(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】サッシ窓の気密/断熱構造
(51)【国際特許分類】
E06B 7/22 20060101AFI20220902BHJP
E06B 3/46 20060101ALI20220902BHJP
E06B 7/16 20060101ALI20220902BHJP
E06B 7/23 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
E06B7/22 B
E06B3/46
E06B7/16 B
E06B7/23 A
(21)【出願番号】P 2020146814
(22)【出願日】2020-09-01
(62)【分割の表示】P 2016073240の分割
【原出願日】2016-03-31
【審査請求日】2020-09-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】山下 富広
(72)【発明者】
【氏名】山田 良
(72)【発明者】
【氏名】木平 浩司
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-180766(JP,A)
【文献】特開2013-224518(JP,A)
【文献】特開2015-194056(JP,A)
【文献】特開2009-57703(JP,A)
【文献】実開昭58-126389(JP,U)
【文献】特開2012-77569(JP,A)
【文献】特開2015-135046(JP,A)
【文献】特開2006-225882(JP,A)
【文献】特開平10-140946(JP,A)
【文献】実開昭56-14185(JP,U)
【文献】実開昭61-90980(JP,U)
【文献】特開昭62-228588(JP,A)
【文献】実開昭59-51990(JP,U)
【文献】特開2003-262077(JP,A)
【文献】特開2007-51535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00-3/99
E06B 7/16-7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に形成された開口部の外周に取り付けられた枠体に支持される複数の障子を備えるとともに、少なくとも一つの障子が前記枠体にスライド移動可能に且つ前記開口部を開閉可能に支持されてなるサッシ窓の気密/断熱構造であって、
前記サッシ窓がアルミ樹脂複合サッシであり、
前記障子が、上框、下框、縦框、召し合せ框を有する框と、前記框に外周端を保持されて窓面を形成するガラスパネルとを備えており、
前記障子を閉じて隣り合う一方の障子の一方の召し合せ框と他方の障子の他方の召し合せ框が奥行方向に重なった状態で、互いに対向する前記一方の召し合せ框の面に取り付けられた気密材と、前記他方の召し合せ框の面に取り付けられ、前記気密材が密着する樹脂材とを備え、
前記樹脂材は、断熱層を形成し、
前記気密材は、弾性体で形成されるとともに、前記樹脂材に密着する先端部側が断面凸円弧状に形成されており、
前記一方の召し合せ框の室内側を向く側面を覆うように樹脂カバーが取り付けられ、
前記樹脂カバーと対向する前記側面との間に、中空部が見込み方向に沿って複数形成されて
おり、
前記一方の召し合せ框と前記他方の召し合せ框とが重なった状態で召し合せ框の延設方向の上下方向に配設された第1気密/断熱構造と、
前記枠体の上枠と前記召し合せ框、前記上框との間に配設された第2気密/断熱構造と、
前記枠体の下枠と前記召し合せ框、前記下框との間に配設された第3気密/断熱構造と、
前記第1気密/断熱構造と前記第3気密/断熱構造との間に配設された第4気密/断熱構造と、
前記第1気密/断熱構造と前記第2気密/断熱構造との間に配設された第5気密/断熱構造と、を備えているサッシ窓の気密/断熱構造。
【請求項2】
請求項1記載のサッシ窓の気密/断熱構造において、
前記気密材は、前記一方の召し合せ框と前記他方の召し合せ框との間に設けられる煙返しよりも室内側に設けられているサッシ窓の気密/断熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サッシ窓の気密/断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビルや住宅などの建物には、引違い窓、上げ下げ窓、FIX窓(はめ殺し窓)、片開き窓、外開き窓、内倒し窓、折りたたみ窓、回転窓などのそれぞれ開閉方式や機能が異なる各種サッシ窓が用いられている。
