(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】非軸対称凹部を備える拡張アンカー
(51)【国際特許分類】
F16B 13/06 20060101AFI20220902BHJP
E04B 1/41 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
F16B13/06 A
E04B1/41 503G
(21)【出願番号】P 2020569760
(86)(22)【出願日】2019-06-07
(86)【国際出願番号】 EP2019064958
(87)【国際公開番号】W WO2019243084
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2020-12-13
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100, 9494 Schaan, LIECHTENSTEIN
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】島原 英己
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0290374(US,A1)
【文献】特開平01-135905(JP,A)
【文献】特開2012-225150(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02848825(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0008553(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0145684(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/38- 1/61
F16B 13/00-13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンカーボルト(10)と、
前記アンカーボルト(10)を囲む拡張スリーブ(30)と、
前記アンカーボルト(10)の前部領域に位置する拡張本体(12)であって、前記拡張本体(12)が、前記拡張スリーブ(30)を拡張させるための収束ゾーン(23)を有し、前記拡張本体(12)が、少なくとも1つの拡張本体凹部(66)を備えている、拡張本体と、
を有する拡張アンカーであって、
前記拡張本体(12)に隣接して位置する、少なくとも1つのネック凹部(76)を備えるネック(25)を有し、
前記拡張スリーブ(30)は、前記ネック凹部(76)に係合し、
少なくとも1つの前記拡張本体凹部(66)は、拡張スリーブ当接壁(60)で区画されており、
少なくとも1つの前記拡張本体凹部(66)は、非軸対称断面を有する、
ことを特徴 とする拡張アンカー。
【請求項2】
少なくとも1つの前記拡張本体凹部(66)は、断面において、第1の拡張本体凹部側壁(61)および第2の拡張本体凹部側壁(62)を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の拡張アンカー。
【請求項3】
前記第1の拡張本体凹部側壁(61)は、前記第2の拡張本体凹部側壁(62)よりも急勾配である、ことを特徴とする請求項2に記載の拡張アンカー。
【請求項4】
前記第2の拡張本体凹部側壁(62)は、断面が凸状に湾曲している、ことを特徴とする請求項2または3に記載の拡張アンカー。
【請求項5】
前記拡張スリーブ(30)は、前記拡張スリーブ(30)の前端から始まる少なくとも1つのスリット(36)を有し、
少なくとも1つの前記スリット(36)が、前記第1の拡張本体凹部側壁(61)と重複する位置にあるか、または前記アンカーボルト(10)を中心に前記拡張スリーブ(30)を回転させることによって少なくともこの位置にもたらされ得る、
ことを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の拡張アンカー。
【請求項6】
少なくとも1つの前記スリット(36)を前記第1の拡張本体凹部側壁(61)と重複する位置に保持するための回転ロックを有する、ことを特徴とする請求項5に記載の拡張アンカー。
【請求項7】
前記少なくとも1つのネック凹部(76)は、前記少なくとも1つの拡張本体凹部(66)と円周方向に重複する、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の拡張アンカー。
【請求項8】
前記少なくとも1つのネック凹部(76)は、非軸対称断面を有する、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の拡張アンカー。
【請求項9】
前記少なくとも1つのネック凹部(76)は、断面において、第1のネック凹部側壁(71)および第2のネック凹部側壁(72)を有し、
前記第2のネック凹部側壁(72)は、前記第1のネック凹部側壁(71)よりも急勾配である、
ことを特徴とする、請求項1~
8のいずれか1項に記載の拡張アンカー。
【請求項10】
前記少なくとも1つのネック凹部(76)は、断面において、第1のネック凹部側壁(71)および第2のネック凹部側壁(72)を有し、
前記第1のネック凹部側壁(71)は、前記第1の拡張本体凹部側壁(61)と円周方向に重複しており、および/または前記第2のネック凹部側壁(72)は、前記第2の拡張本体凹部側壁(62)と円周方向に重複している、ことを特徴とする請求項
2~6のいずれか1項に記載の拡張アンカー。
【請求項11】
前記第1のネック凹部側壁(71)は、断面が凸状に湾曲している、ことを特徴とする 請求項9または10に記載の拡張アンカー。
【請求項12】
前記アンカーボルトはネジ(18)を有し、前記第2のネック凹部側壁(72)は前記ネジ(18)の締結方向に面している、ことを特徴とする請求項9~11のいずれか1項に記載の拡張アンカー。
【請求項13】
少なくとも1つの前記拡張スリーブ当接壁(60)は、前記拡張スリーブ(30)を乗り越え可能に妨害するためのものである、ことを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の拡張アンカー。
【請求項14】
少なくとも1つの前記拡張スリーブ当接壁(60)は、前記アンカーボルト(10)の後部に向かって先細になっており、
前記アンカーボルト(10)の長手方向軸(99)に対して測定される、前記少なくとも1つの拡張スリーブ当接壁(60)の最大勾配(α
max)が、30°よりも大きいか、および/または80°よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の拡張アンカー。
【請求項15】
前記拡張本体(12)は、複数の拡張本体凹部(66)を有し、各拡張本体凹部(66)は、拡張スリーブ当接壁(60)によって区画されており、前記拡張スリーブ当接壁(60)は各々が周方向に並んで配設されている、ことを特徴とする請求項1~14のいずれか1項に記載の拡張アンカー。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の拡張アンカーを使用するための方法であって、
