(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】イオントラップを収めるパッケージおよび加工方法
(51)【国際特許分類】
H01J 49/42 20060101AFI20220902BHJP
【FI】
H01J49/42 200
(21)【出願番号】P 2020502428
(86)(22)【出願日】2018-07-18
(86)【国際出願番号】 US2018042717
(87)【国際公開番号】W WO2019018544
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-06-25
(32)【優先日】2018-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503164937
【氏名又は名称】デューク・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】DUKE UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジュンサン・キム
(72)【発明者】
【氏名】カイ・ヒュデク
(72)【発明者】
【氏名】ギアート・ヴリーセン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・スパイヴィ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・マウンツ
【審査官】松平 佳巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-031849(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0169882(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオントラップエンクロージャであって、
第1の主要表面と、前記第1の主要表面の遠位にある第2の主要表面とを有するチップキャリアと、
イオントラップであって、前記第1の主要表面上に配設される基板上に配設されている、イオントラップと、
原子フラックスを前記イオントラップに供給するように動作可能であるソースであって、前記原子フラックスは第1の材料の原子を含む、ソースと、
第1のハウジングであって、前記第1のハウジングおよび前記第1の主要表面は前記第1のハウジングおよび前記第1の主要表面が前記イオントラップを収容する第1のチャンバーをまとめて画成するように第1のシールのところで接合される、第1のハウジングと、
第2のハウジングであって、前記第2のハウジングおよび前記第2の主要表面は前記第2のハウジングおよび前記第2の主要表面が前記ソースを収容する第2のチャンバーをまとめて画成するように第2のシールのところで接合される、第2のハウジングとを備え、
前記第1のチャンバーおよび第2のチャンバーは流体的に結合されてい
て、
前記第1のハウジングは、前記イオントラップと第1の光信号との間の光結合を可能にする第1の窓を備え、
前記第1の光信号は、前記原子フラックス内の前記第1の材料の中性原子を光イオン化することによって前記イオントラップをロードするように動作可能である、イオントラップエンクロージャ。
【請求項2】
前記ソースは、第1の材料のレーザーアブレーションを介して前記原子フラックスを発生させるように動作可能であるアブレーションオーブンを備え、
前記第1のハウジング、イオントラップ、およびチップキャリアは、前記第1の材料と第2の光信号との間の光結合を可能にするように構成され、
前記第2の光信号は、前記第1の材料のアブレーションを行うように動作可能である、請求項1に記載のイオントラップエンクロージャ。
【請求項3】
前記ソースは、前記第1の材料の昇華を介して前記原子フラックスを発生させるように動作可能であるサーマルオーブンを備え、
前記第1のチャンバーと前記第2のチャンバーとの間の熱流を制限するために、前記イオントラップ、基板、及びチップキャリアのうちの少なくとも一つが設けられている、請求項1に記載のイオントラップエンクロージャ。
【請求項4】
前記イオントラップエンクロージャは、10
-9Torr以下である前記第1のチャンバーおよび第2のチャンバー内の圧力レベルを可能にする、請求項1に記載のイオントラップエンクロージャ。
【請求項5】
前記第1のチャンバーと流体的に結合されているポンプをさらに備え、前記ポンプは、ゲッターポンプ、イオンポンプ、及び低温吸着ポンプからなる群から選択される、請求項1に記載のイオントラップエンクロージャ。
【請求項6】
動作によってイオントラップエンクロージャを形成するステップを含む方法であって、前記動作は、
第1の主要表面と前記第1の主要表面の遠位にある第2の主要表面とを有するチップキャリア上に配設されている基板上に配設されるようにイオントラップを設けるステップと、
第1の材料の原子を含む原子フラックスを供給するように動作可能であるソースを収容する第1のチャンバーを画成するように第1のハウジングと前記第2の主要表面とを接合するステップと、
前記イオントラップが前記ソースから前記原子フラックスの少なくとも一部を受け入れることができるように前記第1のチャンバーと流体的に結合される第2のチャンバーを画成するように第2のハウジングと前記第1の主要表面とを接合するステップとを含み、
前記第1のハウジング、第2のハウジング、およびチップキャリアは、前記イオントラップエンクロージャが10
-9Torr以下である前記第1のチャンバー内の圧力レベルを可能にするように接合さ
れ、
前記第2のハウジングは、前記イオントラップと第1の光信号との間の光結合を可能にするように設けられ、
前記第1の光信号は、前記原子フラックス内の前記第1の材料の中性原子を光イオン化することによって前記イオントラップをロードするように動作可能である、方法。
【請求項7】
前記ソースを、第1の材料のレーザーアブレーションを介して前記原子フラックスを発生させるように動作可能であるレーザーアブレーションオーブンを備えるように設けるステップと、
前記第1のハウジングを、前記第1の材料と第1の光信号との間の光結合が可能にされるように設けるステップとをさらに含み、
