(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】遠心圧縮機のスクロール構造及び遠心圧縮機
(51)【国際特許分類】
F02B 39/00 20060101AFI20220902BHJP
F04D 29/44 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
F02B39/00 G
F04D29/44 U
(21)【出願番号】P 2021524560
(86)(22)【出願日】2019-06-05
(86)【国際出願番号】 JP2019022292
(87)【国際公開番号】W WO2020245934
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岩切 健一郎
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/003632(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/168650(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/072900(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/124388(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/00
F02B 39/00
F04D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
渦巻き状に形成されたスクロール流路が設けられた遠心圧縮機のスクロール構造において、
前記スクロール流路の巻き始め部と巻き終わり部とが交差する流路接続部における前記スクロール流路の最も下流側の位置において、前記スクロール流路と前記スクロール流路の下流側に接続される出口流路とを隔てる舌部と、
前記スクロール流路における前記遠心圧縮機の軸方向下流側の内周面から前記遠心圧縮機の軸方向上流側に突出する稜部であって、前記舌部よりも前記スクロール流路の上流側に位置する始点位置から前記舌部に向かうにつれて前記軸方向上流側に突出する突出高さが漸増する稜部と、
を備え、
前記始点位置は、前記舌部から前記スクロール流路の上流側に向かって前記遠心圧縮機の周方向の角度で8度以下の位置である
遠心圧縮機のスクロール構造。
【請求項2】
渦巻き状に形成されたスクロール流路が設けられた遠心圧縮機のスクロール構造において、
前記スクロール流路の巻き始め部と巻き終わり部とが交差する流路接続部における前記スクロール流路の最も下流側の位置において、前記スクロール流路と前記スクロール流路の下流側に接続される出口流路とを隔てる舌部と、
前記スクロール流路における前記遠心圧縮機の軸方向下流側の内周面から前記遠心圧縮機の軸方向上流側に突出する稜部であって、前記舌部よりも前記スクロール流路の上流側に位置する始点位置から前記舌部に向かうにつれて前記軸方向上流側に突出する突出高さが漸増する稜部と、
を備え、
前記舌部から前記スクロール流路の上流側に向かって前記遠心圧縮機の周方向の角度で4度の位置における前記突出高さが前記巻き始め部における前記スクロール流路についての前記遠心圧縮機の軸方向に沿った高さ寸法の10%以下である
遠心圧縮機のスクロール構造。
【請求項3】
渦巻き状に形成されたスクロール流路が設けられた遠心圧縮機のスクロール構造において、
前記スクロール流路の巻き始め部と巻き終わり部とが交差する流路接続部における前記スクロール流路の最も下流側の位置において、前記スクロール流路と前記スクロール流路の下流側に接続される出口流路とを隔てる舌部と、
前記スクロール流路における前記遠心圧縮機の軸方向下流側の内周面から前記遠心圧縮機の軸方向上流側に突出する稜部であって、前記舌部よりも前記スクロール流路の上流側に位置する始点位置から前記舌部に向かうにつれて前記軸方向上流側に突出する突出高さが漸増する稜部と、
を備え、
前記突出高さは、前記巻き始め部における前記スクロール流路についての前記遠心圧縮機の軸方向に沿った高さ寸法の30%以下である
遠心圧縮機のスクロール構造。
【請求項4】
渦巻き状に形成されたスクロール流路が設けられた遠心圧縮機のスクロール構造において、
前記スクロール流路の巻き始め部と巻き終わり部とが交差する流路接続部における前記スクロール流路の最も下流側の位置において、前記スクロール流路と前記スクロール流路の下流側に接続される出口流路とを隔てる舌部と、
