(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-01
(45)【発行日】2022-09-09
(54)【発明の名称】長鎖分岐プロピレンポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 210/06 20060101AFI20220902BHJP
C08F 8/00 20060101ALI20220902BHJP
C08L 23/14 20060101ALI20220902BHJP
C08F 4/6592 20060101ALI20220902BHJP
【FI】
C08F210/06
C08F8/00
C08L23/14
C08F4/6592
(21)【出願番号】P 2021578164
(86)(22)【出願日】2020-06-19
(86)【国際出願番号】 EP2020067137
(87)【国際公開番号】W WO2021001176
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2021-12-28
(32)【優先日】2019-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジンボ
(72)【発明者】
【氏名】ガーライトナー マルクス
(72)【発明者】
【氏名】レスキネン パウリ
(72)【発明者】
【氏名】バーンライトナー クラウス
(72)【発明者】
【氏名】クリムケ カトヤ エレン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーテリ マルック
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-517096(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02492293(EP,A1)
【文献】特表2017-532425(JP,A)
【文献】特表2018-503738(JP,A)
【文献】特表2015-522700(JP,A)
【文献】特表2014-525950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/60- 4/70
6/00-246/00
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長鎖分岐プロピレンコポリマーを含むプロピレンポリマー組成物であって、
a)ISO 11357-3に従ってDSCによって決定される、115℃未満の結晶化温度Tcと、
b)ISO 11357-3に従ってDSCによって決定される、155℃未満の融解温度Tmと、
c)ISO 16790:2005に準拠して決定される、5.0~30.0cN未満のF30溶融強度と、
d)ISO 16790:2005に準拠して決定される、190mm/s超のV30溶融伸展性と
を有するプロピレンポリマー組成物。
【請求項2】
ISO 16152、第5版;2005-07-01に従って25℃で決定される、前記プロピレンポリマー組成物の総重量量に基づいて、3.0重量%未
満の量の冷キシレン可溶(XCS)画分を有する請求項1に記載のプロピレンポリマー組成物。
【請求項3】
EN 579に従って決定される、前記プロピレンポリマー組成物の総重量量に基づいて、1.00%未満の
量の熱キシレン不溶(XHU)画分を有する請求項1又は請求項2に記載のプロピレンポリマー組成物。
【請求項4】
ISO 1133に従って230℃の温度、2.16kgの荷重の下で決定される、1.0~30.0g/10
分のメルトフローレートMFR
2を有する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプロピレンポリマー組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプロピレンポリマー組成物の製造方法であって、
a)プロピレンと、4~12個の炭素原子を有するα-オレフィンから選択されるコモノマーとを、シングルサイト触媒系の存在下で重合して、プロピレンコポリマーを生成する工程と、
b)前記プロピレンコポリマーを回収する工程と、
c)前記プロピレンコポリマーに長鎖分岐を導入するために、過酸化物の存在下で前記プロピレンコポリマーを押し出す工程と、
d)前記プロピレンポリマー組成物を回収する工程と、
を含む方法。
【請求項6】
前記シングルサイト触媒系が、
(i)式(I)のメタロセン錯体であって、
【化1】
前記式(I)中、
MはZr又はHfであり、
各Xは、独立に、σ-ドナー配位子であり、
Lは、-R’
2C-、-R’
2C-CR’
2-、-R’
2Si-、-R’
2Si-SiR’
2-、-R’
2Ge-から選択される2価の橋架け基であり、式中、各R’は、独立に、水素原子、若しくは周期表の第14~16族の1種以上のヘテロ原子若しくはフッ素原子を含んでいてもよいC
1~C
20-ヒドロカルビル基であるか、又は任意に2つのR’基が一緒になって環を形成することができ、
各R
1は、独立に、同じであるか、又は異なっていてもよく、水素、直鎖状若しくは分岐状のC
1~C
6-アルキル基、C
7~20-アリールアルキル基、C
7~20-アルキルアリール基、C
6~20-アリール基、又はOY基であり、式中、YはC
1~10-ヒドロカルビル基であり、任意に2つの隣接するR
1基は、それらが結合しているフェニル炭素を含む環の一部となることができ、
各R
2は、独立に、同じであるか、又は異なっていてもよく、CH
2-R
8基であり、R
8は、H、又は直鎖状若しくは分枝状のC
1~6-アルキル基、C
3~8-シクロアルキル基、C
6~10-アリール基であり、
R
3は、直鎖状又は分岐状のC
1~C
6-アルキル基、C
7~20-アリールアルキル基、C
7~20-アルキルアリール基、又はC
6~C
20-アリール基であり、
R
4は、C(R
9)
3基であり、R
9は、直鎖状又は分岐状のC
1~C
6-アルキル基であり、
R
5は、水素、又は元素周期表の第14~16族からの1種以上のヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族C
1~C
20-ヒドロカルビル基であり、
R
6は、水素、又は元素周期表の第14~16族からの1種以上のヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族C
1~C
20-ヒドロカルビル基であり、
R
5及びR
6は、n個の基R
10で置換されていてもよいインデニルと縮合した5員環の一部として結合することができ、nは0~4であり、
各R
10は、同一であるか又は異なっており、C
1~C
20-ヒドロカルビル基、又は元素周期表の第14~16族に属する1種以上のヘテロ原子を含んでいてもよいC
1~C
20-ヒドロカルビルラジカルであってもよく、
R
7は、H、又は直鎖状若しくは分岐状のC
1~C
6-アルキル基、又は1~3個の基R
11で置換されていてもよい6~20個の炭素原子を有するアリール基若しくはヘテロアリール基であり、
各R
11は、独立に、同じであるか、又は異なっていてもよく、水素、直鎖状若しくは分岐状のC
1~C
6-アルキル基、C
7~20-アリールアルキル基、C
7~20-アルキルアリール基、C
6~20-アリール基、又はOY基であり、式中、YはC
1~10-ヒドロカルビル基である
メタロセン錯体と、
(ii)アルミノキサン共触媒を含む共触媒系と、
(iii)シリカ担体と
を含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
重合工程a)におけるコモノマー単位の量が、定量的
13C-NMR分光法によって決定する場合、前記プロピレンコポリマーのモノマー単位の総量に基づいて、0.5重量%超~10.0重量
%である請求項5又は請求項6に記載の方法。
【請求項8】
回収された前記プロピレンコポリマーの粒子が、DIN 661133に準拠した水銀ポロシメトリーとDIN 66137-2に準拠したヘリウム密度測定との組み合わせによって決定する場合、10.0%未
満の空隙率、及び/又は0.12cm
3/g未
満の比細孔容積を有する請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
回収された前記プロピレンコポリマーの粒子が、ISO 3310に準拠したふるい分析によって決定する場合、150~1000μ
mのメジアン粒子サイズd50、及び/又は500~2500μ
mのトップカット粒子サイズd95を有する請求項5から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記プロピレンコポリマー及び前記過酸化
物が、溶融混合装置内で、160~280
℃の範囲のバレル温度で溶融混合される請求項5から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記過酸化物が160~280℃の溶融温度で6分以下の半減期(t
1/2)を有し、かつ/又は前記過酸化物が、プロピレンコポリマー100重量部に対して0.4
0~4.0
0重量部(ppw)の過酸化物の量で前記プロピレンコポリマーに添加さ
れる請求項5から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記長鎖分岐が、二官能性長鎖分岐剤の不存在下で前記プロピレンコポリマーに導入される請求項5から請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程d)の回収された前記プロピレンポリマー組成物が、工程b)の回収された前記プロピレンポリマーと比較して、より低いメルトフローレートMFR
2(230℃、2.16kg)を有する請求項5から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載のプロピレンポリマー組成物を含む物品。
【請求項15】
物品の製造のための、請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載のプロピレンポリマー組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長鎖分岐プロピレンコポリマーを含むプロピレンポリマー組成物、プロピレンコポリマーの反応器後の改質によってそのようなプロピレンポリマー組成物を調製するためのプロセス、そのようなプロピレンポリマー組成物を含む物品、物品の製造のためのそのようなプロピレンポリマー組成物の使用、及びプロピレンポリマー組成物の溶融強度を高めるための長鎖分岐プロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー組成物を調製するためのそのようなプロセスの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレンのホモポリマー及びコポリマーは、包装、繊維製品、自動車、実験装置、パイプ等の多くの用途に適している。これらのポリマーは、例えば、高い弾性率、引張強度、剛性及び耐熱性等の様々な特性を呈する。これらの特性により、ポリプロピレンは、例えばフィルム、発泡体、成形品又は自動車部品等の多くの用途において、非常に魅力的な材料となっている。
【0003】
これらの用途では、軽量構造は永遠のテーマであり、材料の使用量を削減するために、より高い剛性を持つソリューションが求められている。これはコスト面から導かれているだけでなく、原材料の消費量を削減し、環境へのダメージを軽減するためでもある。物質密度を下げるための最も適切なアプローチは発泡であるが、しかしながら、直鎖構造のプロピレンポリマーはそれにはあまり適していない。別の重要な特徴は耐熱性である。多くの用途、とりわけ成形分野では、成形品に熱い食品を詰めるために高い耐熱性が要求され、それゆえ、熱変形温度(HDT)が非常に重要である。より高いHDTは、とりわけ包装の分野での、とりわけ成形用途には明らかに有益である。
