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▶ ディズリン ファーマシューティカルズ アーベーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】レボドパ輸液
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/198 20060101AFI20220902BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220902BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20220902BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220902BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20220902BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220902BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220902BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220902BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20220902BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20220902BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20220902BHJP
   A61M 5/28 20060101ALI20220902BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20220902BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20220902BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220902BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
A61K31/198
A61K9/08
A61K31/192
A61K47/02
A61K47/04
A61K47/12
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/40
A61M5/142
A61M5/24
A61M5/28
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/28
A61P43/00 121
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020516960
(86)(22)【出願日】2018-06-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 EP2018064774
(87)【国際公開番号】W WO2018224501
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-05-21
(31)【優先権主張番号】1750707-0
(32)【優先日】2017-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519429266
【氏名又は名称】ディズリン ファーマシューティカルズ アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】エリクソン エリアス
(72)【発明者】
【氏名】ディズダー セグレル ニル
(72)【発明者】
【氏名】エールネボ マッツ
(72)【発明者】
【氏名】ブリング レイフ
【審査官】深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-505966(JP,A)
【文献】特表2012-527447(JP,A)
【文献】特表2007-504143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中枢神経系(CNS)の疾患の処置用の水性薬剤溶液であって、前記水性薬剤溶液が少なくとも5mg/mlの溶解レボドパ、ドーパ脱炭酸酵素(DDC)阻害剤カルビドパを含み、pHが3.0~8.5の範囲であり、前記溶液が、
a)レボドパ及びカルビドパを含む水性貯蔵溶液であって、前記水性貯蔵溶液のpHが25℃で2.8未満である前記水性貯蔵溶液と
b)少なくとも1種の緩衝剤成分を含み、pHが25℃で少なくとも4.0である、前記貯蔵溶液のpHを増加させるための水性緩衝溶液
を混合することによって供給され、
前記水性緩衝溶液及び前記水性貯蔵溶液は連続的に混合され、それによって得られた水性薬剤溶液は、前記水性貯蔵溶液と前記水性緩衝溶液の混合から2時間、1時間、30分、20分、10分、5分又は1分以内に前記中枢神経系(CNS)の疾患に苦しむ対象に連続的に投与されることを特徴とし、
中枢神経系の疾患は、パーキンソン病、非定型パーキンソニズム、アルツハイマー病、下肢静止不能症候群(RLS)からなる群から選択される、
水性薬剤溶液。
【請求項2】
前記水性薬剤溶液が医薬輸液または注射溶液である、請求項1に記載の水性薬剤溶液。
【請求項3】
前記水性薬剤溶液が経腸的または非経口的に投与される、請求項1または2に記載の水性薬剤溶液。
【請求項4】
前記投与は最大24時間連続である、請求項1から3のいずれか一項に記載の水性薬剤溶液。
【請求項5】
前記水性薬剤溶液が、少なくとも5mg/mlの溶解レボドパ、例えば少なくとも6、7、8、9、10、15若しくは20mg/mlの溶解レボドパを含み、好ましくはレボドパの濃度が5~20mg/mlの溶解レボドパ、例えば5~15mg/ml若しくは5~10mg/mlの溶解レボドパの範囲である、かつ/又は
前記水性薬剤溶液のpHが3.5~8.0、例えば4.0~7.5、4.5~7.0、5.0~5.5である、請求項1から4のいずれか一項に記載の水性薬剤溶液。
【請求項6】
前記水性貯蔵溶液が少なくとも10mg/mlのレボドパ、例えば少なくとも15、20、25、30、35又は40mg/mlのレボドパを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の水性薬剤溶液。
【請求項7】
前記水性貯蔵溶液が少なくとも1種の生理的に許容される酸を含み、
前記生理的に許容される酸が、好ましくは、塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸、又は酢酸である、請求項1から6のいずれか一項に記載の水性薬剤溶液。
【請求項8】
前記水性緩衝溶液のpHが少なくとも4.0であり、好ましくは前記水性緩衝溶液のpHが4.0~12、例えば4.0~9、4.0~7.5、4.0~6であり、かつ/又は
前記水性緩衝溶液が、少なくとも1つのpKa値が3~9の範囲、例えば5~7.5の範囲である少なくとも1種の緩衝剤成分を含み、
好ましくは、前記緩衝剤成分が、アジピン酸、ホウ酸、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸カルシウム、ジエタノールアミン、グリシン、マレイン酸、メグルミン、メチオニン、グルタミン酸モノナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム二水和物、乳酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム若しくはこれらの2種以上の混合物であり、
より好ましくは、前記緩衝剤成分が、クエン酸、クエン酸及びホスファート、並びにトロメタモール(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)からなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の水性薬剤溶液。
【請求項9】
前記水性緩衝溶液が更に少なくとも1種の可溶化剤を含み、
好ましくは、前記可溶化剤が、グルタチオン、システイン、HP-ベータ-シクロデキストリン、N-メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMA)、Collidone、Kolliphor HS15、PEG400、プロピレングリコール、ポリソルベート80、グリセリン、エタノール、Cremophor EL、DMSO、メチオニン、EDTA、アスコルビン酸、アスパラギン酸、塩化ベンザルコニウム、安息香酸ベンジル、塩化セチルピリジニウム、ヒドロキシプロピルベータデクス、レシチン、マクロゴール15ヒドロキシステアラート、メグルミン、リン脂質、ポロクサマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ピロリドン、トリオレイン、ビタミンEポリエチレングリコールスクシナート又はこれらの2種以上の混合物からなる群から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の水性薬剤溶液。
【請求項10】
前記水性緩衝溶液が更に少なくとも1種の安定剤を含み、前記安定剤が安定化剤、抗酸化剤及び防腐剤又はそれらの組合せからなる群から選択され、
好ましくは、前記安定化剤が生理的に許容される糖、例えばグルコースであり、かつ/又は前記安定化剤が、ベントナイト、アルギン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、セラトニア、シクロデキストリン、デキストラン、ジエタノールアミン、エチレングリコールパルミトステアラート、フルクトース、モノステアリン酸グリセリン、レシチン、マクロゴール15ヒドロキシステアラート、マンニトール、モノエタノールアミン、プロピレングリコール、酢酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、ソルビトール、スルホブチルエーテルベータ-シクロデキストリン、トレハロース又は酢酸亜鉛からなる群から選択され、かつ/又は
好ましくは、前記抗酸化剤が、アルファトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール、クエン酸一水和物、エリソルビン酸、リンゴ酸、メチオニン、モノチオグリセロール、ペンテト酸、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムからなる群から選択され、かつ/又は
好ましくは、前記防腐剤が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ホウ酸、ブロノポール、ブチレングリコール、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム五水和物、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、クロロクレゾール、クエン酸一水和物、クレゾール、エデト酸、パラヒドロキシ安息香酸エチル、グリセロール、イミド尿素、パラヒドロキシ安息香酸メチル、モノチオグリセロール、フェノール、フェノキシエタノール及びフェニルエチルアルコールからなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の水性薬剤溶液。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の水性薬剤溶液を供給するためのキットであって、前記水性薬剤溶液が少なくとも5mg/mlの溶解レボドパ、ドーパ脱炭酸酵素(DDC)阻害剤カルビドパを含み、pHが3.0~8.5の範囲であり、前記キットが、
a)レボドパ及びカルビドパを含みpHが25℃で2.8未満である請求項1から10のいずれか一項に記載の水性貯蔵溶液、
b)前記水性貯蔵溶液のpHを増加させるための、請求項1から10のいずれか一項に記載の水性緩衝溶液であって、緩衝剤を含み、pHが25℃で少なくとも4.0である水性緩衝溶液、
c)前記溶液a)とb)を混合するための混合手段(1)、及び
d)ステップc)の前記混合溶液のための出力手段(2)
を含む、キット。
【請求項12】
前記出力手段(2)が注射若しくは注入手段(20)を含む、又は注射若しくは注入手段(20)に接続される、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
前記混合手段(1)が2つの区画(3A、3B)、ポンプ(4)及び混合室(10)を含み、第1の区画(3A)が前記水性貯蔵溶液を含む容器を受ける手段を含み、第2の区画(3B)が前記水性緩衝溶液を含む容器を受ける手段を含み、前記ポンプ(4)が前記水性貯蔵溶液及び前記水性緩衝溶液を前記区画(3A、3B)から前記混合室(10)に移送するように配置され、前記混合室(10)が前記受けた水性貯蔵溶液と前記受けた水性緩衝溶液の混合に備えるように配置され、前記ポンプ(4)が、更に、前記混合水性薬剤溶液を前記混合室から前記出力手段(2)に移送するために配置された、請求項11又は12に記載のキット。
【請求項14】
前記混合室(10)が、それぞれ前記水性貯蔵溶液及び前記水性緩衝溶液を含む前記区画(3A、3B)に管を使用せずに直接接続された、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
前記混合室(10)が2方向Y連結器(11)、好ましくはY’連結器セット2方向である、又は
前記混合室(10)が前記2つの溶液を混合するための螺旋形流路(12)を備える、又は
前記混合室(10)がベンチュリ混合器(13)を備える、又は
前記混合室(10)がピストン、スクリュー、プロペラ、類似装置などの電動混合ツール(14)を含む、
請求項13又は14に記載のキット。
【請求項16】
前記キットが、前記ポンプ(単数又は複数)(4)の流量の制御を可能にする、前記ポンプ(単数又は複数)(4)を制御するための制御手段(7)を更に含む、請求項13から15のいずれか一項に記載のキット。
【請求項17】
連続的な非経口または経腸投与に適した水性薬剤溶液を連続的に調製する方法であって、
レボドパおよびドーパ脱炭酸酵素(DDC)阻害剤カルビドパを含み、pHが25℃で2.8未満である貯蔵溶液の流れと、pHが25℃で少なくとも4.0である水性緩衝溶液の流れを連続的に混合するステップ、
前記混合から、少なくとも5mg/mlの溶解レボドパ、ドーパ脱炭酸酵素(DDC)阻害剤カルビドパ、例えば少なくとも6、7、8、9、10、15、または20mg/mlの溶解レボドパを含み、pHが3.0~8.5の範囲である水性薬剤溶液の連続流を連続的に得るステップであって、好ましくはレボドパの濃度が5~20mg/mlの溶解レボドパ、例えば5~15mg/ml又は5~10mg/mlの溶解レボドパの範囲であるステップ
を含む、方法。
【請求項18】
前記水性薬剤溶液のpHが3.5~8.0、例えば4.0~7.5、4.5~7.0、5.0~5.5である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記水性貯蔵溶液が少なくとも10mg/mlのレボドパ、例えば少なくとも15、20、25、30、35又は40mg/mlのレボドパを含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記水性貯蔵溶液が少なくとも1種の生理的に許容される酸を含み、前記生理的に許容される酸が、好ましくは、塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸、又は酢酸である、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記水性緩衝溶液のpHが少なくとも4.0であり、好ましくは前記水性緩衝溶液のpHが4.0~12、例えば4.0~9、4.0~7.5、4.0~6であり、かつ/又は前記水性緩衝溶液が、少なくとも1つのpKa値が3~9の範囲、例えば5~7.5の範囲である少なくとも1種の緩衝剤成分を含み、
好ましくは、前記緩衝剤成分が、アジピン酸、ホウ酸、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸カルシウム、ジエタノールアミン、グリシン、マレイン酸、メグルミン、メチオニン、グルタミン酸モノナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム二水和物、乳酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウムなど、又はこれらの2種以上の混合物であり、
より好ましくは、前記緩衝剤成分が、クエン酸、クエン酸及びホスファート、並びにトロメタモール(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)からなる群から選択される、請求項17から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記水性緩衝溶液が更に少なくとも1種の可溶化剤を含み、
好ましくは、前記可溶化剤が、グルタチオン、システイン、HP-ベータ-シクロデキストリン、N-メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMA)、Collidone、Kolliphor HS15、PEG400、プロピレングリコール、ポリソルベート80、グリセリン、エタノール、Cremophor EL、DMSO、メチオニン、EDTA、アスコルビン酸、アスパラギン酸、塩化ベンザルコニウム、安息香酸ベンジル、塩化セチルピリジニウム、ヒドロキシプロピルベータデクス、レシチン、マクロゴール15ヒドロキシステアラート、メグルミン、リン脂質、ポロクサマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ピロリドン、トリオレイン、ビタミンEポリエチレングリコールスクシナート又はこれらの2種以上の混合物からなる群から選択される、請求項17から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記水性緩衝溶液が更に少なくとも1種の安定剤を含み、前記安定剤が安定化剤、抗酸化剤及び防腐剤又はそれらの組合せからなる群から選択され、
好ましくは、前記安定化剤が生理的に許容される糖、例えばグルコースであり、かつ/又は前記安定化剤が、ベントナイト、アルギン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、セラトニア、シクロデキストリン、デキストラン、ジエタノールアミン、エチレングリコールパルミトステアラート、フルクトース、モノステアリン酸グリセリン、レシチン、マクロゴール15ヒドロキシステアラート、マンニトール、モノエタノールアミン、プロピレングリコール、酢酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、ソルビトール、スルホブチルエーテルベータ-シクロデキストリン、トレハロース又は酢酸亜鉛であり、かつ/又は
好ましくは、前記抗酸化剤が、アルファトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール、クエン酸一水和物、エリソルビン酸、リンゴ酸、メチオニン、モノチオグリセロール、ペンテト酸、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムからなる群から選択され、かつ/又は
好ましくは、前記防腐剤が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ホウ酸、ブロノポール、ブチレングリコール、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム五水和物、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、クロロクレゾール、クエン酸一水和物、クレゾール、エデト酸、パラヒドロキシ安息香酸エチル、グリセロール、イミド尿素、パラヒドロキシ安息香酸メチル、モノチオグリセロール、フェノール、フェノキシエタノール及びフェニルエチルアルコールからなる群から選択される、請求項17から22のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続非経口又は経腸投与に適したレボドパ溶液からなる中枢神経系の疾患の処置のための医薬品、及び前記溶液を投与するのに適した投与系に関する。
【背景技術】
【0002】
ドパミン[3,4-ジヒドロキシフェニルエチルアミン]は、脳及び体において幾つかの重要な役割を果たすカテコールアミン及びフェネチルアミン系の有機物質である。脳では、ドパミンは、ニューロン(神経細胞)によって放出される神経伝達物質として機能する。脳は、幾つかの異なるドパミン経路を含み、ドパミンは、運動、注意、気分、意欲などの中枢神経系の機能の幾つかに重要である。神経系の幾つかの疾患、例えば、パーキンソン病は、ドパミン系の機能不全に関連し、使用される重要な薬物療法の幾つかは脳のドパミンレベルを調節するものである。
【0003】
パーキンソン病(PD:Parkinson’s disease)はよく見られ、西側世界では10,000人のうち約15人が罹患する。発症年齢は、通常、55~60歳である。疾患は、黒質線条体ニューロンの大量損失とそれに続くドパミン欠乏に起因する硬直、振戦及び運動緩徐(運動不足)を特徴とする。その後、疾患の過程で認知及び行動上の問題が生じ得る。パーキンソン病の症候は、ドパミン神経の約80%が失われると出現する。
【0004】
ノーベル賞受賞者Arvid Carlssonは、天然アミノ酸レボドパ(L-dopa)が脳に達するとドパミンに変換されることを1950年代後半に発見した。レボドパは、それ以来今でもPDの処置の「基準」である。PDに苦しむ患者のレボドパ処置は、社会において機能する患者の能力及びその生活の質を改善し、個人的費用と社会的費用の両方を削減する。レボドパは、神経伝達物質ドパミン、ノルエピネフリン及びエピネフリンの前駆体である。疾患の初期段階におけるドパミン神経の大量損失にもかかわらず、十分な貯蔵能力がまだ維持され、レボドパ錠剤の経口摂取においてシナプス間隙にドパミンを一様に放出することができる。
【0005】
残念ながら、薬物動態学的及び薬力学的問題(オンオフ症候)が、数年のレボドパ経口投与後に発生する。オンオフ症候は、約5年間の経口投与後に運動障害(不随意運動)から無動症(可動性の完全な欠如)までの運動症状の変動の形で生じる。オンオフ症候は、疾患の過程で悪化する。研究者らは、オンオフ症候がレボドパを投与する方法に起因する可能性が高いと考えている。より具体的には、経口投与によるレボドパの断続的投与は、ドパミン作動性ニューロンの変性と一緒に、オンオフ症候の発生の主因であると考えられる。断続的経口投与は、最終的に、レボドパ治療窓を狭め、経口投与をより一層問題なものにする。レボドパのより連続的な投与がPD患者に有益であるというのが共通の見解である。
【0006】
Shoulsonらは、レボドパの連続投与がオンオフ症候に有益な効果を有することを既に1979年に示した。非経口投与は、連続投与を得る好ましい方法であろう。問題は、十分高いレボドパ濃度の生理的に許容される輸液を製造し、十分に少ない量で提供し、連続非経口投与に適切なものにすることが不可能であったことである。Shoulsonらによって行われた実験では、患者に1日当たり数リットルが投与された。心臓は、こうした多量の注入をいかなる長期間にわたっても処理することができない。
【0007】
生理的に許容される輸液のレボドパ濃度を高める多数の試みが30年間なされたが、明確に成功したものはない。研究者らは、連続非経口投与において許容される、又は少なくとも望ましい、pH値において0.5~1.0mg/mlの範囲を超える濃度でレボドパが沈殿するという主要な問題に直面した。0.5~1.0mg/mlの範囲のレボドパ濃度は、通常は1日当たり約1000mgの経口レボドパを必要とするPDの後期の患者で1日当たり1~2リットルの量になる。こうした量を長期間非経口的に連続投与することはできない。