前記スクロール流路における前記遠心圧縮機の軸方向下流側の内周面から前記遠心圧縮機の軸方向上流側に突出する稜部であって、前記舌部よりも前記スクロール流路の上流側に位置する始点位置から前記舌部に向かうにつれて前記軸方向上流側に突出する突出高さが漸増する稜部と、
を備え、
前記稜部は、前記突出高さを規定する頂部を前記舌部から前記始点位置まで結ぶ曲線の曲率半径が前記軸方向上流側に存在し、
前記曲率半径は、前記頂部の少なくとも一部において前記舌部から前記始点位置に向かうにつれて漸増する
遠心圧縮機のスクロール構造。
【請求項5】
前記スクロール流路は、前記スクロール流路の中心線と直交する方向に延在する断面における流路形状が前記舌部を含む前記断面において円形ではなく、
前記出口流路は、前記出口流路の中心線と直交する方向に延在する断面における流路形状が前記スクロール流路との接続位置から前記出口流路の下流側に向かうにつれて徐々に円形に近づいていき、前記遠心圧縮機の軸方向に沿った前記巻き終わり部の流路高さと同じ距離以上前記接続位置よりも前記出口流路の下流側の位置において該流路形状が円形である
請求項1乃至4の何れか一項に記載の遠心圧縮機のスクロール構造。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の遠心圧縮機のスクロール構造を備える
遠心圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠心圧縮機のスクロール構造及び遠心圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用、舶用ターボチャージャのコンプレッサ部等に用いられる遠心圧縮機は、羽根車の回転を介して流体に運動エネルギーを与えるとともに、径方向外側に流体を吐出することで遠心力による圧力上昇を得るものである。
この遠心圧縮機は広い運転範囲において高圧力比と高効率化が要求されている。
【0003】
遠心圧縮機には渦巻状に形成されたスクロール流路が設けられている。スクロール流路は、巻き始め部と巻き終わり部とが交差する流路接続部を有する。
このような遠心圧縮機では、流路接続部での、巻き終わり部から巻き始め部へ流れる再循環流が生じることがある。再循環流が巻き終わり部から巻き始め部へ流入する際に、流路接続部において流体の流れの向きが変更されるため、巻き始め部においてスクロール流路を形成する壁面から流体が剥離すると損失が発生してしまう。特許文献1には、このような損失を抑制するために流路接続部の形状を変更した遠心圧縮機のスクロール構造が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば特許文献1に記載の遠心圧縮機のスクロール構造では、流路接続部の断面積を小さくすることにより再循環流を抑制して、上述した損失を抑制するようにしている。
しかし、流路接続部における損失の発生原因は、他にも存在している。例えば、一般的に、流路接続部には、流路接続部におけるスクロール流路の最も下流側の位置において、スクロール流路とスクロール流路の下流側に接続される出口流路とを隔てる舌部が形成されている。また、一般的に、流路接続部では、舌部よりもスクロール流路の上流側において、スクロール流路の内周面のうち、遠心圧縮機の軸方向のうち遠心圧縮機へ流入する流体の流れに沿った下流側(以下、軸方向下流側と呼ぶ)の内周面から遠心圧縮機の軸方向上流側に突出する稜部が形成されている。そして、この稜部は、スクロール流路の下流側において舌部と接続されている。
【0006】
ディフューザからスクロール流路内に吹き出される流体は、スクロール流路の内周面のうち、軸方向下流側の面に沿ってスクロール流路内に流れ込む。また、ディフューザからスクロール流路内に吹き出される流体は、遠心圧縮機の径方向外側に向かう速度成分を有する。そのため、流路接続部の近傍では、ディフューザからスクロール流路内に吹き出された流体が、上述した稜部を遠心圧縮機の径方向内側から外側に向かって乗り越えるように流れようとする。このような流体の流れは、遠心圧縮機の軸方向のうち遠心圧縮機へ流入する流体の流れに沿った上流側(以下、軸方向上流側と呼ぶ)に向かって流れる。
また、スクロール流路内の流体の流れは、巻き始め部から巻き終わり部に向かう周方向流れの主流と、その主流に沿ってスクロール流路内を旋回しながら流れる旋回流とを伴う。該旋回流は、軸方向下流側に向かって流れる。
そのため、上述したように稜部を乗り越えようとする流体の流れと、上記旋回流とが干渉して、舌部近傍でスクロール流路の内周面からの流体の剥離を招いてしまう。このような剥離は、遠心圧縮機の損失を招く。
しかし、上述した特許文献1には、上述したような流体の剥離の抑制については言及されていない。