【0004】
この目的は、ポリプロピレンを、例えば高溶融強度(HMS)プロセス等の反応器後の改質プロセスに供することにより達成することができる。このプロセスでは、ポリプロピレン材料に分岐が生じ、長鎖分岐ポリプロピレンが得られる。この長鎖分岐は、一般に溶融強度の向上につながる。それゆえ、これらの長鎖分岐ポリプロピレンは、発泡体の製造によく用いられる。
【0005】
既存の長鎖分岐ポリプロピレン及びその組成物の分野における課題は、それらの製造が一般にゲルの形成につながることである。ゲルの形成は、ポリプロピレンの望ましくない低い溶融強度、限られた機械的性能、及びそれに基づく物品の劣悪な外観をもたらす。ゲルの形成は、いわゆる熱キシレン不溶(XHU)画分によって反映される。従って、高い溶融強度を有するポリプロピレンを、ゲル含有量に関して改良することが望まれている。このような改良により、そのようなポリプロピレンを使用した場合に得られる物品は、改良された剛性、より高い耐熱性、及び優れた外観等の改良された非常に望ましい特性を有することになる。
【0006】
国際公開第2014/0016205号パンフレット(BOREALIS AG(ボレアリス)名義)は、過酸化物及びブタジエンを使用して長鎖分岐ポリプロピレン(b-PP)材料を作る、高溶融強度(HMS)の反応器後の改質プロセスを記載する。国際公開第2014/0016205号パンフレットの長鎖分岐ポリプロピレンは、ゲル含有量が低減された発泡体を調製するために使用される。国際公開第2014/0016205号パンフレットの長鎖分岐ポリプロピレンの調製には、特定のポリプロピレンがベース材料として使用される。
欧州特許出願公開第3 018 153A1号明細書及び欧州特許出願公開第3 018 154A1号明細書も、過酸化物及びブタジエンを使用して、フィルム及び発泡体用途の長鎖分岐ポリプロピレン(b-PP)材料を作る、高溶融強度(HMS)の反応器後の改質プロセスを記載する。この高溶融強度(HMS)の反応器後の改質プロセスで改質されるプロピレンポリマーは、フタル酸類を含まない触媒系の存在下で重合される。
欧州特許出願公開第2 520 425A1号明細書も、過酸化物及びブタジエンを使用して、フィルム及び発泡体用途の長鎖分岐ポリプロピレン(b-PP)材料を作る、高溶融強度(HMS)の反応器後の改質プロセスを記載する。この高溶融強度(HMS)の反応器後の改質プロセスで改質されるプロピレンポリマーは、非対称のメタロセン触媒を含む触媒系の存在下で重合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2014/0016205号パンフレット
【文献】欧州特許出願公開第3 018 153A1号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3 018 154A1号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2 520 425A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
所望のメルトフローレート(MFR)範囲を有する長鎖分岐プロピレンポリマー組成物を得るためには、長鎖分岐ポリプロピレンの調製のために、非常に低いMFRを有するベースポリプロピレン材料を使用しなければならないことが、これらのプロセスについて開示されている。というのも、これらの文献に記載されている改質プロセスによって、長鎖分岐プロピレンポリマー組成物のMFRは、ベースポリプロピレン材料と比較して一般に増加するからである。この方法の短所のいくつかは、ベースポリプロピレンの特定のMFR範囲に必要な制約であり、さらに、長鎖分岐ポリプロピレン組成物の任意の所望のMFRに到達するための制限である。それゆえ、長鎖分岐ポリプロピレン材料の特性、より具体的にはゲル含有量を改善し、結果として得られる長鎖分岐ポリプロピレン組成物の剛性及び耐熱性等の機械的特性を改善する必要性が依然として存在する。
【0009】
驚くべきことに、改変された高溶融強度(HMS)の反応器後の改質プロセスによって、耐熱性及び機械的特性の所望の改善を示す長鎖分岐プロピレンコポリマーを含むプロピレンポリマー組成物を製造できるということが見出された。好ましくは、その改変されたプロセスに導入される、慎重に設計された反応器で製造された、プロピレン及び4~12個の炭素原子を有するα-オレフィンから選択されるコモノマー単位のコポリマーは、上記特性を有するプロピレンポリマー組成物を得ることに寄与することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、長鎖分岐プロピレンコポリマーを含むプロピレンポリマー組成物であって、
a)115℃未満の結晶化温度Tcと、
b)155℃未満の融解温度Tmと、
c)5.0~30.0cN未満のF30溶融強度と、
d)190mm/s超のV30溶融伸展性と
を有するプロピレンポリマー組成物に関する。
【0011】
本発明はさらに、上で又は以降に記載されるプロピレンポリマー組成物の製造方法であって、
a)プロピレンと、4~12個の炭素原子を有するα-オレフィンから選択されるコモノマーとを、シングルサイト触媒系の存在下で重合して、プロピレンコポリマーを生成する工程と、
b)このプロピレンコポリマーを回収する工程と、
c)このプロピレンコポリマーに長鎖分岐を導入するために、過酸化物の存在下で上記プロピレンコポリマーを押し出す工程と、
d)このプロピレンポリマー組成物を回収する工程と
を含む方法に関する。
【0012】
さらに、本発明は、上で又は以降に規定されるプロピレンポリマー組成物を含む物品に関する。
【0013】
加えて、本発明は、物品の製造のための、上で又は以降に規定されるプロピレンポリマー組成物の使用に関する。
【0014】
最後に、本発明は、プロピレンポリマー組成物の溶融強度を高めるための、上で又は以降に規定される方法の使用に関する。
【0015】
定義
本発明によれば、表現「プロピレンホモポリマー」は、実質的に、すなわち、少なくとも99.0重量%、より好ましくは少なくとも99.5重量%、さらにより好ましくは少なくとも99.8重量%、例えば少なくとも99.9重量%のプロピレン単位からなるポリプロピレンに関する。別の実施形態では、プロピレン単位のみが検出可能であり、すなわち、プロピレンのみが重合されている。
【0016】
本発明によれば、表現「プロピレンコポリマー」は、プロピレンモノマー単位と、好ましくはC4~C12のα-オレフィンから選択されるコモノマー単位とを含むポリプロピレンに関する。プロピレンコポリマー中のコモノマー単位の量は、少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.2重量%、さらにより好ましくは少なくとも0.5重量%である。本発明では、プロピレンコポリマー中のコモノマー単位の量は、好適には0.5重量%を超える。
【0017】
プロピレンランダムコポリマーは、プロピレンモノマー単位と、本発明では好ましくはC4~C12のα-オレフィンから選択されるコモノマー単位とのコポリマーであって、コモノマー単位がポリマー鎖上にランダムに分布しているコポリマーである。プロピレンランダムコポリマーは、炭素原子の量が異なる1種以上のコモノマーからのコモノマー単位を含むことができる。プロピレンランダムコポリマーは、エラストマー相を含まない。
【0018】
本明細書では、異なる記載がないかぎり、百分率による割合は、通常、重量%で与えられる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
プロピレンポリマー組成物
本発明は、長鎖分岐プロピレンコポリマーを含むプロピレンポリマー組成物であって、
a)115℃未満の結晶化温度Tcと、
b)155℃未満の融解温度Tmと、
c)5.0~30.0cN未満のF30溶融強度と、
d)190mm/s超のV30溶融伸展性と
を有するプロピレンポリマー組成物に関する。
【0020】
当該プロピレンポリマー組成物は、上記長鎖分岐プロピレンコポリマーを、添加剤及び/又はポリマーから選択される他の化合物と一緒に含むことができる。
当該プロピレンポリマー組成物は、好ましくは、唯一のポリマー成分としての上記長鎖分岐プロピレンコポリマーと、任意の添加剤とを含み、より好ましくは、唯一のポリマー成分としての上記長鎖分岐プロピレンコポリマーと、任意の添加剤とからなる。
本発明に係るプロピレンポリマー組成物は、好ましくはプロピレンコポリマー組成物である。
【0021】
本発明のプロピレンポリマー組成物に使用される例示的な添加剤としては、酸化防止剤(例えば立体的にヒンダードな(立体障害の大きい)フェノール類、ホスファイト/ホスホナイト、硫黄含有酸化防止剤、アルキルラジカル捕捉剤、芳香族アミン、ヒンダードアミン安定剤、若しくはそれらのブレンド)、金属不活性化剤(例えばIrganox(登録商標)MD 1024)、又は紫外線安定剤(例えばヒンダードアミン光安定剤)等の安定剤が挙げられるが、これらに限定されない。他の代表的な添加剤は、帯電防止剤又は防曇剤等の改質剤(例えばエトキシル化されたアミン及びアミド、若しくはグリセリンエステル等)、酸捕捉剤(例えばステアリン酸Ca)、発泡剤、付着剤(cling agent)(例えばポリイソブテン)、滑剤及び樹脂(例えばアイオノマーワックス、ポリエチレンワックス及びエチレンコポリマーワックス、フィッシャー・トロプシュ(Fischer-Tropsch)ワックス、モンタン系ワックス、フッ素系化合物、又はパラフィンワックス)、核形成剤(例えばタルク、安息香酸塩、亜リン酸系化合物、ソルビトール、ノニトール系化合物、又はアミド系化合物)、並びにスリップ剤及びブロッキング防止剤(例えばエルカミド(エルカ酸アミド)、オレイン酸アミド、タルク、天然シリカ、及び合成シリカ又はゼオライト)、並びにこれらの混合物である。
一般に、当該プロピレンポリマー組成物中の添加剤の総量は、当該プロピレンポリマー組成物の総重量に基づいて、5.0重量%以下、好ましくは1.0重量%以下、例えば0.005~0.995重量%の範囲内、より好ましくは0.8重量%以下である。
【0022】
本発明のプロピレンポリマー組成物に使用するポリマーは、好ましくは熱可塑性ポリマーを含む。
好ましくは、本発明に係るプロピレンポリマー組成物中の添加剤、ポリマー及び/又はこれらの組み合わせの総量は、本発明に係るプロピレンポリマー組成物の総重量に基づいて、5.0重量%以下、より好ましくは0.995重量%以下、例えば0.005~1.0重量%の範囲内である。
【0023】
好ましくは、当該プロピレンポリマー組成物は、5.0重量%を超える量のフィラー及び/又は強化剤を含有しない。1つの実施形態では、当該プロピレンポリマー組成物は、フィラー及び/又は強化剤を含有しない。
【0024】
好ましいわけではないが、本発明に係るプロピレンポリマー組成物は、フィラー及び/又は強化剤をさらに含むことができる。本発明に係る長鎖分岐ポリプロピレン組成物(b-PP-C)に使用されるフィラーとしては、タルク、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、クレー、カオリン、シリカ、ガラス、ヒュームドシリカ、マイカ、ウォラストナイト、長石、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ三水和物等の水和アルミナ、ガラス微小球、セラミック微小球、木粉、大理石粉、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、及び/又は二酸化チタンが挙げられるが、これらに限定されない。本発明に係るプロピレンポリマー組成物に使用される強化剤としては、鉱物繊維、ガラス繊維、炭素繊維、有機繊維及び/又はポリマー繊維が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