【0003】
このうち、引違い窓のサッシ窓は、建物の開口部の外周縁に枠体が固設され、開口部を開閉するように、枠体内に2枚の障子をそれぞれ左右方向にスライド移動可能に納めて構成されている。各障子は、アルミ形材や樹脂形材を用いて形成された上框と下框と左右の縦框(一方の縦框は召し合せ框)からなる方形枠状の框と、框の内部に納められたガラスパネルとを備えて形成されている。
【0004】
また、各障子は、障子の上框に断面凹部形状の案内溝が形成され、枠体の上枠に形成された上部レールに案内溝を係合させて配設されている。さらに、下框に戸車が収納され、枠体の下枠に設けられた断面凸状の下部レール上に下框及び戸車を係合させて配設されている。これにより、障子は、枠体の上部レール及び下部レースに案内されて左右方向にスライド移動可能に設けられている。
【0005】
また、上枠と下枠には、一方の障子と他方の障子の互いの上框の間、互いの下框の間に配される中間レールが突設され、これら上下の中間レールにも案内されるように各障子がスライド移動可能に設けられている。
【0006】
一方、引違い窓サッシには、障子の召し合せ框に断面略L字状の煙返しが一体に設けられ、一対の障子を閉じて互いの召し合せ框が重なるとともに互いの煙返しが係合するように構成されている。
【0007】
さらに、一方の障子の召し合せ框にはアルミ形材の外側に断熱性や気密性を確保するための樹脂カバー(樹脂材)を取り付け、一対の障子を閉じて互いの召し合せ框が重なるとともに一方の障子の樹脂カバーが他方の障子のアルミ形材に当接することによって断熱性や気密性を確保するように構成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
さらに、一般に、中高層ビルの引違い窓サッシ100においては、例えば
図13に示すように、一方の召し合せ框1の樹脂材3が他方の召し合せ框2のアルミ形材(アルミ部)に当接する当接部/気密ラインR1が煙返し4よりも室内側に設けられ、この気密ラインR1よりも室
外側に水切り5を設けて雨水等の水の侵入を防止するように構成されている。
【0009】
住宅の引違い窓サッシ100においては、例えば
図14に示すように、一方の召し合せ框1の樹脂材3が他方の召し合せ框2のアルミ形材(アルミ部)に当接する当接部/気密ラインR1を煙返し4よりも室外側に設け、この気密ライン(当接部)R1が水切りを兼ねるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来の引違い窓サッシにおいては、一方の召し合せ框に、断熱性に優れるが熱収縮が生じやすい樹脂材(樹脂カバー)を取り付け、この樹脂材が他方の召し合せ框のアルミ形材に当接することで断熱性や気密性を確保するようにしているため、樹脂材に熱収縮が生じると、アルミ形材と樹脂材の間に隙間が生じ、断熱性や気密性が確保できなくなるおそれがあった。
【0012】
また、中高層ビルの引違い窓サッシのように、樹脂材を室内側に設けて気密ラインを室内側に配し、召し合せ框の室内側を向く面に断熱層を構成する樹脂材を設けるようにすると、所望の断熱性能を得るために樹脂材の大きさに合わせ、召し合せ框の見付幅が大きくなってしまう。そして、これに伴い、見栄えの悪化(意匠性の低下)、コスト高などを招くおそれがあった。
【0013】
なお、住宅の引違い窓サッシのように、一方の召し合せ框の樹脂材が他方の召し合せ框のアルミ形材に当接する当接部/気密ラインを室外側に設けるとともに、この気密ライン(当接部)が水切りを兼ねるようにすると、外部と室内の温度差の影響を受け、室外側の気密ライン周辺に結露等が生じやすく、水密性を確保しにくくなるおそれがある。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑み、気密性、断熱性を確保/向上させつつ召し合せ框の見付幅を小さく抑えることを可能にするサッシ窓の気密/断熱構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0016】