前記拡張本体(12)は、前記拡張スリーブ(30)に対して後方に移動され、前記拡張スリーブ(30)が、前記少なくとも1つの拡張スリーブ当接壁(60)に当たる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載の拡張アンカーに関する。かかるアンカーは、アンカーボルトと、アンカーボルトを囲む拡張スリーブと、アンカーボルトの前部領域に位置する拡張本体と、を備え、拡張本体は、拡張スリーブを拡張させるための収束ゾーンを有し、拡張本体は、少なくとも1つの拡張本体凹部を備えている。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、拡張本体に拡張スリーブ当接壁が設けられた拡張アンカーを記載している。拡張スリーブ当接壁は、拡張スリーブと係合して、固定プロセスが前進状態に達したときにインターロックを提供することができる。このインターロックは、拡張スリーブの追加的な大幅な拡張なしに、すなわちコンクリートに追加の応力を加えることなく、拡張スリーブからの拡張本体の引き抜きに対する抵抗を増加させることができる。好ましくは、拡張アンカーは、その拡張本体に凹部を有し、スリーブ当接壁は、これらの凹部の前端に提供される。
【0003】
特許文献2は、拡張本体に配置されたアンカーの前端に対して閉じた溝を有し、溝は、拡張スリーブと拡張本体の収束ゾーンとの間の接触面を少なくする、拡張アンカーを記載している。具体的には、個々の溝は、拡張スリーブが拡張されたときに、拡張スリーブが溝に曲がることを回避するために比較的狭い。
【0004】
特許文献3は、拡張スリーブがその内側に少なくとも1つの畝状部を有し、その畝状部がアンカーボルトのネックに設けられた溝に係合する、拡張アンカーを開示している。設置中、この畝状部は、拡張本体によって径方向外側に変位され、すなわち、畝状部の材料が作動され、特に広い拡張をもたらす。
【0005】
特許文献4は、アンカーボルトの回転時に拡張スリーブを広げる偏心領域を備えたアンカーボルトを示す。
【0006】
特許文献5は、縦方向の縁部を有する拡張本体を示す。
【0007】
特許文献6は、拡張スリーブとアンカーボルトとの間に回転ロックが設けられた拡張アンカーを開示している。この回転ロックは、ボルトの拡張本体に延在する溝、および拡張スリーブから突出する対応する突出部によって形成されてもよい。特許文献6の一実施形態では、溝は、拡張本体の全体に沿って軸方向に延在し、突出部は、拡張スリーブの全体に沿って軸方向に延在する。別の実施形態では、突出部は、より短く、拡張スリーブ先端から拡張スリーブの後端に向かってオフセットされている。
【0008】
特許文献7は、拡張本体上に径方向に突出した畝状部を有し、その畝状部は、アンカーの拡張スリーブの内側に作用することができる、拡張アンカーを記載している。
【0009】
特許文献8は、拡張本体の前端に環形状の肩部を有する拡張アンカーを開示している。特許文献9および特許文献10は各々、拡張本体の前端にばねリングを有するアンカーを開示している。
【0010】
特許文献11および特許文献12は、ファスナーを記載している。両方の場合において、スリーブは、歯部を介して内側のボルトと連結する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】欧州特許出願第17198246.5号明細書
【文献】国際公開第15067578号(A1)明細書
【文献】欧州特許出願公開第2848825号(A1)明細書
【文献】欧州特許出願公開第2514979号(A1)明細書
【文献】欧州特許出願公開第2309138号(A2)明細書
【文献】独国特許出願公開第2256822号(A1)明細書
【文献】国際公開第12126700号(A1)明細書
【文献】スイス国特許第591637号(A5)
【文献】独国特許出願公開第2744666号(A1)明細書
【文献】米国特許第4287807号
【文献】欧州特許出願公開第0515916)号(A2明細書
【文献】独国特許出願公開第3411285号(A1)明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、製造が容易でありながら、特にコンクリートのための、高い性能を有する拡張アンカーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、請求項1に記載の拡張アンカーによって達成される。従属請求項は好ましい実施形態を記載する。
【0014】
本発明のアンカーは、少なくとも1つの拡張本体凹部が、特にその前端において、拡張スリーブ当接壁によって区画され、少なくとも1つの拡張本体凹部が非軸対称断面を有することを特徴とする。
【0015】
本発明の第1の基本的な考え方は、少なくとも1つの拡張スリーブ当接壁を備える拡張本体を提供することに見られ、その拡張スリーブ当接壁は、アンカーの設置前は拡張スリーブに面し、したがって、アンカーが取り付けられる場合、拡張本体が拡張スリーブの拡張中に拡張スリーブに沿って移動するときに拡張スリーブが拡張スリーブ当接壁に当たることができる。これはアンカー性能を大幅に向上させることができることが発見された。以下の機構は、観察された改善を説明することができる。拡張スリーブの先端が拡張スリーブ当接壁に触れると、拡張スリーブと拡張本体との間に、ある種の一時的な形状適合が生成され得る。この形状適合は、拡張スリーブからの拡張本体の引き抜きに対する抵抗を増加させることができるが、拡張スリーブの追加的な大幅な拡張なしに、すなわち拡張力を大幅に増加させることなく、これを行うことができる。拡張力が低いため、アンカーを囲む基板、例えばコンクリートに過剰な応力がかかることはなく、一方、引き抜き荷重は、著しく増加する。したがって、拡張スリーブ当接壁と拡張スリーブとの間のインターロックにより、コンクリート耐力は、標準の拡張アンカーのレベルを大幅に上回ることができる。さらに、拡張スリーブ当接壁と拡張スリーブとの間のインターロックは、拡張スリーブと拡張本体との間の相対移動を減らすことができるため、具体的には繰り返し荷重によるひび割れコンクリートの状態でのアンカーの総変位挙動を改善することもできる。
【0016】
本発明の第2の基本的な考えは、拡張本体の凹部の端部、具体的には前端に拡張スリーブ当接壁を設けることで見られる。言い換えれば、拡張スリーブ当接壁は、凹部の前端壁を形成する。これは、a)凹部は、製造することが特に容易であり、b)凹部の端部に形成された壁、すなわち少なくとも部分的にくぼんだ壁は、特に頑丈であり、c)少なくとも部分的にくぼんだ壁は、拡張機構との、または孔壁との望ましくない干渉を受けにくい傾向があり、およびd)凹部は、追加の好ましい機能、とりわけ基板応力緩和を有することができるという、いくつかの利点を有する。具体的には、拡張スリーブが拡張本体に対して前方に移動されると、具体的には曲げ入れによって凹部に入るように凹部が設計されている場合に、以下で詳細に説明するように、基板への圧力、または具体的には圧力スパイクを低下させることができることが発見された。拡張スリーブ当接壁は、凹部の端部に位置するため、この圧力軽減は、拡張スリーブ当接壁の作動と「自動的に」調整され、それにより、多くの労力をかけずに性能をさらに向上させることができる。したがって、アンカーは、好ましくは、特に拡張本体が拡張スリーブに対して後方に移動したとき、および/または拡張スリーブが拡張本体によって拡張されたときに、具体的には曲げ入れによって、拡張本体凹部が拡張スリーブの一区分を受け入れるように構成される。凹部のサイズは有限であるため、拡張スリーブの一部のみが凹部に入るが、拡張スリーブの他の部分は、拡張本体の表面に沿って完全に拡張する。したがって、コンクリート応力は、拡張速度を大幅に低下させることなく、低減される。