好ましくは、本発明に係るプロピレンポリマー組成物中の添加剤、ポリマー、フィラー、強化剤及び/又はこれらの組み合わせの総量は、本発明に係るプロピレンポリマー組成物の総重量に基づいて、5.0重量%以下、より好ましくは1.0重量%以下、例えば0.005~0.995重量%の範囲である。
【0026】
当該プロピレンポリマー組成物は、DSCによって決定される、115.0℃未満、より好ましくは90.0~114.0℃、さらにより好ましくは95.0~112.0℃、最も好ましくは98.5~111.0℃の結晶化温度Tcを有する。
【0027】
さらに、当該プロピレンポリマー組成物は、示差走査熱量測定(DSC)によって決定される、155.0℃未満、好ましくは130.0~152.5℃、より好ましくは132.5~150.0℃、最も好ましくは135.0~145.0℃の融解温度Tmを有する。
【0028】
なおさらに、当該プロピレンポリマー組成物は、Rheotens(レオテンス)法によって決定される、5.0~30.0cN未満、好ましくは5.5~28.0cN、より好ましくは6.0~26.0cN、最も好ましくは10.0~21.0cNのF30溶融強度を有する。
【0029】
加えて、当該プロピレンポリマー組成物は、Rheotens法によって決定される、190mm/s超、好ましくは200~500mm/s、より好ましくは210~400mm/s、最も好ましくは215~450mm/sのV30溶融伸展性を有する。
【0030】
当該プロピレンポリマー組成物は、好ましくは、当該プロピレンポリマー組成物の総重量量に基づいて、1.00%未満の量、より好ましくは0.05~0.95重量%の量、さらにより好ましくは0.08~0.90重量%の量、最も好ましくは0.10~0.80重量%の量の熱キシレン不溶(XHU)画分を有する。
【0031】
さらに、当該プロピレンポリマー組成物は、好ましくは1.0~30.0g/10分、より好ましくは1.2~20.0g/10分、さらにより好ましくは1.4~15.0g/10分、最も好ましくは2.2~12.5g/10分のメルトフローレートMFR2(230℃、2.16kg)を有する。
【0032】
加えて、当該プロピレンポリマー組成物は、DSCによって決定される、好ましくは、105J/g未満、より好ましくは85~102J/gの範囲、さらにより好ましくは88~100J/gの範囲、最も好ましくは88~98J/gの範囲の融解エンタルピーHmを有する。
【0033】
なおさらに、当該プロピレンポリマー組成物は、好ましくは、当該プロピレンポリマー組成物の総重量量に基づいて、3.0重量%未満、好ましくは0.5~2.8重量%、より好ましくは0.8~2.6重量%の量の冷キシレン可溶(XCS)画分を有する。
【0034】
本発明に係るプロピレンポリマー組成物は、驚くべきことに、そのF30溶融強度及びV30溶融伸展性に見られる良好な溶融強度、その融解温度、融解エンタルピー及び結晶化温度及び低いXCS画分量に見られる高い結晶性、並びに低いXHU画分量で示される低いゲル含有量の特性の改良されたバランスを兼ね備えている。それゆえ、本発明に係るプロピレンポリマー組成物は、とりわけ軽量用途、自動車用途、及び食品包装用途等の包装用途におけるフィルム、発泡体、及び成形品にとりわけ適用できる。
【0035】
上で又は以降に規定される本発明に係るプロピレンポリマー組成物は、プロピレンコポリマーに長鎖分岐を導入する改変された高溶融強度(HMS)の反応器後の改質プロセスで調製される。
【0036】
プロセス
本発明はさらに、上で又は以降に記載されるプロピレンポリマー組成物の製造方法であって、
a)プロピレンと、4~12個の炭素原子を有するα-オレフィンから選択されるコモノマーとを、シングルサイト触媒系の存在下で重合して、プロピレンコポリマーを生成する工程と、
b)このプロピレンコポリマーを回収する工程と、
c)このプロピレンコポリマーに長鎖分岐を導入するために、過酸化物の存在下で上記プロピレンコポリマーを押し出す工程と、
d)このプロピレンポリマー組成物を回収する工程と、
を含む方法に関する。
【0037】
これにより、上記プロセスから得られるプロピレンポリマー組成物は、上で又は以降に規定される本発明に係るプロピレンポリマー組成物として規定される。
【0038】
プロピレンコポリマーの重合
工程a)で重合されるプロピレンコポリマーは、プロピレンと、4~12個の炭素原子を有するα-オレフィンから選択される少なくとも1種のコモノマーとのコポリマーである。
好ましいコモノマーは、4~8個の炭素原子を有するα-オレフィンから選択されるコモノマーである。とりわけ好ましいのは、1-ブテン及び1-ヘキセンから選択されるコモノマーである。最も好ましいのは1-ヘキセンである。
上記プロピレンコポリマーは、好ましくはプロピレン/1-ヘキセンコポリマー又はプロピレン/1-ブテンコポリマーであり、最も好ましくはプロピレン/1-ヘキセンコポリマーである。
【0039】
上記プロピレンコポリマーは、好ましくはプロピレンランダムコポリマー、すなわち、上で又は以降に規定されるコモノマーがポリマー鎖中にランダムに分布しているプロピレンコポリマーである。
【0040】
上記プロピレンのコポリマー中のコモノマーの量は、そのプロピレンのコポリマー中のモノマー単位の総量に基づいて、好ましくは0.5重量%超~10.0重量%、好ましくは0.8~8.0重量%、さらにより好ましくは1.0~6.5重量%、最も好ましくは1.5~5.0重量%である。
上記プロピレンコポリマーは、直列構成であり異なる反応条件で動作する複数の反応器を用いて、逐次工程プロセスで製造することができる。その結果、特定の反応器で調製された各画分は、製造されるプロピレンコポリマーの種類に応じて、独自の分子量分布及び/又はコモノマー含有量分布を有することができる。これらの画分からの分布曲線(分子量又はコモノマー含有量)を重ね合わせて、最終的なコポリマーの分子量分布曲線又はコモノマー含有量分布曲線を得ると、これらの曲線は、2つ以上の極大値を示すか、又は個々の画分の曲線と比較して少なくともはっきりと幅が広がることがある。このように2つ以上の連続的な工程を経て製造されるコポリマーは、工程数に応じてバイモーダル(二峰性)又はマルチモーダル(多峰性)と呼ばれる。従って、上記プロピレンコポリマーは、プロピレンコポリマーの種類に応じて、分子量及び/又はコモノマー含有量の観点から、マルチモーダル、例えばバイモーダルであってもよい。
【0041】
上記プロピレンコポリマーが、コモノマー含有量から見て、マルチモーダル性、例えばバイモーダル性である場合には、個々の画分が材料の特性に影響を与える量で存在することが理解される。従って、これらの各画分は、プロピレンコポリマーに基づいて少なくとも10重量%の量で存在することが理解される。従って、特にコモノマー含有量の観点からバイモーダル系の場合、2つの画分の分割(比)は、好ましくは40:60~60:40、例えば約50:50である。
マルチモーダルプロピレンコポリマー又はバイモーダルプロピレンコポリマー中のプロピレンポリマー画分は、コモノマー(複数可)の量及び/又は性質が異なっていてもよいプロピレンコポリマーのみの組み合わせであってもよい。マルチモーダルプロピレンコポリマー又はバイモーダルプロピレンコポリマー中のプロピレンポリマー画分は、プロピレンホモポリマー(複数可)とプロピレンコポリマー(複数可)との組み合わせであることができる。この際、複数種のプロピレンコポリマーが存在する場合、それらのプロピレンコポリマーは、コモノマー(複数可)の量及び/又は性質が異なっていてもよい。
【0042】
上記プロピレンポリマーを製造するのに適した重合プロセスは、先行技術で知られており、少なくとも1つの重合段階を含み、重合は通常、溶液、スラリー、バルク(塊状)又は気相で行われる。典型的には、重合プロセスは、追加の重合段階又は反応器を含む。1つの特定の実施形態では、当該プロセスは、少なくとも1つのバルク反応器ゾーン及び少なくとも1つの気相反応器ゾーンを含み、各ゾーンは少なくとも1つの反応器を含み、すべての反応器はカスケード状に配置される。1つの特に好ましい実施形態では、重合プロセスは、少なくとも1つのバルク反応器と少なくとも1つの気相反応器とを含み、これらがこの順序で配置されている。いくつかの好ましいプロセスでは、そのプロセスは1つのバルク反応器と少なくとも2つ、例えば2つ又は3つの気相反応器とを含む。当該プロセスは、前反応器及び後反応器をさらに含んでいてもよい。前反応器は、典型的には予備重合反応器を含む。この種のプロセスでは、ポリマーの特定の特性を実現するために、より高い重合温度を使用することが好ましい。これらのプロセスにおける典型的な温度は、70℃以上、好ましくは80℃以上、さらには85℃以上である。上述のような高い重合温度は、反応器カスケードの一部又はすべての反応器に適用することができる。
【0043】
好ましい多段階プロセスは、Borealisによって開発されたもの(BORSTAR(登録商標)技術として公知)等の「ループ-気相」プロセスであり、例えば欧州特許出願公開第0 887 379号明細書、国際公開第92/12182号パンフレット、国際公開第2004/000899号パンフレット、国際公開第2004/111095号パンフレット、国際公開第99/24478号パンフレット、国際公開第99/24479号パンフレット又は国際公開第00/68315号パンフレット等の特許文献に記載されている。さらなる好適なスラリー-気相プロセスは、Basell(ベーセル)のSpheripol(登録商標)プロセスである。
【0044】
好適には、上記プロピレンポリマーを重合するために、特定の種類のシングルサイト触媒系が使用される。とりわけ好ましいのは、シングルサイト触媒系が、シリカ担持シングルサイト触媒系等の担持型シングルサイト触媒系であることである。このシングル触媒系は、好適には、特定の種類のメタロセン錯体を、アルミノキサン共触媒及びシリカ担体と組み合わせて含む。
メタロセン触媒錯体は、対称型又は非対称型のいずれかである。非対称は、メタロセンを形成する2つの配位子が異なること、すなわち、各配位子が化学的に異なる置換基の組を持つことを単に意味する。
メタロセン触媒錯体は、好ましくは、アンチ(anti)配置のキラルでラセミの架橋ビスインデニルメタロセンである。このメタロセンは、C2対称又はC1対称であることが好ましい。メタロセンがC1対称の場合、メタロセンは、配位子の周辺部ではなく、金属中心の近くでC2対称性を維持するため、疑似C2対称性をなお維持する。その化学的性質により、錯体の合成時には、メソ体とラセミのエナンチオマー対(C2対称の錯体の場合)、又はアンチ及びシン(syn)のエナンチオマー対(C1対称の錯体の場合)の両方が形成される。これにより、下図に示すように、ラセミ-アンチは、2つのインデニル配位子がシクロペンタジエニル-金属-シクロペンタジエニル面に対して逆方向に配向していることを意味し、ラセミ-シンは、2つのインデニル配位子がシクロペンタジエニル-金属-シクロペンタジエニル面に対して同一方向に配向していることを意味する。
【化1】
【0045】
式(I)、及び任意の下位の式は、シン及びアンチの両配置を包含することを意図している。好ましいメタロセン触媒錯体は、アンチ配置である。
メタロセン触媒錯体は、好ましくはラセミ-アンチ異性体として用いられる。それゆえ、理想的には、メタロセン触媒錯体の少なくとも95mol(モル)%、例えば少なくとも98mol%、特に少なくとも99mol%がラセミ-アンチ異性体である。
メタロセン触媒錯体においては、以下の選択肢が適用される。メタロセン触媒錯体は、好ましくは式(I)のものである。
【化2】
【0046】
Mは、Zr又はHfのいずれかであり、好ましくはZrである。
各Xは、独立に、σ-ドナー配位子である。
従って、各Xは同じであってもよいし異なっていてもよく、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、直鎖状若しくは分岐状、環状若しくは非環状のC1~20-アルキル基、又はC1~20-アルコキシ基、C6~20-アリール基、C7~20-アルキルアリール基、又はC7~20-アリールアルキル基であり、任意に周期表第14~16族の1種以上のヘテロ原子を含む。
