(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】骨片の固定のための装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/74 20060101AFI20220902BHJP
A61B 17/80 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
A61B17/74
A61B17/80
(21)【出願番号】P 2020560161
(86)(22)【出願日】2018-04-27
(86)【国際出願番号】 EP2018060903
(87)【国際公開番号】W WO2019206431
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】516171908
【氏名又は名称】スウェマック・イノヴェーション・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリク・ハンソン
(72)【発明者】
【氏名】ラーシュ・エステル
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-015574(JP,A)
【文献】特表2010-523295(JP,A)
【文献】特開2016-195837(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0378973(US,A1)
【文献】特表2000-515041(JP,A)
【文献】国際公開第2017/007382(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/74-17/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直方向の大腿骨頸部の骨折(4)における骨片の固定のための装置であって、
前記装置(1)は、少なくとも3つの固定手段(5)と、固定プレート(7)とを備え、
前記少なくとも3つの固定手段(5)のそれぞれの固定手段(5)は、
内側骨片(2)内で前記固定手段(5)を固定するために構成された第1固定部分(8)と、
ねじ山を有する略平行な
少なくとも3つの穴(10)
のうちの1つ内で前記固定手段(5)をロックするためのねじ山を有する第2固定部分(9)であって、
前記略平行な少なくとも3つの穴(10)は、前記固定プレート(7)の第1端部分(11)に配置され、前記固定プレート(7)が外側骨片(3)と固定接続することなく、外側骨片(3)の外側表面の係合のために構成される、第2固定部分(9)と、
前記第1固定部分(8)と前記第2固定部分(9)との間に位置した中間部分(12)と、
を備えており、
前記中間部分(12)は、ねじ山が切られていない滑らかな外観を有し、且つ前記外側骨片(3)を通じて延在するように構成されており、それによって、前記内側骨片及び前記外側骨片に適用された力に起因して、特に下方に且つ後方に方向付けられた回転力に起因して、前記内側骨片(2)及び前記外側骨片(3)の二次的な圧縮中に、前記中間部分(12)の前記ねじ山が切られていない滑らかな外観は、前記少なくとも3つの固定手段(5)の各長手方向軸に沿って互いに対する前記少なくとも3つの固定手段(5)及び前記外側骨片(3)のスライド移動を可能にするように構成され、それによって、前記固定プレート(7)に対して且つ互いに対して前記固定手段(5)の角度位置に影響を与えることなく、前記外側骨片(3)と前記固定プレート(7)の係合の中断を可能にするように構成され、
前記装置は、少なくとも1つの傾斜防止手段(6)をさらに備え、
前記少なくとも1つの傾斜防止手段(6)は、
前記固定プレート(7)の前記第1端部分(11)と反対側の前記固定プレート(7)の第2端部分(15)においてねじ山を有する穴(14、14’、14’-1、14’-2)内で前記傾斜防止手段(6)をロックするためのねじ山を有する固定部分(13)であって、前記穴(14、14’、14’-1、14’-2)は、前記固定手段(5)のための前記穴(10)と略平行である、固定部分(13)と、
前記外側骨片と固定接続することなく、前記外側骨片(3)内に延在するように構成されるねじ山が切られていない滑らかな外観を有する係合部分(16)と、
