(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】三次元光場の分布を形成するための光デバイス
(51)【国際特許分類】
G02B 30/56 20200101AFI20220902BHJP
G02F 1/01 20060101ALI20220902BHJP
H04N 13/30 20180101ALI20220902BHJP
【FI】
G02B30/56
G02F1/01 D
H04N13/30
(21)【出願番号】P 2020541682
(86)(22)【出願日】2019-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2019052261
(87)【国際公開番号】W WO2019149758
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-01-28
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514156563
【氏名又は名称】アイメック・ヴェーゼットウェー
【氏名又は名称原語表記】IMEC VZW
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】グザヴィエ・ロッテンベルク
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ローデウェイクス
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/138886(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0160612(US,A1)
【文献】国際公開第2016/125491(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 30/56
G02F 1/01
H04N 13/30 - 13/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時に三次元光場の分布を形成するための光デバイス(100)であって、
上記光デバイス(100)は、複数の単位セル(104)のアレイ(102)を備え、
上記複数の単位セル(104)のアレイ(102)におけるある単位セル(104)は、上記単位セル(104)の光学的特性を制御するために使用時に個々にアドレス指定され、
上記複数の単位セル(104)のアレイ(102)における各単位セル(104)は、
使用時に上記単位セル(104)の光学的特性を制御する制御信号を受信する少なくとも1つの電極(112,124;132;202,204)と、
少なくとも相変化材料(PCM)層(134)を備える共振定義層とを含むスタック(110;130)を備え、
上記共振定義層は、上記共振定義層の面における入射光ビームの共振の波長依存性を定義するために少なくとも上記共振定義層の面において決定された寸法を有する幾何学的構造物(114;136)を定義するようにパターン形成され、
上記共振定義層の面における上記幾何学的構造物(114;136)の寸法は、円形形状の直径によって、又は、上記幾何学的構造物(114;136)のエッジのサイズに対応する長さによって定義され、
上記幾何学的構造物(114;136)の寸法はλ/2より小さく、λは上記単位セル(104)とともに使用される入射光ビームの光の波長であり、
上記少なくとも1つの電極(112,124;132;202,204)は、上記制御信号を受信することに基づいて、使用時に第1の状態及び第2の状態の間で上記相変化材料の相変化を引き起こすように構成され、
上記相変化材料の相変化は、上記単位セル(104)の光学的特性を制御するために上記共振定義層の面における共振の波長依存性を変更し、
上記複数の単位セル(104)のアレイ(102)における各単位セル(104)は、ある単位セル(104)のPCM層(134)が隣接単位セルにおけるPCM層(134)から分離されるように互いに分離され、
上記幾何学的構造物(114;136)はナノ粒子(114)であり、上記相変化材料層は、上記ナノ粒子(114)を形成するようにパターン形成され、
上記単位セル(104)のスタック(110)は、誘電体材料のスペーサ層(126)をさらに備え、
上記スペーサ層(126)は、上記電極(112)と上記パターン形成されたナノ粒子(114)との間に配置される、
光デバイス。
【請求項2】
上記単位セル(104)のスタック(110)は、上記パターン形成されたナノ粒子(114)の上に配置された誘電体材料(116,118,120)をさらに備える、
請求項
1記載の光デバイス。
【請求項3】
使用時に三次元光場の分布を形成するための光デバイス(100)であって、
上記光デバイス(100)は、複数の単位セル(104)のアレイ(102)を備え、
上記複数の単位セル(104)のアレイ(102)におけるある単位セル(104)は、上記単位セル(104)の光学的特性を制御するために使用時に個々にアドレス指定され、
上記複数の単位セル(104)のアレイ(102)における各単位セル(104)は、
使用時に上記単位セル(104)の光学的特性を制御する制御信号を受信する少なくとも1つの電極(112,124;132;202,204)と、
少なくとも相変化材料(PCM)層(134)を備える共振定義層とを含むスタック(110;130)を備え、
上記共振定義層は、上記共振定義層の面における入射光ビームの共振の波長依存性を定義するために少なくとも上記共振定義層の面において決定された寸法を有する幾何学的構造物(114;136)を定義するようにパターン形成され、
上記共振定義層の面における上記幾何学的構造物(114;136)の寸法は、円形形状の直径によって、又は、上記幾何学的構造物(114;136)のエッジのサイズに対応する長さによって定義され、
上記幾何学的構造物(114;136)の寸法はλ/2より小さく、λは上記単位セル(104)とともに使用される入射光ビームの光の波長であり、
上記少なくとも1つの電極(112,124;132;202,204)は、上記制御信号を受信することに基づいて、使用時に第1の状態及び第2の状態の間で上記相変化材料の相変化を引き起こすように構成され、
上記相変化材料の相変化は、上記単位セル(104)の光学的特性を制御するために上記共振定義層の面における共振の波長依存性を変更し、
上記複数の単位セル(104)のアレイ(102)における各単位セル(104)は、ある単位セル(104)のPCM層(134)が隣接単位セルにおけるPCM層(134)から分離されるように互いに分離され、
上記幾何学的構造物(114;136)はキャビティ(136)を備え、上記キャビティ(136)は、上記共振定義層の材料層において形成された壁部であって、上記キャビティを形成する目的でパターン形成された壁部によって定義される、
光デバイス。
【請求項4】
上記キャビティ(136)は誘電体材料(138,154)によって充填される、
請求項
3記載の光デバイス。
【請求項5】
上記共振定義層は、上記キャビティ(136)の底部における第1の厚さを有する上記相変化材料を備え、上記パターン形成された壁部は、上記第1の厚さよりも大きな第2の厚さを有する壁部における上記相変化材料によって形成される、
請求項
3又は4記載の光デバイス。
【請求項6】
上記単位セル(104)のスタック(130)は、上記相変化材料の上記パターン形成された壁部の上における誘電体材料(146,148)の少なくとも1つの層をさらに備える、
請求項
5記載の光デバイス。
【請求項7】
上記スタック(130)は、上記キャビティ(136)の壁部及び底部のコーティングを提供する上部金属層(144)を備える、
請求項
3又は5記載の光デバイス。
【請求項8】
上記共振定義層は、均一な厚さを有するPCM層(134)と、上記PCM層(134)の上においてパターン形成された金属層(150)とを備え、
上記キャビティ(136)は、上記金属層(150)においてパターン形成された壁部によって定義される、
請求項
3又は4記載の光デバイス。
【請求項9】
上記単位セル(104)のスタック(130)は、上記電極(132)と、上記キャビティ(136)を定義するパターン形成された壁部との間における誘電体材料のスペーサ層(152)をさらに備える、
請求項
3~8のうちの1つに記載の光デバイス。
【請求項10】
上記幾何学的構造物(114;136)は、上記PCM層(134)の面において、上記幾何学的構造物(114;136)の長さを定義する1つの方向に延在し、
上記幾何学的構造物(114;136)の寸法は、上記幾何学的構造物(114;136)の厚さが上記幾何学的構造物の長さの0.25倍から1倍の間の範囲に間にあるように決定され、
上記幾何学的構造物(114;136)の長さはλ/2より小さく、
λは上記単位セル(104)とともに使用される光の波長である、
請求項1
~9のうちの1つに記載の光デバイス。
【請求項11】
上記幾何学的構造物(114;136)は、上記共振定義層の面にあって円形状を有する、
請求項1
~10のうちの1つに記載の光デバイス。
【請求項12】
上記幾何学的構造物(114;136)は、上記共振定義層の面にあって第1の方向において第1のサイズを有し、上記共振定義層の面にあって、上記第1の方向とは異なる第2の方向において、上記第1のサイズとは異なる第2のサイズを有する、
請求項1
~10のうちの1つに記載の光デバイス。
【請求項13】
上記複数の単位セル(104)のアレイ(102)における第1の単位セルの幾何学的構造物(114;136)の寸法は、上記複数の単位セル(104)のアレイ(102)における第2の単位セルの幾何学的構造物(114;136)の寸法とは異なるように決定される、
請求項1~
12のうちの1つに記載の光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の概念は、三次元光場の分布を形成するための光デバイスに関する。特に、本発明の概念は、三次元光場を形成してホログラフィック像を表示しうる光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラフィック像は光場の三次元制御によって形成される。特に、ホログラフィックビデオを提示する場合のような、変化するホログラフィック像を提示することが望まれる場合、三次元光場を形成するための光デバイスは、特性を変化させるように制御されることが必要とされる場合がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Hosseini P., Wright C.D, Bhaskaran H., "An optoelectronic framework enabled by low-dimensional phase-change films", Nature, vol. 511, 10 July 2014, pp. 206-211.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、ホログラフィック像の表示のために、光デバイスにおける単位セルの応答が変更されることが必要とされうる。この点で、複数の層からなるスタックの応答を変更可能にするために、相変化材料(phase-change material: PCM)を利用することが知られている。PCMは、適切に定義された少なくとも2つの状態間で変化してもよく、PCMは、光デバイスが特性を変化させるように、異なる状態において異なる光学的特性を有する。従って、単位セルによって反射又は透過された光の強度及び位相を変調するために、PCMの薄い層が使用されてもよい。
