(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】押し出された塑性変形可能な材料の体積流量に影響を与えるための装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/209 20170101AFI20220902BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220902BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20220902BHJP
B29C 64/241 20170101ALI20220902BHJP
B29C 64/321 20170101ALI20220902BHJP
B29C 64/35 20170101ALI20220902BHJP
B29C 64/357 20170101ALI20220902BHJP
A23L 5/00 20160101ALN20220902BHJP
【FI】
B29C64/209
B33Y30/00
B29C64/106
B29C64/241
B29C64/321
B29C64/35
B29C64/357
A23L5/00 A
A23L5/00 Z
(21)【出願番号】P 2021515524
(86)(22)【出願日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 EP2019073643
(87)【国際公開番号】W WO2020057983
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-05-18
(31)【優先権主張番号】102018216149.6
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515230084
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ツゥア フェアデルング デア アンゲヴァンドテン フォァシュング エー.ファウ.
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ジョン クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】サウエルステイン トビアス
(72)【発明者】
【氏名】コウシュ マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ブレーゼ ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ウールマン ステファン
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/129733(WO,A1)
【文献】特開2001-260203(JP,A)
【文献】特開昭59-054537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 30/00
B29C 48/00-48/96
A23L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品の付加的製造中に出口ダイに供給される、押し出された塑性変形可能な材料の体積流量に影響を与えるための装置であって、
押し出しユニットと出口ダイ(3)との間に配置され、前記押し出しユニット及び前記出口ダイ(3)に接続されるフランジ(1)と、
前記押し出しユニットから続き、前記出口ダイ(3)が前記フランジ(1)に伝わるように形成される経路(10)と、
前記経路(10)の長手方向軸に対して垂直に回転するように前記フランジ(1)に取り付けられ、前記経路(10)に導かれるピストン(2)と、
前記ピストン(2)における前記経路(10)の領域に形成され、前記ピストン(2)を通じてバイパスダイ(5)に至るバイパス経路(9)を開口するボアホール(8)と、
前記ボアホール(
8)に加え、前記ピストン(2)の外周側面における前記経路(10)の領域に形成され、前記ボアホール(8)と異なる角度範囲に配置され、又は前記ボアホール(8)の周辺に導かれる、少なくとも一つの溝(2.1)と、
を備え、
前記ピストン(2)の角度位置の機能として、押し出された塑性変形可能な材料(6)が、前記出口ダイ(3)の方向に前記溝(2.1)を通じて供給される、及び/又は、前記ボアホール(8)及びバイパス経路(9)を通じて前記バイパスダイ(5)から排出される、装置。
【請求項2】
