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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】スイッチ
(51)【国際特許分類】
   H01H 23/26 20060101AFI20220905BHJP
   H01H 23/02 20060101ALI20220905BHJP
   H05B 47/00 20200101ALI20220905BHJP
【FI】
H01H23/26
H01H23/02 L
H05B47/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018132669
(22)【出願日】2018-07-12
(65)【公開番号】P2020009727
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】591186671
【氏名又は名称】株式会社エルコ
(73)【特許権者】
【識別番号】518250081
【氏名又は名称】株式会社エヴァース
(73)【特許権者】
【識別番号】307012436
【氏名又は名称】佐々木 満
(73)【特許権者】
【識別番号】503041063
【氏名又は名称】沖本 成正
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 洋
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 満
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-106933(JP,U)
【文献】特許第6356321(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 23/26
H01H 23/02
H05B 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸より左右に倒れるシーソー型のスイッチノブと、
上記スイッチノブの収納筐体内に設けられた上記中心軸の左右への動きに応じて傾動する可動接点と、
この可動接点の傾動時に接触する固定接点と、
上記スイッチノブの一方の遊端の下面側と当接するように上記収納筐体の内部に配置され、上記スイッチノブを操作前の位置まで復帰させる押圧部材とを有し、
上記押圧部材は、上記収納筐体の固定筒体内に収容された押圧ピンと押圧バネとで構成され、
上記スイッチノブには上記押圧ピンの進退を規制する治具挿入用の透孔が、上記押圧ピンと対峙する位置に設けられた
ことを特徴とするスイッチ。
【請求項2】
上記押圧バネに抗して操作された上記スイッチノブを、上記押圧バネの偏倚力で操作前の位置に復帰させることによって、モーメンタリースイッチ機能を付与した
ことを特徴とする請求項1記載のスイッチ。
【請求項3】
上記固定筒体には切り欠き付きのスリットが設けられ、この切り欠きによって上記押圧部材の進退位置をロックするようにした
ことを特徴とする請求項1記載のスイッチ。
【請求項4】
上記押圧部材の進退位置をロックして上記スイッチノブへの押圧を解除することで、ロッカースイッチ機能を付与した
ことを特徴とする請求項3記載のスイッチ。
【請求項5】
上記収納筐体の上面に取り付けられるノブ取付筐体を有し、
上記スイッチノブの中心軸の先端部が上記可動接点に当接するように上記スイッチノブが上記ノブ取付筐体に傾動自在に取り付けられる
ことを特徴とする請求項1記載のスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スイッチノブの操作に関係なく常に特定の切り替え状態となる、防災灯な どに適用して好適なスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
室内に設置された照明器具などの電源スイッチとしては、ロッカースイッチやオルタネートスイッチが知られている。
【0003】
ロッカースイッチは、シーソースイッチとも呼ばれ、スイッチノブを片方に倒すと、電源がオンかオフとなり、反対方向に倒すと、逆の切り替え状態(オフかオン)となるスイッチであり、オルタネートスイッチはスイッチノブを押したときは特定の切り替え状態(スイッチオンかオフ状態)となり、スイッチノブから指を離してもその切り替え状態を保持し、別の切り替え状態(スイッチオフかオン状態)するには、再度スイッチノブを操作するようなスイッチである。この他に、モーメンタリースイッチがある。これはボタンを押している間だけ、その切り替え状態を保持し、指を離すと元の状態に戻るスイッチである。
