添加し、205℃に加熱した。酸価を測定して3.2mgKOH/g(試料)になるまで反応を保った。最終ヒドロキシル価を測定し、148.7mgKOH/g(試料)であった。
【0036】
次いで、乾燥空気スパージャー、撹拌機、コンデンサー及び滴下漏斗を備えた1L反応フラスコ中、228gのIPDIを前記フラスコに入れ、70℃に加温した。発熱を制御するために、これに133gのヒドロキシエチルメタクリレートを徐々に加えた。最後に、359gの前段落における反応生成物並びに80gのジエチレングリコールジメタクリレート(DEGDMA)を添加した。撹拌及び加熱下で反応を最後まで進めた。
【0037】
窒素ブランケット、撹拌機、温度制御及びコンデンサーを備えた1L反応フラスコに、977gのDCPD及び140gの水を入れ、80℃に加温した。発熱を125℃未満に制御するために、これに725gの無水マレイン酸を徐々に加えた。すべてのマレイン酸を添加した時点で、860gのトリメチロールプロパンを添加し、205℃に加熱した。酸価を測定して11.5mgKOH/g(試料)になるまで反応を保った。次いで、反応器を120℃に冷却し、128gのグリシジルネオデカノエートを添加した。酸価が1.5mgKOH/g(試料)になるまで反応器を120℃に保った。最終ヒドロキシル価を測定し、142.8mgKOH/g(試料)であった。
【0038】
次いで、乾燥空気スパージャー、撹拌機、コンデンサー及び滴下漏斗を備えた2L反応フラスコ中、293gのIPDIを前記フラスコに入れ、70℃に加温した。発熱を制御するために、これに153gのヒドロキシエチルアクリレートを徐々に加えた。最後に、464gの前段落における反応生成物並びに390gのイソボルニルアクリレートを添加した。撹拌及び加熱下で反応を最後まで進めた。
【0039】
(実施例4)
ジシクロペンタジエン変性エステルウレタンオリゴマー含有コーティング組成物の混合
混合カップ中で、ウレタンジシクロペンタジエンオリゴマーを適切なモノマー(1又は複数種)と共に60℃まで加温した。次いで、機械的撹拌を用いてその混合物を均一になるまで撹拌した。必要に応じて、混合物全体を再加温し、100%均一になるまで再撹拌した。
【0040】
(実施例5)
コーティング組成物の試験
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】