前記少なくとも一つの溝(2.1)は、前記ピストン(2)の回転方向の少なくとも180°の角度範囲にわたって、前記ピストン(2)の外周側面に形成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記溝(2.1)は、前記溝(2.1)の長さにわたってステップ状又は連続的に変化する自由断面を有し、前記ピストン(2)が所定の角度位置に回転した場合、押し出された塑性変形可能な材料(6)を前記出口ダイ(3)に供給することができる、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記ピストンの外周側面には、互いにオフセットされた角度範囲で複数の溝が形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記ピストン(2)は、開ループ制御及び/又は閉ループ制御によって制御可能な回転駆動装置に接続される、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押し出された塑性変形可能な材料の体積流量に影響を与えるための装置に関する。このプロセスでは、押し出しベースプロセスのための開始/停止機能を、体積流量制御の追加機能と組み合わせて実施することができる。
【0002】
現在の技術水準によれば、押し出しベースプロセスは連続的な手順に従う。その特性のため、即座にプロセスを簡単に一時停止し、その後、再開することは不可能であり、これは、既存の用途では必要ではなく、技術的にも追求されていない。
【0003】
より広い範囲で適用されている生成的製造の分野において、押し出しベース方法の使用は、高い達成可能な射出性能を与える大きな開発の可能性を提供する。一方、上述したプロセス特性は、材料射出のプロセス関連一時停止を不可能にする。この状況は、不十分な部品精度から、過剰な材料適用を介して、部品構造への損傷まで、様々な問題をもたらす。したがって、押し出しベースの3Dプリントを使用する能力は、かなりの程度に制限される。
【0004】
押し出しベースプロセスの特性は、生成的製造の分野で使用するために、複雑な内部構造を有する高品質の部品の製造における高い技術的ハードルを示している。
【0005】
従来の押し出しは、連続プロセスとして設計されており、簡単な一時停止のために依存/設計されていない。したがって、現在、利用可能なシステムでは、対応する機能は提供されていない。
【0006】
生成的製造の分野では、現在の問題に対する実用的な解決策は存在しない。押し出しベースシステムの使用者の大部分は、例えば、スクリューの回転を中断することによって、材料の流れを中断し、結果として生じる過剰な充填/押し出し、遅れ、不完全性、ストランド幅又は寸法偏差の不整合を許容する。
【0007】
したがって、本発明の目的は、出口ダイから供給される押し出された塑性変形可能な材料の体積流量に影響を与えるためのオプションを提供することである。
【0008】
本発明によれば、この目的は、請求項1に記載の特徴を有する装置によって達成される。本発明の有利な実施形態は、従属項に記載された特徴を用いて実施することができる。
【0009】
部品の付加的製造中に出口ダイに供給される、押し出された塑性変形可能な材料の体積流量に影響を与えるための本発明に係る装置は、押し出しユニットと出口ダイとの間に配置され、フランジが押し出しユニットと出口ダイとに接続される。押し出しユニットから出口ダイに通じる経路がフランジに形成されている。出口ダイは、フランジにも形成することができる。
【0010】
ピストンは、経路の長手方向軸に対して垂直に回転するようにフランジに取り付けられ、経路を通って導かれる。ピストンでは、押し出された塑性変形可能な材料が供給される経路の領域にボアホールが形成され、ボアホールは、ピストンを通じてバイパスダイに至るバイパス経路を開放する。
【0011】
ボアホールに加えて、溝は、ピストンの外周側面における経路の領域に形成されており、当該溝は、ボアホールと異なる角度範囲に配置されるか、又は、ボアホールの周囲に導かれて形成され、押し出された塑性変形可能な材料を、ピストンの所定の角度位置で、溝を通じて出口ダイの方向に供給する、及び/又はボアホール並びにバイパス経路を通じてバイパスダイの外に供給することができる。
【0012】
バイパスダイから排出される押し出された塑性変形可能な材料は、押し出しユニットに戻すことができ、又は、回収容器に一時的に格納することができる。
【0013】
したがって、ピストンは所定の角度位置に回転させることができ、その場合、押し出された塑性変形可能な材料が、専ら溝を通じて、溝を通じて、出口ダイの方向へと同時に、バイパスダイに通じるバイパス経路が有するボアホールを通じて、又は、独占的にボアホール、バイパス経路及びバイパスダイを通じて供給される。
【0014】
このようにして、体積流量が先に述べた2つのオプションによって影響されることを達成し、製造のための押し出された塑性変形可能な材料の供給が、後のオプションによって停止されることを達成することができる。
【0015】
少なくとも一つの溝は、ピストンの回転方向に少なくとも180°の角度範囲にわたって、ピストンの外周側面に形成されるべきである。
【0016】
少なくとも一つの溝は、ピストンが所定の角度位置に回転した場合、押し出された塑性変形可能な材料を出口ダイに供給することができる、その長さにわたってステップ状又は連続的に変化する自由断面を有することができる。このようにして、ピストンの回転中に、少なくとも一つの溝の長い領域を提供することができ、押し出された塑性変形可能な材料を出口ダイに供給することができる。溝の長さにわたる自由断面の変化により、溝を通って供給され得る体積流量は、ピストンの規定された回転によって変化させることができる。このプロセスにおいて、少なくとも一つの溝は、180°より大きい角度範囲にわたって設計されるべきである。