【0005】
非特許文献1において、極めて薄い相変化材料及び透明導体を用いて、電気的に誘導された安定色が反射モード及び半透過モードの両方に変化することが実証されている。硬いフィルム及び可撓性のフィルム上のディスプレイにおいて、ピクセル化されたアプローチをどのように使用できるのかが示される。2つのITO層の間にはさまれた相変化材料、Ge2Sb2Te5(GST)のスタックが反射面の上に堆積される。底部のITO層の厚さは、GSTの状態に依存して、与えられた色に対してスタックの反射率を調節するために変化させられてもよい。
【0006】
しかしながら、例えば、ホログラフィック像の明度及び/又は明確性を改善するために、単位セルの異なる状態間の光学的特性の差をより大きくすることが望まれる。
【0007】
本発明の概念の目的は、三次元光場の分布の改善された制御のために使用されうる、改善された光デバイスを提供することにある。
【0008】
本発明のこの目的及び他の目的は、少なくとも部分的に、独立請求項に定義される発明によって満たされる。好ましい実施形態が従属請求項に記述される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様によれば、三次元光場の分布を形成するための光デバイスが提供される。上記光デバイスは、複数の単位セルのアレイを備える。上記複数の単位セルのアレイにおけるある単位セルは、上記単位セルの光学的特性を制御するために個々にアドレス指定可能である。上記複数の単位セルのアレイにおける各単位セルは、上記単位セルの光学的特性を制御する制御信号を受信する少なくとも1つの電極と、少なくとも相変化材料(PCM)層を備える共振定義層とを含むスタックを備える。上記共振定義層は、上記共振定義層の面における共振の波長依存性を定義するために少なくとも上記共振定義層の面において決定された寸法を有する幾何学的構造物を定義するようにパターン形成される。上記少なくとも1つの電極は、上記制御信号を受信することに基づいて、第1の状態及び第2の状態の間で上記相変化材料の相変化を引き起こすように構成される。上記相変化材料の相変化は、上記単位セルの光学的特性を制御するために上記共振定義層の面における共振の波長依存性を変更する。上記複数の単位セルのアレイにおける各単位セルは、ある単位セルのPCM層が隣接単位セルにおけるPCM層から分離されるように互いに分離される。
【0010】
光デバイスは、共振定義層の面において共振を定義することで、単位セルの共振特性を制御するようにパターン形成されたPCM層を備える。従って、複数の層からなる多層スタックにおける層の厚さが(PCMの1つの状態に係る)面外のファブリーペロー共振を定義して入射光線及び(複数の)反射光線の弱め合う干渉をもたらす幾何学的形状とは対照的に、本開示の光デバイスは、相変化材料を含むパターンを用いて面内の共振を定義する。
【0011】
本発明の洞察によれば、PCM層を用いて単位セルの共振を定義することによって、PCMの第1の状態及びPCMの第2の状態の間における単位セルの光学的特性に実質的な差が生じる可能性があり、これにより、第1又は第2の状態にあるPCMに基づく強い応答を可能にしうる。これは、光デバイスにより出力される三次元光場の分布の正確な制御を光デバイスが可能にしうることを意味する。
【0012】
PCMの第1及び第2の状態の間において単位セルによる波長の透過又は反射の比(光デバイスが入射光ビームを反射するために使用されるのか、それとも透過するために使用されるのかに依存する)が、少なくとも20より大きく、少なくとも50より大きく、又は少なくとも100より大きくなるように、単位セルの共振定義層がパターン形成されてもよい。
【0013】
ホログラフィックディスプレイのための光場の形成のために光デバイスが使用されてもよいが、三次元光場の制御は他のアプリケーションでも同様に有用かもしれないことは理解されるべきである。三次元光場を形成するための光デバイスは、透過した光ビームの三次元における制御された分布を投影してもよく、それは、制御された照明のための任意のタイプのアプリケーションにおいて使用されてもよく、三次元光場に基づく表示画像の形成と必ずしも組み合わされなくてもよい。
【0014】
相変化材料は、光学的特性において有意な変化を伴う相変化を有してもよい。光学的特性は、例えば、材料の複素屈折率又は複素誘電率であってもよい。
【0015】
相変化材料は、結晶状態及び非晶質状態の間で切り換わるように構成されてもよい。しかしながら、第1及び第2の状態が相変化材料の状態の他の構成であってもよいことは理解されるべきである。例えば、相変化材料は、2つの異なる結晶状態の間で切り換わるように構成されてもよい。
【0016】
ある単位セルのPCM層が隣接した単位セルのPCM層から分離されるように分離している複数の単位セルからなるアレイにおける単位セルのおかげで、隣接した単位セルのPCM層は個々に制御されてもよい。このことは、各単位セルが個々にアドレス指定されてもよいことを意味し、また、各単位セルにおけるPCMの状態を制御することにより単位セルの各々からの寄与を制御することによって、出力される三次元光場の分布を制御することを可能にする。
【0017】
隣接した単位セルの分離は、物理的に分離されている隣接した単位セルのPCM層によって達成されてもよい。しかしながら、隣接した単位セルの分離は、さらに、物理的に分離されている隣接した単位セルの少なくとも1つの電極による分離によって達成されてもよい。従って、単位セルのPCMの相変化をトリガする制御信号は、隣接した単位セルに影響を与えない可能性がある。
【0018】
上述したように、単位セルの所望の共振特性を提供する幾何学的構造物の定義にとって重要であるのは、共振定義層の厚さだけではない。むしろ、PCMの第1又は第2の状態において共振が望まれる波長に適合した共振定義層の面において幾何学的構造物を形成することもまた重要である。
【0019】
ある実施形態によれば、幾何学的構造物の寸法は、共振定義層の面における可視波長の共振の波長依存性を定義するために、少なくとも、共振定義層の面において決定される。
【0020】
光デバイスは可視波長で適切に使用されてもよく、このことは、三次元光場が人々によって見られうることを意味する。ホログラフィック画像の作成のような多数のアプリケーションにおいて、可視波長の使用が望まれる。しかしながら、光デバイスは、代替として、近赤外線、赤外線、又は紫外線の波長のような、他の波長で使用されてもよい。従って、幾何学的構造物の寸法は、光デバイスの所望の動作波長の共振の波長依存性を定義するために決定されてもよい。
【0021】
三次元光場の分布は、例えば、ホログラフィック画像を表示するために使用されてもよい。従って、光デバイスは、ホログラフィック画像を表示するために、又は、ホログラフィック画像のビデオを表示するために使用されてもよい。
【0022】
しかしながら、三次元光場の制御が他のアプリケーションでも同様に有用かもしれないことは理解されるべきである。三次元光場は、入射光ビームの三次元における制御された分布を投影してもよく、これは、LIDAR(light detecting and ranging)、3Dメモリのような、また、画像生成システムのための高度な光源のような、様々なアプリケーションにおいて使用されてもよい。
【0023】
ある実施形態によれば、上記幾何学的構造物は、上記PCM層の面において、上記幾何学的構造物の長さを定義する1つの方向に延在する。上記幾何学的構造物の寸法は、上記幾何学的構造物の厚さが上記幾何学的な構造物の長さの0.25倍から1倍の間の範囲に間にあるように決定される。上記幾何学的構造物の長さはλ/2より小さく、λは上記単位セルとともに使用される光の波長である。
【0024】
このような寸法によって、PCMの第1及び第2の状態について単位セルの光学的特性の間に強い差をもたらしうるように、共振定義層において面内の共振を形成することが可能となる。
【0025】
さらなる実施形態によれば、PCM層における幾何学的構造物の厚さは少なくとも20nmである。
【0026】
PCM層では主に面内の共振が形成されうるので、PCM層は過度に薄くされるべきでない。これは、PCMの第1及び第2の状態について単位セルの光学的特性の間に強い差を生じるために十分な量の材料がPCM層に存在することを意味する。
【0027】
ある実施形態によれば、幾何学的構造物は、共振定義層の面において円形である。
【0028】
このことは、入射光への対称な影響が幾何学的構造物によって提供されうることを意味する。円形の幾何学的構造物の長さについて議論する場合、円形の幾何学的構造物の直径が長さとして使用されるべきである。
【0029】
ある実施形態によれば、上記幾何学的構造物は、上記共振定義層の面にあって第1の方向において第1のサイズを有し、上記共振定義層の面にあって、上記第1の方向とは異なる第2の方向において、上記第1のサイズとは異なる第2のサイズを有する。
【0030】
このことは、幾何学的構造物が複数の波長での使用に適応化されうることを意味する。従って、楕円又は長方形形状の幾何学的構造物を用いて、単位セルは、直交する2つの直線偏光を用いて、2つの異なる波長で所望の特性を提供するように適応化されてもよい。従って、装置は、異なる波長で使用されるための柔軟性を提供しうる。
【0031】
2つよりも多くの異なるサイズが幾何学的構造物によって定義されてもよいことは理解されるべきである。例えば、幾何学的構造物は六角形形状を有してもよく、これにより、単位セルは、3つの異なる波長で所望の特性を提供するように適応化されうる。
【0032】
幾何学的構造物は、所望の光学的特性を提供するために多数の異なる方法で形成されてもよい。幾何学的構造物の寸法を決定することは、幾何学的構造物を形成するためにパターン形成されたPCM層が配置される環境に依存してもよい。共振定義層を含む複数の単位セルからなるスタックの複数の異なるセットアップには複数の異なる利点が存在する可能性があり、幾何学的構造物は、所望の光学的特性を提供するために複数の異なるセットアップに依存して設計されるか又は寸法を決定されてもよい。例えば、一部のセットアップは、小型及び/又は薄型の幾何学的構造物を可能にしてもよく、これにより、単位セルのアレイの稠密な配置を可能にする。他のセットアップは、第1及び第2の状態の間の光学的特性における非常に大きな差を可能にしてもよく、このことは、三次元光場の分布の正確な制御を容易化してもよく、例えば、高品質のホログラフィック画像の表示を可能にする。
【0033】
ある実施形態によれば、上記幾何学的構造物は、上記相変化材料によって形成された、パターン形成されたナノ粒子である。
【0034】
このことは、幾何学的構造物が相変化材料で形成された粒子の形で提供されることを意味する。このことは、粒子として形成されるポジティブな構造物として幾何学的構造物が提供されるとき、比較的簡単な構造物が形成されることを意味する。しかしながら、さらに後述するように、幾何学的構造物が代わりに相変化材料におけるキャビティとして形成されてもよいことは理解されるべきである。
