(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】プロピレンアンモ酸化反応器用の供給ガス供給システム
(51)【国際特許分類】
C07C 253/26 20060101AFI20220902BHJP
C07C 255/08 20060101ALI20220902BHJP
B01F 23/10 20220101ALN20220902BHJP
B01F 25/00 20220101ALN20220902BHJP
B01F 35/71 20220101ALN20220902BHJP
B01F 35/75 20220101ALN20220902BHJP
B01F 35/90 20220101ALN20220902BHJP
B01J 4/00 20060101ALN20220902BHJP
【FI】
C07C253/26
C07C255/08
B01F23/10
B01F25/00
B01F35/71
B01F35/75
B01F35/90
B01J4/00 102
(21)【出願番号】P 2020526450
(86)(22)【出願日】2018-01-03
(86)【国際出願番号】 CN2018070109
(87)【国際公開番号】W WO2019095531
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-10-06
(31)【優先権主張番号】201711128191.X
(32)【優先日】2017-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】509128052
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司上海石油化工研究院
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI RESEARCH INSTITUTE OF PETROCHEMICAL TECHNOLOGY SINOPEC
【住所又は居所原語表記】NO.1658 PUDONG BEI ROAD,PUDONG NEW AREA,SHANGHAI 201208,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】趙楽
(72)【発明者】
【氏名】呉糧華
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-136540(JP,A)
【文献】特開平6-211768(JP,A)
【文献】特表2017-512642(JP,A)
【文献】中国実用新案第204017797(CN,U)
【文献】中国実用新案第201988202(CN,U)
【文献】化学工学便覧,改訂六版,1999年02月25日,pp. 1179-1183
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 253/26
C07C 255/08
B01F 23/10
B01F 25/00
B01F 35/71
B01F 35/75
B01F 35/90
B01J 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレンアンモ酸化反応器用の供給ガス供給システムであって、
供給ガス混合システムと供給物分配器とを含み、
プロピレンとアンモニアとの混合ガスは、前記供給ガス混合システムによって混合後、前記供給物分配器によってプロピレンアンモ酸化反応器中に均一に分配され、
前記プロピレンとアンモニアとの混合ガスが前記供給物分配器に導入されるときの初期温度T
0は10~220℃であり、
前記供給ガス混合システムが、プロピレン蒸発器と、プロピレン過熱器と、アンモニア蒸発器と、アンモニア過熱器と、パイプライン混合器とを含み、
前記プロピレン蒸発器および前記アンモニア蒸発器がそれぞれ、前記パイプライン混合器と連通し、
前記プロピレン過熱器が前記プロピレン蒸発器と前記パイプライン混合器との間に設けられ、
前記アンモニア過熱器が前記アンモニア蒸発器と前記パイプライン混合器との間に設けられ、
前記パイプライン混合器が空のパイプライン、または、内部部品を備えるパイプラインであり、
前記供給ガス混合システムが、初期温度T
0制御システムをさらに含み、
前記初期温度T
0制御システムは、
前記供給物分配器の入口に設けられ、初期温度T
0を検出するように構成されている送信器と、
前記プロピレン過熱器および前記アンモニア過熱器に熱を供給するように構成されている熱源と、
前記熱源と前記プロピレン過熱器との間に接続されているパイプライン、および、前記熱源と前記アンモニア過熱器との間に接続されているパイプラインにそれぞれ設けられているバイパス弁と、
前記送信器からの信号を受信し、前記送信器からの信号に応じてそれぞれのバイパス弁の開度を調整し、
前記初期温度T
0の制御を達成するように構成されているコントローラと、を含
み、
前記入口での前記プロピレンとアンモニアとの混合ガスの測定温度が設計初期温度T
0
よりも低いときには、前記コントローラは、それぞれの前記バイパス弁の開度を調整し、前記熱源の流量を増大させ、それぞれの前記過熱器の出口での供給ガスの温度を上昇させて、これによって、プロピレンおよびアンモニア供給物分配器の入口における前記温度T
0
を前記設計初期温度に達するようにし、
前記入口における前記プロピレンとアンモニアとの混合ガスの測定温度が前記設計初期温度T
0
よりも高いとき、前記コントローラは、それぞれの前記バイパス弁の開度を調節して、前記熱源の流れを減少させ、それぞれの前記過熱器の出口における供給ガスの温度を減少させ、プロピレンおよびアンモニア供給物分配器の入口における前記温度T
0
を前記設計初期温度に達するようにする、
供給ガス供給システム。
【請求項2】
前記初期温度T
0が20~200℃である、請求項1に記載の供給ガス供給システム。
【請求項3】
前記初期温度T
0が35~185℃である、請求項1に記載の供給ガス供給システム。
【請求項4】
前記プロピレンアンモ酸化反応器の直径が5~12メートルである、請求項1~3のいずれか1項に記載の供給ガス供給システム。
【請求項5】
前記プロピレンアンモ酸化反応器の直径が7.5~12メートルである、請求項1~3のいずれか1項に記載の供給ガス供給システム。
【請求項6】
前記プロピレンアンモ酸化反応器の直径が8.5~12メートルである、請求項1~3のいずれか1項に記載の供給ガス供給システム。
【請求項7】
プロピレンアンモ酸化反応器中のプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度を制御するための方法であって、
前記プロピレンアンモ酸化反応器は供給システムを含み、
前記供給システムは供給ガス混合システムと供給物分配器とを含み、
前記プロピレンとアンモニアとの混合ガスを供給ガス混合システムによって混合後、前記供給物分配器によって前記プロピレンアンモ酸化反応器中に均一に分配し、
前記プロピレンとアンモニアとの混合ガスを前記供給物分配器に導入するときの初期温度T
0を10~220℃にする工程を含み、
前記初期温度T
0を制御する制御工程をさらに含み、
前記制御工程は、
熱源によってプロピレン過熱器およびアンモニア過熱器に熱を供給する工程と、
前記供給物分配器の入口に設けられている送信器を用いて初期温度T
0を検出する工程と、
前記送信器によって検出された
前記初期温度T
0に応じて、前記熱源と前記プロピレン過熱器との間に接続されているパイプライン、および、前記熱源と前記アンモニア過熱器との間に接続されているパイプラインにそれぞれ設けられているバイパス弁の開度を調整し、
前記初期温度T
0を調整する工程と、を含
み、
前記入口での前記プロピレンとアンモニアとの混合ガスの測定温度が設計初期温度T
0
よりも低いときには、コントローラは、それぞれの前記バイパス弁の開度を調整し、前記熱源の流量を増大させ、それぞれの前記過熱器の出口での供給ガスの温度を上昇させて、これによって、プロピレンおよびアンモニア供給物分配器の入口における前記温度T
0
を前記設計初期温度に達するようにし、
前記入口における前記プロピレンとアンモニアとの混合ガスの測定温度が前記設計初期温度T
0
よりも高いとき、コントローラは、それぞれの前記バイパス弁の開度を調節して、前記熱源の流れを減少させ、それぞれの前記過熱器の出口における供給ガスの温度を減少させ、プロピレンおよびアンモニア供給物分配器の入口における前記温度T
0
を前記設計初期温度に達するようにする、
方法。
【請求項8】
前記プロピレンとアンモニアとの混合ガスを前記供給物分配器に導入するときの初期温度T
0を20~200℃にする工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記プロピレンとアンモニアとの混合ガスを前記供給物分配器に導入するときの初期温度T
0を35~185℃にする工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記プロピレンアンモ酸化反応器の直径が5~12メートルである、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記プロピレンアンモ酸化反応器の直径が7.5~12メートルである、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記プロピレンアンモ酸化反応器の直径が8.5~12メートルである、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、中国特許出願201711128191.X(発明の名称「プロピレンアンモ酸化反応器用の供給ガス供給システム」)(2017年11月14日出願)の優先権を主張し、その全体は、本明細書中に参照により援用される。
【0002】
〔技術分野〕
本開示は、プロピレンアンモ酸化反応器用の供給ガス供給システム、および、供給システムによってプロピレンアンモ酸化反応器中のプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度を制御する方法に関する。
【0003】
〔背景技術〕
