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特許7134235三次元造形装置、制御装置、および造形物の製造方法
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  • 特許-三次元造形装置、制御装置、および造形物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】三次元造形装置、制御装置、および造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20220902BHJP
   B29C 64/245 20170101ALI20220902BHJP
   B29C 64/129 20170101ALI20220902BHJP
   B29C 64/40 20170101ALI20220902BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220902BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220902BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20220902BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/245
B29C64/129
B29C64/40
B33Y30/00
B33Y10/00
B33Y50/02
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020528738
(86)(22)【出願日】2019-06-05
(86)【国際出願番号】 JP2019022281
(87)【国際公開番号】W WO2020008790
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2020-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2018128070
(32)【優先日】2018-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】塩出 浩久
(72)【発明者】
【氏名】山中 洋
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-034938(JP,A)
【文献】特開2013-067036(JP,A)
【文献】特開2018-086736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化性組成物を収容し、少なくとも一部に光透過部を有する容器と、
前記光透過部の面と対向し、前記光透過部に対する距離が可変に構成されているキャリアと、
前記光透過部を介して前記光硬化性組成物に光を照射する照射部と、
前記光硬化性組成物を硬化させてなる造形物を形成するよう、前記キャリアの位置および前記照射部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記造形物、および前記キャリアと前記造形物とをつなぐ支持部を形成するように、前記キャリアと前記光透過部との距離を連続的または断続的に変化させながら前記光硬化性組成物に前記照射部からの光を照射させ、
前記支持部の前記キャリアとの接合部を造形する際の造形条件を、前記造形物のうち前記光透過部の前記面に平行な断面の面積が最も大きい第1領域を造形する際の前記造形条件よりも、前記光硬化性組成物が硬化しやすい条件にするよう、前記造形条件を制御し、
前記接合部は、前記支持部のうち前記キャリアから1mmまでの領域である三次元造形装置。
【請求項2】
光硬化性組成物を収容し、少なくとも一部に光透過部を有する容器と、
前記光透過部の面と対向し、前記光透過部に対する距離が可変に構成されているキャリアと、
前記光透過部を介して前記光硬化性組成物に光を照射する照射部と、
前記光硬化性組成物を硬化させてなる造形物を形成するよう、前記キャリアの位置および前記照射部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記造形物、および前記キャリアと前記造形物とをつなぐ支持部を形成するように、前記キャリアと前記光透過部との距離を連続的または断続的に変化させながら前記光硬化性組成物に前記照射部からの光を照射させ、
前記支持部の前記キャリアとの接合部全体を造形する際の造形条件を、前記造形物のうち前記光透過部の前記面に平行な断面の面積が最も大きい第1領域を造形する際の前記造形条件よりも、前記光硬化性組成物が硬化しやすい条件にするよう、前記造形条件を制御する三次元造形装置。
【請求項3】
請求項に記載の三次元造形装置において、
前記接合部は、前記支持部のうち前記キャリアから1mmまでの領域である三次元造形装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の三次元造形装置において、
前記制御部は、前記接合部を造形する際の前記キャリアの温度を、前記第1領域を造形する際の前記キャリアの温度よりも高くする三次元造形装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の三次元造形装置において、
前記制御部は、前記接合部を造形する際の前記光硬化性組成物の温度を、前記第1領域を造形する際の前記光硬化性組成物の温度よりも高くする三次元造形装置。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載の三次元造形装置において、
前記キャリアの前記光透過部に対向する面の前記接合部を形成する領域の光反射率は10%以下である三次元造形装置。
【請求項7】
請求項に記載の三次元造形装置において、
前記キャリアは前記光透過部に対向する面の少なくとも一部に表面層を備える三次元造形装置。
【請求項8】
請求項に記載の三次元造形装置において、
前記表面層は酸化層である三次元造形装置。
【請求項9】
請求項またはに記載の三次元造形装置において、
前記造形物は歯科用途物および医療用途物の少なくとも一方である三次元造形装置。
【請求項10】
請求項1からのいずれか一項に記載の三次元造形装置において、
前記制御部は、前記接合部を造形する際の前記照射部からの光照射エネルギー量を、前記第1領域を造形する際の前記光照射エネルギー量よりも大きくする三次元造形装置。
【請求項11】
請求項1に記載の三次元造形装置において、
前記制御部は、前記接合部を造形する際の前記照射部からの光照射時間を、前記第1領域を造形する際の前記光照射時間よりも長くする三次元造形装置。
【請求項12】
請求項1または1に記載の三次元造形装置において、
前記制御部は、前記接合部を造形する際の前記照射部からの光照射強度を、前記第1領域を造形する際の前記光照射強度よりも高くする三次元造形装置。
【請求項13】
三次元造形装置の制御装置であって、
前記三次元造形装置は、
光硬化性組成物を収容し、少なくとも一部に光透過部を有する容器と、
前記光透過部の面と対向し、前記光透過部に対する距離が可変に構成されているキャリアと、
前記光透過部を介して前記光硬化性組成物に光を照射する照射部とを備え、