【0008】
医薬品有効成分(API:Active Pharmaceutical Ingredient)が沈殿した輸液は、医薬品として容認されない。非経口投与用輸液は、完全に透明で、粒子のない状態でなければならない。
【0009】
レボドパ分子は、極めて低いpH値(一般にpH<3)と極めて高いpH値(一般にpH>9)の両方で一般に安定であり、容易に可溶であり、これらのpH範囲では5mg/mlを超えるレボドパ濃度を得ることができる。その結果、pH値の低い安定なレボドパ溶液(例えば、特許文献1に示された貯蔵溶液)、並びにどちらもpH>9のレボドパ溶液を記載した特許文献2及び特許文献3に示されたpH値の極めて高いレボドパ溶液が当該技術分野で知られている)。
【0010】
pH<3の輸液は、連続非経口投与には適さないが、重篤な有害な全身性アシドーシス及び有害な皮膚作用(小節)を招くであろう。pH>9の輸液も重篤な小節などの有害な皮膚作用に関係する。さらに、pH>9の輸液は、非経口注入すると、心不整脈(不規則な心拍動)などの有害な全身作用を起こし得る。さらに、10mg/ml又はそれ以上の濃度で長期間安定であるために輸液に必要なpH>9の皮下注入用の輸液は、皮下組織で極めて不十分に分布し、例えばPDが有効な様式で処置されるのを妨げる。
【0011】
連続非経口用レボドパ輸液は、更に好ましくは、体循環におけるレボドパの代謝を抑制する阻害剤を含むべきである。カルビドパは、経口レボドパ処置に頻繁に使用される阻害剤である。カルビドパなどの阻害剤を含有する輸液の量は、30~50%削減することができ、それでもカルビドパを含まない対応するレボドパ溶液と同じ臨床効果を有する。
【0012】
APIレボドパ及びカルビドパなどの阻害剤を含有する輸液は、医薬品として登録可能になり、したがってPDに苦しむ患者に利用可能になる幾つかの厳密な条件を満たす必要がある。医薬品の製造時点からそれが患者に投与される時点までのAPIの分解は、所定の限度内になければならない。多くの場合、各APIの濃度の低下は、その最初の値の10%未満でなければならない。さらに、いかなる毒性代謝産物の含有量でもある規定値内になければならない。したがって、一般に注入投与用の生理学的pHにおいて水溶液中で分解するAPIを首尾よく処方することは厳しい要求である。
【0013】
どんな有害作用も、当該医薬品で処置される患者の利点を考慮して正当化され得るものを侵害してはならない。
【0014】
先行技術は、医薬品として認可されるための要件を満たす、オンオフ症候の最大限の低減のためにPD患者を個々に処置可能にする血漿への十分な取り込みがなされる、連続皮下注入に適したレボドパ及びカルビドパを含有する溶液を提供することができなかった。
【0015】
したがって、オンオフ症候の最大限の低減のためにPD患者を個々に処置可能にする十分な皮下吸収を有し、同時に有害作用が最小限である、連続皮下注入に適したレボドパ及びカルビドパを含有する医薬品が大いに必要とされる。さらに、好ましくは最高1年以上の、長い品質保持期間を有するこうした医薬品が必要である。
【0016】
1970年代後半に、特許文献2は、注射用のレボドパ濃度が最高15mg/mlの物理的に安定なレボドパ溶液を調製する方法を紹介した。その明細書によれば、溶液は極めて高いpHで安定であったが、これはレボドパの化学的性質を考慮すれば予想されることでもある(更に以下を参照されたい)。示された強塩基性(pH約9)注射液は、レボドパ濃度を最高15mg/mlにすることができた。濃度を15mg/mlにするために、注射液はゲルと混合された。ゲル中で混合された注射液は、非経口投与用ではないが、経口又は経腸注射に有利に使用することができる。非経口投与用溶液は、粒子を含んではならず、懸濁液であってはならない(ゲルを含むことができない)。示された注射液はすべて強塩基であった。強塩基性輸液の欠点については本明細書で上述した。
【0017】
1990年代初期、連続経腸投与用レボドパ溶液が示された。溶液を懸濁液の形にすることで約20mg/mlのレボドパ濃度が得られたが、溶液を非経口投与に使用することはできない。溶液Duodopaは、腸から血流を介して脳に至るまでのレボドパの代謝を抑えるカルビドパも含んだ。阻害剤の使用はよく知られており、レボドパの臨床用途のほとんどで使用される。Duodopaの主要な欠点は、使用するのに処置の開始時に外科的処置を必要とすることである。十二指腸を介した連続投与とは、腹壁を通過するプローブを使用しなければならないことを意味し、厄介な副作用が好発する。炎症が腹壁の小孔及びその周囲に頻繁に発生する。プローブは、時には移動し、ずれると新たな外科的介入が必要である。ゲルベースの懸濁液は高粘度であるので、プローブを通してゲルを圧送するのに強力なポンプを必要とし、したがって投与系は重く、扱いにくくなる。耐久性が限られ、更なる欠点になる。未開封パッケージの品質保持期間は3か月を超えず、これは、物流的欠点及びより高価な生成物を意味する。
【0018】
2000年代初期、非経口投与用レボドパ輸液が開発されてブレークスルーがなされた(特許文献1)。該特許は、pH範囲4~6におけるレボドパ濃度約5mg/mlの非経口投与用レボドパ溶液を開示する。該特許は、カルビドパなどの任意の阻害剤を含む方法を教示していない。示された輸液は静脈内注入には有用であり得るが、阻害剤を含まない5mg/mlの濃度は、連続皮下注入によるオンオフ症候の臨床処置には多すぎる量になる。該特許によれば、輸液は、最高3日間物理的に安定であった。3日間を超えない品質保持期間は、輸液の実用を制限する。
【0019】
特許文献4は、レボドパを10mg/ml以上の濃度でpH6以下で連続非経口投与するための輸液を記載している。特許文献4に係る発明の一目的は、レボドパの沈殿を回避することである。記載された溶液は、カルビドパなどの阻害剤を含んでもよい。カルビドパのような阻害剤は、体循環中のレボドパの代謝を抑制し、脳に到達するレボドパの量を増加させる。次に、こうした輸液の量を、阻害剤を含まない輸液よりも最高50%低減することができる。1mg/mlのカルビドパを含む10mg/mlのレボドパ溶液がpH3.5~4.0の範囲で少なくとも3日間物理的に安定であった例が該出願に記載されている。前記溶液が3日を超えて物理的に安定であり得るかは不明である。物理的安定性の短い輸液は、重大な物流問題を伴い、実際に、医用薬物として使用するのに実用的でない製品になり得る。APIの化学的安定性についての情報が見つからず、毒性代謝産物の量についての情報も見つからない。当該明細書は、溶液が規制要件を満たす医薬品として分類され得るかどうかの判定を可能にする溶液の性質について十分な情報を含まない。
【0020】
特許文献3は、pHが25℃で9.1~9.8の範囲である阻害剤カルビドパを含む少なくとも4重量パーセント(少なくとも約40mg/ml)のレボドパを含有する輸液を記載している。前記特許に記載の輸液生成物は、特許文献2に記載のそれ以前の生成物よりもはるかに高いpH値を有する。レボドパ及びカルビドパの化学的性質から、これらの成分が極めて高い(及び極めて低い)pH値で良好な化学的安定性を有することになり、これは、特許文献2に記載の高いpH値でレボドパを用いた実験で得られた結果も説明する。しかし、特に非経口投与では、こうした高いpH値を有する溶液に付随する幾つかの問題がある。
【0021】
(8~9を超える)高いpH値の輸液及び注射液は、皮下吸収が少ない。後者は、特許文献3に基づく生成物である生成物ND062で行われた臨床試験で確認され、約6時間の連続皮下注入後に初めて血漿中で約1,200ng/mlのレボドパ濃度に達し、8時間の持続注入まで最大値約1,300ng/mlに達しなかった。疾患の後期のPD患者で治療レベルに本当に達したかどうかは不明である。その結果、疾患の後期のPD患者が前記特許出願に記載の輸液で処置されるときには、阻害剤又は阻害剤と組み合わせたレボドパの経口摂取が追加として推奨される。比較として、治療効果を得るのに必要な血漿中のレボドパ濃度は、Duodopaの臨床試験に参加した後期のPD患者で平均して1,600ng/mlであった。pH値の極めて高い輸液の別の欠点は、本明細書に既述されている。
【0022】
連続非経口又は経腸投与(特に連続皮下注入)に適した、pH値が3.0~8.5の範囲であり(有害な皮膚作用が最小限であり、心不整脈のような全身的有害作用がたとえあるとしてもわずかであり、皮下吸収が多い)、医療当局によって示された厳密な規則を満たして(APIの分解及び毒性副生物のレベルが規定値内にある)医薬品としての認可が可能になる、レボドパ及び少なくとも1種の阻害剤を含む生成物については、当該技術分野において以前に、本発明の前に、教示されていない。その結果、当該技術分野においてこれまで示された非経口投与用輸液で医薬品として首尾よく登録されたものはない。これは、こうした生成物が大いに必要とされることにもかかわらずである。したがって、本発明が大いに必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【文献】特許SE512655
【文献】日本特許第54105221号
【文献】国際公開第2012/066538A1号
【文献】特許出願PCT/SE2005/001135
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0024】
したがって、本発明は、好ましくは、当該技術分野で記述された生成物の上記欠陥及び欠点の1つ以上を単独で又は任意の組合せで軽減、改善又は排除しようとするものであり、混合直後に投与される、溶液の即座の混合を可能にする貯蔵溶液と緩衝溶液の処方を提供し、薬学的に許容される輸液を提供することによって、上記問題を解決するものである。一部の実施形態においては、処方は、本発明に係る「オンライン」混合手法を可能にし、指定の貯蔵溶液と緩衝溶液が連続的に混合され、生成した輸液が混合場所から注入部位に連続的に移送され、そこで薬剤輸液が非経口又は経腸の経路を介して最高24時間患者に連続投与される。これは、連続皮下注入による投与に特に好都合であり、オンライン混合によって薬剤輸液のpHを4.5~6.5の範囲にすることができ、輸液は安定性が低いが、皮下分布(血中へのAPIの吸収)が最適である。さらに、オンライン混合及びAPIの対応する低分解の結果、輸液中のヒドラジンなどの毒性副生物の含有量が極めて低くなり、医薬品としてのその承認に寄与する。本発明の溶液の固有の性質によってオンライン混合、続いてオンライン投与が可能になるので、APIのあらゆる分解は、薬事規制の許容限界(APIの最初の濃度の15%未満の分解など)内に十分収まる。これは、過飽和溶液、準安定溶液などの沈殿のリスクがある溶液の投与も可能にする。したがって、本発明の第1の態様によれば、中枢神経系(CNS)の疾患の処置に使用される水性薬剤溶液であって、溶液が少なくとも5mg/mlの溶解レボドパを含み、溶液のpHが3.0~8.5の範囲であり、溶液が、a)レボドパを含み、pHが25℃で2.8未満である水性貯蔵溶液とb)少なくとも1種の緩衝剤成分を含み、pHが25℃で少なくとも4.0である、前記貯蔵溶液のpHを増加させるための水性緩衝溶液を混合することによって供給され、水性貯蔵溶液と水性緩衝溶液の混合から24時間以内、例えば16時間、12時間、6時間、4時間、2時間、1時間、30分、20分、10分、5分又は1分以内に水性薬剤溶液が中枢神経系(CNS)の疾患に苦しむ対象に投与される、水性薬剤溶液が提供される。
【0025】
さらに、中枢神経系(CNS)の疾患の処置に使用される水性薬剤溶液であって、少なくとも5mg/mlの溶解レボドパを含み、pHが3.0~8.5の範囲であり、前記水性薬剤輸液又は注射液がレボドパで過飽和している、水性薬剤溶液が提供される。
【0026】
レボドパの安定性は、濃度が増加すると低下する。したがって、より希薄な製剤がより長期間物理的に安定であり得る。一部の実施形態においては、薬剤溶液は、最高10mg/mlのレボドパを含み、貯蔵溶液と緩衝溶液の混合の24時間以内に投与される。これらの実施形態は、注射又は注入用に処方することができる。
【0027】
更なる実施形態においては、レボドパの濃度は、過飽和点まで増加させることができる。10mg/mLより高いレボドパ濃度では、レボドパの沈殿がより急速に観察され、極めて高い濃度では、沈殿が20分以内に観察され得る。過飽和溶液の物理的安定性がより低いため、オンライン混合を使用して、溶液が沈殿又は分解する前に、溶液を患者に迅速に投与することができる。オンライン混合の使用によって、水性貯蔵溶液と水性緩衝溶液の連続混合、続いて生成した水性薬剤溶液の連続投与が可能になり、輸液が混合ポイントから注入部位に、一般にプラスチック管を介して移送され、2時間以内などに患者に投与される。(特定の処方で)APIの分解が許容限度に達する期間が2時間より短い場合、混合から注入までの移送時間を短縮することができる。一部の実施形態においては、水性薬剤溶液は、したがって、水性貯蔵溶液と水性緩衝溶液の混合から1.5時間、1時間、50分、40分、30分、20分、10分、5分又は1分以内に投与される。
【0028】
さらに、一実施形態によれば、水性貯蔵溶液は、少なくとも1種の生理的に許容される酸を含む。水性貯蔵溶液は、更に少なくとも1種の安定剤を含むことができる。さらに、ある実施形態によれば、水性薬剤溶液は、更に少なくとも1種の酵素阻害剤を含む。水性緩衝溶液は、更に少なくとも1種の安定剤を含むことができる。水性緩衝溶液は、更に少なくとも1種の可溶化剤を含むことができる。
【0029】
本発明の好ましい一実施形態によれば、水性薬剤溶液が提供され、溶液は、
I)
a)滅菌水、
b)レボドパ、
c)少なくとも1種の酵素阻害剤、
d)少なくとも1種の生理的に許容される酸、
e)少なくとも1種の安定剤
を含むpHが25℃で2.8未満の水性貯蔵溶液と、
ここで、貯蔵溶液は混合後に窒素バブリングされる、
II)
f)滅菌水、
g)少なくとも1種の緩衝剤成分、
h)少なくとも1種の安定剤及び/又は可溶化剤
を含むpHが25℃で少なくとも4.0の水性緩衝溶液と
を混合することによって供給され、
水性薬剤溶液が場合によっては過飽和であり、水性貯蔵溶液と水性緩衝溶液の混合から24時間以内、例えば16時間、12時間、6時間、4時間、2時間、1時間、30分、20分、10分、5分又は1分以内に水性薬剤溶液が中枢神経系(CNS)の疾患に苦しむ対象に投与される。
【0030】
さらに、本発明の別の一態様によれば、中枢神経系(CNS)の疾患の処置に使用される水性薬剤溶液を供給するためのキットが提供され、溶液は、少なくとも5mg/mlの溶解レボドパを含み、pHが3.0~8.5の範囲であり、前記キットは、a)先行請求項のいずれか一項に記載のレボドパを含みpHが25℃で2.8未満である水性貯蔵溶液、b)前記貯蔵溶液のpHを増加させるための、先行請求項のいずれか一項に記載の水性緩衝溶液であって、緩衝剤を含み、pHが25℃で少なくとも4.0である水性緩衝溶液、c)前記溶液a)とb)を混合するための混合手段(1)、及びd)ステップc)の前記混合溶液のための出力手段(2)を含む。
【0031】
さらに、水性薬剤溶液を供給するためのセットであって、I)a)滅菌水、b)レボドパ、c)少なくとも1種の酵素阻害剤、d)少なくとも1種の生理的に許容される酸、及びe)少なくとも1種の安定剤を含むpHが25℃で2.8未満の水性貯蔵溶液と、II)f)滅菌水、g)少なくとも1種の緩衝剤成分、及びh)少なくとも1種の安定剤及び/又は可溶化剤を含むpHが25℃で少なくとも4.0の水性緩衝溶液とを含む、セットが提供される。
【0032】
本発明の別の一態様によれば、前述の水性薬剤溶液を連続的に調製する方法が提供される。該方法は、前述の貯蔵溶液の流れと前述の緩衝溶液の流れを連続的に混合するステップを含む。これは、前述のキットの使用を含むことができる。
【0033】
本発明の別の一態様によれば、中枢神経系(CNS)の疾患の処置に使用される水性薬剤溶液を連続的に調製する方法が提供され、水性薬剤溶液は、連続非経口又は経腸投与に適しており、該方法は、レボドパを含み、pHが25℃で2.8未満である貯蔵溶液の流れと、pHが25℃で少なくとも4.0である水性緩衝溶液の流れを連続的に混合するステップ、及び少なくとも5mg/mlの溶解レボドパ、例えば少なくとも6、7、8、9、10、15又は20mg/mlの溶解レボドパを含む水性薬剤溶液の連続流を前記混合ステップから連続的に得るステップであって、好ましくはレボドパの濃度が5~20mg/mlの溶解レボドパの範囲、例えば5~15mg/ml又は5~10mg/mlの溶解レボドパの範囲であるステップを含む。
【0034】
本発明の別の一態様によれば、中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法であって、レボドパを含み、pHが25℃で2.8未満である水性貯蔵溶液の流れと、pHが25℃で少なくとも4.0である水性緩衝溶液の流れを連続的に混合するステップ、少なくとも5mg/mlの溶解レボドパ、例えば少なくとも6、7、8、9、10、15又は20mg/mlの溶解レボドパを含む水性薬剤溶液の連続流を前記混合ステップから連続的に得るステップであって、好ましくはレボドパの濃度が5~20mg/mlの溶解レボドパの範囲、例えば5~15mg/ml又は5~10mg/mlの溶解レボドパの範囲であるステップ、及び中枢神経系(CNS)の疾患に苦しむ対象に得られた水性薬剤溶液を連続投与するステップを含む方法が提供される。
【0035】
本発明の別の一態様によれば、中枢神経系(CNS)の疾患の処置に使用される1種以上の医薬品有効成分(API)を含有する水性薬剤溶液が提供され、該水性薬剤溶液は、
a1.少なくとも5mg/mlのAPIレボドパ、又は
a2.少なくとも5mg/mlのAPIレボドパ及び阻害剤の群に属する少なくとも0.25mg/mlの少なくとも1種のAPI、例えばカルビドパを含み、pHが3.0~8.5の範囲であり、該水性薬剤溶液は、
a)1種以上のAPIを含む水性貯蔵溶液であって、pHが25℃で2.8未満である水性貯蔵溶液と、
b)少なくとも1種の緩衝剤成分を含み、pHが25℃で少なくとも4である、前記貯蔵溶液のpHを調節するための水性緩衝溶液
を混合することによって供給され、
水性薬剤溶液はCNS疾患に苦しむ対象に投与され、任意のAPIの濃度の低下が混合前のその濃度の15%を超えない限り、投与が開始され、継続される。
【0036】
この方法によって、前述のCNS疾患のいずれかを任意の前述の投与経路によって処置することができる。
【0037】
本発明の更なる有利な特徴を本明細書に開示する実施形態で詳述する。さらに、本発明の有利な特徴は、従属請求項に定義されている。
【0038】
本発明が可能とするこれら及び他の態様、特徴及び利点は、添付図面を参照して、本発明の実施形態の以下の記述から明白であり、明らかになるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】計算されたpKa値が分子の各中央部に示されたレボドパの構造図である。
図2】pH4~7の範囲における支配的な構造を有するレボドパの構造図である。
図3】計算されたpKa値が分子の各中央部に示されたカルビドパの構造図である。
図4】pH約5における支配的な構造を有するカルビドパの構造図である。
図5】pHに対するレボドパの計算された小種(micro-species)分布を示す図であり、y軸は、総量に対する各分子形態のモル百分率を表し、x軸はpHである。
図6】pHに対するカルビドパの計算された小種分布を示す図であり、y軸は、総量に対する各分子形態のモル百分率を表し、x軸はpHである。
図7】異なるpHにおけるレボドパに対して得られた(オクタノール-水分配係数logDで表される)有機相と水相の計算分配(D)を示す図である。
図8】異なるpHにおけるレボドパに対して得られた(mol/l単位で測定された溶解度の常用対数logSで表される)計算された溶解度を示す図である。
図9】異なるpHにおけるカルビドパに対して得られた(オクタノール-水分配係数logDで表される)有機相と水相の計算された分配(D)を示す図である。
図10】異なるpHにおけるカルビドパに対して得られた(mol/l単位で測定された溶解度の常用対数logSで表される)計算された溶解度を示す図である。
図11】キットの略図であり、キットは、重力送りであり(11A)、1台のポンプ(11B)又は2台のポンプ(11C)を含み、11Dでは適切な混合手段の例が示される。
図12】臨床試験暫定研究の要約した結果を示す図であり、投与中の患者の血液中の(a)レボドパ及び(b)カルビドパの血中濃度をモニターし、処置時間に対してプロットした。
図13】臨床試験の結果を示す図であり、連続皮下注入用のレボドパ-カルビドパ溶液を使用し、輸液のpHは9を超える。投与中の患者の血液中のレボドパの血中濃度をモニターし、処置時間に対してプロットした。
図14】3名の患者の臨床試験暫定研究の結果を示す図であり、(a)皮下及び(b)静脈内注入中の患者の血漿中のレボドパの血中濃度をモニターし、処置時間に対してプロットした。
図15】穿孔可能な障壁で分離された1個のバッグ中の2つの部分として圧縮される貯蔵溶液及び緩衝溶液用の区画を有するバッグの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下の記述は、連続非経口投与に適したレボドパ輸液又は注射液を含む中枢神経系(CNS)の疾患の処置用の生成物、及び輸液又は注射液をCNS疾患に苦しむ患者に投与するのに適した投与系に適用可能な本発明の一実施形態に焦点を合わせる。
【0041】
医薬品として登録されるための製品要件を満たす、連続非経口投与を可能にするのに十分な高濃度のレボドパを含有しpHが3.0~8.5の範囲である溶液を製造する方法はこれまで記述されなかった。同様に、既存の製品を上回る本発明の前記効果を有する経腸投与用注射液も示されなかった。
【0042】
特許文献4は、3日間以上物理的に安定であり(沈殿なし)、pH値が6以下である、濃度が少なくとも10mg/mlのレボドパを含有する生理的に許容される輸液を得る方法を記述する。しかし、出願における例は、pHが4未満の溶液に限定されている。しかし、当該出願に示されるように、この生成物は、化学的安定性が不十分である(レボドパとカルビドパの両方の分解が速過ぎて、医薬品として承認されない)。化学分解は、生成物が医薬品として分類されるのを妨げる毒性分解生成物も生成し、すなわち、医薬品として認可されないであろう。化学的不安定性に関するこのこれまで未知の問題に対処するために、本発明は、APIの分解が規定値内に十分ある薬学的に実行可能な生成物、及びこうした生成物を製造し、投与する方法を示す。さらに、本発明のいずれの毒性副生物の含有量も規定値内である。さらに、混合して本発明の水性薬剤溶液を生成する水性貯蔵溶液と水性緩衝溶液は、品質保持期間が少なくとも1年であり、これは、明らかな物流上の利点を意味する。本発明の生成物及び方法は、連続投与も可能にする。こうした連続投与は、各患者に投与されるレボドパの用量を調節して、治療レベルを達成し、オンオフ作用を最小限にする利点がある。
【0043】
医用薬物の製品要件を満たし、溶液を連続非経口投与に適したものにする十分高いレボドパ濃度を有する、pH値が3.0~8.5の範囲の溶液の開発は、決して自明ではない。レボドパは、好ましいpH範囲(pH=3.0~8.5)における溶解度が極めて低く、沈殿しやすいので、連続非経口投与に適したものにする十分高いレボドパ濃度を有する医薬製剤を調製することが困難である。レボドパの構造を、分子の各中央部に示された計算pKa値と一緒に図1に示す。溶液のpHに応じて、これらの中央部はプロトン化又は脱プロトン化される。レボドパの計算小種分布を図5に示し、Y軸は、(総量に対する)各分子形態の百分率を表し、X軸はpH値である。各中央部のpKa値は、示した小種分布を生じる。図2に、pH4~7における水中のレボドパの最も支配的な構造を示す。図2に示したように、レボドパは、このpH区間では主に非荷電(中性)である。
【0044】