アクリロニトリルは石油化学産業において重要な化学原料である。一般的に、アクリロニトリルは様々な国において、一段階によるプロピレンのアンモ酸化によって製造される。
【0004】
現在市販されているプロピレンのアンモ酸化触媒の活性温度は400~450℃の範囲であるので、アクリロニトリルの製造において、プロピレンおよびアンモニア供給物分配器(以下、「プロピレンおよびアンモニア分配器」、「供給物分配器」、または「分配器」ともいう)は長期間高温である。供給物分配器中のプロピレンとアンモニアとの混合ガス(以下、混合ガスという)は、供給物分配器の母管/主管/分岐管(以下、まとめてパイプという)を流れながら、反応器床によって連続的に加熱される。パイプ内の混合ガスの移動する長さが増加することにつれて、混合ガスの温度も増加する。混合ガスの温度が、アンモニアが活性窒素原子に分解する温度(以下、窒化温度ともいう)よりも高いとき、混合ガス中に遊離アンモニアが存在し続けるため、アンモニアの一部が活性窒素原子に分解する。活性窒素原子がパイプ中の金属原子に結合して脆い金属窒化物が形成される。窒化物は作業条件下で脆性破壊を起こし易く、供給物分配器の破壊を引き起こし、プロピレンおよびアンモニアの不均一な分布をもたらし、反応性能の劣化をもたらす。過酷な場合には反応器によって作業の停止が余儀なくされ、分配器を交換しなければならない。文献「反応器の分配器の分管の破壊原因分析」では、プロピレンおよびアンモニア分配器の脆性破壊の原因を分析している。文献「プロピレンおよびアンモニア分配器の材料選定の検討」では、350~450℃においてアンモニアを活性窒素原子に分解できると示している。現在、プロピレンおよびアンモニア分配器に使用される材料は、主に炭素鋼である。炭素鋼に使用される特定の材料に応じて、プロピレンおよびアンモニア分配器の窒化温度(すなわち、プロピレンおよびアンモニア分配器を形成する炭素鋼の窒化が起こる温度)も変化するが、これまでの研究結果では、種々の炭素鋼の窒化温度が、アンモニアが分解する温度である前記範囲内であることを示している。
【0005】
中国特許公報であるCN1081482Cは、プロピレンおよびアンモニア分配器の排出孔の開口が温度に依存することを開示している。しかしながら、この特許はプロペンおよびアンモニア分配器の窒化を考慮していない。換言すれば、装置は、分配器の交換頻度が増加するリスクがある。また、米国特許出願公開公報であるUS3704690Aは、耐窒化性合金を用いて分配器を製造することを開示している。しかしながら、アンモ酸化に特有の問題やコストがあるため、アクリロニトリル製造において分配器の使用中の窒素脆化の問題が解決していないことも示されている。さらに、中国特許出願公開公報であるCN1089596Aは、管内のアンモニア含有混合ガスの温度が窒化反応温度よりも低くなるように、各管の外面に断熱層を設けることを提案している。しかしながら、設計が複雑で、装置のコストが高いためにこの解決策は不十分である。
【0006】
本開示は、プロピレンのアンモ酸化およびアクリロニトリルを調製するプロピレンおよびアンモニア供給ガス供給システムを提供する。本供給システムは、プロピレンおよびアンモニア供給物分配器の任意の位置での混合ガスの温度が、アンモニアが活性窒素原子に分解する温度に長期間到達すること、またはその温度よりも高くなることを防止することができる。よってプロピレンおよびアンモニア分配器の窒素脆化のリスクを低減する。
【0007】
〔発明の概要〕
本発明が解決しようとする技術的課題は、従来の装置における、プロピレンおよびアンモニア分配器の局所温度が窒化温度よりも高く、分配器の窒素脆化が生じ、供給ガスの分布が不均一になり、反応結果が悪くなることである。本開示は、プロピレンのアンモ酸化およびアクリロニトリルを調製するプロピレンおよびアンモニア供給ガス供給システムを提供する。供給システムは供給ガス混合システム、供給物分配器、および関連する適用を含む。プロピレンおよびアンモニア供給物分配器の任意の位置における混合ガスの温度が、アンモニアが活性窒素原子に分解する温度に達することを防止する。よってプロピレンおよびアンモニア分配器の窒素脆化のリスクを低減することができる。
【0008】
本発明は、プロピレンアンモ酸化反応器用の供給システムを提供する。本供給システムは、供給ガス混合システムと供給物分配器とを含み、プロピレンとアンモニアとの混合ガスは、供給ガス混合システムによって混合後、供給物分配器によってプロピレンアンモ酸化反応器中に均一に分配され、プロピレンとアンモニアとの混合ガスが供給物分配器に導入されるときの初期温度T0は10~220℃である。
【0009】
供給システムにおいて、初期温度T0は20~200℃が好ましい。
【0010】
供給システムにおいて、初期温度T0は35~185℃が好ましい。
【0011】
供給システムにおいて、プロピレンアンモ酸化反応器の直径は5~12メートルが好ましい。
【0012】
供給システムにおいて、プロピレンアンモ酸化反応器の直径は7.5~12メートルが好ましい。
【0013】
供給システムにおいて、プロピレンアンモ酸化反応器の直径は8.5~12メートルが好ましい。
【0014】
好ましくは、供給システムにおいて、供給ガス混合システムが、プロピレン蒸発器と、プロピレン過熱器と、アンモニア蒸発器と、アンモニア過熱器と、パイプライン混合器とを含み、プロピレン蒸発器およびアンモニア蒸発器がそれぞれ、パイプライン混合器と連通し、プロピレン過熱器がプロピレン蒸発器とパイプライン混合器との間に設けられ、アンモニア過熱器がアンモニア蒸発器とパイプライン混合器との間に設けられ、パイプライン混合器が空のパイプライン、または、内部部品を備えるパイプラインである。
【0015】
好ましくは、供給システムにおいて、初期温度T0制御システムをさらに含み、初期温度T0制御システムは、供給物分配器の入口に設けられ、初期温度T0を検出するように構成されている送信器と、プロピレン過熱器およびアンモニア過熱器に熱を供給するように構成されている熱源と、熱源とプロピレン過熱器との間に接続されているパイプライン、および、熱源とアンモニア過熱器との間に接続されているパイプラインにそれぞれ設けられているバイパス弁と、送信器からの信号を受信し、送信器からの信号に応じてそれぞれのバイパス弁の開度を調整し、初期温度T0の制御を達成するように構成されているコントローラと、を含む。
【0016】
本発明はさらに、プロピレンアンモ酸化反応器中のプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度を制御するための方法であって、プロピレンアンモ酸化反応器は供給システムを含み、供給システムは供給ガス混合システムと供給物分配器とを含み、プロピレンとアンモニアとの混合ガスを供給ガス混合システムによって混合後、供給物分配器によってプロピレンアンモ酸化反応器中に均一に分配し、プロピレンとアンモニアとの混合ガスを供給物分配器に導入するときの初期温度T0を10~220℃にする工程を含む。
【0017】
本発明である、プロピレンアンモ酸化反応器中のプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度を制御する方法は、プロピレンとアンモニアとの混合ガスを供給物分配器に導入するときの初期温度T0が20~200℃であることを可能にする工程を含むことが好ましい。
【0018】
本発明である、プロピレンアンモ酸化反応器中のプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度を制御する方法は、プロピレンとアンモニアとの混合ガスを供給物分配器に導入するときの初期温度T0が35~185℃であることを可能にする工程を含むことが好ましい。
【0019】
本発明である、プロピレンアンモ酸化反応器中のプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度を制御する方法において、プロピレンアンモ酸化反応器の直径は5~12メートルが好ましい。
【0020】
本発明である、プロピレンアンモ酸化反応器中のプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度を制御する方法において、プロピレンアンモ酸化反応器の直径は7.5~12メートルが好ましい。
【0021】
本発明である、プロピレンアンモ酸化反応器中のプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度を制御する方法において、プロピレンアンモ酸化反応器の直径は8.5~12メートルが好ましい。
【0022】
本発明のプロピレンアンモ酸化反応器中のプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度を制御する方法は、初期温度T0を制御する制御工程をさらに含み、制御工程は、熱源によってプロピレン過熱器およびアンモニア過熱器に熱を供給する工程と、供給物分配器の入口に設けられている送信器を用いて初期温度T0を検出する工程と、送信器によって検出された初期温度T0に応じて、熱源とプロピレン過熱器との間に接続されているパイプライン、および、熱源とアンモニア過熱器との間に接続されているパイプラインにそれぞれ設けられているバイパス弁の開度を調整し、初期温度T0を調整する工程と、を含む。
【0023】
〔図面の簡単な説明〕
添付の図面は本開示を説明するために提供されるものであり、本出願の範囲を限定するためのものではない。図面中の構成要素の形状およびサイズは単に例示的なものであり、構成要素の特定の形状およびサイズを限定するのではなく、本開示を理解するためのものである。当業者は本開示の教示で必要とされるように、構成要素の可能な形状およびサイズを選択することによって、本開示を実施することができる。
【0024】
図1は、従来技術のプロピレンアンモ酸化流動床反応器の概略図である。
図2は、本開示のプロピレンおよびアンモニア分配器の一実施形態の構造を示す概略図である。
図3は、本開示のプロピレンアンモ酸化流動床反応器の概略図である。
図4Aは、本開示のプロピレンおよびアンモニア分配器の一実施形態の側面図である。
図4Bは、
図4AのA-A線に沿った断面図である。