前記第1の光信号は、前記第1の材料のアブレーションを行うように動作可能である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の光信号を、前記イオントラップを通して伝搬した後に前記第1の材料上に入射するように供給するステップをさらに含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のチャンバーに収容されるポンプを設けるステップをさらに含み、前記ポンプは、前記第2のチャンバーと流体的に結合され、前記ポンプは、イオンポンプ、低温吸着ポンプ、およびゲッターポンプからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記ソースを、前記第1の材料の昇華を介して前記原子フラックスを発生させるように動作可能であるサーマルオーブンを備えるように設けるステップをさらに含み、
前記第1のチャンバーと前記第2のチャンバーとの間の熱流を制限するために、前記イオントラップ、基板、及びチップキャリアのうちの少なくとも一つが設けられている、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府による資金提供を受けた研究の記載
本発明は、米陸軍研究事務所により授与された連邦補助金番号W911NF-10-1-0231の下で政府支援によりなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれている、2017年7月18日に出願した米国仮出願第62/533,927号、名称「Compact UHV Package for Trapped Ion Systems and Methods of Making and Using Same」(整理番号DU5308PROV)の利益を主張するものである。本出願とこの事例における請求項の解釈に影響を及ぼす恐れのある参照により組み込まれている事例のうちの1つまたは複数との間に言い回しの相反または矛盾がある場合、この事例における請求項はこの事例における言い回しと一致するものと解釈されるべきである。
【0003】
本発明は、一般に、量子コンピューティングシステムに関するものであり、より具体的には、量子コンピューティングシステムにおけるイオントラップを収容するための超高真空パッケージングに関するものである。
【背景技術】
【0004】
量子コンピューティングは、情報を処理するために古典系では利用可能でない量子力学的現象(たとえば、重ね合わせおよびエンタングルメントなど)を利用する最先端技術である。従来のコンピューティングシステムでは、情報の基本単位はビットであり、これは「1」または「0」のいずれかの状態を取り得る2状態要素である。対照的に、量子コンピューティングシステムにおける情報の基本単位はqubitと呼ばれ、同時に両方の状態の任意の重ね合わせであり得る(「重ね合わせ状態」と呼ばれる)。さらに、多数のqubitは、系が個別のqubit状態の積として記述され得ないような相関状態の重ね合わせとなり得る(「もつれた状態」と呼ばれる)。情報を表すこれらの形態のqubit状態は、従来の(古典的)コンピュータでは利用可能でない。結果として、理論的には、大規模な量子コンピュータは、従来のコンピューティングアプローチを使用したのでは単に実用上実現できないいくつかの問題を解くことができる。しかし残念なことに、量子コンピュータは、大規模であるが故に実現が困難であることが証明されている。
【0005】
実用的な量子コンピューティングを実現する1つの魅力的な道が、「トラップイオン処理(trapped-ion processing)」であり、これは電磁場を利用して原子イオンを自由空間内に閉じ込め、1つまたは複数のレーザービームを介してqubitの光アドレッシングおよび読み出しを行う。トラップイオン処理は、大規模な量子コンピューティングおよびロバストな量子情報処理(QIP)のための潜在的に実現可能な技術と見られている。スケーラブルな量子コンピューティングおよび長距離量子通信を可能にする新しいトラップイオンプロトコルが提案され、実証に成功しているが、従来のイオントラップのサイズおよび複雑さは、配備可能である実用的で大規模なトラップイオンQIPシステムの実現の制限要因であることが証明されている。
【0006】
近年、微細加工(表面)トラップが進歩したことで、従来手作業で組み立てられていた巨視的トラップをしのぐ高性能なqubit測定および量子ゲートが実証されている。実際、数百個のイオンを潜在的に担持することができる微細加工表面トラップが実証されており、単一qubit特性は巨視的トラップにおいて実証されている特性に匹敵する。結果として、そのようなトラップは、量子コンピューティングが直面しているスケーリング問題を克服することに向かう主要なステップを表すと信じられている。
【0007】
しかし残念なことに、チップベースのイオントラップの使用により、他のいくつかの問題が生じ、あるものはチップ技術に内在するものであり、他のものはこのアプローチのスケーラブルな性質に単に由来するものである。
【0008】
1つの著しい問題は、イオントラップが異常加熱に曝されるという事実から生じ、イオンは、捕獲電極の表面により近いところで捕獲されるときに予想以上に高い運動加熱を受ける。これは、イオンに対する運動自由度によって媒介されるマルチqubitゲートの品質に実質的な影響を及ぼす。幸いなことに、近年の研究は、トラップ電極の原位置洗浄が基本熱雑音限界の大きさのオーダーの範囲内に加熱速度を実質的に低減することができることを示唆している。
【0009】
チップベースのイオントラップの別の問題は、背景残留ガス分子から捕獲されたイオンを分離する必要があることである。結果として、イオントラップは、極端に高い真空レベル--典型的には10-9Torr以上で動作させなければならない。歴史的に、そのような真空レベルを達成するために複雑で扱いにくいインフラストラクチャが必要であった。結果として、微細加工表面トラップを採用する従来の量子コンピューティングシステムのスケーラビリティは、問題として残っている。
【0010】