本発明のサッシ窓の気密/断熱構造は、建物に形成された開口部の外周に取り付けられた枠体に支持される複数の障子を備えるとともに、少なくとも一つの障子が前記枠体にスライド移動可能に且つ前記開口部を開閉可能に支持されてなるサッシ窓の気密/断熱構造であって、前記サッシ窓がアルミ樹脂複合サッシであり、前記障子が、上框、下框、縦框、召し合せ框を有する框と、前記框に外周端を保持されて窓面を形成するガラスパネルとを備えており、前記障子を閉じて隣り合う一方の障子の一方の召し合せ框と他方の障子の他方の召し合せ框が奥行方向に重なった状態で、互いに対向する前記一方の召し合せ框の面に取り付けられた気密材と、前記他方の召し合せ框の面に取り付けられ、前記気密材が密着する樹脂材とを備え、前記樹脂材は、断熱層を形成し、前記気密材は、弾性体で形成されるとともに、前記樹脂材に密着する先端部側が断面凸円弧状に形成されており、前記一方の召し合せ框の室内側を向く側面を覆うように樹脂カバーが取り付けられ、前記樹脂カバーと対向する前記側面との間に、中空部が見込み方向に沿って複数形成されており、前記一方の召し合せ框と前記他方の召し合せ框とが重なった状態で召し合せ框の延設方向の上下方向に配設された第1気密/断熱構造と、前記枠体の上枠と前記召し合せ框、前記上框との間に配設された第2気密/断熱構造と、前記枠体の下枠と前記召し合せ框、前記下框との間に配設された第3気密/断熱構造と、前記第1気密/断熱構造と前記第3気密/断熱構造との間に配設された第4気密/断熱構造と、前記第1気密/断熱構造と前記第2気密/断熱構造との間に配設された第5気密/断熱構造と、を備えていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明のサッシ窓の気密/断熱構造においては、前記気密材は、前記一方の召し合せ框と前記他方の召し合せ框との間に設けられる煙返しよりも室内側に設けられていることが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のサッシ窓によれば、気密性、断熱性を確保/向上させつつ召し合せ框の見付幅を小さく抑えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る引き違い窓サッシ(サッシ窓)、気密/断熱構造を示す横断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る引き違い窓サッシ(サッシ窓)、気密/断熱構造を示す縦断面図である。
【
図3】
図1のS1部を拡大した図であり、本発明の一実施形態に係る引き違い窓サッシ(サッシ窓)の気密/断熱構造を示す横断面図である。
【
図4】
図2のS2部を拡大した図であり、本発明の一実施形態に係る引き違い窓サッシ(サッシ窓)の上部の気密/断熱構造を示す縦断面図である。
【
図5】
図2のS3部を拡大した図であり、本発明の一実施形態に係る引き違い窓サッシ(サッシ窓)の下部の気密/断熱構造を示す縦断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る引き違い窓サッシ(サッシ窓)の第4気密/断熱構造を示す斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る引き違い窓サッシ(サッシ窓)の第4気密/断熱構造を示す斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る引き違い窓サッシ(サッシ窓)の第4気密/断熱構造、第5気密/断熱構造を示す横断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る引き違い窓サッシ(サッシ窓)の第5気密/断熱構造を示す斜視図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る引き違い窓サッシ(サッシ窓)の第5気密/断熱構造の変更例を示す縦断面図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る引き違い窓サッシ(サッシ窓)の第5気密/断熱構造の変更例を示す縦断面図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る引き違い窓サッシ(サッシ窓)の気密/断熱構造の変更例を示す縦断面図である。
【
図13】従来の高水密タイプの引き違い窓サッシ(サッシ窓)の気密/断熱構造を示す横断面図である。
【
図14】従来の低水密タイプの引き違い窓サッシ(サッシ窓)の気密/断熱構造を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、