【0004】
近年、防災の目的で照明器具を避難誘導用の非常灯としても活用する機運が高まって来ている。地震などの災害が発生すると、停電が起き易い。停電が発生したとき、特に夜間に発生した場合にも照明器具を非常灯として使用できるようにするためには、この照明器具用の電源スイッチとしては特別なスイッチが使用されている。
【0005】
それは、停電を検知して部屋に据付られた照明器具を内蔵のバッテリーで点灯させるため、電源スイッチを停電検知素子としても使用できるようにすることが必要である。それには例えば発光素子を内蔵した電源スイッチ(いわゆる蛍スイッチ)を使用することが考えられている(例えば特許文献1)。発光素子を流れる微弱電流を監視し、微弱電流の途絶状態を停電として検知する技術である。
【0006】
蛍スイッチがオフ状態であっても、つまり照明器具が消灯していても、発光素子を流れる微弱電流を検知することで、夜間停電時にこの照明器具を非常灯として使用することができる。蛍スイッチとしては、ロッカースイッチやオルタネートスイッチなどが使用されている。
【0007】
スイッチとして複数のスイッチタイプを兼ね備えると共に、タイプの異なるスイッチを適宜選択して使用できるようにしたスイッチが特許文献2に開示されている。スイッチタイプとは、オルターネートタイプの他、モーメンタリータイプあるいはロッカータイプである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許5400990号
【文献】特開2013-258065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に係る技術は、蛍用発光素子を内蔵した電源スイッチを使用する照明器具のみに適用できるから、蛍用発光素子を持たないその他のスイッチ(ロッカースイッチやオルタネートスイッチ等)は、停電検知素子として兼用することはできない。ロッカースイッチなどの場合、オン状態で停電が発生したときのみ停電を検知できるが、電源をオフした状態では停電を検知できない。したがって、非常灯としては機能しない。
【0010】
特許文献2には、スイッチそのものを複数タイプのスイッチとして選択できるように工夫されている。それらを適宜選択することによって、そのスイッチをロッカースイッチとしても、モーメンタリースイッチとしても使用できるようになるが、特定の機能スイッチを、停電検知素子を兼ねたスイッチとしても使用できるスイッチとしての技術は開示されていない。
【0011】
そこで、この発明はこのような課題を解決したものであって、スイッチノブの操作に関係なく常に特定の切り替え状態となるようにした、防災灯などに適用して好適なスイッチ 提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載のこの発明に係るスイッチは、中心軸より左右に倒れるシーソー型のスイッチノブと、上記スイッチノブの収納筐体内に設けられた上記中心軸の左右への動きに応じて傾動する可動接点と、この可動接点の傾動時に接触する固定接点と、上記スイッチノブの一方の遊端の下面側と当接するように上記収納筐体の内部に配置され、上記スイッチノブを操作前の位置まで復帰させる押圧部材とを有し、上記押圧部材は、上記収納筐体の固定筒体内に収容された押圧ピンと押圧バネとで構成され、上記スイッチノブには上記押圧ピンの進退を規制する治具挿入用の透孔が、上記押圧ピンと対峙する位置に設けられたことを特徴とする。
【0013】
請求項2記載のこの発明に係るスイッチ、上記押圧バネに抗して操作された上記スイッチノブを、上記押圧バネの偏倚力で操作前の位置に復帰させることによって、モーメンタリースイッチ機能を付与したことを特徴とする。
【0014】
請求項3記載のこの発明に係るスイッチにあって、上記固定筒体には切り欠き付きのスリットが設けられ、この切り欠きによって上記押圧部材の進退位置をロックするようにしたことを特徴とする。
請求項4記載のこの発明に係るスイッチにあって、上記押圧部材の進退位置をロックして上記スイッチノブへの押圧を解除することで、ロッカースイッチ機能を付与したことを特徴とする。