【0007】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、広い運転範囲において効率が高くなる遠心圧縮機のスクロール構造及び遠心圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る遠心圧縮機のスクロール構造は、
渦巻き状に形成されたスクロール流路が設けられた遠心圧縮機のスクロール構造において、
前記スクロール流路の巻き始め部と巻き終わり部とが交差する流路接続部における前記スクロール流路の最も下流側の位置において、前記スクロール流路と前記スクロール流路の下流側に接続される出口流路とを隔てる舌部と、
前記スクロール流路における前記遠心圧縮機の軸方向下流側の内周面から前記遠心圧縮機の軸方向上流側に突出する稜部であって、前記舌部よりも前記スクロール流路の上流側に位置する始点位置から前記舌部に向かうにつれて前記軸方向上流側に突出する突出高さが漸増する稜部と、
を備え、
前記始点位置は、前記舌部から前記スクロール流路の上流側に向かって前記遠心圧縮機の周方向の角度で8度以下の位置である。
【0009】
上述したように、稜部を乗り越えようとする流体の流れと、スクロール流路における上述した旋回流とが干渉すると、舌部近傍でスクロール流路の内周面からの流体の剥離を招いてしまう。そのため、稜部を乗り越えようとする流体の流れと、スクロール流路における上述した旋回流との干渉を抑制することが望まれている。
一般的には、上述した始点位置は、舌部から前記スクロール流路の上流側に向かって遠心圧縮機の周方向の角度で15度程度の位置とされている。
これに対し、上記(1)の構成では、始点位置は、舌部からスクロール流路の上流側に向かって遠心圧縮機の周方向の角度で8度以下の位置である。したがって、上記(1)の構成では、稜部が遠心圧縮機の周方向に延在する範囲を一般的な遠心圧縮機と比較して小さくすることができる。
稜部は、スクロール流路の内周面のうち軸方向下流側の内周面から軸方向上流側に向かって突出する部位であるので、稜部が遠心圧縮機の周方向に延在する範囲を小さくすることで、稜部を乗り越えようとする流体の流れと、スクロール流路における上述した旋回流との干渉を抑制することができる。
したがって、上記(1)の構成によれば、スクロール流路の内周面からの流体の剥離を抑制できるので、剥離に伴う損失を抑制できる。したがって、遠心圧縮機において、広い運転範囲で効率を高めることができる。
【0010】
(2)本発明の少なくとも一実施形態に係る遠心圧縮機のスクロール構造は、
渦巻き状に形成されたスクロール流路が設けられた遠心圧縮機のスクロール構造において、
前記スクロール流路の巻き始め部と巻き終わり部とが交差する流路接続部における前記スクロール流路の最も下流側の位置において、前記スクロール流路と前記スクロール流路の下流側に接続される出口流路とを隔てる舌部と、
前記スクロール流路における前記遠心圧縮機の軸方向下流側の内周面から前記遠心圧縮機の軸方向上流側に突出する稜部であって、前記舌部よりも前記スクロール流路の上流側に位置する始点位置から前記舌部に向かうにつれて前記軸方向上流側に突出する突出高さが漸増する稜部と、
を備え、
前記舌部から前記スクロール流路の上流側に向かって前記遠心圧縮機の周方向の角度で4度の位置における前記突出高さが前記巻き始め部における前記スクロール流路についての前記遠心圧縮機の軸方向に沿った高さ寸法の10%以下である。
【0011】
一般的な遠心圧縮機における稜部は、上述したように遠心圧縮機の周方向の角度で15度程度の範囲に延在している。また、一般的な遠心圧縮機では、舌部との接続位置における稜部の突出高さは、巻き始め部におけるスクロール流路についての遠心圧縮機の軸方向に沿った高さ寸法の50%を超えることが多い。そのため、一般的な遠心圧縮機における稜部では、舌部からスクロール流路の上流側に向かって遠心圧縮機の周方向の角度で4度の位置における稜部の突出高さは、巻き始め部におけるスクロール流路についての遠心圧縮機の軸方向に沿った高さ寸法の30%を超えることが多い。
したがって、上記(2)の構成によれば、舌部からスクロール流路の上流側に向かって遠心圧縮機の周方向の角度で4度の位置における稜部の突出高さを巻き始め部におけるスクロール流路についての遠心圧縮機の軸方向に沿った高さ寸法の10%以下とすることで、舌部の近傍における稜部の突出高さを一般的な遠心圧縮機における稜部の突出高さよりも小さくすることができる。そのため、上記(2)の構成によれば、稜部を乗り越えようとする流体の流れと、スクロール流路における上述した旋回流との干渉を抑制することができる。
したがって、上記(2)の構成によれば、スクロール流路の内周面からの流体の剥離を抑制できるので、剥離に伴う損失を抑制できる。したがって、遠心圧縮機において、広い運転範囲で効率を高めることができる。