図4Cおよび4Dはそれぞれ、本開示の他の実施形態のプロピレンおよびアンモニア供給物分配器の上面図である。
図5Aは、本開示の混合器管の縦断面図である。
図5Bは、本開示の混合器管の断面図である。
図6は、本開示の供給システムの初期温度T
0制御システムの概略図である。
図7は、本開示のプロピレンおよびアンモニア分配器の一実施形態の構造を示す概略図である。
【0025】
〔符号の説明〕
1 プロピレンアンモ酸化反応器
2 供給ガス混合システム
3 ノズル
6 ガス分配プレート
7 冷却コイル
10 供給物分配器
11 プロピレン蒸発器
12 アンモニア蒸発器
13 プロピレン過熱器
14 アンモニア過熱器
15 パイプライン混合器
16 内部部品
x 母管
y 主管
z 分岐管
LP 熱源。
【0026】
〔発明を実施するための形態〕
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
図6に示すように、本開示のプロピレンアンモ酸化反応器の供給ガス供給システムは、供給ガス混合システム2および供給物分配器10を含む。
【0028】
原料プロピレンは、プロピレン過熱器13を経てプロピレン蒸発器11から混合器管に導入される。原料アンモニアもアンモニア過熱器14を経てアンモニア蒸発器12から混合器管に導入される。原料プロピレンと原料アンモニアとを混合器管で十分に混合した後、混合ガスは供給物分配器10を介して触媒床に均一に供給される。
【0029】
当業者は、最良の結果を達成するためにはプロピレンおよびアンモニア供給物分配器が、プロピレンとアンモニアとの混合ガスが反応器壁から反応器の中心までの範囲で可能な限り均一に分配されるように、プロピレンおよびアンモニアを可能な限り均一に反応器に供給する必要があることを理解する。
【0030】
典型的なプロピレンアンモ酸化反応器1において、供給物分配器10がガス分配プレート6と冷却コイル7との間に配置されている。
図4A~4Cに示すように、供給物分配器10は、分配器入口と、反応器内部に位置するガスガイド管およびノズルとを含む。
【0031】
分配器入口は、反応器壁を通して反応器内に混合ガスを導入するように構成されている。本開示のいくつかの実施形態において、分配器入口は1つのみが存在する。本開示の他の実施形態において、分配器入口が複数あってもよい。分配器入口が複数ある場合、これらの分配器入口は、通常、同じ間隔で反応器壁の円周の同じ断面上に均一に分布している。
【0032】
本開示によれば、混合ガスは、ノズルを通って反応器床に直接導入される。ノズルはガスガイド管と流体連通している。全てのノズル開口部は同じ断面内に配置されるべきであり、混合ガスの均一な分布を達成するように反応器内に配置されるべきである。
【0033】
本開示によれば、ガスガイド管は、母管x(x管)、主管y(y管)、および/または分岐管z(z管)を含む。
【0034】
z管は、ノズルと直接流体連通するガスガイド管であり、主に混合ガスをノズルに輸送する役割を果たす。z管は分岐しない管であり、反応器の同じ断面に配置される。z管がノズルと連通するように、オリフィスは一定の方法でz管上に均一に分布される。それによって、反応器の断面において、上述したノズル開口の均一な分布が達成される。本開示のいくつかの実施態様において、z管は直管であってもよい。
【0035】
y管は、z管と直接流体連通するガスガイド管であり、主に混合ガスをz管に輸送する役割を果たす。本開示のいくつかの実施形態によれば、z管はy管に均一に接続され、y管はz管と同じ断面内に配置され、反応器の断面内で上述したノズル開口部の均一な分布が達成される。いくつかの実施形態において、z管と流体連通していることに加えて、z管と同様のy管もまた、オリフィスを通るノズルと直接流体連通しており、反応器の断面における上述のノズル開口部の均一な分布を達成するのをアシストする。本開示のいくつかの実施形態において、y管は直管であってもよい。
【0036】
x管は、y管と直接流体連通するガスガイド管であり、主に混合ガスをy管に輸送する役割を果たす。本開示のいくつかの実施形態によれば、z管およびy管は反応器の同じ断面に配置されるが、それらは供給物分配器入口と同じ平面上にはない。x管は供給物分配器入口からy管にプロピレンとアンモニアとの混合ガスを導入するように備えられている。本開示のいくつかの実施形態において、x管は1つのみ必要とされ、x管の端部でy管と流体連通していることを除いて、x管は他の位置にいかなる分岐も有さない。
【0037】
本開示のいくつかの実施形態において、
図2および
図4Dに示されるように、供給物分配器はy管およびz管のみを含んでいてもよい。y管およびz管は分配器入口と直接連通している。本開示の他の実施形態において、
図7に示されるように、供給物分配器はz管のみを含んでいてもよい。z管は分配器入口と直接連通している。
【0038】
したがって、本開示によれば、プロピレンとアンモニアとの混合ガスは、プロピレンおよびアンモニア供給物分配器の入口から入り、x管、y管およびz管に沿って、またはy管およびz管に沿って、またはz管のみに沿って通過し、最後に、y管またはz管に設けられたオリフィスを通過し、ノズルを通って反応器床に均一に分散される。
【0039】
プロピレンとアンモニアとの混合ガスは、混合ガスが供給物分配器の管に沿って触媒床に均一に供給されるときに、当該混合ガスは処理中の触媒床と熱交換され、ノズルを通って反応器に導入する前に混合ガスの温度を最高温度に達するまで連続的に上昇させる。しかしながら、工業的実施および関連する研究において、プロピレンおよびアンモニア供給物分配器の任意の位置における混合ガスの温度が供給物分配器の窒化温度よりも常に低いことが必要であることが示されている。これは供給物分配器中のどこかを通過する混合ガスの温度が供給物分配器の窒化温度よりも連続的に高い場合、長期間この温度にあった供給物分配器は前記位置で窒化される傾向が極めて高く、脆性破壊が引き起こされ、それによって混合ガスの不均一な分配および供給物分配器の交換のリスクが増大するからである。プロピレンおよびアンモニア分配器の構造設計に関する限り、これは許容されない。
【0040】
プロピレンとアンモニアとの混合ガスは供給物分配器において連続的に加熱される。混合ガスの任意箇所の温度Tiおよび当該箇所の温度上昇ΔTiは、式(1)によって実際に表すことができる:
Ti=T0+ΔTi (1)
式(1)において、供給物分配器の任意の位置におけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度Tiは、プロピレンとアンモニアとの混合ガスが供給物分配器に導入されるときの温度T0(以下、初期温度T0と呼ぶことがある)と、供給物分配器のプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度上昇ΔTiとによって決定される。
【0041】
したがって、初期温度T0および/または温度上昇ΔTiを合理的に制御または調整することができる限り、供給物分配器の任意の位置におけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度Tiを、供給物分配器の窒化温度よりも低くなるように効果的に制御することができる。例えば、初期温度T0が決定されたとき、温度上昇ΔTiは、温度Tiが窒化温度を超えないように制御または調整することができ、あるいは温度上昇ΔTiが決定されたとき、初期温度T0は温度Tiの効果的な制御を達成して温度Tiを窒化温度より低くするように制御または調整することもできる。
【0042】
本開示において、多くの基礎研究およびシミュレーション計算、ならびに繰り返しの実験検証によって、本発明者は供給物分配器の管に沿って移動するときのプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度上昇ΔTiが混合ガスと反応器床との間の熱交換によって制限されることを見出した。また、反応器直径、供給物分配器の形状、管と反応器床との間の混合ガスの温度差、混合ガスの質量流量、熱伝達係数等に関連することを見出した。要約すると、これらの関係は、以下の式(2)で表すことができる:
ΔTi∝f(D,d,T0,G,TR,K,…) (2)
式中、ΔTi(℃)は、供給物分配器の場所iにおけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度上昇であり、;
Dは、反応器の直径であり;
dは、供給物分配器の構造要素であり;
Gは、混合ガスの質量流量であり;
T0(℃)は、プロピレンとアンモニアとの混合ガスが供給物分配器に導入されるときの温度であり;
TR(℃)は、反応温度であり;
Kは、熱伝達係数である。
【0043】
本発明者は、前記影響要素の分析に基づき、関連する知見をまとめた。反応器のサイズ、供給物分配器の構成、混合ガスの流量等の要素を計算機シミュレーション計算と実験的検証と組み合わせて決定した後、実際には、供給物分配器中のプロピレンとアンモニアとの混合ガスのΔTiの温度上昇を制御する手法を得た。
【0044】
具体的には、本開示によれば、反応器のサイズ、供給物分配器の構造、および混合ガスの質量流量等の要素を決定した後、供給物分配器中のプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度上昇ΔTiをさらに詳細に式(3)で表すことができる:
ΔTi=aX+bY+cjZ (3)
式中、X、YおよびZはそれぞれ、x、yおよびz管に沿ったプロピレンとアンモニアとの混合ガスの移動経路の長さ(メートル;m)を表す。aおよびbはそれぞれ、プロピレンとアンモニアとの混合ガスがxおよびy管を移動するときの単位長さ当たりの平均温度上昇率(℃/m)を表す。cjはプロピレンとアンモニアとの混合ガスが任意のz管を移動するときの単位長さ当たりの温度上昇率(℃/m)を表し、jは1以上の整数を表す。したがって、式(3)は、供給物分配器の管内のプロピレンとアンモニアとの混合ガスの移動経路の長さと、供給物分配器の各管を流れるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの平均温度上昇率とに基づいて温度上昇ΔTiを算出することができ、それに応じて温度上昇ΔTiの制御を達成することができることを実際に示している。
