(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】ポリカーボネート・ポリエステル
(51)【国際特許分類】
C08G 63/64 20060101AFI20220902BHJP
【FI】
C08G63/64
(21)【出願番号】P 2021061219
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2022-01-20
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595009383
【氏名又は名称】長春人造樹脂廠股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHANG CHUN PLASTICS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】7F., No.301, Songkiang Rd., Zhongshan Dist Taipei City,Taiwan 104
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】黄 勁叡
(72)【発明者】
【氏名】王 炳傑
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0005340(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0062049(KR,A)
【文献】特表2016-533428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00 - 64/42
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)、式(2)及び式(3)
で表される残基を含み、
【化1】
式(1)
【化2】
式(2)
【化3】
式(3)
R
1はC
2-C
15ヒドロカルビル基であり、
R
2は、C
4-C
16ヒドロカルビル基であり、
前記式(2)
で表される残基と前記式(1)
で表される残基とのモル比は、
0.1~0.6の範囲にあり、
前記式(1)で表される残基は、
【化4】
を含み、及び、
*は結合手を表すポリカーボネート・ポリエステル。
【請求項2】
前記式(1)
で表される残基は、C
2-C
15の脂肪族直鎖又は分岐鎖ジオール残基を更に含む請求項
1に記載のポリカーボネート・ポリエステル。
【請求項3】
前記C
2-C
15の脂肪族直鎖又は分岐鎖ジオール残基は、
【化5】
、
【化6】
、
【化7】
、
【化8】
、
【化9】
、
【化10】
、
【化11】
、
【化12】
、
【化13】
、
【化14】
、
【化15】
、
【化16】
、
【化17】
、
【化18】
、
【化19】
、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、*は結合手を表す請求項
2に記載のポリカーボネート・ポリエステル。
【請求項4】
前記C
2-C
15の脂肪族直鎖又は分岐鎖ジオール残基は、
【化20】
、
【化21】
、
【化22】
、
【化23】
、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、*は結合手を表す請求項
2に記載のポリカーボネート・ポリエステル。
【請求項5】
R
2は、
【化24】
、
【化25】
、又はそれらの組み合わせであり、*は結合手を表す請求項1、2、3
又は4に記載のポリカーボネート・ポリエステル。
【請求項6】
式(3)
で表される残基は、前記ポリカーボネート・ポリエステルの50モル%以下を占める請求項1、2、3、4
又は5に記載のポリカーボネート・ポリエステル。
【請求項7】
前記式(1)のR
1は、多環アルキル基である請求項
1に記載のポリカーボネート・ポリエステル。
【請求項8】
前記式(1)のR
1は、二環アルキル基又は三環アルキル基である請求項
1に記載のポリカーボネート・ポリエステル。
【請求項9】
下記式(4)
で表される残基を更に含み、
【化26】
式(4)
R
3は、C
3-C
20ヒドロカルビル基であり、
R
4、R
5及びR
6は、C
1-C
6ヒドロカルビル基であり、
n
1、n
2、n
3、n
4、n
5及びn
6は、0又は1である請求項1、2、3、4、5、6、7
又は8に記載のポリカーボネート・ポリエステル。
【請求項10】
R
3は、C