【0012】
(3)本発明の少なくとも一実施形態に係る遠心圧縮機のスクロール構造は、
渦巻き状に形成されたスクロール流路が設けられた遠心圧縮機のスクロール構造において、
前記スクロール流路の巻き始め部と巻き終わり部とが交差する流路接続部における前記スクロール流路の最も下流側の位置において、前記スクロール流路と前記スクロール流路の下流側に接続される出口流路とを隔てる舌部と、
前記スクロール流路における前記遠心圧縮機の軸方向下流側の内周面から前記遠心圧縮機の軸方向上流側に突出する稜部であって、前記舌部よりも前記スクロール流路の上流側に位置する始点位置から前記舌部に向かうにつれて前記軸方向上流側に突出する突出高さが漸増する稜部と、
を備え、
前記突出高さは、前記巻き始め部における前記スクロール流路についての前記遠心圧縮機の軸方向に沿った高さ寸法の30%以下である。
【0013】
発明者らが鋭意検討した結果、稜部における突出高さを巻き始め部におけるスクロール流路についての遠心圧縮機の軸方向に沿った高さ寸法の30%以下とすると、スクロール流路の内周面からの流体の剥離を抑制する効果が特に高まることが判明した。
したがって、上記(3)の構成によれば、スクロール流路の内周面からの流体の剥離を効果的に抑制できるので、剥離に伴う損失を効果的に抑制できる。
【0014】
(4)本発明の少なくとも一実施形態に係る遠心圧縮機のスクロール構造は、
渦巻き状に形成されたスクロール流路が設けられた遠心圧縮機のスクロール構造において、
前記スクロール流路の巻き始め部と巻き終わり部とが交差する流路接続部における前記スクロール流路の最も下流側の位置において、前記スクロール流路と前記スクロール流路の下流側に接続される出口流路とを隔てる舌部と、
前記スクロール流路における前記遠心圧縮機の軸方向下流側の内周面から前記遠心圧縮機の軸方向上流側に突出する稜部であって、前記舌部よりも前記スクロール流路の上流側に位置する始点位置から前記舌部に向かうにつれて前記軸方向上流側に突出する突出高さが漸増する稜部と、
を備え、
前記稜部は、前記突出高さを規定する頂部を前記舌部から前記始点位置まで結ぶ曲線の曲率半径が前記軸方向上流側に存在し、
前記曲率半径は、前記頂部の少なくとも一部において前記舌部から前記始点位置に向かうにつれて漸増する。
【0015】
上記(4)の構成では、突出高さを規定する頂部の少なくとも一部において、頂部を舌部から始点位置まで結ぶ曲線の曲率半径は、始点位置から舌部に向かうにつれて小さくなる。したがって、舌部から始点位置に向かって微小距離だけ移動したときの突出高さの減少量は、突出高さが最も高い舌部との接続位置に近い領域ほど大きい。したがって、舌部から始点位置に向かって移動したとき、舌部との接続位置に近い領域では、舌部との接続位置から遠い領域と比べて、突出高さが急激に減少することとなる。したがって、上記(4)の構成によれば、突出高さを全体的に抑制できることとなるので、稜部を乗り越えようとする流体の流れと、スクロール流路における上述した旋回流との干渉を抑制することができる。これにより、スクロール流路の内周面からの流体の剥離を抑制できるので、剥離に伴う損失を抑制できる。
【0016】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、
前記スクロール流路は、前記スクロール流路の中心線と直交する方向に延在する断面における流路形状が前記舌部を含む前記断面において円形ではなく、
前記出口流路は、前記出口流路の中心線と直交する方向に延在する断面における流路形状が前記スクロール流路との接続位置から前記出口流路の下流側に向かうにつれて徐々に円形に近づいていき、前記遠心圧縮機の軸方向に沿った前記巻き終わり部の流路高さと同じ距離以上前記接続位置よりも前記出口流路の下流側の位置において該流路形状が円形である。
【0017】
一般的に、遠心圧縮機では、スクロール流路は、スクロール流路の中心線と直交する方向に延在する断面における流路形状(以下、単に断面形状と呼ぶ)が舌部を含む断面において円形ではない。一方、出口流路は、流路の延在方向に直交する方向に延在する断面における流路形状(断面形状)は、一般的に円形である。そのため、スクロール流路から出口流路にかけて流路の断面形状が急変すると、損失が発生して遠心圧縮機の効率が低下してしまう。
発明者らが鋭意検討した結果、上記構成(5)のように、遠心圧縮機の軸方向に沿った巻き終わり部の流路高さ以上の距離をかけて流路の断面形状を円形に近づけることで、損失を効果的に抑制できることが判明した。
したがって、上記構成(5)によれば、スクロール流路から出口流路にかけて流路で発生する損失を効果的に抑制でき、遠心圧縮機において、広い運転範囲で効率を高めることができる。
【0018】