【0035】
ある実施形態によれば、上記単位セルのスタックは、上記パターン形成されたナノ粒子の上に配置された誘電体材料をさらに備える。
【0036】
誘電体材料は、パターン形成されたナノ粒子の上における材料の屈折率を制御するように、ナノ粒子に対する環境を定義してもよい。誘電体材料は、ナノ粒子に対する環境の屈折率を設計するために選択されてもよい。
【0037】
パターン形成されたナノ粒子は、代替として、空気などの外部環境に露出されてもよい。しかしながら、幾何学的構造物を保護するために、少なくとも、パターン形成されたナノ粒子の上において薄い誘電体ライナー層を有することが有利となる可能性がある。特に、ライナー層は、相変化材料の状態を切り換える間に相変化材料を保護しうる。状態の切り換えは、高温で動作することを含んでもよい。このことは、パターン形成されたナノ粒子が外部環境に露出される場合、相変化材料の酸化を引き起こしうる。
【0038】
ある実施形態によれば、単位セルのスタックは、パターン形成されたナノ粒子の上に配置された第1の誘電体材料と、第1の誘電体材料の上に配置された第2の誘電体材料とをさらに備え、第1の誘電体材料は第2の誘電体材料より大きな屈折率を有する。
【0039】
これは、ナノ粒子に対する環境をさらに設計するために使用されてもよい。第1の誘電体材料及び第2の誘電体材料は、パターン形成されたナノ粒子の上におけるスタックとして配置されてもよい。ある実施形態によれば、第1の誘電体材料及び第2の誘電体材料のスタックは、単位セルのナノ粒子間の反射防止膜として作用しなくとも、ナノ粒子からの反射を最小化するように機能しうる。
【0040】
ある実施形態によれば、上記単位セルのスタックは、誘電体材料のスペーサ層をさらに備え、上記スペーサ層は、上記電極と上記パターン形成されたナノ粒子との間に配置される。
【0041】
電極は反射面として機能してもよい。電極によって提供される反射は、共振定義層によって制御される。スペーサ層の存在が、面内の共振を生じさせるために使用されるナノ粒子の寸法と、提供される所望の光学的特性とに影響しうるので、ナノ粒子のパターン形成はスペーサ層の影響を考慮に入れるべきである。スペーサ層の存在は、小さな厚さを有するナノ粒子を用いて可能にされうる。
【0042】
ナノ粒子は、電極及びナノ粒子の間でスペーサ層を形成する誘電体材料に埋め込まれるように配置されてもよい。従って、誘電体層は、電極及びナノ粒子の間のスペーサ層を形成するようにナノ粒子を包囲してもよく、また、ナノ粒子の上方及び側方における環境を提供してもよい。
【0043】
ある実施形態によれば、スペーサ層は第1の誘電体材料を備えてもよく、上記単位セルのスタックは、上記パターン形成されたナノ粒子の上に配置された第2の誘電体材料をさらに備えてもよく、第2の誘電体材料は第1の誘電体材料より大きな屈折率を有する。第2の誘電体材料の層を備えたナノ粒子は、スペーサ層を形成する第1の誘電体材料に埋め込まれていても、埋め込まれていなくてもよい。スタックにおける第2の誘電体材料を有することにより、第2の誘電体材料の層の厚さ及び/又はサイズに基づいて、共振定義層によって提供される光学的特性をさらに設計できるようにしうる。
【0044】
ある実施形態によれば、上記幾何学的構造物は、上記共振定義層の材料において、パターン形成された壁面によって定義されたキャビティを備える。
【0045】
キャビティ及び粒子は光学的用語に関して互いに逆のものとみなされてもよいので、単位セルの光学的特性は、ナノ粒子又はキャビティに関して対応する方法で構成されてもよい。
【0046】
キャビティはPCM層において形成されてもよく、このことは、前述したPCM層におけるナノ粒子の使用に対応する。しかしながら、もう1つの実施形態では、キャビティの底面が第1の厚さを有するPCM層によって定義されうるように、第1の厚さを有するPCM層が提供されてもよい。さらに、キャビティのパターン形成された壁部は、第1の厚さを有するPCM層の上に形成されてもよい。キャビティの側壁部及び底面がPCM材料によって形成されるように、パターン形成された壁部はPCM層において形成されてもよい。代替として、パターン形成された壁部は、均一の厚さを有するPCM層の上に配置された金属層において形成されてもよい。
【0047】
キャビティについて、幾何学的構造物の厚さは、キャビティの底面の上におけるパターン形成された壁部の高さとして定義されているキャビティの深さとして解釈されるべきである。従って、ここで使用されるように、幾何学的構造物の厚さは、幾何学的構造物がナノ粒子を備える場合、ナノ粒子の厚さとして解釈され、又は、幾何学的構造物がキャビティを備える場合、キャビティの深さとして解釈されるべきである。
【0048】
キャビティについて、幾何学的構造物の長さは、パターン形成された壁部間の長さに対応するべきである。パターン形成された壁部の内側において定義された円形形状について、長さは、パターン形成された壁部によって定義された円形形状の直径として解釈されるべきである。
【0049】
ある実施形態によれば、キャビティは誘電体材料によって充填される。
【0050】
誘電体材料は、キャビティにおける材料の屈折率を制御するように、キャビティにおける環境を定義してもよい。誘電体材料は、キャビティにおける環境の屈折率を設計するために選択されてもよい。
【0051】
ある実施形態によれば、上記共振定義層は、上記キャビティの底部における第1の厚さを有する上記相変化材料と、上記第1の厚さよりも大きな第2の厚さを有する壁部における上記相変化材料によって形成される上記パターン形成された壁部とを備える。
【0052】
このことは、キャビティの側壁部及び底面が相変化材料によって形成されることを意味する。従って、単位セルの光学的特性は、相変化材料の第1の厚さを変更し、相変化材料の第2の厚さを変更し、キャビティの寸法、すなわちキャビティの横方向のサイズを変更することによって設計されてもよい。
【0053】
ある実施形態によれば、上記単位セルのスタックは、上記相変化材料の上記パターン形成された壁部の上における誘電体材料の少なくとも1つの層をさらに備える。
【0054】
従って、誘電体材料の少なくとも1つの層は、より大きな深さを有するキャビティを定義するために使用されてもよく、これは、単位セルの光学的特性を設計するのに使用されてもよい。
【0055】
パターン形成された壁部の上における誘電体材料の少なくとも1つの層は、誘電体材料の単一の層であってもよい。しかしながら、もう1つの実施形態では、パターン形成された壁部の上における誘電体材料の少なくとも1つの層は、第1の誘電体材料の第1の層と、第2の誘電体材料の第2の層とを備えてもよく、第1の誘電体材料は第2の誘電体材料より大きな屈折率を有する。
【0056】
ある実施形態によれば、上記スタックは、上記キャビティの壁部及び底部のコーティングを提供する上部金属層を備える。
【0057】
薄い上部金属層が、幾何学的構造物を保護しうるライナーを形成してもよい。上部金属層は、面内の共振を定義するために幾何学的構造物の設計及び寸法を決定することを可能にしながら、幾何学的構造物の共振を向上させうる。
【0058】
ある実施形態では、上部金属層は、10nm未満の厚さを有してもよい。このことは、幾何学的構造物の共振が幾何学的構造物の寸法によって定義されうることを意味しうる。
【0059】
上部金属層はまた、PCM層の上におけるコーティング、又は、パターン形成された壁部の上面を形成する他の任意の材料を提供してもよい。もう1つの実施形態によれば、上部金属層はコーティングを提供してもよいが、それはキャビティのすべての面に存在する必要はない。例えば、上部金属層は、キャビティの側壁部又はキャビティの底部の上におけるコーティングを提供してもよい。
【0060】
パターン形成されたナノ粒子の議論と同様に、キャビティを備える幾何学的構造物は、利点として、幾何学的構造物を保護するために幾何学的構造物を覆うように配置された薄い誘電体ライナー層を少なくとも有してもよい。特に、ライナー層は、相変化材料の状態を切り換える間に、幾何学的構造物における相変化材料及び/又は金属層を保護しうる。状態の切り換えは、高温で動作することを含んでもよい。このことは、材料が外部環境に露出される場合、相変化材料又は金属の酸化を引き起こしうる。
【0061】
ある実施形態によれば、上記共振定義層は、均一な厚さを有するPCM層と、上記PCM層の上のパターン形成された金属層とを備え、上記キャビティは、上記金属層においてパターン形成された壁部によって定義される。
【0062】
このことは、PCM層がキャビティより下の底面を定義しうることを意味する。それに対して、キャビティの幾何学的構造物の寸法は金属層によって定義されうる。従って、パターン形成された金属層の厚さ(キャビティの深さを定義する)及びキャビティの横方向のサイズ(パターン形成された壁部間の距離)に加えて、PCM層の厚さもまた、単位セルの光学的特性を設計するために使用されてもよい。
【0063】
ある実施形態によれば、上記単位セルのスタックは、上記電極と、上記キャビティを定義するパターン形成された壁部との間における誘電体材料のスペーサ層をさらに備える。
【0064】
スペーサ層は、電極の上に配置されてキャビティの底面を定義してもよい。しかしながら、均一の厚さを有するPCM層と、PCM層の上にパターン形成された金属層とを備える一実施形態において、スペーサ層は、キャビティの底面を定義するようにPCM層の上に配置されてもよい。さらに他の実施形態では、スペーサ層は電極の上に配置されてもよく、PCM層はスペーサ層の上に配置されてもよく、PCM層はキャビティの底面を定義してもよい。
【0065】
電極/PCM層と、パターン形成されたキャビティとの間のスペーサ層は、キャビティが配置される環境を設定する。キャビティはスペーサ層の影響に関連してパターン形成されてもよい。さらに、スペーサ層の厚さは、単位セルの光学的特性を設計するのに使用されてもよい。
【0066】
キャビティの幾何学的構造物は、電極/PCM層とキャビティとの間でスペーサ層を形成する誘電体材料に埋め込まれるように配置されてもよい。誘電体層はまた、キャビティを充填し、キャビティの上における上層を形成する。
【0067】
ある実施形態によれば、光デバイスは、単位セルのアレイにおいて配置された透明電極をさらに備える。
【0068】
透明電極は、単位セルのアレイに対して、又は、アレイ内の複数の単位セルに対して共通電位を提供してもよい。これにより、単位セルのスタックにおける少なくとも1つの電極は、単位セルにおいてPCMの相変化を制御するための透明電極によって提供される共通電位に関連する信号を受信しうる。このことは、いくつかの単位セルによって共用されるように透明電極が提供されうる一方で、単一の電極が単位セルのスタックにおいて提供されてもよいことを意味する。
【0069】
透明電極を用いることによって、電極は、単位セルのスタックに入射する光と相互作用することなく、単位セルのスタック上に配置されうる。
【0070】
ある実施形態によれば、単位セルのアレイは、単位セルのアレイにおける単位セルの行の下にそれぞれ延在する底部ライン電極と、単位セルのアレイにおける単位セルの列の上にそれぞれ延在する上部ライン電極とをさらに備え、上部ライン電極は透明であるか又は単位セル上に透明部を備える。
【0071】