【0045】
供給物分配器の管における混合ガスの移動経路の長さは、供給物分配器の構造およびそれに対応するサイズに依存する。実際の製造には様々な構造およびサイズのプロピレンとアンモニアとの混合ガスの供給物分配器があるが、本発明によれば、プロピレンとアンモニアとの混合ガスの供給物分配器の構造およびサイズにかかわらず、管内の混合ガスの温度上昇ΔTiを相対的に減少させるために、供給物分配器入口からノズルまでのx、yおよび/またはz管内の混合ガスの全移動距離はできるだけ短くするべきである。
【0046】
前記目的を達成するために、供給物分配器中の混合ガスの移動距離を空間配置で減少させるために、異なる長さのx管、y管および/またはz管の異なる組み合わせが供給物分配器中で使用される必要がある。
【0047】
例えば、本開示のいくつかの実施形態において、x管の形状は特に限定されず、反応器の実際の状況に応じて設計することができる。x管内のプロピレンとアンモニアとの混合ガスの移動経路の長さは、0~20メートルの範囲とすることができる。
図2および
図4Dに示す形態の供給物分配器を採用するとき、供給物分配器入口ならびにy管およびz管は、反応器1の同じ水平断面に配置する。このとき、x管の長さは0であってもよい。
【0048】
別の例として、本開示のいくつかの実施形態において、分配器は通常、y管を含む。y管の数は、1~8、好ましくは2または4、最も好ましくは4であってもよい。本開示によれば、y管内のプロピレンとアンモニアとの混合ガスの移動距離は、0~反応器の半径の範囲でなければならない。その結果、混合ガスがy管内を長距離にわたって流れることを可能にすることなく、均一なガス供給の目的が達成され得る。いくつかの実施形態において、y管がノズルと流体連通する複数のオリフィスを備えてもよい。それによって、z管が反応器内のプロピレンとアンモニアとの混合ガスの均一な分配を達成するのを助ける。
【0049】
別の例として、本開示のいくつかの実施形態において、プロピレンとアンモニアとの混合ガスを反応器に直接供給するために、ノズルと流体連通する複数のオリフィスがz管上に設けられ、したがって、z管が存在しなければならない。z管の形状および配置は、z管上に配置されたノズルがプロピレンとアンモニアとの混合ガスを反応器内に均一に分配することができるという要件を満たすべきである。本開示によれば、一般的に、z管内のプロピレンとアンモニアとの混合ガスの移動距離も、0~反応器の半径の範囲内にあるべきである。その結果、混合ガスがz管内を長距離にわたって流れることを可能にすることなく、均一なガス供給の目的が達成され得る。
【0050】
供給物分配器を通って流れる混合ガスの経路の長さに加えて、温度上昇ΔTiはまた、供給物分配器のそれぞれの管におけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの平均温度上昇率に密接に関係することが、式(3)から分かる。本開示によれば、管内の混合ガスの平均温度上昇率は、管内外の温度差、管径、管内を流れる混合ガスの質量流量等の多くの要素に影響される。
【0051】
例えば、パイプを流れる混合ガスの平均温度上昇率は、混合ガスと外界との間の温度差によって決定される。他の点では同一の状態では、プロピレンとアンモニアとの混合ガスが管に導入されるときの初期温度T0が高く、管外の反応器床との温度差が小さければ、平均温度上昇率は減少し得る。
【0052】
別の例として、管を流れる混合ガスの平均温度上昇率も管径の影響を受ける。他の点では同一の状態では、混合ガスの平均温度上昇率が、パイプ直径が増加することにつれて小さくなる。理論上のみでは、パイプの直径をある程度大きくすると、温度上昇率の変化は無視できる。
【0053】
別の例として、管内の混合ガスの平均温度上昇率は、混合ガスの質量流量によっても影響される。他の点では同じ条件下で、管内を輸送されるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの質量流量が輸送中に変化しない場合、管を通過する間の混合ガスの平均温度上昇率の変化は、基本的に固定値とみなすことができる。しかしながら、混合ガスが分岐を通って管内に連続的に分配されると、管を通って流れる混合ガスの質量流量が減少し、平均温度上昇率が増加する。
【0054】
なお、前記影響要素を組み合わせることにより、効果が得られる。例えば、混合ガスは、一定の直径を有するz管を通過し、混合ガスの移動方向に沿って間隔を置いて配置されたノズルがz管に設けられ、これらのノズルを通って混合ガスが連続的に反応器に導入されることができると仮定する。混合ガスの反応器への連続的な流れのために、混合ガスの移動方向に沿った管内の混合ガスの質量流量は減少し続けるが、管内の混合ガスの平均温度上昇率は連続的に増加しない。これは、流動プロセスにおける混合ガスの連続的な温度上昇が混合ガスと管の外側の反応器床との間の温度差の漸進的な低下を引き起こし、温度差の低下がそれに対応して、混合ガスの平均温度上昇率を低下させ得るからである。このように、管内のプロピレンとアンモニアとの混合ガスの移動方向の始端、および管内のプロピレンとアンモニアとの混合ガスの移動方向の終端におけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度上昇率は、比較的大きくてもよく(プロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度が前記始端において比較的低く、これは管の内側と外側との間の大きな温度差を引き起こす。したがって、混合ガスの平均温度上昇率は増加する;混合ガスの連続的な分流は、前記終端に到達するプロピレンとアンモニアとの混合ガスの質量流量の低下を引き起こし、したがって、混合ガスの平均温度上昇率は増加する)、プロピレンとアンモニアとの混合ガスの移動方向の中間部分におけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度上昇率は、比較的小さくてもよい。パイプの全長にわたって、温度上昇率はサドル状の変化となる。
【0055】
現代のアクリロニトリル製造プロセスにおいて、優れた生産能力および高収率を達成するために、反応器のサイズは大きい。反応器内での均一なガス供給を達成するために、反応器に使用されるプロピレンおよびアンモニア供給物分配器もまた、比較的大きなサイズを有する必要があり、したがって、複雑な構造を形成する。この場合、供給物分配器中のプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度を、対応する窒化温度を超えないように制御するために、供給物分配器の構造は正確に設計および配置される必要がある。また、混合ガスの初期温度も、管内のプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度上昇が完全に制御され得ることを保証するために、それに応じて合理的に制御される必要がある。
【0056】
反応器のサイズに関しては、市販の触媒の性能による制限のために、現代の工業生産におけるアクリロニトリル反応器のサイズは実際には生産能力に密接に関連している。実際の製造において、直径が小さ過ぎる反応器は、生産能力が低くコストが高いために段階的に廃止されている。さらに、反応器は、反応器設備の加工性、ならびに、ガス分配プレートおよび基礎の触媒負荷量の要件のために、過度にスケールアップできない。現在、プロピレンのアンモ酸化によるアクリロニトリルの実際の製造における反応器直径は、5~12メートルの範囲である。現在の市販の触媒を使用すると、アクリロニトリルの対応する製造規模は、年間約40~200キロトンである。したがって、供給物分配器の構造設計に関しては、この範囲の反応器サイズに応じて調整と配置を行わなければならない。
【0057】
反応器のサイズが大きくなると、それに応じて供給物分配器のサイズを大きくしなければならないことを理解すべきである。これは、反応器内の混合ガスの均一な分布を確実にするのに十分な長さおよび配置密度のガスガイド管を必要とする。したがって、このことは、混合ガスが反応器に供給されるように分配器中で十分な距離を混合ガスが移動する必要があることを考慮しなければならないことも意味している。上述のとおり、ガスガイド管の平均温度上昇率が同じであれば、ガスガイド管内の混合ガスの温度上昇ΔTが大きくなることを意味する。このとき、ノズルから最終的に流出する混合ガスの温度を制御するためには、混合ガスの初期温度T0を適宜調整する必要がある。
【0058】
さらに、アクリロニトリルの年間収率が固定されている場合、供給物分配器を通って反応器に導入されるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの全質量流量は、一般に比較的一定である。しかしながら、一定の質量流量であるプロピレンとアンモニアとの混合ガスが供給物分配器を通って反応器に導入される移動プロセスの間、供給物分配器の形状の変化に従って、プロピレンとアンモニアとの混合ガスの質量流量は、混合ガスが流れるそれぞれのガスガイド管内で連続的に再分配され得る。同時に、混合ガスが、yおよび/またはz管を通って流れている間、混合ガスはノズルを通って反応器に連続的に放出される。これはまた、パイプ中の混合ガスの質量流量の連続的な減少を引き起こし得る。
【0059】
例えば、本開示の一実施形態によれば、
図4Cに示す供給物分配器において、プロピレンおよびアンモニア供給物分配器のx管は、プロピレンとアンモニアとの混合ガスを4つのy管に供給する。そして、各y管は、混合ガスを複数のz管に供給し、混合ガスの均一な分配を達成する。このようにして、パイプの数が増えるにつれて、単一のx管における混合ガスの質量流量は、単一のy管における混合ガスの質量流量よりも大きくなければならず、単一のy管における混合ガスの質量流量は、対応する単一のz管における混合ガスの質量流量よりも大きくなければならない。同時に、上述のように、オリフィスおよびノズルも、y管およびz管上に設けられる。このプロセスでは、混合ガスがこれらの管を通って移動すると、ノズルを通って混合ガスは反応器に連続的に導入される。それによって管内の混合ガスの質量流量がさらに減少する。