からなり、
前記係合部分(16)は、前記内側骨片(2)及び前記外側骨片(3)の前記二次的な圧縮中に、前記少なくとも1つの傾斜防止手段(6)の長手方向軸に沿って互いに対する前記少なくとも1つの傾斜防止手段(6)及び前記外側骨片(3)のスライド移動を可能にするように構成されており、それによって、前記外側骨片(3)と前記固定プレート(7)の係合の中断を可能するように構成され、
前記内側骨片(2)及び前記外側骨片(3)の前記二次的な圧縮中に、前記内側骨片(2)
の内反の傾斜を引き起こすように試みる力に起因して、前記装置(1)の傾斜を防止する又は、その傾斜に対抗するように構成されることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記第1端部分(11)は、略三角形状のパターンで配置されたねじ穴(10)を有するように構成されており、前記略三角形状のパターンは、前記固定プレート(7)の長手方向軸(L-L)に対して角度αで角度付けされており、
前記角度αは、5度~15度の範囲内であり、好ましくは約10度である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第2端部分(15)は
傾斜防止手段(6)のための1つ又は複数のねじ穴(14’、14’-1、14’-2)を備え、
前記ねじ穴(14’、14’-1、14’-2)は、前記固定プレート(7)の長手方向軸(L-L)の横方向に配置され
、これにより前記長手方向軸(L-L)は、前記1つ又は複数のねじ穴(14’、14’-1、14’-2)の中心と交差していないように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの傾斜防止手段(6)の前記係合部分(16)は、前記外側骨片(3)を通じてその外側から反対側の内側へ延在するように構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの傾斜防止手段(6)の前記係合部分(16)は、前記外側骨片(3)を通じてその外側から反対側の内側へ延在することができ、且つ約4mm~約8mmだけそこからさらに突出するような長さで構成される、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記装置(1)は、2つの傾斜防止手段(6)を備え、
前記装置(1)の前記固定プレート(7)は、前記2つの傾斜防止手段のための2つのねじ穴(14、14’、14’-1、14’-2)を有するように構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記固定プレート(7)の前記第1端部分(11)は、略三角形状のパターンで配置された前記少なくとも3つの固定手段(5)のための前記穴を有する略三角形状を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも3つの固定手段(5)のための前記穴(10)と、前記少なくとも1つの傾斜防止手段(6)のための前記穴(14、14’、14’-1、14’-2)とは全て、前記固定プレート(7)を通じて傾斜して延在するように構成される、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの傾斜防止手段(6)のそれぞれは、ペグとして、ねじ山が切られた端部分の形態である固定部分(13)を有するように構成される、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも3つの固定手段のそれぞれは、骨ねじとして、前記骨ねじのねじ山が切られた前方端部分の形態である第1固定部分(8)を有するように構成される、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記固定手段(5)のそれぞれは、スリーブ(17)と、前記スリーブ内に配置され、且つ前記スリーブ内で移動のために配置されたピン(18)とを備える骨釘として構成されており、
それによって、前記ピンの少なくとも前方部分(19)は、前記スリーブ内で少なくとも1つの横方向開口(20)を通じて外側へ駆動されることができ、