このことは、単位セルが底部ライン電極及び上部ライン電極における信号の組み合わせによって個々にアドレス指定されうることを意味する。
【0072】
上部ライン電極は、単位セルの位置の金属層においてキャビティを定義するために、パターン形成された壁部を備えてもよい。従って、キャビティは上部ライン電極において形成されてもよく、それは、単位セルのPCM層の状態を制御するように機能しうる。次いで、上部ライン電極は、透明材料で形成されてもよく、又は形成されなくてもよい。
【0073】
ある実施形態によれば、各単位セルの電極は、単位セルを通して光を透過するように構成された当該単位セルを提供するために透明である。
【0074】
従って、光デバイスは、単位セルのアレイにおいて受信された光ビームを透過するために使用されうる。
【0075】
もう1つの実施形態によれば、各単位セルの電極は反射性である(又は、各単位セルは反射層を含む)。従って、光デバイスは、単位セルのアレイにおいて受信された光ビームを反射するために使用されうる。
【0076】
ある実施形態によれば、相変化材料は、ゲルマニウム、アンチモン、及びテルルの化合物、すなわちGSTである。
【0077】
例えば、相変化材料は、Ge2Sb2Te5(GST)によって形成されてもよい。これは、非晶質状態及び結晶状態の間で変化しうる材料であって、単位セルのアレイに係る所望の光学的特性を提供するために適切に使用されうる材料である。
【0078】
しかしながら、相変化材料が、2つの状態間の切り換えに基づいて光学的特性の変化を提供する任意の材料であってもよいことは理解されるべきである。相変化材料は、例えば、温度にさらされることに関連して相変化を受けうる任意の材料(サーモクロミー材料)であってもよく、又は光にさらされることに関連して相変化を受けうる任意の材料(フォトクロミック材料)であってもよく、又はそのような材料の組み合わせであってもよい。例えば、VO2及びV2O3のような、多数の異なる形式の酸化バナジウムが使用されてもよい。相変化材料は、上述した酸化バナジウムのような金属酸化物材料から形成されたサーモクロミー材料、アゾベンゼンを含むポリジアセチレンのようなポリマー、又はジブロック(ポリ[スチレン-b-イソプレン])コポリマーのようなナノ構造を有するポリマーを含んでもよい。相変化材料は、代替として、複屈折材料のような、印加された電界に基づいて光学的特性を変化させる電気光学材料であってもよく、又は、ガーネット及び強磁性体金属のような、印加された磁界に基づいて光学的特性を変化させる磁気光学材料であってもよい。
【0079】
ある実施形態によれば、上記複数の単位セルのアレイにおける第1の単位セルの幾何学的構造物の寸法は、上記複数の単位セルのアレイにおける第2の単位セルの幾何学的構造物の寸法とは異なるように決定される。
【0080】
このことは、単位セルのアレイにおける2つの単位セルが、単位セルに入射する光ビームに対して異なる影響を有しうることを意味する。このことは、異なる単位セルが入射光ビームの異なるターゲット波長とともに使用されるように適応化されうるように使用されてもよい。従って、単位セルのアレイは、入射光ビームの異なる波長とともに使用されるように設計されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図2a】アレイにおける単位セルの構成の概略図である。
【
図2b】アレイにおける単位セルの構成の概略図である。
【
図2c】アレイにおける単位セルの構成の概略図である。
【
図2d】アレイにおける単位セルの構成の概略図である。
【
図6】単位セルに関連する交差点構成における電極の概略図である。
【
図7a】光学的特性のシミュレーションに係る単位セルの構成の概略図である。
【
図7b】光学的特性のシミュレーションに係る単位セルの構成の概略図である。
【
図7c】光学的特性のシミュレーションに係る単位セルの構成の概略図である。
【
図7d】光学的特性のシミュレーションに係る単位セルの構成の概略図である。
【
図8a】
図7aに示す単位セルの構成の反射率を示すグラフを示す。
【
図8b】
図7aに示す単位セルの構成の反射率を示すグラフを示す。
【
図8c】
図7aに示す単位セルの構成の反射率を示すグラフを示す。
【
図8d】
図7aに示す単位セルの構成の反射率を示すグラフを示す。
【
図8e】
図7aに示す単位セルの構成の反射率を示すグラフを示す。
【
図8f】
図7aに示す単位セルの構成の反射率を示すグラフを示す。
【
図9b】選択された3つの場合(
図8d~
図8fにおいて白円により示す)の反射率を示す。
【
図10】
図7bに示す単位セルの構成におけるスペーサの厚さの関数として達成可能である反射率を示すグラフである。
【
図11a】
図7bに示す単位セルの構成の反射率を示すグラフを示す。
【
図11b】
図7bに示す単位セルの構成の反射率を示すグラフを示す。
【
図11c】
図7bに示す単位セルの構成の反射率を示すグラフを示す。
【
図11d】
図7bに示す単位セルの構成の反射率を示すグラフを示す。
【
図11e】
図7bに示す単位セルの構成の反射率を示すグラフを示す。
【
図11f】
図7bに示す単位セルの構成の反射率を示すグラフを示す。
【
図13】光学的特性のシミュレーションに係る単位セルのもう1つの構成の概略図である。
【
図14a】結晶及び非晶質のGST状態の間においてARCの異なる厚さ(設計波長に依存する)について反射率を示すグラフを示す。
【
図14b】結晶及び非晶質のGST状態の間においてARCの異なる厚さ(設計波長に依存する)について反射率を示すグラフを示す。
【
図14c】結晶及び非晶質のGST状態の間においてARCの異なる厚さ(設計波長に依存する)について反射率を示すグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0082】
本発明概念の上述の目的、特徴、及び優位点は、追加の目的、特徴、及び優位点とともに、添付の図面を参照して、以下の例示的かつ非限定的な詳細な説明によって、一層よく理解されるであろう。図面において、別途言及していない限り、同じ参照符号は同様の構成要素に使用される。
【0083】
ここで
図1を参照して、光デバイス100について概略的に説明する。光デバイス100は、複数の単位セル104からなるアレイ102を備えてもよい。単位セル104のアレイ102における単位セルは、単位セル104の光学的特性を制御するために、従って単位セル104のアレイ102の光学的応答を制御するために、個々にアドレス指定可能であってもよい。
【0084】
各単位セル104は個々にアドレス指定可能であってもよい。しかしながら、必ずしも、単位セル104の各々かつすべてが個々にアドレス指定可能でなくてもよいことが理解されるべきである。
【0085】
単位セル104の光学的特性を制御することによって、アレイ102に入射する光ビーム106に対する影響は制御されてもよい。従って、単位セル104は、組み合わせとして、入射光ビーム106に対する制御可能な影響を形成してもよい。従って、アレイ102は、入射光ビーム106に基づいて三次元光場の分布を形成及び制御するために使用されてもよい。
【0086】
三次元光場は、例えば、ホログラフィック画像を表示するために使用されてもよい。制御可能な単位セル104のおかげで、形成されたホログラフィック画像における変化を提供することができる。このことは、ホログラフィック画像のビデオを表示するために光デバイス100が使用されうることを意味する。
【0087】
しかしながら、三次元光場の制御が他のアプリケーションでも同様に有用かもしれないことは理解されるべきである。三次元光場を形成するための光デバイス100は、入射した光ビームの三次元における制御された分布を投影してもよく、それは、制御された照明のための任意のタイプのアプリケーションにおいて使用されてもよく、三次元光場に基づく表示画像の形成と必ずしも組み合わされなくてもよい。
【0088】
光デバイス100は、入射光ビーム106を反射又は透過するためにセットアップされてもよい。光ビーム106は、レーザビームである光ビーム106のようなコヒーレント光源によって形成されてもよい。それは、単位セル104のアレイ102に対する入射光場の適切に定義された関係を提供し、従って、それは、単位セル104のアレイ102を用いて三次元光場の所望の分布を形成する基礎としての使用に適している。
【0089】
単位セル104は、相変化材料(PCM)層を含む共振定義層を備える。共振定義層は、PCM層の中に少なくとも部分的に存在しうる幾何学的構造物を定義するようにパターン形成される。幾何学的構造物の寸法は、少なくとも、共振定義層の面において決められる。この面は、単位セル104のアレイ102が形成される基板108に対して平行であってもよい。
【0090】
幾何学的構造物の寸法を決定することは、共振定義層の面において共振を定義するように設計される。幾何学的構造物及び単位セル104は、単位セル104の光学的特性を、光デバイス100の使用が意図される入射光ビーム106の波長に適応化するように設計されてもよい。
【0091】
幾何学的構造物の異なる寸法は、入射光の波長に依存して、単位セル104の共振を変化させうる。従って、幾何学的構造物の寸法の特定の選択を用いることによって、光デバイス100は特定の波長の使用に対して適応化されうる。従って、幾何学的構造物の寸法に対する共振の波長依存性は、光デバイス100とともに使用される波長に関連して、幾何学的構造物の適切な寸法を選択するために使用されてもよい。
【0092】
共振定義層の幾何学的構造物を適切に設計することによって、局所的な共振を引き起こすことができる。ここで、局所的な共振は、これらの共振のスペクトル位置がPCMの材料状態に強く依存ながら、幾何学的構造物の正確な寸法に強く依存する。
【0093】
共振定義層の面における局所的な共振を引き起こすこと、及び、これらの共振がPCMの状態に非常に強く依存することのおかげで、ある単位セル104に対して設定されたPCMの状態に依存して、当該単位セル104の入射光への影響における非常に大きな差が提供されうる。このことは、三次元光場の分布の非常に正確な制御を可能にし、また、形成された三次元光場において高分解能を供給することを可能にしうる。
【0094】
以下では、共振定義層の面における共振を用いて単位セル104の光学的特性を制御することを可能にしうる、幾何学的構造物の多数の異なる実施形態が提供される。
【0095】
そのような幾何学的形状のすべては、「切り替え可能」又は「調整可能」なアンテナとして動作し、これにより、PCMの状態を切り換えることで単位セル104の光学的特性を制御することを可能にしうる。
【0096】
単位セル104において、相変化材料GST(Ge2Sb2Te5)が適切に使用されてもよい。GSTは、(冷却率を制御することにより)結晶状態及び非晶質状態の間で熱的に切り換えられてもよく、従って、PCMの状態を制御する簡単な方法を供給しうる。下記の例示的な結果において、GSTが使用される。しかしながら、代わりに、他の相変化材料が使用されてもよいことが理解されるべきである。
【0097】
PCMとしてGSTを用いる特定の場合において、材料を切り換えることは、構造物を、プラズモニック(結晶状態)アンテナから誘電体(非晶質状態)アンテナに変化させる。これらは、非常に似通った共振を、ただし異なる波長において示し、これにより、与えられた波長において、構造物を高反射状態から低反射状態に変化させることを可能にする。