【0060】
上述したように、管内の混合ガスの質量流量は混合ガスの温度上昇率に直接影響する。管を流れる混合ガスの質量流量の低下は、管内の混合ガスの平均温度上昇率を増加させる。このため、供給物分配器にあまりにも多く分岐を配置してz管および/またはy管を形成したり、長いz管および/またはy管を配置したり、管上に狭い間隔でノズルを配置したりすると、混合ガスのΔTiの温度上昇を制御することが困難になる。しかしながら、反応器内にプロピレンとアンモニアとの混合ガスの均一な分配を達成するために、供給物分配器は、長いガスガイド管と、多くの分岐部と、高密度ノズルとが配置されなければならない。したがって、プロピレンおよびアンモニア供給物分配器の設計において、これらの2つの要素を同時に考慮しなければならない。
【0061】
供給物分配器中の温度上昇ΔTiを制御するために、1つの考えられる手段は、これらの分岐管の直径を増大させることである。しかしながら、y管およびz管は反応器の断面に平行であり、反応器床の流動化方向に垂直であるため、管直径が過度に大きいと反応器の断面面積を大きく占める。その結果、触媒床の流動化品質が悪くなる。したがって、供給物分配器を設計するとき、供給物分配器によって占められる反応器の断面積をできるだけ小さくするために、この要素を考慮する必要がある。その結果、分配器によって占められる全体の断面積は反応器床における流動化反応に影響を及ぼさないように低減される(例えば、プロピレンおよびアンモニア供給物分配器の形状を設計するとき、y管の直径(管直径)がx管の直径よりも小さく、z管の直径がy管の直径よりもはるかに小さいように設計することが常に必要である)。
【0062】
本発明者は、これについて多くの調査と実践を行った。本発明者の知見によれば、流動化効果に影響を与えないことを考慮すると、z管の直径の上限は120mm以下であることが好ましく、115mm以下であることがより好ましい。前記上限を超えると、反応器の全断面積が過度に占有され、触媒床の流動化品質に影響を及ぼす。しかしながら、ノズルをz管に設置する必要があるため、供給物分配器の加工性を考慮すると、z管の直径の下限は70mm以上であることが好ましく、75mm以上であることがより好ましい。前記下限を超えると、管の加工性が悪くなり、管にノズルを取り付け難くなる。
【0063】
y管にはz管を設置する必要があるため、y管の直径はz管の直径よりも大きいことが好ましく、y管の直径の下限は180mm以上、好ましくは200mm以上である。しかしながら、流動化反応の効果を考慮すると、y管の直径の上限は400mm以下であることが好ましく、370mm以下であることがより好ましい。y管の直径が前記範囲を超えると、流動化効果に影響を与え、y管上に触媒が蓄積し易くなり、触媒のデッドゾーンが形成され得る。
【0064】
同様に、x管にはy管を設置する必要があるため、x管の直径はy管の直径よりも大きいことが好ましい。x管の直径の下限は、250mm以上であることが好ましく、300mm以上であることがより好ましい。x管の直径の上限は、700mm以下であることが好ましく、650mm以下であることがより好ましい。
【0065】
本発明者はさらに、アクリロニトリルの工業的製造のための現存の条件で設計されたプロピレンおよびアンモニア供給物分配器が寸法、構造設計および直径についての上述の要件を満たすとき、供給物分配器に含まれるx管、y管および/またはz管は、それぞれの長さおよび直径、通過する混合ガスの質量流量、および供給される混合ガスの初期温度(T0)および反応温度(TR)に起因して、常時、一定の範囲の平均温度上昇率を示すことを見出した。
【0066】
プロピレンおよびアンモニア供給物分配器は、その中のプロピレンとアンモニアとの混合ガスを直接y管に供給するx管を備えることができる。したがって、混合ガスがx管内を移動する間、混合ガスの質量流量に変化はなく、混合ガスの平均温度上昇率は基本的に固定値である。本発明者による多数の計算および実験による検証によれば、一般に、x管内の混合ガスの平均温度上昇率aは、好ましくは2~9℃/mの範囲である。
【0067】
プロピレンとアンモニアとの混合ガスが反応器に均一に導入されることを確実にすることが必要であるので、プロピレンおよびアンモニア供給物分配器は、好ましくは対称的な設計を採用し、供給物分配器のy管それぞれにおけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの質量流量の変化は、基本的に同じである。本発明者による多数の計算および実験的検証によれば、一般に、プロピレンおよびアンモニア供給物分配器のy管中の混合ガスの平均温度上昇率bは、好ましくは9~20℃/mの範囲である。
【0068】
それぞれのz管に含まれるノズルの数は正確に同じではなく、それぞれのz管とy管との間の接合部における混合ガスの初期温度は同じではないので、プロピレンおよびアンモニア分配器のそれぞれのz管の平均温度上昇率は異なる。各z管は、独立した平均温度上昇率を有する。本発明者による多数の計算および実験的検証によれば、通常、各z管におけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの平均温度上昇率cj(jは1以上の整数を示す)は、30~120℃/mであることが好ましい。
【0069】
アクリロニトリルの生産能力の要件に応じて、反応器のサイズおよび供給物分配器の形状は、通常、多様である。しかしながら、前記知見に基づいて、本発明者は反応器のサイズと供給物分配器の形状とを組み合わせ、混合ガスの適切な初期温度T0を使用することによって、適切な供給物分配を設計することが可能であり、供給物分配器システムが、管内の窒化温度よりも高い温度を有する混合ガスの形成を完全に回避することができることを、多数の計算および実験的検証を通して見出した。
【0070】
具体的には、上述したように、供給物分配器において、aは通常2~9℃/mであり、bは通常9~20℃/mであり、cjは通常30~120℃/mである。したがって、x管、y管およびz管の長さX、YおよびZが制御される限り、ΔTiは式(3)に従って計算することができ、適切なT0と共に、供給物分配器中の混合ガスの温度が、必ず窒化温度よりも低いことを保証することができる。
【0071】
本発明者の上述の知見から、供給物分配器のz管内のプロピレンとアンモニアとの混合ガスの平均温度上昇率は、y管内の混合ガスの平均温度上昇率よりも著しく大きく、y管内の平均温度上昇率は、x管内の混合ガスの平均温度上昇率よりも大きいことが分かる。混合ガスの温度はx管およびy管における混合ガスの移動中に連続的に上昇する。混合ガスの温度上昇ΔTiは、x管、y管、およびz管における混合ガスの温度上昇の重ね合わせである。したがって、反応器内にz管のみを備える供給物分配器を考慮する場合、反応器内にz管に加えてx管およびy管を備える供給物分配器と比較して、他の点では同一の条件下で、反応器内にz管のみを備える供給物分配器において、プロピレンとアンモニアとの混合ガスの最大温度上昇ΔTiMaxが低くなることを達成することができる。ここで、いわゆる最大温度上昇ΔTiMaxは、供給物分配器の入口から同じ反応器内のノズルに到達することができる最大温度上昇率である。供給物分配器の設計要件に従い、初期温度T0に加えて最大温度上昇ΔTiMaxが窒化温度を超えてはならないので、供給物分配器の温度上昇範囲は、最大温度上昇ΔTiMaxによって決定されることを当業者であれば理解し得る。
【0072】
したがって、本開示に提供されるいくつかの実施形態では、
図7に示されるように、供給物分配器において、z管は反応器壁上の供給物分配器の入口と直接連通し、したがって、混合ガスは多くの入口を通ってz管に供給される。したがって、z管のみが反応器内に存在する。多数の実験および計算により、従来技術の種々のプロピレンおよびアンモニア分配器と、本発明者が発明した種々の供給物分配器とを比較した場合、他の点では同一の状態(反応器のサイズ、生産規模等)では、
図7に示す形態の供給物分配器がプロピレンとアンモニアとの混合ガスの最大温度上昇ΔT
iMaxを最も低くすることを達成することができることが明らかになった。
【0073】
例えば、同じ反応器の直径と生産規模が同じ場合、
図4A~4Dに示す形態の供給物分配器において、プロピレンとアンモニアとの混合ガスが触媒床に導入される前に供給物分配器中の長い経路を移動するので、供給物分配器中のプロピレンとアンモニアとの混合ガスの実際の温度上昇ΔT
iは、
図7に示す供給物分配器の温度上昇ΔT
iよりも大きくなる。したがって、
図4A~4Dに示す形態の供給物分配器は、プロピレンとアンモニアとの混合ガスの最大温度上昇ΔT
iMaxを最も低くすることができない。
【0074】
さらに、反応器の直径が5~12メートルの範囲であるとき、反応器の直径が増加することにつれて、同じタイプの供給物分配器のy管および/またはz管の長さがそれに応じて延長され、したがって、管を通った後の混合ガスの温度上昇がより大きくなることを理解されたい。z管の長さは、その上に設けられたノズルの数およびノズル間の間隔によって決まる。z管内の混合ガスの質量流量は、ノズル数と単一ノズルから追い出される混合ガスの質量流量の積である。ノズル間の間隔が同じであり、単一のノズルから追い出されるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの質量流量が同じであると仮定すると、最も長いz管を通って流れるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの質量流量は、それに応じて増加する。比較的一定の直径であるz管の場合、z管における平均温度上昇率はわずかに減少するのであろう。したがって、同じ距離を流れる混合ガスの温度上昇は減少する。最後に、ΔTiの変化は、上述した変化の組み合わせとなる。最大温度上昇ΔTiMaxの変化についても同様である。
【0075】
したがって、反応器の直径の変化に伴って最大温度上昇ΔTiMaxが変化することを当業者は理解し得る。本発明者による多数の計算および実験的検証によれば、商業的に許容される供給物分配器について、反応器の直径が5~12mであると考えられる場合、最大温度上昇ΔTiMaxは、反応器の直径が1メートル増加する毎に約10~17℃増加する。