3-C
20脂肪族ヒドロカルビル基又はC
4-C
20芳香族ヒドロカルビル基である請求項
9に記載のポリカーボネート・ポリエステル。
【請求項11】
前記式(4)
で表される残基は、
【化27】
、
【化28】
、
【化29】
、
【化30】
、
【化31】
、
【化32】
、
【化33】
、
【化34】
、
【化35】
、
【化36】
、
【化37】
、
【化38】
、
【化39】
、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、*は結合手を表す請求項
9に記載のポリカーボネート・ポリエステル。
【請求項12】
前記式(2)
で表される残基は、炭酸ジアルキル単量体から誘導される請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10
又は11に記載のポリカーボネート・ポリエステル。
【請求項13】
前記式(4)
で表される残基は、ポリカーボネート・ポリエステルの0.4モル%よりも小さいか、又はそれに等しい請求項
9、10又は11に記載のポリカーボネート・ポリエステル。
【請求項14】
前記式(4)
で表される残基は、ポリカーボネート・ポリエステルの0.05モル%~0.2モル%を占める請求項
9、10又は11に記載のポリカーボネート・ポリエステル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容は、ポリカーボネート・ポリエステルに関し、特に、所定の残基(即ち、下記式(1)、式(2)及び式(3))を含むポリカーボネート・ポリエステルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ポリカーボネートは、耐熱性、耐薬品性及び耐衝撃性が悪い。ポリカーボネートをポリエステルと併用すれば、組成物の耐薬品性を高めることができるが、当該組成物の耐熱性及び耐衝撃性が著しく低下する。従って、如何にポリカーボネート・ポリエステルが良好な耐熱性及び良好な機械的性能を兼ね備えるようにするかは、本分野において解決すべき課題となっている。
【発明の概要】
【0003】
本開示内容の一態様は、下記式(1)、式(2)及び式(3)の残基を含み、
【化1】
式(1)
【化2】
式(2)
【化3】
式(3)
R
1はC
2-C
15ヒドロカルビル基であり、R
2は、C
4-C
16ヒドロカルビル基であり、式(2)の残基と式(1)の残基とのモル比は、0.05より大きく0.8未満の範囲にあり、*は結合手を表すポリカーボネート・ポリエステルを提供する。
【0004】
本開示内容のいくつかの実施例において、式(2)の残基と式(1)の残基とのモル比は、0.1~0.6の範囲にある。
【0005】
本開示内容のいくつかの実施例において、式(1)の残基は、
【化4】
を含む。
【0006】
本開示内容のいくつかの実施例において、式(1)の残基は、C2-C15の脂肪族直鎖又は分岐鎖ジオール残基を更に含む。
【0007】
本開示内容のいくつかの実施例において、C
2-C
15の脂肪族直鎖又は分岐鎖ジオール残基は、
【化5】
、
【化6】
、
【化7】
、
【化8】
、
【化9】
、
【化10】
、
【化11】
、
【化12】
、
【化13】
、
【化14】
、
【化15】
、
【化16】
、
【化17】
、
【化18】
、
【化19】
、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、*は結合手を表す。
【0008】
本開示内容のいくつかの実施例において、C
2-C
15の脂肪族直鎖又は分岐鎖ジオール残基は、
【化20】
、
【化21】
、
【化22】
、
【化23】
、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、*は結合手を表す。
【0009】
本開示内容のいくつかの実施例において、R
2は、
【化24】
、
【化25】
、又はそれらの組み合わせであり、*は結合手を表す。
【0010】
本開示内容のいくつかの実施例において、式(3)の残基は、ポリカーボネート・ポリエステルの50モル%以下を占める。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示内容の記述をより詳細化して、充実させるためには、以下、本開示内容の実施態様と具体的な実施例について、説明的な描述を提出するが、これは本開示内容の具体的な実施例を実施又は運用する唯一の形式ではない。下記開示された各実施例は、有益な状況で互に組み合わせ又は取って代ってもよいし、1つの実施例に他の実施例を加えてもよく、更に記載し又は説明する必要はない。以下の叙述において、下記の実施例を読者に十分に理解させるために、多くの所定の細部を詳しく記述する。しかしながら、これらの所定の細部がない場合でも、本開示内容の実施例を実行することができる。