それに加えて、微細加工表面トラップは、トラップをロードするためにイオンソースを必要とする。典型的には、イオンは、サーマルオーブンなどの、ソースによって生成される原子プルームから捕捉される。しかし残念なことに、従来のソースによって生成される熱は、イオントラップ動作に干渉し得る。イオントラップシステムを小型化することによって、ソースとイオントラップとの間の距離が縮小し、それらの間の熱的結合をさらに悪化させる。
【0011】
高真空条件、高電圧無線周波数(RF)信号の生成、多数のDC信号をサポートし、捕獲状態のアドレッシング/読み出しのために1つまたは複数のレーザービームに対する光アクセス、および原子フラックスのソースの動作を可能にすることができる実用的なイオントラップエンクロージャの必要性は、今までのところ従来技術では依然として満たされていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【文献】Brownら、「Co-Designing a Scalable Quantum Computer with Trapped Atomic Ions」、arXiv:1602.02840v1 [quant-ph](2016年)
【文献】Stickら、「Ion Trap in a Semiconductor Chip」、Nature Physics、第2巻、36~39頁(2006年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、従来技術のコストおよび不利点のいくつかをなくした実用的な大規模量子コンピュータを可能にする。本発明の実施形態は、量子コンピュータの動作に必要なイオントラップエンクロージャのサイズおよび複雑度を、イオントラップとトラップをロードするために使用されるソースとの間の熱的クロストークを低減することによってその動作を改善しながら、著しく低減するために統合パッケージング技術を採用している。
【0014】
従来技術のエンクロージャのように、本発明は、チップキャリアの表面と接合されているハウジングを接合することによって形成される高真空チャンバー内にイオントラップを収容する。従来技術では、高真空チャンバーは、また、トラップをロードするために使用される原子フラックスを供給するためのソースも収容する。結果として、ソースによって生成される熱は、トラップ動作に干渉し得る、イオントラップと容易に結合する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従来技術とは際立って対照的に、本発明の実施形態は、イオントラップとソースとをチップキャリアの対向側に配置されている異なる高真空チャンバーに分離する。ソースによって生成された原子フラックスは、2つのチャンバーの間の導管を通して伝搬し、イオンをトラップにロードすることを可能にするが、ソースとイオントラップとをチップキャリアの対向側の別々のチャンバーに分離することで、それらの間の熱的結合を低減する。したがって、本発明の実施形態は、従来技術に比べて低温での動作が優れている。
【0016】
本発明の例示的な一実施形態は、チップキャリアの第1の側に配置されている第1のチャンバーと、チップキャリアの対向側に配置されている第2のチャンバーとを備えるイオントラップエンクロージャであり、第1のチャンバーはイオントラップを収容し、第2のチャンバーは原子フラックスを供給するためのソースを収容する。チップキャリア内に形成された貫通孔、イオントラップ、および任意選択のインターポーザーは、イオントラップがソースから原子フラックスを受け入れることを可能にする導管を2つのチャンバーの間にまとめて画成するように整列される。低温吸着ポンプがエンクロージャ内に設けられ、両方のチャンバー内の高真空条件の実現を円滑にする。
【0017】
いくつかの実施形態において、第1のチャンバーは、トラップ寿命を改善するためにイオントラップに近接近するところに非蒸発型ゲッターを位置決めするように構成される。
【0018】
いくつかの実施形態において、ソースは、ソース材料の昇華を介して原子フラックスを生成するサーマルオーブンである。
【0019】
いくつかの実施形態において、ソースは、アブレーションレーザーとソース材料を保持するためのるつぼとを備えるアブレーションオーブンである。アブレーションレーザーおよびるつぼは、レーザーの出力がソース材料を擺脱し、原子フラックスを生成するように配置構成される。
【0020】
いくつかの実施形態において、低温吸着ポンプはイオンポンプで置き換えられる。
【0021】
本発明の一実施形態は、第1の主要平面と、第1の主要平面の遠位にある第2の主要平面とを有するチップキャリアと、イオントラップであって、第1の主要表面上に配設される基板上に配設されている、イオントラップと、原子フラックスをイオントラップに供給するように動作可能であるソースであって、原子フラックスは第1の材料の原子を含む、ソースと、第1のハウジングであって、第1のハウジングおよび第1の表面は第1のハウジングおよび第1の主要表面がイオントラップを収容する第1のチャンバーをまとめて画成するように第1のシールのところで接合される、第1のハウジングと、第2のハウジングであって、第2のハウジングおよび第2の主要表面は第2のハウジングおよび第2の主要表面がソースを収容する第2のチャンバーをまとめて画成するように第2のシールのところで接合される、第2のハウジングとを備え、第1のチャンバーおよび第2のチャンバーは流体的に結合されている、イオントラップエンクロージャである。
【0022】
本発明の別の実施形態は、イオントラップを収容する第1のチャンバーであって、イオントラップは基板の第1の表面上に配設され、第1のチャンバーは、イオントラップと第1の光信号との間の光結合を可能にする第1のハウジングを備える、第1のチャンバーと、第1の材料の原子を含む原子フラックスを供給するように動作可能であるソースを収容する第2のチャンバーとを備えるイオントラップエンクロージャであり、第1のチャンバーおよび第2のチャンバーは、原子フラックスがイオントラップのところで受け入れられるように流体的に結合され、第1のチャンバーと第2のチャンバーとの間の熱流は、制限され、基板は、イオントラップとソースとの間に配置され、イオントラップエンクロージャは、10-9Torr以下である第1のチャンバー内の圧力レベルを可能にする。