図1から
図12を参照し、本発明の一実施形態に係るサッシ窓の気密/断熱構造について説明する。
【0023】
ここで、本実施形態では、本発明に係るサッシ窓が引違い窓であるものとして説明を行うが、本発明は、障子に召し合せ框を備えるサッシ窓であれば適用可能であり、本発明に係るサッシ窓は、引違い窓の他に、例えば上げ下げ窓や片引き窓などの開閉方式、機能が異なるサッシ窓であってもよい。
【0024】
はじめに、本実施形態の引違い窓サッシ(サッシ窓)Aは、
図1及び
図2に示すように、上框10a、下框10b、一方の縦框10c、他方の縦框の召し合せ框10dからなる框(サッシ)10と、框10に外周端を保持されて窓面を形成するガラスパネル(障子本体)11とを備えて構成されている。
【0025】
框10は、アルミ形材(アルミ部)や樹脂形材を用い、中空構造で形成されている。各框10(10a、10b、10c、10d)は、内周側に、一対の側壁部の間に形成された嵌合凹部を設けて形成され、この嵌合凹部にガラスパネル11の外周端部を係合させて保持するように構成されている。
【0026】
各障子12、13は、
図2、
図4、
図5に示すように、枠体15の上枠16に設けられた係合凹部に上框10aを係合させて配設されている。また、下框10bには下方に開口する断面凹状の係合凹部と係合凹部に収納された戸車18とが設けられ、枠体15の下枠17に上方に突出して設けられた下部レールに係合凹部及び戸車18を係合させて配設されている。これにより、障子12、13は、枠体15の上枠16及び下枠17に案内されて左右方向(幅方向T1)にスライド移動可能に設けられている。
【0027】
さらに、本実施形態の上枠16(下枠17)には、一方の障子12と他方の障子13の互いの上框10aの間、互いの下框10bの間に配される中間壁部(中間レール)20が設けられ、これら上下の中間壁部20にも案内されるようにして各障子12、13がスライド移動可能に設けられている。
【0028】
図1、
図3に示すように、一対の障子12、13の互いの召し合せ框10dには断面L字状の煙返し4が設けられ、障子12、13を閉じて互いの召し合せ框10dが重なるとともに互いの煙返し4が係合するように構成されている。
【0029】
一方、本実施形態の引違い窓サッシAにおいては、障子12、13を閉じて互いの召し合せ框10dが重なるとともに、気密性(水密性含む)、断熱性を確保するための気密/断熱構造Bを備えている。
【0030】
また、本実施形態の気密/断熱構造Bは、第1気密/断熱構造B1と、第2気密/断熱構造B2と、第3気密/断熱構造B3と、第4気密/断熱構造B4と、第5気密/断熱構造B5とを備えている。
【0031】
第1気密/断熱構造B1は、
図1、
図2、
図3に示すように、一対の障子12、13の互いの召し合せ框10dが重なった状態で召し合せ框10dの延設方向の上下方向T2の気密性、断熱性を確保するためのものであり、第2気密/断熱構造B2は、
図2、
図4(
図1、
図3)に示すように、上枠16と召し合せ框10d、上框10aとの間の気密性、断熱性を確保するためのものであり、第3気密/断熱構造B3は、
図2、
図5(
図1、
図3)に示すように、下枠17と召し合せ框10d、下框10bの間の気密性、断熱性を確保するためのものである。また、第4気密/断熱構造B4は、
図6から
図9に示すように、第1気密/断熱構造B1と第3気密断熱構造B3の間の気密性、断熱性を確保するためのものであり、第5気密/断熱構造B5は、第1気密/断熱構造B1と第2気密/断熱構造B2の間の気密性、断熱性を確保するためのものである。
【0032】
具体的に、本実施形態の第1気密/断熱構造B1は、
図1から
図5に示すように、一方の障子12の召し合せ框10dに対向する他方の障子13の召し合せ框10dの面(部位)に設けられて断熱層を形成する第1樹脂材(樹脂カバー)21と、他方の障子13の召し合せ框10dに対向する一方の障子12の召し合せ框10dの面(アルミ部)に形成された上下方向T2に延びる溝状の第1係合部23に係合し、他方の召し合せ框10dの第1樹脂材21に密着可能に設けられた第1気密材(側部気密材)24とを備えて構成されている。
【0033】