【0098】
GSTの状態を切り換える際、光学的特性は有意に変更され、その結果、屈折率及び誘電率の実数部及び虚数部の両方において大きな変化をもたらす。その結晶状態において、GSTが誘電率の負の実数部を有することが注目されるべきであり、このことは、それが金属の挙動を示し、従ってプラズモニック(plasmonic)な共振をサポートすることを意味する。その非晶質状態において、GSTは、誘電率の正の実数部及び大きな虚数部を有し、このことは、それが、大きな損失のある誘電体として動作することを意味する。
【0099】
単位セル104におけるPCMは、(GSTに関して)熱的に切り換えられうるが、それに限定されない。異なる実施形態では、電気光学的材料及び磁気光学的材料が代替例実施例として使用されてもよいことが理解されるべきである。
【0100】
以下で議論される実施形態において、幾何学的構造物の2つの主な幾何学的形状が考慮される。これらの2つの主な幾何学的形状は、互いに逆のものとしてみなされてもよく、従って、主な幾何学的形状のいずれかが、幾何学的構造物の面内の共振を定義するために使用されてもよい。
【0101】
第1の幾何学的形状は、パターン形成されたPCM層からのナノ粒子に関する。第2の幾何学的形状は、共振定義層において形成されたキャビティに関する。このキャビティは、パターン形成されたPCM層によって形成されてもよい。両方の幾何学的形状において、PCMを第1及び第2の状態の間で切り換えることは、幾何学的構造物の共振を変更する。
【0102】
ナノ粒子又はキャビティにおける局所化された共振は、面内及び面外の寸法に強く依存し、これにより、単位セル104の光学的特性の非常に強い変調を生じさせる。
【0103】
ここで
図2a~
図2dを参照し、単位セル104において使用される関連する寸法に関して、ナノ粒子を含む単位セル104の構成を備える第1の実施形態について議論し、また、キャビティを含む単位セル104の構成を備える第2の実施形態について議論する。
【0104】
図2aは、隣接した2つの単位セル104のスタック110を示す第1の実施形態の側面図を示す。
図2bは、第1の実施形態の上面図を示す。同様に、
図2cは、隣接した2つの単位セル104のスタック130を示す第2の実施形態の側面図を示す。
図2dは、第2の実施形態の上面図を示す。
【0105】
第1の実施形態では、スタック110は、電極112と、電極112の上にナノ粒子114を形成するパターン形成されたPCM層と、例えば酸化物116の形式を有する、周囲の誘電体材料116とを備える。
【0106】
第2の実施形態では、スタック130は、電極132と、キャビティ136を定義するためのパターン形成された壁部を備えるパターン形成されたPCM層134と、キャビティ136を充填し、また、PCM層134の上に配置された誘電体材料138とを備える。酸化物140は、隣接した単位セル104の間において電極132を分離するために、また、隣接した単位セル104のパターン形成されたPCM層134を分離するために配置される。
【0107】
第1の実施形態及び第2の実施形態の両方において、共振定義層は、パターン形成されたPCM層114,134に形成される。幾何学的構造物の寸法は、ナノ粒子114の半径Rによって定義されるか、又は、パターン形成されたPCM層134によって定義されたキャビティ136によって定義される。さらに、幾何学的構造物のもう1つの寸法は、ナノ粒子114の厚さTによって、また、キャビティ136の対応する深さDによって定義される。
【0108】
電極112及び132は導体線の一部であってもよく、これにより、電極112,132及びPCM層114,134を介して電流が流れて局所的な加熱を提供することができ、従って、単位セル104のPCMの状態の切り換えを制御することができる。制御信号が電極112,132によって多数の異なる方法で提供されてもよいことが理解されるべきである。例えば、PCM層114,134の下方における電極112,132は、2つの電極112、132を提供するために、また、電極のうちの少なくとも1つに接続された電圧を変化させることで単位セル104を制御するために、2つに分離されてもよい。さらなる代替例として、単位セル104のスタック110,130の上に第2の電極が提供されてもよく、これにより、電極のうちの少なくとも1つに接続された電圧を変化させることで単位セル104が制御されうる。
【0109】
第1及び第2の実施形態のナノ粒子114の上及びキャビティ136の上に、反射防止膜(anti-reflective coating: ARC)が配置されてもよい。反射防止膜は、上で議論したように、周囲の1つ又は複数の誘電体材料によって少なくとも部分的に形成されてもよいが、ARCを形成するための別個の材料層が使用されてもよい。
【0110】
電極、PCM層、ARC層、及び周囲の酸化物のパターン形成が、多数の異なる方法で変更されてもよく、また、後述するように特定の実施形態に依存することが理解されるべきである。単位セル104のスタックにおけるさらなる機能を含みうる特定の実施形態は、単位セルの光学的性能をさらに調整することを可能にしうる。さらに、隣接セル104の熱的及び/又は電気的な分離のような、他の追加の利点を単位セル104に提供するために、機能が包含又は変更されてもよい。
【0111】
図2a~
図2dに示すように、単位セル104のアレイ102は、単位セルの周期性を提供する。単位セル104のサイズを定義する周期Pは、有利な点として、過度に大きくされなくてもよい。
【0112】
λが、光デバイス100が使用される光の波長である場合、λより小さい周期性を使用することは、ゴーストの形成を抑える際に有利となりうる。一実施形態によれば、周期性は、P<λ/2に設定されてもよい。
【0113】
簡単に製造される光デバイス100を提供するために、周期性はP>2.5Rに設定されてもよい。しかしながら、いくつかの実施形態において、周期性がP>2Rに設定されてもよいように、単位セル104は互いに非常に接近して配置されてもよい。
【0114】
周期性は、有利な点として、波長よりもかなり小さくてもよい。そのような場合、各単位セル104は、オン又はオフの点散乱器とみなすことができ、これにより、光デバイス100によって散乱された光の位相にわたって改善された制御を達成することができる。
【0115】
幾何学的構造物の寸法は、単位セル104のスタック110,130の構成に依存してもよく、また、材料と、従って材料特性との組み合わせに依存してもよい。以下、このことを説明し、いくつかの構成に適した寸法を示す。
【0116】
所望の光学的特性に基づいて、幾何学的構造物の寸法が選択されるべきパラメータの範囲を定義することが可能となる。上述のように、幾何学的構造物の寸法は、円形形状の半径Rによって定義されてもよい。他の形状については、幾何学的構造物のサイズ又は長さは、正方形の場合における辺の長さWのような、幾何学的構造物のエッジのサイズに対応してもよい。この点で、サイズは、W=2Rに対応するものとして、半径に比較されてもよい。従って、円形形状については、円の直径は、幾何学的構造物の長さに対応するともいえる。
【0117】
幾何学的構造物は、好ましくは、次の範囲内にあってもよい。
【0118】
最小半径は10nmに設定されてもよい。これは、主にプロセスによって、従って、微細構造物を形成するプロセスの発展によって制限され、最小半径はさらに小さく設定されてもよい。
【0119】
最大半径は、周期性の制約及び使用される波長に基づいて指定されてもよい。最大の周期性は、上述したように、Pmax=λ/2によって与えられてもよい。さらに、周期性は、P=αR(ここで、2<α≦5)として、半径Rに関連してもよい。αの下限は上述したように与えられるが、稠密な散乱アレイを有することが所望される可能性があり、従ってαがおそらくは5より大きくされることがないので、5の上限が選択されてもよい。これは、最大半径Rmax=λ/2αの式を与える。
【0120】
半径のサイズと同様に、幾何学的構造物の厚さ/深さが選択されうる範囲が定義されてもよい。
【0121】
最小の厚さ/深さは20nmに設定されてもよい。シミュレーション及びテストによれば、より小さな厚さ/深さのときに所望の面内の共振を示さないことがわかる。最大の厚さ/深さは、所望の光学的特性を与えるために、2R以下に設定されるべきである。
【0122】
ある実施形態では、厚さ/深さの範囲は、0.5R≦厚さ/深さ≦2Rとして定義されてもよい。所望の光学的特性を達成するために、幾何学的構造物の寸法はこの範囲内で選択されてもよい。
【0123】
上述のように、ARCは幾何学的構造物の上に配置されてもよい。シミュレーション及びテストによれば、ARCとしての機能が、キャビティ/ナノ粒子領域及び中間のエリアにおける散乱光/反射光の組み合わされた影響に依存するので、ARCの厚さが平坦なフィルムスタックとは異なることを必要としうることがわかる。
【0124】
ARCの屈折率nARCは、nsurroundings<nARC<nreflective layerとして定義されてもよい。屈折率nARCは、有利な点として、周囲に関してかなり高くされてもよい。このことは、光がより効率的にトラップされることを意味しうる。
【0125】
さらに、ARCの理論的な最適な厚さtARCは、光の垂直の入射に対して、tARC=(2m+1)λ/4nARCによって与えられてもよい。ここで、mは整数(m=0,1,2,…)である。
【0126】
さらに、組み合わされた層のスタックにおいて、理論的な最適値よりわずかに小さい誘電体ARC層の最適な厚さが発見されるかもしれない。この最適な厚さは、ARC層が上に位置する層の小さな深さと、そのような層において引き起こされる局所化された共振とに依存しうる。
【0127】
ここで
図3a~
図3lを参照し、ナノ粒子114を備える単位セル104のスタック110のいくつかの異なる構成を開示する。これらの構成は、様々な組み合わせにおいて存在しうるいくつかの特徴を示す。従って、スタック110の構成の特徴のさらなる組み合わせが企図されてもよい。
【0128】
スタック110の所望の光学的特性を達成するために、スタック110における異なる特徴の寸法が変更されてもよく、また、適切な寸法が選択されてもよいことは理解されるべきである。以下で議論する構成のうちのいずれにおいても、PCM層114,134の幾何学的構造物は、構造物のサイズ(例えば半径R)及び厚さ/深さを選択することで設計されてもよい。
【0129】
図3a~
図3lにおけるスタック110の各々は、電極112と、電極112におけるパターン形成されたナノ粒子とを備える。電極112は金属フィルムであってもよく、それは反射面を提供してもよい。
【0130】
図3aにおいて、周囲の誘電体材料116は、パターン形成されたナノ粒子114の上及び横に配置される。誘電体材料116は、ナノ粒子114を包囲する材料の屈折率を定義する。
【0131】
図3bにおいて、周囲の誘電体材料116は、パターン形成されたナノ粒子114の上及び横に配置される。誘電体材料116の厚さが定義される。誘電体材料116の屈折率に加えて厚さの値は、スタック110の所望の光学的特性を設計する際に選択されてもよい。
【0132】