【0023】
本発明のさらに別の実施形態は、第1の主要表面と第1の主要表面の遠位にある第2の主要表面とを有するチップキャリア上に配設されている基板上に配設されるようにイオントラップを設けることと、第1の材料の原子を含む原子フラックスを供給するように動作可能であるソースを収容する第1のチャンバーを画成するように第1のハウジングと第2の主要表面とを接合することと、イオントラップがソースから原子フラックスの少なくとも一部を受け入れることができるように第1のチャンバーと流体的に結合される第2のチャンバーを画成するように第2のハウジングと第1の主要表面とを接合することとを含む動作によりイオントラップエンクロージャを形成することを含み、第1のハウジング、第2のハウジング、およびチップキャリアは、イオントラップエンクロージャが10-10Torr以下である第1のチャンバー内の圧力レベルを可能にするように接合される、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1A】従来技術によるイオントラップエンクロージャの断面図の概略図である。
【
図1B】従来技術による初期のイオントラップエンクロージャの斜視図の写真である。
【
図1C】従来技術によるイオントラップエンクロージャの斜視図の写真である。
【
図2】本発明の例示的な一実施形態によるイオントラップエンクロージャの断面図の概略図である。
【
図3】本発明の例示的な実施形態によりエンクロージャ200を形成するのに適している方法の動作を示す図である。
【
図4A】加工の際の異なる点におけるエンクロージャ200の顕著な特徴を示す図である。
【
図4B】加工の際の異なる点におけるエンクロージャ200の顕著な特徴を示す図である。
【
図4C】加工の際の異なる点におけるエンクロージャ200の顕著な特徴を示す図である。
【
図4D】加工の際の異なる点におけるエンクロージャ200の顕著な特徴を示す図である。
【
図5】方法300とともに使用するのに適している例示的なUHV処理システムの概略図である。
【
図6】本発明の第1の代替的な実施形態による低温での動作を円滑にするためのマルチチャンバーエンクロージャの一部を示す概略図である。
【
図7】本発明の第2の代替的な実施形態によるエンクロージャの顕著な特徴部の断面の概略図である。
【
図8】本発明の第3の代替的な実施形態によるエンクロージャの顕著な特徴部の断面図の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1Aは、従来技術によるイオントラップエンクロージャの断面図の概略図を示す。エンクロージャ100は、チップキャリア102と、イオントラップ104と、ハウジング106と、シール108と、低温吸着ポンプ110と、ソース112とを備え、すべて単一のチャンバー内に収容される。エンクロージャ100は、参照により本明細書に組み込まれている、Brownら、「Co-Designing a Scalable Quantum Computer with Trapped Atomic Ions」、arXiv:1602.02840v1 [quant-ph](2016年)において説明されているものなどの、従来技術において知られているイオントラップエンクロージャに類似している。
【0026】
イオントラップ104は、従来のセラミックチップパッケージ--たとえば、セラミックピングリッドアレイ(CPGA)--であるチップキャリア102の表面114上にダイアタッチ(die attached)される。
【0027】
イオントラップ104は、基板132(たとえば、シリコンウェハ、ガラス基板など)の頂面上に正確に配置構成して形成されている、複数の高電圧および/またはRF電極130を備える従来の微細加工表面トラップである。イオントラップ104は、高出力レーザービームが電極表面の近くの領域にアクセスし、著しい光散乱を受けることなくクーロンゲート(Coulomb gate)および/または光結合を生じさせることができるように構成される。微細加工イオントラップの例は、参照により本明細書に組み込まれている、Stickら、「Ion Trap in a Semiconductor Chip」、Nature Physics、第2巻、36~39頁(2006年)において開示されている。
【0028】
イオントラップ104がチップキャリア上にダイアタッチされた後、電極130は、ワイヤボンド122を介してチップキャリア102の電気リード120に電気的に接続される。いくつかの場合において、チップキャリア102は、電気リード120ではなく、その底面に配設される従来のハンダバンプボンディングに適しているハンダバンプを備える。
【0029】
図1Bは、従来技術による初期のイオントラップエンクロージャの斜視図の写真を示す。
図1Bは、イオントラップ104がチップキャリア102上に配置されている任意選択のインターポーザー上に装着された後のエンクロージャ100を示している。
【0030】
チャンバー116を形成するために、ハウジング106がシール108を介してチップキャリア102の表面114に接合される。ハウジングは、典型的には、中心空洞を備える機械的剛体構造であり、構造は、その内部で少なくとも10-10Torrの真空レベルに耐えるように構成される。ハウジング106は、イオントラップの動作に必要な1つまたは複数の光信号に対する光アクセスを可能にする、窓118-1から118-3を備える。窓は、真空気密シールを作るのに適している封止技術を使用してハウジング106内の貫通孔の上に貼り付けられる。
【0031】
シール108は、典型的には、イオントラップチップを囲むインジウムのリングである。ハウジングがチップキャリア上の適所にあれば、典型的にはチャンバー116内に初期真空状態を確立するために高真空環境内に配置されている間に、インジウムを溶かしてそれらの間に真空気密シールを形成し、チャンバー116内の真空環境の維持をサポートする。
【0032】
図1Cは、従来技術によるイオントラップエンクロージャの斜視図の写真を示す。
【0033】
ハウジング106がチップキャリアに取り付けられる前に、低温吸着ポンプ110およびソース112は、エンクロージャ100が完成したときに封止されたチャンバー116内に適切に位置決めされるようにハウジング内に装着される。