当該制御装置は、前記光硬化性組成物を硬化させてなる造形物を形成するよう、前記キャリアの位置および前記照射部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記造形物、および前記キャリアと前記造形物とをつなぐ支持部を形成するように、前記キャリアと前記光透過部との距離を連続的または断続的に変化させながら前記光硬化性組成物に前記照射部からの光を照射させ、
前記支持部の前記キャリアとの接合部を造形する際の造形条件を、前記造形物のうち前記光透過部の前記面に平行な断面の面積が最も大きい第1領域を造形する際の前記造形条件よりも、前記光硬化性組成物が硬化しやすい条件にするよう、前記造形条件を制御し、
前記接合部は、前記支持部のうち前記キャリアから1mmまでの領域である制御装置。
【請求項14】
三次元造形装置の制御装置であって、
前記三次元造形装置は、
光硬化性組成物を収容し、少なくとも一部に光透過部を有する容器と、
前記光透過部の面と対向し、前記光透過部に対する距離が可変に構成されているキャリアと、
前記光透過部を介して前記光硬化性組成物に光を照射する照射部とを備え、
当該制御装置は、前記光硬化性組成物を硬化させてなる造形物を形成するよう、前記キャリアの位置および前記照射部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記造形物、および前記キャリアと前記造形物とをつなぐ支持部を形成するように、前記キャリアと前記光透過部との距離を連続的または断続的に変化させながら前記光硬化性組成物に前記照射部からの光を照射させ、
前記支持部の前記キャリアとの接合部全体を造形する際の造形条件を、前記造形物のうち前記光透過部の前記面に平行な断面の面積が最も大きい第1領域を造形する際の前記造形条件よりも、前記光硬化性組成物が硬化しやすい条件にするよう、前記造形条件を制御する制御装置。
【請求項15】
三次元造形装置を用いた造形物の製造方法であって、
前記三次元造形装置は、
光硬化性組成物を収容し、少なくとも一部に光透過部を有する容器と、
前記光透過部の面と対向し、前記光透過部に対する距離が可変に構成されているキャリアと、
前記光透過部を介して前記光硬化性組成物に光を照射する照射部と、
前記光硬化性組成物を硬化させてなる前記造形物を形成するよう、前記キャリアの位置および前記照射部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記造形物、および前記キャリアと前記造形物とをつなぐ支持部を形成するように、前記キャリアと前記光透過部との距離を連続的または断続的に変化させながら前記光硬化性組成物に前記照射部からの光を照射させ、
前記支持部の前記キャリアとの接合部を造形する際の造形条件を、前記造形物のうち前記光透過部の前記面に平行な断面の面積が最も大きい第1領域を造形する際の前記造形条件よりも、前記光硬化性組成物が硬化しやすい条件にするよう、前記造形条件を制御し、
前記接合部は、前記支持部のうち前記キャリアから1mmまでの領域である造形物の製造方法。
【請求項16】
三次元造形装置を用いた造形物の製造方法であって、
前記三次元造形装置は、
光硬化性組成物を収容し、少なくとも一部に光透過部を有する容器と、
前記光透過部の面と対向し、前記光透過部に対する距離が可変に構成されているキャリアと、
前記光透過部を介して前記光硬化性組成物に光を照射する照射部と、
前記光硬化性組成物を硬化させてなる前記造形物を形成するよう、前記キャリアの位置および前記照射部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記造形物、および前記キャリアと前記造形物とをつなぐ支持部を形成するように、前記キャリアと前記光透過部との距離を連続的または断続的に変化させながら前記光硬化性組成物に前記照射部からの光を照射させ、
前記支持部の前記キャリアとの接合部全体を造形する際の造形条件を、前記造形物のうち前記光透過部の前記面に平行な断面の面積が最も大きい第1領域を造形する際の前記造形条件よりも、前記光硬化性組成物が硬化しやすい条件にするよう、前記造形条件を制御する造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は三次元造形装置、制御装置、および造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
造形物の製造装置の一つに、造形物の三次元データに基づいて、断面ごとに組成物を硬化させて造形する3Dプリンタがある。
【0003】
特許文献1には、キャリアとビルドプレートの間の重合性液体に、ビルドプレートを介して光を照射し、キャリア上に3次元物体を形成することが記載されている。
【0004】
特許文献2には、光硬化反応に伴う硬化樹脂層の温度変化を抑制して高精度かつ高速な光造形を行うために、硬化性樹脂層に送風することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2016-509963号公報
【文献】特開2005-131938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような造形装置では、所望の造形物を直接キャリアに形成するのではなく、接続用の構造物を介在させる場合がある。この場合、特許文献2のように造形物そのものの造形条件を制御することが重要である一方、接続用の構造物の状態が造形物の精度に影響することがあった。
【0007】
本発明は、三次元造形装置によって形状精度の高い造形物を製造する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第一の側面によれば、
光硬化性組成物を収容し、少なくとも一部に光透過部を有する容器と、
前記光透過部の面と対向し、前記光透過部に対する距離が可変に構成されているキャリアと、
前記光透過部を介して前記光硬化性組成物に光を照射する照射部と、
前記光硬化性組成物を硬化させてなる造形物を形成するよう、前記キャリアの位置および前記照射部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記造形物、および前記キャリアと前記造形物とをつなぐ支持部を形成するように、前記キャリアと前記光透過部との距離を連続的または断続的に変化させながら前記光硬化性組成物に前記照射部からの光を照射させ、
前記支持部の前記キャリアとの接合部を造形する際の造形条件を、前記造形物のうち前記光透過部の前記面に平行な断面の面積が最も大きい第1領域を造形する際の前記造形条件よりも、前記光硬化性組成物が硬化しやすい条件にするよう、前記造形条件を制御し、
前記接合部は、前記支持部のうち前記キャリアから1mmまでの領域である三次元造形装置が提供される。
本開示の第二の側面によれば、
光硬化性組成物を収容し、少なくとも一部に光透過部を有する容器と、
前記光透過部の面と対向し、前記光透過部に対する距離が可変に構成されているキャリアと、
前記光透過部を介して前記光硬化性組成物に光を照射する照射部と、
前記光硬化性組成物を硬化させてなる造形物を形成するよう、前記キャリアの位置および前記照射部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記造形物、および前記キャリアと前記造形物とをつなぐ支持部を形成するように、前記キャリアと前記光透過部との距離を連続的または断続的に変化させながら前記光硬化性組成物に前記照射部からの光を照射させ、