【0012】
本開示内容の一態様は、下記式(1)、式(2)及び式(3)の残基を含み、
【化26】
式(1)
【化27】
式(2)
【化28】
式(3)
R
1はC
2-C
15ヒドロカルビル基であり、R
2は、C
4-C
16ヒドロカルビル基であり、*は結合手を表すポリカーボネート・ポリエステルを提供する。
【0013】
式(2)の残基のモル数が式(1)の残基のモル数よりも小さく、即ち、使用される炭酸ジアルキル単量体のモル数がジオール単量体のモル数よりも小さい。なお、式(2)の残基と式(1)の残基とのモル比が0.05より大きく0.8未満の範囲にある場合、ポリカーボネート・ポリエステルは良好な耐熱性及び機械的性能を兼ね備えることができる。いくつかの実施例において、式(2)の残基と式(1)の残基とのモル比は、0.1~0.6であるが、例えば、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5又は0.55であってもよい。
【0014】
いくつかの実施例において、式(1)の残基は、ジオール単量体から誘導される。いくつかの実施例において、ジオール単量体は、例えば、ビシクロアルキルジアルキルアルコール又はトリクロアルキルジアルキルアルコールのような多環アルキルジアルキルアルコールを含む。いくつかの実施例において、式(1)のR
1は、例えば、ビシクロアルキル基又はトリクロアルキル基のようなC
7-C
17多環アルキル基である。いくつかの実施例において、式(1)の残基は、
【化29】
を含み、R
1は、
【化30】
である。いくつかの実施例において、この残基は、トリシクロデカンジメタノール(tricyclodecane dimethanol;TCDDM)から誘導される。
【0015】
いくつかの実施例において、ジオール単量体は、脂肪族直鎖グリコール又は脂肪族分岐鎖ジオールを更に含む。いくつかの実施例において、式(1)の残基は、C2-C15の脂肪族直鎖又は分岐鎖ジオール残基を更に含む。
【0016】
いくつかの実施例において、脂肪族直鎖グリコールは、例えば、エチレングリコール(ethylene glycol;EG)、プロピレングリコール(propylene glycol;PG)、ブタンジオール(butanediol;BDO)、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール又はデカンジオールであってよい。いくつかの実施例において、式(1)の残基はC2-C9の脂肪族直鎖ジオール残基を更に含み、R1はC2-C9直鎖アルキル基である。いくつかの実施例において、式(1)の残基はC2-C6の脂肪族直鎖ジオール残基を更に含み、R1はC2-C6直鎖アルキル基である。いくつかの実施例において、式(1)の残基はC2-C4の脂肪族直鎖ジオール残基を更に含み、R1はC2-C4直鎖アルキル基である。
【0017】
いくつかの実施例において、脂肪族分岐鎖ジオールは、例えば、2-メチル-1,3-プロパンジオール(2-methyl-1,3-propanediol;MPO)、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-エチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール又は2、2-ジメチル-1,3-プロパンジオールであってよい。いくつかの実施例において、式(1)の残基はC4-C9の脂肪族分岐鎖ジオール残基を更に含み、R1はC4-C9分岐鎖アルキル基である。
【0018】
いくつかの実施例において、C
2-C
15の脂肪族直鎖又は分岐鎖ジオール残基は、
【化31】
、
【化32】
、
【化33】
、
【化34】
、
【化35】
、
【化36】
、
【化37】
、
【化38】
、
【化39】
、
【化40】
、
【化41】
、
【化42】
、
【化43】
、
【化44】
、
【化45】
、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、*は結合手を表す。
【0019】
いくつかの実施例において、C
2-C
15の脂肪族直鎖又は分岐鎖ジオール残基は、
【化46】
、