【0034】
ソース112は、原子フラックス128を含む、原子プルーム126を生成するために材料124を昇華させる動作をするサーマルオーブンである。動作時に、ソース112は、材料124を加熱して原子プルーム126を生成することによってイオントラップ104をロードし、この原子プルームの一部は原子フラックス128であり、イオントラップ104の方へ見通し内で伝搬する。典型的には、材料124は、イッテルビウムを含むが、ベリリウム、マグネシウム、ストロンチウム、カルシウム、および同様のものなどの他の材料も、いくつかの従来技術の応用において使用される。
【0035】
低温吸着ポンプ110は、典型的には、極低温動作時にエンクロージャ内の環境からヘリウムなどの不活性分子を取り除くように動作可能である木炭吸着ポンプである。
【0036】
エンクロージャ100は、イオントラップのための少容量高真空環境の一例であるが、単一チャンバー内でイオントラップ104およびソース112が同じ場所にあるのは実際には不利である。特に、材料124を昇華させるときに、ソース112は著しい熱を発生し(最大数百℃)、イオン捕獲動作に干渉することがある。これは、チャンバー116内のヘリウム含有量を低減するために低温吸着ポンプが利用される図示されている例など、極低温動作が望ましいエンクロージャに対して特に有害である。
【0037】
しかしながら、本発明の一態様は、改善されたイオン捕獲動作がソース112とイオントラップ104とを別々のチャンバー--好ましくはチップキャリアの対向側に配置される--内に配置することによって実現され得ることである。そのような配置構成は、ソース112の動作時に発生する熱の効果を弱める一定レベルの熱的分離をソースとイオントラップとの間にもたらす。
【0038】
図2は、本発明の例示的な一実施形態によるイオントラップエンクロージャの断面図の概略図を示す。エンクロージャ200は、チャンバー202-1および202-2と、導管204と、イオントラップ206と、チップキャリア208と、ゲッター218と、低温吸着ポンプ110とを備える。
【0039】
チャンバー202-1および202-2は、チップキャリア208の対向側に配置されている別々のチャンバーである。
【0040】
チャンバー202-1はチャンバー116に類似している。チャンバー202-1は、イオントラップ206とゲッター218とを収容するが、ソース112を除いている。チャンバー202-1は、チップキャリア208およびハウジング210-1によって画成され、これはシール216-1のところでチップキャリアの表面212に接合される。
【0041】
チャンバー202-2もチャンバー116に類似している。チャンバー202-2は、ソース112と低温吸着ポンプ110とを収容するが、イオントラップ206を除いている。チャンバー202-2は、チップキャリア208およびハウジング210-2によって画成され、これはシール216-2のところでチップキャリア208の表面214に接合される。
【0042】
チャンバー202-1および202-2は、チップキャリア208の対向側に配置され、ソースとイオントラップとの間の熱的結合を緩和する。原子フラックス128がソース112からイオントラップ206に流れることを可能にするために、チャンバー202-1および202-2は、導管204を介して流体的に結合される。以下で説明されているように、導管204は、イオントラップ206のチップキャリア208、インターポーザー220、および基板132の各々に形成された貫通孔を備える。
【0043】
図3は、本発明の例示的な実施形態によりエンクロージャ200を形成するのに適している方法の動作を示す。方法300は動作301から始まるが、ここで、イオントラップ206はチップキャリア208上に配置されている。方法300は、引き続き
図2A~
図2Bを参照しつつ、さらには
図4A~
図4Cを参照しつつ説明される。
【0044】
図4A~
図4Dは、加工の際の異なる点におけるエンクロージャ200の顕著な特徴を示す図である。
【0045】
図4Aは、キャリア208上に配設されているイオントラップ206を示す初期のエンクロージャ200の断面図の概略図を示す。
【0046】
チップキャリア208は上で説明されているチップキャリア102に類似しているが、チップキャリア208は、ポート402と、シール216-1および216-2とを備える。
【0047】
シール216-1および216-2は、それぞれ、表面212および214上に形成された金属トレースである。図示されている例では、シール216-1および216-2は、チップキャリアをハウジング210-1および210-2の各々と接合するための金-スズ共晶接合(eutectic bond)を形成するのに適している金およびスズの層を含む環状トレースである。いくつかの代替的実施形態において、これらのシールのうちの少なくとも1つは、チップキャリアおよびハウジングを接合するのに適している異なる材料を含む。
【0048】
ポート402は、イオントラップ206を受け入れるように構成されているダイアタッチ領域内でチップキャリア208の厚さ部分を貫通する開口である。
【0049】
イオントラップ206は、基板132が、チップキャリア208の表面212上に置かれる、任意選択のインターポーザー220上に置かれるようにチップキャリア上に配設される。付属の請求項を含む、本明細書の目的のために、「上に配設される」という言い回しは、下にある層または構造「上に存在する」として定義される。過渡的層、インターポーザーなどの、中間層または構造は、好適な表面/配置構成を確実にするために必要に応じて、要素とそれが配設される構造との間の介在する空間内に存在する可能性がある。たとえば、要素が「基板上に配設されている」と記述された場合、これは、(1)要素の材料が基板と緊密に接触しているか、または(2)要素の材料が基板上に置かれている1つまたは複数の過渡的層/構造と接触していることのいずれかを意味するものとしてよい。
【0050】
図4Bは、イオントラップ206の上面図の概略図を示す。イオントラップ206は、基板132と、電極130と、ポート404と、ワイヤボンドパッド410とを備える。
【0051】