(6)本発明の少なくとも一実施形態に係る遠心圧縮機は、上記(1)乃至(5)の何れかの構成の遠心圧縮機のスクロール構造を備えるので、広い運転範囲で効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、遠心圧縮機において、広い運転範囲で効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】幾つかの実施形態に係る遠心圧縮機の断面概要図である。
【
図2】幾つかの実施形態に係る遠心圧縮機におけるケーシングを遠心圧縮機の回転軸の軸線方向と直交する断面で切断した断面を模式的に示した図である。
【
図5】
図2におけるC方向から見た、スクロール流路の内部の模式的な斜視図である。
【
図6】スクロール流路の巻き終わり部における流路形状、及び、出口流路の流路形状を模式的に示す図である。
【
図7】従来の遠心圧縮機及び上述した実施形態に係る遠心圧縮機における流量とスクロール出口効率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0022】
図1は、幾つかの実施形態に係る遠心圧縮機1の断面概要図である。幾つかの実施形態に係る遠心圧縮機1は、ターボチャージャに適用される遠心圧縮機1である。幾つかの実施形態に係る遠心圧縮機1では、図示しないタービンのタービンホイールとコンプレッサホイール8とが回転軸3で連結されている。コンプレッサホイール8は、ハブ5の表面に複数のコンプレッサ翼7が立設されている。コンプレッサホイール8は、コンプレッサ翼7の外側がコンプレッサハウジング(ケーシング)9で覆われている。幾つかの実施形態に係る遠心圧縮機1では、コンプレッサ翼7の外周側には、ディフューザ11が形成され、さらに、このディフューザ11の周囲には渦巻き状に形成されたスクロール流路13が設けられている。
【0023】
図2は、幾つかの実施形態に係る遠心圧縮機1におけるケーシング9を遠心圧縮機1の回転軸3の軸線X方向と直交する断面で切断した断面を模式的に示した図である。ケーシング9は、スクロール流路13と、該スクロール流路13の下流側に接続される出口流路15とを備えている。スクロール流路13は、スクロール流路の巻き始め部17と巻き終わり部19とを有する。スクロール流路13は、巻き始め部17から
図2に示す右回りに進むにつれて、その流路断面積が増加するように形成されている。
図2において、コンプレッサホイール8の回転方向を矢印Rで示している。幾つかの実施形態に係る遠心圧縮機1では、コンプレッサホイール8は、
図2において右回りに回転する。
【0024】
スクロール流路13内の流体の流れは、巻き始め部17から巻き終わり部19に向かう周方向流れの主流91(
図2参照)と、その主流91に沿ってスクロール流路13内を旋回しながら流れる旋回流93(後述する
図5参照)とを伴う。
【0025】
以下の説明では、遠心圧縮機1の回転軸3の軸線X方向を遠心圧縮機1の軸方向、又は、単に軸方向とも呼ぶ。軸方向のうち、遠心圧縮機1に流入する流体の流れに沿った上流側を軸方向上流側とし、その反対側を軸方向下流側とする。また、以下の説明では、遠心圧縮機1のコンプレッサホイール8の径方向を遠心圧縮機1の径方向、又は、単に径方向とも呼ぶ。径方向のうち、回転軸3の軸線Xに近づく方向を径方向内側とし、回転軸3の軸線Xから遠ざかる方向を径方向外側とする。
また、スクロール流路13及び出口流路15において、流路の延在方向のうち、流体の主流の流れの上流側をスクロール流路13の上流側及び出口流路15の上流側と呼び、流体の主流の流れの下流側をスクロール流路13の下流側及び出口流路15の下流側と呼ぶ。スクロール流路13の上流側及び出口流路15の上流側を流路上流側、又は単に上流側とも呼び、スクロール流路13の下流側及び出口流路15の下流側を流路下流側、又は単に下流側とも呼ぶ。スクロール流路13においては、スクロール流路13の延在方向は、遠心圧縮機1の周方向と略同じ方向となる。
【0026】
幾つかの実施形態に係る遠心圧縮機1のスクロール構造10では、ケーシング9にスクロール流路13の巻き始め部17と巻き終わり部19とが交差する流路接続部20が形成されている。流路接続部20には、スクロール流路13の内周面13aのうち、巻き終わり部19において、巻き始め部17に連通する開口部21が形成されている。この開口部21を取り囲む開口形成部23のうち、スクロール流路13の最も下流側の位置において、スクロール流路13と出口流路15とを隔てる舌部25が形成されている。
【0027】
図3は、
図2におけるA-A矢視断面図である。すなわち、
図3は、ケーシング9を流路接続部20を含む位置で巻き終わり部19の延在方向と直交する方向に延在する断面で切断したときのケーシング9の模式的な断面図である。