ハロゲンという用語は、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基及びヨード基を含み、好ましくはクロロ基である。
周期表第14~16族に属するヘテロ原子という用語は、例えば、Si、N、O又はSを含む。
より好ましくは、各Xは、独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~6-アルキル基、又はC1~6-アルコキシ基、フェニル基又はベンジル基である。
さらにより好ましくは、各Xは、独立に、ハロゲン原子、直鎖状若しくは分岐状のC1~4-アルキル基、又はC1~4-アルコキシ基、フェニル基又はベンジル基である。
最も好ましくは、各Xは、独立に、塩素、ベンジル又はメチル基である。
好ましくは、両方のX基は同じである。
両方のX基についての最も好ましい選択肢は、2つの塩素、2つのメチル又は2つのベンジル基である。
【0047】
Lは、-R’2C-、-R’2C-CR’2-、-R’2Si-、-R’2Si-SiR’2-、-R’2Ge-から選択される2価の橋架け基であり、式中、各R’は、独立に、水素原子、若しくは周期表の第14~16族の1種以上のヘテロ原子若しくはフッ素原子を含んでいてもよいC1~C20-ヒドロカルビル基であるか、又は任意に2つのR’基が一緒になって環を形成することができる。
周期表の第14~16族に属するヘテロ原子という用語は、例えばSi、N、O又はSを含む。
好ましくは、Lは、-R’2Si-、エチレン又はメチレンである。
【0048】
式-R’2Si-において、各R’は、好ましくは、独立に、C1~C20-ヒドロカルビル基である。それゆえ、C1~20-ヒドロカルビル基という用語は、C1~20-アルキル、C2~20-アルケニル、C2~20-アルキニル、C3~20-シクロアルキル、C3~20-シクロアルケニル、C6~20-アリール基、C7~20-アルキルアリール基若しくはC7~20-アリールアルキル基、又は、当然、アルキルで置換されたシクロアルキルのようなこれらの基の混合形態を含む。特段の記載がない限り、好ましいC1~20-ヒドロカルビル基は、C1~20-アルキル基、C4~20-シクロアルキル基、C5~20-シクロアルキル-アルキル基、C7~20-アルキルアリール基、C7~20-アリールアルキル基、又はC6~20-アリール基である。
好ましくは、両方のR’基は同じである。R’がメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、イソブチル、C3~8-シクロアルキル、シクロヘキシルメチル、フェニル若しくはベンジル等のC1~C10-ヒドロカルビル又はC6~C10-アリール基である場合が好ましく、より好ましくは両方のR’はC1~C6-アルキル、C5~6-シクロアルキル又はC6-アリール基であり、最も好ましくは両方のR’がメチルであるか、又は一方がメチルであり他方がシクロヘキシルである。最も好ましくは、橋架け基は-Si(CH3)2-である。
【0049】
各R1は、独立に、同じであるか、又は異なっていてもよく、水素、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基、C7~20-アリールアルキル基、C7~20-アルキルアリール基、又はC6~20-アリール基、又はOY基であり、式中、YはC1~10-ヒドロカルビル基であり、任意に2つの隣接するR1基は、それらが結合しているフェニル炭素を含む環の一部であってもよい。
好ましくは、各R1は、独立に、同じであるか、又は異なっていてもよく、水素、又はメチル若しくはtert-ブチルのような直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基である。
例えば、C4-フェニル環が無置換(すなわち、3つのR1すべてが水素である)であったり、4’-tert-ブチルフェニルのようにパラ位のみで置換されていたり、3’,5’-ジメチルフェニル又は3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニルのように3’位及び5’位で二置換されていたりすることが可能である。
さらには、両方のフェニル環が同じ置換パターンを持つこと、又は2つのフェニル環が異なる置換パターンを持つことも可能である。
【0050】
各R2は、独立に、同じであるか、又は異なっていてもよく、CH2-R8基であり、R8は、H、又は直鎖状若しくは分岐状のC1~6-アルキル基、C3~8-シクロアルキル基、C6~10-アリール基である。
好ましくは、R2は両方とも同じであり、CH2-R8基であり、R8は、H、又は直鎖状若しくは分岐状のC1~C4-アルキル基であり、より好ましくは、R2は両方とも同じであり、CH2-R8基であり、R8は、H、又は直鎖状若しくは分岐状のC1~C3-アルキル基である。最も好ましくは、両方のR2がメチルである。
【0051】
R3は、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基、C7~20-アリールアルキル基、C7~20-アルキルアリール基、又はC6~C20-アリール基である。
R3は、好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル及びtert-ブチル等の直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基又はC6~20-アリール基であり、好ましくは直鎖状のC1~C4-アルキル基であり、より好ましくはC1~C2-アルキル基であり、最も好ましくはメチルである。
【0052】
R4はC(R9)3基であり、R9は直鎖状又は分枝状のC1~C6-アルキル基である。
好ましくは、各R9は同一であるか又は異なっており、R9は直鎖状又は分岐状のC1~C4-アルキル基であり、より好ましくはR9は同一であり、C1~C2-アルキル基である。最も好ましくは、R4はtert-ブチル基であり、それゆえすべてのR9基はメチルである。
【0053】
1つの実施形態では、R5及びR6は、独立に、同じであるか、又は異なっていてもよく、水素、又は元素周期表の第14~16族からの1種以上のヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族C1~C20-ヒドロカルビル基であり、例えばアルキル基又はアルコキシ基、例えばC1~C10-アルキル又はC1~C10-アルコキシ基である。
好ましくは、R5及びR6は、独立に、同じであるか、又は異なっていてもよく、水素、又は直鎖状若しくは分岐状のC1~C6アルキル基、又はC1~C6-アルコキシ基である。
より好ましくは、R5及びR6は、独立に、同じであるか、又は異なっていてもよく、水素、又は直鎖状若しくは分岐状のC1~C4アルキル基、又はC1~C4-アルコキシ基である。
【0054】
別の実施形態では、R5及びR6は、n個の基R10で置換されていてもよいインデニル環と縮合した5員環の一部として結合することができ、nは0~4、好ましくは0又は2、より好ましくは0であり、
各R10は同じであってもよいし異なっていてもよく、C1~C20-ヒドロカルビル基、又は元素周期表の第14~16族に属する1種以上のヘテロ原子を含んでいてもよいC1~C20-ヒドロカルビルラジカルであり、好ましくは直鎖状又は分岐状のC1~C6-アルキル基である。
【0055】
R7は、H、又は直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基、又は1~3個の基R11で置換されていてもよい6~20個の炭素原子を有するアリール基若しくはヘテロアリール基である。
好ましくは、R7は、H、又は1~3個の基R11で置換されていてもよい6~10個の炭素原子を有するアリール基であり、より好ましくは、R7は、H、又は1~3個の基R11で置換されていてもよいフェニル基である。
R7が6~10個の炭素原子を有する置換されていてもよいアリール基、例えばフェニルである場合、各R11は、独立に、同じであるか、又は異なっていてもよく、水素、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6アルキル基、C7~20アリールアルキル基、C7~20アルキルアリール基、又はC6~20アリール基、又はOY基であり、式中、YはC1~10ヒドロカルビル基である。
好ましくは、各R11は、独立に、同じであるか、異なっていてもよく、水素、直鎖状若しくは分岐状のC1~C6-アルキル基、又はC6~20-アリール基、又はOY基であり、式中、YはC1~4-ヒドロカルビル基である。より好ましくは、各R11は、独立に、同じであるか、又は異なっていてもよく、水素、又は直鎖状若しくは分岐状のC1~C4-アルキル基又はOY-基であり、式中、YはC1~4-ヒドロカルビル基である。さらにより好ましくは、各R11は、独立に、同じであるか、又は異なっていてもよく、水素、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル又はメトキシであり、とりわけ水素、メチル又はtert-ブチルである。
アリール基、例えばフェニル基が置換されている場合は、その基は、好ましくは1個又は2個のR11基で置換されている。より好ましくはフェニル基は2つの基R11で置換されており、さらにより好ましくは両方のR11基は3’,5’-ジメチルのように同じである。
【0056】
本発明の特に好ましい錯体としては、
rac-ジメチルシランジイル-ビス-[2-メチル-4-(3’5’ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-anti-ジメチルシランジイル[2-メチル-4-(4’-tert-ブチルフェニル)-インデン-1-イル][2-メチル-4-(4’-tert-ブチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-anti-ジメチルシランジイル[2-メチル-4-(4’-tert-ブチルフェニル)-インデン-1-イル][2-メチル-4-フェニル-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-anti-ジメチルシランジイル[2-メチル-4-(3’,5’-tert-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-ジメチル-フェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-anti-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(4’-tert-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-ジメチル-フェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-anti-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(3’,5’-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-anti-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(3’,5’-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-フェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド,
又はそのHf類似体が挙げられる。
【0057】
誤解を避けるために、上記で提示された置換基の狭義の定義は、任意の他の置換基のいずれかの広義又は狭義の定義と組み合わせることができる。
上記の開示全体を通して、置換基の狭い定義が提示されている場合、その狭い定義は、本願における他の置換基のすべての広い定義及び狭い定義と併せて開示されているとみなされる。