電極130は、電極アレイ130Aおよび130Bを備え、その端面はギャップgにわたって互いに対向する。
【0052】
ポート404は、ギャップgの領域内で基板132の厚さ部分を貫通する貫通孔である。以下で説明されるように、ポート404は、イオントラップ206がチップキャリア208上に配設された後、導管204の一部を形成する。
【0053】
ワイヤボンドパッド410は、基板132の外縁に沿って配置構成されている従来のワイヤボンドパッドである。ワイヤボンドパッド410は、電極130に電気的に接続される。
【0054】
インターポーザー220は、その厚さ部分を貫通する、ポート406を備える従来の集積回路インターポーザーである。インターポーザー220は、イオントラップの高さを電極130が窓118-2と118-3との間に延在する、軸A1の近くにあるようにチップキャリアより上に設定するために備えられる。
【0055】
イオントラップ206、インターポーザー220、およびチップキャリア208は、導管204をまとめて画成するためにポート402、404、および406の少なくとも一部が重なり合うように配置構成される。結果として、両方のチャンバーは、同じポンプシステムによるポンプ動作が行われるものとしてよく、ソース112の出力は、イオントラップ/インターポーザー/チップキャリアアセンブリを通して伝搬し得る。
【0056】
イオントラップ206がチップキャリア208上に配設された後、ワイヤボンドパッド410(さらにはエンクロージャ200内に含まれる追加の電子機器とのワイヤボンドパッド接続)とワイヤボンドパッド408との間にワイヤボンドが作られ、これらは電気的リード120に電気的に接続される。
【0057】
いくつかの実施形態において、イオントラップ206は、インターポーザーを備えることなくチップキャリアの表面212上に直接置かれる。
【0058】
動作302において、シール216-2を介してハウジング210-2をチップキャリア208の表面214に接合することによってチャンバー202-2が形成される。
【0059】
図4Cは、ハウジング210-2およびチップキャリア208が接合されチャンバー202-2を形成した後の、エンクロージャ200の断面図の概略図を示している。
【0060】
ハウジング210-2は、中心空洞を備える機械的剛体構造である。ハウジング210-2は、その内部で10-9Torr以下の真空レベルに耐えるように構成される。図示されている例では、ハウジング210-2はチタンを含むが、十分な強度および寸法安定性を有する材料であればどのような材料でも、ハウジング210-2に使用できる。
【0061】
ソース112は、軸A1に沿って整列されるようにハウジング210-2の内部底面上に配置され、イオントラップ206とともに中心に位置決めされる。好ましくは、ソース112は、軸A1に沿ってイオントラップ206と同心円状になるように配置されるが、ソースおよびイオントラップの他の配置構成も、本発明の範囲から逸脱することなく使用できる。
【0062】
ソース112およびイオントラップ206の配置構成の結果、原子フラックス128は導管204を通して背面(すなわち、基板)側からイオントラップに向けられる。
【0063】
ハウジング210-2は、エンクロージャ200の要素とのすべての電気的接続性をもたらす、電気的リード120の間の開放領域内に置かれるように構成されることに留意されたい。そのような構成は、漏出を引き起こし得る電気的貫通接続を回避することによってエンクロージャ内の高い真空レベルを得て維持することを簡素化する。それに加えて、電気信号をチップキャリアを通してエンクロージャに出し入れすることで、エンクロージャの内側に追加の配線を行う必要をなくし、イオントラップを動作させるために必要な高密度電子機器(図示せず)のための従来のプリント基板および集積回路の使用を可能にする。
【0064】
動作303において、初期のエンクロージャ200は、初期のエンクロージャが真空状態にある間に追加の処理動作が行われることを可能にする超高真空(UHV)処理システム内に置かれる。
【0065】
図5は、方法300とともに使用するのに適している例示的なUHV処理システムの概略図を示す。
【0066】
処理システム500は、従来のロードロック(load lock)502と、サンプルパーキングステージ(sample parking stage)504と、表面処理および解析サブシステム506と、パッケージングサブシステム508と、堆積サブシステム(deposition sub-system)510と、トロリーサブシステム512とを備える。
【0067】
表面処理および解析サブシステム506は、ハウジングおよび/またはイオントラップ/チップキャリアアセンブリの1つまたは複数の表面を、完成したエンクロージャを完全に封止する前に、10-9Torr以下の底面圧力、さらには1つまたは複数の改質表面の特徴付けで、改質するためのサブシステムである。図示されている例では、表面処理および解析サブシステム506は、アルゴンイオンスパッタガンおよびX線光電子分光法(XPS)ツールを備える。いくつかの実施形態において、異なる表面処理ツールおよび/または表面解析ツール(たとえば、オージェ分光法、ケルビンプローブツールなど)が、表面処理および解析サブシステム506に含まれる。
【0068】
パッケージングサブシステム508は、約10-9Torr以下の底面圧力でエンクロージャ200のチャンバーの間に真空気密シールを形成するためのサブシステムである。図示されている例では、パッケージングサブシステム508は、ハウジングおよび/またはイオントラップ/チップキャリアアセンブリを、いくつかの実施形態では、1200℃と高い温度を必要とすることもある、シール216-1および216-2を形成するのに適している温度で処理するように構成されているグラファイトヒーターを備える。また、機械的誘導構造によって可能にされるセルフアライメントプロセスでハウジングおよびチップキャリアを一緒に整列させ積み重ねるように動作可能でもある。パッケージングサブシステム508は、トラップ表面のアニーリングおよびハウジングに任意選択で含まれる1つまたは複数の窓の原位置封止も可能にする。
【0069】