前記前方部分は、前記内側骨片(2)内で係合する少なくとも1つのフックの形態である第1固定部分(8)を構成する、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に開示された実施形態は、骨折における骨片の固定のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大腿骨頸の骨折などの骨折後に、骨折における骨片は固定を必要とする。このことは、骨釘や骨ねじなどの適切な固定手段を使用することによって行われる。
【0003】
手術終了後、早ければ麻酔の効果がなくなり、且つ患者がまだベッドに閉じ込められている場合でさえ、しかし何よりも患者が起き上がって歩き始め、且つ脚で立っている場合でさえ、固定された骨片及び固定手段は、大きな力、特に下方に且つ後方に作用する回転力にさらされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固定手段だけでは多くの場合、これらの回転力に対抗するには不十分であり、骨折をロックするのに役立つために骨片を使用しなければならない。これが行われず、且つ骨片が前記力によって互いに対して回転させられる場合、それらが互いに実質的に交差する危険を冒す程度まで固定手段の角度位置をシフトさせ、それによって骨折が分割された状態を維持し、且つ治療を妨げる結果をもたらす。
【0005】
多くの種類の骨折における別の問題、例えば、水平面との骨折線の傾斜が70°以上であるPauwel分類III型などの垂直方向の大腿骨頸部の骨折における他の問題は、そのような骨折の特性に起因して1つ又は複数の骨片が傾斜(内反の傾斜)する傾向があることである。
【0006】
上記の問題は、固定手段が互いに回転および交差することを可能にしないように装置を構成することによって、少なくとも部分的に防止される、又は対抗されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、いくつかの実施形態による装置は、少なくとも3つの固定手段と、固定プレートとを備える。少なくとも3つの固定手段はそれぞれ、内側骨片内で固定手段を固定するために構成される第1固定部分と、固定プレートの第1端部分におけるねじ山を有する略平行な穴内で、固定手段をロックするためのねじ山を有する第2固定手段とを備える。固定プレートは、外側骨片と固定接続することなく、外側骨片の外側表面の係合のために構成される。各固定手段はまた、第1固定部分と第2固定部分との間に位置した中間部分を備える。この中間部分は、外側骨片を通じて延在するように構成される。それは、内側骨片及び外側骨片に適用された力に起因して、特に下方に且つ後方に方向付けられた回転力に起因して内側骨片及び外側骨片の二次的な圧縮中に、互いに対して少なくとも3つの固定手段及び外側骨片のスライド移動を可能にするように構成され、それによって、固定プレートに対して及び互いに対して固定手段の角度位置に影響を与えることなく、外側骨片と固定プレートの係合の中断を可能にするように構成される。
【0008】
比較的見られるように、外側骨片が内側骨片に向けて移動することができ、そのように行われる際に、固定手段によって案内されることができるのに対して、内側骨片及び固定プレートにそのように固定された固定手段の結果は、骨片が固定された状態を維持しているが、骨片の圧縮(二次的な圧縮)がそれにもかかわらず可能とされ、装置及び骨片はそれ故に、再脱臼が起こらないように前述の回転力を吸収し、且つそれらの回転力を制御することができることである。内側骨片内における固定手段の固定と、固定プレートに対する固定手段のロックとはまた、固定手段が骨ねじの形態を取る場合において、ねじが緩む危険性を減少させる。
【0009】