【0058】
錯体、ひいては触媒を形成するために必要な配位子は、任意のプロセスで合成することができ、当業者の有機化学者であれば、必要な配位子材料を製造するための様々な合成プロトコルを考案することができるであろう。例えば、国際公開第2007/116034号パンフレットは、必要な化学反応を開示する。合成プロトコルは一般に、国際公開第2002/02576号パンフレット、国際公開第2011/135004号パンフレット、国際公開第2012/084961号パンフレット、国際公開第2012/001052号パンフレット、国際公開第2011/076780号パンフレット、国際公開第2015/158790号パンフレット及び国際公開第2018/122134号パンフレットにも見出すことができる。実施例の項も、当業者に十分な方向性を示している。
【0059】
活性な触媒種を形成するためには、通常、当該技術分野でよく知られているように、共触媒を採用することが必要である。
好ましいシングルサイト触媒系では、アルミノキサン共触媒を含む共触媒系が、上記の規定されたメタロセン触媒錯体と組み合わせて使用される。
【0060】
アルミノキサン共触媒は、式(II)のものであることができる。
【化3】
式(II)中、nは6~20であり、Rは以下の意味を有する。
アルミノキサンは、有機アルミニウム化合物、例えば式AlR
3、AlR
2Y及びAl
2R
3Y
3の化合物の部分加水分解で形成され、式中、Rは、例えばC
1~C
10-アルキル、好ましくはC
1~C
5-アルキル、又はC
3~C
10-シクロアルキル、C
7~C
12-アリールアルキル若しくはC
7~C
12-アルキルアリール、及び/又はフェニル若しくはナフチルであり、Yは、水素、ハロゲン、好ましくは塩素若しくは臭素、又はC
1~C
10-アルコキシ、好ましくはメトキシ若しくはエトキシであることができる。得られる酸素含有アルミノキサンは、一般に純粋な化合物ではなく、式(II)のオリゴマーの混合物である。
好ましいアルミノキサンはメチルアルミノキサン(MAO)である。
本発明に従って共触媒として使用されるアルミノキサンは、その調製の態様に起因して、純粋な化合物ではないため、以降のアルミノキサン溶液のモル濃度は、そのアルミニウム含有量に基づいている。
【0061】
上記共触媒系は、アルミノキサン共触媒と組み合わせてホウ素含有共触媒を含むこともできる。
【0062】
注目するホウ素含有共触媒としては、式(III)のものが挙げられる。
BY3 (III)
式(III)中、Yは同一であるか又は異なり、水素原子、1~約20個の炭素原子を有するアルキル基、6~約15個の炭素原子を有するアリール基、アルキルラジカル中に1~10個の炭素原子、アリールラジカル中に6~20個の炭素原子をそれぞれ有するアルキルアリール、アリールアルキル、ハロアルキル若しくはハロアリール、又はフッ素、塩素、臭素、若しくはヨウ素である。Yの好ましい例は、フッ素、トリフルオロメチル、p-フルオロフェニル、3,5-ジフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、3,4,5-トリフルオロフェニル及び3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル等の芳香族フッ素化基である。好ましい選択肢は、トリフルオロボラン、トリス(4-フルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,4,6-トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボラン及び/又はトリス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボランである。
特に、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランが好ましい。
【0063】
しかしながら、ボレートを使用することが好ましく、すなわちボレートを含む化合物を使用することが好ましい。
これらの化合物は一般に、下式のアニオンを含む。
(Z)4B- (IV)
式(IV)中、Zは、置換されていてもよいフェニル誘導体であり、その置換基は、ハロ-C1~6-アルキル又はハロ基である。好ましい選択肢は、フルオロ又はトリフルオロメチルである。最も好ましくは、フェニル基はペルフルオロ化されている。
このようなイオン性共触媒は、好ましくは、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート又はテトラキス(3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート等の弱く配位するアニオンを含む。適切な対イオンは、プロトン化されたアミン又はアニリン誘導体、例えばメチルアンモニウム、アニリニウム、ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、N-メチルアニリニウム、ジフェニルアンモニウム、N,N-ジメチルアニリニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリ-n-ブチルアンモニウム、メチルジフェニルアンモニウム、ピリジニウム、p-ブロモ-N,N-ジメチルアニリニウム、又はp-ニトロ-N,N-ジメチルアニリニウムである。
本発明に従って使用することができる好ましいイオン化合物としては、
トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラ(トリフルオロメチルフェニル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラ(4-フルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジ(プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジ(シクロヘキシル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、又は
フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
が挙げられる。
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、又は
N,N-ジメチルベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
が好ましい。
驚くべきことに、特定のホウ素含有共触媒がとりわけ好ましいことが見出された。それゆえ、好ましいボレートはトリチル、すなわちトリフェニルカルベニウムイオンを含む。従って、Ph3CB(PhF5)4及びその類似体の使用がとりわけ好ましい。
【0064】
共触媒の適切な量は、当業者にとっては周知である。
好ましくは、共触媒の量は、以下に規定されたモル比になるように選択される。
アルミノキサンからのAlと、メタロセンの金属イオン(M)(好ましくはジルコニウム)とのモル比、Al/M、は、1:1~2000:1mol/mol、好ましくは10:1~1000:1、より好ましくは50:1~600:1mol/molの範囲であってよい。
任意のホウ素(B)の供給量とメタロセンの金属イオン(M)(好ましくはジルコニウム)とのモル比、ホウ素/M、は、0.1:1~10:1mol/mol、好ましくは0.3:1~7:1、特に0.3:1~5:1mol/molの範囲であってもよい。
さらにより好ましくは、任意のホウ素(B)の供給量とメタロセンの金属イオン(M)(好ましくはジルコニウム)とのモル比、ホウ素/M、は、0.3:1~3:1である。
【0065】
上述のようなメタロセン錯体は、上述のような適切な共触媒の組み合わせと組み合わせて使用される。
好ましい触媒系は、担持形態で使用される。使用される微粒子状担体材料は、シリカ又はシリカ-アルミナ等の混合酸化物、特にシリカである。
シリカ担体を使用することが好ましい。当業者は、メタロセン触媒を担持するのに必要な手順を知っている。
【0066】
特に好ましくは、例えば、国際公開第94/14856号パンフレット、国際公開第95/12622号パンフレット、国際公開第2006/097497号パンフレット及び欧州特許出願公開第18282666号明細書に記載されているものに類似したプロセスを使用して、錯体を微粒子担体の細孔に装填できるように、担体は多孔質材料である。
【0067】
シリカ担体の平均粒子サイズは、典型的には10~100μmであることができる。しかしながら、担体が15~80μm、好ましくは18~50μmの平均粒子サイズを有する場合、特別な利点が得られることが判明した。
シリカ担体の平均細孔径は10~100nmの範囲とすることができ、細孔容積は1~3mL/gの範囲とすることができる。
適切な担体材料の例は、例えば、PQ Corporation(ピーキュー・コーポレーション)によって製造及び販売されているES757、Grace(グレース)によって製造及び販売されているSylopol 948、又はAGC Si-Tech Co.(エイジーシー・エスアイテック)によって製造されているSUNSPERA DM-L-303シリカである。担体は、最適なシラノール基含有量を得るために、触媒調製に使用する前に任意に焼成することができる。
これらの担体の使用は、当該技術分野において日常的に行われている。
【0068】
触媒は、シリカ1グラムあたり10~100μmolの遷移金属、及びシリカ1グラムあたり3~15mmolのAlを含むことができる。
【0069】
調製工程
工程a)
工程a)では、シリカ担体をアルミノキサン共触媒と反応させる。
好ましくは、この反応は、シリカ担体に対するアルミノキサン中のAlの合成化学量論が3~12mmol Al/g SiO2の範囲にある状態で行われる。
シリカ担体は、その表面から水分を除去するために、工程a)の前に焼成されることが好ましい。焼成温度は、通常200~800℃の範囲であり、好ましくは400~650℃の範囲である。
次に、シリカ担体を、トルエン等の適切な炭化水素溶媒に懸濁させる。懸濁は、不活性ガス雰囲気下、例えば窒素下で、15℃~25℃の温度で行う。
シリカ/溶媒、好ましくはシリカ/トルエンの懸濁液は、数分間、好ましくは5~60分間、より好ましくは10~30分間撹拌される。
【0070】
次に、アルミノキサン共触媒、好ましくはMAO(例えば、トルエン中の30重量%溶液として)を、好ましくは3~12mmol Al/g SiO2の化学量論で、シリカ/トルエン懸濁液に添加する。
工程a)でアルミノキサン共触媒の全てを添加するのではなく、アルミノキサン共触媒の総量の主要部分を添加するのが好ましい。従って、アルミノキサン共触媒の総量の75.0~97.0重量%、好ましくは77.0~95.0重量%、より好ましくは85.0~92.0重量%が工程a)で添加される。
アルミノキサン共触媒の添加後、シリカ/溶媒/アルミノキサン混合物を80℃~120℃、好ましくは95℃~115℃、より好ましくは100℃~110℃の範囲の温度に加熱する。
この混合物を、この温度で、数分~数時間、好ましくは60分~5時間、より好ましくは90分~3時間撹拌する。
【0071】
その後、撹拌を停止し、そうして得られたスラリーを沈降させ、例えば濾過又はデカンテーションによって母液を除去する。
【0072】
その後、残ったアルミノキサン共触媒処理したシリカ担体を、70℃~115℃の範囲、好ましくは80℃~110℃の範囲、より好ましくは90℃~100℃の範囲の昇温した温度で、1回以上、例えば1回又は2回、より好ましくはトルエンで2回、任意にヘプタンでさらに1回洗浄することが好ましい。
その後、好ましくは、アルミノキサン共触媒処理したシリカ担体を、好ましくは最初に適切な温度、例えば40~80℃、好ましくは50~70℃、より好ましくは58~62℃で、窒素雰囲気下で、続いて真空下で乾燥させる。
【0073】
工程b)