第1気密材24は、一方の召し合せ框10dの第1係合部23に着脱可能に係合して第1気密材24を位置決め保持するための係合基端部24aと、係合基端部24aを第1係合部23に係合させた状態で、係合基端部24aから他方の召し合せ框10dの第1樹脂材21に向けて突出するとともに第1樹脂材21に突出方向先端部が密着する気密/断熱本体部24bとを備えて形成されている。
【0034】
また、第1気密材24は、樹脂製で弾性変形可能に形成されるとともに、一方の召し合せ框10dの上部側から下部側まで上下方向T2に所定の長さをもって形成されている。さらに、本実施形態の第1気密材24は、気密/断熱本体部24bの先端部側が断面凸円弧状を呈するように形成されている。なお、係合基端部24aは略平板状に形成されている。
【0035】
さらに、本実施形態では、断熱性の向上を図るため、第1気密材24、煙返し4が設けられた面を除く、室内側の2つの側面を覆うように、一方の召し合せ框10dに樹脂カバー25が取り付けられている。また、一方の召し合せ框10dの第1気密材24は、煙返し4よりも室内側に設けられている。
【0036】
これにより、本実施形態の第1気密/断熱構造B1は、他方の障子13の召し合せ框10dに取り付けられて断熱層を形成する第1樹脂材21と、この第1樹脂材21に当接する一方の障子12の召し合せ框10dに取り付けられた第1気密材24とによって、室内側に第1気密ラインR2を形成する。
【0037】
次に、上枠16と召し合せ框10d、上框10aの間の気密性、断熱性を確保するための本実施形態の第2気密/断熱構造B2は、
図2及び
図4に示すように、上枠16の中間レール(中間壁部)20の室外側を向く面に、上枠16の延設方向の幅方向T1に沿う溝状の第2係合部26が設けられ、この第2係合部26に第2気密材(上部気密材)27を係合し取り付けて構成されている。
【0038】
第2気密材27は、例えば第1気密材24と同様、上枠16の第2係合部26に着脱可能に係合して第2気密材27を位置決め保持するための係合基端部27aと、係合基端部27aを第2係合部26に係合させた状態で、係合基端部27aから他方の障子13の上框10aに突出方向先端部が密着する気密/断熱本体部27bとを備えて形成されている。
【0039】
また、第2気密材27は、樹脂製で弾性変形可能に形成されるとともに、上枠16の幅方向T1略両端に達する横方向に所定の長さをもって形成されている。さらに、本実施形態の第2気密材27は、気密/断熱本体部27bの先端部側が断面凸円弧状を呈するように形成され、係合基端部27aが略平板状に形成されている。
【0040】
そして、第2気密/断熱構造B2は、上枠16の中間レール20に取り付けられた第2気密材27の気密/断熱本体部27bの先端部が他方の障子13の上框10aに密着する。
【0041】
これにより、本実施形態の第2気密/断熱構造B2は、他方の障子13の上框10aに当接する第2気密材27によって、室内側に第2気密ラインR3を形成する。
【0042】
そして、このとき、他方の召し合せ框10dに取り付けられて断熱層を形成する第1樹脂材21と、第1樹脂材に当接する一方の召し合せ框10dに取り付けられた第1気密材24とにより形成される第1気密ラインR2よりも、第2気密材27で形成される第2気密ラインR3が室外側にずれた位置(見込み方向(奥行方向T3)の異なる位置)に形成される。
【0043】
次に、下枠17と召し合せ框10d、下框10bの間の気密性、断熱性を確保するための本実施形態の第3気密/断熱構造B3は、
図2及び
図5に示すように、概略、第2気密/断熱構造B2の天地を逆にした形で構成されている。
【0044】
すなわち、本実施形態の第3気密/断熱構造B3は、下枠17の中間壁部20の室外側を向く面(部位)に、下枠17の延設方向の幅方向T1に沿う第3係合部30が形成されており、この第3係合部30に第3気密材(下部気密材)31を係合し取り付けて構成されている。
【0045】
第3気密材31は、第1気密材24、第2気密材27と同様、下枠17の第3係合部30に着脱可能に係合して第3気密材31を位置決め保持するための係合基端部31aと、係合基端部31aを第3係合部30に係合させた状態で、係合基端部31aから他方の障子13の下框10bに突出方向先端部が密着する気密/断熱本体部31bとを備えて形成されている。
【0046】
また、第3気密材31は、樹脂製で弾性変形可能に形成されるとともに、下枠17の幅方向T1略両端に達する横方向に所定の長さをもって形成されている。さらに、本実施形態の第3気密材31は、第1気密材24、第2気密材27と同様、気密/断熱本体部31bの先端部側が断面凸円弧状を呈するように形成され、係合基端部31aが略平板状に形成されている。