ドーパ脱炭酸酵素阻害剤;芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素阻害剤(DDCI)は、酵素芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素によってドパミンの合成を阻害する化合物である。保護性血液脳関門(BBB:blood-brain-barrier)を横断することができない末梢性DDCIは、有害副作用を抑制するためにレボドパからドパミンへの末梢性転換を阻止することによってパーキンソン病(PD)の処置においてレボドパの増大に使用される。こうしたドーパ脱炭酸酵素阻害剤の例は、カルビドパ、ベンセラジド及びアルファ-ジフルオロメチルドーパ(DFMD)である。ドーパ脱炭酸酵素阻害剤カルビドパの構造は、分子の各中央部に示された計算されたpKa値と一緒に図3に見られる。pHに対するカルビドパの計算された小種分布を図6に示し、Y軸は、総量に対する各分子形態の百分率を表し、X軸はpH値である。図4は、pH約5における水中のカルビドパの最も支配的な構造を示す。このpHでは、カルビドパは主に非荷電(中性)である。
【0045】
上記微小分布(非荷電化合物は荷電化合物よりも親油性が高い)及び類似の分子構造の親油性に基づいて、(オクタノール-水分配係数logDによって表される)レボドパの有機相と水相の計算分配(D)を図7に示す。logD値は、その最高値をpH3~8に有する。したがって、脂質の最適な分配がこのpH範囲に存在する。同様に、(logDで表される)カルビドパの有機相と水相の計算分配を図9に示す。logD値は、pH4~6にその最高値を有し、pH約5で最大である。このpHで脂質分配がその最適になる。その結果、レボドパとカルビドパそれぞれの最良の脂質分配を生じるpH範囲が互いに重なる。2本の曲線をまとめると、好ましいpH範囲は、pH5~6の範囲になるはずである。
【0046】
レボドパの溶解度は、上記微小分布(非荷電化合物は荷電化合物よりも溶解度が低い)及び類似の分子構造の水相の溶解度(S)に基づいて計算することができる。図8は、(mol/l単位で測定された溶解度の常用対数logSで表される)レボドパの計算された溶解度曲線を示す。logS値は、その最小値がpH3~8にある。このpH範囲で水相のレボドパの溶解度がその最低になる。同様に、(logSで表される)カルビドパの計算された溶解度曲線を図10に示す。logS値は、最小値がpH値4~6の範囲にあり、最小値が約pH5にある。したがって、このpHで水相のカルビドパの溶解度がその最低になる。
【0047】
化合物の親油性が高いほど、生体組織及び細胞へのその受動的分配が良好であることが一般に認められている(Buxton及びBenet、2011)。したがって、皮膚組織及び毛細血管へのレボドパ及びカルビドパの最適な取り込みが、レボドパではpH値約5~6、カルビドパではpH値約5でそれぞれ得られる可能性がある。これは、ひいては、CNS疾患に苦しむ患者に投与されると物質の吸収速度及び臨床効果を高めることになる。
【0048】
他方、水中のレボドパ及びカルビドパの計算された溶解度が本質的に同じpH区間においてその最低になることは明らかである。したがって、溶解度をこのpH範囲においてできるだけ増加させることが望ましい。これは、緩衝系に適切な成分を選択し、APIの安定性及び溶解度を増加させる添加剤を選択することによって得ることができる。全体の機能を最適化するために、pH値を最適pH範囲付近でわずかに変えることができる。
【0049】
さらに、かつ重要なことには、本発明は、APIが混合された(数分以内などの)直後に(及び沈殿前に)人体に投与される(APIが過飽和した)過飽和溶液を使用することによって、APIの濃度を選択したpH範囲で(標準投与系の使用に対して)かなり増加させ得ることを教示する。この原理は、当該分野における支配的な見解と正反対である。
【0050】
高いpH値における代謝性アルカローシスのリスクは、非経口薬剤溶液をpH7未満に維持する別の理由である。代謝性アルカローシスは、低カルシウム血症並びにそれに続く頭痛、嗜眠、時に譫妄を伴う神経筋興奮、テタニー及び発作を招く場合もある。さらに、行われた臨床試験によれば、高いpH値は、アンギーナ症状及び不整脈の閾値を低下させるアルカリ血症を起こし得る(J Lewis、2017)。
【0051】
本明細書に開示される水性貯蔵溶液と水性緩衝溶液の混合から得られる薬剤溶液の投与は、非経口又は経腸投与とすることができる。非経口投与は、胃腸管を介した薬物吸収を伴わない投与の経路である。非経口投与経路としては、皮下、静脈内、髄腔内、皮内、動脈内、骨内、筋肉内、脳内及び脳室内が挙げられるが、それらに限定されない。一部の実施形態においては、非経口投与は皮下である。一部の実施形態においては、非経口投与は静脈内である。経腸投与は、胃腸管を介した投与を含む。経腸投与経路としては、経口、舌下、頬、十二指腸及び直腸が挙げられるが、それらに限定されない。一部の実施形態においては、経腸投与は十二指腸である。
【0052】
非経口投与に適切な溶液は、幾つかの他の条件も満たさなければならない。希薄すぎる又は濃すぎる溶液の投与は、患者のナトリウム、カリウム、マグネシウム及び他の電解質のバランスを乱す可能性がある。したがって、非経口薬剤溶液は、好ましくは、重量オスモル濃度が150~1500ミリオスモル、好ましくは300~600又は500~1000ミリオスモル/キログラムの範囲であるべきである。重量オスモル濃度についての前述の要件は、本発明によって満たされ、それが医薬品として適切である一因になる。
【0053】
本発明者らは、中枢神経系(CNS)の疾患の処置に使用される所望のpH(3.0~8.5)の水性薬剤輸液又は注射液が、処置直前に混合される2種の液体、すなわち、レボドパ及び場合によってはカルビドパなどの阻害剤を含有する水性貯蔵溶液と対応する水性緩衝希釈溶液の系を使用することによって得られることを見いだした。
【0054】
最適化された水性緩衝溶液と一緒に最適化された水性貯蔵溶液を使用することによって、2種の溶液が沈殿を起こさずに急速に混合され得ることが見いだされた。これは、緩衝溶液が分割して一定の撹拌をしながら貯蔵溶液に徐々に添加されることに溶液調製が依拠する国際公開第2006/006929号などの以前の教示とは反対である。したがって、本発明の水性貯蔵溶液及び水性緩衝溶液は、例えば、2つの区画、すなわち、水性貯蔵溶液を保持する一方の区画と水性緩衝溶液を保持する他方の区画を有する医療用バッグ又は容器を用いて、処置直前に容易に混合することができる。こうした輸液又は注射液は、数時間からほんの数分間安定であればよい。これは、所望のpH範囲において10mg/mlを超えるレボドパ及び/又はカルビドパ濃度の使用を切り開くものである。
【0055】
一実施形態によれば、少なくとも5mg/mlの溶解レボドパを含み、pHが3.0~8.5の範囲である、中枢神経系(CNS)の疾患の処置に使用される水性薬剤溶液が提供される。溶液は、(a)レボドパを含む水性貯蔵溶液と(b)前記貯蔵溶液のpHを増加させるための水性緩衝溶液を混合することによって供給される。水性貯蔵溶液はpHが25℃で2.8未満である。水性緩衝溶液は、少なくとも1種の緩衝剤成分を含み、pHが25℃で少なくとも4.0である。水性貯蔵溶液と水性緩衝溶液の混合から24時間以内、例えば16時間、12時間、6時間、4時間、2時間、1時間、30分、20分、10分、5分又は1分以内に水性薬剤溶液が中枢神経系(CNS)の疾患に苦しむ対象に投与される。
【0056】
レボドパの安定性は、濃度が増加すると低下する。したがって、より希薄な製剤がより長期間物理的に安定である。ある実施形態においては、薬剤溶液は、最高10mg/mlのレボドパを含み、水性貯蔵溶液と水性緩衝溶液の混合の24時間以内に投与される。これらの実施形態は、注射又は注入用に処方することができる。
【0057】
驚くべきことに、貯蔵及び緩衝溶液の最適化された性質は、急速な混合の適合性と一緒に、生理的に許容されるpH及び重量オスモル濃度において、場合によってはカルビドパも含む、レボドパの過飽和薬剤溶液の形成を可能にする。したがって、更なる一実施形態においては、水性薬剤溶液はレボドパで過飽和している。
【0058】
過飽和は、通常の環境で所与の温度において溶媒によって溶解することができる溶解した材料をそれ以上含む溶液の状態である。過飽和溶液は、熱力学的観点から、エネルギー的に好ましくないので、こうした溶液の長期安定性は、ほとんどの場合、比較的短い。しかし、溶質の沈殿には時間がかかる。というのは、分子は、出会い、水と衝突して分離されることなく、沈殿を形成する必要があるからである。さらに、核形成事象が沈殿を誘発するのに必要とされ得る。分子が大きいほど、ブラウン運動の原理のためにより長い時間がかかる。
【0059】
ある実施形態においては、レボドパの濃度は、過飽和点まで増加させることができる。10mg/mLより高いレボドパ濃度では、レボドパの沈殿が観察される。過飽和溶液の物理的安定性が低いため、オンライン混合を使用して、溶液が患者への投与時に確実に安定であるようにすることができる。オンライン混合を使用すると、水性貯蔵溶液と水性緩衝溶液の連続混合が可能になり、続いて生成した水性薬剤溶液を貯蔵溶液の混合の2時間以内に連続投与することが可能になる。一部の実施形態においては、水性薬剤溶液は、水性貯蔵溶液と水性緩衝溶液の混合から1.5時間、1時間、50分、40分、30分、20分、10分、5分又は1分以内に投与される。
【0060】
一実施形態によれば、少なくとも5mg/mlの溶解レボドパを含み、pHが3.0~8.5の範囲である、中枢神経系(CNS)の疾患の処置に使用される水性薬剤溶液が提供され、前記水性薬剤輸液又は注射液は、レボドパで過飽和している。
【0061】
更なる一実施形態においては、水性薬剤溶液は、(a)レボドパを含む水性貯蔵溶液と(b)前記貯蔵溶液のpHを増加させるための水性緩衝溶液を混合することによって供給される。水性貯蔵溶液はpHが25℃で2.8未満である。水性緩衝溶液は、少なくとも1種の緩衝剤成分を含み、pHが25℃で少なくとも4.0である。
【0062】
ある実施形態においては、水性貯蔵溶液のpHが2.0未満、例えば1.5、1.0又は0.5未満であり、好ましくは水性貯蔵溶液のpHが0.0~2.0、例えば0.0~1.5、0.0~1.0、0.0~0.5の範囲のpHである。場合によっては、水性貯蔵溶液はpHが0.0~1.0の範囲である。水性貯蔵溶液は、少なくとも1種の生理的に許容される酸を含むことができる。一部の実施形態においては、生理的に許容される酸は、塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸である。場合によっては、鉱酸は塩酸(HCl)であり、好ましくは、水性貯蔵溶液は少なくとも30mM HCl、例えば少なくとも50mM HCl、100mM HCl、150mM HClを含む。一部の実施形態においては、生理的に許容される酸は酢酸である。一実施形態においては、生理的に許容される酸は、酢酸、乳酸、酒石酸、マレイン酸、炭酸水素ナトリウム又はリン酸ナトリウムである。水性貯蔵溶液は、1種を超える生理的に許容される酸を含むことができる。場合によっては、水性貯蔵溶液は、少なくとも10mg/mlのレボドパ、例えば少なくとも15、20、25、30、35又は40mg/mlのレボドパを含む。
【0063】
一部の実施形態においては、水性緩衝溶液はpHが25℃で4~12である。水性緩衝溶液のpHは、4~12、例えば4~9、例えば4~7.5、例えば4~6の範囲とすることができる。水性緩衝溶液は、少なくとも1つのpKa値が3~9の範囲である少なくとも1種の緩衝剤成分を含むことができる。場合によっては、少なくとも1種の緩衝剤成分は、少なくとも1つのpKa値が5~7.5の範囲である。場合によっては、少なくとも1種の緩衝剤成分は、少なくとも1つのpKa値が4~6の範囲である。一部の実施形態においては、緩衝剤は、アジピン酸、ホウ酸、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸カルシウム、ジエタノールアミン、グリシン、マレイン酸、メグルミン、メチオニン、グルタミン酸モノナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム二水和物、乳酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム二水和物、一塩基性リン酸ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン又はそれらの組合せからなる群から選択される。緩衝剤成分はクエン酸とすることができる。場合によっては、緩衝剤成分はクエン酸及びホスファートである。
【0064】
上記混合方法のいずれかによって供給される、少なくとも5mg/mlの溶解レボドパを含む水性薬剤溶液の詳細については、以下でより詳細に説明する。
【0065】
PDの後期の患者は、1日当たり最高1,000mgのレボドパを経口経路によって必要とし得る。0.5~1.0mg/mlの範囲のレボドパ濃度は、投与体積1~2リットル/日という結果になる。したがって、貯蔵溶液は、好ましくは、少なくとも5mg/mlのレボドパを含むべきである。しかし、5mg/mlのレボドパ濃度は、特に溶液に阻害剤が含まれない場合、非経口投与用輸液では低い方である。連続皮下注入用輸液は、阻害剤を含むべきであり、少なくとも10mg/mlのレボドパを含むべきである。本発明の手法を用いた一連の混合実験を表8~20に要約し、酸、緩衝剤、安定剤及び他の添加剤を含む異なる処方の使用の効果を強調する。本発明の指定の貯蔵溶液と緩衝溶液を混合することによって、生成した輸液の投与直前に、所望のpH範囲においてレボドパ濃度が10mg/ml以上の薬学的に許容される輸液を得ることができる。これは以前には決して達成できなかった。それは、本発明前に、当該技術分野において教示もされなかった。
【0066】
したがって、一実施形態によれば、水性薬剤溶液は、少なくとも5mg/mlの溶解レボドパ、例えば少なくとも6、7、8、9、10、15又は20mg/mlの溶解レボドパを含む。一実施形態においては、水性薬剤溶液は、少なくとも5mg/mlの溶解レボドパ、例えば少なくとも6、7、8、9、10又は15mg/mlの溶解レボドパを含む。一実施形態においては、水性薬剤溶液は、少なくとも5mg/mlの溶解レボドパ、例えば少なくとも6、7、8、9又は10mg/mlの溶解レボドパを含む。したがって、水性薬剤溶液は、5~20mg/mlの溶解レボドパ、例えば5~15mg/ml又は5~10mg/mlの溶解レボドパを含むことができる。一部の実施形態においては、水性薬剤溶液は、少なくとも10mg/mlの溶解レボドパを含む。したがって、水性薬剤溶液は、10~20mg/mlの溶解レボドパ、例えば10~15mg/ml又は15~20mg/mlの溶解レボドパを含むことができる。
【0067】
上述したように、水性薬剤溶液の所望のpHは3.0~8.5の範囲である。図7に示したように、この区間は、レボドパのより高い親油性と一致し、これは、3.5、4、4.5又は5から5、5.5、6.0、6.5又は7.0までのpHにおいてより一層明白であり、生体組織及び細胞へのより良好な受動的分配をもたらし、ひいては物質の吸収速度及び臨床効果を高める。一実施形態においては、水性薬剤溶液はpHが3.5~8.0、例えば4.0~7.5、4.0~5.0、4.5~7.0である。更なる一実施形態においては、水性薬剤溶液はpHが4.3~4.6である。一部の実施形態においては、水性薬剤溶液はpHが5.0~6.0である。
【0068】
表22では、臨床試験の暫定データが要約され、本発明の溶液が連続皮下注入においてレボドパとカルビドパの両方で高い生物学的利用能を有することを示す。皮下注入におけるカルビドパの高い生物学的利用能は、APIの親油性が当該APIの血液への取り込みに最も重要であるという知見を支持するものである。本発明の輸液のpHは5に近く、すなわちカルビドパの親油性がその最適にある。その結果、皮下注入における生物学的利用能(及び血漿へのカルビドパの対応する取り込み)は約100%であり、約75%である腸ゲルDuodopaのカルビドパの生物学的利用能とは対照的である。レボドパの生物学的利用能がDuodopaと本発明の輸液の両方で約100%であることは、図7に示したように、レボドパの親油性がはるかに広範なpH範囲(3~8)で最適であることで説明することができる。
【0069】
混合の直後に溶液を投与することによって、レボドパ及び/又はカルビドパ濃度が一層高い薬学的に許容される輸液を所望のpH範囲で得ることができる。
【0070】
レボドパの吸収速度の増加によって、処置を個々の患者に個別化することができる。患者のPDの段階に応じて、治療効果を得るのに必要なレボドパ量が異なる。(パーキンソン病に関連したオンオフ症候に苦しむ患者の)治療効果は、血中のレボドパ濃度が当該患者に必要なレベルに達したときに得られる。異なる患者が必要とするレボドパレベルの大きな差を図14A及びBに示す。重篤なPDに苦しむ患者の1名(患者番号101)は、血中約5,000~6,000ng/mLのレボドパ濃度を必要とし、中程度又は軽度のPDの別の患者(患者番号103)は、治療効果を得るのに1,600~1,700ng/mLしか必要としない。PDに苦しむ患者に必要な治療有効量は、例えば、対象の体格、健康、年齢、及び患者のパーキンソン病の段階に依存する。血液へのレボドパ及びカルビドパの急速な吸収によって、望ましい効果が個々の患者で得られるまで、薬剤溶液の流量を調節することができる。(貯蔵溶液及び緩衝溶液を混合装置に供給しているポンプ(単数又は複数)の流量を調節することによって)薬剤溶液の流量を調節すると、応答時間(注入が朝にオフ期で開始される時間から最初に治療効果が得られる時点まで)と血中API濃度の両方を制御することができ、オンオフ症候を最小限にすることができる。
【0071】
処方が貯蔵溶液と緩衝溶液の即座の混合を可能にするということは、本発明の「オンライン」投与手法を可能にし、指定の貯蔵溶液と緩衝溶液を連続的に混合することができ、生成した輸液を連続的に投与することができる。これは、連続皮下注入に特に好都合であり、輸液を連続的に混合することができ、低速の持続注入の過程で完全に新しい輸液を供給することができる。こうした手法は、先行技術の公知の溶液又は処方を用いては不可能であるが、本発明の溶液の固有の性質によって、急速なオンライン混合が可能になり、次の急速なオンライン投与のために、APIのあらゆる分解は薬事規制の十分な範囲内にある。表21には、本発明の溶液及びオンライン混合系を用いたオンライン混合実験の結果を要約する。
【0072】
一実施形態においては、水性貯蔵溶液と水性緩衝溶液の混合から2時間以内、例えば90分、60分、50分、40分、30分、20分、10分、5分又は1分以内に水性薬剤溶液が中枢神経系(CNS)の疾患に苦しむ対象に投与される。
【0073】
一実施形態においては、水性緩衝溶液と水性貯蔵溶液が連続的に混合され、それによって得られた水性薬剤溶液が中枢神経系(CNS)の疾患に苦しむ対象に連続投与される。
【0074】
一実施形態においては、水性貯蔵溶液と水性緩衝溶液の混合から1時間以内、例えば50分、40分、30分、20分、10分、5分又は1分以内に水性薬剤溶液が中枢神経系(CNS)の疾患に苦しむ対象に投与される。一実施形態によれば、水性貯蔵溶液と水性緩衝溶液の混合から10分、8分、6分、4分、2分又は1分以内に水性薬剤溶液が中枢神経系(CNS)の疾患に苦しむ対象に投与される。
【0075】
一実施形態においては、水性薬剤溶液中のレボドパの15重量%が分解する前、例えば10重量%が分解する前に水性薬剤溶液が投与される。
【0076】
一実施形態においては、水性貯蔵溶液と水性緩衝溶液の混合から中枢神経系(CNS)の疾患に苦しむ対象に水性薬剤溶液が投与されるまでの時間は、水性貯蔵溶液と水性緩衝溶液の混合から水性薬剤溶液中のレボドパの15重量%、例えば10重量%が分解する時間までの時間よりも短い。
【0077】
濃度、溶液中の他の添加剤の存在などの種々の因子が、水性薬剤溶液中のレボドパ及びカルビドパの安定性に影響し得る。一部の実施形態においては、水性薬剤溶液は、最高24時間物理的にも化学的にも安定である。別の実施形態においては、水性薬剤溶液は、2時間しか物理的に安定でなく、APIの分解が30分以内に許容限度を超える可能性がある。溶液の安定性は、当該技術分野で周知の方法で測定することができる。例えば、当業者は、API分解に起因する毒性副生物が高圧液体クロマトグラフィ(HPLC:High Pressure Liquid Chromatography)を用いて検出できることを理解されたい。水性薬剤溶液の安定性に応じて、水性貯蔵溶液と水性緩衝溶液を混合する様々な方法が可能である。例えば、安定度のより高い水性薬剤溶液は、前記溶液を患者に投与する最高24時間前に混合することができる。こうした溶液は、穿孔可能な障壁で分離された単一のバッグの2つの別々の区画で供給することができる。バッグを圧搾するなどして障壁に穴を開けると、2つの溶液が混合される。さらに、バッグを圧搾すると、溶液が十分混合され、水性薬剤溶液を生成し、患者に24時間以内に投与するのに十分安定である。あるいは、安定度のより低い水性薬剤溶液の場合、オンライン混合手法を使用して、API分解レベル及び毒性副生物濃度が許容限度内に確実にとどまるようにすることができる。オンライン混合によって水性貯蔵溶液と水性緩衝溶液を連続的に混合することができ、生成した水性薬剤溶液が患者に連続投与される。このオンライン混合手法によって、溶液を患者に投与することができ、これは、それらの限定的な安定性窓のために、その他の方法では不可能である。
【0078】
貯蔵溶液と緩衝溶液はどちらも十分な安定性及び溶解性の条件を満たさなければならない一方、生成した水性薬剤溶液も、非経口投与に適切であるように上で考察した基準(制御可能な沈殿リスク、適切なpH範囲、APIの限定的な分解、毒性副生物の限定的な含有量、許容される重量オスモル濃度レベルなど)を更に満たさなければならない。これは、安定性に対して最適化されたレボドパを含有する貯蔵溶液が、緩衝溶液との混合に適していないかもしれず、中枢神経系の疾患の処置に使用される適切な水性薬剤輸液又は注射液を生成しないかもしれないことを意味する。これについては以下で更に説明する。したがって、溶液が混合前、混合中及び混合後に必要なパラメータを満たすために、貯蔵溶液と緩衝溶液の両方を明確に設計する必要がある。
【0079】
低いpH値が溶解性を向上させることはよく知られている。しかし、貯蔵溶液の低いpH値は、臨床用途に好ましいpH値にするために強アルカリ緩衝溶液との混合を必要とする。例えば表20に示したように、最終溶液の重量オスモル濃度は、高濃度又は幾つかの添加剤が貯蔵及び緩衝溶液に使用されると極めて高くなる。血漿の重量オスモル濃度の正常ヒト基準範囲は、約285~295ミリオスモル/キログラムであり、重量オスモル濃度が高すぎると人体における局所耐性に細胞レベルで悪影響を及ぼす。したがって、一実施形態においては、水性薬剤溶液の重量オスモル濃度は、50~1400mOsm/kg、好ましくは100~1000、更には200~600mOsm/kgである。
【0080】
表1~7に要約した実験中に、貯蔵溶液の安定性を評価した。pH値3未満のレボドパの貯蔵溶液は冷蔵すると優れた安定性を有し、4か月後に有意な分解がないことが判明した。pH値が3を超えるレボドパ及びカルビドパを含有する溶液は、次第にカルビドパが分解した。
【0081】
一実施形態においては、水性貯蔵溶液は、少なくとも10mg/mlのレボドパ、例えば少なくとも15、20、25、30、35又は40mg/mlのレボドパを含む。一実施形態においては、水性貯蔵溶液はpHが2.0未満、例えば1.5、1.0又は0.5未満である。水性貯蔵溶液のpHは、0.0~2.0、例えば0.0~1.5、0.0~1.0、0.0~0.5の範囲とすることができる。
【0082】
pHを低くするために、水性貯蔵溶液は、生理的に許容される酸、好ましくは塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸を含むことができる。一実施形態においては、生理的に許容される酸はHClである。好ましくは、水性貯蔵溶液は、少なくとも30mM HCl、例えば少なくとも50mM HCl、100mM HCl、150mM HClを含む。一実施形態においては、生理的に許容される酸は、酢酸、乳酸、酒石酸、マレイン酸、炭酸水素ナトリウム又はリン酸ナトリウムである。水性貯蔵溶液は、1種を超える生理的に許容される酸を含むことができる。
【0083】
一部の実施形態においては、本明細書に開示する水性貯蔵溶液は、少なくとも1種の安定剤を含むことができる。安定剤はメタ重亜硫酸ナトリウムとすることができる。メタ重亜硫酸ナトリウムは、貯蔵溶液の長期貯蔵に正の効果を有することが判明したので、好ましい安定剤である。メタ重亜硫酸ナトリウム(ピロ亜硫酸ナトリウムとしても知られる)は、化学式Naの無機化合物である。メタ重亜硫酸ナトリウムは、肝臓で酸化して硫酸塩になり、尿中に排泄され、それによって数十ミリグラムを1日量として有害作用を生じずに摂取することができる。