前記支持部の前記キャリアとの接合部を造形する際の造形条件を、前記造形物のうち前記光透過部の前記面に平行な断面の面積が最も大きい第1領域を造形する際の前記造形条件よりも、前記光硬化性組成物が硬化しやすい条件にするよう、前記造形条件を制御し、
前記接合部を造形する際の前記キャリアの温度を、前記第1領域を造形する際の前記キャリアの温度よりも高くする三次元造形装置が提供される。
本開示の第三の側面によれば、
光硬化性組成物を収容し、少なくとも一部に光透過部を有する容器と、
前記光透過部の面と対向し、前記光透過部に対する距離が可変に構成されているキャリアと、
前記光透過部を介して前記光硬化性組成物に光を照射する照射部と、
前記光硬化性組成物を硬化させてなる造形物を形成するよう、前記キャリアの位置および前記照射部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記造形物、および前記キャリアと前記造形物とをつなぐ支持部を形成するように、前記キャリアと前記光透過部との距離を連続的または断続的に変化させながら前記光硬化性組成物に前記照射部からの光を照射させ、
前記支持部の前記キャリアとの接合部を造形する際の造形条件を、前記造形物のうち前記光透過部の前記面に平行な断面の面積が最も大きい第1領域を造形する際の前記造形条件よりも、前記光硬化性組成物が硬化しやすい条件にするよう、前記造形条件を制御し、
前記接合部を造形する際の前記光硬化性組成物の温度を、前記第1領域を造形する際の前記光硬化性組成物の温度よりも高くする三次元造形装置が提供される。
本開示の第四の側面によれば、
光硬化性組成物を収容し、少なくとも一部に光透過部を有する容器と、
前記光透過部の面と対向し、前記光透過部に対する距離が可変に構成されているキャリアと、
前記光透過部を介して前記光硬化性組成物に光を照射する照射部と、
前記光硬化性組成物を硬化させてなる造形物を形成するよう、前記キャリアの位置および前記照射部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記造形物、および前記キャリアと前記造形物とをつなぐ支持部を形成するように、前記キャリアと前記光透過部との距離を連続的または断続的に変化させながら前記光硬化性組成物に前記照射部からの光を照射させ、
前記支持部の前記キャリアとの接合部全体を造形する際の造形条件を、前記造形物のうち前記光透過部の前記面に平行な断面の面積が最も大きい第1領域を造形する際の前記造形条件よりも、前記光硬化性組成物が硬化しやすい条件にするよう、前記造形条件を制御する三次元造形装置が提供される。
【0009】
本開示の第の側面によれば、
三次元造形装置の制御装置であって、
前記三次元造形装置は、
光硬化性組成物を収容し、少なくとも一部に光透過部を有する容器と、
前記光透過部の面と対向し、前記光透過部に対する距離が可変に構成されているキャリアと、
前記光透過部を介して前記光硬化性組成物に光を照射する照射部とを備え、
当該制御装置は、前記光硬化性組成物を硬化させてなる造形物を形成するよう、前記キャリアの位置および前記照射部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記造形物、および前記キャリアと前記造形物とをつなぐ支持部を形成するように、前記キャリアと前記光透過部との距離を連続的または断続的に変化させながら前記光硬化性組成物に前記照射部からの光を照射させ、
前記支持部の前記キャリアとの接合部を造形する際の造形条件を、前記造形物のうち前記光透過部の前記面に平行な断面の面積が最も大きい第1領域を造形する際の前記造形条件よりも、前記光硬化性組成物が硬化しやすい条件にするよう、前記造形条件を制御し、
前記接合部は、前記支持部のうち前記キャリアから1mmまでの領域である制御装置が提供される。
本開示の第六の側面によれば、
三次元造形装置の制御装置であって、
前記三次元造形装置は、
光硬化性組成物を収容し、少なくとも一部に光透過部を有する容器と、
前記光透過部の面と対向し、前記光透過部に対する距離が可変に構成されているキャリアと、
前記光透過部を介して前記光硬化性組成物に光を照射する照射部とを備え、
当該制御装置は、前記光硬化性組成物を硬化させてなる造形物を形成するよう、前記キャリアの位置および前記照射部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記造形物、および前記キャリアと前記造形物とをつなぐ支持部を形成するように、前記キャリアと前記光透過部との距離を連続的または断続的に変化させながら前記光硬化性組成物に前記照射部からの光を照射させ、
前記支持部の前記キャリアとの接合部を造形する際の造形条件を、前記造形物のうち前記光透過部の前記面に平行な断面の面積が最も大きい第1領域を造形する際の前記造形条件よりも、前記光硬化性組成物が硬化しやすい条件にするよう、前記造形条件を制御し、
前記接合部を造形する際の前記キャリアの温度を、前記第1領域を造形する際の前記キャリアの温度よりも高くする制御装置が提供される。
本開示の第七の側面によれば、
三次元造形装置の制御装置であって、
前記三次元造形装置は、
光硬化性組成物を収容し、少なくとも一部に光透過部を有する容器と、
前記光透過部の面と対向し、前記光透過部に対する距離が可変に構成されているキャリアと、
前記光透過部を介して前記光硬化性組成物に光を照射する照射部とを備え、
当該制御装置は、前記光硬化性組成物を硬化させてなる造形物を形成するよう、前記キャリアの位置および前記照射部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記造形物、および前記キャリアと前記造形物とをつなぐ支持部を形成するように、前記キャリアと前記光透過部との距離を連続的または断続的に変化させながら前記光硬化性組成物に前記照射部からの光を照射させ、
前記支持部の前記キャリアとの接合部を造形する際の造形条件を、前記造形物のうち前記光透過部の前記面に平行な断面の面積が最も大きい第1領域を造形する際の前記造形条件よりも、前記光硬化性組成物が硬化しやすい条件にするよう、前記造形条件を制御し、
前記接合部を造形する際の前記光硬化性組成物の温度を、前記第1領域を造形する際の前記光硬化性組成物の温度よりも高くする制御装置が提供される。
本開示の第八の側面によれば、
三次元造形装置の制御装置であって、
前記三次元造形装置は、
光硬化性組成物を収容し、少なくとも一部に光透過部を有する容器と、
前記光透過部の面と対向し、前記光透過部に対する距離が可変に構成されているキャリアと、
前記光透過部を介して前記光硬化性組成物に光を照射する照射部とを備え、
当該制御装置は、前記光硬化性組成物を硬化させてなる造形物を形成するよう、前記キャリアの位置および前記照射部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記造形物、および前記キャリアと前記造形物とをつなぐ支持部を形成するように、前記キャリアと前記光透過部との距離を連続的または断続的に変化させながら前記光硬化性組成物に前記照射部からの光を照射させ、