【0017】
ピストンの外周側面には、互いにオフセットした角度範囲で複数の溝を形成することができる。このようにして、押し出された塑性変形可能な材料が溝のうちの一つのみを通って、又は、同時に複数の溝を通って出口ダイに供給されるように、ピストンを回転させることによって、出口ダイに供給される体積流量に影響を与えることが同様に可能である。
【0018】
ピストンは、開ループ及び/又は閉ループ制御によって制御可能な回転駆動装置に有利に接続されるべきである。この回転駆動装置は、次に、電子制御装置の影響を受けることができ、電子制御装置は、部品の特定の付加的生産のために使用され、製造のために供給される押し出された塑性変形可能な材料の体積流量に影響を与えるか、又は、完全に停止する。
【0019】
フランジは、押し出しパイプ内に回転可能に取り付けられた少なくとも一つの押し出しスクリューを含む押し出しユニットに一方の側が接続される。可塑化ユニットは、さらに、押し出しユニットの一体部分とすることができる。これは、熱可塑性材料を押し出した場合、適切な温度に加熱するために有利である。しかし、塑性変形可能な材料として、懸濁液やペーストを用いることも可能であり、その場合、加熱を省略することができる。
【0020】
本発明では、以下のことが可能である。
出口ダイ(又は追加の堆積ダイ)からの材料の排出の開始と停止。
排出される体積流量の調整。
【0021】
次のような利点がある。
短い切換時間の連続押し出しプロセスの中断;
起動停止機能の実現;
材料が製造されるべき部品に巻き込まれる/接続されることを避けること;
一貫して均一な構造(例えば、一定のストランド幅);及び
境界領域、狭い半径、又は幾何学的に関連する反転点での過剰充填を避ける。
【0022】
最も大きな可能性を提供する応用分野は、特に扱い難い部品構造の場合での押し出しベース方法による生成/付加的製造である。さらに、押し出し技術のあらゆる分野での使用が考えられる。例えば、本発明は、建築業におけるコンクリート3D印刷及び食品の3D印刷(チョコレート、ペースト、ピューレ状の食品)にも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】供給される体積流量が影響を受け得る位置における本発明による装置の一例の概略断面図を示す。
【
図2】押し出された塑性変形可能な材料の出口ダイへの供給が中断された位置での
図1に示す例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、フランジ1を示しており、フランジ1の上下方向の上側が図示しない押し出しユニットに接続されている。押し出しユニットは、押し出された塑性変形可能な材料6を、フランジ1を貫通する経路10で、矢印によって明確に示すように、出口ダイ3に供給する。
【0025】
経路10の長手方向軸に対して垂直にボアホールがフランジ1に形成されるか、中空筒が挿入されている。ボアホール又は中空筒内にピストン2が回転可能に取り付けられている。さらに、押し出し物の漏れを防止するシールが存在する。
【0026】
また、
図1から明らかなように、ピストン2の外周側面には、溝2.1が形成されており、押し出された塑性変形可能な材料6を出口ダイ3に供給して付加的製造することができる。また、ボアホール8は、ピストン1の外周側面からバイパス経路9を介してピストン1の内部に通じ、バイパス経路9は、バイパスダイ5(
図2を参照)に通じる。
【0027】
ボアホール8及び溝2.1は、
図1に示す例では、溝2.1がボアホール8の周囲に円弧状に導かれるように配置されている。
【0028】
図1に示すピストン2の角度位置では、ボアホール8が経路10と連通していないので、押し出された塑性変形可能な材料6は、溝2.1を通って出口ダイ3に独占的に供給することができる。
【0029】
図1には示されていないように、ピストン2を回転させて、塑性変形可能な材料6がボアホール8に入り、次いでバイパス経路9及びバイパスダイ5を通って回収容器4に入ることができる角度位置にすると、押し出しユニットから供給される塑性変形可能な材料6の全体体積流量の一部のみが溝2.1を通って出口ダイ3に供給され、このようにして、ピストン2の当該角度位置で、製造するために押し出された塑性変形可能な材料6の体積流量に影響を与えることができる。
【0030】
図2は、ピストン2が溝2.1と経路10とが連通しない角度位置に回転した状態を示している。その結果、押し出しユニットと出口ダイ3との間に接続は存在しない。
【0031】
押し出しユニットから経路10に供給された押し出された塑性変形可能な材料は、ボアホール8に完全に供給され、そこからバイパス経路9を通ってバイパスダイ5に供給され、そこから、この例では、回収容器4内に供給され、そこで廃棄物7として一時的に貯蔵されるか、又は再使用するために一時的に貯蔵される。