図3は、巻き終わり部19におけるスクロール流路13の内側を出口流路15の下流側から上流側を見た図でもある。なお、
図3では、ディフューザ11の記載を省略している。
図4は、
図2におけるB-B矢視断面図である。すなわち、
図4は、巻き終わり部19の延在方向と略同じ方向に延在し、且つ、遠心圧縮機1の軸方向に延在する断面でケーシング9を切断したときのケーシング9の模式的な断面図である。
図4では、巻き終わり部19におけるスクロール流路13の内側を遠心圧縮機1の径方向外側から見た図でもある。
図5は、
図2におけるC方向から見た、スクロール流路13の内部の模式的な斜視図である。
【0028】
幾つかの実施形態では、ケーシング9には、稜部50が形成されている。幾つかの実施形態では、稜部50は、スクロール流路13における遠心圧縮機の軸方向下流側の内周面13aから遠心圧縮機1の軸方向上流側に突出する部位である。幾つかの実施形態では、舌部25よりもスクロール流路13の上流側に位置する始点位置Psから舌部25に向かうにつれて軸方向上流側に突出する突出高さHRが漸増するように形成されている。すなわち、幾つかの実施形態では、稜部50は、始点位置Psにおいてスクロール流路13における軸方向下流側の内周面13aから軸方向上流側に突出し始め、舌部25に向かって徐々にその突出高さHRを増大させている。幾つかの実施形態では、稜部50は、スクロール流路13の下流側において舌部25に接続されている。
なお、幾つかの実施形態では、巻き始め部17における軸方向下流側の内周面17aと、巻き終わり部19における軸方向下流側の内周面19aとは、遠心圧縮機1の軸方向の位置が同じである。
【0029】
幾つかの実施形態では、稜部50は、始点位置Psから舌部25に向かって、おおよそ遠心圧縮機1の周方向に沿って延在している。
【0030】
以下の説明では、スクロール流路13の中心、すなわち、中心線AXが通過する位置は、スクロール流路13を遠心圧縮機1の径方向に延在し、且つ、回転軸3の軸線X方向に延在する仮想的な切断面におけるスクロール流路13の重心(図心)であるものとする。
以下、幾つかの実施形態に係る接続領域30について詳述する。
【0031】
ディフューザ11からスクロール流路13内に吹き出される流体は、スクロール流路13の内周面13aのうち、軸方向下流側の内周面13bに沿ってスクロール流路13内に流れ込む。また、ディフューザ11からスクロール流路13内に吹き出される流体は、遠心圧縮機1の径方向外側に向かう速度成分を有する。そのため、流路接続部20の近傍では、ディフューザ11からスクロール流路13内に吹き出された流体が、矢印97で示すように、稜部50を遠心圧縮機1の径方向内側から外側に向かって乗り越えるように流れようとする。このような流体の流れは、軸方向上流側に向かって流れる。
また、スクロール流路13内の流体の流れは、上述した主流91と、その主流91に沿ってスクロール流路13内を旋回しながら流れる旋回流93とを伴う。該旋回流93は、軸方向下流側に向かって流れる。
そのため、矢印97で示すように稜部50を乗り越えようとする流体の流れと、上記旋回流93とが干渉して、舌部25近傍でスクロール流路13の内周面13aからの流体の剥離を招いてしまう。このような剥離は、遠心圧縮機1の損失を招く。
【0032】
そこで、幾つかの実施形態では、稜部50の形状を以下のようにすることで、矢印97で示すように稜部50を乗り越えようとする流体の流れと、スクロール流路13における上述した旋回流93との干渉を抑制するようにしている。
具体的には、幾つかの実施形態では、始点位置Psは、舌部25からスクロール流路13の上流側に向かって遠心圧縮機1の周方向の角度θで8度以下の位置である。なお、幾つかの実施形態では、始点位置Psは、上記角度θで4度以下の位置であるとさらによい。
【0033】
一般的な遠心圧縮機では、始点位置Psは、上記角度θで15度程度の位置とされている。
これに対し、幾つかの実施形態では、始点位置Psは、上記角度θで8度以下の位置である。
したがって、幾つかの実施形態では、稜部50が遠心圧縮機1の周方向に延在する範囲を一般的な遠心圧縮機と比較して小さくすることができる。
稜部50は、スクロール流路13の内周面13aのうち軸方向下流側の内周面13bから軸方向上流側に向かって突出する部位であるので、稜部50が遠心圧縮機1の周方向に延在する範囲を小さくすることで、矢印97で示すように稜部50を乗り越えようとする流体の流れと、スクロール流路13における旋回流93との干渉を抑制することができる。
したがって、幾つかの実施形態によれば、スクロール流路13の内周面13aからの流体の剥離を抑制できるので、剥離に伴う損失を抑制できる。したがって、遠心圧縮機1において、広い運転範囲で効率を高めることができる。