【0017】
本発明の別の基本的な考えは、拡張本体凹部の端部に設けられたいくつかのスリーブ当接壁が予想を下回る性能を発揮するという発見に基づいている。拡張本体凹部の側壁、すなわち円周方向に凹部を制限する壁が、拡張スリーブが凹部内に効率的に曲がることを可能にするには急勾配すぎて、スリーブ当接壁での拡張スリーブの不完全な係合につながることに起因することが発見された。この影響を克服するために、本発明は、非軸対称の断面、具体的にはアンカーボルトの半径の断面に関して非軸対称の断面を有するように、拡張本体凹部を形作ることを提案する。言い換えれば、断面は、具体的には対称軸としてのアンカーボルトの半径に対して軸対称性を有しない。これにより、拡張本体凹部側壁のうちの1つに非常に小さな傾斜を付けることができ、すなわちわずかな急勾配のみで提供することができ、これは明らかに、硬い拡張スリーブが使用されている場合でも、効率的な曲げ入れ、したがって効率的な拡張スリーブ当接壁の係合を可能にする。したがって、信頼性の高い拡張スリーブの係合、したがって特に優れた性能は、わずかな構造上の努力で達成することができる。
【0018】
さらに、本発明の拡張本体凹部の非軸対称断面は、他の拡張本体凹部側壁に、急勾配で、それに応じて狭い構成を提供することを可能にする。この場合、拡張スリーブは、拡張スリーブのスリットがこの他の拡張本体凹部側壁と円周方向に重複するように位置付けることができる。結果として、この他の拡張本体凹部側壁で拡張スリーブを曲げる必要はなくなる。かかる構成では、より急勾配の拡張本体凹部側壁が拡張スリーブの拡張プロセスに寄与する必要がなく、したがって、この壁の製造品質に対する要求を比較的低くすることができるので、製造をさらに容易にすることができる。
【0019】
これらの効果に加えて、提案された拡張本体凹部の非対称設計は、製造が容易な様式で、具体的には冷間成形プロセスで、引っ掛かりやすい回転防止機構などの他の有利な効果を提供することができる。
【0020】
好ましくは、少なくとも1つの拡張本体凹部は、軸方向に延在するゾーンにおいて、非軸対称断面、具体的にはアンカーボルト断面の半径に関して非軸対称を有し、すなわち非軸対称な形状は、隣接する軸方向に間隔をあけた断面の複数の層に存在する。軸方向の延長により、拡張スリーブを特に効率的な曲げ入れが可能になる。
【0021】
アンカーボルトは、細長い本体である。拡張本体およびアンカーボルトは、具体的には、張力を伝達するために接続されている。具体的には、拡張アンカーが、いわゆるスリーブタイプ拡張アンカーである場合、拡張本体は、アンカーボルトに、例えばねじ込まれることができる。具体的には、拡張アンカーが、いわゆるスタッドタイプ拡張アンカーである場合、拡張本体はまた、アンカーボルトにしっかりと固定することができる。スタッドタイプ拡張アンカーの場合、拡張本体およびアンカーボルトが一体である、すなわち、それらは1つの部品を形成することが特に好ましい。拡張アンカーが、いわゆるスタッドタイプ拡張アンカーである場合、アンカーボルトは、好ましくは、拡張スリーブ当接のための、および拡張スリーブをボアホールへ前進させるための前方に面する肩部を備える。
【0022】
少なくとも1つの拡張本体凹部は、具体的には拡張本体の側面に設けられる。具体的には、少なくとも1つの拡張本体凹部は、拡張本体内に径方向に延在している。少なくとも1つの拡張本体凹部は、好ましくは拡張本体の収束ゾーンに少なくとも部分的に位置する。
【0023】
拡張スリーブは、具体的には長手方向軸を中心にアンカーボルトを囲む。好ましくは、拡張スリーブは、単一部品である。しかしながら、いくつかの個別のセグメントで構成することもでき、それらは、ゴムバンドまたはスナップオン機構によってボルトを囲む配設に、例えば保持される。
【0024】
好ましくは、アンカーボルト、拡張スリーブ、および/または拡張本体は、各々鋼製部品である。それらは、例えば、炭素鋼またはステンレス鋼を含むことができる。
【0025】
アンカーボルトは、具体的にはアンカーボルトの後部領域に、張力導入構造を有し得る。張力導入構造は、アンカーボルトに後方に向けられた張力を導入するためのものである。張力導入構造は、例えば、アンカーボルトに設けられたネジ、具体的には外ネジであり得る。張力導入構造はまた、例えば、最大断面を形成する頭部、またはバヨネット式ロックであり得る。
【0026】
拡張本体の収束ゾーンは、拡張本体が拡張スリーブに対して後方に移動されたときに拡張スリーブを拡張させるように機能し、具体的には、長手方向軸に対して径方向に拡張スリーブを拡張させるように機能する。収束ゾーンでは、拡張本体は、その側面において、アンカーボルトの後部に向かって、および/または張力導入構造に向かって収束し、収束の焦点は、好ましくは長手方向軸であり得る。これは、具体的には、拡張本体の側面の長手方向軸からの径方向距離が、拡張本体の後部に向かって小さくなることを意味する。拡張本体は、追加のゾーン、例えば、好ましくは円筒状の移行ゾーンおよび/または先端ゾーンを有することができる。収束ゾーンは、例えば円錐形であってもよく、あるいはより複雑な形状、例えば凸形状または凹形状を有していてもよい。具体的には、収束ゾーンは、拡張スリーブのためのくさびを形成する。
【0027】
拡張スリーブ当接壁は、拡張本体と拡張スリーブとの間のインターロックを作り出すためのものである。具体的には拡張本体を拡張スリーブに後方方向に引き込むことによって、拡張本体が、拡張スリーブに対して後方方向に、すなわち拡張本体および/またはアンカーボルトの前端から離れる方向に面する方向に、軸方向に変位したときに、拡張スリーブが拡張スリーブ当接壁に当たることができるように、すなわち拡張スリーブが拡張スリーブ当接壁に当接することができるように、拡張スリーブ当接壁は、配設される。したがって、拡張スリーブ当接壁は、軸方向に拡張スリーブに面するか、または、言い換えれば、拡張スリーブ当接壁は、長手方向軸に平行な方向に拡張スリーブに面する。好ましくは、拡張スリーブ当接壁は、具体的には、軸方向に拡張スリーブの先端に面し、および/または拡張スリーブの先端の当接のために機能し、したがって、拡張スリーブ先端当接壁と名付けることができる。拡張スリーブの先端は、拡張スリーブの前端、すなわち前方方向を向く端であると理解することができる。拡張スリーブ当接壁は、拡張スリーブ、具体的には拡張スリーブの先端と向かい合って、具体的には軸方向に向かい合って配設されている。具体的には、拡張スリーブが拡張本体によって拡張される前の状態において、すなわち、アンカーの事前設置状態において、つまり、アンカーが設置される前は、拡張スリーブ当接壁は、拡張スリーブに面する、より具体的には軸方向に面している。具体的には、拡張スリーブ当接壁は、アンカーの後部に向かって面している。
【0028】