【化47】
、
【化48】
、
【化49】
、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、*は結合手を表す。
【0020】
いくつかの実施例において、式(2)の残基は、炭酸ジアルキル単量体から誘導される。いくつかの実施例において、炭酸ジアルキル単量体は、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate;DMC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate;DEC)、ジプロピルカーボネート(dipropyl carbonate)、ジブチルカーボネート(dibutyl carbonate;DBC)、ジペンチルカーボネート(dipentyl carbonate)、ジフェニルカーボネート(diphenyl carbonate)又はその組み合わせである。いくつかの実施例において、式(2)の残基は、ジブチルカーボネートから誘導される。
【0021】
式(3)の残基は、二酸単量体から誘導される。いくつかの実施例において、二酸単量体は、テレフタル酸(terephthalic acid;PTA)又は2,6-ナフタレンジカルボン酸(2,6-naphthalenedicarboxylic acid;NDA)のような芳香族ジカルボン酸を含む。いくつかの実施例において、式(3)のR
2は、C
6-C
16芳香基である。いくつかの実施例において、式(3)のR
2は、
【化50】
、
【化51】
、又はそれらの組み合わせであり、*は結合手を表す。
【0022】
いくつかの実施例において、式(3)の残基は、ポリカーボネート・ポリエステルの50モル%以下(即ち、それよりも小さいか、又は等しい)を占める。いくつかの実施例において、二酸単量体のモル数がジオール単量体、炭酸ジアルキル単量体及び二酸単量体のモル数の合計の50モル%よりも小さいか、又はそれに等しい。
【0023】
いくつかの実施例において、ポリカーボネート・ポリエステルは、下記式(4)の残基を更に含み、
【化52】
式(4)
R
3は、C
3-C
20ヒドロカルビル基であり、R
4、R
5及びR
6は、C
1-C
6ヒドロカルビル基であり、n
1、n
2、n
3、n
4、n
5及びn
6は、0又は1である。いくつかの実施例において、R
3は、C
3-C
20脂肪族ヒドロカルビル基又はC
4-C
20芳香族ヒドロカルビル基である。
【0024】
いくつかの実施例において、式(4)の残基は、
【化53】
、
【化54】
、
【化55】
、
【化56】
、
【化57】
、
【化58】
、
【化59】
、
【化60】
、
【化61】
、
【化62】
、
【化63】
、
【化64】
、
【化65】
、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、*は結合手を表す。
【0025】
いくつかの実施例において、式(4)の残基は、式(4)のグループを有する単量体から誘導され、式(4)のグループを有する単量体は、
【化66】
、
【化67】
、
【化68】
、
【化69】
、
【化70】
、
【化71】
、
【化72】
、
【化73】
、
【化74】
、
【化75】
、
【化76】
、
【化77】
、
【化78】
、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、*は結合手を表す。
【0026】
いくつかの実施例において、式(4)の残基は、ポリカーボネート・ポリエステルの0.4モル%よりも小さいか、又はそれに等しい。いくつかの実施例において、式(4)の残基は、ポリカーボネート・ポリエステルの0.05モル%~0.2モル%を占める。
【0027】
本開示内容のポリカーボネート・ポリエステルは、例えば、食品接触材(food contact)、自動車用金型(automotive molds)、商業家庭用品(commercial housewares)、複合消耗品(compounders consumer)、電子製品(electronics)、消費者家庭用品(consumer housewares)、デバイス筐体(device housings)、ディスプレイ(displays)、室内照明器具(in-store fixtures)、電子製品包装(electronic packaging)、室外標識(outdoor signs)、パーソナルケア用品(personal care)、化粧品包装(cosmetics packaging)、スポーツ用品ツール(sporting equipment tools)、おもちゃ(toys)及びスポーツ水筒(water/sport bottles)等の成形材に適用されることができるが、これらに限定されない。