【0084】
表5に要約した実験で見られるように、溶液、例えば水性貯蔵溶液の脱気は、長期安定性並びに複数の実験のうちの幾つかの結果の再現性及び一貫性に正の効果も有した。一実施形態においては、水性貯蔵溶液は、貯蔵溶液を通した不活性ガス、例えば窒素のバブリングなどによって脱気された。一実施形態によれば、緩衝溶液は、溶液を通して泡立つ窒素などの不活性ガスを用いて脱気された。
【0085】
ドーパ脱炭酸酵素阻害剤を含むことは、体循環における血漿中のレボドパの代謝を防止する点で有利である。ドーパ脱炭酸酵素阻害剤の例は、カルビドパ、ベンセラジド、メチルドパ及びアルファ-ジフルオロメチルドーパ(DFMD)である。一部の実施形態においては、ドーパ脱炭酸酵素阻害剤はカルビドパである。COMT阻害剤も、他の薬物療法としばしば組み合わせて、パーキンソン病の処置に使用される。COMT阻害剤は、神経伝達物質の分解に関与する酵素カテコール-O-メチル転移酵素の作用を阻害する。COMT阻害剤の例は、エンタカポン、トルカポン、オピカポン及びニテカポンである。モノアミン酸化酵素阻害薬(MOAI)は、パーキンソン病の処置に使用されたモノアミン酸化酵素酵素系の活性を阻害する(したがって、ドパミン作動性ニューロンに影響する)。MOAIの例は、ラサギリン、セレギリン及びサフィナミドである。
【0086】
したがって、一実施形態に係る水性薬剤溶液は、更に少なくとも1種の酵素阻害剤を含む。一部の実施形態においては、貯蔵溶液は、少なくとも1種のドーパ脱炭酸酵素(DDC)阻害剤、又は少なくとも1種のカテコール-O-メチル転移酵素(COMT)阻害剤、又は少なくとも1種のモノアミノ酸化酵素(MAO-B)阻害剤、又はそれらの組合せを含む。ドーパ脱炭酸酵素(DDC)阻害剤は、カルビドパ一水和物などのカルビドパ、ベンセラジド、メチルドパ及びアルファ-ジフルオロメチルドーパ(DFMD)からなる群から選択することができる。カテコール-O-メチル転移酵素(COMT)阻害剤は、エンタカポン、トルカポン及びニテカポンからなる群から選択することができる。モノアミノ酸化酵素(MAO-B)阻害剤は、ラサギリン、セレギリン及びサフィナミドからなる群から選択することができる。
【0087】
水性緩衝溶液は、混合時/後に所望の性質(所望のpH値、良好な緩衝能力、最少のAPI分解など)を有する水性薬剤溶液に指定時間枠内に到達するため、最小含有量の毒性副生物のため、及び許容される重量オスモル濃度レベルのためなど、貯蔵溶液の性質に適合するように設計される。緩衝溶液の1つの重要な性質は、貯蔵溶液成分を沈殿させないようにしながら混合溶液のpHを高くすることである。一実施形態においては、水性緩衝溶液はpHが少なくとも4.0である。水性緩衝溶液のpHは、4~12、例えば4~9、例えば4~7.5、例えば4~6の範囲とすることができる。一実施形態においては、水性緩衝溶液は、少なくとも1つのpKa値が3~9、例えば5~7.5である少なくとも1種の緩衝剤成分を含む。
【0088】
酸性又はアルカリ性領域の緩衝剤のpHは、それぞれ強酸(塩酸など)又は強塩基(水酸化ナトリウムなど)を緩衝剤に添加することによって調節することができる。あるいは、緩衝剤は、酸とその共役塩基の混合物から製造することができる。例えば、酢酸緩衝剤は、酢酸と酢酸ナトリウムの混合物から製造することができる。同様に、アルカリ性緩衝剤は、塩基とその共役酸の混合物から製造することができる。緩衝剤の緩衝能は、pH=pKaのときに極大になる。それは、pH=pKa±1で最大値の33%、pH=pKa±1.5で10%に低下する。したがって、有用な緩衝範囲は約pKa±1である。pKa値が2単位以下しか異ならない緩衝剤成分を組み合わせ、pHを調節することによって、広範囲の緩衝剤を得ることができる。緩衝能力は緩衝剤の濃度に比例するので、希薄溶液は緩衝能力が低下する。
【0089】
適切な緩衝溶液を製造するのに組み合わせることができる幾つかの薬学的に適切な緩衝剤成分がある。こうした適切な緩衝剤成分の例は、以下である。
アジピン酸-酸性度/アルカリ度pH=2.7(飽和溶液25℃);pH=3.2(0.1%w/v水溶液25℃)、
ホウ酸-酸性度/アルカリ度pH=3.5~4.1(5%w/v水溶液)、
炭酸カルシウム-酸性度/アルカリ度pH=9.0(10%w/v水性分散物)、
乳酸カルシウム-酸性度/アルカリ度pH=6.0~8.5 10%水溶液、
リン酸カルシウム、三塩基性-酸性度/アルカリ度pH=6.8(水中20%スラリー)、
クエン酸一水和物-酸性度/アルカリ度pH=2.2(1%w/v水溶液)、
ジエタノールアミン-酸性度/アルカリ度pH=11.0 水溶液中0.1、
グリシン-酸性度/アルカリ度pH=4(0.2M水溶液)、
マレイン酸-酸性度/アルカリ度pH2(5%w/v水溶液25℃)、
メチオニン-酸性度/アルカリ度pH=5.6~6.1(1%w/v水溶液)、
グルタミン酸モノナトリウム-酸性度/アルカリ度pH=7.0(0.2%w/v水溶液)、
クエン酸カリウム-酸性度/アルカリ度pH=8.5(飽和水溶液)、
酢酸ナトリウム-酸性度/アルカリ度pH=7.5~9.0(5%w/v水溶液)、
炭酸水素ナトリウム-酸性度/アルカリ度pH=8.3 新たに調製された0.1M水溶液25℃、
ホウ酸ナトリウム-酸性度/アルカリ度pH=9.0~9.6(4%w/v水溶液)、
炭酸ナトリウム-酸性度/アルカリ度 強アルカリ性;pH=11.4(1%w/v水溶液25℃、
クエン酸ナトリウム二水和物-酸性度/アルカリ度pH=7.0~9.0(5%w/v水溶液)、
乳酸ナトリウム-酸性度/アルカリ度pH=7 水溶液、
リン酸ナトリウム、二塩基性-酸性度/アルカリ度pH=9.1 無水材料の1%w/v水溶液25℃、
リン酸ナトリウム、一塩基性-酸性度/アルカリ度pH=4.1~4.5 一水和物の5%w/v水溶液25℃、
メグルミン-酸性度/アルカリ度pH=10.5(1%w/v水溶液)、及び
トロメタモール。
【0090】
別の一実施形態によれば、適切な緩衝溶液を製造するのに組み合わせることができる幾つかの薬学的に適切な緩衝剤成分がある。こうした適切な緩衝剤成分の例は、以下である。
アジピン酸-酸性度/アルカリ度pH=2.7(飽和溶液25℃);pH=3.2(0.1%w/v水溶液25℃)、
ホウ酸-酸性度/アルカリ度pH=3.5~4.1(5%w/v水溶液)、
クエン酸一水和物-酸性度/アルカリ度pH=2.2(1%w/v水溶液)、
ジエタノールアミン-酸性度/アルカリ度pH=11.0 水溶液中0.1、
グリシン-酸性度/アルカリ度pH=4(0.2M水溶液)、
マレイン酸-酸性度/アルカリ度pH2(5%w/v水溶液25℃)、
メチオニン-酸性度/アルカリ度pH=5.6~6.1(1%w/v水溶液)、
グルタミン酸モノナトリウム-酸性度/アルカリ度pH=7.0(0.2%w/v水溶液)、
クエン酸カリウム-酸性度/アルカリ度pH=8.5(飽和水溶液)、
酢酸ナトリウム-酸性度/アルカリ度pH=7.5~9.0(5%w/v水溶液)、
炭酸水素ナトリウム-酸性度/アルカリ度pH=8.3 新たに調製された0.1M水溶液25℃、
ホウ酸ナトリウム-酸性度/アルカリ度pH=9.0~9.6(4%w/v水溶液)、
炭酸ナトリウム-酸性度/アルカリ度 強アルカリ性;pH=11.4(1%w/v水溶液25℃、
クエン酸ナトリウム二水和物-酸性度/アルカリ度pH=7.0~9.0(5%w/v水溶液)、
乳酸ナトリウム-酸性度/アルカリ度pH=7 水溶液、
リン酸ナトリウム、二塩基性-酸性度/アルカリ度pH=9.1 無水材料の1%w/v水溶液25℃、
リン酸ナトリウム、一塩基性-酸性度/アルカリ度pH=4.1~4.5 一水和物の5%w/v水溶液25℃、
メグルミン-酸性度/アルカリ度pH=10.5(1%w/v水溶液)、及び
トロメタモール。
【0091】
緩衝剤成分は、好ましくはクエン酸とすることができ、それは、緩衝剤成分と安定剤の両方として働く多目的機能を有する。本発明者らによって行われた試験は、本発明のAPIに対するクエン酸の安定化効果を明瞭に示している。米国特許第8,815,950号B2号の教示によれば、クエン酸の安定化効果は、pH値が4を超えると、存在しない、又は少なくとも極めて低い。それでも、表14及び15に見られるように、二溶液系をシトラート/ホスファート緩衝系と一緒に使用すると、驚くべきことに、4を超えるpH値でも極めて良好な安定性を与える。
【0092】
シトラートを緩衝剤として含む溶液は、例えばヒスチジンを緩衝剤として使用する溶液などの生理的に許容される緩衝剤を含む幾つかの他の溶液よりも皮下注射後に疼痛を起こしやすい可能性があることが報告された。通常、痛覚は、数分の投与内などの皮下投与直後に最も高く、疼痛はその後消失する。それでも、皮下注射に起因する疼痛は、患者の服薬遵守を制限し得る不快な症状である。
【0093】
本発明においては、低濃度(30~70mMなど、好ましくは40~60mM)シトラート/ホスファート緩衝系を使用することによって、皮下注射後のあらゆる痛覚を回避又は最小限にしながらシトラートの正の効果が保持されることが見いだされた。
【0094】
本発明によって、レボドパ及び/又はカルビドパの安定性に悪影響を及ぼし得る成分が、貯蔵溶液と緩衝溶液が混合されるまでレボドパ及び/又はカルビドパと接触しないので、こうした成分を緩衝溶液に含むことができる。これは、本発明の別の効果であり、安定性を向上させ、毒性代謝産物の形成を抑制するなどの多様な成分の使用を切り開くものである。
【0095】
さらに、最終輸液の許容重量オスモル濃度を維持しながら、低濃度ホスファートなどの別の緩衝剤成分を緩衝剤成分クエン酸(どちらかと言えば、シトラートという用語は、高いpH値を考慮して使用される)を既に含む水性緩衝溶液に添加すると、極めて有利である。それは、本発明の全pH範囲を網羅する緩衝能力の範囲を増大させる。さらに、より重要なことには、それは、シトラートのみが含まれる場合よりも緩衝溶液のpH値を高くすることができる。得られた緩衝溶液の最大pH値は、シトラートのみを使用すると6.2であった(シトラートのpKa値は3.13、4.76及び6.40である)。さらに、ホスファートを追加すると、依然として良好な緩衝能力を維持しながら、緩衝溶液のpH値を7.6にすることができた(ホスファートのpKa値は7.20である)。より高いpH値から始めると、得られる輸液(混合後)のpH範囲を5.1~5.4にすることができる。上記のことは、実験の項で説明される実験によって実証される。こうしたpH範囲は、(本明細書で先に提言したように)皮下注入時の組織へのAPIの吸収を考慮すると最適である。したがって、一実施形態においては、使用される緩衝剤成分は、クエン酸とホスファートの両方である。
【0096】
一部の実施形態においては、水性緩衝溶液は、更に可溶化剤を含む。可溶化剤は、グルタチオン、システイン、HP-ベータ-シクロデキストリン、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMA)、Collidone、Kolliphor HS15、PEG400、プロピレングリコール、ポリソルベート80、グリセリン、エタノール、Cremophor EL、DMSO、メチオニン、EDTA、アスコルビン酸、アスパラギン酸、塩化ベンザルコニウム、安息香酸ベンジル、塩化セチルピリジニウム、ヒドロキシプロピルベータデクス、レシチン、マクロゴール15ヒドロキシステアラート、メグルミン、リン脂質、ポロクサマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ピロリドン、トリオレイン、ビタミンEポリエチレングリコールスクシナート又はこれらの2種以上の混合物からなる群から選択することができる。一実施形態においては、可溶化剤はHP-ベータ-シクロデキストリンである。表5、6及び16に見られるように、濃度約75mg/mlのHP-ベータ-シクロデキストリンは、物理的安定性を向上させる。
【0097】
水性貯蔵溶液と水性緩衝溶液のどちらも、好ましくは、安定化剤、抗酸化剤、防腐剤又はそれらの組合せなどの安定剤を含むことができる。したがって、一実施形態においては、水性緩衝溶液は、更に少なくとも1種の安定剤を含む。更なる一実施形態においては、安定剤は、安定化剤、抗酸化剤及び防腐剤又はそれらの組合せを含む群から選択される。
【0098】
安定化剤は、ベントナイト、アルギン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、カルビドパ一水和物などのカルビドパ、カルボキシメチルセルロースカルシウム、セラトニア、シクロデキストリン、デキストラン、ジエタノールアミン、エチレングリコールパルミトステアラート、フルクトース、モノステアリン酸グリセリン、レシチン、マクロゴール15ヒドロキシステアラート、マンニトール、モノエタノールアミン、プロピレングリコール、酢酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、ソルビトール、スルホブチルエーテルベータ-シクロデキストリン、トレハロース、酢酸亜鉛などからなる群から選択することができる。
【0099】
一実施形態においては、安定化剤は、生理的に許容される糖である。生理的に許容される糖は、グルコースとすることができる。一実施形態においては、グルコース濃度は、5~100mg/mlの範囲である。さらに、生理的に許容される糖は、フルクトース、デキストラン、例えば、デキストラン70、60若しくは40、又はマンニトールとすることができる。
【0100】
グルコースは、表4に示すように、そのレボドパの安定化効果のほかに、さらに、皮下注射中のその疼痛減少効果のために有利な場合もある。さらに、グルコースが軽い凝血促進剤として作用し得る適応症がある。これらの効果は5~100mg/mlなどのより低いグルコース濃度で既に存在し、有利であると思われる。というのは、グルコースの添加がカルビドパ分解を増加させることが示されたからである。これらの効果は、グルコースをシトラート又はシトラート/ホスファート緩衝系と一緒に使用したときに特に有利である。というのは、グルコースの添加が、シトラートを含む溶液の皮下注射後に起こり得る疼痛又は皮下出血を減少又は軽減するのに役立ち得るからである。したがって、一実施形態においては、グルコース濃度は5~100mg/mlである。一実施形態においては、薬剤溶液はグルコースを含まない。
【0101】
表15に示すように、グルコースは、カルビドパに対して不安定化作用を有し得る。したがって、一部の実施形態においては、カルビドパが存在するときには、グルコース濃度が制限される。場合によっては、カルビドパが存在するときには、水性薬剤溶液はグルコースを含まない。
【0102】
抗酸化剤は、アルファトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール、クエン酸一水和物、エリソルビン酸、リンゴ酸、メチオニン、モノチオグリセロール、ペンテト酸、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムなどからなる群から選択することができる。
【0103】
防腐剤は、無水、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ホウ酸、ブロノポール、ブチレングリコール、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム五水和物、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、クロロクレゾール、クエン酸一水和物、クレゾール、デキストラン、エデト酸、パラヒドロキシ安息香酸エチル、グリセロール、イミド尿素、パラヒドロキシ安息香酸メチル、モノチオグリセロール、フェノール、フェノキシエタノール及びフェニルエチルアルコールからなる群から選択することができる。
【0104】
カルビドパは、貯蔵溶液中のレボドパの好ましい安定剤として使用することができ、阻害剤としても働く点で二重の効果を有する。
【0105】
メタ重亜硫酸ナトリウムは、貯蔵溶液に使用することができる別の好ましい安定剤であり、溶解度を向上させ、APIの分解及び毒性副生物の蓄積を減少させる。メタ重亜硫酸ナトリウム(ピロ亜硫酸ナトリウムとしても知られる)は、化学式Naの無機化合物である。メタ重亜硫酸ナトリウムは、肝臓で酸化して硫酸塩になり、尿中に排泄され、それによって数十ミリグラムを1日量として有害作用を生じずに摂取することができる。
【0106】
オンライン混合を使用することによって、溶液が混合された時点から90分未満、例えば50、20、10又は1分未満後から溶液が患者の組織に注入される時点までAPIの分解が規定値内にある限り、輸液は医薬品の要求を満たすことができる。過飽和のこの安定窓によって、より高いレボドパ濃度の使用が可能になり、したがって注入体積を削減することができる。
【0107】
好ましい一実施形態において、水性薬剤溶液は、I)とII)の混合によって供給され、I)は、a)滅菌水、b)レボドパ、c)少なくとも1種の酵素阻害剤、d)少なくとも1種の生理的に許容される酸、e)少なくとも1種の生理的に許容される安定剤を含むpHが25℃で2.8未満の水性貯蔵溶液であり、ここで、貯蔵溶液は混合後に窒素バブリングされる。II)は、f)滅菌水、g)少なくとも1種の生理的に許容される緩衝剤成分、h)少なくとも1種の生理的に許容される安定剤及び/又は可溶化剤を含むpHが25℃で少なくとも4.0の水性緩衝溶液である。水性薬剤溶液は、過飽和とすることができ、水性貯蔵溶液と水性緩衝溶液の混合から24時間以内、例えば16時間、12時間、6時間、4時間、2時間、1時間、30分、20分、10分、5分又は1分以内に中枢神経系(CNS)の疾患に苦しむ対象に投与することができる。
【0108】
10mg/mlレボドパ及び1.25mg/ml(1:8)カルビドパを含むこうした特定の組成物の一例は、I)とII)を混合することによって調製され、I)は、a)精製水963g、b)5M HCl43.3g、ここで溶液は窒素パージされる、c)微粉化レボドパ20g、d)カルビドパ一水和物2.71g(カルビドパ2.5g相当)を含む水性貯蔵溶液1000mlであり、溶液は再度窒素パージされる。II)は、e)精製水968g、f)クエン酸三ナトリウム二水和物二水和物64.7g、g)リン酸水素二ナトリウム二水和物3.56g、h)1M HCl3.67gを含有する水性緩衝溶液である。
【0109】
より詳細には、この組成物は、以下の成分、ステップ及び方法を用いて調製される:1000mlの20mg/mlレボドパ及び2.5mg/mlカルビドパ貯蔵溶液を以下のように調製した:磁気撹拌機を備えたDuran瓶に水963gを注ぎ、次いで5M塩酸(HCl)43.3gを添加し、次いで残留酸素含有量が0.1ppm未満になるまで溶液を窒素パージし、次いで微粉化レボドパ20gを添加し、次いでカルビドパ一水和物2.71g(カルビドパ2.5g相当)を添加した。生成した溶液をすべての物質が溶液に溶解するまで磁気撹拌機を用いて撹拌した。pHは約1と測定された。残留酸素含有量が0.1ppm未満になるまで溶液を再度窒素パージした。緩衝溶液を以下のように調製した:磁気撹拌機を備えるDuran瓶に水968gを注ぎ、次いでクエン酸三ナトリウム二水和物64.7gを添加し、次いでリン酸水素二ナトリウム二水和物3.56gを添加し、次いで1M塩酸HCl3.67gを添加し、次いですべての材料が溶解するまで磁気撹拌機を用いて溶液を撹拌した。pHを測定し、1M HCl(溶液が塩基性でありすぎる場合)及び1M水酸化ナトリウム(NaOH)(溶液が酸性でありすぎる場合)を用いて7.6に調節した。
【0110】
Pedro Chanaらにおいては、カルビドパ安定性の研究が示されている。研究では、溶液中のカルビドパが不安定化合物であり、自然に短時間で分解することが確認された。研究された環境要因は分解を減少させず、安定性を24時間維持せず、24時間のレボドパ及びカルビドパ水溶液中のカルビドパの50%近い分解プロファイルが観察された。医薬品の製造時点からそれが患者に投与される時点までのAPIの分解は、所定の限度内になければならない。多くの場合、各APIの濃度の低下は、その最初の値の10%未満でなければならず、好ましくはそれよりもかなり低くなければならない。したがって、API分解は、決して単なる品質保持期間の問題ではないが、実際、医薬品としての登録に対する規制上の妨げになり得る。実際、当該技術分野における幾つかの有望なレボドパ及びカルビドパ溶液は、事実上、医薬品として登録できないかもしれない。
【0111】
カルビドパは分解してヒドラジン、3,4-ジヒドロキシフェニルアセトン(DHPA)などの毒性副生物になる。表7は、レボドパ及びカルビドパの経時的化学分解を示す。表15に要約したものなどの他の実験においては、短期物理的安定性、レボドパ及びカルビドパの分解、並びにDHPAの蓄積を示す。
【0112】
一実施形態においては、水性薬剤溶液中のレボドパの分解は、貯蔵溶液と水性緩衝溶液を混合した後1分後、例えば5、10、15、20、30、40、50、60、90分後に15%未満である。
【0113】
更なる一実施形態においては、水性薬剤溶液はカルビドパを含み、カルビドパの分解は、貯蔵溶液と水性緩衝溶液の混合時点から1分後、例えば5、10、20、30、40、50、60、90分後に15%未満である。
【0114】
ある実施形態においては、水性薬剤溶液中のレボドパの分解は、貯蔵溶液と水性緩衝溶液の混合時点から24時間まで、例えば16、8、6、4、3、2時間までに15%未満である。
【0115】
更なる一実施形態においては、水性薬剤溶液はカルビドパを含み、カルビドパの分解は、貯蔵溶液と水性緩衝溶液の混合時点から24時間まで、例えば16、8、6、4、3、2時間までに15%未満である。
【0116】
一実施形態においては、水性薬剤溶液はカルビドパを含み、水性薬剤溶液中のカルビドパの15重量%が分解する前、例えば10重量%が分解する前に水性薬剤溶液が投与される。
【0117】
一実施形態においては、水性薬剤溶液はカルビドパを含み、水性貯蔵溶液と水性緩衝溶液の混合から中枢神経系(CNS)の疾患に苦しむ対象に水性薬剤溶液を投与するまでの時間は、混合から水性薬剤溶液中のレボドパ又はカルビドパの15重量%、例えば10重量%が分解するまでの時間よりも短い。
【0118】
更なる一実施形態においては、3,4-ジヒドロキシフェニルアセトン(DHPA)のレベルはカルビドパ(CD)の5mg%未満であり、ヒドラジンのレベルは、貯蔵溶液と水性緩衝溶液の混合時点から1分後、例えば5、10、20、30、40、50、60分後にカルビドパ(CD)の1mg%未満である。
【0119】
レボドパは、主にパーキンソン病の処置に使用される。しかし、下肢静止不能症候群などの他のドパミン関連障害もレボドパを用いて処置される。一実施形態においては、CNS疾患は、パーキンソン病、非定型パーキンソニズム、アルツハイマー病、下肢静止不能症候群(RLS:Restless Legs Syndrome)及び神経精神病群からなる群から選択され、好ましくはCNS疾患はパーキンソン病である。
【0120】
更なる一実施形態においては、CNS疾患は、合併症期のパーキンソン病である。溶液は、他の運動障害(ジストニア、進行性核上性麻痺[PSP:progressive supranuclear palsy]、神経遮断薬悪性症候群[NMS:neuroleptic malignant syndrome]、主要精神障害(統合失調症、気分障害、人格障害)、内分泌障害(真性糖尿病、本態性肥満、下垂体機能障害)、肝疾患(アルコール性肝硬変、脂肪性肝炎、肝性脳症)、循環器疾患、喘息などの他の障害にも有益であり得る。
【0121】
上述したように、生理的に許容されるpH範囲、高いレボドパ濃度などの水性薬剤溶液の独特の性質のため、水性薬剤溶液は薬剤輸液又は注射液として使用するのに適切である。多量の溶液を短期間に注射して、レボドパの高い治療レベルに急速に到達する利点もあるかもしれないが、最良の処置効果は連続投与によって達成される。というのは、これが長期のレボドパ使用の幾つかの副作用を防止することが判明したからである。
【0122】