工程b)では、式(I)の上記規定されたメタロセン錯体を、トルエン等の適切な炭化水素溶媒中でアルミノキサン共触媒と反応させる。好ましくは、工程a)と同じ炭化水素溶媒が使用される。
【0074】
この工程では、アルミノキサン共触媒、好ましくはMAO(例えば、トルエン中の30重量%溶液として)、の残りの部分、すなわちアルミノキサン共触媒の総量の3.0~25.0重量%、好ましくは5.0~23.0重量%、より好ましくは8.0~13.0重量%を工程b)で式(I)のメタロセン錯体に添加し、そのようにして得られた溶液を数分間、好ましくは10~120分間、より好ましくは20~100分間、さらにより好ましくは40~80分間撹拌する。撹拌は、室温で、例えば15℃~25℃、好ましくは18℃~22℃の温度で行う。
【0075】
任意の工程c)
(工程bで調製した)適切な炭化水素溶媒中、好ましくはトルエン中のメタロセン/アルミノキサン共触媒の溶液に、任意に、シングルサイト触媒系に存在する場合は、ホウ素含有共触媒、例えばボレート共触媒を加えて、適切な炭化水素溶媒中、好ましくはトルエン中の式(I)のメタロセン錯体、ホウ素含有共触媒及びアルミノキサン共触媒の溶液を得る。
ホウ素含有共触媒は、0.1:1~10:1の範囲の供給量のホウ素/Mモル比に達する量で添加される。好ましくは、供給量のホウ素/Mのモル比は、0.3:1~7:1、より好ましくは0.3:1~5.0:1、最も好ましくは0.3:1~3:1の範囲である。MはHf又はZrであり、好ましくはZrである。
このようにして得られた溶液を、さらに数分間、好ましくは10分~120分、より好ましくは20分~100分、さらにより好ましくは40分~80分撹拌する。撹拌は、15℃~25℃、好ましくは18℃~22℃の温度で行われる。
【0076】
任意の工程d)
次に、工程c)で得られた溶液を、工程a)で得られたアルミノキサン共触媒処理した担体に添加し、担持触媒系を得る。
【0077】
工程c)及びd)は、アルミノキサン共触媒に加えてホウ素含有共触媒を含む共触媒系を含むシングルサイト触媒系に適用される。アルミノキサン共触媒のみを含む共触媒系を含むシングルサイト触媒系については、工程c)及びd)は省略される。
【0078】
工程e)
最後の工程では、このようにして得られた担持触媒系を、任意に、トルエン又はヘプタン等の適切な炭化水素溶媒で洗浄し、次いで、好ましくは真空中で乾燥させて、自由流動性の粉末を得る。
【0079】
シリカ担体、アルミノキサン、好ましくはMAO、任意のホウ素含有共触媒及びメタロセンの量は、所望の上記規定された比(Al/M、Al/SiO2、M/SiO2、任意のホウ素/M;MはHf又はZr、好ましくはZrである)に依存する。
【0080】
回収されたプロピレンコポリマー
本発明のプロセスの工程b)の重合工程から回収されるプロピレンコポリマーを、本明細書では「回収されたプロピレンコポリマー」又は単に「プロピレンコポリマー」と表記する。
【0081】
プロピレンコポリマーは、上述のプロピレンコポリマーであることが好ましい。
【0082】
好ましくは、上記プロピレンコポリマーは、そのプロピレンポリマーの総重量量に基づいて、3.5重量%未満、より好ましくは0.2~3.0重量%、さらにより好ましくは0.3~2.5重量%の量の、ISO 16152(25℃)に従って測定される冷キシレン可溶(XCS)画分を有する。
【0083】
さらに、上記プロピレンコポリマーは、好ましくは、1.0~10.0g/10分、より好ましくは1.2~8.0g/10分、さらにより好ましくは1.4~7.5g/10分、最も好ましくは1.5~7.0g/10分のメルトフローレートMFR2(230℃、2.16kg)を有する。
【0084】
本発明のプロピレンコポリマーの空隙率及び比細孔容積は、DIN 66133に準拠した水銀ポロシメトリーとDIN 66137-2に準拠したヘリウム密度測定との組み合わせによって測定される。空隙率は、以下の式(II)によって算出される。
【数1】
【0085】
本発明プロピレンコポリマーの空隙率は、10.0%未満であり、好ましくは0.2~9.0%の範囲、より好ましくは0.4~8.0%の範囲である。本発明のプロピレンコポリマーの比細孔容積は、一般に0.12cm3/g未満、好ましくは0.10cm3/g未満、より好ましくは0.08cm3/g未満である。いくつかの実施形態では、特定の細孔容積は検出できない。
【0086】
本発明によれば、上記プロピレンコポリマーのメジアン粒子サイズ(粒径)d50及びトップカット粒子サイズd95は、ISO 3310に従ったふるい分析によって測定され、ISO 9276-2に従って評価される。メジアン粒子サイズd50は、150~1000μm、好ましくは200~800μm、さらにより好ましくは250~600μm、最も好ましくは275~500μmの範囲にある。トップカット粒子サイズd95は、500~2500μm、好ましくは550~2000μm、さらにより好ましくは600~1500μm、最も好ましくは650~900μmの範囲にある。
【0087】
上記プロピレンコポリマーは、分子量分布及び/又はコモノマー含有量分布の観点から、ユニモーダル(単峰性)又はマルチモーダルであることができる。
【0088】
上記プロピレンコポリマーが、分子量分布及び/又はコモノマー含有量に関してユニモーダルである場合、そのプロピレンコポリマーは、例えば、それぞれスラリー反応器又は気相反応器におけるスラリープロセス又は気相プロセスとして、一段階のプロセスで調製されてもよい。
【0089】
好ましくは、ユニモーダルのプロピレンコポリマーはスラリー反応器で調製される。あるいは、ユニモーダルのプロピレンコポリマーは、類似のポリマー特性をもたらすプロセス条件を各段階で使用する多段階プロセスで製造されてもよい。
【0090】
本明細書で使用される表現「マルチモーダル」又は「バイモーダル」は、ポリマーの様相(モーダル性)、すなわち
ポリマーの分子量の関数としての分子量分率のグラフ表示である、ポリマーの分子量分布曲線の形
又は
ポリマー画分の分子量の関数としてのコモノマー含有量のグラフ表示である、コポリマーのコモノマー含有量分布曲線の形
を指す。
【0091】
上で説明したように、上記プロピレンコポリマーのポリマー画分は、直列構成であり異なる反応条件で動作する複数の反応器を用いて、逐次工程プロセスで製造することができる。その結果、特定の反応器で調製された各画分は、製造されるプロピレンコポリマーの種類に応じて、独自の分子量分布及び/又はコモノマー含有量分布を有することができる。これらの画分からの分布曲線(分子量又はコモノマー含有量)を重ね合わせて、最終的なポリマーの分子量分布曲線又はコモノマー含有量分布曲線を得ると、これらの曲線は、2つ以上の極大値を示すか、又は個々の画分の曲線と比較して少なくともはっきりと幅が広がることがある。このように2つ以上の連続的な工程を経て製造されるコポリマーは、工程数に応じてバイモーダル又はマルチモーダルと呼ばれる。従って、上記プロピレンコポリマーは、製造されるプロピレンポリマーの種類に応じて、分子量及び/又はコモノマー含有量の観点から、マルチモーダル、例えばバイモーダルであってもよい。
【0092】
上記プロピレンコポリマーが、コモノマー含有量から見て、マルチモーダル性、例えばバイモーダル性である場合には、個々の画分が材料の特性に影響を与える量で存在することが理解される。従って、これらの各画分は、プロピレンコポリマーに基づいて少なくとも10重量%の量で存在することが理解される。従って、特にコモノマー含有量の観点からバイモーダル系の場合、2つの画分の割合は、好ましくは40:60~60:40、例えば約50:50である。
【0093】
1つの特定の実施形態によれば、上記プロピレンコポリマーは、コモノマー含有量の観点からマルチモーダル性であり、すなわち、コモノマー含有量が異なる2つ以上の画分からを含む。好ましくは、上記プロピレンコポリマーは、第1の反応器で製造された比較的低いコモノマー含有量を有する1つの画分と、第2の反応器で製造された比較的高いコモノマー含有量を有する1つの画分と、任意に第3の反応器で製造された第3の画分とを含む。好ましくは、第1の反応器で製造された比較的低いコモノマー含有量を有する画分と、第2の反応器で製造された比較的高いコモノマー含有量を有する1つの画分、及び、存在する場合、任意に第3の反応器で製造された第3の画分を合わせたものとの重量比は、好ましくは30:70~60:40の範囲であり、より好ましくは33:67~50:50の範囲であり、最も好ましくは35:65~45:55の範囲である。
【0094】
本発明のプロセスの工程c)において、プロピレンコポリマーに長鎖分岐を導入するために、プロピレンコポリマーは、過酸化物の存在下で押出し工程の間に改質される。
【0095】
押出し工程での長鎖分岐の導入
長鎖分岐は、プロピレンコポリマーの反応性改質(修飾)によってプロピレンに導入される。この反応性改質プロセスも本発明の一部である。長鎖分岐プロピレンコポリマーを製造するための反応性改質は、プロピレンコポリマーと熱分解性フリーラジカル形成剤との反応によって行われることが好ましい。
【0096】
反応性改質には、
a)少なくとも1種の二官能性不飽和モノマー及び/若しくはポリマー、又は
b)少なくとも1種の多官能性不飽和モノマー及び/若しくはポリマー、又は
c)(a)及び(b)の混合物
から選ばれる官能性不飽和化合物が存在しないことがとりわけ好ましい。上で用いられた「二官能性不飽和」又は「多官能性不飽和」は、それぞれ2つ又はより多くの非芳香族二重結合が存在することを意味する。例は、例えば、ジビニルベンゼン、シクロペンタジエン又はポリブタジエンである。
【0097】
長鎖分岐プロピレンコポリマーを製造するための反応性改質工程は、好ましくは、本発明のプロセスの工程b)で回収されたプロピレンコポリマーを溶融混合装置に導入する工程と、過酸化物等の熱分解性フリーラジカル形成剤を上記溶融混合装置にさらに導入する工程と、上記溶融混合装置内で上記プロピレンコポリマー及び熱分解性フリーラジカル形成剤を160~280℃の範囲、より好ましくは170~270℃の範囲、最も好ましくは180~235℃の範囲のバレル温度で溶融混合する工程とを含む。
【0098】
好適には、上記溶融混合装置は、例えば、単軸押出機、同方向回転(共回転)二軸押出機又は同方向回転ニーダーのような連続溶融混合装置である。好ましくは、上記溶融混合装置は、供給ゾーン、混練ゾーン及びダイゾーンを含む。より好ましくは、溶融混合装置のスクリューに沿って特定の温度プロファイルが維持され、供給ゾーンの初期温度T1、混練ゾーンの中間温度T2、及びダイゾーンの最終温度T3を有し、すべての温度はバレル温度として規定される。バレル温度T1(供給ゾーン内)は、好ましくは160~220℃の範囲にある。バレル温度T2(混練ゾーン内)は、好ましくは180~260℃の範囲にある。バレル温度T3(ダイゾーン内)は、好ましくは210~270℃の範囲にある。溶融混合装置のスクリュー回転数(スクリュー速度)は、材料の特性に応じて調整することができる。当業者はこのことをよく知っており、適切なスクリュー回転数を容易に決定することができる。一般に、スクリュー回転数は、毎分100~750回転(rpm)の範囲、好ましくは毎分150~650回転(rpm)の範囲に調整することができる。溶融混合工程に続いて、得られた長鎖分岐プロピレンコポリマーの溶融物を、例えば水中ペレタイザーで、又は水浴中で1本以上のストランドを固化させた後、ストランドペレタイザーで、ペレット化することができる。
【0099】
上記プロピレンコポリマー及び熱分解性フリーラジカル形成剤が、溶融混合装置に導入される前の予備混合工程で、より低い温度で予備混合されないことがとりわけ好ましい。さらに、上述した官能性不飽和化合物が溶融混合装置に添加されないことがとりわけ好ましい。
【0100】
長鎖分岐プロピレンコポリマーを製造するための反応性改質において、プロピレンコポリマーは、好適には、プロピレンコポリマー100重量部に対して0.40重量%~4.00重量%重量部(ppw)の過酸化物と混合され、好ましくはプロピレンコポリマー100重量部に対して0.50~3.50重量部(ppw)の過酸化物と、より好ましくはプロピレンコポリマー100重量部に対して0.60~3.00重量部(ppw)の過酸化物の存在下で、最も好ましくはプロピレンコポリマー100重量部に対して0.70~2.00重量部(ppw)の過酸化物の存在下で混合される。