拡張本体の拡張スリーブに対する後方方向への軸方向変位中に、および/または拡張本体による拡張スリーブの径方向拡張中に、具体的にはその先端を備えた拡張スリーブが少なくとも1つの拡張スリーブ当接壁に当たることができるように、本発明のアンカーは、構成されている。したがって、少なくとも1つの拡張スリーブ当接壁は、具体的には軸方向に拡張スリーブによって、および/または拡張スリーブの先端によって、当接されるのに適している、および/または当接されるように構成されている。具体的には、少なくとも1つの拡張スリーブ当接壁は、拡張スリーブの一区域、具体的には前端区域によって具体的には軸方向に当接されるのに適している、および/または当接されるように構成されており、その区域は、長手方向軸を中心に湾曲し、および/または拡張本体によって径方向に変位するように指定される。
【0029】
具体的には、拡張スリーブ当接壁にステップ構造が形成され、拡張スリーブ当接壁は、それぞれのステップ構造の蹴上げを形成する。拡張スリーブ当接壁は、拡張本体の側面に、すなわち拡張本体の側方に配設されている。
【0030】
少なくとも1つの拡張スリーブ当接壁は、アンカーボルトの側面図において真っ直ぐであってもよく、容易な構造設計を可能にする。しかしながら、少なくとも1つの拡張スリーブ当接壁はまた、アンカーボルトの側面図において湾曲していてもよく、または、アンカーボルトの側面図において、いくつかの壁セグメント、例えば、真っ直ぐな壁セグメントで構成されていてもよく、それらは、単一の拡張スリーブ当接壁を提供するように角度のある関係で接続されている。具体的には、少なくとも1つの拡張スリーブ当接壁は、アンカーボルトの側面視において凹面を形成することができ、これは製造の観点から有利であり得る。拡張本体凹部の非軸対称断面に起因して、拡張スリーブ当接壁の径方向の高さは、壁底部に対して変化し得る。
【0031】
「長手方向軸」という用語が使用される場合、これは、具体的には、アンカーボルトの長手方向軸を指すべきであり、それは、多くの場合、拡張アンカーの長手方向軸でもある。通常の定義によれば、「長手方向軸」は、具体的には、長手方向、すなわち細長いアンカーボルトの長手方向に延びる軸であり得る。「径方向に」、「軸方向に」または「周方向に」という用語が使用される場合、これは、具体的にはアンカーボルトの長手方向軸に関して理解されるべきである。
【0032】
有利には、少なくとも1つの拡張本体凹部は、特に断面において、第1の拡張本体凹部側壁および第2の拡張本体凹部側壁を有する。これは、本発明の非軸対称断面を特に簡単な方法で製造することを可能にする。拡張本体凹部側壁は、拡張本体凹部を円周方向に区画することができる。好ましくは、両方の拡張本体凹部側壁は、頂点で交わる。
【0033】
好ましくは、第1の拡張本体凹部側壁は、特に断面において、第2の拡張本体凹部側壁よりも急勾配である。壁がより急勾配であるという事実は、特に、この壁が、断面において、アンカーボルトの長手方向軸に近い、および/または他の壁よりも放射状線に類似した接線を有していることを意味し得る。急勾配の異なる壁を使用すると、具体的には拡張本体凹部の非軸対称断面の製造をさらに改善することができる。第2の拡張本体凹部側壁は、好ましくは、円周方向において、第1の拡張本体凹部側壁よりも幅広である。
【0034】
第2の拡張本体凹部側壁は、断面において、有利には湾曲しており、具体的には凸状に湾曲している。これは、特に、拡張本体が第2の拡張本体凹部側壁で凸状に突出していることを意味する。凸状に湾曲した壁は、具体的には圧延によって製造をさらに容易にすることができ、および/または特に安定した力分布を提供することができる。
【0035】
拡張スリーブは、拡張スリーブの前端から始まる少なくとも1つのスリットを有することができる。スリットは、製造上の理由、具体的には拡張スリーブがアンカーボルトを中心にシート材料を曲げることによって製造される場合、に起因し得るものである。代替的または追加的に、少なくとも1つのスリットは、拡張スリーブの拡張を支援するために提供され得る。好ましくは、拡張スリーブは、拡張スリーブの前端から始まる複数のスリットを有し、拡張スリーブは、隣接するスリットの間にフィンガーを有する。
【0036】
有利には、少なくとも1つのスリットは、第1の拡張本体凹部側壁と重複する位置にあるか、または拡張スリーブをアンカーボルトを中心に回転させることによって、具体的には非破壊的に、すなわちアンカーを破壊することなく、この位置にもたらされ得る。第1の拡張本体凹部側壁と重複する位置では、スリットは、第1の拡張本体凹部側壁の上に径方向に位置している。アンカーが設置されたときに、スリットが(好ましくはより急勾配)、第1の拡張本体凹部側壁に重複するように位置付けると、この位置では、拡張スリーブが急勾配な構造を中心に曲がる必要がないので、拡張本体凹部への拡張スリーブの曲げをさらに容易にすることができ、これにより、小さな曲げ半径を回避することができる。これは、明らかに、拡張スリーブと拡張スリーブ当接壁との連結をさらに改善し、それによりアンカー性能をさらに改善することができる。さらに、スリットを当該位置で第1の拡張本体凹部側壁と重複させることはまた、拡張スリーブと拡張本体との間の特に効果的な回転防止を提供することができる。
【0037】
複数の拡張本体凹部と、拡張スリーブの前端に由来する複数のスリットとがある場合、特に好ましくは同様の理由から、拡張本体凹部の第1の拡張本体凹部側壁の各々が、当該第1の拡張本体凹部側壁と重複する位置にあるか、または少なくとも拡張スリーブを、アンカーボルトを中心に回転させることによって、特に非破壊的にこの位置にもたらされ得る関連スリットを有する。これにより、各拡張本体凹部における拡張スリーブの特に効果的な曲げ入れが可能となる。好ましくは、スリットの数は、拡張本体凹部の数と同じかそれ以上であり、これにより、効率的な曲げ入れと特に単純な設計が可能となる。
【0038】
好ましくは、拡張アンカーは、少なくとも1つのスリットを第1の拡張本体凹部側壁と重複する位置に保持するための回転ロックを有する。これにより、不利な条件でも特に良好な動作が可能となる。
【0039】
アンカーボルトは、好ましくは拡張本体に隣接して位置するネックを有する。アンカーを設置する前に、ネックは拡張スリーブを収容することができる。具体的には、ネックは収束ゾーンの後方に位置付けられている。
【0040】
有利には、ネックは、少なくとも1つのネック凹部を備え、拡張スリーブは、ネック凹部に係合する。とりわけ、これは、特に製造が簡単で信頼できる様式で回転防止を提供することができる。したがって、上述の回転ロックは、ネックと、ネックに係合する拡張スリーブとを備えることができる。さらに、ネック凹部は、アンカーに負荷をかけるときに拡張本体によって径方向に変位可能な拡張スリーブ材料を収容することができ、すなわちこの材料は、特許文献3に記載されているように作動することができ、これによりアンカー性能はさらに向上し得る。少なくとも1つのネック凹部は、具体的にはネックの側面に設けられる。具体的には少なくとも1つのネック凹部は、ネック内に径方向に延在する。少なくとも1つのネック凹部は、好ましくは軸方向に、具体的には長手方向軸に平行に延在する溝である。
【0041】