図3cにおいて、第1の誘電体材料118は、ナノ粒子114の上に配置され、ナノ粒子114と共通の横方向の寸法を有するようにパターン形成されてもよい。第2の誘電体材料116は、ナノ粒子114及び第1の誘電体材料114のスタックを包囲するように配置される。第1の誘電体材料118は第2の誘電体材料116より大きな屈折率を有してもよい。第1の誘電体材料118及び第2の誘電体材料116の厚さ及び屈折率は、スタック110の所望の光学的特性を設計する際に選択されてもよい。
【0133】
図3dにおいて、周囲の誘電体材料116は、パターン形成されたナノ粒子114の上及び横に配置されてもよい。周囲の誘電体材料116の横方向のサイズは、周囲の誘電体材料116の幅を定義してもよい。第1の誘電体材料116の厚さ、幅、及び屈折率は、スタック110の所望の光学的特性を設計する際に選択されてもよい。
【0134】
図3eにおいて、第1の誘電体材料116は、パターン形成されたナノ粒子114の上及び横において固定された厚さを有する層を提供するように構成される。層の第1の誘電体材料116の厚さ及び屈折率は、スタック110の所望の光学的特性を設計する際に選択されてもよい。
【0135】
図3fにおいて、誘電体材料118は、ナノ粒子114の上に配置され、ナノ粒子114と共通の横方向の寸法を有するようにパターン形成されてもよい。ナノ粒子114及び第1の誘電体材料118のスタックは、空気又は周囲環境によって包囲されてもよい。誘電体材料118の厚さ及び屈折率は、スタック110の所望の光学的特性を設計する際に選択されてもよい。
【0136】
図3gにおいて、
図3fに示すナノ粒子114及び誘電体材料118の上に追加の誘電体材料120が配置され、ナノ粒子114及び誘電体材料118と共通の横方向の寸法を有するようにパターン形成されてもよく、これにより、ナノ粒子114、第1の誘電体材料118、及び第2の誘電体材料120のスタックが形成され、これは、空気又は周囲環境によって包囲されてもよい。第1の誘電体材料118は第2の誘電体材料120より大きな屈折率を有してもよい。第1の誘電体材料118及び第2の誘電体材料120の厚さ及び屈折率は、スタック110の所望の光学的特性を設計する際に選択されてもよい。
【0137】
図3hにおいて、ナノ粒子114と共通の横方向の寸法を有する電極112の一部の上にナノ粒子114が配置されるように、ナノ粒子114はパターン形成された電極112の上に配置される。電極112の一部は、電極112の残りの部分よりも大きな厚さを有してもよい。パターン形成された電極112の上のナノ粒子114のスタックは、誘電体材料116によって包囲されてもよい。ナノ粒子114と共通の横方向の寸法を有する電極112の一部の厚さ、誘電体材料118の厚さ及び屈折率は、スタック110の所望の光学的特性を設計する際に選択されてもよい。
【0138】
図3i~
図3lにおいて、電極112の異なるパターン形成を示す。電極112のこれらの構成は、上述したように、ナノ粒子114と、ナノ粒子114の上に配置された/包囲する層との構造物のうちの任意のものと組み合わされてもよい。
【0139】
図3iにおいて、電極112が単位セル104のエッジまで延在しないことを示す。
このことは、電極112が隣接した単位セル104の電極から分離されることを意味する。
【0140】
図3jにおいて、電極が2つの部分112a,112bに分離され、これらがそれぞれナノ粒子114と接触しうることを示す。このことは、有利な点として、例えば、ナノ粒子114を介して電流を流れさせることでナノ粒子114の加熱を制御し、従ってPCMの状態を制御するように、電極112a,112bに異なる電位を提供するために使用されてもよい。
【0141】
図3kにおいて、電極112a,112bの間を分離するために、電極112a,112bの間の空間が誘電体材料122によって充填されてもよいことを示す。さらに、隣接した単位セル104の電極間の空間は、単位セル104を分離するために誘電体材料122によって充填されてもよい。
【0142】
図3lにおいて、ナノ粒子114の上に電極124が配置されることを示す。電極124は誘電体材料116の上に配置されてもよく、それは、
図3bの構成に対応するナノ粒子114を包囲してもよい。ナノ粒子114の上に配置された電極124を備えた他の構成が使用されてもよいことが理解されるべきである。例えば、電極124はナノ粒子114に接触して配置されてもよい。電極112,124は、PCMの状態の変化を制御するための電極ペアを形成してもよい。底部電極114に提供される電位が、PCMの状態の変化を制御するために使用されうるように、電極124は複数の単位セル104にわたって共通であってもよい。
【0143】
光が電極124を介して伝達されてナノ粒子114に達することを保証するために、ナノ粒子の上の電極124は透明であってもよい。一実施形態では、電極124は、インジウムスズ酸化物(indium tin oxide : ITO)のような導電性金属酸化物から形成されてもよい。
【0144】
電極の幾何学的形状は、個々の単位セル104を切り換えることができるように最適化されてもよい。
図3i~
図3lにおいて、複数のセルを互いに電気的に絶縁するために隣接画素の金属フィルム間にギャップが存在する、いくつかの実施例を示す。さらに、接触及び非接触モードのいずれかで、透明な上部電極が使用される実施形態を考慮してもよい。光学的共振を強めるために、電極の形状及び寸法を調整することもできる。異なる実施形態は、底部から、横方向から、又は両方の組み合わせからナノ粒子114に接触する金属電極を含む。
【0145】
ここで
図4a~
図4fを参照し、ナノ粒子114を備える単位セル104のスタック110のいくつかの異なる構成を開示する。これらの構成は、様々な組み合わせにおいて存在しうるいくつかの特徴を示す。従って、スタック110の構成の特徴のさらなる組み合わせが企図されてもよい。さらに、上述の
図3a~
図3lの構成において説明した特徴は、
図4a~
図4fの構成と組み合わされてもよい。
【0146】
スタック110の所望の光学的特性を達成するために、スタック110における異なる特徴の寸法が変更されてもよく、また、適切な寸法が選択されてもよいことは理解されるべきである。スタック110の各々は、電極112と、パターン形成されたナノ粒子114と、電極112及びパターン形成されたナノ粒子114の間のスペーサ層126とを備える。スペーサ層126の厚さ及び屈折率は、スタック110の所望の光学的特性を設計するための構成のうちの任意のものにおいて選択されてもよい。
【0147】
図4aにおいて、ナノ粒子114は周囲の誘電体材料116に埋め込まれ、これはスペーサ層126を形成し、また、パターン形成されたナノ粒子114の上及び横に配置される。誘電体材料116は、ナノ粒子114を包囲する材料の屈折率を定義する。
【0148】
図4bにおいて、周囲の誘電体材料116は、スペーサ層126を形成し、パターン形成されたナノ粒子114の上及び横に配置される。誘電体材料116の厚さが定義される。誘電体材料116の屈折率に加えて厚さの値は、スタック110の所望の光学的特性を設計する際に選択されてもよい。
【0149】
図4cにおいて、第1の誘電体材料118は、ナノ粒子114の上に配置され、ナノ粒子114と共通の横方向の寸法を有するようにパターン形成されてもよい。第2の誘電体材料116は、ナノ粒子114及び第1の誘電体材料114のスタックを包囲するように配置され、また、スペーサ層126を形成する。第1の誘電体材料118は第2の誘電体材料116より大きな屈折率を有してもよい。第1の誘電体材料118及び第2の誘電体材料116の厚さ及び屈折率は、スタック110の所望の光学的特性を設計する際に選択されてもよい。
【0150】
図4dにおいて、周囲の誘電体材料116は、スペーサ層126を形成し、パターン形成されたナノ粒子114の上及び横に配置される。周囲の誘電体材料116の横方向のサイズは、周囲の誘電体材料116の幅を定義してもよい。第1の誘電体材料116の厚さ、幅、及び屈折率は、スタック110の所望の光学的特性を設計する際に選択されてもよい。
【0151】
図4eにおいて、スペーサ層126はパターン形成され、ナノ粒子114と共通の横方向の寸法を有するようにパターン形成されてもよい。ナノ粒子114はスペーサ層126の上に配置される。さらに、誘電体材料118は、ナノ粒子114の上に配置され、ナノ粒子114と共通の横方向の寸法を有するようにパターン形成されてもよい。スペーサ層126、ナノ粒子114、及び誘電体材料118のスタックは、空気又は周囲環境によって包囲されてもよい。誘電体材料118はスペーサ層126より大きな屈折率を有してもよい。誘電体材料118の厚さ及び屈折率は、スタック110の所望の光学的特性を設計する際に選択されてもよい。
【0152】
図4fにおいて、
図4eに示すものに対応する構成を示す。しかしながら、ここで、誘電体材料118及びスペーサ層126は同じ材料から形成される。ここで、電極112は、隣接した単位セル104の電極から分離されるようにパターン形成されてもよいことがわかる。
【0153】
上で議論したいくつかの実施形態において(
図3b~
図3d、
図3l、
図4b~
図4fを参照)、誘電体スタックの厚さは、反射防止膜の影響を実現するように設計することができる。誘電体環境は、低屈折率の材料(例えばSiO
2)又は高屈折率の材料(例えばSiN)であってもよい。
【0154】
これらの構成は、層のスタックがPCM粒子からの反射を最小化するが、粒子間の金属フィルムに対してARCとして作用しないように設計可能である。スタックのまわりに空気又は周囲環境が提供される場合、スタック110を保護するために薄い誘電体ライナー層を使用することが有利かもしれない。
【0155】
いくつかの実施形態では、(多層の)ARCは、ナノ粒子114の上にパターン形成される(
図3c、
図3f、
図3g、
図4e~
図4fを参照)。
【0156】
ここで
図5a~
図5lを参照し、キャビティ126を備える単位セル104のスタック130のいくつかの異なる構成を開示する。これらの構成は、様々な組み合わせにおいて存在しうるいくつかの特徴を示す。従って、スタック130の構成の特徴のさらなる組み合わせが企図されてもよい。
【0157】
スタック110の所望の光学的特性を達成するために、スタック110における異なる特徴の寸法が変更されてもよく、また、適切な寸法が選択されてもよいことは理解されるべきである。以下で議論する構成のうちのいずれにおいても、幾何学的構造物は、キャビティ136のサイズ(例えば半径R)及び深さを選択することで設計されてもよい。
【0158】
図5aにおいて、パターン形成されたPCM層134はキャビティ136を定義する。誘電体材料138は、キャビティ136を充填し、PCM層134の上に配置される。PCM層134及びキャビティ136の上における誘電体材料138の厚さと、誘電体材料116の屈折率とは、スタック130の所望の光学的特性を設計する際に選択されてもよい。
【0159】
図5bにおいて、第2の誘電体材料142は誘電体材料138の上に形成される。第2の誘電体材料142は誘電体材料138より小さな屈折率を有してもよい。誘電体材料138,142の厚さ及び屈折率は、スタック130の所望の光学的特性を設計する際に選択されてもよい。
【0160】
図5cにおいて、キャビティ136を充填するための材料が使用されない。パターン形成されたPCM層134及びキャビティ136は、空気又は周囲環境に露出される。ここで、PCM層134の寸法のみが、スタック130の所望の光学的特性を設計する際に選択されてもよい。