前記支持部の前記キャリアとの接合部全体を造形する際の造形条件を、前記造形物のうち前記光透過部の前記面に平行な断面の面積が最も大きい第1領域を造形する際の前記造形条件よりも、前記光硬化性組成物が硬化しやすい条件にするよう、前記造形条件を制御する制御装置が提供される。
【0010】
本開示の第の側面によれば、
三次元造形装置を用いた造形物の製造方法であって、
前記三次元造形装置は、
光硬化性組成物を収容し、少なくとも一部に光透過部を有する容器と、
前記光透過部の面と対向し、前記光透過部に対する距離が可変に構成されているキャリアと、
前記光透過部を介して前記光硬化性組成物に光を照射する照射部と、
前記光硬化性組成物を硬化させてなる前記造形物を形成するよう、前記キャリアの位置および前記照射部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記造形物、および前記キャリアと前記造形物とをつなぐ支持部を形成するように、前記キャリアと前記光透過部との距離を連続的または断続的に変化させながら前記光硬化性組成物に前記照射部からの光を照射させ、
前記支持部の前記キャリアとの接合部を造形する際の造形条件を、前記造形物のうち前記光透過部の前記面に平行な断面の面積が最も大きい第1領域を造形する際の前記造形条件よりも、前記光硬化性組成物が硬化しやすい条件にするよう、前記造形条件を制御し、
前記接合部は、前記支持部のうち前記キャリアから1mmまでの領域である造形物の製造方法が提供される。
本開示の第十の側面によれば、
三次元造形装置を用いた造形物の製造方法であって、
前記三次元造形装置は、
光硬化性組成物を収容し、少なくとも一部に光透過部を有する容器と、
前記光透過部の面と対向し、前記光透過部に対する距離が可変に構成されているキャリアと、
前記光透過部を介して前記光硬化性組成物に光を照射する照射部と、
前記光硬化性組成物を硬化させてなる前記造形物を形成するよう、前記キャリアの位置および前記照射部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記造形物、および前記キャリアと前記造形物とをつなぐ支持部を形成するように、前記キャリアと前記光透過部との距離を連続的または断続的に変化させながら前記光硬化性組成物に前記照射部からの光を照射させ、
前記支持部の前記キャリアとの接合部を造形する際の造形条件を、前記造形物のうち前記光透過部の前記面に平行な断面の面積が最も大きい第1領域を造形する際の前記造形条件よりも、前記光硬化性組成物が硬化しやすい条件にするよう、前記造形条件を制御し、
前記接合部を造形する際の前記キャリアの温度を、前記第1領域を造形する際の前記キャリアの温度よりも高くする造形物の製造方法が提供される。
本開示の第十一の側面によれば、
三次元造形装置を用いた造形物の製造方法であって、
前記三次元造形装置は、
光硬化性組成物を収容し、少なくとも一部に光透過部を有する容器と、
前記光透過部の面と対向し、前記光透過部に対する距離が可変に構成されているキャリアと、
前記光透過部を介して前記光硬化性組成物に光を照射する照射部と、
前記光硬化性組成物を硬化させてなる前記造形物を形成するよう、前記キャリアの位置および前記照射部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記造形物、および前記キャリアと前記造形物とをつなぐ支持部を形成するように、前記キャリアと前記光透過部との距離を連続的または断続的に変化させながら前記光硬化性組成物に前記照射部からの光を照射させ、
前記支持部の前記キャリアとの接合部を造形する際の造形条件を、前記造形物のうち前記光透過部の前記面に平行な断面の面積が最も大きい第1領域を造形する際の前記造形条件よりも、前記光硬化性組成物が硬化しやすい条件にするよう、前記造形条件を制御し、
前記接合部を造形する際の前記光硬化性組成物の温度を、前記第1領域を造形する際の前記光硬化性組成物の温度よりも高くする造形物の製造方法が提供される。
本開示の第十二の側面によれば、
三次元造形装置を用いた造形物の製造方法であって、
前記三次元造形装置は、
光硬化性組成物を収容し、少なくとも一部に光透過部を有する容器と、
前記光透過部の面と対向し、前記光透過部に対する距離が可変に構成されているキャリアと、
前記光透過部を介して前記光硬化性組成物に光を照射する照射部と、
前記光硬化性組成物を硬化させてなる前記造形物を形成するよう、前記キャリアの位置および前記照射部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記造形物、および前記キャリアと前記造形物とをつなぐ支持部を形成するように、前記キャリアと前記光透過部との距離を連続的または断続的に変化させながら前記光硬化性組成物に前記照射部からの光を照射させ、
前記支持部の前記キャリアとの接合部全体を造形する際の造形条件を、前記造形物のうち前記光透過部の前記面に平行な断面の面積が最も大きい第1領域を造形する際の前記造形条件よりも、前記光硬化性組成物が硬化しやすい条件にするよう、前記造形条件を制御する造形物の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、三次元造形装置によって形状精度の高い造形物を製造する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになるが、それらの具体的な実施の形態、および図面に限定されるものではない。
【0013】
図1】第1の実施形態に係る三次元造形装置の構成を例示する図である。
図2】造形物および支持部の構造を例示する図である。
図3】第2の実施形態に係る三次元造形装置および制御装置の構成を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0015】
なお、以下に示す説明において、特に説明する場合を除き、三次元造形装置10の制御部140および制御装置50の制御部500は、ハードウエア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。三次元造形装置10の制御部140および制御装置50の制御部500は、任意のコンピュータのCPU、メモリ、メモリにロードされた本図の構成要素を実現するプログラム、そのプログラムを格納するハードディスクなどの記憶メディア、ネットワーク接続用インタフェースを中心にハードウエアとソフトウエアの任意の組合せによって実現される。そして、その実現方法、装置には様々な変形例がある。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る三次元造形装置10の構成を例示する図である。本実施形態に係る三次元造形装置10は、容器110、キャリア120、照射部130、および制御部140を備える。容器110は、光硬化性組成物20を収容し、少なくとも一部に光透過部112を有する。キャリア120は、光透過部112の面113と対向し、光透過部112に対する距離が可変に構成されている。照射部130は、光透過部112を介して光硬化性組成物20に光を照射する。制御部140は、光硬化性組成物20を硬化させてなる造形物200を形成するよう、キャリア120の位置および照射部130を制御する。ここで、制御部140は、造形物200、およびキャリア120と造形物200とをつなぐ支持部210を形成するように、キャリア120と光透過部112との距離を連続的または断続的に変化させながら光硬化性組成物20に照射部130からの光を照射させる。また、制御部140は、支持部210のキャリア120との接合部211を造形する際の造形条件を、造形物200のうち光透過部112の面113に平行な断面の面積が最も大きい第1領域を造形する際の造形条件よりも、光硬化性組成物20が硬化しやすい条件にするよう、造形条件を制御する。以下に詳しく説明する。