皮下注入は、十分証明された技術であり、低注入速度による投与を必要とする薬物療法(インスリン、モルフィンなど)に極めて有効であることが知られている点で、適切な投与経路である。皮下組織は血管がほとんどなく、吸収速度が遅く、持続的になる。したがって、一実施形態においては、水性薬剤溶液は薬剤輸液又は注射液であり、更なる一実施形態においては、溶液は連続投与用である。更なる一実施形態においては、溶液は非経口投与用である。更なる一実施形態においては、非経口投与は、皮下、静脈内、動脈内、骨内、筋肉内、脳内、脳室内又は髄腔内投与であり、投与方式は注射又は注入である。非経口投与は皮下投与とすることができる。場合によっては、非経口投与は静脈内投与である。一実施形態においては、非経口投与は、最高24時間、例えば0.1~4時間、例えば4~6時間、例えば6~8時間、例えば8~12時間、例えば12~16時間、例えば16~20時間連続である。一実施形態においては、溶液は注射用である。
【0123】
上述したように、特許文献2及び特許文献3に記載の輸液はすべてpH値が9~10の範囲にある。したがって、それらは連続非経口投与に適切ではない。特許文献3に記載の生成物に対して行われた臨床試験には、処置開始後6~8時間まで(合併症期のPDに苦しむ患者の)血漿中のレボドパの治療レベルに達しないことが示されている。これとは対照的に、本発明を用いて合併症期のPD患者に行われた薬物動態試験の示唆するところによれば、投与開始時点から1時間未満以内にレボドパの治療レベルに達することができる。幾つかの因子がこれに寄与し得るが、本発明の溶液のpH範囲は、レボドパの吸収速度及び臨床効果を高める可能性がある。本発明の一実施形態においては、合併症期のパーキンソン病に苦しむ患者のオンオフ症候を処置するときには、投与開始時点から3時間未満以内、例えば2時間、1時間、50分、40分、30分、20分又は10分以内に治療レベルに達する。
【0124】
さらに、本発明への急速な応答によって、様々なPD患者のレボドパ要求の短期の変化に応じるように(注入速度を変えることによって)レボドパ血漿中濃度を調節することができる。本発明の更なる一実施形態においては、レボドパ要求が変動する個々の患者のオンオフ症候を最小限にするのに十分短い期間内に、注入速度を調節することによって、レボドパの血漿中濃度を調節することができる。図12及び13には、3名の患者のレボドパ及びカルビドパの平均血中及び血漿中濃度を示す。見て分かるように、本発明の溶液は、所望の治療レベルに急速に達し、それを維持することができる。
【0125】
十二指腸投与用の本発明の溶液の使用など、他の投与経路も可能である。しかし、先に指摘したように、十二指腸を介した投与は、一般に、腹壁を通るプローブを必要とする。一実施形態においては、水性薬剤溶液は、経腸投与、好ましくは十二指腸投与用である。
【0126】
本発明の処方が貯蔵溶液と緩衝溶液の即座の混合を可能にするという事実は、「オンライン」投与系の使用を可能にする。表21には、本発明の溶液及びオンライン混合系を用いたオンライン混合実験の結果を要約する。APIの分解及びDHPAのレベルは、貯蔵溶液と緩衝溶液が混合されたずっと後でも規定値内に十分ある。
【0127】
更なる一実施形態においては、中枢神経系(CNS)の疾患の処置に使用される水性薬剤溶液を供給するためのキットが提供される。既に概説したように、水性薬剤溶液は、少なくとも5mg/mlの溶解レボドパを含み、pHが3.0~8.5の範囲である。一部の実施形態においては、キットは以下を含む。
(a)レボドパを含み、pHが25℃で2.8未満である水性貯蔵溶液、
(b)緩衝剤成分を含み、pHが25℃で少なくとも4.0である、前記水性貯蔵溶液のpHを増加させるための水性緩衝溶液。
【0128】
一部の実施形態においては、キットは以下を含む。
(a)レボドパを含み、pHが25℃で8.0以上である水性貯蔵溶液、及び
(b)緩衝剤成分を含み、pHが25℃で6.0以下である、前記貯蔵溶液のpHを低下させるための水性緩衝溶液。
【0129】
キットの水性貯蔵溶液は、本明細書に開示される水性貯蔵溶液のいずれかとすることができる。水性緩衝溶液は、本明細書に開示される水性緩衝溶液のいずれかとすることができる。
【0130】
一部の実施形態においては、上記キットのいずれかは更に以下を含む。
(c)前記溶液a)とb)を混合するための混合手段1、及び
(d)ステップc)の前記混合溶液を移送するための出力手段2。
【0131】
出力手段は、カップリング、アダプターなどの連結器とすることができる。投与では、出力手段は、シリンジ針などの注射又は注入手段20を含む、又は該手段に接続することができる。針材料と混合水性薬剤溶液の化学反応を最小限にするために、及び/又は混合水性薬剤溶液の投与中の患者の快適さを増すために、針をプラスチック製にすることができる。
【0132】
水性薬剤溶液は、薬剤輸液又は注射液とすることができる。注射又は注入手段は、したがって、投与方式に合わせて選択される。水性薬剤溶液は、連続投与用とすることができる。それは非経口投与用とすることができる。更なる一実施形態においては、水性薬剤非経口投与は、皮下、静脈内、動脈内、骨内、筋肉内、脳内、脳室内又は髄腔内投与であり、投与方式は注射又は注入である。一部の実施形態においては、非経口投与は皮下投与である。非経口投与は静脈内投与とすることもできる。
【0133】
一実施形態においては、キットは、中枢神経系(CNS)の疾患の処置に使用される。
【0134】
貯蔵溶液と緩衝溶液の区画は、(図11Aに見られるように)1個のバッグ中の2つの部分として圧縮することができ、又は別々にすることができる。バッグをつるすことによって、溶液を、混合手段1を通して出力手段2に重力送りすることができる。気密密封区画を使用して、無菌性、使いやすさ、制御の改善、及び総費用の削減を得ることができる。ローラークランプなどの流量調節器を使用して、流量を調節することもできる。
【0135】
実施形態の別の簡略バージョンによれば、水性貯蔵溶液と水性緩衝溶液を、2つの部分の間に取り外し可能又は一時的な障壁を有する1個のバッグ中の2つの部分として圧縮することができる。例えば、図14に見られるように、2つの部分は、穿孔可能な障壁31で分離することができ、障壁31は、2つの部分を一緒に圧縮することによって除去することができ、混合された2つの溶液を含む唯一の部分を含むバッグ及び出力手段2が得られる。その場合、混合は、バッグを押して溶液をバッグ中で移動させて、貯蔵溶液と緩衝溶液を混合することによって促進される。こうした実施形態は、貯蔵溶液と緩衝溶液が単純な混合手順を許容するという事実から可能である。次いで、投与を単一のポンプ(又は場合によっては重力送り)によって患者に溶液の期限内に促進することができる。生成した溶液を、ボーラス注射として直接注射することもできる。しかし、この簡略実施形態は、過飽和溶液などの準安定には最適でない可能性がある。さらに、混合から投与までの時間が長くなる。それでも、こうした簡略実施形態は、一部の臨床現場において許容され得る。
【0136】
ポンプを使用すると、送達される流量及び総量を正確に制御することができる。一実施形態によれば、溶液を混合手段に移送し、混合手段を通して出力手段に移送するためにポンプ4を使用する。こうした系の略図を図11Bに示す。こうしたキットでは、混合手段は、2つの区画3A、3B、ポンプ4及び混合室10を備え、第1の区画3Aは水性貯蔵溶液を含み、第2の区画3Bは水性緩衝溶液を含む。ポンプ4は、溶液を区画3A、3Bから混合室10に移送するように配置される。混合室10は、受けた水性貯蔵溶液と受けた水性緩衝溶液を混合するように配置され、ポンプ4は、さらに、混合水性薬剤溶液を混合室から出力手段2に移送するために配置される。
【0137】
混合手段1は2台のポンプ4を含むことができ、第1のポンプ4は第1の区画3Aに接続され、第2のポンプ4は第2の区画3Bに接続される。これによって、各ポンプにより送達される流量及び総量を正確に制御することができ、異なる混合比の貯蔵溶液と緩衝溶液を使用することができる。緩衝系が使用されるので、混合溶液のpHは、緩衝剤が緩衝能力を有する限り、緩衝剤平衡点から極めてゆっくり変化する。一実施形態においては、貯蔵溶液と緩衝溶液の比は、10:1~1:10、例えば5:1~1:5、例えば2:1~1:2、例えば1:1である。
【0138】
注入の制御に適切な任意のポンプを使用することができる。それは、減圧又は浸透圧力を用いた系などの流体を移動させる任意の適切な系を含む。一実施形態においては、ポンプ4は、シリンジポンプ、定量ポンプ、蠕動ポンプ又は移動式ポンプである。
【0139】
一実施形態においては、キットは、更に管5A、5B、5Cを含む。溶液区画3A、3Bを第1の5A及び第2の5B管によって混合室10に接続することができ、混合室を第3の管5Cによって出力手段2に接続することができる。行われた実験によって、不透明管及び/又は区画がレボドパ及び/又はカルビドパの分解を制限し得ることが確認された。これは、分解反応がある程度光で誘起されることを示唆している。容器3A、3B及び/又は管5A、5B、5Cは、不透明又はUV吸収性とすることができる。
【0140】
混合手段1全体がカード又はチップの上にあるときなど、ある設計においては、水性貯蔵溶液及び水性緩衝溶液を含む区画3A、3Bに管を使用せずに混合室10を直接接続することができる。同様に、混合手段1を出力手段2に管を使用せずに直接接続することができる。これは、混合手段が、図11Aなどに示すように、バッグ中に統合されている場合であり得る。
【0141】
溶液を能動的に混合する形状のチャネルに、2つの溶液を接合部で1つにするY連結器11を含めて、幾つかの異なる種類の混合室10が存在し、又は開発可能である。したがって、一実施形態においては、混合室10は、2方向Y連結器11である。更なる一実施形態においては、2方向Y連結器11は、「Y’連結器セット2方向」である。オンライン系に使用することができるこうした連結器の一例は、Becton,Dickinson and Companyによる2方向Y連結器11、又は類似装置である。
【0142】
ある実施形態においては、貯蔵溶液と緩衝溶液の混合は、特定の条件下で、混合室とのyカップリングによって構成された混合手段において行うことができ、混合室には、貯蔵溶液及び緩衝溶液が2個のプラスチック管を介して導かれ、それぞれ貯蔵溶液及び緩衝溶液を含む2台のポンプ(又は好ましくは、2個の容器及び1個の電気モーターによって運転される2個のピストンを備える1台のポンプ)によって供給され、生成した混合輸液がそこから注入部位にプラスチック管を介して導かれる。生成した混合溶液は、10mg/mlに近い又はそれ以上のレボドパ濃度において不安定である可能性があり、それは混合溶液が過飽和である結果かもしれず、APIが沈殿する。処方、方法及び装置の最適化を含む特別な対策を導入することができる。
【0143】
特定の実施形態は、したがって、以下を含むことができる。
1.製造中に窒素バブリングされるAPIを含有する貯蔵溶液。
2.制限された(一般に1.4~10.0mL/h)輸液の流量。低すぎる流量は即時の沈殿を招く可能性がある。
3.UV光から保護されたプラスチック管。
4.混合室を備えたyカップリング。混合室のサイズは、貯蔵溶液及び緩衝溶液の組成並びに流量を考慮して最適化される必要がある。
5.以下のパラメータを考慮して最適化されたプラスチック管の全長:
mm単位で表される混合手段の出力から注入針までのプラスチック管の長さ(l)は、好ましくは以下を超えてはならない。
l=(L×200×t)./.(D2×π×3×c×h)式中、
L=mg単位で表される、一群の患者によって1日に必要なレボドパの最大量
t=秒単位で表される、APIの許容分解を考慮した混合から注入までの許容され得る最大時間
D=mm単位で表されるプラスチック管の直径
c=mg/mL単位で表されるレボドパの濃度
h=当該患者グループの毎日の処置時間
【0144】
混合水性薬剤溶液が導かれる螺旋形流路などのあるチャネル形状を介して流体を移動させ、それによってチャネルを介して移送されるときに溶液にかかる遠心力のために混合が増強されることによって、混合を能動的に促進することもできる。一実施形態においては、混合室10は、2つの溶液を混合するための螺旋形流路12によって構成され、又は螺旋形流路12を含む。他の形状は、ベンチュリ混合器13、すなわち、収斂域を用いてベンチュリ効果を起こして混合を促進するチャネルとすることができる。混合は、能動混合ツールを利用することもできる。一実施形態においては、混合室10は、ピストン、スクリュー、プロペラ、類似装置などの電動混合ツール14を含む。混合手段を図11A~Dに図によって要約する。
【0145】
キットの使用を容易にするために、貯蔵及び緩衝溶液は、適切な貯蔵容器を必要とする。一般に、注入用の医用溶液を閉鎖系に貯蔵して、含有溶液を大気に接触させないようにする。好ましくは、溶液容器は、含有溶液のオートクレーブ滅菌にも耐えることができなければならない。本発明の一実施形態においては、容器は、シリンジ、バッグ、ボトル又はカセットである。
【0146】
非経口投与に適切な溶液は、結晶化又は沈殿由来の粒子などの混入物を含んではならない。したがって、投与前に輸液をろ過することが有利である。使用することができる微生物フィルター、粒子フィルターなどの当該技術分野で既知の幾つかの異なるフィルタータイプがある。一実施形態においては、キットは、更に、非経口投与前に溶液をろ過するための微生物フィルター、粒子フィルターなどのフィルター6を含む。フィルター6は、混合室1の下流に配置される。
【0147】
キットを用いて患者のための増加した機動性を促進するために、好都合なサイズのキットを提供することが有利である。キットは、丸1日の連続使用が可能な体積の溶液区画3A、3Bを有することができる。あるいは、溶液区画3A、3Bは、比較的小さく、終日交換することができる。したがって、一実施形態においては、容器の体積は、中枢神経系(CNS)の疾患に苦しむ対象を少なくとも4時間、例えば4~6時間、例えば6~10時間、例えば10~16時間、例えば16~24時間連続的に処置することができるのに十分である。一実施形態においては、区画3A、3Bを交換又は補充することができ、好ましくは交換することができる。更なる一実施形態においては、区画3A、3Bを連続投与中でも補充又は交換することができる。一実施形態においては、容器の体積は、1個の容器当たり10~1000ml、例えば1個の容器当たり50~500ml、例えば1個の容器当たり100~250mlである。
【0148】
交換可能な区画3A、3Bを用いて、区画3A、3Bを空になったときに交換する限り、処置を続けることができる。一実施形態においては、区画3A、3Bを24時間中に2回、3回、4回、5回又は6回新しい区画3A、3Bで交換することができ、対象を24時間連続して処置することができる。一実施形態においては、区画3A、3Bの交換に必要な時間は、10分未満、例えば8分、6分、3分、1分である。
【0149】
適応性を考慮して、キットは制御手段7を含むことができる。これは、単にポンプ4のオン/オフ制御とすることもできるが、注入速度の制御を容易にすることもでき、貯蔵溶液と緩衝溶液の比を変えることによって混合溶液の組成を制御することもできる。したがって、一実施形態においては、キットは、更に、ポンプ(単数又は複数)4の流速を制御する制御手段7を含む。したがって、注入速度、注入期間を制御することができ、及び/又は2台のポンプ4を使用する場合には、貯蔵溶液と緩衝溶液の比を変えることができる。更なる一実施形態においては、キットは、更に、ポンプ(単数又は複数)4、混合室10及び/又は制御手段7などの能動部品に動力を供給する電池を含む。制御手段7は、(過剰投与を起こす)制御されない流れ、(過少量投与を起こす)制御されない流量不足、(患者から血液を吸引し得る)逆流、(空気塞栓を起こし得る)ライン中の空気などの危険を回避する安全機能を含むこともできる。さらに、ポンプ4及び/又は制御手段7は、好ましくは、単一障害点を持たない、すなわち、単一の失敗原因によってポンプが(可聴音の)誤り表示を発さずに音もなく正確に作動しなくなってはならない。制御手段7は、治療事象の内部電子記録を保存することもできる。
【0150】
キットを任意の場所で容易に使用できるようにするために、キットは、使用中に役立つ他の成分を含むこともできる。一実施形態においては、キットは、更に、1対の手術用手袋、クリーニングワイプ、消毒薬を含む。更なる一実施形態においては、キットは、取扱い説明書を含む。
【0151】
本発明によれば、水性薬剤溶液を供給するセットも提供される。一部の実施形態においては、セットは、pHが25℃で2.8未満の水性貯蔵溶液を含む。貯蔵溶液は、滅菌水、レボドパ、少なくとも1種の酵素阻害剤、少なくとも1種の生理的に許容される酸、及び少なくとも1種の安定剤を含む。貯蔵溶液は、好ましくは、調製後に窒素バブリングされる。セットは、更に、pHが25℃で少なくとも4.0の水性緩衝溶液を含む。水性緩衝溶液は、滅菌水、少なくとも1種の緩衝剤成分、並びに少なくとも1種の安定剤及び/又は可溶化剤を含む。
【0152】
更なる実施形態においては、セットは、前述の貯蔵溶液及び緩衝溶液又はこれらの溶液の特徴のいずれかを含むことができる。一実施形態によれば、本発明は、中枢神経系(CNS)の疾患の処置に使用される水性薬剤溶液を連続的に調製する方法であって、水性薬剤溶液が連続非経口又は経腸投与に適した方法に関する。該方法は、レボドパを含みpHが25℃で2.8未満である貯蔵溶液の流れと、pHが25℃で少なくとも4.0である水性緩衝溶液の流れを連続的に混合し、それによって水性薬剤溶液の連続流を前記混合から連続的に得るステップを含む。水性薬剤溶液は、少なくとも5mg/mlの溶解レボドパ、例えば少なくとも6、7、8、9、10、15又は20mg/mlの溶解レボドパを含み、好ましくはレボドパの濃度は、5~20mg/mlの溶解レボドパの範囲、例えば5~15mg/ml又は5~10mg/mlの溶解レボドパの範囲である。
【0153】
処方が連続的に調製されるという事実は、本発明における「オンライン」投与手法を可能にし、指定の貯蔵溶液と緩衝溶液を連続的に混合することができ、生成した輸液を連続的に投与することができる。これは、連続皮下注入に特に好都合であり、輸液を連続的に混合することができ、低速の持続注入の過程で完全に新しい輸液を供給することができる。連続調製とそれに続く迅速なオンライン投与のために、APIのあらゆる分解は薬事規制の十分な範囲内にある。
【0154】
更なる実施形態においては、中枢神経系(CNS)の疾患の処置に使用される水性薬剤溶液を連続的に調製する方法は、前述の水性薬剤溶液、貯蔵溶液及び緩衝溶液又はこれらの溶液の任意の特徴のいずれかを含むことができる。種々の溶液の好ましい態様については上で考察した。
【0155】
一実施形態によれば、本発明は、中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法に関する。一部の実施形態においては、該方法は、レボドパを含み、pHが25℃で2.8未満である貯蔵溶液の流れと、pHが25℃で少なくとも4.0である水性緩衝溶液の流れを連続的に混合するステップ、少なくとも5mg/mlの溶解レボドパ、例えば少なくとも6、7、8、9、10、15又は20mg/mlの溶解レボドパな含む水性薬剤溶液の連続流を前記混合ステップから連続的に得るステップであって、好ましくはレボドパの濃度が5~20mg/mlの溶解レボドパの範囲、例えば5~15mg/ml又は5~10mg/mlの溶解レボドパの範囲であるステップ、及び中枢神経系(CNS)の疾患に苦しむ対象に得られた水性薬剤溶液を連続投与するステップを含む。
【0156】
中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法の更なる特徴、態様及び実施形態、例えば、中枢神経系(CNS)の疾患の処置における水性薬剤溶液の使用は、他の実施形態に関連して本明細書に既述されており、こうした特徴、態様及び実施形態は、中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法に関連して同様に適用可能である。
【0157】
明白なことではあるが、本明細書に開示される化合物及び医薬組成物は、本明細書に開示されるこうした処置及び防止に使用される医薬品の製造に使用することができる。こうした一実施形態は、中枢神経系(CNS)の疾患の処置に使用される医薬品の製造のための本発明に係る水性薬剤溶液の使用に関する。医薬品は、先の実施形態に従って患者に投与される。
【0158】
同様に、本明細書に開示される化合物及び組成物は、本明細書に開示されたこうした疾患及び障害を処置又は防止する方法に使用できることも明らかである。こうした方法は、有効量の化合物又は医薬組成物をこうした処置を必要とする対象に投与するステップを含む。
【0159】
本発明の幾つかの更なる付番された実施形態は、以下に関する。
【0160】
1.中枢神経系(CNS)の疾患の処置に使用される水性薬剤溶液であって、水性薬剤溶液が少なくとも5mg/mlの溶解レボドパを含み、水性薬剤溶液のpHが3.0~8.5の範囲であり、溶液が、
a)レボドパを含み、pHが25℃で2.8未満である水性貯蔵溶液と
b)少なくとも1種の緩衝剤成分を含み、pHが25℃で少なくとも4.0である、前記貯蔵溶液のpHを増加させるための水性緩衝溶液
を混合することによって供給され、
水性貯蔵溶液と水性緩衝溶液の混合から24時間以内、例えば16時間、12時間、6時間、4時間、2時間、1時間、30分、20分、10分、5分又は1分以内に水性薬剤溶液が中枢神経系(CNS)の疾患に苦しむ対象に投与される、
水性薬剤溶液。
【0161】
2.水性薬剤溶液が薬剤輸液又は注射液である、実施形態1に従って使用される水性薬剤溶液。
【0162】
3.水性薬剤溶液が経腸的又は非経口的、例えば非経口的に投与される、実施形態1又は2に従って使用される水性薬剤溶液。
【0163】
4.水性薬剤溶液が非経口的に投与される、3に従って使用される水性薬剤溶液。
【0164】
5.非経口投与が皮下、経皮、静脈内、動脈内、骨内、筋肉内、脳内、脳室内又は髄腔内であり、投与方式が注射又は注入である、実施形態4に従って使用される水性薬剤溶液。
【0165】
6.経腸投与が十二指腸投与である、実施形態3に従って使用される水性薬剤溶液。
【0166】
7.投与が最高12時間、例えば24時間連続する、実施形態1から6のいずれか一項に従って使用される水性薬剤溶液。
【0167】
8.水性薬剤溶液中のレボドパの15重量%が分解する前、例えば10重量%が分解する前に水性薬剤溶液が投与される、実施形態1から7のいずれか一項に従って使用される水性薬剤溶液。
【0168】
9.水性貯蔵溶液と水性緩衝溶液の混合から1時間以内、例えば50分、40分、30分、20分、10分、5分又は1分以内に水性薬剤溶液が中枢神経系(CNS)の疾患に苦しむ対象に投与される、実施形態1から8のいずれか一項に従って使用される水性薬剤溶液。
【0169】
10.水性緩衝溶液と水性貯蔵溶液が連続的に混合され、それによって得られた水性薬剤溶液が中枢神経系(CNS)の疾患に苦しむ対象に連続投与される、実施形態1から9のいずれか一項に従って使用される水性薬剤溶液。
【0170】
11.水性薬剤溶液がレボドパで過飽和している、実施形態1から10のいずれか一項に従って使用される水性薬剤溶液。
【0171】
12.中枢神経系(CNS)の疾患の処置に使用される水性薬剤溶液であって、水性薬剤溶液が少なくとも5mg/mlの溶解レボドパを含み、水性薬剤溶液のpHが3.0~8.5の範囲であり、
水性薬剤溶液がレボドパで過飽和している、
水性薬剤溶液。
【0172】
13.水性薬剤溶液が
a)レボドパを含み、pHが25℃で2.8未満である水性貯蔵溶液と
b)少なくとも1種の緩衝剤成分を含み、pHが25℃で少なくとも4.0である、前記貯蔵溶液のpHを増加させるための水性緩衝溶液
を混合することによって供給される、実施形態12に従って使用される水性薬剤溶液。
【0173】
14.水性薬剤溶液が、少なくとも5mg/mlの溶解レボドパ、例えば少なくとも6、7、8、9、10、15又は20mg/mlの溶解レボドパを含み、好ましくはレボドパの濃度が5~20mg/mlの溶解レボドパ、例えば5~15mg/ml又は5~10mg/mlの溶解レボドパの範囲である、実施形態1から13のいずれか一項に従って使用される水性薬剤溶液。
【0174】
15.水性薬剤溶液のpHが3.5~8.0、例えば4.0~7.5、4.5~7.0、5.0~5.5である、実施形態1から14のいずれか一項に従って使用される水性薬剤溶液。
【0175】
16.水性貯蔵溶液が少なくとも10mg/mlのレボドパ、例えば少なくとも15、20、25、30、35又は40mg/mlのレボドパを含む、実施形態1から10又は12から15のいずれか一項に従って使用される水性薬剤溶液。
【0176】