【0034】
図7は、従来の遠心圧縮機及び上述した実施形態に係る遠心圧縮機1における流量とスクロール出口効率との関係を示すグラフである。
図7において、実線で示したグラフは、上述した実施形態に係る遠心圧縮機1についてのグラフであり、破線で示したグラフは、従来の遠心圧縮機についてのグラフである。
図7に示すように、始点位置Psは、上記角度θで8度以下の位置とすることで、主に大流量領域においてスクロール出口効率が向上する。
【0035】
幾つかの実施形態では、舌部25からスクロール流路13の上流側に向かって遠心圧縮機1の周方向の角度θで4度の位置における突出高さHRは、巻き始め部17におけるスクロール流路13についての遠心圧縮機1の軸方向に沿った高さ寸法Haの10%以下である。
【0036】
一般的な遠心圧縮機における稜部50は、上述したように遠心圧縮機の周方向の角度で15度程度の範囲に延在している。また、一般的な遠心圧縮機では、舌部25との接続位置における稜部50の突出高さHR1は、巻き始め部17におけるスクロール流路13についての遠心圧縮機の軸方向に沿った高さ寸法Haの50%を超えることが多い。そのため、一般的な遠心圧縮機における稜部50では、舌部25からスクロール流路13の上流側に向かって遠心圧縮機の周方向の角度θで4度の位置における稜部50の突出高さHRは、巻き始め部17におけるスクロール流路13についての遠心圧縮機の軸方向に沿った高さ寸法Haの30%を超えることが多い。
したがって、幾つかの実施形態によれば、舌部25からスクロール流路13の上流側に向かって遠心圧縮機1の周方向の角度θで4度の位置における稜部50の突出高さHRを巻き始め部17におけるスクロール流路13についての遠心圧縮機1の軸方向に沿った高さ寸法Haの10%以下とすることで、舌部25の近傍における稜部50の突出高さHRを一般的な遠心圧縮機における稜部50の突出高さHRよりも小さくすることができる。そのため、幾つかの実施形態によれば、矢印97で示すように稜部50を乗り越えようとする流体の流れと、スクロール流路13における旋回流93との干渉を抑制することができる。
したがって、幾つかの実施形態によれば、スクロール流路13の内周面13aからの流体の剥離を抑制できるので、剥離に伴う損失を抑制できる。したがって、遠心圧縮機1において、広い運転範囲で効率を高めることができる。
【0037】
幾つかの実施形態では、舌部25からスクロール流路13の上流側に向かって遠心圧縮機1の周方向の角度θで4度の位置における突出高さHRは、舌部25との接続位置における突出高さHR1の20%以下である。
【0038】
一般的な遠心圧縮機における稜部50は、上述したように遠心圧縮機の周方向の角度で15度程度の範囲に延在している。そのため、一般的な遠心圧縮機における稜部50では、舌部25からスクロール流路13の上流側に向かって遠心圧縮機の周方向の角度で4度の位置における稜部50の突出高さHRが舌部25との接続位置における突出高さHR1の50%を超えることが多い。
したがって、幾つかの実施形態によれば、舌部25からスクロール流路13の上流側に向かって遠心圧縮機1の周方向の角度θで4度の位置における稜部50の突出高さHRが舌部25との接続位置における突出高さHR1の20%以下とすることで、舌部25の近傍における稜部50の突出高さHRを一般的な遠心圧縮機における稜部の突出高さよりも小さくすることができる。そのため、幾つかの実施形態によれば、矢印97で示すように稜部50を乗り越えようとする流体の流れと、スクロール流路13における旋回流93との干渉を抑制することができる。
したがって、幾つかの実施形態によれば、スクロール流路13の内周面13aからの流体の剥離を抑制できるので、剥離に伴う損失を抑制できる。したがって、遠心圧縮機1において、広い運転範囲で効率を高めることができる。
【0039】
なお、上述した、上記角度θで4度の位置における突出高さHRを上記突出高さHR1の20%以下とする実施形態は、始点位置Psを上記角度θで8度以下の位置とする実施形態や、後述する他の実施形態とともに実施してもよく、単独で実施してもよい。
【0040】
また、幾つかの実施形態では、稜部50の突出高さHRは、巻き始め部17におけるスクロール流路13についての遠心圧縮機1の軸方向に沿った高さ寸法Haの30%以下である。
【0041】
発明者らが鋭意検討した結果、稜部50における突出高さHRを巻き始め部17におけるスクロール流路13についての遠心圧縮機1の軸方向に沿った高さ寸法Haの30%以下とすると、スクロール流路13の内周面13aからの流体の剥離を抑制する効果が特に高まることが判明した。