【0076】
さらに、ノズルから吐出される混合ガスの最終温度の制御は、最大温度上昇ΔTiMaxのみを決定することによって達成することができない。式(1)によれば、ΔTiはT0と組み合わせて混合ガスの最終温度の制御を達成しなければならない。T0がガスガイド管の平均温度上昇率にも影響を及ぼすことを考慮して、本発明者は、他の点では同一の条件においては、z管について、T0の10℃上昇毎に平均温度上昇率が約0.7~1.3℃/m低下することを、多数の計算および実験的検証を通して見出した。
【0077】
以上のように、供給システムにおける最も低い最大温度上昇ΔTiを実現する条件と併せて、本発明で提供する工業条件用プロピレンおよびアンモニア供給システムにおいて、ノズルから吐出される混合ガスの最終温度が対応する窒化温度を超えないようにするためには、プロピレンとアンモニアとの混合ガスの初期温度T0を220℃以下とする必要があることを本発明者は確認した。また、反応器の直径が大きいとき、例えば、反応器の直径が7.5~12メートルのときは初期温度T0が200℃以下であるべきであり、反応器の直径が8.5~12メートルのときは初期温度T0が185℃以下であるべきである。
【0078】
さらに、混合ガスの輸送中に、プロピレンとアンモニアとの混合ガスが反応器に円滑に供給され得ることを確実にするために、一定の圧力が必要とされる。同時に、輸送中の低温に起因して管内に生成される凝縮物を回避するために、過熱状態のプロピレンとアンモニアとの混合ガスを蒸発器から反応器のプロピレンおよびアンモニア供給物分配器に輸送することが必要である。したがって、本開示の供給システムでは、T0が10℃以上であり、好ましくは20℃以上であり、より好ましくは35℃以上であり、さらにより好ましくは45℃以上である。
【0079】
したがって、反応器の直径が5~12mである場合、プロピレンとアンモニアとの混合ガスの初期温度T0を前記範囲内に制御することにより、供給物分配器中の任意の位置におけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度を窒化温度よりも低い範囲で効果的に制御することができる。
【0080】
さらに、初期温度T
0を前記範囲内に制御するために、本発明の供給ガス供給システムには、供給ガス混合システム2も設けられている。以下、本発明の供給ガス供給システムにおける供給ガス混合システム2について、図面を参照しながら説明する。
図6に示すように、供給ガス混合装置2は、プロピレン蒸発器11と、プロピレン過熱器13と、アンモニア蒸発器12と、アンモニア過熱器14と、パイプライン混合器15とを備えている。上述したように、原料プロピレンは、プロピレン蒸発器11からプロピレン過熱器13を通って混合ラインに導入される。同様に、原料アンモニアもアンモニア蒸発器12からアンモニア過熱器14を通って混合ラインに導入される。原料プロピレンと原料アンモニアは混合ラインで混合され、供給物分配器10に導入される。
【0081】
供給物分配器10に導入される前にプロピレンとアンモニアの十分な混合を達成するために、本開示のプロピレンおよびアンモニア供給ガス供給システムの供給ガス混合システム2は、パイプライン混合器15をさらに含む。パイプライン混合器の役割は、過熱器からの供給ガスを混合ライン内でより均一に混合させ、プロピレンおよびアンモニア分配器のそれぞれのノズルから吐出される混合ガスが同じ供給ガス比を有するようにすることである。原料プロピレンとアンモニアの混合ラインは、パイプライン混合器として直接使用することができる。プロピレンおよびアンモニア混合ライン内の内部部品を含むパイプライン混合器の具体的な設置位置は限定されず、プロピレンとアンモニアとの混合ガスを含むパイプライン内の任意の位置に設置することができる。好ましくは、反応器近傍のプロピレンとアンモニアとの混合ガスのパイプライン内にライン混合器15を設ける。好ましくは、
図5Bに示す内部部品16をライン混合器15に加えてもよい。内部部品の具体的な形状は特に限定されず、
図5(b)に示すフィン状であってもよいし、他の形状であってもよい。
【0082】
過熱器と反応器のプロピレンおよびアンモニア入口との間の供給ガスパイプラインには、断熱手段が設けられているが、供給ガスは生産企業による装置の全体的なレイアウトの制限のために、プロピレンおよびアンモニア過熱器と反応器のプロピレンおよびアンモニア入口との間のパイプラインにおいて、常にある程度の熱損失を被る。過熱器によって過熱された後の供給ガスの温度は、供給ガスがプロピレンおよびアンモニア入口に到達する温度よりも高い。さらに、季節の違いによっては、熱損失の程度も、供給ガスと外部環境との間の温度差の違いにより変化する。また、装置の大きさならびにプロピレンおよびアンモニア分配器の設計形状が異なれば、プロピレンおよびアンモニア分配器の入口における初期温度T0の設計値も変化する。
【0083】
外部の不確定要素による初期温度T
0の変動を回避するために、本発明のプロピレンおよびアンモニア供給ガス供給システムは、プロピレンおよびアンモニア供給物分配器の入口に初期温度T
0制御システムをさらに含む。
図6に示すように、初期温度T
0制御システムは、送信器と、熱源と、バイパス弁と、コントローラとを備えている。送信器は、供給物分配器の入口に設けられ、初期温度T
0を検出するように構成される。熱源(例えば、低圧蒸気LP;熱源の温度および圧力は一般に安定していると考えられる。以下、熱源をときどき熱源LPと示す)は、プロピレン過熱器12およびアンモニア過熱器14に熱を供給するように構成される。バイパス弁は、熱源LPとプロピレン過熱器12との間に接続されたパイプライン上、および熱源LPとアンモニア過熱器14との間にそれぞれ接続されたパイプライン上に設けられる。コントローラは送信器からの信号を受信し、送信器からの信号に応じてそれぞれのバイパス弁の開度を調整するように構成される。
【0084】
プロピレンおよびアンモニア供給物分配器の入口における温度T
0の正確な温度制御は、一般に、入口におけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの測定温度T
0に応じて供給ガス過熱器に供給される熱源(例えば、低圧蒸気)の流量を調節することによって達成される。具体的には
図6に示すように、入口でのプロピレンとアンモニアとの混合ガスの測定温度が設計初期温度T
0よりも低いときには温度送信器がコントローラに信号を送信する。そして、コントローラは、信号に応じて各バイパス弁の開度を調整し、熱源の流量を増大させ、各過熱器の出口での供給ガスの温度を上昇させる。これによって、プロピレンおよびアンモニア供給物分配器の入口における温度T
0を設計初期温度に達するようにする。逆に、入口におけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの測定温度が設計初期温度T
0よりも高いとき、温度送信器はコントローラに信号を送信し、コントローラは、信号に応じてそれぞれのバイパス弁の開度を調節して、熱源の流れを減少させ、それぞれの過熱器の出口における供給ガスの温度を減少させる。プロピレンおよびアンモニア供給物分配器の入口における温度T
0を設計初期温度に達するようにする。概して、プロピレンガスおよびアンモニアガスがそれぞれの過熱器によって過熱された後、それぞれの過熱器の排気口におけるプロピレンガスおよびアンモニアガスの温度は同様である。そして、プロピレン過熱器バイパス弁コントローラおよびアンモニア過熱器バイパス弁コントローラの動作は両方とも入口温度に応答する。プロピレン過熱器のバイパス弁のコントローラの動作およびアンモニア過熱器のバイパス弁のコントローラの動作は、両方とも入口における温度T
0に応答する。
【0085】
〔実施例〕
本開示の実施形態は、具体例によってさらに詳細に説明される。
【0086】
以下の実施例における全てのデータは、実験室において、それぞれ5.0m、5.4m、7.5m、8.5m、10m、および12mの直径を有するアンモ酸化流動床反応器における状態をシミュレートすることによって得られた。説明図中の種々の供給物分配器の形態に従って炭素鋼を材料として実際の供給物分配器を模擬し、供給物分配器の温度を測定し、対応する平均温度上昇率を計算するために、温度伝送器を重要なノードに設けた。以下の実施例および比較例において、全てのデータは、複数回の測定後に平均した。
【0087】
〔実施例1〕
流動床反応器の直径は5.0mであり、装置を全負荷で運転した。供給ガスの比率(C
3H
6:NH
3:空気)は1:1.2:9.3であり、反応温度は440℃、反応圧力は55kPaであった。プロピレンおよびアンモニア分配器は、
図7に示すような形態を有し、炭素鋼製であり、z管の直径はφ80mmであった。プロピレンとアンモニアとの混合ガスは、プロピレンおよびアンモニア分配器を通ってそれぞれのz管のテールエンドノズルに到達し、プロピレンとアンモニアとの混合ガスは、対応するz管において2.42mの移動距離を移動したときに、最も遠いテールエンドノズルに到達した。関連するモデルデータおよび入手可能な実験データによれば、分配器の入口におけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度は220℃に制御した。プロピレンとアンモニアとの混合ガスがz管内を移動したときの単位長さ当たりの平均温度上昇率は52℃/mであった。最も遠いテールエンドノズルにおけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度は346℃であった。
【0088】
〔実施例2〕
流動床反応器の直径は5.4mであり、装置を全負荷で運転した。供給ガスの比率(C
3H
6:NH
3:空気)は1:1.2:9.3であり、反応温度は440℃、反応圧力は55kPaであった。プロピレンおよびアンモニア分配器は、