17.水性貯蔵溶液のpHが2.0未満、例えば1.5、1.0又は0.5未満であり、好ましくは水性貯蔵溶液のpHが0.0~2.0、例えば0.0~1.5、0.0~1.0、0.0~0.5の範囲のpHである、実施形態1から10又は12から16のいずれか一項に従って使用される水性薬剤溶液。
【0177】
18.水性貯蔵溶液が少なくとも1種の生理的に許容される酸を含む、実施形態1から10又は12から17のいずれか一項に従って使用される水性薬剤溶液。
【0178】
19.生理的に許容される酸が塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸である、実施形態18に従って使用される水性薬剤溶液。
【0179】
20.鉱酸が塩酸(HCl)であり、好ましくは水性貯蔵溶液が少なくとも30mM HCl、例えば少なくとも50mM HCl、100mM HCl、150mM HClを含む、実施形態19に従って使用される水性薬剤溶液。
【0180】
21.生理的に許容される酸が酢酸である、実施形態20に従って使用される水性薬剤溶液。
【0181】
22.水性貯蔵溶液が更に少なくとも1種の安定剤を含む、実施形態1から10又は12から21のいずれか一項に従って使用される水性薬剤溶液。
【0182】
23.前記水性貯蔵溶液が、水性緩衝溶液と混合される前に水性貯蔵溶液を通した不活性ガス、例えば窒素のバブリングなどによって脱気される、実施形態1から10又は12から22のいずれか一項に従って使用される水性薬剤溶液。
【0183】
24.更に少なくとも1種の酵素阻害剤を含む、実施形態1から23のいずれか一項に従って使用される水性薬剤溶液。
【0184】
25.酵素阻害剤が、ドーパ脱炭酸酵素(DDC)阻害剤、カテコール-O-メチル転移酵素(COMT)阻害剤及びモノアミノ酸化酵素(MAO-B)阻害剤からなる群から選択される、実施形態24に従って使用される水性薬剤溶液。
【0185】
26.前記酵素阻害剤が、
a.カルビドパ一水和物などのカルビドパ、ベンセラジド、メチルドパ及びアルファ-ジフルオロメチルドーパ(DFMD)からなる群から選択されるドーパ脱炭酸酵素(DDC)阻害剤、
b.エンタカポン、トルカポン及びニテカポンからなる群から選択されるカテコール-O-メチル転移酵素(COMT)阻害剤、
c.ラサギリン、セレギリン及びサフィナミドからなる群から選択されるモノアミノ酸化酵素(MAO-B)阻害剤、又は
d.それらの組合せ
である、実施形態25に従って使用される水性薬剤溶液。
【0186】
27.水性緩衝溶液のpHが少なくとも4.0であり、好ましくは水性緩衝溶液のpHが4.0~12、例えば4.0~9、4.0~7.5、4.0~6である、実施形態1から10又は12から26のいずれか一項に従って使用される水性薬剤溶液。
【0187】
28.水性緩衝溶液が、少なくとも1つのpKa値が3~9の範囲、例えば5~7.5の範囲である少なくとも1種の緩衝剤成分を含む、実施形態1から10又は12から27のいずれか一項に従って使用される水性薬剤溶液。
【0188】
29.緩衝剤成分がクエン酸である、実施形態28に従って使用される水性薬剤溶液。
【0189】
30.緩衝剤成分がクエン酸及びホスファートである、実施形態28に従って使用される水性薬剤溶液。
【0190】
31.緩衝剤成分がトロメタモール(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)である、実施形態28に従って使用される水性薬剤溶液。
【0191】
32.緩衝剤成分が、アジピン酸、ホウ酸、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸カルシウム、ジエタノールアミン、グリシン、マレイン酸、メグルミン、メチオニン、グルタミン酸モノナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム二水和物、乳酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム又はこれらの2種以上の混合物である、実施形態28に従って使用される水性薬剤溶液。
【0192】
33.水性緩衝溶液が更に少なくとも1種の可溶化剤を含む、実施形態1から10又は11から32のいずれか一項に従って使用される水性薬剤溶液。
【0193】
34.可溶化剤が、グルタチオン、システイン、HP-ベータ-シクロデキストリン、N-メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMA)、Collidone、Kolliphor HS15、PEG400、プロピレングリコール、ポリソルベート80、グリセリン、エタノール、Cremophor EL、DMSO、メチオニン、EDTA、アスコルビン酸、アスパラギン酸、塩化ベンザルコニウム、安息香酸ベンジル、塩化セチルピリジニウム、ヒドロキシプロピルベータデクス、レシチン、マクロゴール15ヒドロキシステアラート、メグルミン、リン脂質、ポロクサマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ピロリドン、トリオレイン、ビタミンEポリエチレングリコールスクシナート又はこれらの2種以上の混合物からなる群から選択される、実施形態33に従って使用される水性緩衝溶液。
【0194】
35.可溶化剤がHP-ベータ-シクロデキストリンであり、好ましくはHP-ベータ-シクロデキストリンが約75mg/mlの濃度で存在する、実施形態34に従って使用される水性薬剤溶液。
【0195】
36.水性緩衝溶液が更に少なくとも1種の安定剤を含む、実施形態1から11又は13から35のいずれか一項に従って使用される水性薬剤溶液。
【0196】
37.安定剤が安定化剤、抗酸化剤及び防腐剤又はそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態36に従って使用される水性薬剤溶液。
【0197】
38.安定化剤が生理的に許容される糖である、実施形態37に従って使用される水性薬剤溶液。
【0198】
39.生理的に許容される糖がグルコースである、実施形態38に従って使用される水性薬剤溶液。
【0199】
40.グルコース濃度が5~100mg/mlの範囲である、実施形態39に従って使用される水性薬剤溶液。
【0200】
41.水性薬剤溶液がグルコースを含まない、実施形態37に従って使用される水性薬剤溶液。
【0201】
42.安定化剤が、ベントナイト、アルギン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、セラトニア、シクロデキストリン、デキストラン、ジエタノールアミン、エチレングリコールパルミトステアラート、フルクトース、モノステアリン酸グリセリン、レシチン、マクロゴール15ヒドロキシステアラート、マンニトール、モノエタノールアミン、プロピレングリコール、酢酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、ソルビトール、スルホブチルエーテルベータ-シクロデキストリン、トレハロース又は酢酸亜鉛である、実施形態37に従って使用される水性薬剤溶液。
【0202】
43.抗酸化剤が、アルファトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール、クエン酸一水和物、エリソルビン酸、リンゴ酸、メチオニン、モノチオグリセロール、ペンテト酸、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムからなる群から選択される、実施形態37に従って使用される水性薬剤溶液。
【0203】
44.防腐剤が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ホウ酸、ブロノポール、ブチレングリコール、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム五水和物、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、クロロクレゾール、クエン酸一水和物、クレゾール、エデト酸、パラヒドロキシ安息香酸エチル、グリセロール、イミド尿素、パラヒドロキシ安息香酸メチル、モノチオグリセロール、フェノール、フェノキシエタノール及びフェニルエチルアルコールからなる群から選択される、実施形態37に従って使用される水性薬剤溶液。
【0204】
45.実施形態36から44のいずれか一項に従って使用される水性薬剤溶液であって、溶液が、
I)
a)滅菌水、
b)レボドパ、
c)少なくとも1種の酵素阻害剤、
d)少なくとも1種の生理的に許容される酸、及び
e)少なくとも1種の安定剤
を含むpHが25℃で2.8未満の水性貯蔵溶液と、
ここで前記貯蔵溶液は調製後に窒素バブリングされる、
II)
f)滅菌水、
g)少なくとも1種の緩衝剤成分、及び
h)少なくとも1種の安定剤及び/又は可溶化剤
を含むpHが25℃で少なくとも4.0の水性緩衝溶液
を混合することによって供給され、
水性薬剤溶液が場合によっては過飽和であり、水性貯蔵溶液と水性緩衝溶液の混合から24時間以内、例えば16時間、12時間、6時間、4時間、2時間、1時間、30分、20分、10分、5分又は1分以内に水性薬剤溶液が中枢神経系(CNS)の疾患に苦しむ対象に投与される、
水性薬剤溶液。
【0205】
46.
I)
a)水963g、
b)5M HCl43.3g
ここで溶液は窒素パージされる、
c)微粉化レボドパ20g、及び
d)カルビドパ一水和物2.71g(カルビドパ2.5g相当)
を含む水性貯蔵溶液1000mlと、
ここで前記溶液は再度窒素パージされる、
II)
e)水968g、
f)クエン酸三ナトリウム二水和物64.7g、
g)リン酸水素二ナトリウム二水和物3.56g、及び
h)1M HCl3.67g
を含む水性緩衝溶液
を混合することによって調製される、10mg/mlレボドパ及び1.25mg/ml(1:8)カルビドパを含む、実施形態36から54のいずれか一項に従って使用される水性薬剤溶液。
【0206】
47.カルビドパ2.5gがカルビドパ一水和物2.71gとして添加される、実施形態46に従って使用される水性薬剤溶液。
【0207】
48.貯蔵溶液と水性緩衝溶液が混合された後に医薬組成物中のレボドパの少なくとも85重量%が少なくとも1分間、例えば少なくとも5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120分間未分解のままである、実施形態1から10又は12から47のいずれか一項に従って使用される水性薬剤溶液。
【0208】
49.水性薬剤溶液がカルビドパを含み、貯蔵溶液と水性緩衝溶液が混合された後に少なくとも1分間、例えば少なくとも5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120分間カルビドパの少なくとも85重量%が未分解のままである、実施形態1から10又は12から47のいずれか一項に従って使用される水性薬剤溶液。
【0209】
50.水性薬剤溶液がカルビドパを含み、貯蔵溶液と水性緩衝溶液が混合された後に少なくとも1分間、例えば少なくとも5、10、20、30、40、50、60分間、3,4-ジヒドロキシフェニルアセトン(DHPA)のレベルがカルビドパ(CD)の5mg%未満であり、ヒドラジンのレベルがカルビドパ(CD)の1mg%未満である、実施形態1から10又は12から49のいずれか一項に従って使用される水性薬剤溶液。
【0210】
51.水性薬剤溶液がカルビドパを含み、水性薬剤溶液中のカルビドパの15重量%が分解する前、例えば10重量%が分解する前に水性薬剤溶液が投与される、実施形態実施形態1から10又は12から48のいずれか一項に従って使用される水性薬剤溶液。
【0211】
52.水性薬剤溶液の重量オスモル濃度が50~1400mOsm/kg、好ましくは100~1000mOsm/kg、又は200~600mOsm/kgである、実施形態1から51のいずれか一項に従って使用される水性薬剤溶液。
【0212】
53.CNS疾患が、パーキンソン病、非定型パーキンソニズム、アルツハイマー病、下肢静止不能症候群(RLS)及び神経精神病群からなる群から選択され、好ましくはCNS疾患がパーキンソン病である、実施形態1から52のいずれか一項に従って使用される水性薬剤溶液。
【0213】
54.CNS疾患が合併症期のパーキンソン病である、実施形態53に従って使用される水性薬剤溶液。
【0214】
55.レボドパの血漿中濃度が投与開始時点から3時間未満、例えば2時間、1時間、50分、40分、30分、20分又は10分以内で治療レベルに達する、実施形態3から7のいずれか一項に従って使用される水性薬剤溶液。
【0215】
56.レボドパの血漿中濃度が、注入速度を調節することによって、パーキンソン病に関連したオンオフ症候を最小限にするのに十分短い期間内に調節され得る、実施形態3から7及び55のいずれか一項に従って使用される水性薬剤溶液。
【0216】
57.実施形態1から56のいずれか一項に従って使用される水性薬剤溶液であって、溶液が経腸的に、好ましくは十二指腸投与によって投与される、水性薬剤溶液。
【0217】
58.実施形態1から54のいずれか一項に従って使用される水性薬剤溶液であって、溶液が注射用に処方される、水性薬剤溶液。
【0218】
59.先行する実施形態のいずれか一項に記載の、中枢神経系(CNS)の疾患の処置に使用される、水性薬剤溶液を供給するためのキットであって、水性薬剤溶液が少なくとも5mg/mlの溶解レボドパを含み、水性薬剤溶液のpHが3.0~8.5の範囲であり、前記キットが、
a)先行する実施形態のいずれか一項に記載のレボドパを含みpHが25℃で2.8未満である水性貯蔵溶液、
b)前記水性貯蔵溶液のpHを増加させるための、先行する実施形態のいずれか一項に記載の水性緩衝溶液であって、緩衝剤を含み、pHが25℃で少なくとも4.0である水性緩衝溶液、
c)前記溶液a)とb)を混合するための混合手段(1)、及び
d)ステップc)の前記混合溶液のための出力手段(2)
を含む、キット。
【0219】
60.出力手段(2)が注射若しくは注入手段(20)を含む、又は注射若しくは注入手段(20)に接続される、実施形態59に記載のキット。
【0220】
61.注射又は注入手段(20)が針である、実施形態60に記載のキット。
【0221】
62.針がプラスチックでできた、実施形態61に記載のキット。
【0222】
63.混合手段(1)が2つの区画(3A、3B)、ポンプ(4)及び混合室(10)を含み、第1の区画(3A)が水性貯蔵溶液を含む容器を受ける手段を含み、第2の区画(3B)が水性緩衝溶液を含む容器を受ける手段を含み、ポンプ(4)が水性貯蔵溶液及び水性緩衝溶液を区画(3A、3B)から混合室(10)に移送するように配置され、混合室(10)が受けた水性貯蔵溶液と受けた水性緩衝溶液の混合に備えるように配置され、ポンプ(4)が、更に、混合水性薬剤溶液を混合室から出力手段(2)に移送するために配置された、実施形態59から62のいずれか一項に記載のキット。
【0223】
64.混合手段(1)が2台のポンプ(4)を含み、第1のポンプ(4)が第1の区画(3A)に接続され、第2のポンプ(4)が第2の区画(3B)に接続された、実施形態63に記載のキット。
【0224】
65.ポンプ(4)がシリンジポンプ、定量ポンプ、蠕動ポンプ又は移動式ポンプである、実施形態63又は64に記載のキット。
【0225】
66.第1の区画(3A)が第1の(5A)管によって混合室(10)に接続され、第2の区画(3B)が第2の(5B)管によって混合室(10)に接続され、混合室が第3の管(5C)によって出力手段(2)に接続された、実施形態63から65のいずれか一項に記載のキット。
【0226】
67.管(5A、5B、5C)及び/又は区画(3A、3B)が不透明又はUV吸収性である、実施形態66に記載のキット。
【0227】
68.混合室(10)が、それぞれ水性貯蔵溶液及び水性緩衝溶液を含む区画(3A、3B)に管を使用せずに直接接続された、実施形態63から65のいずれか一項に記載のキット。
【0228】
69.混合室(10)が2方向Y連結器(11)、好ましくはY’連結器セット2方向である、又は
混合室(10)が2つの溶液を混合するための螺旋形流路(12)を備える、又は
混合室(10)がベンチュリ混合器(13)を備える、又は
混合室(10)がピストン、スクリュー、プロペラ、類似装置などの電動混合ツール(14)を含む、
実施形態63から68のいずれか一項に記載のキット。
【0229】
70.区画(3A、3B)によって受けられた容器がシリンジ、バッグ、ボトル又はカセットである、実施形態63から69のいずれか一項に記載のキット。
【0230】
71.キットが、水性薬剤溶液をその注射又は注入前にろ過するための混合室(10)の下流に配置された微生物フィルター、粒子フィルターなどのフィルター(6)を更に含む、実施形態63から70のいずれか一項に記載のキット。
【0231】
72.キットが、ポンプ(単数又は複数)(4)の流量の制御を可能にする、ポンプ(単数又は複数)(4)を制御するための制御手段(7)を更に含む、実施形態63から71のいずれか一項に記載のキット。
【0232】
73.キットが、ポンプ(単数又は複数)(4)、混合室(10)及び/又は制御手段(7)などの能動部品に動力を供給する電池を更に含む、実施形態63から72のいずれか一項に記載のキット。
【0233】
74.区画(3A、3B)の体積が、中枢神経系(CNS)の疾患に苦しむ対象を少なくとも4時間、例えば4~6時間、例えば6~10時間、例えば10~16時間、例えば16~24時間連続的に処置可能にするのに十分である、好ましくは、区画(3A、3B)の各々の体積が10~1000ml、例えば50~500ml、例えば100~250mlである、実施形態63から73のいずれか一項に記載のキット。
【0234】
75.区画(3A、3B)によって受けられた容器を交換又は補充することができる、実施形態63から74のいずれか一項に記載のキット。
【0235】
76.区画(3A、3B)によって受けられた容器を24時間の間に2回、3回、4回、5回又は6回交換することができ、対象を24時間連続的に処置することができる、実施形態63から75のいずれか一項に記載のキット。
【0236】
77.容器を交換する時間を10分未満、例えば8分、6分、3分、1分にすることができる高速カップリングを容器が備えた、実施形態76に記載のキット。
【0237】
78.キットが1対の手術用手袋、クリーニングワイプ及び消毒薬を更に含む、実施形態59から77のいずれか一項に記載のキット。
【0238】
79.水性薬剤溶液を供給するためのセットであって、
I)
a)滅菌水、
b)レボドパ、
c)少なくとも1種の酵素阻害剤、
d)少なくとも1種の生理的に許容される酸、及び
e)少なくとも1種の安定剤
を含むpHが25℃で2.8未満の水性貯蔵溶液と、
II)
f)滅菌水、
g)少なくとも1種の緩衝剤成分、及び
h)少なくとも1種の安定剤及び/又は可溶化剤
を含むpHが25℃で少なくとも4.0の水性緩衝溶液と
を含む、セット。
【0239】
80.水性貯蔵溶液が少なくとも10mg/mlのレボドパ、例えば少なくとも15、20、25、30、35又は40mg/mlのレボドパを含む、実施形態79に記載のセット。
【0240】
81.水性貯蔵溶液のpHが2.0未満、例えば1.5、1.0又は0.5未満であり、好ましくは水性貯蔵溶液のpHが0.0~2.0、例えば0.0~1.5、0.0~1.0、0.0~0.5の範囲のpHである、実施形態79又は80に記載のセット。
【0241】
82.生理的に許容される酸が塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸である、実施形態79から81のいずれか一項に記載のセット。
【0242】
83.鉱酸が塩酸(HCl)であり、好ましくは水性貯蔵溶液が少なくとも30mM HCl、例えば少なくとも50mM HCl、100mM HCl、150mM HClを含む、実施形態82に記載のセット。
【0243】
84.生理的に許容される酸が酢酸である、実施形態79から83のいずれか一項に記載のセット。
【0244】
85.酵素阻害剤が、ドーパ脱炭酸酵素(DDC)阻害剤、カテコール-O-メチル転移酵素(COMT)阻害剤及びモノアミノ酸化酵素(MAO-B)阻害剤からなる群から選択される、実施形態79から84のいずれか一項に記載のセット。
【0245】
86.前記酵素阻害剤が、
カルビドパ一水和物などのカルビドパ、ベンセラジド、メチルドパ及びアルファ-ジフルオロメチルドーパ(DFMD)からなる群から選択されるドーパ脱炭酸酵素(DDC)阻害剤、
エンタカポン、トルカポン及びニテカポンからなる群から選択されるカテコール-O-メチル転移酵素(COMT)阻害剤、
ラサギリン、セレギリン及びサフィナミドからなる群から選択されるモノアミノ酸化酵素(MAO-B)阻害剤、又は
それらの組合せ
である、実施形態85に記載のセット。
【0246】
87.水性緩衝溶液のpHが少なくとも4.0であり、好ましくは水性緩衝溶液のpHが4.0~12、例えば4.0~9、4.0~7.5、4.0~6である、実施形態79から86のいずれか一項に記載のセット。
【0247】
88.少なくとも1種の緩衝剤成分の少なくとも1つのpKa値が3~9の範囲、例えば5~7.5の範囲である、実施形態79から87のいずれか一項に記載のセット。
【0248】
89.緩衝剤成分がクエン酸である、実施形態79から88のいずれか一項に記載のセット。
【0249】
90.緩衝剤成分がクエン酸及びホスファートである、実施形態79から88のいずれか一項に記載のセット。
【0250】
91.緩衝剤成分がトロメタモール(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)である、実施形態79から88のいずれか一項に記載のセット。
【0251】
92.緩衝剤成分が、アジピン酸、ホウ酸、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸カルシウム、ジエタノールアミン、グリシン、マレイン酸、メグルミン、メチオニン、グルタミン酸モノナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム二水和物、乳酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウムなど、又はこれらの2種以上の混合物である、実施形態79から88のいずれか一項に記載のセット。
【0252】
93.可溶化剤が、グルタチオン、システイン、HP-ベータ-シクロデキストリン、N-メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMA)、Collidone、Kolliphor HS15、PEG400、プロピレングリコール、ポリソルベート80、グリセリン、エタノール、Cremophor EL、DMSO、メチオニン、EDTA、アスコルビン酸、アスパラギン酸、塩化ベンザルコニウム、安息香酸ベンジル、塩化セチルピリジニウム、ヒドロキシプロピルベータデクス、レシチン、マクロゴール15ヒドロキシステアラート、メグルミン、リン脂質、ポロクサマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ピロリドン、トリオレイン、ビタミンEポリエチレングリコールスクシナート又はこれらの2種以上の混合物からなる群から選択される、実施形態79~92のいずれか一項に記載のセット。
【0253】
94.可溶化剤がHP-ベータ-シクロデキストリンであり、好ましくはHP-ベータ-シクロデキストリンが60~90mg/ml、例えば約75mg/mlの濃度で存在する、実施形態79から92のいずれか一項に記載のセット。
【0254】
95.安定剤が安定化剤、抗酸化剤及び防腐剤又はそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態79から94のいずれか一項に記載のセット。
【0255】
96.安定化剤が生理的に許容される糖である、実施形態79から94のいずれか一項に記載のセット。
【0256】
97.生理的に許容される糖がグルコースである、実施形態96に記載のセット。
【0257】
98.薬剤溶液がグルコースを含まない、実施形態79から96のいずれかの実施形態に記載のセット。
【0258】