堆積サブシステム510は、エンクロージャ200の1つまたは複数の表面を、10-9Torr以下の底面圧力に保持されている間にスパッタリングするように構成されている従来のスパッタリングシステムである。いくつかの実施形態において、堆積サブシステム510は、蒸発システム(たとえば、熱蒸発システム、電子ビーム蒸発システムなど)、化学堆積システム(たとえば、プラズマ増強化学気相堆積法(PECVD)、低圧化学気相堆積(LPCVD)など)、原子層堆積(ALD)システム、および同様のものなどの、異なる材料堆積システムを含む。
【0070】
トロリーサブシステム512は、初期のエンクロージャをプロセスシステム全体に通して運ぶことを、10-9Torr以下の底面圧力に保持されている間に行うことを可能にする。
【0071】
動作304において、イオントラップ206の表面は、その動作中にトラップ内のイオンが受ける異常加熱を緩和するように処理される。イオントラップの表面の処理は、初期のエンクロージャ200が高真空に保持されている間に表面処理および解析サブシステム506内でアルゴンイオンスパッタシステムを介してスパッタリングを行うことを含む。いくつかの実施形態において、イオントラップ表面は、所望の表面状態を達成するのに適している異なる処理で処理される。
【0072】
動作305で、初期のエンクロージャは加熱され、低温吸着ポンプ110を活性化する。
【0073】
動作306において、シール216-1を介してハウジング210-1をチップキャリア208の表面212に接合することによってチャンバー202-1が形成される。初期のエンクロージャがシステム500内で高真空に保持されている間にチャンバー202-1を形成することによって、チャンバー202-1は、システム500の状態に等しい初期真空状態--典型的には、約10-9Torr以下--にされる。
【0074】
図4Dは、ハウジング210-1およびチップキャリア208が接合されチャンバー202-1を形成した後の、エンクロージャ200の断面図の概略図を示している。
【0075】
ハウジング210-1はハウジング106に類似しているが、ハウジング210-1はさらにシールド222を備える。ハウジング106と同様に、ハウジング210-1は、窓118-1から118-3を備え、イオントラップ206の動作時にqubitを光学的に制御するために使用される光信号に対するイオントラップへの光アクセスを提供する。いくつかの実施形態において、ハウジング210-1は、その窓のうちの1つまたは複数を置き、封止する前に、チップキャリア208に接合される。そのような場合、窓は、また、初期のエンクロージャ200がシステム500内に高真空状態で置かれている間に取り付けられ封止される。
【0076】
上で説明されているように、チップキャリア200より上のイオントラップ206の高さは、軸A2に隣接する場所にイオントラップを置くように確立され(インターポーザー220を介して)、これは窓118-2および118-3からイオントラップ206の表面に対して平行に配置される。結果として、光信号224が電子フラックス128内の原子を光イオン化するように軸A2に沿って供給されたときに、その伝搬方向は、軸A1に沿ってこれらの原子の流れに直交し、原子フラックスの速度に関連付けられているドップラー偏移/拡がりを緩和する。
【0077】
ゲッター218は、シールド222の表面226上に配設される、非蒸発型ゲッター(NEG)である。シールド222は、ハウジング210-1がチップキャリア208と接合された後にイオントラップ206の表面の近くにゲッター218を位置決めするように構成される。イオントラップ206の表面の近くに置かれるようにゲッター218を設けることによって、トラップ寿命が改善される。
【0078】
いくつかの実施形態において、ゲッター218は、ハウジング210-1の追加の前にチップキャリア208に接合される別個の支持体上に配設される。そのような実施形態は、ハウジング210-1の構成およびその窓の配置と無関係にゲッターポンプの分離が制御され得るという点で都合がよい。
【0079】
低温吸着ポンプ110およびゲッター218のいずれかまたは両方は、本発明の範囲から逸脱することなく、チャンバー202-1内に配置できることに留意されたい。
【0080】
さらに、方法300の動作は、任意の順序で実行することができる--たとえば、チャンバー202-1はチャンバー202-2の前に形成できる、などである。
【0081】
イオントラップ206およびソース112を異なるチャンバー内に配置することで材料124を昇華させるときに発生する熱の有害な効果を低減するけれども、いくつかの実施形態において(たとえば、極低温動作が必要なときに)、追加の熱安定性が必要になる。結果として、本発明のいくつかの実施形態において、材料124の熱昇華ではなく材料124のレーザーアブレーションによって原子プルーム126が得られる。
【0082】
図6は、本発明の第1の代替的な実施形態による低温での動作を円滑にするためのマルチチャンバーエンクロージャの一部の概略図を示す。エンクロージャ600はエンクロージャ200に類似しているが、エンクロージャ600は原子フラックスを生成するためのアブレーションオーブンを備える。結果として、原子プルームの生成時に発生する熱は著しく減る。
【0083】
ソース602は、るつぼ604とレーザー606とを備えるアブレーションオーブンである。ソース602は、アブレーションビーム608を材料124に照射することによって原子フラックス610を含む原子プルームを発生し、ビームは、軸A1に沿って伝搬するように窓118-1を通してエンクロージャ600内に導かれる。結果として、アブレーションビーム608は、材料124への途中で、導管206を通過する。
【0084】
るつぼ604は、材料124を保持するための従来のるつぼである。いくつかの実施形態において、るつぼ604は、ハウジング210-1内に組み込まれる。
【0085】
ソース602は、それがもっぱら中性原子を含むように原子フラックス610を形成するように構成される。したがって、イオントラップ206をロードするために、中性原子がイオン化されなければならない。図示されている例では、エンクロージャ600はレーザー612を備え、これは軸A2に沿ってレーザービーム614を供給し、原子フラックス610内の中性原子を光イオン化し捕獲に適したイオンを形成する共振ソースである。上で説明されているように、好ましくは、軸A1およびA2は直交しており、原子フラックスの速度に関連付けられているドップラー偏移/拡がりを緩和する。