傾斜を防止する又は傾斜に対抗するために、いくつかの実施形態による装置は、少なくとも1つの傾斜防止手段をさらに備える。この少なくとも1つの傾斜防止手段は、固定プレートの第1端部分と反対側の固定プレートの第2端部分におけるねじ山を有する穴内で傾斜防止手段をロックするためのねじ山を有する固定部分を備える。固定プレートの第2端部分におけるこの穴は、固定プレートの第1端部分における固定手段のための穴と略平行とされる。少なくとも1つの傾斜防止手段はまた、係合部分を備える。この係合部分は、外側骨片と固定接続することなく、外側骨片内に延在するように構成されており、内側骨片及び外側骨片の二次的な圧縮中に、互いに対して少なくとも1つの傾斜防止手段及び外側骨片のスライド移動を可能にするように構成され、それによって、外側骨片と固定プレートの係合の中断を可能にするように構成される。傾斜防止手段の係合部分はまた、外側骨片に対する傾斜防止手段の可能なスライド移動の後で外側骨片内に残存しているその部分によって、内側骨片のそのような傾斜、特に内反の傾斜を引き起こすように試みる力に起因して、装置の傾斜を防止する又は装置の傾斜に対抗する。
【0010】
他の目的および利点は、添付の図面、並びに装置の好ましい実施形態及び装置を取り付けるための方法の以下の詳細な説明を検討する当業者には明らかであろう。
【0011】
以下、いくつかの実施形態は、添付の図面を参照して、限定されない例によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】実施形態による装置が設けられている、大腿骨頸部に骨折を伴う大腿骨の上部を通じた概略的な長手方向断面図である。
【
図1B】骨片の固定のための装置の第1実施形態の概略的な透視図である。
【
図2A】骨片の固定のための装置の第2実施形態の概略的な透視図である。
【
図3A】骨片の固定のための装置の第3実施形態の概略的な透視図である。
【
図3B】骨片の固定のための装置の第3実施形態の概略的な透視図である。
【
図4A】固定プレートのいくつかの実施形態の概略図である。
【
図4B】固定プレートのいくつかの実施形態の概略図である。
【
図4C】固定プレートのいくつかの実施形態の概略図である。
【
図5A】固定プレートのいくつかの代替的な実施形態の概略図である。
【
図5B】固定プレートのいくつかの代替的な実施形態の概略図である。
【
図5C】固定プレートのいくつかの代替的な実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付の図面は必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではなく、示された実施形態のいくつかの特徴の寸法は、明確にするために誇張されている場合があることに留意されたい。
【0014】
本発明は、以下において、その実施形態によって例示される。しかしながら、実施形態は、本発明の原理を説明するために含まれており、添付の特許請求の範囲によって画定される本発明の技術的範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0015】
それ故に、既に上述されたように、実施形態は、骨折4における内側骨片2及び外側骨片3の固定のための装置1に関する。
図1Aの実施形態において、骨折は、Pauwel分類によるとグレードIIIに分類される実質的に垂直方向の大腿骨頸部の骨折4である。それ故に、我々は、骨折4の一方の側に大腿骨頭の形態である内側骨片2と、骨折の他方の側に大腿骨頭を除く大腿骨の形態である外側骨片3とを有する。いくつかの実施形態による装置が有益とされる場合がある他の骨折は、例えば、下皮質(inferior cortex)からのサポートがない骨折、大腿骨頚部基部骨折(basicervical fractures)、及び、おそらく安定した転子間骨折(stable intertrochanteric fractures)である。
【0016】
図1B及び
図1Cに概略的に図示されるように、装置1は、いくつかの実施形態によれば、骨ねじ又は骨釘の形態である少なくとも3つの固定手段5、図示された実施形態において、3つの骨ねじと、少なくとも1つの傾斜防止手段6、図示された実施形態において、ペグの形態における1つの傾斜防止手段と、固定プレート7と、を備える。
図1cに示された図面において、3つの固定手段5のうちの2つは同じ平面に位置しており、それ故に、そのうちの1つだけが示されることは理解されるべきである。
【0017】