【0161】
図5dにおいて、
図5cに示すものと同様の構成を示す。ここで、PCM層134及びキャビティ136の上において、薄い金属ライナー層144を示す。このライナー層144は、キャビティ136のプラズモニックな共振を改善させる可能性があり、また、PCM層134の状態を切り換えることで幾何学的構造物に調整機能を持たせるので、良好なプラズモニックな特性及び非常に限られた厚さ(5~10nm)を有しうる。金属ライナー層144の厚さは、スタック130の所望の光学的特性を設計する際に選択されてもよい。
【0162】
図5eにおいて、キャビティ136はバルクPCM層134に形成される。従って、PCM層134の第1の厚さは、キャビティ136の底面を提供するために定義される。第1の厚さより大きな第2の厚さを有するパターン形成された壁部がPCM層134に形成されるように、キャビティ136はPCM層134にパターン形成される。キャビティ136及びPCM層134は、空気又は周囲環境に露出されてもよい。PCM層134の第1の厚さは、光学的スタック130の所望の特性を設計する際に選択されてもよい。
【0163】
図5fにおいて、
図5eに示すものに対応するキャビティ136が形成される。PCM層134のパターン形成された壁部において、誘電体材料146のパターンは、PCM層134のパターン形成された壁部に対応するパターンを有して形成される。キャビティ136と、PCM層134におけるパターン形成された壁部と、誘電体材料146とは、空気又は周囲環境に露出されてもよい。PCM層134の第1の厚さ、誘電体材料146の厚さ及び屈折率は、光学的スタック130の所望の特性を設計する際に選択されてもよい。
【0164】
図5gにおいて、
図5fに示すものに対応する構造物が形成される。第2の誘電体材料148は、第1の誘電体材料146の上に配置される。第2の誘電体材料148は、第1の誘電体材料146より小さな屈折率を有してもよい。キャビティ136と、PCM層134におけるパターン形成された壁部と、第1及び第2の誘電体材料146,148とは、空気又は周囲環境に露出されてもよい。PCM層134の第1の厚さ、第1の誘電体材料146及び第2の誘電体材料148の厚さ及び屈折率は、光学的スタック130の所望の特性を設計する際に選択されてもよい。
【0165】
PCM層134におけるパターン形成された壁部の上に配置された誘電体材料146,148の代わりに、又はそれに加えて、パターン形成された壁部の上に金属層が配置されてもよいことが理解されるべきである。
【0166】
図5hにおいて、
図5eに示すものに対応するキャビティ136が形成される。ここで、PCM層134及びキャビティ136の上において、薄い金属ライナー層144を示す。このライナー層144は、キャビティ136のプラズモニックな共振を改善させる可能性があり、また、PCM層134の状態を切り換えることで幾何学的構造物に調整機能を持たせるので、良好なプラズモン特性及び非常に限られた厚さ(5~10nm)を有しうる。PCM層134の第1の厚さ及び金属ライナー層144の厚さは、スタック130の所望の光学的特性を設計する際に選択されてもよい。
【0167】
図5iにおいて、パターン形成された壁部が電極132に形成されるように、電極132においてキャビティ136の一部を形成するパターンが電極132において形成される。PCM層136のパターンは、キャビティ136を包囲する電極132のパターン形成された壁部の上において形成される。キャビティ136と、電極132におけるパターン形成された壁部と、PCM層134とは、空気又は周囲環境に露出されてもよい。電極132のパターン形成された壁部の厚さ及びPCM層134の厚さは、光学的スタック130の所望の特性を設計する際に選択されてもよい。
【0168】
図5jにおいて、単位セル104の共振定義層は、電極132の上に配置されたPCM層134を備える。さらに、PCM層134の上に金属層150が配置される。金属層150は、PCM層134の上にキャビティ136を定義するようにパターン形成され、PCM層134はキャビティ136の底面を形成する。キャビティ136及び金属層150は、空気又は周囲環境に露出される。PCM層の厚さは、スタック130の所望の光学的特性を設計するように選択されてもよい。
【0169】
図5kにおいて、
図5jに示すものに対応する構造物を示す。誘電体材料138は、キャビティ136を充填し、パターン形成された金属層150の上に配置される。誘電体材料138の厚さ及び屈折率と、PCM層134の厚さとは、スタック130の所望の光学的特性を設計する際に選択されてもよい。
【0170】
図5lにおいて、共振定義層は、PCM層134及びパターン形成された金属層150の間に配置されたスペーサ層152を備える。スペーサ層152を形成する誘電体材料154は、金属層152においてキャビティ136を充填しかつ金属層152及びキャビティ136の上に配置されて金属層152を包囲するように構成されてもよい。金属層152の上の誘電体材料154の厚さ、スペーサ層152の厚さ、誘電体材料154の屈折率、及びPCM層134の厚さは、スタック130の所望の光学的特性を設計するように選択されてもよい。
【0171】
図5a~
図5lの構成において、図示していなくても、電極132を形成する金属フィルム132の上のPCM層134において共振キャビティ136が形成されてもよく、また、金属フィルム132の上のバルクPCM層134において共振キャビティが形成されてもよく、また、PCM層134の上の金属層150に共振キャビティが形成されてもよいことが示される。
【0172】
共振キャビティ136は、誘電体マトリクスに埋め込まれていてもよい(例えば、
図5a~
図5b、
図5k~
図5lを参照)。いくつかの実施形態では、誘電体層スタックは、キャビティ136が形成されるPCM層又は金属層のための反射防止膜として作用するように設計される。このことは、PCM層及び金属層のうちの一方のためのARCとして機能するように誘電体層スタックを設計することを含んでもよい。
【0173】
共振キャビティ136が空気/周囲環境に露出されてもよいことが示される。これらの場合において、構造物を保護するための薄い誘電体ライナー層を提供することが有利となりうる。
【0174】
図5lにおいて、下方の金属層(電極)132と共振キャビティとの間に誘電体スペーサ層が配置されることが示される。電極132及びキャビティ136の間にスペーサ層を提供する本テーマの変形が、バルクPCMにおけるキャビティのような、キャビティ136の底部におけるPCMの厚さが十分に小さい他の実施例でも可能であることが理解されるべきである。
【0175】
薄い金属ライナー層144が示されるいくつかの実施形態において(
図5d、
図5hを参照)、ライナー144は電極としても機能することができる。
【0176】
図5a~
図5lの構成のうちのいずれにおいても、電極132における隣接した単位セル104の間及び/又はキャビティ136を定義する構造物の間においてギャップが配置されてもよいことが理解されるべきである。ギャップは、例えば、1つの単位セル104のPCMの状態の切り換えを制御することが隣接した単位セル104に影響しないように、熱的に分離するために設けられてもよい。
【0177】
図3~
図4について上で議論した電極112の構成のうちのいずれも、
図5a~
図5lの構成とともに使用されてもよいことも理解されるべきである。
【0178】
パラメータを適切に選択することによって、複数の波長で動作する単位セルの構成を設計することが可能となる。以下に示す実施例から、キャビティの面内の寸法がわずかに異なる場合であっても、単一の単位セル構成が2つの実質的に異なる波長に適合しうることがわかる。従って、そのようなキャビティの面内の対称性を破ること(例えば、長方形又は楕円の形状)によって、2つの波長が互いに直交する直線偏光に対応する場合、同じキャビティで当該2つの波長を同時に使用することができる。ナノ粒子114を備える単位セルの構成が2つの異なる波長に適合するように同様に設計されうることも理解されるべきである。
【0179】
単位セル104の全体的な光学的特性が複数の共振を組み合わせることで達成される場合、異なる共振を用いることで、単一の単位セル構成のうちで2つ(又はより多く)のターゲット波長のそれぞれにおいてわずかに低減した全体性能をもたらすトレードオフが生じる余地がある。
【0180】
そのため、3つの異なる波長に対して単一の単位セル構成を設計できる可能性もある。例えば、六角形形状が使用されてもよく、これにより、単位セルは、3つの異なる波長で所望の特性を提供するように適応化されうる。
【0181】
本アプローチによって、PCMの状態を変化させるとき、複数の波長に係るすべての状態が同時に切り換えられるが、単位セルがある波長についてオンされ(反射/透過)、他の波長についてオフされる(非反射/非透過)ような方法で、単位セル構成を設計することが可能となる。例えば、単位セル104は、ある波長では大幅に反射し、他の波長では大幅に吸収する第1の(例えば、結晶/非晶質の)状態を有するように構成される。
【0182】
ここで
図6を参照し、電極202,204の特定の構成について議論する。
【0183】
電極202は、PCMを切り換えるために、セルを底部からアドレス指定してもよい。切り換えが熱的に支援されうることが企図される場合、電極202は必ずしもPCMに接している必要はない。
図6の構成において、単位セル104を底部からアドレス指定する電極202は、単位セル104の光学的性能に対する最小の干渉を有しうる。電極202,204の正確な寸法は、単位セル104の光学的性能をさらに向上させるもう1つの設計パラメータとなりうる。
【0184】
図6に示すように、各単位セル104の位置において、単位セル104の列に沿って延在する上部電極202が、単位セル104の行に沿って延在する底部電極204と交差するように、電極202及び204は、差点のアーキテクチャとして配置されてもよい。従って、各単位セル104は、底部電極202及び上部電極204において提供される組み合わされた信号によってアドレス指定されてもよい。
【0185】
上部電極204は、例えば、
図5j~
図5lに示す実施形態のうちのいずれか1つに従って、金属層150においてキャビティ136を形成するためにパターン形成さえされてもよい。そのような実施例において、信号線に関するキャビティ136の相対的な寸法は、光学的性能を設計するために選択されうるもう1つのパラメータとなりうる。
【0186】
上述した構成のうちの少なくとも一部において、単位セル104は、底部の金属電極を透明な導電性電極で置き換えることで、三次元光場を透過に基づいて形成するために使用されうることが理解されるべきである。
【0187】
ここで、いくつかの実施形態に係る幾何学的構造物の適切な寸法の例を挙げるために、いくつかのシミュレーション結果を提示する。
【0188】
提示したすべてのシミュレーションでは、金属層(底部電極)としてアルミニウムを使用し、PCMとしてGSTを使用し、誘電体材料として屈折率1.46及び1.9をそれぞれ用いるSiO2及びSiNを使用した。共振する構造物は、一般的に用いられている青、緑、及び赤のレーザ波長である488、532、及び633nmの波長をそれぞれターゲットとして設計された。すべての共振キャビティのプロットについて、明示的に指定されていない場合、寸法をナノメートルで示す。