【0086】
当業者であれば、本明細書を読んだ後に、ギャップgの幅が典型的には極めて狭いことを認識するであろう。結果として、イオントラップ206内のポート404の幅も非常に狭い。結果として、イオントラップに対するアブレーション/ダメージは、アブレーションビーム608がポート404を通過するときに発生する可能性がある。したがって、いくつかの実施形態において、アブレーションビームは、イオントラップを通過しないようなルートを辿り、イオントラップへのダメージのリスクを軽減する。
【0087】
図7は、本発明の第2の代替的な実施形態によるエンクロージャの顕著な特徴部の断面の概略図を示す。エンクロージャ700はエンクロージャ600に類似しているが、エンクロージャ700は、イオントラップ206を通過することなく材料124に向けられるアブレーションビームを有するアブレーションオーブンを備える。エンクロージャ700は、チャンバー202-1および702と、導管204と、イオントラップ206と、チップキャリア208と、ゲッター218(図示せず)と、低温吸着ポンプ110と、ソース704とを備える。
【0088】
チャンバー702は、ハウジング706およびチップキャリア208の表面214によって画成され、これらは、上で説明されているように、シール216-2のところで接合される。
【0089】
ソース704は、レーザー606と、るつぼ708と、反射鏡710とを備える。エンクロージャ600と同様に、レーザー606はハウジング706の外側に配置される。
【0090】
ハウジング706は、上で、
図1に関して説明されているハウジング106に類似している。ハウジング706は、レーザー606のために材料124への光アクセスを可能にするように構成されている窓118を備える。
【0091】
るつぼ708はるつぼ604に類似しているが、るつぼ708は、反射鏡710を装着し、さらには反射鏡から届くアブレーションビーム608の光路に適応するように構成される。アブレーションビーム608を受けたことに応答して、るつぼ708は、上で説明されているように、軸A1に沿って向けられる、原子フラックス610を含む原子プルームを引き起こす。
【0092】
反射鏡710は、レーザー606からのアブレーションビーム608を材料124の方へ反射するように配置構成されている従来の第1の表面反射体である。
【0093】
ソース704およびハウジング706は、レーザー606から材料124への光路712を、アブレーションビーム608をイオントラップ206に通過させることなく可能にするように構成される。
【0094】
いくつかの実施形態において、極低温動作は重要ではない。そのような実施形態において、低温吸着ポンプ110は、小型イオンポンプで置き換えられてよい。
【0095】
図8は、本発明の第3の代替的な実施形態によるエンクロージャの顕著な特徴部の断面図の概略図を示す。エンクロージャ800はエンクロージャ200に類似しているが、エンクロージャ800において、低温吸着ポンプはイオンポンプで置き換えられる。
【0096】
エンクロージャ800は、チャンバー202-1および802と、導管204と、イオントラップ206と、チップキャリア208と、ゲッター218(図示せず)と、ソース112と、イオンポンプ804とを備える。
【0097】
チャンバー802はチャンバー202-2に類似しているが、チャンバー802は、流体的に結合されている、サブチャンバー808-1および808-2を備える。ソース112はサブチャンバー808-1内に収容され、イオンポンプ804はサブチャンバー808-2内に収容される。チャンバー802は、ハウジング806および表面214によって画成され、これらは、上で説明されているように、シール216-2のところで接合される。
【0098】
エンクロージャ800は、サーマルオーブンを備えるソースを具備するけれども、他のオーブン(たとえば、アブレーションオーブン)は、本発明の範囲から逸脱することなく、ソース112において使用され得ることに留意されたい。
【0099】
本開示は本発明による実施形態のいくつかの例だけを教示すること、および本発明の多くの変更形態は本開示を読んだ後であれば当業者によって容易に考案され得ること、および本発明の範囲は次の請求項によって決定されるべきであることは理解されるべきである。
【符号の説明】
【0100】
100 エンクロージャ
102 チップキャリア
104 イオントラップ
106 ハウジング
108 シール
110 低温吸着ポンプ
112 ソース
114 表面
116 チャンバー
118-1から118-3 窓
120 電気リード
122 ワイヤボンド
124 材料
126 原子プルーム
128 原子フラックス
130 高電圧および/またはRF電極
130Aおよび130B 電極アレイ
132 基板
200 エンクロージャ
202-1および202-2 チャンバー
204 導管
206 イオントラップ
208 チップキャリア
210-1 ハウジング
210-2 ハウジング
212 表面
214 表面
216-1 シール
216-2 シール
218 ゲッター
220 インターポーザー
222 シールド
224 光信号
226 表面
300 方法
402 ポート
404 ポート
406 ポート
408 ワイヤボンドパッド
410 ワイヤボンドパッド
500 処理システム
502 ロードロック
504 サンプルパーキングステージ
506 表面処理および解析サブシステム
508 パッケージングサブシステム
510 堆積サブシステム
512 トロリーサブシステム
600 エンクロージャ
602 ソース
604 るつぼ
606 レーザー
608 アブレーションビーム
610 原子フラックス
612 レーザー
614 レーザービーム
700 エンクロージャ
702 チャンバー
704 ソース
706 ハウジング
708 るつぼ
710 反射鏡
712 光路
800 エンクロージャ
802 チャンバー
804 イオンポンプ
806 ハウジング
808-1および808-2 サブチャンバー