【0047】
そして、第3気密/断熱構造B3は、下枠17の中間壁部20に取り付けられた第3気密材31の気密/断熱本体部31bの先端部が他方の障子13の下框10bに密着する。
【0048】
これにより、本実施形態の第3気密/断熱構造B3は、他方の障子13の下框10bに当接する第3気密材31によって、室内側に第3気密ラインR4を形成する。
【0049】
また、このとき、他方の召し合せ框10dに取り付けられて断熱層を形成する第1樹脂材21と、第1樹脂材21に当接する一方の召し合せ框10dに取り付けられた第1気密材24とにより形成される第1気密ラインR2よりも、第3気密材31で形成される第3気密ラインR4が室外側にずれた位置(見込み方向(奥行方向T3)の異なる位置)に形成される。
【0050】
次に、本実施形態の第4気密/断熱構造B4は、第1気密/断熱構造B1と第3気密断熱構造B3の間の気密性、断熱性を確保するためのものであり、
図6、
図7、
図8に示すように、第1気密/断熱構造B1の第1気密材24の下端部と第3気密断熱構造B3の第3気密材31の一側端部の間に介設される樹脂製の第4気密材(気密ピース)32を備えて構成されている。
【0051】
この第4気密材32は、第1気密/断熱構造B1と第3気密断熱構造B3によってそれぞれ形成される互いの気密ラインを繋げるように設けられている。また、本実施形態の第4気密材32は、上方(上下方向T2)に突設されて第1気密/断熱構造B1の第1気密材24の下端部側に隣接して配設される突出部(気密材隣接部)32aと、幅方向T1に凹設されて第3気密/断熱構造B3の第3気密材31の一側端部が嵌合する嵌合部32bとを備えて形成されている。
【0052】
このように第1気密/断熱構造B1の第1気密材24の下端部と、第3気密断熱構造B3の第3気密材31の一側端部との間に第4気密/断熱構造B4の第4気密材32が介設されることにより、さらに、第1気密材24の下端部側に第4気密材32の突出部32aが隣接し、第4気密材32の嵌合部32bに第3気密材31の一側端部が嵌合していることにより、この部分に一連の気密ラインが形成され、第1気密/断熱構造B1と第3気密断熱構造B3の間の気密性、断熱性が好適に確保される。
【0053】
次に、本実施形態の第5気密/断熱構造B5は、第1気密/断熱構造B1と第2気密断熱構造B2の間の気密性、断熱性を確保するためのものであり、
図9(
図7、
図8参照)に示すように、第1気密/断熱構造B1の第1気密材24の上端部と第2気密断熱構造B2の第2気密材27の一側端部の間に介設される樹脂製の第5気密材(気密ピース)33を備えて構成されている。
【0054】
この第5気密材33は、第4気密材32と同様に、第1気密/断熱構造B1と第2気密断熱構造B2によってそれぞれ形成される互いの気密ラインを繋げるように設けられている。また、本実施形態の第5気密材33は、下方(上下方向T2)に突設されて第1気密/断熱構造B1の第1気密材24の上端部側に隣接して配設される突出部(気密材隣接部)33aと、幅方向T1に凹設されて第2気密断熱構造B2の第2気密材27の一側端部が嵌合する嵌合部33bとを備えて形成されている。
【0055】
このように第1気密/断熱構造B1の第1気密材24の上端部と、第2気密断熱構造B2の第2気密材27の一側端部との間に第5気密/断熱構造B5の第5気密材33が介設されることにより、さらに、第1気密材24の上端部側に第5気密材33の突出部33aが隣接し、第5気密材33の嵌合部33bに第2気密材27の一側端部が嵌合していることにより、この部分に一連の気密ラインが形成され、第1気密/断熱構造B1と第2気密断熱構造B2の間の気密性、断熱性が好適に確保される。
【0056】
したがって、本実施形態のサッシ窓Aの気密/断熱構造Bにおいては、一対の障子12、13の互いの召し合せ框10dが重なった状態で召し合せ框10dの延設方向の上下方向T2の気密性、断熱性を確保するための第1気密/断熱構造B1を備え、この第1気密/断熱構造B1の他方の障子13の召し合せ框10dに取り付けられて断熱層を形成する第1樹脂材21と、第1樹脂材21に当接する一方の障子12の召し合せ框10dに取り付けられた弾性変形可能な第1気密材24とによって、室内側に気密ラインR2が形成される。
【0057】