【0017】
三次元造形装置10は、造形物200の形状を示す三次元データに基づき光硬化性組成物20を硬化させて、造形物200を形成する装置である。造形物200は特に限定されないが、歯科用途物および医療用途物の少なくとも一方であり得る。歯科用途物や医療用途物の造形では、個々の使用者にあわせて形状を精密に造形する必要がある。したがって、歯科用途物や医療用途物の造形には三次元造形装置10の使用が適する。
【0018】
光硬化性組成物20はたとえば流動性を有する樹脂組成物であり、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリレート系樹脂、エポキシ・アクリレートハイブリッド系樹脂、エポキシ・オキセタン・アクリレートハイブリッド系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、メタクリレート系樹脂、ウレタンメタクリレート系樹脂、およびこれらのモノマーからなる群から選択される一以上を含む。また、光硬化性組成物20は重合開始剤、フィラー、顔料、染料等を含んでも良い。
【0019】
三次元造形装置10の容器110は光硬化性組成物20を収容する。容器110の一部には、他の部分よりも光透過性が高い光透過部112が設けられている。光透過部112はたとえばガラスである。面113は、光透過部112の面の内、容器110の内側の面である。光透過部112では、容器110の外部から照射された光が高効率で容器110の内部まで透過する。その結果、面113近傍の光硬化性組成物20が硬化される。本図の例において、容器110はバット状である。そして、光透過部112は容器110の底部に設けられている。また、容器110の側面には光硬化性組成物20を導入するための導入孔115が設けられている。
【0020】
キャリア120は、造形の土台となる部材である。キャリア120の面122は、光透過部112の面113と平行に対向している。本実施形態に係る三次元造形装置10はキャリア120を少なくとも面113に垂直な方向に駆動する駆動部142をさらに備える。キャリア120が駆動されることで、面122と面113との距離が変化する。
【0021】
造形物200および支持部210の造形において、面113近傍で硬化された光硬化性組成物20はキャリア120の面122に積層される。そして、面122と面113との距離を広げながら光硬化性組成物20の硬化および積層を繰り返すことで、面122に立体的な構造が形成される。なお、本図において、造形物200は造形途中の構造を例示している。
【0022】
キャリア120はたとえば金属を含んで構成される。金属としてはアルミ、ステンレス等が挙げられる。また、キャリア120は表面層を備えていてもよい。表面層としてはたとえば上記した金属の酸化層、硬化性組成物を硬化させたハードコート層、塗料層、および樹脂層が挙げられる。樹脂層としてはポリエチレンテレフタラート(PET)やポリプロピレン(PP)等が挙げられる。樹脂層は、たとえばフィルムやシートを貼り付けることでキャリア120に形成できる。また、キャリア120の表面には粗面化処理が施されていても良い。そうすれば、アンカー効果によりキャリア120と支持部210との接合強度を高めることができる。粗面化処理としてはサンドブラストやヘアライン仕上げ等が挙げられる。
【0023】
特に、造形物200が歯科用途物および医療用途物の少なくとも一方である場合、キャリア120に起因する造形物200への異物によるコンタミネーションを抑制するため、光透過部112は表面層として酸化層、たとえば陽極酸化層を備えることが好ましい。
【0024】
照射部130は、たとえば光源および光学描画系を含んで構成される。光源は特に限定されないが、たとえば紫外線源、白熱灯、蛍光灯、燐光灯、レーザーダイオード、または発光ダイオードであり得る。光学描画系は、特に限定されないが、たとえばマスク、空間光変調器(spatial light modulator)、マイクロミラーデバイス、およびMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーアレイのうち少なくとも一つを含んで構成される。また、照射部130は光源および光学描画系の駆動装置を含み、制御部140による制御に基づき、光硬化性組成物20への光照射を行う。照射部130はレンズやシャッター等の光学部品をさらに含んでも良い。
【0025】
照射部130では、光源からの光が光学描画系を介して光透過部112に照射される。照射部130からの出力光がビーム光である場合、ビーム光で光照射領域の走査が行われ、走査された光照射領域の光硬化性組成物20が硬化される。また、照射部130からは光照射領域の全体または一部に対して同時に光が投影されても良い。
【0026】
制御部140は、照射部130、および駆動部142を制御する。三次元造形装置10はさらに記憶部150を備え、記憶部150には造形する構造の立体形状を示す情報があらかじめ保持されている。制御部140では記憶部150から、この立体形状を示す情報を読み出し、複数の光照射領域を示す情報を含む光照射情報を生成する。ここで、各光照射領域は、照射部130で光照射すべき領域であり、造形する構造の面113に平行な断面形状に対応する。そして、光照射情報には、複数の光照射領域を示す情報が、光照射すべき順を示す情報と共に含まれる。なお、光照射情報は制御部140で生成されるに限らず、予め外部で生成されて記憶部150に保持されていても良い。
【0027】
制御部140は、光照射情報に基づいて、順に光照射領域に光照射するように、照射部130を制御する。また、制御部140は、各光照射領域の光照射タイミングに応じて面122と面113との距離を変化させるよう、駆動部142を制御する。その結果、キャリア120と面113との間に造形物200および支持部210が形成される。
【0028】
なお、面122と面113との距離は連続的に変化しても良いし、断続的に変化しても良い。距離が断続的に変化する場合、制御部140は光照射領域の切り替えタイミングに合わせて距離を1層分広げる。こうして複数の層を形成することで、積層構造として支持部210および造形物200が得られる。1層分の距離の変化量は、たとえば30μm以上100μm以下である。一方、距離が連続的に変化する場合、制御部140は距離の変化速度と光硬化性組成物20の硬化速度に応じて光照射領域を切り替える。こうすることで、距離が断続的に変化する場合よりも滑らかな表面の造形物200が得られる。
【0029】
本実施形態に係る三次元造形装置10は、キャリア120の温度を調整する第1温調部144をさらに備える。第1温調部144はキャリア120に設けられたヒーターまたは冷却装置である。冷却装置はたとえば、送風、ペルチェ素子、または水冷による冷却を行う装置である。また、第1温調部144にはキャリア120の温度を検出する温度センサが含まれる。制御部140は第1温調部144を制御することによりキャリア120の温度を制御することができる。
【0030】