特に好ましくは、少なくとも1つのネック凹部は、少なくとも1つの拡張本体凹部と円周方向に重複する。これは、特に、2つの凹部が軸方向に前後に配設されていることを意味する。この重複により、ネック凹部に係合する拡張スリーブの材料は、アンカーに負荷をかけるとき、具体的には設置時に、拡張本体凹部に入ることができる。これは、有利には、設計のさらなる範囲を提供する。特に、拡張スリーブ材料の上記の作動は、拡張本体凹部側壁、好ましくは第2の拡張本体凹部側壁で達成することができる。
【0042】
少なくとも1つのネック凹部は、好ましくは非軸対称断面、具体的にはアンカーボルト断面の半径に対して非軸対称である。これは、有利には、設計のさらなる範囲を提供する。具体的には、少なくとも1つのネック凹部は、軸方向に延在するゾーンにおいて、非軸対称断面、具体的にはアンカーボルト断面の半径に関して非軸対称を有し、すなわち非軸対称な形状は、隣接する軸方向に間隔をあけた断面の複数の層に存在する。
【0043】
有利には、少なくとも1つのネック凹部は、特に断面において、第1のネック凹部側壁および第2のネック凹部側壁を有する。これは、本発明の非軸対称断面を特に簡単な方法で製造することを可能にする。ネック凹部側壁は、ネック凹部を円周方向に区画することができる。好ましくは、両方のネック凹部側壁は、頂点で交わる。
【0044】
好ましくは、第2のネック凹部側壁は、特に断面において、第1のネック凹部側壁よりも急勾配である。ここでも、壁がより急勾配であるという事実は、特に、この壁が、断面においてアンカーボルトの長手方向軸に近い、かつ/または他の壁よりも放射状線に類似した接線を有していることを意味し得る。異なる急勾配の壁を有すると、特に当接壁の非軸対称断面の製造をさらに改善することができる。第1のネック凹部側壁は、好ましくは、円周方向において、第2のネック凹部側壁よりも幅広である。
【0045】
アンカーは、第1のネック凹部側壁が、第1の拡張本体凹部側壁と円周方向に重複しており、および/または第2のネック凹部側壁が、第2の拡張本体凹部側壁と円周方向に重複するように設計することができる。この実施形態によれば、ネック凹部は、ネック凹部の前に位置する拡張本体凹部と比較すると、逆の向きを有することができる。これは、設計および製造が容易である一方で、アンカーに負荷をかけるときに拡張スリーブ材料の特に効率的な作動を可能にすることができる。
【0046】
第1のネック凹部側壁は、断面において、有利には湾曲しており、具体的には凸状に湾曲している。これは特に、ネックが第1のネック凹部側壁で凸状に突出していることを意味する。凸状に湾曲した壁は、具体的には圧延によって製造をさらに容易にすることができ、および/または特に良好な力分布を提供することができる。
【0047】
すでに上述したように、アンカーボルトは、ネジ、具体的には外側ネジを有することができる。このネジは、アンカーボルトに後方に向けた張力を導入するために使用することができる。好ましくは、ナットがネジにねじ込まれ、そのナットはアンカーによって取り付けられた部品を保持することができる。ネジは、締結方向、すなわち、ナットなどの留め付け部品がアンカーボルトに、具体的には前方方向に前進してねじ込まれるために回転させる必要がある方向を定義する。
【0048】
好ましくは、第2のネック凹部側壁は、締結方向に面している。言い換えれば、(好ましくはより急勾配の)第2のネック凹部側壁は、締結方向に対して前縁を形成し、第1のネック凹部側壁は、締結方向に対して後縁を形成する。これにより、アンカーの設置時にファスナーがネジにねじ込まれ、締結方向に向けられたトルクがアンカーボルトに付与されたときに、ネック凹部側壁による拡張スリーブの時期尚早の拡張を効率的に防止することができる。この場合、比較的急勾配の第2のネック凹部側壁が拡張スリーブに作用し、第2のネック凹部側壁の急勾配の設計は、比較的低い径方向の拡張力をもたらす。言い換えれば、設置トルクは拡張スリーブを効率的に押して回転させることができるが、スリーブを押して著しく拡張させることはできない。
【0049】
また、第2の拡張本体凹部が締結方向に面していることも有利であり得る。
【0050】
上記でより詳細に説明したように、少なくとも1つの拡張スリーブ当接壁によって生成される、拡張スリーブと拡張本体との間の軸方向の形状適合インターロックは、有利には、アンカー性能を向上させることができる。これに加えて、少なくとも1つの拡張スリーブ当接壁によって生成される、拡張スリーブと拡張本体との間の形状適合インターロックが著しいが、強すぎない場合に特に有利になり得ることが発見された。言い換えれば、拡張スリーブ当接壁が拡張スリーブを完全に停止することなく、拡張スリーブに単に「ブレーキをかける」とき、すなわち拡張スリーブ当接壁が拡張スリーブによって意図的に、および具体的にはアンカーを破壊することなく乗り越えられ得る場合に有利である。具体的には、拡張スリーブの完全な停止は、高負荷時に付着破壊が発生する可能性があり、それは多くの場合望ましくないパターンである。これは、急停止する拡張スリーブ当接壁が拡張スリーブに当てられるときに、アンカーの特性が拡張型から摩擦型に変わることで説明することができる。一方、拡張スリーブ当接壁が拡張スリーブによって乗り越えられるように設計されている場合、アンカー特性は、少なくとも部分的に、高負荷時に拡張型に戻り、それにより、最大負荷容量を、好ましくはコンクリートのコーン状破壊まで、さらに増やすことができるように、拡張スリーブにおいて拡張リザーブを有効にすることができる。したがって、拡張スリーブによって乗り越え可能な拡張スリーブ当接壁を有することにより、アンカーの特に長く滑らかな力-変位特性を作り出すことができる。
【0051】
上記を考慮して、少なくとも1つの拡張スリーブ当接壁は、拡張スリーブを乗り越え可能に妨害するように、具体的には、拡張スリーブの軸方向の移動を乗り越え可能に妨害するように設計されている場合に特に有利である。これは、好ましくは、拡張スリーブ当接壁の深さを徐々に変化させることによって達成され得る。ここで、「妨害する」は、インターロックを作り出すことができることを意味し、「乗り越え可能に」は、具体的には高負荷時に意図的にインターロックに打ち勝つことができることを意味する。かかる乗り越え可能な妨害は、例えば、拡張スリーブ先端または/および拡張スリーブ当接壁を軸方向に沿って傾斜させることによって作り出すことができ、したがって、拡張スリーブ当接壁に当接する拡張スリーブは、拡張スリーブが拡張スリーブ当接壁を軸方向に乗り越えることができるまで、くさび効果によって、軸方向の高負荷で径方向外側に押される。
【0052】
少なくとも1つの拡張スリーブ当接壁がアンカーボルトの後部に向かって先細になっている場合に特に有利である。したがって、好ましくは、拡張スリーブ当接壁は、少なくとも全体として、長手方向軸に対して垂直ではない。むしろ、拡張本体の半径は、拡張スリーブ当接壁においてアンカーボルトの後部に向かって徐々に減少する。これにより、特に確実な、および製造が容易な方法で乗り越え可能な妨害を作り出すことができる。好ましくは、アンカーボルトの長手方向軸に対して測定される、少なくとも1つの拡張スリーブ当接壁の最大勾配αmaxは、80°または70°よりも小さく、それは、拡張スリーブ当接壁のどの点もよりも大きな勾配を有しないことを意味する。より大きな角度では、特定の状況に対してインターロックが強すぎることが観察されている。通常の定義に従って、長手方向軸に対して測定される勾配は、具体的には、壁のある点での接線と長手方向軸との間の角度であると理解することができ、縦断面、すなわち、長手方向軸を含む平面における測定値である。