これにより、上記構成からなる本実施形態の第1気密/断熱構造B1においては、第1樹脂材21に熱収縮等の変形が生じた場合であっても、一対の障子12、13を閉じるとき、弾性変形可能な第1気密材24の先端部を常時第1樹脂材21に密着させることができ、気密性、断熱性を確保することが可能になる。
【0058】
また、本実施形態の第1気密/断熱構造B1においては、他方の召し合せ框10dに設けた第1樹脂材21に弾性変形可能な第1気密材24を当接させて気密性、断熱性を確保するようにしたことで、第1樹脂材21の厚さを薄くすることもできる。
【0059】
これにより、従来と比較し、所望の断熱性を確保しつつ第1樹脂材21(断熱層)を薄くすることができ、召し合せ框10dの見込み方向(奥行方向)T3の幅を小さく抑えることができる。よって、召し合せ框10d、ひいてはサッシ窓Aの見栄えを良くすることができ、且つ低コスト化を図ることが可能になる。
【0060】
また、本実施形態のサッシ窓Aの気密/断熱構造Bにおいては、上枠16と召し合せ框10d、上框10aの間の気密性、断熱性を確保するための第2気密/断熱構造B2を備え、この第2気密/断熱構造B2が、他方の召し合せ框10d、上框10aに当接する第2気密材27によって第2気密ラインR3を形成する。
【0061】
さらに、本実施形態のサッシ窓Aの気密/断熱構造Bにおいては、第2気密材27で形成される第2気密ラインR3と、第1気密材24で形成される第1気密ラインR2とが見込み方向T3の位置をずらして形成されるため、これら2つの気密ラインR2、R3で効果的に気密性、断熱性を発揮させることができる。よって、従来と比較し、さらなる気密性、断熱性の向上を図ることが可能になる。
【0062】
また、本実施形態のサッシ窓Aの気密/断熱構造Bにおいては、下枠17と召し合せ框10d、下框10bとの間の気密性、断熱性を確保するための第3気密/断熱構造B3を備え、この第3気密/断熱構造B3が、第2気密/断熱構造B2と同様に、他方の召し合せ框10d、下框10bに当接する第3気密材31によって第3気密ラインR4を形成する。これにより、第3気密/断熱構造B3によって第2気密/断熱構造B2と同様の作用効果を得ることができる。
【0063】
また、他方の障子13の召し合せ框10d、下框10bに第3気密材31を当接させて気密性、断熱性を確保するように構成することで、従来と比較し、召し合せ框10dの見込み方向T3の寸法を小さく抑えることができる。よって、さらに見栄えを良くすることができ、且つ低コスト化を図ることが可能になる。
【0064】
また、位置が異なる(位置をずらした)2つの気密ラインR2、R4が形成されるため、各気密ラインR2、R4で個別に気密性、断熱性を発揮させることができる。よって、従来と比較し、さらなる気密性、断熱性の向上を図ることが可能になる。
【0065】
さらに、本実施形態のサッシ窓Aの気密/断熱構造Bにおいては、第1気密/断熱構造B1と第3気密断熱構造B3の間に第4気密/断熱構造B4、第1気密/断熱構造B1と第2気密断熱構造B2の間に第5気密/断熱構造B5がそれぞれ介設されていることによって、気密ラインを繋ぎ、好適に気密性、断熱性を確保することができる。
【0066】
第4気密/断熱構造B4の第4気密材32と、第5気密/断熱構造B5の第5気密材33がそれぞれ、第1気密/断熱構造B1の第1気密材24に隣接して配置される(並設される)突出部32a、33aを備えていることによって、第1気密材24と第4気密材32、第5気密材33との継ぎ目が通気路になることがなく(漏気がなく)、さらなる気密性、断熱性の向上を図ることが可能になる。
【0067】
また、第4気密/断熱構造B4の第4気密材32や、第5気密/断熱構造B5第5気密材33を設けることによって、さらに第1気密/断熱構造B1の第1気密材24に隣接する突出部32a、33aを設けることによって、第1気密材24などに熱収縮が生じた場合であっても、気密性、断熱性を確保することができる。
【0068】
また、また、第4気密/断熱構造B4の第4気密材32や、第5気密/断熱構造B5の第5気密材33を設け、さらに第1気密/断熱構造B1の第1気密材24に隣接する突出部32a、33aを設けて、所望の気密性、断熱性を確保するように構成すると、従来と比較し、見付幅を小さくして召し合せ框10dを形成することが可能になる。
【0069】