本実施形態に係る三次元造形装置10は、第2温調部146をさらに備える。第2温調部146は光硬化性組成物20の温度を変化させることが可能なヒーターまたは冷却装置である。冷却装置はたとえば、送風、ペルチェ素子、または水冷による冷却を行う装置である。また、第2温調部146には光硬化性組成物20の温度を検出する温度センサが含まれる。制御部140は第2温調部146を制御することにより、光硬化性組成物20の温度を制御することができる。
【0031】
ただし、三次元造形装置10は第1温調部144および第2温調部146の少なくとも一方を備えていなくても良い。
【0032】
たとえば制御部140が、造形条件として、照射部130の光照射条件、制御部140の温度および光硬化性組成物20の温度の少なくともいずれかを制御することにより、光硬化性組成物20の硬化しやすさを調整することができる。造形条件の制御については詳しく後述する。
【0033】
図2は、造形物200および支持部210の構造を例示する図である。本図では、全体を造形した造形物200および支持部210と、キャリア120と、面113との関係が示されている。キャリア120と面113との間には、造形物200に加えてキャリア120と造形物200とを繋ぐ支持部210が形成される。支持部210は、全ての光照射領域への光照射が終了した後、造形物200から除去される部分である。支持部210の形状は特に限定されず、たとえば柱状、または壁状である。支持部210の数は特に限定されず、一つでも良いし、二つ以上でも良い。また、造形物200は一部において直接キャリア120に接続されていても良い。
【0034】
支持部210は除去される部分ではあるものの、造形物200の形状精度に対して影響が大きい部分である。たとえば、支持部210の硬化度が充分でない場合、造形した構造体を充分に支えることができず、構造体に傾きやねじれ、反りなどが生じるおそれがある。光照射領域は、同じ方向を向いた平行な断面を前提として決められているため、傾き等が生じている状態では、造形物200の形状精度が損なわれる。
【0035】
上記した通り、三次元造形装置10による造形では、制御部140が造形条件を制御することにより、光硬化性組成物20の硬化しやすさを調整できる。たとえば、反応が加速しやすい領域については光硬化性組成物20が比較的硬化しにくい造形条件とすることがある。一方、造形物200の形状精度を保つため、支持部210は硬化しやすい造形条件で造形する必要がある。中でも特に、支持部210とキャリア120との接合部211はキャリア120との接合強度を確保するためにも、充分な剛性を確保するように、硬化しやすい造形条件で造形する必要がある。
【0036】
接合部211は、たとえば支持部210のうちキャリア120から1mmまでの領域であり、好ましくは10μmまでの領域である。ただし、支持部210のうち接合部211よりも造形物200側の部分も、接合部211と同様に硬化しやすい造形条件で造形しても良い。
【0037】
ここで、キャリア120の面122の光反射率が高い場合には、照射部130から直接照射される光に加え、面122からの反射光によって接合部211における光硬化性組成物20の硬化が促進される。したがって、接合部211と他の領域とを比べると、制御部140が設定する造形条件が互いに同じであっても、接合部211において自然と硬化度が高まる。
【0038】
それに対し、上記したように、キャリア120が光透過部112に対向する面122の少なくとも一部に表面層を備える場合、面122からの反射光が弱くなる。また、表面層の有無に限らず、キャリア120の光透過部112に対向する面122の光反射率、特に面122のうち接合部211を形成する領域の光反射率が低い場合、たとえば10%以下である場合、硬化促進効果が得にくい。したがって、造形条件を特に適切に制御する必要がある。
【0039】
詳しくは、制御部140は、接合部211を造形する際の造形条件を、第1領域201を造形する際の造形条件よりも、光硬化性組成物20が硬化しやすい条件にするよう、造形条件を制御する。第1領域201とは、造形物200のうち光透過部112の面113に平行な断面の面積が最も大きい領域である。すなわち、第1領域201は、造形物200を構成するための複数の光照射領域のうち、最も面積が大きい光照射領域により形成される領域である。
【0040】
このような第1領域201では、硬化される光硬化性組成物20の量が多いことから、反応熱により温度上昇が生じる。そのため、他の領域と同じ造形条件で造形を行うと、光硬化性組成物20の硬化物が面113に貼り付きやすくなる。また、温度上昇が造形物200の反りや変形の原因ともなる。そこで、第1領域201を造形する際の造形条件は、比較的光硬化性組成物20が硬化しにくい条件とする場合がある。
【0041】
接合部211を造形する際の造形条件を、少なくとも第1領域201を造形する際の造形条件よりも、光硬化性組成物20が硬化しやすい条件にすることで、接合部211の剛性の低下を避けることができる。なお、接合部211はさらに、造形物200のいずれの領域よりも光硬化性組成物20が硬化しやすい条件で造形されても良い。そうすることで、接合部211の剛性をさらに高めることができる。
【0042】
造形条件の制御について以下に詳しく説明する。たとえば造形条件として照射部130からの光照射エネルギー量が大きい程、光硬化性組成物20が硬化しやすくなる。したがって、制御部140は、接合部211を造形する際の照射部130からの光照射エネルギー量を、第1領域201を造形する際の光照射エネルギー量よりも大きくすることにより、接合部211を硬化しやすくすることができる。
【0043】
ここで、光照射エネルギー量は、光照射時間と光照射強度に依存して決まる。したがって、制御部140は、第1の例として、接合部211を造形する際の照射部130からの光照射時間を、第1領域201を造形する際の光照射時間よりも長くすることにより、接合部211を硬化しやすくすることができる。制御部140が光照射時間を長くする方法としては、照射部130からの光の走査速度を遅くする、または照射部130からの光の投影時間を長くする等がある。そうすることにより、第1領域201を造形するための光照射領域へ光照射するのにかける時間を長くすることができる。なお、光照射時間を長くするのに伴い、制御部140はキャリア120の移動タイミングを遅らせる、または移動速度を遅くする。
【0044】
また、制御部140は、第2の例として、接合部211を造形する際の照射部130からの光照射強度を、第1領域201を造形する際の光照射強度よりも高くすることにより、接合部211を硬化しやすくすることができる。制御部140が光照射強度を高くする方法の例としては、照射部130の光源の出力強度を高めることが挙げられる。
【0045】
なお、制御部140は、光照射エネルギー量を大きくするために、光照射時間を長くすることと、光照射強度を高くすることの両方を行っても良いし、いずれか一方のみを行っても良い。
【0046】
三次元造形装置10が第1温調部144を備える場合、制御部140は、第3の例として、接合部211を造形する際のキャリア120の温度を、第1領域201を造形する際のキャリア120の温度よりも高くすることにより、接合部211を硬化しやすくすることができる。
【0047】
また、三次元造形装置10が第2温調部146を備える場合、制御部140は、第4の例として、接合部211を造形する際の光硬化性組成物20の温度を、第1領域201を造形する際の光硬化性組成物20の温度よりも高くすることにより、接合部211を硬化しやすくすることができる。