【0028】
上記のように、本開示内容のポリカーボネート・ポリエステルは、上記単量体を反応させることで形成される。いくつかの実施例において、本開示内容のポリカーボネート・ポリエステルの調製は、各種の単量体を触媒と均一に混合して混合物を形成する操作(a)と、混合物を適切な圧力環境に置いて加熱し、単量体を反応させてオリゴマーを生成する操作(b)と、オリゴマーを含む混合物を加熱し、真空引きすることで反応し切れていない単量体を除去し、続いて、混合物をこの加熱温度で持続的に置き、混合物におけるオリゴマーを重合反応させてポリカーボネート・ポリエステルを生成する操作(c)と、を含む。
【0029】
いくつかの実施例において、操作(a)は、オートクレーブで行われる。いくつかの実施例において、操作(a)では、撹拌することで各種の単量体を触媒と均一に混合し、撹拌レートは、100rpm~500rpmであってよい。
【0030】
いくつかの実施例において、操作(a)の触媒は、例えば、チタン(IV)ブトキシド(titanium(IV)butoxide;TBT)、三酸化アンチモン(Sb2O3)、三酢酸アンチモン(Sb(OAc)3)、二酸化ゲルマニウム(GeO2)又はチタン(IV)イソプロポキシド(titanium(IV)isopropoxide)であってよいが、これらに限定されない。
【0031】
いくつかの実施例において、操作(a)において、例えば、酢酸マグネシウム(Mg(OAc)2)又は酢酸亜鉛(Zn(OAc)2)のような助触媒を選択的に添加してもよいが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、操作(a)では、トリオール、架橋剤、熱安定剤又はそれらの組み合わせを選択的に添加してもよい。トリオールは、例えば、上記の式(4)のグループを有する単量体である。架橋剤は、例えば、トリメリット酸(trimellitic acid;TMA)又はトリメチロールプロパン(trimethylolpropane;TMP)である。熱安定剤は、例えば、亜リン酸トリフェニル(triphenyl phosphite)、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸及びその塩類、リン酸トリメチル(trimethyl phosphate;TMP)、リン酸トリエチル(triethyl phosphate;TEP)、リン酸トリプロピル(tripropyl phosphate;TPP)、3,9-ビス(オクタデシルオキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(3,9-Bis(octadecyloxy)-2,4,8,10-tetraoxa-3,9-diphosphaspiro[5.5]undecane)、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジホスファイト(Bis(2,6-di-ter-butyl-4-methylphenyl)pentaerythritol-diphosphite)、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(Tris(2,4-di-tert-butylphenyl)phosphite)、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)4,4’-ビフェニルジ(tetrakis(2,4-di-tert-butylphenyl)4,4’-biphenyldi)である。
【0032】
いくつかの実施例において、操作(b)の加熱とは、室温から220℃まで昇温するか、又は室温から260℃まで昇温することである。いくつかの実施例において、操作(b)の適切な圧力は、1atm~6atmにある。いくつかの実施例において、操作(b)の適切な圧力は、1.5atm~4atmにある。
【0033】
いくつかの実施例において、操作(b)で生成した水(又はアルコール、フェノール又は塩酸ガス)の量を観察することで、反応の状況を判断する。具体的には、理論計算によって、混合物における全ての単量体が反応した後に生成した理論上の水(又はアルコール、フェノール又は塩酸ガス)の量を得ることができる。生成した水(又はアルコール、フェノール又は塩酸ガス)の量が理論上の水(又はアルコール、フェノール又は塩酸ガス)の量の80%以上(例えば、85%、90%又は95%)に達すると、反応がほぼ完了し、操作(c)を行ってもよいことを表す。