99.安定化剤が、ベントナイト、アルギン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、セラトニア、シクロデキストリン、デキストラン、ジエタノールアミン、エチレングリコールパルミトステアラート、フルクトース、モノステアリン酸グリセリン、レシチン、マクロゴール15ヒドロキシステアラート、マンニトール、モノエタノールアミン、プロピレングリコール、酢酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、ソルビトール、スルホブチルエーテルベータ-シクロデキストリン、トレハロース又は酢酸亜鉛である、実施形態79から94のいずれか一項に記載のセット。
【0259】
100.抗酸化剤が、アルファトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール、クエン酸一水和物、エリソルビン酸、リンゴ酸、メチオニン、モノチオグリセロール、ペンテト酸、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムからなる群から選択される、実施形態95に記載のセット。
【0260】
101.防腐剤が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ホウ酸、ブロノポール、ブチレングリコール、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム五水和物、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、クロロクレゾール、クエン酸一水和物、クレゾール、エデト酸、パラヒドロキシ安息香酸エチル、グリセロール、イミド尿素、パラヒドロキシ安息香酸メチル、モノチオグリセロール、フェノール、フェノキシエタノール及びフェニルエチルアルコールからなる群から選択される、実施形態95に記載のセット。
【0261】
102.実施形態37から45のいずれか一項に記載の10mg/mlレボドパ及び1.25mg/ml(1:8)カルビドパを含む水性薬剤溶液を混合するためのセットであって、
I)
a)水963g、
b)5M HCl43.3g
ここで溶液は窒素パージされる、
c)微粉化レボドパ20g、及び
d)カルビドパ一水和物2.71g(カルビドパ2.5g相当)
を含む水性貯蔵溶液1000mlと、
ここで溶液は再度窒素パージされる、
II)
e)水968g、
f)クエン酸三ナトリウム二水和物64.7g、
g)リン酸水素二ナトリウム二水和物3.56g、及び
h)1M HCl3.67g
を含む水性緩衝溶液
を含む、セット。
【0262】
103.中枢神経系(CNS)の疾患の処置に使用される水性薬剤溶液を連続的に調製する方法であって、水性薬剤溶液が連続非経口又は経腸投与に適しており、該方法が、
レボドパを含み、pHが25℃で2.8未満である貯蔵溶液の流れと、pHが25℃で少なくとも4.0である水性緩衝溶液の流れを連続的に混合するステップ、及び
少なくとも5mg/mlの溶解レボドパ、例えば少なくとも6、7、8、9、10、15又は20mg/mlの溶解レボドパを含む水性薬剤溶液の連続流を前記混合ステップから連続的に得るステップであって、好ましくはレボドパの濃度が5~20mg/mlの溶解レボドパ、例えば5~15mg/ml又は5~10mg/mlの溶解レボドパの範囲であるステップ
を含む、方法。
【0263】
104.水性薬剤溶液のpHが3.5~8.0、例えば4.0~7.5、4.5~7.0、5.0~5.5である、実施形態103に記載の方法。
【0264】
105.前記水性貯蔵溶液が少なくとも10mg/mlのレボドパ、例えば少なくとも15、20、25、30、35又は40mg/mlのレボドパを含む、実施形態103又は104に記載の方法。
【0265】
106.水性貯蔵溶液のpHが2.0未満、例えば1.5、1.0又は0.5未満であり、好ましくは水性貯蔵溶液のpHが0.0~2.0、例えば0.0~1.5、0.0~1.0、0.0~0.5の範囲のpHである、実施形態103から105のいずれか一項に記載の方法。
【0266】
107.水性貯蔵溶液が少なくとも1種の生理的に許容される酸を含む、実施形態103から106のいずれか一項に記載の方法。
【0267】
108.生理的に許容される酸が塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸である、実施形態107に記載の方法。
【0268】
109.鉱酸が塩酸(HCl)であり、好ましくは水性貯蔵溶液が少なくとも30mM HCl、例えば少なくとも50mM HCl、100mM HCl、150mM HClを含む、実施形態108に記載の方法。
【0269】
110.生理的に許容される酸が酢酸である、実施形態107に記載の方法。
【0270】
111.水性貯蔵溶液が更に少なくとも1種の安定剤を含む、実施形態103から110のいずれか一項に記載の方法。
【0271】
112.方法が、水性緩衝溶液と混合される前に貯蔵溶液を通した不活性ガス、例えば窒素のバブリングなどによって貯蔵溶液を脱気するステップを更に含む、実施形態103から111のいずれか一項に記載の方法。
【0272】
113.水性薬剤溶液が更に少なくとも1種の酵素阻害剤を含む、実施形態103から112のいずれか一項に記載の方法。
【0273】
114.酵素阻害剤が、ドーパ脱炭酸酵素(DDC)阻害剤、カテコール-O-メチル転移酵素(COMT)阻害剤及びモノアミノ酸化酵素(MAO-B)阻害剤からなる群から選択される、実施形態113に記載の方法。
【0274】
115.前記酵素阻害剤が
カルビドパ一水和物などのカルビドパ、ベンセラジド、メチルドパ及びアルファ-ジフルオロメチルドーパ(DFMD)からなる群から選択されるドーパ脱炭酸酵素(DDC)阻害剤、
エンタカポン、トルカポン及びニテカポンからなる群から選択されるカテコール-O-メチル転移酵素(COMT)阻害剤、
ラサギリン、セレギリン及びサフィナミドからなる群から選択されるモノアミノ酸化酵素(MAO-B)阻害剤、又は
それらの組合せ
である、実施形態113又は114に記載の方法。
【0275】
116.水性緩衝溶液のpHが少なくとも4.0であり、好ましくは水性緩衝溶液のpHが4.0~12、例えば4.0~9、4.0~7.5、4.0~6である、実施形態103から115のいずれか一項に記載の方法。
【0276】
117.水性緩衝溶液が、少なくとも1つのpKa値が3~9の範囲、例えば5~7.5の範囲である少なくとも1種の緩衝剤成分を含む、実施形態103から116のいずれか一項に記載の方法。
【0277】
118.緩衝剤成分がクエン酸である、実施形態117に記載の方法。
【0278】
119.緩衝剤成分がクエン酸及びホスファートである、実施形態117に記載の方法。
【0279】
120.緩衝剤成分がトロメタモール(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)である、実施形態117に記載の方法。
【0280】
121.緩衝剤成分が、アジピン酸、ホウ酸、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸カルシウム、ジエタノールアミン、グリシン、マレイン酸、メグルミン、メチオニン、グルタミン酸モノナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム二水和物、乳酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウムなど、又はこれらの2種以上の混合物である、実施形態117に記載の方法。
【0281】
122.水性緩衝溶液が更に少なくとも1種の可溶化剤を含む、実施形態103から121のいずれか一項に記載の方法。
【0282】
123.可溶化剤が、グルタチオン、システイン、HP-ベータ-シクロデキストリン、N-メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMA)、Collidone、Kolliphor HS15、PEG400、プロピレングリコール、ポリソルベート80、グリセリン、エタノール、Cremophor EL、DMSO、メチオニン、EDTA、アスコルビン酸、アスパラギン酸、塩化ベンザルコニウム、安息香酸ベンジル、塩化セチルピリジニウム、ヒドロキシプロピルベータデクス、レシチン、マクロゴール15ヒドロキシステアラート、メグルミン、リン脂質、ポロクサマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ピロリドン、トリオレイン、ビタミンEポリエチレングリコールスクシナート又はこれらの2種以上の混合物からなる群から選択される、実施形態122に記載の方法。
【0283】
124.可溶化剤がHP-ベータ-シクロデキストリンであり、好ましくはHP-ベータ-シクロデキストリンが約75mg/mlの濃度で存在する、実施形態122に記載の方法。
【0284】
125.水性緩衝溶液が更に少なくとも1種の安定剤を含む、実施形態103から124のいずれか一項に記載の方法。
【0285】
126.安定剤が安定化剤、抗酸化剤及び防腐剤又はそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態125に記載の方法。
【0286】
127.安定剤が安定化剤であり、安定化剤が生理的に許容される糖である、実施形態実施形態125のいずれか一項に記載の方法。
【0287】
128.生理的に許容される糖がグルコースである、実施形態127に記載の方法。
【0288】
129.グルコース濃度が5~100mg/mlの範囲である、実施形態128に記載の方法。
【0289】
130.薬剤溶液がグルコースを含まない、実施形態103から127のいずれか一項に記載の方法。
【0290】
131.安定化剤が、ベントナイト、アルギン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、セラトニア、シクロデキストリン、デキストラン、ジエタノールアミン、エチレングリコールパルミトステアラート、フルクトース、モノステアリン酸グリセリン、レシチン、マクロゴール15ヒドロキシステアラート、マンニトール、モノエタノールアミン、プロピレングリコール、酢酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、ソルビトール、スルホブチルエーテルベータ-シクロデキストリン、トレハロース又は酢酸亜鉛である、実施形態126に記載の方法。
【0291】
132.抗酸化剤が、アルファトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール、クエン酸一水和物、エリソルビン酸、リンゴ酸、メチオニン、モノチオグリセロール、ペンテト酸、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムからなる群から選択される、実施形態126に記載の方法。
【0292】
133.防腐剤が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ホウ酸、ブロノポール、ブチレングリコール、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム五水和物、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、クロロクレゾール、クエン酸一水和物、クレゾール、エデト酸、パラヒドロキシ安息香酸エチル、グリセロール、イミド尿素、パラヒドロキシ安息香酸メチル、モノチオグリセロール、フェノール、フェノキシエタノール及びフェニルエチルアルコールからなる群から選択される、実施形態126に記載の方法。
【0293】
134.水性薬剤溶液がレボドパで過飽和している、実施形態103から133のいずれか一項に記載の方法。
【0294】
135.中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法であって、
レボドパを含み、pHが25℃で2.8未満である貯蔵溶液の流れと、pHが25℃で少なくとも4.0である水性緩衝溶液の流れを連続的に混合するステップ、
少なくとも5mg/mlの溶解レボドパ、例えば少なくとも6、7、8、9、10、15又は20mg/mlの溶解レボドパを含む水性薬剤溶液の連続流を前記混合ステップから連続的に得るステップであって、好ましくはレボドパの濃度が5~20mg/mlの溶解レボドパ、例えば5~15mg/ml又は5~10mg/mlの溶解レボドパの範囲であるステップ、及び
中枢神経系(CNS)の疾患に苦しむ対象に得られた水性薬剤溶液を連続投与するステップ
を含む、方法。
【0295】
136.溶液が薬剤輸液又は注射液である、実施形態135に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0296】
137.溶液が非経口的に投与される、実施形態135又は136に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0297】
138.非経口投与が皮下、経皮、静脈内、動脈内、骨内、筋肉内、脳内、脳室内又は髄腔内であり、投与方式が注射又は注入である、実施形態137に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0298】
139.CNS疾患が、パーキンソン病、非定型パーキンソニズム、アルツハイマー病、下肢静止不能症候群(RLS)及び神経精神病群からなる群から選択され、好ましくは前記CNS疾患がパーキンソン病である、実施形態135から138のいずれか一項に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0299】
140.水性薬剤溶液が、水性貯蔵溶液と水性緩衝溶液の混合から10分、5分又は1分以内に投与される、実施形態135から139のいずれか一項に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0300】
141.水性薬剤溶液のpHが3.5~8.0、例えば4.0~7.5、4.5~7.0、5.0~5.5である、実施形態135から140のいずれか一項に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0301】
142.水性貯蔵溶液が少なくとも10mg/mlのレボドパ、例えば少なくとも15、20、25、30、35又は40mg/mlのレボドパを含む、実施形態135から141のいずれか一項に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0302】
143.水性貯蔵溶液のpHが2.0未満、例えば1.5、1.0又は0.5未満であり、好ましくは水性貯蔵溶液のpHが0.0~2.0、例えば0.0~1.5、0.0~1.0、0.0~0.5の範囲のpHである、実施形態135から142のいずれか一項に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0303】
144.水性貯蔵溶液が少なくとも1種の生理的に許容される酸を含む、実施形態135から143のいずれか一項に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0304】
145.生理的に許容される酸が塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸である、実施形態144に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0305】
146.鉱酸が塩酸(HCl)であり、好ましくは水性貯蔵溶液が少なくとも30mM HCl、例えば少なくとも50mM HCl、100mM HCl、150mM HClを含む、実施形態145に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0306】
147.生理的に許容される酸が酢酸である、実施形態144に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0307】
148.水性貯蔵溶液が更に少なくとも1種の安定剤を含む、実施形態135から147のいずれか一項に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0308】
149.方法が、水性緩衝溶液と混合される前に貯蔵溶液を通した不活性ガス、例えば窒素のバブリングなどによって貯蔵溶液を脱気するステップを更に含む、実施形態135から148のいずれか一項に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0309】
150.水性薬剤溶液が更に少なくとも1種の酵素阻害剤を含む、実施形態135から149のいずれか一項に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0310】
151.酵素阻害剤が、ドーパ脱炭酸酵素(DDC)阻害剤、カテコール-O-メチル転移酵素(COMT)阻害剤及びモノアミノ酸化酵素(MAO-B)阻害剤からなる群から選択される、実施形態150に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0311】
152.前記酵素阻害剤が、
カルビドパ一水和物などのカルビドパ、ベンセラジド、メチルドパ及びアルファ-ジフルオロメチルドーパ(DFMD)からなる群から選択されるドーパ脱炭酸酵素(DDC)阻害剤、
エンタカポン、トルカポン及びニテカポンからなる群から選択されるカテコール-O-メチル転移酵素(COMT)阻害剤、
ラサギリン、セレギリン及びサフィナミドからなる群から選択されるモノアミノ酸化酵素(MAO-B)阻害剤、又は
それらの組合せ
である、実施形態150から151のいずれか一項に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0312】
153.水性緩衝溶液のpHが少なくとも4.0であり、好ましくは水性緩衝溶液のpHが4.0~12、例えば4.0~9、4.0~7.5、4.0~6である、実施形態135から152のいずれか一項に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0313】
154.水性緩衝溶液が、少なくとも1つのpKa値が3~9の範囲、例えば5~7.5の範囲である少なくとも1種の緩衝剤成分を含む、実施形態135から153のいずれか一項に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0314】
155.緩衝剤成分がクエン酸である、実施形態154に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0315】
156.緩衝剤成分がクエン酸及びホスファートである、実施形態154に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0316】
157.緩衝剤成分がトロメタモール(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)である、実施形態154に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0317】
158.緩衝剤成分が、アジピン酸、ホウ酸、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸カルシウム、ジエタノールアミン、グリシン、マレイン酸、メグルミン、メチオニン、グルタミン酸モノナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム二水和物、乳酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウムなど、又はこれらの2種以上の混合物である、実施形態154に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0318】
159.水性緩衝溶液が更に少なくとも1種の可溶化剤を含む、実施形態135から158のいずれか一項に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0319】
160.可溶化剤が、グルタチオン、システイン、HP-ベータ-シクロデキストリン、N-メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMA)、Collidone、Kolliphor HS15、PEG400、プロピレングリコール、ポリソルベート80、グリセリン、エタノール、Cremophor EL、DMSO、メチオニン、EDTA、アスコルビン酸、アスパラギン酸、塩化ベンザルコニウム、安息香酸ベンジル、塩化セチルピリジニウム、ヒドロキシプロピルベータデクス、レシチン、マクロゴール15ヒドロキシステアラート、メグルミン、リン脂質、ポロクサマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ピロリドン、トリオレイン、ビタミンEポリエチレングリコールスクシナート又はこれらの2種以上の混合物からなる群から選択される、実施形態159に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0320】
161.可溶化剤がHP-ベータ-シクロデキストリンであり、好ましくはHP-ベータ-シクロデキストリンが60~90mg/ml、例えば約75mg/mlの濃度で存在する、実施形態159に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0321】
162.水性緩衝溶液が更に少なくとも1種の安定剤を含む、実施形態135から161のいずれか一項に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0322】
163.安定剤が安定化剤、抗酸化剤及び防腐剤又はそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態162に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0323】
164.安定剤が安定化剤であり、安定化剤が生理的に許容される糖である、実施形態163に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0324】
165.生理的に許容される糖がグルコースである、実施形態164に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0325】
166.グルコース濃度が5~100mg/mlの範囲である、実施形態165に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0326】
167.薬剤溶液がグルコースを含まない、実施形態135から163のいずれか一項に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0327】
168.安定化剤が、ベントナイト、アルギン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、セラトニア、シクロデキストリン、デキストラン、ジエタノールアミン、エチレングリコールパルミトステアラート、フルクトース、モノステアリン酸グリセリン、レシチン、マクロゴール15ヒドロキシステアラート、マンニトール、モノエタノールアミン、プロピレングリコール、酢酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、ソルビトール、スルホブチルエーテルベータ-シクロデキストリン、トレハロース又は酢酸亜鉛である、実施形態163に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0328】
169.抗酸化剤が、アルファトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール、クエン酸一水和物、エリソルビン酸、リンゴ酸、メチオニン、モノチオグリセロール、ペンテト酸、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムからなる群から選択される、実施形態163に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0329】