【0053】
また、好ましくは、アンカーボルトの長手方向軸に対して測定される、少なくとも1つの拡張スリーブ当接壁の最大勾配αmaxは、30°よりも大きい。勾配にこの下方限界を有することは、特に確実なインターロックを確保し、特に簡単な方法で容量を最大化することができる。
【0054】
拡張本体は、収束ゾーンの前に位置する移行ゾーンを有することができる。かかる移行ゾーンでは、拡張本体の収束は、収束ゾーンと比較して少なくとも急勾配ではない、または収束は、全く存在しなくてもよい。かかる移行ゾーンは、拡張スリーブを過度に拡張させること、および高負荷時に周囲の基板に過度の応力をかけることを防止することができる。収束が全く存在しない場合、移行ゾーンは、円筒形の側面を有することができ、円筒形は、広い定義で理解されるべきであり、円筒形底部は、円形であってもよいが、必ずしも円形である必要はない。
【0055】
少なくとも1つの拡張スリーブ当接壁は、好ましくは、拡張本体の比較的前方に位置し、したがって、拡張スリーブとのインターロックは、拡張スリーブがすでに確実に固定されたときにのみ生成される。したがって、時期尚早の引き抜きを効率的に回避することができ、コンクリート使用法を改善することができる。移行ゾーンが提供される場合、少なくとも1つの拡張スリーブ当接壁は、好ましくは、移行ゾーンの近く、または移行ゾーン内に位置する。これにより、拡張スリーブ当接壁の特に適切に調整された作動、およびしたがって特に優れた負荷特性をもたらすことができる。具体的には、この場合、拡張スリーブ当接壁は、拡張スリーブがすでに確実に固定され、基板への圧力の増加が比較的低い後期拡張段階の前では、拡張スリーブと係合しない。この段階において、インターロックの貢献が特に効率的であり得る。したがって、コンクリート使用法をさらに改善することができる。
【0056】
好ましくは、拡張本体は、少なくとも1つの拡張本体凹部に隣接する弓形の断面を有する。これにより、基板に特定の均一な負荷をかけることができる。通常の定義に従って、断面とは、長手方向軸に垂直な断面であることを意味する。
【0057】
特に好ましくは、拡張本体が複数の拡張本体凹部を有し、各拡張本体凹部が、具体的にはそれぞれの前端で、拡張スリーブ当接壁によって区画される。したがって、複数の拡張スリーブ当接壁もある。これにより、複数の壁の配置における単一の拡張スリーブ当接壁に関連する上記の利点を実現することができ、いくつかの拡張スリーブ当接壁を設けると、その性能および使いやすさが向上し得る。好ましくは、最小2つまたは最小3つの拡張本体凹部および拡張スリーブ当接壁が提供される。複数の拡張スリーブ当接壁を有することは、特に均一な荷重分布、およびしたがって、製造が容易である一方で、拡張スリーブの特に確実なインターロックを提供することができる。さらに、アンカーおよび/または周囲のコンクリートにおけるピーク荷重を回避することができ、それにより性能がさらに向上する。さらに、有利には軸方向に自由なスリーブ領域の設計を容易にし、それによって、低コストで性能をさらに向上させることができる。個々の拡張スリーブ当接壁は、具体的には、別の当接壁から分離している、および/またはそれと区別することができる。
【0058】
この本文では、「少なくとも1つの拡張本体凹部」の特性が繰り返し参照される。本発明に従って、複数の拡張本体凹部が提供される場合、複数の拡張本体凹部のうちの少なくとも1つがこれらの特性を有することができ、または特に明記されない限り、複数の拡張本体凹部のすべてがこれらの特性を有することができる。この本文では、「少なくとも1つの拡張スリーブ当接壁」の特性が繰り返し参照される。本発明に従って、複数の拡張スリーブ当接壁が提供される場合、複数の拡張スリーブ当接壁の少なくとも1つがこれらの特性を有することができ、または特に明記されない限り、複数の拡張スリーブ当接壁のすべてがこれらの特性を有することができる。
【0059】
拡張スリーブ当接壁が周方向に並んで配設されていること、すなわち、それらが軸方向の同一位置に重複することが特に好ましい。好ましくは、少なくとも、すべての拡張スリーブ当接壁と交差する長手方向軸に垂直な平面上にある。これにより、特に良好に調整され、ひいては効率的な、製造しやすいスリーブ構造とのインターロックが可能になる。
【0060】
拡張本体が最大8個、好ましくは最大6個、特に好ましくは最大4個の拡張スリーブ当接壁を有する場合、特に有利である。したがって、拡張スリーブ当接壁は比較的少なく、また拡張本体凹部も比較的少ない。これにより、それぞれの拡張スリーブ当接壁、および拡張本体凹部を特に容易な方法で特に効果的に設計することができる。具体的には、要素が少ししかないため、複雑な設計を必要とせずに比較的幅広くすることができる。幅の広い拡張スリーブ当接壁により、効果的なインターロックが可能になり、幅の広い拡張本体凹部により、拡張スリーブの効果的な曲げ入れが可能になる。特に好ましくは、拡張本体は、3つまたは4つの拡張本体凹部を備え、各々が拡張スリーブ当接壁によって区画される、すなわち3つまたは4つの拡張スリーブ当接壁がある。
【0061】
好ましくは、拡張スリーブ当接壁は、アンカーボルト上に回転対称な様式で配設され、拡張スリーブ当接壁は、拡張本体を中心として等距離に配設され、および/または拡張スリーブ当接壁は、すべて通常の製造公差の範囲内で、等しい幅を有している。かかる対称的な配置により、荷重バランスを向上させ、したがって、性能をさらに向上させることができる。
【0062】
頂角βがより大きい場合、急勾配の拡張スリーブ当接壁がすでに急勾配の収束ゾーンによって覆われる効果の可能性が高くなる。それがより小さい場合、拡張スリーブ当接壁においてインターロックがある場合でも、基板荷重が高くなる。
【0063】
好ましくは、アンカーボルトおよび/または拡張本体の最大直径は、30mmまたは25mm未満である。本発明は、比較的小さなアンカーに対して特に有用である。
【0064】
本発明はまた、本発明の拡張アンカーを使用するための、具体的には設置するための方法に関し、拡張本体は、具体的には拡張スリーブを拡張させるために、拡張スリーブに対して後方に移動され、拡張スリーブは、少なくとも1つの拡張スリーブ当接壁に当たる。具体的には、本発明はまた、本発明の拡張アンカーを使用するための、具体的には設置するための方法に関し、アンカーは、孔に挿入され、拡張本体は、アンカーが孔に位置する状態で、具体的には少なくとも拡張スリーブの先端が孔に位置する状態で、拡張スリーブに対して後方に移動され、拡張スリーブは、少なくとも1つの拡張スリーブ当接壁に当たる。したがって、アンカーは、意図した通りに使用および/または設置される。拡張本体を拡張スリーブに対して後方に移動させることは、好ましくは、アンカーボルトを拡張本体が取り付けられた状態で、孔から引っ張ることによって、または/および拡張本体をアンカーボルトに対して後方に移動させることによって実現することができる。
【0065】
さらに、拡張本体が拡張スリーブに対して後方に移動され、拡張スリーブの一領域が少なくとも1つの拡張本体凹部に挿入される場合に有利である。
【0066】
拡張アンカーに関連してここに記載される機能は、拡張アンカーを使用するための方法に使用することもでき、拡張アンカーを使用するための方法に関連してここに記載される機能は、拡張アンカー自体に使用することもできる。