固定プレート7は、外側骨片3と固定接続することなく、外側骨片3の外側表面の係合、例えば図示されるような外側面の係合のために構成されており、つまり、固定プレートはその移動及び互いに対する外側骨片の移動を可能し、それによって、固定プレート7は、それらに適用された力、特に下方に且つ後方に方向付けられた回転力に起因して、内側骨片2及び外側骨片3の二次的な圧縮の際に、外側骨片とともに移動しない。少なくとも3つの固定手段5のそれぞれが、内側骨片2内で、つまり大腿骨頭内で固定手段5を固定するように構成された第1固定部分8を備えると同時に、各固定手段5がまた、固定プレート7の第1端部分11におけるねじ山を有する多数の穴10のうちの1つの穴内で固定手段5をロックするためのねじ山を有する第2固定部分9を備えることで、このことは達成される。最後に、各固定手段5は、第1固定部分8と第2固定部分9との間に位置した中間部分12を備える。この中間部分12は、ねじ山が切られていない滑らかな外観を有し、外側骨片3を通じて延在するように構成される。その結果として、中間部分12はまた、内側骨片2及び外側骨片3の二次的な圧縮中に、互いに対して各固定手段5及び外側骨片3のスライド移動を可能にするように構成される。それによって、固定プレート7が固定手段5にロックされた結果として、外側骨片3と固定プレートの係合は、固定プレート7に対して且つ互いに対して固定手段5の角度位置に影響を与えることなく中断されるだろう。スライド移動は、固定プレート7が外側骨片3から約5mmの距離だけ移動されることを引き起こす可能性がある。それ故に、スライド移動は、固定プレート7と外側骨片3との間の約5mmの隙間を生じさせる場合がある。
【0018】
装置1の少なくとも1つの傾斜防止手段6は、固定プレート7の第1端部分11と反対側の固定プレート7の第2端部分15におけるねじ山を有する穴14内で傾斜防止手段6をロックするためのねじ山を有する固定部分13を備える。固定プレート7の第2端部分15におけるこの穴14は、固定プレート7の第1端部分11における固定手段5のための穴10と略平行である。少なくとも1つの傾斜防止手段6はまた、外側骨片3と固定接続することなく、外側骨片3内へ延在するように構成される係合部分16を備える。係合部分16はまた、内側骨片2及び外側骨片3の二次的な圧縮中に、互いに対して少なくとも1つの傾斜防止手段6及び外側骨片3のスライド移動を可能にするように構成されており、それによって、外側骨片3と固定プレート7の係合の中断を引き起こすように構成されており、つまり、固定手段5の中間部分12と同じ結果を提供するように構成される。傾斜防止手段6の係合部分16はまた、外側骨片3に対する傾斜防止手段6の可能なスライド移動後に外側骨片3内に残存しているその部分によって、内側骨片2の傾斜、特に内反の傾斜などを引き起こすように試みる力に起因して、装置1の傾斜を防止する、又は装置1の傾斜に対抗する。
【0019】
本願明細書で使用される場合に、「二次的な圧縮」との表現は、手術後にそれらに適用される力、特に下方に且つ後方に方向付けられた回転力に起因した内側骨片2及び外側骨片3の圧縮を意味する。例えば、患者が立ち上がって歩き始め、且つ足で立つ場合に、固定された骨片及び固定手段5は、大きな力、特に下方且つ後方に作用する回転力にさらされており、内側骨片2及び外側骨片3の二次的な圧縮を引き起こす。二次的な圧縮は、固定のための装置1によって引き起こされた一次的な圧縮に加えた圧縮である。
【0020】
傾斜防止効果又は傾斜対抗効果を改善するために、少なくとも1つの傾斜防止手段6の係合部分16は、外側骨片3を通じてその一方の側から他方の側へ延在するように、
図1Aを参照して図示された実施形態において、外側骨片3の外側から反対側の内側へ延在するように構成される場合がある。このシナリオで使用される場合に、少なくとも1つの傾斜防止手段6が外側骨片3の外側皮質と外側骨片3の内側皮質との両方を通じて延在するので、その固定は、両皮質固定(bicortical fixation)として言及されてもよい。好ましくは、傾斜防止手段6はそれによって、その外側面から反対側の内側面へ外側骨片3を通じて延在することができ、且つ例えば約4mm~8mm又は5mm~10mmだけそこから突出することができるそのような長さで、例えば60mm~70mmの範囲の長さで構成される。それによって、あなたは、外側骨片3内への傾斜防止手段6のための入口側においてだけではなく、少なくとも反対側の出口側において、好ましくは、外側骨片3を通じた全体の距離においても、支持を有する。それによって、前記傾斜防止手段6に適用された傾斜力は、外側骨片3の大きな表面に亘って分散されることができ、それ故に、この大きな表面によって吸収され(taken up)、且つ中和されることができる。1つの傾斜防止手段6だけを使用する場合に、固定プレート7は、固定プレート7が2つ以上の傾斜防止手段6を備える場合と比較して、より短い長さで構成される場合がある。