【0048】
なお、制御部140は、接合部211を硬化しやすくするための造形条件の制御として、上記の第1の例から第4の例のうちいずれか一つのみを行っても良いし、二つ以上を組み合わせて行ってもよい。
【0049】
また、制御部140は、第1領域201および接合部211以外の領域の造形時にも、必要に応じて造形条件を変化させてよい。たとえば、制御部140は、光照射領域の大きさに応じて造形条件を制御することができる。具体的にはたとえば、制御部140は、光照射領域が大きい程、造形条件を光硬化性組成物20がより硬化しにくい条件とする。また、制御部140は、光照射領域の面積が予め定められた基準面積よりも大きい場合に造形条件を光硬化性組成物20が硬化しにくい条件としてもよい。基準面積を示す情報は予め記憶部150に保持されており、制御部140はそれを読み出て制御に用いることができる。
【0050】
以下に、本実施形態に係る造形物200の製造方法について説明する。本実施形態に係る造形物200の製造方法は、上記したような三次元造形装置10を用いた造形物200の製造方法である。
【0051】
造形に先立ち、記憶部150に造形物200の三次元データが保持されている。また、造形物200の三次元データに基づき、支持部210および造形物200を造形するための光照射情報が生成される。なお、支持部210の形状は三次元造形装置10のユーザーが決定し、造形物200の三次元データと共に記憶部150に記憶させることができる。
【0052】
そして、キャリア120が、光硬化性組成物20が収容された容器110の光透過部112近傍に配置される。このとき面122と面113との距離は、たとえば30μm以上100μm以下である。
【0053】
次いで、制御部140は光照射情報に基づき最初の光照射領域に光照射するよう、照射部130から光透過部112に向けて光を照射させる。照射部130からの光は光透過部112を介して面122と面113との間の光硬化性組成物20に照射される。これにより、面122と面113との間の光硬化性組成物20が光照射領域の形状に硬化され、硬化物が面122に付着する。
【0054】
引き続き、制御部140は光照射情報に基づき、複数の光照射領域へ順に光照射する。それと共に、上記した通り、制御部140は面122と面113との間の距離を広げるよう駆動部142を制御する。光照射により新たに形成された光硬化性組成物20の硬化物は、その直前に形成された光硬化性組成物20の硬化物に対して、積層される。なお、この段階で光硬化性組成物20の硬化物は半硬化状態であってよい。
【0055】
最後の光照射領域に光照射された後、支持部210および造形物200はキャリア120から取り外される。その後、支持部210および造形物200はポストキュアされる場合がある。次いで、造形物200から支持部210が取り外され、造形物200が得られる。なお、ポストキュアの前に、造形物200から支持部210が取り外されても良い。
【0056】
次に、本実施形態の作用および効果について説明する。本実施形態によれば、制御部140は、接合部211を造形する際の造形条件を、造形物200の第1領域201を造形する際の造形条件よりも、光硬化性組成物20が硬化しやすい条件にするよう、造形条件を制御する。そうすることにより、接合部211の十分な強度が保たれ、形状精度の高い造形物200が得られる。
【0057】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態に係る三次元造形装置40および制御装置50の構成を例示するブロック図である。本実施形態に係る制御装置50は、三次元造形装置40の制御装置である。本実施形態に係る三次元造形装置40は、第1の実施形態に係る三次元造形装置10と同様であり、容器110、キャリア120、および照射部130を備える。容器110は、光硬化性組成物20を収容し、少なくとも一部に光透過部112を有する。キャリア120は、光透過部112の面113と対向し、光透過部112に対する距離が可変に構成されている。照射部130は、光透過部112を介して光硬化性組成物20に光を照射する。また、制御装置50は制御部500を備える。制御部500は、光硬化性組成物20を硬化させてなる造形物200を形成するよう、キャリア120の位置および照射部130を制御する。ここで制御部500は、造形物200、およびキャリア120と造形物200とをつなぐ支持部210を形成するように、キャリア120と光透過部112との距離を連続的または断続的に変化させながら光硬化性組成物20に照射部130からの光を照射させる。また、制御部500は、支持部210のキャリア120との接合部211を造形する際の造形条件を、造形物200のうち光透過部112の面113に平行な断面の面積が最も大きい第1領域201を造形する際の造形条件よりも、光硬化性組成物20が硬化しやすい条件にするよう、造形条件を制御する。
【0058】
本実施形態に係る制御部500は、第1の実施形態に係る制御部140と同じである。
【0059】
本実施形態においては第1の実施形態と同様の作用および効果が得られる。
【0060】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0061】
以下、参考形態の例を付記する。
1-1.光硬化性組成物を収容し、少なくとも一部に光透過部を有する容器と、
前記光透過部の面と対向し、前記光透過部に対する距離が可変に構成されているキャリアと、
前記光透過部を介して前記光硬化性組成物に光を照射する照射部と、
前記光硬化性組成物を硬化させてなる造形物を形成するよう、前記キャリアの位置および前記照射部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記造形物、および前記キャリアと前記造形物とをつなぐ支持部を形成するように、前記キャリアと前記光透過部との距離を連続的または断続的に変化させながら前記光硬化性組成物に前記照射部からの光を照射させ、
前記支持部の前記キャリアとの接合部を造形する際の造形条件を、前記造形物のうち前記光透過部の前記面に平行な断面の面積が最も大きい第1領域を造形する際の前記造形条件よりも、前記光硬化性組成物が硬化しやすい条件にするよう、前記造形条件を制御する三次元造形装置。
1-2. 1-1.に記載の三次元造形装置において、
前記キャリアの前記光透過部に対向する面の前記接合部を形成する領域の光反射率は10%以下である三次元造形装置。
1-3. 1-2.に記載の三次元造形装置において、
前記キャリアは前記光透過部に対向する面の少なくとも一部に表面層を備える三次元造形装置。
1-4. 1-3.に記載の三次元造形装置において、
前記表面層は酸化層である三次元造形装置。
1-5. 1-3.または1-4.に記載の三次元造形装置において、
前記造形物は歯科用途物および医療用途物の少なくとも一方である三次元造形装置。
1-6. 1-1.から1-5.のいずれか一つに記載の三次元造形装置において、
前記接合部は、前記支持部のうち前記キャリアから1mmまでの領域である三次元造形装置。
1-7. 1-1.から1-6.のいずれか一つに記載の三次元造形装置において、
前記制御部は、前記接合部を造形する際の前記照射部からの光照射エネルギー量を、前記第1領域を造形する際の前記光照射エネルギー量よりも大きくする三次元造形装置。