【0067】
本発明は、添付の図面に概略的に描写される好ましい実施例を参照して以下により詳細に説明され、以下に提示される実施例の個々の特徴は、本発明の技術的範囲内で個別にまたは任意の組み合わせで実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1】コンクリート基板に位置する本発明の拡張アンカーの側面図である。
【
図2】
図1の拡張アンカーのアンカーボルトの側面図である。
【
図3】
図1の拡張アンカーのアンカーボルトの、
図2による断面A-Aを示す図である。
【
図4】
図1の拡張アンカーのアンカーボルトの、
図2による断面B-Bを示す図である。
【
図5】
図1の拡張アンカーのアンカーボルトの第1の斜視図である。
【
図6】
図1の拡張アンカーのアンカーボルトの第2の斜視図である。
【
図7】
図1の拡張アンカーの前部領域、すなわち先端領域の拡大側面図である。
【
図8】
図1の拡張アンカーの、
図7による断面C-Cを示す図である。
【
図9】
図1の拡張アンカーの、
図7による断面D-Dを示す図である。
【
図10】
図1の拡張アンカーの、
図8による長手方向断面E-Eを示す図である。
【
図11】
図1の拡張アンカーの、
図8による長手方向断面F-Fを示す図である。
【
図12】
図1の拡張アンカーの前部領域、すなわち先端領域の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
図は、本発明の拡張アンカーの実施例を示す。拡張アンカーは、長手方向軸99を定義する細長いアンカーボルト10と、アンカーボルト10を囲む拡張スリーブ30と、アンカーボルト10に、すなわちアンカーボルト10の前端の近傍に設けられた、拡張スリーブ30のための拡張本体12と、を備える。
【0070】
具体的には
図2および
図11に示すように、拡張本体12は、拡張本体12が拡張スリーブ30に後方方向に引き込まれるとき、すなわち拡張スリーブ30が拡張本体12上で拡張本体12に向かって拡張本体12に対して前方に移動されるとき、拡張スリーブ30を径方向に拡張させるように設計された収束ゾーン23を有する。この目的のために、拡張本体12の側面は、アンカーの後部に向かって収束ゾーン23に収束する、すなわち、少なくともアンカーが設置される前は、拡張スリーブ30に向かって収束する。本実施例では、拡張本体12の側面は、
図11に示すように、収束の焦点を長手方向軸99上に有し、頂角βを有する収束ゾーン23において円錐形である。しかしながら、これは単なる例であり、他の収束設計も可能である。
【0071】
本実施例では、拡張本体12はまた、収束ゾーン23の前方かつそれに隣接して位置する移行ゾーン22、および移行ゾーン22の前方かつそれに隣接して位置する先端ゾーン21を有する。移行ゾーン22では、後方への収束は、収束ゾーン23と比較して小さい、または後方への収束は、ゼロであっても、好ましくは逆方向ではない、すなわち前方への収束ではない。本実施例では、収束は、収束ゾーン23には存在しない、すなわちゼロであり、拡張本体12は、収束ゾーン23において円筒状の側面、具体的には円形底部を有する円筒状の側面を有する。先端ゾーン21では、拡張本体12の側面は、アンカーの前端に向かって収束する。
【0072】
アンカーボルト10は、拡張本体12に隣接かつその後方に位置するネック25を有する。拡張スリーブ30は、少なくともアンカーの設置前は、このネック25を少なくとも部分的に取り囲んでいる。ネック25において、アンカーボルト10の直径は、最小であり得る。
【0073】
本実施例では、アンカーは、スタッドタイプである。アンカーボルト10は、ネック25の後方端に、拡張スリーブ30と軸方向に係合するための、および拡張スリーブ30を前方に前進させるための前方に面する肩部17を有する。本場合、拡張本体12は、例として、アンカーボルト10と一体である。
【0074】
アンカーボルト10の後部領域において、アンカーボルト10は、後方に向けられた張力をアンカーボルト10に導入するための張力導入構造を提供する外側ネジ18を備えている。ネジ18は、
図1に破線の矢印として示される締結方向を定義する。締結方向は、ナット8をアンカーボルト10の先端に向かって前進させるために、ネジ18上に位置するナット8を回転させる必要がある方向である。図示の実施例の場合、右手方向
(時計回り)である。
【0075】
拡張スリーブ30は、拡張スリーブ30の前端から始まり、拡張スリーブ30の後端に向かって延在する複数のスリット36’、36’’、36’’’、36’’’’を備えている。スリット36’、36’’、36’’’、36’’’’は、拡張スリーブ30の径方向の拡張を容易にする。
【0076】
拡張本体12の側面には、複数の拡張本体凹部66’、66’’、66’’’、66’’’’が設けられている(本場合では例示的に4個であるが、異なる数が設けられてもよい)。これらの拡張本体凹部66’、66’’、66’’’、66’’’’は、拡張本体12の外側から径方向に出入り可能である。以下でさらに詳細に説明するそれらの形状に起因して、側面から見ると、それらの各々がおおよそ三角形の輪郭を有する。しかしながら、他の外形も可能である。断面において、拡張本体12は、拡張本体凹部66’、66’’、66’’’、66’’’’で円から逸脱する。
【0077】
拡張本体凹部66の各々は、その前端が拡張スリーブ当接壁60によって終端されている。本実施例では、4個の拡張本体凹部66’、66’’、66’’’、66’’’’が存在するため、4個の拡張スリーブ当接壁60’、60’’、60’’’、60’’’’も存在する。これらの拡張スリーブ当接壁60’、60’’、60’’’、60’’’’の各々は、拡張スリーブ30に面しており、すなわち後方に面しており、拡張スリーブ30の前端、すなわち先端に対して、乗り越え可能な軸方向止め具を形成する。
【0078】
図10に示すように、および例として、拡張スリーブ当接壁60’’’において、拡張スリーブ当接壁60’、60’’、60’’’、60’’’’の各々は、長手方向軸99
の長手方向
に、最大勾配αmaxを有する。拡張スリーブ当接壁60’、60’’、60’’’、60’’’’は、
円周方向に並び、長手方向軸99
の同じ位置に位置し、
かつ円周方向において重複しない。拡張スリーブ当接壁60’、60’’、60’’’、60’’’’は、すべて移行ゾーン22のすぐ後方の収束ゾーン23に位置する。
【0079】
拡張本体凹部66’、66’’、66’’’、66’’’’の各々は、第1の拡張本体凹部側壁および第2の拡張本体凹部側壁を有し、2つの拡張本体凹部側壁は、それぞれの拡張本体凹部66’、66’’、66’’’、66’’’’を円周方向に区画している。したがって、拡張本体凹部側壁は、円周側壁である。拡張本体凹部66’の場合、第1の拡張本体凹部側壁は参照番号61’で標記され、第2の拡張本体凹部側壁は参照番号62’でそれぞれ標記されている。残りの拡張本体凹部66’’、66’’’、66’’’’の拡張本体凹部側壁は、拡張本体凹部66’のものと類推されるが、分かりやすさのために参照番号が設けられていない。
【0080】
第1の拡張本体凹部側壁61は、ネジ18の締結方向に対して後縁を形成し、それは、ネジ18の締結方向において、それぞれの拡張本体凹部66’、66’’、66’’’、66’’’’の第2の拡張本体凹部側壁62の上流に、すなわち