【0021】
しかしながら、装置1は、いわゆる単一皮質固定(unicortical fixation)のために使用されることができることは、理解されるべきである。この単一皮質固定の場合、使用時に、1つ又は複数の傾斜防止手段6は、外側骨片3の外側皮質を通じてのみ延在しており、それ故に外側骨片3の内側皮質内へ延在していない。このシナリオにおいて、傾斜防止手段6の長さは、20mm~30mmの範囲内とされる場合があり、例えば、24mm~28mmの範囲とされる場合がある。そのような実施形態において、傾斜防止手段6の前端は、使用時に外側骨片3の髄腔内に位置してもよい。
【0022】
図1A~
図1Cに図示されるように、装置は、1つの傾斜防止手段6を備えることができ、又は、
図2A及び
図2Bに図示されるように、装置は、2つの傾斜防止手段6を備えることができる。固定プレート7はそれに応じて、傾斜防止手段6のための1つのねじ穴14及び2つのねじ穴14を有するようにそれぞれ構成される。
図2Bに示された図面において、3つの固定手段5のうち2つが、同じ平面に位置しており、それ故に、そのうちの1つだけが示されていることは理解されるべきである。
【0023】
装置1が2つの傾斜防止手段6を備えるように構成される場合に、各傾斜防止手段6の長さは、いくつかの実施形態において、且つ上記に記載されるように、20mm~30mmの範囲内であり、例えば24mm~28mmの範囲内とされる場合がある。それによって、傾斜防止手段6は、使用時に外側皮質内に延在しないだろうが、内側皮質内に且つ髄腔内に配置されるだろう。このことは、単純化された固定法を意味する。なぜならば、外科医が内側皮質から外側皮質までの距離を測定する必要が無いからである。単一皮質固定のために構成された短い傾斜防止手段6を使用する場合に、装置1は好ましくは、十分な安定性を提供するために、且つ内反の傾斜を防止するために、
図2A又は
図2Bに示されるように、2つの傾斜防止手段6を備えるように、或いは、より多い数の傾斜防止手段6を備えるように構成される。
【0024】
上述したように、傾斜防止手段6は、図面においてペグとして図示されており、前記ペグは、固定部分13を構成するねじ山が切られた端部分を有する構成される。傾斜防止手段6は当然ながら、その趣旨及び目的に適した他の方法で構成される場合がある。
【0025】
上述したように、固定手段5は、
図1及び
図2に図示されるように、骨ねじのねじ山が切られた前方端部分の形態である第1固定部分8を有する骨ねじからなる場合があるが、代替的には、
図3A及び
図3Bに概略的に図示されるように、骨釘からなる場合がある。それらの骨釘は、スリーブ17と、そのスリーブ17内に配置され、且つスリーブ17内における移動のために配置されたピン18と、を備える場合がある。それによって、ピン18の少なくとも前方部分19は、スリーブにおける少なくとも1つの横方向の穴(lateral aperture)20を通じて外側へ駆動されることができる。そのような場合において、この前方部分は、内側骨片2において係合する少なくとも1つのフックの形態である第1固定部分8を構成しており、各骨釘はさらに、上記のタイプの第2固定部分9を有する。
図3A及び
図3Bにおいて、固定手段5のうちの1つは、ピン18を図示するために、スリーブ17を有することなく図示される。内側骨片2の密度(density)がその中央部において最大になる場合に、外側へのその駆動中に、ピン18の前方部分19が骨片の中央部分において係合するような方法で各骨釘が適用される場合に有利である。各骨釘はまた、内側骨片2の中央部分における係合を達成するようにそのように構成される場合がある。例えば、ねじ山が切られた第2固定部分9が存在するので、そのねじ山は、前記結果が達成されるように、そのように配置及び/又は構成されてもよい。内側骨片2の中央に向けて指向する各骨釘においてピン18の前方部分19を有することは、骨釘が内側骨片においてより良いグリップを有することを意味するだけではなく、骨釘の回転運動又は他の移動の危険性を弱めさせる。