図7に示すような形態を有し、炭素鋼製であり、z管の直径はφ90mmであった。プロピレンとアンモニアとの混合ガスは、プロピレンおよびアンモニア分配器を通ってそれぞれのz管のテールエンドノズルに到達し、プロピレンとアンモニアとの混合ガスは、対応するz管において2.6mの移動距離を移動したときに、最も遠いテールエンドノズルに到達した。関連するモデルデータおよび入手可能な実験データによれば、分配器の入口におけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度は160℃に制御した。プロピレンとアンモニアとの混合ガスがz管内を移動したときの単位長さ当たりの平均温度上昇率は60℃/mであった。最も遠いテールエンドノズルにおけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度は316℃であった。
【0089】
〔実施例3〕
流動床反応器の直径は7.5mであり、装置を全負荷で運転した。供給ガスの比率、反応温度、反応圧力は実施例1と同様とした。プロピレンおよびアンモニア分配器は、
図7に示すような形態を有し、炭素鋼製であり、z管の直径はφ90mmであった。プロピレンとアンモニアとの混合ガスは、プロピレンおよびアンモニア分配器を通ってそれぞれのz管のテールエンドノズルに到達し、プロピレンとアンモニアとの混合ガスは、対応するz管において3.65mの移動距離を移動したときに、最も遠いテールエンドノズルに到達した。関連するモデルデータおよび入手可能な実験データによれば、分配器の入口におけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度は200℃に制御した。プロピレンとアンモニアとの混合ガスがz管内を移動したときの単位長さ当たりの平均温度上昇率は40℃/mであった。最も遠いテールエンドノズルにおけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度は346℃であった。
【0090】
〔実施例4〕
流動床反応器の直径は8.5mであり、装置を全負荷で運転した。供給ガスの比率、反応温度、反応圧力は実施例1と同様とした。プロピレンおよびアンモニア分配器は、
図7に示すような形態を有し、炭素鋼製であり、z管の直径はφ90mmであった。プロピレンとアンモニアとの混合ガスは、プロピレンおよびアンモニア分配器を通ってそれぞれのz管のテールエンドノズルに到達し、プロピレンとアンモニアとの混合ガスは、対応するz管において4.15mの移動距離を移動したときに、最も遠いテールエンドノズルに到達した。関連するモデルデータおよび入手可能な実験データによれば、分配器の入口におけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度は185℃に制御した。プロピレンとアンモニアとの混合ガスがz管内を移動したときの単位長さ当たりの平均温度上昇率は39℃/mであった。最も遠いテールエンドノズルにおけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度は347℃であった。
【0091】
〔実施例5〕
流動床反応器の直径は12mであり、装置を全負荷で運転した。供給ガスの比率、反応温度、反応圧力は実施例1と同様とした。プロピレンおよびアンモニア分配器は、
図7に示すような形態を有し、炭素鋼製であり、z管の直径はφ110mmであった。プロピレンとアンモニアとの混合ガスは、プロピレンおよびアンモニア分配器を通ってそれぞれのz管のテールエンドノズルに到達し、プロピレンとアンモニアとの混合ガスは、対応するz管において5.9mの移動距離を移動したときに、最も遠いテールエンドノズルに到達した。関連するモデルデータおよび入手可能な実験データによれば、分配器の入口におけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度は130℃に制御した。プロピレンとアンモニアとの混合ガスがz管内を移動したときの単位長さ当たりの平均温度上昇率は37℃/mであった。最も遠いテールエンドノズルにおけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度は348℃であった。
【0092】
〔実施例6〕
流動床反応器は直径10mであり、装置は全負荷で運転した。供給ガスの比率、反応温度、反応圧力は実施例1と同様とした。プロピレンおよびアンモニア分配器は、
図4Aおよび
図4Cの組み合わせの形態を有し、炭素鋼製の分配器だった。x管の直径はφ450mmであり、y管の直径はφ250mmであり、z管の直径はφ90mmであった。x管におけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの移動距離は13mであった。プロピレンとアンモニアとの混合ガスは、プロピレンおよびアンモニア分配器の管を通ってそれぞれのz管のテールエンドノズルに到達した。分配器の入口におけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度は52℃に制御した。関連するモデルデータおよび入手可能な実験データによれば、プロピレンとアンモニアとの混合ガスが最も長いz管上のテールエンドノズルに移動したとき、すなわち、プロピレンとアンモニアとの混合ガスがx管、y管およびz管においてそれぞれ13m、4.1mおよび2.8mの移動距離を移動したときに、本形態のプロピレンおよびアンモニア分配器中のプロピレンとアンモニアとの混合ガスは最高温度に達した。プロピレンとアンモニアとの混合ガスがx管、y管、z管内を移動したときの単位長さ当たりの平均温度上昇率はそれぞれ、4.5℃/m、13.5℃/m、55℃/mであった。したがって、前記テールエンドノズルにおけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度は319℃であった。
【0093】
〔実施例7〕
流動床反応器は直径10mであり、装置は全負荷で運転した。供給ガスの比率、反応温度、反応圧力は実施例1と同様とした。プロピレンおよびアンモニア分配器は、
図4Aおよび
図4Bの組み合わせの形態を有し、炭素鋼製の分配器だった。x管の直径はφ500mmであり、y管の直径はφ250mmであり、z管の直径はφ100mmであった。x管におけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの移動距離は8mであった。プロピレンとアンモニアとの混合ガスは、プロピレンおよびアンモニア分配器の管を通ってそれぞれのz管のテールエンドノズルに到達した。分配器の入口におけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度T
0は36℃に制御した。関連するモデルデータおよび入手可能な実験データによれば、プロピレンとアンモニアとの混合ガスが最も長いz管上のテールエンドノズルに移動したとき、すなわち、プロピレンとアンモニアとの混合ガスがx管、y管およびz管においてそれぞれ8m、0.3mおよび4.8mの移動距離を移動したときに、本形態のプロピレンおよびアンモニア分配器中のプロピレンとアンモニアとの混合ガスは最高温度に達した。プロピレンとアンモニアとの混合ガスがx管、y管、z管内を移動したときの単位長さ当たりの平均温度上昇率はそれぞれ、4℃/m、13℃/m、50℃/mであった。したがって、前記テールエンドノズルにおけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度は312℃であった。
【0094】
〔実施例8〕
流動床反応器は直径10mであり、装置は全負荷で運転した。供給ガスの比率、反応温度、反応圧力は実施例1と同様とした。プロピレンおよびアンモニア分配器は、
図1および
図4Dの組み合わせの形態を有し、炭素鋼製の分配器だった。y管の直径はφ300mmであり、z管の直径はφ100mmであった。プロピレンとアンモニアとの混合ガスは、プロピレンおよびアンモニア分配器の管を通ってそれぞれのz管のテールエンドノズルに到達した。分配器の入口におけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度は110℃に制御した。関連するモデルデータおよび入手可能な実験データによれば、プロピレンとアンモニアとの混合ガスが最も長いz管上のテールエンドノズルに移動したとき、すなわち、プロピレンとアンモニアとの混合ガスがy管およびz管においてそれぞれ1.3mおよび3.4mの移動距離を移動したときに、本形態のプロピレンおよびアンモニア分配器中のプロピレンとアンモニアとの混合ガスは最高温度に達した。プロピレンとアンモニアとの混合ガスがy管およびz管内を移動したときの単位長さ当たりの平均温度上昇率はそれぞれ、14.5℃/mおよび58℃/mであった。したがって、前記テールエンドノズルにおけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度は326℃であった。
【0095】
〔実施例9〕
流動床反応器は直径7.5mであり、装置は全負荷で運転した。供給ガスの比率、反応温度、反応圧力は実施例1と同様とした。プロピレンおよびアンモニア分配器は、
図4Aおよび
図4Cの組み合わせの形態を有し、炭素鋼製の分配器だった。x管の直径はφ320mmであり、y管の直径はφ220mmであり、z管の直径はφ90mmであった。x管におけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの移動距離は14mであった。プロピレンとアンモニアとの混合ガスは、プロピレンおよびアンモニア分配器の管を通ってそれぞれのz管のテールエンドノズルに到達した。分配器の入口におけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度は80℃に制御した。関連するモデルデータおよび入手可能な実験データによれば、プロピレンとアンモニアとの混合ガスが最も長いz管上のテールエンドノズルに移動したとき、すなわち、プロピレンとアンモニアとの混合ガスがx管、y管およびz管においてそれぞれ14m、2.7mおよび2.2mの移動距離を移動したときに、本形態のプロピレンおよびアンモニア分配器中のプロピレンとアンモニアとの混合ガスは最高温度に達した。プロピレンとアンモニアとの混合ガスがx管、y管、z管内を移動したときの単位長さ当たりの平均温度上昇率はそれぞれ、5.8℃/m、13.4℃/m、4.6℃/mであった。したがって、前記テールエンドノズルにおけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度は298℃であった。