【0189】
共振する単位セルに対する最初の3Dシミュレーションについて、円盤形状のナノ粒子又は円筒状キャビティの寸法は、各場合について、それらの半径及び厚さ又は深さの関数としてとして定義される。
【0190】
これらのナノ構造物の寸法をシミュレートする場合、周期Pは半径の4倍(デューティサイクル50%)に固定され、周期的な境界条件が使用される。これは実際の例では変更されてもよいが、下記のシミュレーションは、原理の証明のためになお使用されうる。
【0191】
図7a~
図7dは、単位セル104として機能するように調査された
図3a及び
図4aの構成に対応する、2つの異なるGSTナノ粒子の幾何学的形状の概略的な概要を示す。
図7aにおいて、アルミニウムフィルムの上に直接的に配置された簡単な円盤形状のナノ粒子を示し、
図7bにおいて、薄いSiO
2スペーサによってアルミニウムフィルムから分離された同じ粒子を示す。
【0192】
両方の場合において、ナノ粒子114は酸化物マトリクスに埋め込まれ、従って、この場合、適切に定義された面外のファブリーペロー型キャビティは存在しない。本開示のいくつかの実施形態において、これは、性能をさらに向上させるために単位セル104を設計する際に選択するべき1つのより多くのパラメータとなりうる。
【0193】
図7a及び
図7bの構成についてナノ粒子114の半径R及び厚さTにわたって単に掃引する場合、GSTの両方の状態について、強く共振する挙動が観察され、その結果、2つの離調した共振状態をもたらす。
図7aの単位セル104の性能を評価するために、われわれは、
図8a~
図8fにおいて、GSTの2つの状態の間における反射率を見る。
図8a~
図8cのグラフにおいて、結晶/非晶質の反射率を示すが、
図8d~
図8fのグラフにおいて、非晶質/結晶の反射率を示す。
【0194】
反射率によれば、両方のGST状態において強い共振が存在することは明らかであるが、最大反射率に関して、結晶状態が共振しているときの粒子の寸法に対して、最高値が観察される。
図9aは、反射スペクトルを示す。
図9bは、青色、緑色、及び赤色光をターゲットとする選択された3つの場合(
図8d~
図8fにおいて白円により示す)の反射率を示す。
図9bの破線は、ナノ粒子と同じ厚さの連続フィルムに係る反射率を示し、観察された効果に対する局所化された共振の影響を示す。
【0195】
明らかに、同等の厚さを有するフィルムスタックがかなり平坦な応答を示すので、ナノ粒子114における局所化された共振は、単位セル104において大きな反射率を生じさせる。GST自体が、下方のアルミニウムフィルムのための、ただし低効率の反射防止膜として機能しうるということには注意する価値がある。
【0196】
空気中では、GST及びその周囲の間におけるより大きな屈折率の対照が最初の界面において大きな反射を引き起こし、従って、GST層によって形成されたキャビティにおいて入射光の小さな部分のみが共振できるので、GSTは、酸化物の場合に比較して、あまり効率的ではないARCである。上に示されたパターン形成された場合、局所化された粒子共振において、ずっとより効率的な吸収が存在し、これにより、大きな反射率を達成することができ、その結果、良好なオン/オフ比を有する効率的な画素をもたらすことは明らかである。
【0197】
図7bに示す第2のナノ粒子構成について、GST粒子の半径R及び厚さTにわたって掃引され、また、アルミニウムフィルム及び粒子の間の酸化物層のスペーサの厚さSにわたって掃引される。単位セル104として使用される最良の候補を識別するために、
図10は、ナノ粒子114の正確な寸法に無関係に、スペーサの厚さの関数として達成可能である最大反射率を示す。
図10において、結晶/非晶質(C/A)及び非晶質/結晶(A/C)の反射率が評価される。
【0198】
GST粒子及びアルミニウムの間のスペーサ層をもたない
図7aに示す構成に比較して、スペーサ層を含む場合、最大反射率がより大きな値に達していることは明らかである。これらの改善の基礎をなす機構を理解するために、両方の場合の間の相違が研究されてもよい。
【0199】
図11a~
図11fにおいて、3つの異なる波長に対する40nmのスペーサ層に係る結晶及び非晶質の間の反射率の概要を示し(
図11a~
図11cのグラフ)、また、3つの異なる波長に対する60nmのスペーサ層に係る非晶質及び結晶の間の反射率の概要を示す(
図11d~
図11fのグラフ)。ここでのスケールが、
図8a~
図8fに示すものに対して10倍までの範囲内の値で飽和していることは注目されるべきである。
【0200】
全体として、ナノ粒子114及び下方のアルミニウムフィルム112の間において適切に設計されたスペーサ層を追加する場合、両方の場合(結晶/非晶質及び非晶質/結晶)について、ずっと大きな反射率が達成される。さらに、共振を達成する面内の寸法が、スペーサ層をもたないナノ粒子の場合に非常に類似している一方、ここで、より小さなGST厚さについて、両方の状態に係る共振状態が生じることがわかる。
図12a~
図12dにおいて、選択された場合(
図11a~
図11fのグラフにおける円によって示す)に係る反射スペクトル及び対応する反射率を示す。
【0201】
これらのスペクトルから、オン/オフ比に関して改善された性能に寄与するいくつかの要因が識別されうる。GSTナノ粒子及び下方のアルミニウムフィルムの間のスペーサ層を導入することによって、GSTの両方の状態における主な共振は、スペーサ層をもたない場合に比較して、スペクトル的により分離され、これにより、GSTの2つの状態の間における反射率を増大させることをより簡単にする。
【0202】
このより大きなスペクトル分離に起因して、動作波長(低反射状態で共振が生じる波長に対応する)が、高反射状態で共振が生じる波長からスペクトル的にさらに離れているので、高反射状態における反映強度は増大される。より小さなスペーサの厚さSが、典型的には、2つのGST状態における共振モードのより大きな分離をもたらすことが注目されうる。従って、両方の状態における共振が広がり始めて、より小さなピーク振幅を有するので、特に散乱のためにより小さな周期に進む場合、より小さなスペーサの厚さSが有利となりうる。
【0203】
スペーサの厚さに係る2つの選択された場合を比較する場合、(低反射状態及び高反射状態として設計された)GSTの両方の状態について、反射率及び反射強度の両方が同じオーダーであることがわかる。非晶質の状態におけるGSTの屈折率が結晶相の場合よりも大きいという事実に起因して、すべての場合において非晶質の場合について粒子の共振がより短い波長において生じる。従って、結晶状態において最も強い吸収が発生し、これにより、より小さな共振構造物を有することを可能にし、従って、可能な最高の単位セル密度を可能にする設計のために用いることが好ましい可能性がある。
【0204】
アルミニウム及びGSTの間にスペーサ層を含む
図7bに示す構成を、スペーサ層をもたない
図7aに示す構成に対して比較する場合、低反射状態における反射強度が約1桁のオーダーだけ小さいことが明らかである。この効果は、GSTナノ粒子における共振が下方のフィルムに結合され、ここで、それが異なる位相を有するダイポールを誘導し、それにより、全体的な電界プロファイルが本質的に四極になるという事実に帰することができる。この効果は、完全な吸収器を生成するために使用された。
【0205】
ここで、単位セル110においてキャビティ136を含む構成を参照して一例が調査されるが、
図5a~
図5lに示すような異なる実施形態が同様に実施されてもよいことが理解されるべきである。
【0206】
ここで調査される特定の実施例において、(
図7に示し、先に調査した構成に比較して)1つの追加の特徴、すなわち、ARCとしてSiNを使用することが提示される。そのようなARCをナノ粒子の幾何学的形状に追加することは、潜在的に、それらの性能を向上させうる。
図13は、ARCとしてSiN138を含む、アルミニウムフィルム132の上におけるGST134において定義されたキャビティ136に係る単位セルの幾何学的形状を概略的に示す。
【0207】
この基礎的な構成において、キャビティの共振を調節するために選択されうる3つのパラメータ、すなわち、GSTにおけるキャビティの半径R及び深さDと、GSTの上におけるSiNのARCの厚さTとが存在する。
図14a~
図14cは、結晶及び非晶質のGST状態の間においてARCの異なる厚さ(設計波長に依存する)について観測される反射率を示す。
【0208】
図14a~
図14cに示す反射率について、すべてのキャビティの最適な設計において、達成された比率がずっと大きくなる一方、反射値の飽和値は30に設定された。しかしながら、さらにより小さなキャビティサイズの場合もまた、非常にコンパクトなキャビティに対して比較的大きな反射率を達成することができることがわかり、このことは、単位セル104のアレイ102における単位セル密度を増大させることに関して興味深いものとなりうる。
【0209】
図14a~
図14cにおける各グラフの右側の円により最適な設計を示し、その一方で、各グラフの左側のもう1つの円により、より低い反射率を有するよりコンパクトなバージョンを示す。円によって示すこれらの選択された場合について、
図15a~
図15dにおいて、対応するスペクトル及び波長に依存する反射率をプロットしている。
【0210】
図15a~
図15bのグラフにおいて、反射スペクトル及び反射率を、
図14a~
図14cのグラフの右側の円によって示す最適な設計について示す。
図15c~
図15dのグラフにおいて、反射スペクトル及び反射率を、
図14a~
図14cのグラフの左側の円によって示すよりコンパクトな設計について示す。
【0211】
最適化された設計の場合、局所化されたキャビティの共振は、すべての色について、約100の反射率を有して現れる。25nmの半径を有するよりコンパクトなバージョンの場合、非晶質状態において現れた共振が観察され、また、結晶状態の場合に現れたずっと小さな共振が観察される。さらに、両方のGST状態における共振が、最適化された設計に比較して広げられ(また、青及び緑の振幅において低減され)、このことは、たった100nm(4R)である低減された周期に帰することができ、これにより、隣接したキャビティにおける共振モードがずっと強く相互作用することは明らかである。
【0212】
図13の構成におけるSiN層は、良好な光学的特性を提供する際に重要な役割を果たしうる。その効果は2つあると信じられる。
【0213】
キャビティの内部における増大された屈折率は、キャビティのサイズをさらに縮小することを可能にする。
GSTの上においてSiNはARC(T~λ/4n)として機能する一方、キャビティの内側において厚さはより大きくなり(T+D)、このことは、アルミニウム電極の上においてARCとして機能するように最適化されていないことを意味する。
【0214】
上記において、本発明概念は、主として、限られた個数の実施例を参照して説明した。しかしながら、当業者によって容易に認識されるように、上に開示したもの以外の実施例もまた、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明概念の範囲内において同様に可能である。