【0026】
図面に図示されるように、固定プレート7の第1端部分11は、略三角形状のパターンで配置される少なくとも3つの固定手段5のためのねじ穴10を有する略三角形状を有する。内側骨片2及び外側骨片3並びに固定手段5に作用する回転力はそれによって、より多く吸収される(taken up better)。しかしながら、固定プレート7の第1端部分11の形状は、任意の他の適切な形状を有してもよい。外側骨片3の外側表面(外側(lateral))に面する/外側表面(外側(lateral))を係合する固定プレート7の外側表面は好ましくは、外側表面の形状に適合され、例えば、図面に図示されるような略凹状外側表面を有する。
【0027】
固定プレート7の第1端部分11及び第2端部分15のそれぞれにおける少なくとも3つの固定手段5のためねじ穴10と、傾斜防止手段6のためのねじ穴又は複数のねじ穴14とは全て、固定プレートを通じて傾斜して延在するように構成される。
【0028】
いくつかの実施形態において、例えば
図4A~
図4Cに概略的に図示されるように、固定プレート7の第1端部分11の略三角形状は、固定プレート7の長手方向軸L-Lに対して傾斜される、又は角度付けされる。図示されるように、固定プレート7の第1端部分11は、固定プレート7の長手方向軸L-Lに対して角度αで角度付けされる三角形状を有する。角度αは、5度~15度の範囲内とされる場合があり、いくつかの実施形態において、角度αは約10度である。少なくとも3つの固定手段5のためのねじ穴10は、第1端部分11における略三角形状パターンで配置される。第2端部分15は、1つ又は複数の傾斜防止手段6のための1つ又は複数のねじ穴14を備える。長手方向軸L-Lは、1つ又は複数のねじ穴14の中心と交わる場合がある。
図4Aにおいて、1つのねじ穴14は図示されており、第1端部分11の対称軸C-Cから約5mmの距離Dで長手方向軸L-Lに沿って位置する。1つ又は複数のねじ穴10及び14は、固定プレート7を通じて傾斜して延在するように配置される。好ましくは、1つ又は複数のねじ穴10及び14は、各ねじ穴10及び14内に配置される場合に1つ又は複数の固定手段5及び1つ又は複数の傾斜防止手段6が互いに対して平行であるように、固定プレート7を通じて傾斜して延在するように配置される。このことは、
図1~
図3に概略的に図示される。
【0029】
図4A及び
図4Cにおいて、1つの傾斜防止手段6のための1つのねじ穴14だけが図示されるが、ねじ穴14の数は多数であってもよく、例えば2つ又はそれ以上であってもよいことは理解されるべきである。1つ又は複数のねじ穴14は、本願開示において時々、それらが固定プレート7の長手方向軸L-Lに沿って配置される場合に中央ねじ穴14として言及される。
【0030】
いくつかの実施形態において、例えば
図5A~
図5Cで概略的に図示されるように、固定プレート7は、直線状の固定プレート7である。このことは、固定プレート7の第1端部分11の略三角形状が固定プレート7の長手方向軸L-Lの周りで対称的に配置されることを意味する。さらに、いくつかの実施形態において、例えば
図5A及び
図5Cに概略的に図示されるように、固定プレート7の第2端部分15には、長手方向軸L-Lの横方向に配置された1つ又は複数の横方向ねじ穴14’が設けられる場合があり、それによって、長手方向軸L-Lは、1つ又は複数の横方向ねじ穴14’の中心と交差していない。1つ又は複数の横方向ねじ穴14’を提供するために、固定プレート7は、丸みを帯びた形状を有する1つ又は複数の突出部21を有するように構成されてもよい。横方向の突出部21には、各傾斜防止手段6のための各横方向ねじ穴14’が設けられる場合がある。しかしながら、横方向ねじ穴14’を収容するために突出部21を有する固定プレート7を提供する構成に対する代替物が、1つ又は複数の横方向ねじ穴14’を収容するように、固定プレート7をより幅広くさせることが理解されるべきである。それ故に、固定プレート7の幅は、1つ又は複数の横方向ねじ穴14’を収容するように適合されてもよい。