したがって、幾つかの実施形態によれば、スクロール流路13の内周面13aからの流体の剥離を効果的に抑制できるので、剥離に伴う損失を効果的に抑制できる。
【0042】
上述した、稜部50の突出高さHRを上記高さ寸法Haの30%以下とする実施形態は、始点位置Psを上記角度θで8度以下の位置とする実施形態や、上記角度θで4度の位置における突出高さHRを上記突出高さHR1の20%以下とする実施形態とともに実施してもよく、単独で実施してもよい。また、上述した、稜部50の突出高さHRを上記高さ寸法Haの30%以下とする実施形態は、後述する他の実施形態とともに実施してもよい。
【0043】
幾つかの実施形態では、稜部50は、突出高さHRを規定する頂部51を舌部25から始点位置Psまで結ぶ曲線の曲率半径r(
図4参照)が軸方向上流側に存在する。
また、曲率半径rは、頂部51の少なくとも一部において舌部25から始点位置Psに向かうにつれて漸増する。
すなわち、幾つかの実施形態では、頂部51の少なくとも一部において、頂部51を舌部25から始点位置Psまで結ぶ曲線の曲率半径rは、始点位置Psから舌部25に向かうにつれて小さくなる。したがって、舌部25から始点位置Psに向かって微小距離dxだけ移動したときの突出高さHRの減少量(dHR)は、突出高さHRが最も高い舌部25との接続位置に近い領域ほど大きい。したがって、舌部25から始点位置Psに向かって移動したとき、舌部25との接続位置に近い領域では、舌部25との接続位置から遠い領域と比べて、突出高さHRが急激に減少することとなる。したがって、幾つかの実施形態によれば、突出高さHRを全体的に抑制できることとなるので、矢印97で示すように稜部50を乗り越えようとする流体の流れと、スクロール流路13における旋回流93との干渉を抑制することができる。これにより、スクロール流路13の内周面13aからの流体の剥離を抑制できるので、剥離に伴う損失を抑制できる。
【0044】
上述した、舌部25から始点位置Psに向かうにつれて曲率半径rを漸増させる実施形態は、上述した各実施形態の少なくとも何れか一つとともに実施してもよく、単独で実施してもよい。また、上述した、舌部25から始点位置Psに向かうにつれて曲率半径rを漸増させる実施形態は、後述する他の実施形態とともに実施してもよい。
【0045】
図6は、スクロール流路13の巻き終わり部19における流路形状、及び、出口流路15の流路形状を模式的に示す図であり、出口流路15の下流側から見たときのそれぞれの流路形状を示している。
幾つかの実施形態では、例えば
図5、6に示すように、スクロール流路13は、スクロール流路13の中心線AXと直交する方向に延在する断面における流路形状13Xが舌部25を含む断面において円形ではない。
また、幾つかの実施形態では、出口流路15は、出口流路15の中心線AXと直交する方向に延在する断面における流路形状15Xがスクロール流路13との接続位置15a(
図2参照)から出口流路15の下流側に向かうにつれて徐々に円形に近づいていき、遠心圧縮機1の軸方向に沿った巻き終わり部19の流路高さHb(
図4参照)と同じ距離以上接続位置15aよりも出口流路の下流側の位置において該流路形状15Xが円形である。
【0046】
一般的に、遠心圧縮機では、スクロール流路13は、スクロール流路13の中心線AXと直交する方向に延在する断面における流路形状(以下、単に断面形状と呼ぶ)13Xが舌部25を含む断面において円形ではない。一方、出口流路15は、流路の延在方向に直交する方向に延在する断面における流路形状(断面形状)15Xは、一般的に円形である。そのため、スクロール流路13から出口流路15にかけて流路の断面形状が急変すると、損失が発生して遠心圧縮機1の効率が低下してしまう。
発明者らが鋭意検討した結果、上述したように、遠心圧縮機1の軸方向に沿った巻き終わり部19の流路高さHb以上の距離をかけて流路の断面形状を円形に近づけることで、損失を効果的に抑制できることが判明した。
したがって、幾つかの実施形態では、によれば、スクロール流路13から出口流路15にかけて流路で発生する損失を効果的に抑制でき、遠心圧縮機1において、広い運転範囲で効率を高めることができる。
【0047】
上述した、流路高さHb以上の距離をかけて流路の断面形状を円形に近づける実施形態は、上述した各実施形態の少なくとも何れか一つとともに実施するとよい。
【0048】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0049】
1 遠心圧縮機
9 コンプレッサハウジング(ケーシング)
10 スクロール構造
13 スクロール流路
15 出口流路
17 巻き始め部
19 巻き終わり部
20 流路接続部
25 舌部
30 接続領域
50 稜部