さらに、第1気密/断熱構造B1の第1気密材24とともに、第4気密/断熱構造B4の第4気密材32や第5気密/断熱構造B5の第5気密材33が断熱層を形成する第1樹脂材21に当接するように構成すると、言い換えれば、第1樹脂材21を、第1気密材24だけでなく第4気密材32、第5気密材33と当接するように見付け方向の幅を大きく形成すると、さらに気密性、断熱性を向上させることが可能になる。
【0070】
以上、本発明に係るサッシ窓の気密/断熱構造の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0071】
例えば、第4気密/断熱構造B4や第5気密/断熱構造B5は、複数の部材で構成してもよい。
例えば、
図10及び
図11に示すように、上枠16(下枠17)の中間レール/中間壁部20に、中間レール20の突出方向先端よりも下方(上方)に突出するようにして断熱性に優れた樹脂材35を取り付け、さらに、樹脂材35の突出方向先端、第1気密材24の上端(下端)、一方の障子12と他方の障子13の上框10aにそれぞれ密着させ、これら上部の部材で囲まれた上部空間を充填するように第5気密材(気密ピース/上部充填気密材)33を設けて第5気密/断熱構造B5を構成してもよい。なお、これと同様に上下逆にした形で第4気密/断熱構造B4を構成できることは言うまでもない。
【0072】
そして、このように樹脂材35と第5気密材33が空間部分に充填配置されることで、さらなる気密性、断熱性の向上を図ることが可能になる。また、第5気密材33を設けることによって、
図11に示すように、第1気密ラインR2と第2気密ラインR3(第3気密ラインR4)を繋ぐことができる。
【0073】
さらに、樹脂材35と第5気密材33を設けることによって、樹脂材35と第5気密材33の当接部など、第5気密材33が当接する複数の部位に新たな気密ラインを形成することができる。よって、第5気密材33を大きく設けることで、召し合せ框10dを小さく抑えつつ、より確実に且つ効果的に気密性、断熱性の向上を図ることが可能になる。
【0074】
また、
図10に示すように、例えば他方の障子13に取り付けた第1樹脂材21が施工誤差等によって位置ずれするなどして気密ライン(破線)の位置が変わってしまうことも考えらえるが、第1気密材24とともに第5気密材33を備えることによって、この部分の気密ラインがずれることがなくなり、信頼性の高い気密性能、断熱性能を発揮することが可能になる。
【0075】
また、
図12に示すように、各障子12、13の上部側(や下端部側)をそれぞれスライド移動可能に支持する上部レール(や下部レール:中間壁部)20を備えて枠体15の上枠16(や下枠17)が構成されている場合には、各障子12、13の上框10a(や下框10b)に気密材36を取り付け、上部レール(や下部レール)20に先端部を圧着させて気密ラインを形成するようにしてもよい。
【0076】
なお、本実施形態では、第1気密材24を他方の召し合せ框10dの第1樹脂材21に密着させるようにしたが、第1気密材24を召し合せ框10dのアルミ部(金属部)に当接させることも考えられる。この場合にも、本実施形態と同様に、気密ラインがずれるために見込方向を小さくできる。
【符号の説明】
【0077】
1 一方の召し合せ框
2 他方の召し合せ框
3 樹脂材
4 煙返し
5 水切り
10 框(サッシ)
10a 上框
10b 下框
10c 縦框
10d 召し合せ框
11 ガラスパネル
12 一方の障子
13 他方の障子
15 枠体
16 上枠
17 下枠
18 戸車
20 中間壁部(中間レール、上部レール、下部レール)
21 第1樹脂材(樹脂カバー)
23 第1係合部
24 第1気密材(側部気密材)
24a 係合基端部
24b 気密/断熱本体部
25 樹脂カバー
26 第2係合部
27 第2気密材
27a 係合基端部
27b 気密/断熱本体部
30 第3係合部
31 第3気密材(下部気密材)
31a 係合基端部
31b 気密/断熱本体部
32 第4気密材
32a 突出部
32b 嵌合部
33 第5気密材
33a 突出部(気密材隣接部)
33b 嵌合部
35 樹脂材
36 気密材
100 従来のサッシ窓
A サッシ窓
B 気密/断熱構造
B1 第1気密/断熱構造
B2 第2気密/断熱構造
B3 第3気密/断熱構造
B4 第4気密/断熱構造
B5 第5気密/断熱構造
R1 気密ライン
R2 第1気密ライン
R3 第2気密ライン
R4 第3気密ライン
T1 幅方向
T2 上下方向
T3 奥行方向