【0031】
図5Aに概略的に図示されるように、1つ又は複数の横方向ねじ穴14’は、線S-Sに沿って配置されてもよい。この線S-Sは、各横方向ねじ穴14’の中心と交差し、長手方向軸L-Lと交差する。角度βは、線S-Sと長手方向軸L-Lとの間で設けられてもよい。例えば、角度βは、5度~15度の範囲内とされてもよく、いくつかの実施形態において、角度βは、約10度である。さらに、1つ又は複数の横方向ねじ穴14’は、長手方向軸L-Lから距離d、d-1、d-2で位置してもよい。この距離d、d-1、d-2は、約5mmとされてもよい。
【0032】
2つの横方向ねじ穴14’-1、14’-2の場合に、第1横方向ねじ穴14’-1が長手方向軸L-Lから第1距離d-1で配置されてもよく、且つ第2横方向ねじ穴14’-2が長手方向軸L-Lから第2距離d-2で配置されてもよいことが理解されるべきである。第1距離d-1及び第2距離d-2が同じ距離とされてもよいが、それらが同じ距離とされなくてもよいことが理解されるべきである。
【0033】
図5A~
図5Cで示されるように、固定プレート7の長手方向軸L-Lの横方向に、且つ長手方向軸L-Lの両側において、第2端部分15において配置される横方向ねじ穴14’を有する固定プレート7の提供は、固定プレート7のより柔軟な使用を可能にする。骨折が左大腿骨又は右大腿骨であるかどうかにかかわらず、横方向ねじ穴14’のおかげで、固定プレート7が骨折における骨片の固定のためにフィットするように調節されてもよいからである。固定プレート7が骨片の固定のために正しい位置に配置される場合に、1つの傾斜防止手段6が固定を防止するために、且つ傾斜を防止するために、複数の横方向ねじ穴14’のうちの1つの横方向ねじ穴14’内だけに配置されることが理解されるべきである。
【0034】
図5A及び
図5Cに図示された実施形態は、固定プレート7の第2端部分15における長手方向軸L-Lに沿って位置したねじ穴14を備えていない。しかしながら、1つ又は複数の横方向ねじ穴14’を備えている
図5A~
図5Cで図示された実施形態が1つ又は複数の中央穴14’を備えてもよく、例えば、長手方向軸L-Lでその中心に位置した穴14を備えてもよいことが理解されるべきである。それ故に、固定プレート7のいくつかの実施形態は、長手方向軸L-Lから所定の距離で配置された複数の横方向ねじ穴14’だけを備えるのに対して、他の実施形態は、複数の横方向ねじ穴14’に加えて、1つ又は複数のねじ穴14を備える。
【0035】
図4A及び
図4Cにおける固定プレート7の第1端部分11の三角形状が長手方向軸L-Lの周りで対称的に配置されたとしても、固定プレート7の第1端部分11の三角形状が固定プレート7の長手方向軸に関して角度付けされてもよく、例えば、第1端部分11が固定プレート7のシャフト、例えば固定プレート7の第2端部分15に関して傾斜されてもよいことが理解されるべきである。
【0036】
添付した特許請求の範囲の技術的範囲内における本発明のさらなる変更は、発明のアイディア及び目的から逸脱することなく実現可能である。例えば、本発明は、記載された実施形態とそれらの実施形態を図示する図面とによって限定されるように考えられるべきではない。むしろ、本発明の全範囲は、説明および図面を参照して添付の特許請求の範囲によって決定されるべきである。それ故に、本発明による装置は当然ながら、3つ以上の固定手段5と、1つ又は2つ以上の傾斜防止手段6と、を備えてもよく、固定プレートが、前記手段のための対応する数のねじ穴10及び14を有するように構成されてもよい。固定手段5及び傾斜防止手段6は、上記に記載され、且つ図面に図示されたものから異なって構成されてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 装置
2 内側骨片
3 外側骨片
4 骨折
5 固定手段
6 傾斜防止手段
7 固定プレート
8 第1固定部分
9 第2固定部分
10 穴
11 第1端部分
12 中間部分
13 固定部分
14 穴
14’ 穴、中央穴
14’-1 穴
14’-2 穴
15 第2端部分
16 係合部分
17 スリーブ
18 ピン
19 前方部分
20 穴、横方向開口
21 突出部