【0101】
上記熱分解性フリーラジカル形成剤は、通常、過酸化物である。
【0102】
当該プロセスでは、過酸化物は、上記規定された160~280℃のバレル温度において、6分以下の半減期(t1/2)を有するように選択されることが好ましい。これに関して、半減期は、所定の温度で、組成物の元の過酸化物含有量を50%減少させるのに必要な時間であり、上記過酸化物の反応性を示す。
【0103】
好ましい過酸化物は、ジアルキルペルオキシド、例えばジアルキルペルオキシジカーボネートの群から選択される。ジアルキルペルオキシジカーボネートの適切な例は、ジ-(C2~20)-アルキルペルオキシジカーボネート、好ましくはジ-(C4~16)-アルキルペルオキシジカーボネート、より好ましくはジ-(C8~14)-アルキルペルオキシジカーボネートである。とりわけ好ましいのは、ジ(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジセチルペルオキシジカーボネート、及びジミリスチルペルオキシジカーボネートである。とりわけ好ましいのは、ジセチルペルオキシジカーボネートである。
【0104】
押出し及び改質工程c)の間に、上述した添加剤及び/又はポリマー化合物等の他の成分を溶融混合装置に加えることもできる。これらの任意の成分は、例えばサイドフィーダーを介して溶融混合装置に導入することができる。
【0105】
上述又は後述の押出し及び改質工程c)から、当該プロピレンポリマー組成物が回収される。
【0106】
回収されたプロピレンポリマー組成物
本発明に係るプロセスの工程d)の回収されたプロピレンポリマー組成物は、好ましくは、工程b)の回収されたプロピレンポリマーと比較して、より低いメルトフローレートMFR2(230℃、2.16kg)を有する。
これは、欧州特許出願公開第3 018 153A1号明細書及び欧州特許出願公開第3 018 154A1号明細書に記載されている高溶融強度(HMS)の反応器後の改質プロセスにおいて、反応器ベースのプロピレンポリマーと比較して、得られるプロピレンポリマー組成物のメルトフローレートMFR2(230℃、2.16kg)の増加が観察されていることから、驚くべきことである。この驚くべき知見により、工程b)の回収されたプロピレンコポリマーのMFRの範囲が広くなり、その結果、より高いMFRを有するプロピレンコポリマーを使用することができるため、より穏やかな溶融混合条件が可能となる。
【0107】
回収されたプロピレンポリマー組成物が、工程c)で長鎖分岐したプロピレンポリマーを少なくとも95.0重量%、より好ましくは少なくとも99.0重量%、最も好ましくは少なくとも99.005重量%含んでいることが好ましい。
【0108】
好ましくは、本発明に係るプロセスの工程d)の回収されたプロピレンポリマー組成物は、これまでに又は以下に記載されているようなすべての特性を有する本発明に係るプロピレンポリマー組成物を指す。
【0109】
物品
本発明はさらに、上で又は以降に規定されるプロピレンポリマー組成物を含む物品に関する。
【0110】
当該物品は、とりわけ軽量用途、自動車用途、及び食品包装用途等の包装用途におけるフィルム、発泡体、及び成形品から選択されるのが好ましい。
【0111】
好ましくは、本発明の物品は、本発明に係るプロピレンポリマー組成物を、少なくとも70.0重量%、より好ましくは少なくとも80.0重量%、最も好ましくは少なくとも90.0重量%、なお最も好ましくは少なくとも95.0重量%含む。上記の与えられた重量パーセント(重量%)は、物品に含まれる熱可塑性材料の合計に基づいて計算される。好ましい実施形態では、当該物品は、本発明に係るプロピレンポリマー組成物からなる。
【0112】
本発明に係るプロピレンポリマー組成物を含むフィルム、発泡体及び成形品の調製のためのプロセスは、当該技術分野で一般に公知である。
【0113】
使用
本発明はさらに、物品の製造のための、上で又は以降に規定されるプロピレンポリマー組成物の使用に関する。
上記物品は、上で又は以降に記載のとおり、とりわけ軽量用途、自動車用途、及び食品包装用途等の包装用途におけるフィルム、発泡体、及び成形品から選択されるのが好ましい。
【0114】
最後に、本発明は、プロピレンポリマー組成物の溶融強度を高めるための、上で又は以降に規定される方法の使用に関する。
好ましくは、上記プロピレンポリマー組成物は、上で又は以降に記載されるようなすべての特性を有する本発明に係るプロピレンポリマー組成物を指す。
【実施例】
【0115】
1.決定方法
a)メルトフローレート
メルトフローレート(MFR)はISO 1133に従って決定し、g/10分単位で示す。MFRは、ポリマーの流動性、ひいては加工性の指標である。メルトフローレートが高いほど、ポリマーの粘度は低い。ポリプロピレンのMFR2は、230℃の温度、2.16kgの荷重の下で決定する。
【0116】
b)粒子サイズ/粒子サイズ分布
ポリマー試料に対して、ISO 3310に準拠したふるい分析を行った。このふるい分析では、以下のサイズの金網スクリーンを備えたふるいの入れ子式カラムを使用した:20μm超、32μm超、63μm超、100μm超、125μm超、160μm超、200μm超、250μm超、315μm超、400μm超、500μm超、710μm超、1mm超、1.4mm超、2mm超、2.8mm超。試料は、ふるいの目開きが最も大きい一番上のふるいに流し込んだ。カラムの中の下方の各ふるいは、上のふるいよりも小さい目開きを有する(上に示したサイズを参照)。底部には受け皿がある。このカラムをメカニカルシェーカーに置いた。シェイカーはカラムを振盪した。振盪が完了した後、各ふるい上の材料の重量を測定した。その後、各ふるいの試料の重量を総重量で割り、各ふるいに保持された割合を算出した。ISO 9276-2に従って、ふるい分析の結果から、粒子サイズ分布並びに特徴的なメジアン粒子サイズd50及びトップカット粒子サイズd95を決定した。
【0117】
c)XHU画分.ゲル含有量
熱キシレン不溶(XHU)画分は、EN 579に従って決定する。約2.0gのポリマー(mp)を秤量し、秤量した金属製のメッシュに入れる。その総重量を(mp+m)で表す。メッシュの中のポリマーを、ソックスレー装置で沸騰したキシレンで5時間抽出する。その後、溶離液を新鮮なキシレンで置き換え、さらに1時間煮沸を続ける。その後、メッシュを乾燥させ、再び重量を測定する(mXHU+m)。mXHU+m-mm=mXHUの式で得られた熱キシレン不溶部の質量(mXHU)をポリマーの重量(mp)と関連させて、キシレン不溶物の割合mXHU/mpを得る。
【0118】
d)F30溶融強度及びv30溶融伸展性
本明細書に記載する試験は、ISO 16790:2005に従う。ひずみ硬化挙動は、論文「Rheotens-Mastercurves and Drawability of Polymer Melts」、M.H.Wagner、Polymer Engineering and Sience、第36巻、第925~935ページに記載されている方法により決定する。ポリマーのひずみ硬化挙動は、Rheotens(レオテンス)装置(ジーメンス通り(Siemensstr.) 2、74711 ブーヒェン(Buchen)、ドイツのGoettfert(ゲットフェルト)の製品)により分析する。この装置では、規定の加速度で引き下げることにより、溶融物のストランドが伸長される。Rheotens実験は、工業用の紡糸及び押出成形プロセスをシミュレートする。原理的には、溶融物を丸いダイを通して圧迫するか又は押し出して、得られたストランドを引き出す。押出物にかかる応力を、溶融物の特性及び測定パラメータ(とりわけ、出力と引き出し速度の比、実用的には伸長率の尺度)の関数として記録する。
【0119】
以下に示す結果については、材料は、実験用押出機HAAKE Polylabシステムと、円筒形ダイ(L/D=6.0/2.0mm)を備えたギアポンプを用いて押し出した。ギアポンプは、ストランドの押し出し速度が5mm/sになるようにあらかじめ調整し、溶融温度は200℃に設定した。ダイとRheotensホイールの間のスピンライン長は80mmであった。実験開始時には、Rheotensホイールの巻き取り速度を、押し出されたポリマーストランドの速度に調整した(引張力ゼロ)。その後、ポリマーフィラメントが破断するまでRheotensホイールの巻き取り速度をゆっくりと上げて実験を開始した。ホイールの加速度は、引張力が準定常状態で測定されるように十分小さくした。引き下げられたメルトストランドの加速度は120mm/秒2である。このRheotensは、PCプログラム「EXTENS」と組み合わせて操作した。これは、リアルタイムのデータ取得プログラムであり、引張力と引き下げ(ドローダウン)速度の測定データを表示及び保存する。Rheotens曲線(力対プーリー回転速度)の終点を、F30溶融強度及び延伸性(drawability)の値とする。
【0120】
e)冷キシレン可溶画分(XCS、重量%)
キシレンに可溶なポリマーの量は、ISO 16152;第5版;2005-07-01に従って25.0℃で決定する。
【0121】
f)融解温度
融解温度Tmは、TA-Instruments(ティーエー・インスツルメンツ)のRSC冷却装置及びデータステーション付きの2920 Dual-Cellを用いて、ISO 11357-3に準拠した示差走査熱量測定(DSC)によって決定する。10℃/分の加熱及び冷却の速度で、+23~+210℃の間で加熱/冷却/加熱サイクルを行う。結晶化温度(Tc)は冷却工程で決定し、融解温度(Tm)及び融解エンタルピー(Hm)は2回目の加熱工程で決定する。
【0122】
g)空隙率及び比細孔容積
ポリマーの空隙率及び比細孔容積は、DIN 66133に準拠した水銀ポロシメトリーとDIN 66137-2に準拠したヘリウム密度測定との組み合わせによって測定する。まず試料を、加熱キャビネット内で70℃で3時間乾燥させ、その後、測定まで乾燥器内に保管した。試料の純粋な密度は、Quantachrome(カンタクローム)製Ultrapyknometer(ウルトラピクノメータ)1000-Tの中で、25℃でヘリウムを用いて粉砕した粉末に対して決定した(DIN 66137-2)。水銀ポロシメトリーは、DIN 66133に準拠して、非粉砕粉末に対してQuantachrome Poremaster 60-GTで行った。
【0123】
空隙率は、次のような式(II)によって計算する。
【数2】
【0124】
h)13C-NMR分光法によるコポリマーの微細構造の定量
定量的核磁気共鳴(NMR)分光法を使用して、ポリマーのコモノマー含有量を定量した。
【0125】
定量的13C{1H} NMRスペクトルは、1H及び13Cについてそれぞれ500.13MHz及び125.76MHzで動作するBruker Avance III 500 NMR分光計を使用して溶融状態で記録した。すべてのスペクトルを、180℃の13Cに最適化した7mmマジック角回転(MAS)プローブヘッドを使用し、すべての空圧について窒素ガスを使用して記録した。およそ200mgの物質を外径7mmのジルコニアMASローターに充填し、4kHzで回転させた。迅速な同定及び正確な定量に必要な高感度を主な理由としてこの設定を選んだ(Klimke,K.、Parkinson,M.、Piel,C.、Kaminsky,W.、Spiess,H.W.、Wilhelm,M.、Macromol.Chem.Phys.2006;207:382.;Parkinson,M.、Klimke,K.、Spiess,H.W.、Wilhelm,M.、Macromol.Chem.Phys.2007;208:2128.;Castignolles,P.、Graf,R.、Parkinson,M.、Wilhelm,M.、Gaborieau,M.、Polymer 50(2009)2373)。3sの短い繰り返し時間(recycle delay)でのNOE(Pollard,M.、Klimke,K.、Graf,R.、Spiess,H.W.、Wilhelm,M.、Sperber,O.、Piel,C.、Kaminsky,W.、Macromolecules 2004;37:813.;Klimke,K.、Parkinson,M.、Piel,C.、Kaminsky,W.、Spiess,H.W.、Wilhelm,M.、Macromol.Chem.Phys.2006;207:382)及びRS-HEPTデカップリングスキーム(Filip,X.、Tripon,C.、Filip,C.、J.Mag.Resn.2005、176、239.;Griffin,J.M.、Tripon,C.、Samoson,A.、Filip,C.、及びBrown,S.P.、Mag.Res.in Chem.2007 45、S1、S198)を利用する標準的なシングルパルス励起を採用した。1スペクトルあたり全部で16384(16k)の過渡信号を取得した。