図1の破線の矢印で示す方向に位置している。したがって、第2の拡張本体凹部側壁62は、ネジ18の締結方向に対して前縁を形成し、ネジ18の締結方向に面している。拡張本体凹部66’、66’’、66’’’、66’’’’の各々において、それぞれの第1の拡張本体凹部の側壁61は、それぞれの第2の拡張本体凹部側壁62と交わり、それによって頂点を形成する。
図8に特によく見られるように、拡張本体凹部66’、66’’、66’’’、66’’’’の各々において、それぞれの第2の拡張本体凹部側壁62は、断面が凸状に湾曲している。
【0081】
拡張本体凹部66’、66’’、66’’’、66’’’’の各々において、それぞれの第1の拡張本体凹部側壁61は、断面において、それぞれの第2の拡張本体凹部側壁62よりも急勾配である(すなわち、長手方向軸99から始まる径方向平面に近い)。その結果、拡張本体凹部66’、66’’、66’’’、66’’’’の各々は、非軸対称断面を有する。拡張本体12は、拡張本体凹部66’、66’’、66’’’、66’’’’の前方に円形断面を有するので、この設計は、
図8で特によく見られるように、スリーブ当接壁60’、60’’、60’’’、60’’’’の各々が非軸対称断面を有する結果となる。特に、拡張スリーブ当接壁60’、60’’、60’’’、60’’’’の各々の
長手方向軸の軸心方向に見た幅は、締結方向で円周方向に見たときに
徐々に増加し、
急に減少する。
【0082】
ネック25の側面には、複数のネック凹部76’、76’’、76’’’、76’’’’が設けられている(本場合では例示的に4個であるが、異なる数が設けられてもよい)。これらのネック凹部76’、76’’、76’’’、76’’’’は、アンカーボルト10の外側から径方向に出入り可能である。ネック凹部76’、76’’、76’’’、76’’’’は各々長手方向の溝であり、長手方向軸99に平行に延在している。断面において、ネック25は、ネック凹部76’、76’’、76’’’、76’’’’において円から逸脱する。ネック凹部76’、76’’、76’’’、76’’’’の各々は、拡張本体凹部66’66’’、66’’’、66’’’’のうちの1つと拡張スリーブ当接壁60’、60’’、60’’’、60’’’’のうちの1つとに円周方向に重複しており、これは
図4において特によく見られる。特に、凹部76’は、凹部66’と円周方向に重複し、壁60’と重複し、凹部76’’は、凹部66’’と壁60’’と重複し、以下同様である。
【0083】
図9で特によく分かるように、拡張スリーブ30は、ネック凹部76’、76’’、76’’’、76’’’’に係合する。この目的のために、拡張スリーブは、軸方向に延在する厚みを有し、この厚みは、ネック凹部76’、76’’、76’’’、76’’’’に突出している。この係合は、回転ロックを形成し、これは、アンカーボルト10を中心とした拡張スリーブ30の回転を防止する。特に、回転ロックは、各スリット36’、36’’、36’’’、36’’’’が第1の拡張本体凹部側壁61のうちの1つと円周方向に重複する位置に拡張スリーブ30をロックし、その結果、スリット36’、36’’、36’’’、36’’’’の各々は、第1の拡張本体凹部側壁61のうちの1つの上で径方向に位置する。
【0084】
ネック凹部76’、76’’、76’’’、76’’’’の各々は、第1のネック凹部側壁および第2のネック凹部側壁を有し、これらの2つのネック凹部側壁は、それぞれのネック凹部76’、76’’、76’’’、76’’’’を円周方向に制限する。したがって、ネック凹部側壁は、円周側壁である。ネック凹部76’の場合、それぞれ、第1のネック凹部側壁は参照番号71’で標記され、第2のネック凹部側壁は参照番号72’で標記されている。残りのネック凹部76’’、76’’’、76’’’’のネック凹部側壁は、ネック凹部76’のものと類推されるが、分かりやすさのために参照番号が設けられていない。
【0085】
第1のネック凹部側壁71は、ネジ18の締結方向に対して後縁を形成し、それは、ネジ18の締結方向において、それぞれのネック凹部76’、76’’、76’’’、76’’’’の第2のネック凹部側壁72の上流に、すなわち
図1の破線の矢印で示す方向に位置している。したがって、第2のネック凹部側壁72は、ネジ18の締結方向に対して前縁を形成し、ネジ18の締結方向に面している。ネック凹部76’、76’’、76’’’、76’’’’の各々において、それぞれの第1のネック凹部の側壁71は、それぞれの第2のネック凹部側壁72と交わり、それによって頂点を形成する。ネック凹部76’、76’’、76’’’、76’’’’の各々において、それぞれの第1のネック凹部側壁71は、断面において凸状に湾曲している。ネック凹部76’、76’’、76’’’、76’’’’の各々において、それぞれの第2のネック凹部側壁72は、断面において、それぞれの第1のネック凹部側壁71よりも急勾配である(すなわち、長手方向軸99から始まる径方向平面に近い)。このすべては、
図9を参照すると特によくわかる。
【0086】
アンカーが設置されると、それは、前端が最初に基板6の孔に導入される。続いて、拡張本体12は、拡張スリーブ30の前端領域に引き込まれる、すなわち、拡張スリーブ30は、拡張本体12に対して前方に、および拡張本体12の上に押される。本実施例では、これは、アンカーボルト10を拡張本体12と共に後方に引っ張ることによって、具体的には、アンカーボルト10のネジ18に設けられたナット8を締結方向に締結することによって実現される。基板6は、拡張スリーブ30に径方向の圧力を加えるので、拡張スリーブ30は、拡張本体12が拡張スリーブ30の前端領域に引き込まれると、拡張本体凹部66’、66’’、66’’’、66’’’’内に径方向にわずかに曲がる。拡張本体凹部66’、66’’、66’’’、66’’’’の非軸対称断面、および回転ロックによって強制される第1の拡張本体凹部側壁61のうちの1つに対する各々のスリット36の重複関係は、この曲げ入れプロセスを容易にする。ある段階で、拡張スリーブ30は、その先端が曲げ入れ領域にある状態で、拡張スリーブ当接壁60’、60’’、60’’’、60’’’’に軸方向に当たる。これにより、拡張スリーブ当接壁60’、60’’、60’’’、60’’’’において、拡張スリーブ30と拡張本体12との間に形状適合型の軸方向のインターロックが生じる。このインターロックは、拡張機構の一時的に変更をもたらし、基板6の過度の応力なくして、引き抜き抵抗を増加させることができる。
【0087】
拡張スリーブ当接壁60’、60’’、60’’’、60’’’’と拡張スリーブ30との間の境界面は、高引張負荷で意図的にインターロックに打ち勝つことができるように設計されており、拡張機構の復帰、および潜在的には高負荷時に特に良好な抵抗をもたらす。
【0088】
ナット8の締結は、設置の開始時に、アンカーボルト10を拡張スリーブ30に対して締結方向に回転させる傾向がある。しかしながら、第2のネック凹部側壁72は締結方向に前縁を形成し、したがってアンカーボルト10が締結方向に回転すると拡張スリーブ30に対して作用するのは第2のネック凹部側壁72であるため、そして、これらの第2のネック凹部側壁72は比較的急勾配であるので、これは、ネック25における拡張スリーブ30の時期尚早な径方向の拡張をもたらさない。