【0034】
いくつかの実施例において、操作(c)の加熱とは、250℃~300℃まで昇温することである。いくつかの実施例において、操作(c)の真空引きによって、環境圧力を3torr以下にする。いくつかの実施例において、操作(c)の真空引きによって、環境圧力を1torrよりも低くする。いくつかの実施例において、操作(c)の真空引きは30~60分間、例えば、40分間又は50分間行われる。
【0035】
いくつかの実施例において、オリゴマーが重合反応する時にジオールが脱出し、混合物の粘度が徐々に高くなる。混合物の粘度が所定値に達すると、生成物を収集することができる。いくつかの実施例において、操作(c)の時間は、1.5時間~8時間である。
【0036】
以下の実験例は、本発明の特定の態様を詳しく説明するとともに、当業者が本発明を実施できるようにするためのものである。以下の実験例は、本発明を制限するためのものではない。
【0037】
比較例1~4及び実験例1~4
トリシクロデカンジメタノール(tricyclodecane dimethanol;TCDDM)、1,4-シクロヘキサンジメタノール(1,4-cyclohexanedimethanol;CHDM)、ジブチルカーボネート(dibutyl carbonate;DBC)、エチレングリコール(ethylene glycol;EG)、テレフタル酸(terephthalic acid;PTA)、トリメリット酸(trimellitic acid;TMA)、トリメチロールプロパン(trimethylolpropane;TMP)、チタン(IV)ブトキシド(titanium(IV)butoxide;TBT)及びMg(OAc)2を異なる重量割合でオートクレーブに加え、均一に撹拌して、比較例1~4及び実験例1~4の混合物を形成した。以下、比較例1~4及び実験例1~4の混合物の組成を詳しく説明する。
【0038】
比較例1は、662.5gのTCDDM、153.6gのEG、747.6gのPTA及び0.619gのTBTを含んだ。
【0039】
比較例2は、706.6gのTCDDM、39.2gのDBC、153.6gのEG、747.6gのPTA及び0.619gのTBTを含んだ。
【0040】
比較例3は、1369.1gのTCDDM、627.3gのDBC、153.6gのEG、747.6gのPTA、2.4gのTMP及び0.619gのTBTを含んだ。
【0041】
比較例4は、746.3gのCHDM、313.6gのDBC、153.6gのEG、747.6gのPTA及び0.619gのTBTを含んだ。
【0042】
実験例1は、750.8gのTCDDM、78.4gのDBC、153.6gのEG、747.6gのPTA及び0.619gのTBTを含んだ。
【0043】
実験例2は、927.5gのTCDDM、235.2gのDBC、153.6gのEG、747.6gのPTA、0.619gのTBT及び0.21gのMg(OAc)2を含んだ。
【0044】
実験例3は、1015.8gのTCDDM、313.6gのDBC、153.6gのEG、747.6gのPTA及び0.619gのTBTを含んだ。
【0045】
実験例4は、1192.5gのTCDDM、470.4gのDBC、153.6gのEG、747.6gのPTA、3.5gのTMA及び0.619gのTBTを含んだ。
【0046】
続いて、混合物を適切な圧力環境に置いて加熱し、単量体を反応させてオリゴマーを生成する上記した操作(b)と、オリゴマーを含む混合物を加熱し、真空引きすることで反応し切れていない単量体を除去し、続いて、混合物をこの加熱温度で持続的に置き、混合物におけるオリゴマーを重合反応させて、比較例1のポリエステル、比較例2~4及び実験例1~4のポリカーボネート・ポリエステルを形成する操作(c)と、を行った。
【0047】
比較例1~4及び実験例1~4の生成物に対して、引張強度、曲げ強度、耐衝撃性、ガラス転移温度(glass transition temperature;Tg)、溶融温度(melting temperature;Tm)、固有粘度(intrinsic viscosity;IV)及び透過度等のテストを行った。テスト結果を表1及び表2に示した。
【0048】
引張強度については、万能材料試験機(Instron社製)を使用してISO 527に準じてテストされた。