170.防腐剤が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ホウ酸、ブロノポール、ブチレングリコール、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム五水和物、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、クロロクレゾール、クエン酸一水和物、クレゾール、エデト酸、パラヒドロキシ安息香酸エチル、グリセロール、イミド尿素、パラヒドロキシ安息香酸メチル、モノチオグリセロール、フェノール、フェノキシエタノール及びフェニルエチルアルコールからなる群から選択される、実施形態163に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0330】
171.水性薬剤溶液がレボドパで過飽和している、実施形態135から170のいずれか一項に記載の中枢神経系(CNS)の疾患を処置する方法。
【0331】
本発明を更に説明するために、以下の実験例を参照されたい。これらの例は、本発明のある態様及び実施形態を単に説明するためのものであって、本発明を限定することを意図したものでは決してない。
【0332】
実験の項
本発明の溶液の一部であり得る成分の範囲及びそれらの効果を概観するために、幾つかの実験の結果を以下に要約する。
【0333】
10mg/mlレボドパ及び1.25mg/ml(1:8)カルビドパを含有する好ましい水性薬剤溶液を、以下の成分、ステップ及び方法を用いて調製した。
【0334】
20mg/mlレボドパ及び2.5mg/mlカルビドパ貯蔵溶液1000mlを、以下のように調製した。
磁気撹拌機を備えたDuran瓶に水963gを注ぎ、次いで
5M塩酸(HCl)43.3gを添加し、次いで
残留酸素含有量が0.1ppm未満になるまで溶液を窒素パージし、次いで
微粉化レボドパ20gを添加し、次いで
カルビドパ一水和物2.71g(カルビドパ2.5g相当)を添加した。
【0335】
生成した溶液を、すべての物質が溶液に溶解するまで磁気撹拌機で撹拌した。
【0336】
pHは、約1と測定された。
【0337】
残留酸素含有量が0.1ppm未満になるまで溶液を再度窒素パージした。
【0338】
緩衝溶液を以下のように調製した。
磁気撹拌機を備えたDuran瓶に水968gを注ぎ、次いで
クエン酸三ナトリウム二水和物64.7gを添加し、次いで
リン酸水素二ナトリウム二水和物3.56gを添加し、次いで
1M塩酸HCl3.67gを添加し、次いで
すべての材料が溶解するまで溶液を磁気撹拌機で撹拌した。
【0339】
pHを測定し、1M HCl(溶液が塩基性でありすぎる場合)及び1M水酸化ナトリウム(NaOH)(溶液が酸性でありすぎる場合)を用いて7.6に調節した。
【0340】
貯蔵溶液をB Braunシリンジポンプ(SPACE Infusion Pump System)のシリンジに移し、緩衝溶液を同じ型の別のシリンジポンプのシリンジに移した。シリンジポンプのシリンジの出口を、B Braun Safeflowバルブ及びバックチェックバルブを備えたUV保護ライン(光保護を有するB Braun Original Perfusor Lines)に接続し、各々Yカップリング(BD Carefusion Y’連結器セット、2方向;Becton、Dickinson and Company)に導き、貯蔵溶液と緩衝溶液をいかなる能動混合手段をも用いずに混合し、混合溶液をYカップリングの単一の出口から、UV保護ライン(B Braun)を通して、0.2μm粒子フィルター(B Braun Sterifix)、最後に静脈内注入用スチール針(B Braun Venofix Safety)に導いた。
【0341】
混合溶液をスチール針から流出後に測定し、レボドパ及びカルビドパの濃度並びにDHPAの含有量の低下が示された。以下の結果は、22時間の運転後に記録された(ヒドラジンレベルは、各分解カルビドパ分子がDHPA1分子とヒドラジン1分子に分裂すると仮定してDHPAレベルに基づいて計算された)。レボドパは分解せず、カルビドパの分解は2.4%であり、DHPA含有量はヒドラジンレベル0.25mg%に相当する1.3正味mg%であった(カルビドパを基準としたmg%)。
【0342】
本発明の溶液の一部であり得る成分の範囲及びそれらの効果を概観するために、多数の実験の結果を以下に要約する。
【0343】
実施例1
以下を含むレボドパ及びカルビドパの貯蔵溶液(pH<1)を調製した。
50mg/mlレボドパ
5mg/mlカルビドパ一水和物
5mg/mlメタ重亜硫酸ナトリウム
0.303M HCl
滅菌水
緩衝剤成分トロメタモール及びグルコースを含有する貯蔵溶液と緩衝溶液の混合(トロメタモール及びグルコースの酸性貯蔵溶液と塩基性溶液のおおよその割合は1:1であった)を、下表に示した試料の3つの類似構成で試験した。Addex-THAM(又は社内で製造したトロメタモール溶液、pH約9)及びB Braunによって製造されたグルコース(又は社内で製造したグルコース溶液)を添加することによって、全バッチを調製した。001Cでは、グルコースをまず溶液中に撹拌し、次いでトロメタモールを撹拌した。001D及びEでは、両方の溶液を溶液中に撹拌する前に混合した。
【0344】
【表1】
【0345】
物理的安定性は、すべての試験-室温と冷蔵の両方で3日未満であった。グルコース及びトロメタモールを溶液中に撹拌する点で相違は認められなかった。
【0346】
さらに、レボドパ及びカルビドパそれぞれの濃度の減少が物理的安定性を向上させるかどうか試験した。
【0347】
【表2】
【0348】
結果の示すところによれば、5mg/mlレボドパ及び0.5mg/mlカルビドパを含む処方は、可溶性であり、最高6か月室温で物理的に安定であるように思われ、一方1mg/mlカルビドパと一緒の10mg/mlレボドパは不安定であった。物理的安定性は、冷蔵よりも室温で良好であると思われる。
【0349】
3種の異なるタイプの溶解性向上剤を以下の処方で試験した:Kolliphor HS15(非イオン界面活性剤)、ポリエチレングリコール400(共溶媒)及びHP-β-シクロデキストリン(複合体形成剤)。pHは2.9~3.0であった。
【0350】
【表3】
【0351】
したがって、10mg/mlレボドパ及び1mg/mlカルビドパの物理的安定性の向上は、試験濃度においては、3種の溶解性向上剤のいずれでも得られなかった。
【0352】
トロメタモール濃度の低下及びグルコース濃度の変更を試験した。
【0353】
【表4】
【0354】
結果の示すところによれば、グルコース濃度の増加は、ことによると、沈殿が観察される前の時間を延長する。物理的安定性は冷蔵によって低下する。pHを3.1から6.6にしても、室温の物理的安定性を改善しなかった。
【0355】
代わりとして前よりも低い2つの濃度のポリエチレングリコール400及びより低い濃度のHP-β-シクロデキストリンを試験した。
【0356】
【表5】
【0357】
結果の示すところによれば、ポリエチレングリコール400の濃度を50から100mg/mlに増加させることによって物理的安定性が室温で高くなる。100mg/mlのポリエチレングリコール400は、前に示したように、濃度が更に増加すると物理的安定性が低下するので、この場合の最適濃度かもしれない。HP-β-シクロデキストリン濃度を75mg/mlに低下させることによって、物理的安定性が特に室温で改善された。しかし、APIの化学分解がその後に起きた可能性がある。
【0358】
表5に見られるように、10mg/mlレボドパ及び1mg/mlカルビドパは、75mg/ml HP-β-シクロデキストリンを処方に含むことによって、室温で物理的に安定化することができた。しかし、試料006AはpHが3.2であり、可溶化がより高いpHでも起こり得るかどうか検討することにした。以下の表の試料を調製し、貯蔵前に窒素バブリングさせた。
【0359】
【表6】
【0360】
表6に見られるように、75mg/ml HP-β-シクロデキストリンは、pH3.5又は数単位高いpHにおいて10mg/mlレボドパ及び1mg/mlカルビドパを物理的に安定化することができない。トロメタモールをNaOHに交換しても安定性を改善しなかった。HP-β-シクロデキストリンは、表6によればpH3.2で効率的安定剤であったので、窒素バブリングが物理的安定性を低下させた可能性がある。
【0361】
レボドパ及びカルビドパの長期化学的安定性
薬剤溶液の物理的安定性に加えて、化学的安定性も測定した。レボドパ及びカルビドパ濃度又は分解生成物を測定することによって、レボドパ及びカルビドパの分解を測定した。3,4-ジヒドロキシフェニルアセトン(DHPA)は、カルビドパの分解生成物であり、ヒドラジンにモル比例して形成され、DHPAの濃度を、高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)を用いて本実験で分析した。
【0362】
幾つかの試料を、最高4か月室温と冷蔵庫の両方でレボドパ及びカルビドパ濃度の化学分析のために貯蔵した。以下の結果を得た。
【0363】
【表7】
【0364】
結果の示すところによれば、レボドパは、混合後に室温、pH3.2で最高4か月安定であった。しかし、カルビドパは化学的安定性が低く、室温で5日後に18%まで分解した。混合物を冷蔵しても、分解をさほど減速させなかった。4か月後、カルビドパの52%が分解した。
【0365】
pH<1のレボドパ及びカルビドパの貯蔵溶液は、冷蔵庫中で優れた安定性を有し、4か月でさほど分解しなかった。4か月後の貯蔵溶液のDHPA含有量は検出限界以下であり、したがって溶液中のカルビドパの優れた安定性が検証された。
【0366】
二室混合実験及び短期安定性
以下の実験では、1種の貯蔵溶液及び1種の緩衝溶液を使用する本発明の概念を用いる。等体積の2つの溶液を混合する(混合溶液を約15回手で上下反転させる)ことによって溶液を製造した。
【0367】
以下、溶液は、a)レボドパ及びカルビドパの酸性溶液(pH<1)並びにb)HP-β-シクロデキストリン、グルコース及びトロメタモールの塩基性溶液(pH約9)であり、最終溶液は以下の通りであった。
【0368】
【表8】
【0369】
トロメタモール量を変えることによってpHを変化させた。
【0370】
【表9】
【0371】
表9に見られるように、pH約3~3.1では、アミノ酸は、幾つかの一般的な安定剤/抗酸化剤よりもカルビドパを分解から良好に保護した。pH3.9では、アミノ酸からのカルビドパの分解に対する保護作用がpH3.1よりも良好であった。
【0372】
【表10】
【0373】
表10から分かるように、pH約3では、ある程度低いLD/CD比がCDを分解及び沈殿から保護するように思われる。
【0374】
【表11】
【0375】
表11では、カルビドパが2時間で8~10%急速に分解するが、レボドパは0~3%しか分解しないことが示される。カルビドパの分解はわずかしかpHに依存せず、pHが高い方が分解がわずかに多い。
【0376】
【表12】
【0377】
表12の結果の示すところによれば、LD及びCDの分解は、pH5.6~7.2において4.9よりもわずかに多い。
【0378】
【表13】
【0379】
表13は、pHが4.9から7に増加すると物理的安定性がどのように低下するかを示している。15mg/mlレボドパとの組合せは、10mg/mlの組合せよりも物理的安定性がはるかに低い。
【0380】
添加剤及びpHの重要性-緩衝剤成分としてのシトラート/ホスファート
トロメタモールの代わりにシトラート/ホスファートを緩衝剤成分として使用して試験した。さらに、HP-β-シクロデキストリン及びグルコースを組成物から除外したが、添加剤として時折試験した。混合物を製造するための原理は、上記表8の場合と同じであった。カルビドパの分解生成物DHPAの濃度を、カルビドパに対するmg%として示した。以下は、混合後の組成である。
【0381】
【表14】
【0382】
異なる量のシトラート及びホスファートを用いてpHを変えた。
【0383】
【表15】
【0384】
表14及び15に要約した結果の示すところによれば、グルコースの添加はカルビドパ分解をかなり増加させ、DHPAレベルを増加させた。HP-β-シクロデキストリンはDHPA値が最低であったが、カルビドパ分解はさほど影響されなかった。すべての溶液は、物理的安定性が少なくとも4時間であった。
【0385】
【表16】
【0386】
表16に要約した結果の示すところによれば、HP-β-シクロデキストリンはカルビドパを分解から濃度依存的に保護するが、生成物の物理的安定性は最高濃度において悪影響を受ける。
【0387】
レボドパは、他の添加剤を含まないシトラート緩衝剤中で最高20時間分解しなかった。
【0388】
溶解性向上剤
pH約5の環境におけるレボドパの溶解度を向上させるために、前に試験したシトラート-ホスファート緩衝剤に基づいて種々の試験を行った。
【0389】
【表17】
【0390】
表17では、NMP及びDMAがレボドパの溶解度をかなり向上させることが示された。DMAは良好な溶解度向上を示し、NMPよりも毒性が低いので、DMAを別の成分と組み合わせてレボドパの溶解度を最適化できるかどうか試験した。
【0391】
【表18】
【0392】
表18に要約した結果の示すところによれば、グルタチオンとDMAの組合せ及びシステインとDMAの組合せが最高の溶解度向上を示し、続いてDMAとkollidon及びkollidon単独であった。他の組合せも有用な溶解性向上剤になる。
【0393】
【表19】
【0394】
表19に要約した結果の示すところによれば、15%DMAは、冷蔵庫と室温の両方で7時間の安定な10mg/ml LD溶液を与えることができた。LD濃度を8mg/mlに低下させ、pHを5.0から5.2に増加させると、物理的安定性が増加した。
【0395】
【表20】
【0396】
表20に要約した結果の示すところによれば、8%DMAと組み合わせた4%グルタチオンは重量オスモル濃度を高め、レボドパ及びカルビドパ濃度を増加させると重量オスモル濃度が更に増加した。
【0397】
溶液は3時間未満物理的に安定であった。したがって、グルタチオン及びDMAはレボドパ及びカルビドパの溶解度を向上させ、ことによると物理的安定性を保護するが、重量オスモル濃度の増加は局所的耐容性に有害作用を与える可能性が高い。
【0398】
オンライン混合を含む二重注入ポンプ実験
貯蔵溶液又は緩衝溶液用の50mlシリンジを各々有するヒト臨床用の2台の精密注入ポンプは、混合連結器(Y連結器)への短いラインを有する。Y連結器の後には、細孔フィルターで終わる単一のUV保護注入ラインがあり、細孔フィルターは注入針に接続された。針の後の出口ラインをサンプリングした。両方のポンプを同じ速度で駆動し、同時に始動させ、実験開始時に両方に溶液5mlを高速で素早く送り、これらの5mlを廃棄した。条件(ポンプの速度、緩衝剤の窒素処理、フィルター孔径)を変えて、系の運転を試験した。貯蔵溶液ポンプの速度として可変の速度を与え、したがってシリンジ出口速度は常にこの値の2倍であった。試料を採取しないときには、出口の針をpH5のシトラート緩衝剤約200ml中に維持した。空に近くなったら、1~5分間停止後に、速度4ml/hでシリンジを再度充填した。出口緩衝剤をこの時点で交換した。より低速では、シリンジ交換は不要であった。
【0399】
貯蔵溶液の組成は、pH約1の200mM HCl中、レボドパ20mg/ml、濃度比LD/CD4/1又は8/1のカルビドパであり、メタ重亜硫酸塩を防腐剤として含み、窒素で空気を置換した。緩衝溶液の組成は、200mMシトラート及び20mMホスファートであり、pH約7.6であった。針出口で得られたpHは約5.2であった。緩衝溶液を窒素バブリングありとなしの両方で試験した。レボドパ及びカルビドパ濃度又は分解生成物を測定することによって、レボドパ及びカルビドパの分解を測定した。3,4-ジヒドロキシフェニルアセトン(DHPA)は、カルビドパの分解生成物であり、ヒドラジンにモル比例して形成され、DHPAの濃度を、高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)を用いて本実験で分析した。
【0400】
【表21】
【0401】
表21に要約した結果の示すところによれば、LD/CDの4/1と8/1の両方の濃度比は、ポンプのAPI速度が4ml/hであり、1.2μMフィルターを使用したときに、レボドパ及びカルビドパの分解が許容可能な低い値になった。カルビドパの主要分解生成物DHPAも低レベルで存在した。ポンプは、パーキンソン病(又は別のレボドパ依存性疾患)の典型的な処置時間16時間、更にはそれ以上運転することができ、1日の連続処置を扱うことができた。理論的には、緩衝溶液の窒素パージは、レボドパ及びカルビドパ分解を更に防止し、DHPA形成を抑制するはずであるが、結果の示すところによれば、これは薬学的に妥当な分解値を得るのに不要であった。ポンプ速度は、性能に対するいかなる主要な効果をも伴わずに、1.4ml/hと低くすることができた。両方の試験したフィルター孔径は同様の結果を示し、静脈内(I.V.、高い除菌能力を必要とする)投与と皮下(S.C.、極小粒子の除去能力を必要とする)投与の両方に系を使用できることを意味する。
【0402】
要するに、結果の示すところによれば、広い投与量範囲の比4/1又は8/1のレボドパとカルビドパの治療投与がこの系で最高1日、更にはそれ以上可能であり、S.C.投与とI.V.投与の両方に適切であり、APIの分解も薬学的に許容される。
【0403】
【表22】
【0404】
予備的患者試験によって、連続皮下注入によるレボドパ及びカルビドパの生物学的利用能を実証した(表22)。試験結果は、より大きい研究の3名の無作為に選択された患者のものであり、各患者で皮下、静脈内注射及び腸管内投与を比較した。
【0405】
本発明に係る(10mg/mlレボドパと1.25mg/ml(1:8)カルビドパを含む)好ましい水性薬剤溶液を使用すると、レボドパの生物学的利用能は、皮下投与による静脈内治療と同等であった。さらに、(20mg/mlレボドパ及び5mg/mlカルビドパ一水和物を含む)ゲルDuodopaを用いた腸管内投与を同様に静脈内治療と比較すると、レボドパの生物学的利用能は、表22に要約したように、77.7%であった。
【0406】
詳細な結果を図12及び13に示す。図12は、投与中の患者の血液中でモニターされた(a)レボドパ及び(b)カルビドパの平均血中濃度であり、処置時間に対してプロットされた。図13は、投与中の患者の血漿中でモニターされた(a)レボドパ及び(b)カルビドパの平均血漿中濃度であり、処置時間に対してプロットされた。
【0407】
研究は、好ましい水性薬剤溶液の静脈内及び皮下注入を優良臨床試験基準(GCP:Good Clinical Practice)の原理に従って行った腸Duodopa(LCIG)と比較した前向き、無作為化、3期交差、非盲検多施設治験であった。試験は、経口レボドパのときの重篤なオンオフ徴候のためにDuodopa処置されているパーキンソン病患者を含んだ。1回の処置来診中に、患者にDuodopaを最適投与量で16時間投与し、別の処置来診中に、好ましい水性薬剤溶液をレボドパの対応する血清レベルを生ずると推定される濃度で同じ期間患者にi.v.注入し、第3の処置来診時に対応する量のレボドパをs.c.注入の形で患者に投与した。血液試料を設定スケジュールに従って処置来診中に最高24時間採取した。
【0408】
好ましい水性薬剤溶液のi.v.注入を、腕に置かれた留置カテーテルを介して行った。好ましい水性薬剤溶液のi.v.を対象の個々のDuodopa予備試験投与の75%で送り、朝の急速i.v.定速投与、続いて最高16時間の連続i.v.注入として投与した。好ましい水性薬剤溶液のs.c.注入のために、適切な注入針を腹部側方に配置した。好ましい水性薬剤溶液のs.c.投与を対象の個々のDuodopa予備試験投与と同じ投与量で送り、朝の急速s.c.定速投与、続いて最高16時間の連続s.c.注入としても投与した。Duodopaを、20mg/mLレボドパ及び5mg/mLカルビドパ一水和物と一緒にゲルを含むカセットで供給し、携帯注入ポンプに接続されたPEG-J管を介して近位小腸に直接投与した。Duodopaの個々に最適化された投薬を、朝の急速な定速投与、続いて最高16時間の持続注入として投与した。
【0409】
患者の血漿中のレボドパ及びカルビドパを、超高性能液体クロマトグラフィ-タンデム型質量分析法(UPLC-MS/MS)によって優良試験所基準(GLP)の原理に従って分析した。
【0410】
予備的患者試験で実証された本開示に対する別の利点は、個々の患者の処置を個別化できることである。特に、図14A及び14Bは、連続皮下及び静脈内注入の全過程を通して3名の別々の患者の血液及び血漿中のレボドパレベルを詳細に示す。3名の患者は、異なる段階のPD重症度であり、したがって、治療効果に達するのに異なるレベルのレボドパを必要とする。本開示におけるレボドパの急速な生物学的利用能のために、水性薬剤溶液の注入速度を処置の過程において調節して、患者が治療効果の恩恵を被るのに十分な量のレボドパを確実に投与されるようにすることができる。過剰のレボドパ投与を回避することによって、処置のオンオフ症候を最小限にすることができ、回避することさえ可能である。
【0411】
さらに、予備的患者試験は、Duodopaの腸管内投与中に得られたレベルよりも高いカルビドパの生物学的利用能も実証した(図13B)。カルビドパの吸収が増加すると、より低いカルビドパ濃度を水性薬剤溶液に取り入れることができ、したがって、水性貯蔵溶液と水性緩衝溶液が混合されると形成される有害副生物ヒドラジンの量を削減することができる。
【0412】
本発明を(a)特定の実施形態(単数又は複数)を参照して上述したが、本明細書に記載する特定の形態に限定することを意図したものではない。そうではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定され、上の具体的なもの以外の実施形態、例えば、上記のものとは異なる...がこれら添付の特許請求の範囲内で同様に可能である。
【0413】
特許請求の範囲においては、「含む(comprises/comprising)」という用語は、他の要素又はステップの存在を排除しない。さらに、個々に列挙しても、複数の手段、要素又は方法ステップを、例えば、単一のユニット又はプロセッサによって実行することができる。さらに、個々の特徴が異なる請求項に含まれる場合もあるが、場合によってはこれらを有利に組み合わせることもでき、異なる請求項における包含は、特徴の組合せが可能ではない、及び/又は有利ではないことを意味しない。さらに、単数の参照は複数を排除しない。「1つ(a、an)」、「第1の」、「第2の」などの用語は、複数を排除しない。特許請求の範囲における参照符号は、明確化の例として単に示したに過ぎず、特許請求の範囲を限定するものと決して解釈してはならない。
【0414】
参考文献
Buxton,LO.and Benet,LZ.“Pharmacokinetics:The dynamics of drug absorption,distribution,metabolism,and elimination.”In Goodman and Gilman:The pharmacological basis of therapeutics.2011,p.17-39.The McGraw-Hill Companies,Inc.ISBN 978-0-07-162442-8
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Lewis,James L.III,“Metabolic Alkalosis.”Attending Physician,Princeton Baptist Medical Center;Brookwood Medical Center,published at merckmanuals.com as of May 8,2017(http://www.merckmanuals.com/professional/endocrine-and-metabolic-disorders/acid-base-regulation-and-disorders/metabolic-alkalosis).
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