定量的13C{1H}NMRスペクトルを処理し、積分し、関連の定量的特性を積分値から求めた。すべての化学シフトは、21.85ppmのメチルアイソタクチックペンタッド(mmmm)を内部基準としている。
【0126】
1-ヘキセンの組み込みに対応する特徴的なシグナルを観察し、コモノマー含有量を以下のようにして定量した。
PPHPPの孤立した配列で組み込まれた1-ヘキセンの量は、44.2ppmのαH2部位の積分値を使用し、コモノマーあたりの報告部位の数を考慮して定量した。
H=Iα/2
他のコモノマー配列、すなわち連続的なコモノマー組み込みを示す他のシグナルは観察されなかったため、総1-ヘキセンコモノマー含有量を、孤立した1-ヘキセン配列の量だけに基づいて算出した。
Htotal=H
プロペンの量は、46.7ppmの主要なSααメチレン部位に基づき、かつ考慮されないプロペンのαB2メチレン単位及びααB2B2メチレン単位の相対量を補正して定量した(なお、1配列あたりのブタンモノマーのB及びBBカウント数は配列の数ではない)。
Ptotal=ISαα+H
位置欠陥に対応する特徴的なシグナル(Resconi,L.、Cavallo,L.、Fait,A.、Piemontesi,F.、Chem.Rev.2000、100、1253)が観察された場合、誤挿入したプロピレン単位についての補正をPtotalに対して使用した。
2,1-エリスロ誤挿入が存在する場合、42.5ppmの化学シフトを有するこの微細構造要素の9番目の炭素(S21e9)からのシグナル(Resconi,L.、Cavallo,L.、Fait,A.、Piemontesi,F.、Chem.Rev.2000、100、1253)を補正のために選んだ。この場合、
Ptotal=ISαα+H+3×I(S21e9)
次いで、ポリマー中の1-ヘキセンの総モル分率を以下のように算出した。
fH=(Htotal/(Htotal+Ptotal)
モルパーセント単位での1-ヘキセンの総コモノマー組み込みは、上記モル分率から通常のようにして算出した。
H[mol%]=100×fH
重量パーセント単位での1-ヘキセンの総コモノマー組み込みは、上記モル分率から標準的なやり方で算出した。
H[重量%]=100×(fH×84.17)/((fH×84.17)+((1-fH)×42.08))
【0127】
プロピレンポリマーの調製
a)シングルサイト触媒系1の調製
触媒錯体
発明例IE1及びIE2並びに比較例CE1に用いたプロピレンコポリマーPP-1の重合プロセスで使用した触媒錯体は、
【化4】
であった。
【0128】
メタロセン(MC1)(rac-anti-ジメチルシランジイル(2-メチル-4-フェニル-5-メトキシ-6-tert-ブチル-インデニル)(2-メチル-4-(4-tert-ブチルフェニル)インデニル)ジルコニウムジクロリド)は、国際公開第2013/007650号パンフレット、E2に記載されているように合成した。
触媒系は、メタロセンMC1とMAOの共触媒系とを用いて調製した。この触媒をシリカに担持した。
【0129】
MAO-シリカ担体の調製
メカニカルスターラーとフィルターネットを備えたスチール製反応器に窒素を流し、反応器の温度を20℃に設定した。次に、600℃で予備焼成したAGC Si-Tech CoのシリカグレードDM-L-303(7.4kg)を供給ドラムから加え、続いて手動バルブを用いて窒素で慎重に加圧及び減圧した。その後、トルエン(32.2kg)を加えた。この混合物を15分間撹拌した(40rpm)。次に、Lanxess(ランクセス)製のMAOの30重量%トルエン溶液(17.5kg)を、反応器上部の12mmラインから70分以内に添加した。その後、反応混合物を90℃まで加熱し、90℃でさらに2時間撹拌した。スラリーを沈降させ、母液を濾別した。MAO処理したシリカ担体を90℃のトルエン(32.2kg)で2回洗浄し、その後、沈降させて濾過した。反応器を60℃まで冷却し、固体をヘプタン(32.2kg)で洗浄した。最後にMAO処理したSiO2を、5rpmで撹拌しながら、60℃で2時間、窒素流量2kg/h、圧力0.3bargで乾燥し、その後、真空(-0.5barg)で5時間乾燥した。MAO処理した担体は、流動性のある白色の粉末として回収し、これは12.7重量%のAlを含むことが判明した。
【0130】
シングルサイト触媒系1の調製
窒素を充填したグローブボックス内で、乾燥トルエン(1mL)中のMAO 0.25mL(トルエン中30重量%、AXION 1330 CA、Lanxess)の溶液を、メタロセンMC1(30.0mg、38μmol)のアリコートに加えた。この混合物を室温で60分間撹拌した。次に、この溶液を、ガラスフラスコに入れた上述のように調製したMAO処理シリカ1.0gにゆっくりと加えた。この混合物を一晩放置し、5mLのトルエンで洗浄した後、1時間の真空乾燥を行い、ピンク色の自由流動性のある粉末を得て、ピンク色の自由流動性のある粉末として1.1gの触媒を得た。
この触媒系1は、Alの含有量が12.5重量%、Zrの含有量が0.248重量%、Al/Zrのモル比が170mol/molである。
【0131】
b)Ziegler-Natta触媒系2の調製
比較例CE2に用いたプロピレンコポリマーPP-1の重合プロセスで使用したZiegler-Natta(ツィーグラー・ナッタ)触媒系を以下のように調製した。
3.4Lの2-エチルヘキサノールと810mLのプロピレングリコールブチルモノエーテル(モル比4/1)を20.0Lの反応器に加えた。次に、Crompton GmbH(クロンプトン)が提供するBEM(ブチルエチルマグネシウム)の20.0%トルエン溶液7.8Lを、よく撹拌したアルコール混合物にゆっくりと加えた。添加の間、温度を10.0℃に保った。添加後、反応混合物の温度を60.0℃に上昇させ、この温度で30分間混合を続けた。最後に室温まで冷却した後、得られたMg-アルコキシドを貯蔵容器に移した。
【0132】
上記で調製したMgアルコキシド21.2gをビス(2-エチルヘキシル)シトラコネート4.0mLと5分間混合した。混合後、得られたMg錯体は直ちに触媒成分の調製に使用した。
【0133】
メカニカルスターラーを備えた300mLの反応器に、四塩化チタン19.5mLを25.0℃で入れた。混合速度は170rpmに調整した。上記で調製したMg錯体26.0gを、温度を25.0℃に保ったまま30分以内に添加した。3.0mLのViscoplex(登録商標)1-254と、2mgのNecadd 447(商標)を添加した1.0mLのトルエン溶液とを加えた。その後、24.0mLのヘプタンを加えてエマルションを形成した。混合を25.0℃で30分間続け、その後、30分以内に反応器の温度を90.0℃まで上げた。この反応混合物を90.0℃でさらに30分間撹拌した。その後、撹拌を停止し、反応混合物を90.0℃で15分間沈降させた。この固体材料を5回洗浄した。洗浄は、170rpmで30分間撹拌しながら80.0℃で行った。撹拌を停止した後、反応混合物を20~30分静置し、続いてサイフォンで吸引した。
【0134】
洗浄1:洗浄は、100mLのトルエン及び1mLのドナーの混合物で行った
洗浄2:洗浄は、30mLのTiCl4及び1mLのドナーの混合物で行った
洗浄3:洗浄は、100mLのトルエンで行った
洗浄4:洗浄は、60mLのヘプタンで行った
洗浄5:洗浄は、10分間の撹拌下で、60mLのヘプタンで行った
【0135】
その後、撹拌を停止し、温度を70℃に下げながら、反応混合物を10分間静置し、続いてサイフォンで吸引し、続いてN2注入(スパージ、sparging)を20分間行い、空気に敏感な粉末を得た。
【0136】
c)プロピレンポリマーPP-1の重合
プロピレンポリマーPP-1は、予備重合反応器、1つのスラリーループ反応器及び1つの気相反応器を備えたBorstar(登録商標)プラントにおいて、シングルサイト触媒系1の存在下で製造した。異なる重合条件での供給物及び重合条件を表1に示す。
【0137】
【0138】
d)プロピレンホモポリマーPP-2の重合
プロピレンポリマーPP-2は、予備重合反応器、1つのスラリーループ反応器及び1つの気相反応器を備えたパイロットプラントで製造した。上述のZiegler-Natta触媒系2を、共触媒としてトリエチルアルミニウム(TEAL)、及び外部ドナーとしてジシクロペンチルジメトキシシラン(D-ドナー)とともに使用した。共触媒とドナーの比、共触媒とチタンの比、及び重合条件を表2に示す。
【0139】
【0140】
e)PP-1及びPP-2のポリマー粉末の特性
PP-1及びPP-2の反応器で作られたポリマー粉末とポリマーとは、下記表3に開示されているような、以下の特性を有する。
【0141】
【0142】
3.反応性改質
発明例IE1及びIE2並びに比較例CE2のプロピレンポリマー組成物の調製のために、プロピレンポリマーPP-1及びPP-2を、過酸化物としてPerkadox 24L(ジセチルペルオキシジカーボネート、AkzoNobel Polymer Chemistry(アクゾノーベル・ポリマーケミストリー)から市販されている)を用いた反応性改質に供した。例えば欧州特許出願公開第3 018 153A1号明細書及び欧州特許出願公開第3 018 154A1号明細書に開示されているような二官能剤は、上記プロピレンポリマーに予め混合しなかった。代わりに、プロピレンポリマー及び過酸化物を、酸化防止剤Irganox B 215(BASF SE(ビーエーエスエフ)から市販されている)、ステアリン酸カルシウム及び酸捕捉剤ADK STAB HT(Adeka Palmarole(アデカ・パルマロール)から市販されている)の添加剤パッケージと一緒に、2つの混練ゾーンと真空脱ガス機構とを有する高強度混合スクリューを備えた18mmのバレル直径と40のL/D比を有するCoperion ZSK18型の同方向回転二軸押出機で、溶融混合工程で混合した。溶融温度プロファイルは、供給ゾーンの初期温度T1=180℃、最後の混練ゾーンの中間温度T2=200℃、ダイゾーンの最終温度T3=230℃とし、すべての温度をバレル温度として定義した。スクリューの回転数は400rpmに設定した。
【0143】
比較例CE1のプロピレンポリマー組成物の調製のために、プロピレンポリマーPP-1を反応性改質なしに上記のように溶融混合した。
【0144】
溶融混合工程の後、得られたポリマー溶融物を、ストランドペレタイザーの水浴中で水温40℃でストランドを固化させた後、ペレット化した。反応条件と得られたプロピレンポリマー組成物の特性を表4にまとめた。
【0145】
【0146】
簡略化された反応性改質プロセスによって、長鎖分岐プロピレン/1-ヘキセンコポリマーを含むプロピレンポリマー組成物を得ることができ、この組成物は、低い融解温度及び結晶化温度、並びに高い溶融強度に関して改善された特性のバランスを示すことがわかる。この反応性改質プロセスは、プロピレンポリマー組成物のメルトフローレートを低下させ、これは、より高いメルトフローレートを有するプロピレンベースポリマーの使用を可能にするので、成形用途にとりわけ有益である。