【0049】
曲げ強度については、万能材料試験機を使用してISO 178に準じてテストされた。
【0050】
耐衝撃性テストについては、Intertek社製のテストステーションを使用してISO 180に準じてテストされた。
【0051】
ガラス転移温度及び溶融温度については、示差走査熱量計(differential scanning calorimetry;DSC,TA instrumentsより販売)を使用してISO 3146に準じてテストされた。
【0052】
固有粘度については、ASTM D4603に準じてテストされた。
【0053】
透過度は、ヘイズメーター(NIPPON DENSHOKU NDH-2000)を使用してASTM D1003に準じてテストされた。
【0054】
【0055】
【0056】
比較例1、比較例2及び比較例3の式(2)/式(1)のモル比は、それぞれ0、0.05及び0.8であり、表1及び表2に示すように、そのガラス転移温度が何れも110℃以下であった。実験例1~4の式(2)/式(1)のモル比については、それぞれ0.1、0.3、0.4及び0.6であり、表1及び表2に示すように、そのガラス転移温度が112℃~119℃にあった。以上から分かるように、式(2)/式(1)のモル比が0.05より大きく0.8未満の範囲にある場合、ポリカーボネート・ポリエステルは、ガラス転移温度が高くなり、良い耐熱性を有し、更に、良い引張強度及び曲げ強度を提供することができ、良い機械的性能を有する。
【0057】
実験例3及び比較例4の式(2)/式(1)のモル比は、何れも0.4であるが、両者がそれぞれTCDDM及びCHDMを採用することで異なっており、表2に示すように、両者のガラス転移温度がそれぞれ117℃及び90℃であり、これにより、TCDDMを採用すれば、ポリカーボネート・ポリエステルに良い耐熱性を持たせることができ、また、良い引張強度及び曲げ強度を提供することもでき、良い機械的性能を有することが判明された。
【0058】
比較例5及び実験例5
トリシクロデカンジメタノール(tricyclodecane dimethanol;TCDDM)、ジブチルカーボネート(dibutyl carbonate;DBC)、ブタンジオール(butanediol;BDO)、テレフタル酸(terephthalic acid;PTA)及びチタン(IV)ブトキシド(titanium(IV)butoxide;TBT)を異なる重量割合でオートクレーブに加え、均一に撹拌して、比較例5及び実験例5の混合物を形成した。以下、比較例5及び実験例5の混合物の組成を詳しく説明する。
【0059】
比較例5は、662.5gのTCDDM、223.0gのBDO、747.6gのPTA及び0.619gのTBTを含んだ。
【0060】
実験例5は、750.8gのTCDDM、78.4gのDBC、223.0gのBDO、747.6gのPTA及び0.619gのTBTを含んだ。
【0061】
続いて、上記操作(b)及び操作(c)を行い、比較例5のポリエステル及び実験例5のポリカーボネート・ポリエステルを形成した。
【0062】
比較例5及び実験例5の生成物に対して、上記引張強度、曲げ強度、耐衝撃性、ガラス転移温度、溶融温度、固有粘度及び透過度等のテストを行った。テスト結果を表3に示す。
【0063】
【0064】
比較例5及び実験例5の式(2)/式(1)のモル比は、それぞれ0及び0.1であった。表3に示すように、比較例5に比べると、実験例5の引張強度、曲げ強度、耐衝撃性及びガラス転移温度が高く、良い機械的性能及び耐熱性を有していた。
【0065】
比較例6及び実験例6
トリシクロデカンジメタノール(tricyclodecane dimethanol;TCDDM)、ジブチルカーボネート(dibutyl carbonate;DBC)、2-メチル-1,3-プロパンジオール(2-methyl-1,3-propanediol;MPO)、テレフタル酸(terephthalic acid;PTA)及びチタン(IV)ブトキシド(titanium(IV)butoxide;TBT)を異なる重量割合でオートクレーブに加え、均一に撹拌して、比較例6及び実験例6の混合物を形成した。以下、比較例6及び実験例6の混合物の組成を詳しく説明する。
【0066】
比較例6は、662.5gのTCDDM、39.2gのDBC、223.0gのMPO、747.6gのPTA及び0.619gのTBTを含んだ。
【0067】
実験例6は、1015.8gのTCDDM、313.6gのDBC、223.0gのMPO、747.6gのPTA及び0.619gのTBTを含んだ。