【0096】
〔実施例10〕
流動床反応器は直径12mであり、装置は全負荷で運転した。供給ガスの比率、反応温度、反応圧力は実施例1と同様とした。プロピレンおよびアンモニア分配器は、
図4Aおよび
図4Cの組み合わせの形態を有し、炭素鋼製の分配器だった。x管の直径はφ550mmであり、y管の直径はφ250mmであり、z管の直径はφ100mmであった。x管におけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの移動距離は15mであった。プロピレンとアンモニアとの混合ガスは、プロピレンおよびアンモニア分配器の管を通ってそれぞれのz管のテールエンドノズルに到達した。分配器の入口におけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度は80℃に制御した。関連するモデルデータおよび入手可能な実験データによれば、プロピレンとアンモニアとの混合ガスが最も長いz管上のテールエンドノズルに移動したとき、すなわち、プロピレンとアンモニアとの混合ガスがx管、y管およびz管においてそれぞれ15m、4.4mおよび3.6mの移動距離を移動したときに、本形態のプロピレンおよびアンモニア分配器中のプロピレンとアンモニアとの混合ガスは最高温度に達した。プロピレンとアンモニアとの混合ガスがx管、y管、z管内を移動したときの単位長さ当たりの平均温度上昇率はそれぞれ、3.3℃/m、11℃/m、43℃/mであった。したがって、前記テールエンドノズルにおけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度は333℃であった。
【0097】
〔実施例11〕
流動床反応器は直径12mであり、装置は全負荷で運転した。供給ガスの比率、反応温度、反応圧力は実施例1と同様とした。プロピレンおよびアンモニア分配器は、
図4Aおよび
図4Cの組み合わせの形態を有し、炭素鋼製の分配器だった。x管の直径はφ550mmであり、y管の直径はφ250mmであり、z管の直径はφ100mmであった。x管におけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの移動距離は15mであった。プロピレンとアンモニアとの混合ガスは、プロピレンおよびアンモニア分配器の管を通ってそれぞれのz管のテールエンドノズルに到達した。分配器の入口におけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度は40℃に制御した。関連するモデルデータおよび入手可能な実験データによれば、プロピレンとアンモニアとの混合ガスが最も長いz管上のテールエンドノズルに移動したとき、すなわち、プロピレンとアンモニアとの混合ガスがx管、y管およびz管においてそれぞれ15m、4.4mおよび3.6mの移動距離を移動したときに、本形態のプロピレンおよびアンモニア分配器中のプロピレンとアンモニアとの混合ガスは最高温度に達した。プロピレンとアンモニアとの混合ガスがx管、y管、z管内を移動したときの単位長さ当たりの平均温度上昇率はそれぞれ、3.3℃/m、11.2℃/m、46℃/mであった。したがって、前記テールエンドノズルにおけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度は304℃であった。
【0098】
〔比較例1〕
流動床反応器は直径10mであり、装置は全負荷で運転した。供給ガスの比率、反応温度、反応圧力は実施例1と同様とした。プロピレンおよびアンモニア分配器は、
図4Aおよび
図4Bの組み合わせの形態を有し、炭素鋼製の分配器だった。x管の直径はφ500mmであり、y管の直径はφ250mmであり、z管の直径はφ90mmであった。x管におけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの移動距離は13mであった。プロピレンとアンモニアとの混合ガスは、プロピレンおよびアンモニア分配器の管を通ってそれぞれのz管のテールエンドノズルに到達した。関連するモデルデータおよび入手可能な実験データによれば、プロピレンとアンモニアとの混合ガスが最も長いz管上のテールエンドノズルに移動したとき、すなわち、プロピレンとアンモニアとの混合ガスがx管、y管およびz管においてそれぞれ13m、0.3mおよび4.8mの移動距離を移動したときに、本形態のプロピレンおよびアンモニア分配器中のプロピレンとアンモニアとの混合ガスは最高温度に達した。分配器入口におけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度T
0は7℃に制御した。プロピレンとアンモニアとの混合ガスがx管、y管、z管内を移動したときの単位長さ当たりの平均温度上昇率はそれぞれ、4.1℃/m、13.5℃/m、58℃/mであった。したがって、前記テールエンドノズルにおけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度は343℃であった。さらに、供給物の凝縮物がプロピレンおよびアンモニア分配器の入口に生成されたことが分かった。
【0099】
〔比較例2〕
流動床反応器は直径12mであり、装置は全負荷で運転した。供給ガスの比率、反応温度、反応圧力は実施例1と同様とした。プロピレンおよびアンモニア分配器は、
図4Aおよび
図4Cの組み合わせの形態を有し、炭素鋼製の分配器だった。x管の直径はφ650mmであり、y管の直径はφ400mmであり、z管の直径はφ130mmであった。x管におけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの移動距離は14.5mであった。プロピレンとアンモニアとの混合ガスは、プロピレンおよびアンモニア分配器の管を通ってそれぞれのz管のテールエンドノズルに到達した。分配器の入口におけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度は130℃に制御した。関連するモデルデータおよび入手可能な実験データによれば、プロピレンとアンモニアとの混合ガスが最も長いz管上のテールエンドノズルに移動したとき、すなわち、プロピレンとアンモニアとの混合ガスがx管、y管およびz管においてそれぞれ14.5m、4.1mおよび4.3mの移動距離を移動したときに、本形態のプロピレンおよびアンモニア分配器中のプロピレンとアンモニアとの混合ガスは最高温度に達した。プロピレンとアンモニアとの混合ガスがx管、y管、z管内を移動したときの単位長さ当たりの平均温度上昇率はそれぞれ、3.0℃/m、8.5℃/m、35℃/mであった。したがって、前記テールエンドノズルにおけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度は359℃であった。
【0100】
〔比較例3〕
流動床反応器の直径は5.0mであり、装置を全負荷で運転した。供給ガスの比率、反応温度、反応圧力は実施例1と同様とした。プロピレンおよびアンモニア分配器は、
図7に示すような形態を有し、炭素鋼製であり、z管の直径はφ80mmであった。プロピレンとアンモニアとの混合ガスは、プロピレンおよびアンモニア分配器を通ってそれぞれのz管のテールエンドノズルに到達し、プロピレンとアンモニアとの混合ガスは対応するz管において5.9mの移動距離を移動したときに、最も遠いテールエンドノズルに到達した。関連するモデルデータおよび入手可能な実験データによれば、プロピレンとアンモニアとの混合ガスがz管内を移動したときの単位長さ当たりの平均温度上昇率は52℃/mであり、分配器の入口におけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度は130℃に制御した。最も遠いテールエンドノズルにおけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度は352℃であった。
【0101】
本開示の供給ガス供給システムを使用した実施例1~11では、供給物分配器の任意の位置におけるプロピレンとアンモニアとの混合ガスの温度Tが350℃よりも低かった。すなわち、アンモニアが活性窒素原子に分解する温度よりも低かった。これに対し、比較例1では供給システムの一定のパラメータが本出願の範囲外になると、供給ガス凝縮物がプロピレンおよびアンモニア分配器の入口で生成した。このことにより、供給ガスの供給量が不正確になり易くなる。また、比較例2および3において、プロピレンおよびアンモニア分配器の脆性破壊が生じ易く、分配器の交換頻度が高くなることが分かった。
【0102】
本開示の技術的解決策を実施形態に従って詳細に説明してきたが、本出願の保護の範囲はそれに限定されない。
【0103】
本発明を好ましい実施形態を参照して説明してきたが、本発明に対して様々な改変を行ってもよい。また、本明細書の構成要素は本発明の範囲から逸脱することなく、均等物に置き換えてもよい。特に、実施形態で示した技術的特徴は構造上の矛盾がない限り、任意の方法で組み合わせることができる。本発明は、本明細書に開示される特定の実施形態に限定されず、特許請求の範囲内にある全ての技術的解決策を含む。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【
図1】従来技術のプロピレンアンモ酸化流動床反応器の概略図である。
【
図2】本開示のプロピレンおよびアンモニア分配器の一実施形態の構造を示す概略図である。
【
図3】本開示のプロピレンアンモ酸化流動床反応器の概略図である。
【
図4A】本開示のプロピレンおよびアンモニア分配器の一実施形態の側面図である。
【
図4C】本開示の他の実施形態のプロピレンおよびアンモニア供給物分配器の上面図である。
【
図4D】本開示の他の実施形態のプロピレンおよびアンモニア供給物分配器の上面図である。
【
図6】本開示の供給システムの初期温度T
0制御システムの概略図である。
【
図7】本開示のプロピレンおよびアンモニア分配器の一実施形態の構造を示す概略図である。