1-8. 1-7.に記載の三次元造形装置において、
前記制御部は、前記接合部を造形する際の前記照射部からの光照射時間を、前記第1領域を造形する際の前記光照射時間よりも長くする三次元造形装置。
1-9. 1-7.または1-8.に記載の三次元造形装置において、
前記制御部は、前記接合部を造形する際の前記照射部からの光照射強度を、前記第1領域を造形する際の前記光照射強度よりも高くする三次元造形装置。
1-10. 1-1.から1-9.のいずれか一つに記載の三次元造形装置において、
前記制御部は、前記接合部を造形する際の前記キャリアの温度を、前記第1領域を造形する際の前記キャリアの温度よりも高くする三次元造形装置。
1-11. 1-1.から1-10.のいずれか一つに記載の三次元造形装置において、
前記制御部は、前記接合部を造形する際の前記光硬化性組成物の温度を、前記第1領域を造形する際の前記光硬化性組成物の温度よりも高くする三次元造形装置。
2-1.三次元造形装置の制御装置であって、
前記三次元造形装置は、
光硬化性組成物を収容し、少なくとも一部に光透過部を有する容器と、
前記光透過部の面と対向し、前記光透過部に対する距離が可変に構成されているキャリアと、
前記光透過部を介して前記光硬化性組成物に光を照射する照射部とを備え、
当該制御装置は、前記光硬化性組成物を硬化させてなる造形物を形成するよう、前記キャリアの位置および前記照射部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記造形物、および前記キャリアと前記造形物とをつなぐ支持部を形成するように、前記キャリアと前記光透過部との距離を連続的または断続的に変化させながら前記光硬化性組成物に前記照射部からの光を照射させ、
前記支持部の前記キャリアとの接合部を造形する際の造形条件を、前記造形物のうち前記光透過部の前記面に平行な断面の面積が最も大きい第1領域を造形する際の前記造形条件よりも、前記光硬化性組成物が硬化しやすい条件にするよう、前記造形条件を制御する制御装置。
2-2. 2-1.に記載の制御装置において、
前記キャリアの前記光透過部に対向する面の前記接合部を形成する領域の光反射率は10%以下である制御装置。
2-3. 2-2.に記載の制御装置において、
前記キャリアは前記光透過部に対向する面の少なくとも一部に表面層を備える制御装置。
2-4. 2-3.に記載の制御装置において、
前記表面層は酸化層である制御装置。
2-5. 2-3.または2-4.に記載の制御装置において、
前記造形物は歯科用途物および医療用途物の少なくとも一方である制御装置。
2-6. 2-1.から2-5.のいずれか一つに記載の制御装置において、
前記接合部は、前記支持部のうち前記キャリアから1mmまでの領域である制御装置。
2-7. 2-1.から2-6.のいずれか一つに記載の制御装置において、
前記制御部は、前記接合部を造形する際の前記照射部からの光照射エネルギー量を、前記第1領域を造形する際の前記光照射エネルギー量よりも大きくする制御装置。
2-8. 2-7.に記載の制御装置において、
前記制御部は、前記接合部を造形する際の前記照射部からの光照射時間を、前記第1領域を造形する際の前記光照射時間よりも長くする制御装置。
2-9. 2-7.または2-8.に記載の制御装置において、
前記制御部は、前記接合部を造形する際の前記照射部からの光照射強度を、前記第1領域を造形する際の前記光照射強度よりも高くする制御装置。
2-10. 2-1.から2-9.のいずれか一つに記載の制御装置において、
前記制御部は、前記接合部を造形する際の前記キャリアの温度を、前記第1領域を造形する際の前記キャリアの温度よりも高くする制御装置。
2-11. 2-1.から2-10.のいずれか一つに記載の制御装置において、
前記制御部は、前記接合部を造形する際の前記光硬化性組成物の温度を、前記第1領域を造形する際の前記光硬化性組成物の温度よりも高くする制御装置。
3-1.三次元造形装置を用いた造形物の製造方法であって、
前記三次元造形装置は、
光硬化性組成物を収容し、少なくとも一部に光透過部を有する容器と、
前記光透過部の面と対向し、前記光透過部に対する距離が可変に構成されているキャリアと、
前記光透過部を介して前記光硬化性組成物に光を照射する照射部と、
前記光硬化性組成物を硬化させてなる前記造形物を形成するよう、前記キャリアの位置および前記照射部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記造形物、および前記キャリアと前記造形物とをつなぐ支持部を形成するように、前記キャリアと前記光透過部との距離を連続的または断続的に変化させながら前記光硬化性組成物に前記照射部からの光を照射させ、
前記支持部の前記キャリアとの接合部を造形する際の造形条件を、前記造形物のうち前記光透過部の前記面に平行な断面の面積が最も大きい第1領域を造形する際の前記造形条件よりも、前記光硬化性組成物が硬化しやすい条件にするよう、前記造形条件を制御する造形物の製造方法。
3-2. 3-1.に記載の造形物の製造方法において、
前記キャリアの前記光透過部に対向する面の前記接合部を形成する領域の光反射率は10%以下である造形物の製造方法。
3-3. 3-2.に記載の造形物の製造方法において、
前記キャリアは前記光透過部に対向する面の少なくとも一部に表面層を備える造形物の製造方法。
3-4. 3-3.に記載の造形物の製造方法において、
前記表面層は酸化層である造形物の製造方法。
3-5. 3-3.または3-4.に記載の造形物の製造方法において、
当該造形物は歯科用途物および医療用途物の少なくとも一方である造形物の製造方法。
3-6. 3-1.から3-5.のいずれか一つに記載の造形物の製造方法において、
前記接合部は、前記支持部のうち前記キャリアから1mmまでの領域である造形物の製造方法。
3-7. 3-1.から3-6.のいずれか一つに記載の造形物の製造方法において、
前記制御部は、前記接合部を造形する際の前記照射部からの光照射エネルギー量を、前記第1領域を造形する際の前記光照射エネルギー量よりも大きくする造形物の製造方法。
3-8. 3-7.に記載の造形物の製造方法において、
前記制御部は、前記接合部を造形する際の前記照射部からの光照射時間を、前記第1領域を造形する際の前記光照射時間よりも長くする造形物の製造方法。
3-9. 3-7.または3-8.に記載の造形物の製造方法において、
前記制御部は、前記接合部を造形する際の前記照射部からの光照射強度を、前記第1領域を造形する際の前記光照射強度よりも高くする造形物の製造方法。
3-10. 3-1.から3-9.のいずれか一つに記載の造形物の製造方法において、
前記制御部は、前記接合部を造形する際の前記キャリアの温度を、前記第1領域を造形する際の前記キャリアの温度よりも高くする造形物の製造方法。
3-11. 3-1.から3-10.のいずれか一つに記載の造形物の製造方法において、
前記制御部は、前記接合部を造形する際の前記光硬化性組成物の温度を、前記第1領域を造形する際の前記光硬化性組成物の温度よりも高くする造形物の製造方法。
【0062】
この出願は、2018年7月5日に出願された日本出願特願2018-128070号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
図1
図2
図3