【0068】
続いて、上記操作(b)及び操作(c)を行い、比較例6及び実験例6のポリカーボネート・ポリエステルを形成した。
【0069】
比較例6及び実験例6の生成物に対して、上記引張強度、曲げ強度、耐衝撃性、ガラス転移温度、溶融温度、固有粘度及び透過度等のテストを行った。テスト結果を表4に示した。
【0070】
【0071】
比較例6及び実験例6の式(2)/式(1)のモル比は、それぞれ0.05及び0.4であった。表4に示すように、比較例6に比べると、実験例6の引張強度、耐衝撃性及びガラス転移温度が高く、良い機械的性能及び耐熱性を有していた。
【0072】
比較例7及び実験例7
トリシクロデカンジメタノール(tricyclodecane dimethanol;TCDDM)、ジブチルカーボネート(dibutyl carbonate;DBC)、エチレングリコール(ethylene glycol;EG)、テレフタル酸(terephthalic acid;PTA)、2,6-ナフタレンジカルボン酸(2,6-naphthalenedicarboxylic acid;NDA)及びチタン(IV)ブトキシド(titanium(IV)butoxide;TBT)を異なる重量割合でオートクレーブに加え、均一に撹拌して、比較例7及び実験例7の混合物を形成した。以下、比較例7及び実験例7の混合物の組成を詳しく説明する。
【0073】
比較例7は、662.5gのTCDDM、153.6gのEG、448.6gのPTA、389.1gのNDA及び0.619gのTBTを含んだ。
【0074】
実験例7は、750.8gのTCDDM、78.4gのDBC、153.6gのEG、448.6gのPTA、389.1gのNDA及び0.619gのTBTを含んだ。
【0075】
続いて、上記操作(b)及び操作(c)を行い、比較例7のポリエステル及び実験例7のポリカーボネート・ポリエステルを形成した。
【0076】
比較例7及び実験例7の生成物に対して、上記引張強度、曲げ強度、耐衝撃性、ガラス転移温度、溶融温度、固有粘度及び透過度等のテストを行った。テスト結果を表5に示した。
【0077】
【0078】
比較例7及び実験例7の式(2)/式(1)のモル比は、それぞれ0及び0.1であった。表5に示すように、比較例7に比べると、実験例7の引張強度、曲げ強度、耐衝撃性及びガラス転移温度が高く、良い機械的性能及び耐熱性を有していた。
【0079】
比較例8及び実験例8
トリシクロデカンジメタノール(tricyclodecane dimethanol;TCDDM)、ジブチルカーボネート(dibutyl carbonate;DBC)、テレフタリルアルコール(terephthalyl alcohol;PXG)、エチレングリコール(ethylene glycol;EG)、テレフタル酸(terephthalic acid;PTA)を異なるモル割合でオートクレーブに加え、均一に撹拌して、比較例8及び実験例8の混合物を形成する。以下、比較例8及び実験例8の混合物の組成を詳しく説明する。
【0080】
比較例8は、932.6gのPXG、235.2gのDBC、3.5gのTMA、0.772gのTBT、0.25gのMn(OAc)2及び747.6gのPTAを含んだ。
【0081】
実験例8は、1325gのTCDDM、235.2gのDBC、3.5gのTMA、0.772gのTBT、0.25gのMn(OAc)2及び747.6gのPTAを含んだ。
【0082】
続いて、上記操作(b)及び操作(c)を行い、比較例8及び実験例8のポリカーボネート・ポリエステルを形成した。
【0083】
比較例8及び実験例8の生成物に対して、上記引張強度、曲げ強度、耐衝撃性、ガラス転移温度、溶融温度、固有粘度及び透過度等のテストを行った。
【表6】
【0084】
比較例8及び実験例8の式(2)/式(1)のモル比は、何れも0.3であるが、比較例8ではPXGを採用し、実験例8ではTCDDMを採用することで異なっていた。表6に示すように、比較例8及び実験例8のガラス転移温度は、それぞれ81℃及び118℃であり、TCDDMを採用すれば、ポリカーボネート・ポリエステルが良い耐熱性を有するようにすることができ、良い透過度を提供することもできることが判明された。
【0085】
明らかに、当業者であれば、本発明の範囲又は精神から逸脱せずに、本開示の構造に様々な修正や変形を加えることができる。上記内容に鑑みて、本開示は、本発明の修正や変形が添付される特許請求の範囲にある場合、これらの修正や変更を含むことを意図する。