請求項5記載のこの発明にかかるスイッチにあって、上記収納筐体の上面に取り付けられるノブ取付筐体を有し、上記スイッチノブの中心軸の先端部が上記可動接点に当接するように上記スイッチノブが上記ノブ取付筐体に傾動自在に取り付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載のこの発明に係るスイッチは、中心軸より左右に倒れるシーソー型のスイッチノブと、スイッチノブの収納筐体内に設けられた中心軸の左右への動きに応じて傾動する可動接点と、この可動接点の傾動時に接触する固定接点と、スイッチノブの一方の遊端の下面側と当接するように収納筐体の内部に配置され、スイッチノブを操作前の位置まで復帰させる押圧部材とを有し、押圧部材は収納筐体の固定筒体内に収容された押圧ピンと押圧バネとで構成され、スイッチノブには押圧ピンの進退を規制する治具挿入用の透孔が、上記押圧ピンと対峙する位置に設けられたことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、スイッチノブが繰り返し操作されても、スイッチノブは常に初期位置に戻るため、例えばこの初期位置の切り替え状態をオン状態として設定しておけば、モーメンタリースイッチのように再度のスイッチ操作をしないでもオン状態を保持できる。
スイッチノブにはスイッチの機能を切り替えるために使用する透孔が形成されているので、これを利用すればスイッチ機能を簡単に、しかも容易に切り替えることができる
孔は押圧ピンと対峙する位置に設けられているので、この構成によれば、治具を透孔に通すだけで押圧ピンを操作することができ、スイッチ機能の切り替え操作が簡単にできる。
請求項2の記載によれば、押圧バネに抗して操作されたスイッチノブを、押圧部材の偏倚力で操作前の位置に復帰させることによって、モーメンタリースイッチ機能を付与することができるから、スイッチノブへの偏倚力を加えることで、スイッチノブを常に初期位置に戻すことできるようになる。
請求項3記載のこの発明に係るスイッチにあって、固定筒体には切り欠き付きのスリットが設けられ、この切り欠きによって押圧ピンの進退位置をロックするようにしたことを特徴とする。
押圧ピンの進退位置をロックすることで、スイッチノブへの偏倚力を解除することができ、支点(中心軸)を中心としてスイッチノブの左右への動きが自由になる。
請求項4記載のこの発明に係るスイッチでは、押圧部材の進退位置をロックしてスイッチノブへの押圧を解除することで、スイッチノブのシーソー動作が復活するから、このスイッチはロッカースイッチとして機能する。
請求項5記載のこの発明にかかるスイッチにあって、収納筐体の上面に取り付けられるノブ取付筐体を有し、スイッチノブの中心軸の先端部が上記可動接点に当接するように上記スイッチノブが上記ノブ取付筐体に傾動自在に取り付けられることを特徴とする。
【0017】
ノブ取付筐体に取り付けられたスイッチノブの動きによって可動接点を固定接点に接触させることで、導通(スイッチオン状態)を図ることができる。
【0018】
上述したスイッチを防災灯として機能する照明器具の電源スイッチとして使用する場合 には、スイッチノブの操作に関係なく常に特定の切り替え状態(つまりオン状態)となるようなモーメンタリースイッチ機能を利用するが、この場合にはスイッチノブの操作を照 明器具に設けられた制御回路で監視し、電源をオンする操作か、オフする操作かの判別処 理が行われる。
こうすれば、スイッチノブが特定の切り替え状態に設定されていても電源をオンオフさせることができるモーメンタリースイッチ機能を有した照明器具を実現でき、停電時には停電検知信号によって照明器具を非常灯として機能させることができる。蛍スイッチに代わる停電検知素子として機能する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】この発明に係るスイッチの一例を示す斜視図である。
図2図1の分解斜視図である。
図3】スイッチノブと押圧部材との関係を要部斜視図である(その1)。
図4】スイッチノブと押圧部材との関係を要部斜視図である(その2)。
図5】スイッチノブと押圧部材との関係を要部斜視図である(その3)。
図6】モーメンタリースイッチとして使用する場合のスイッチノブ操作前の状態の断面図である。
図7】スイッチノブを操作したときの切り替え状態を示す図6と同様な断面図である。
図8】押圧部材をロックしてロッカースイッチとして使用する場合のスイッチノブの状態を示す断面図である。
図9スイッチの適用例としての照明器具の一例を示す要部の系統図である。
図10】照明器具の使用状態の動作例を示すタイミングチャート図である。
図11】電源スイッチのオンオフ操作と停電時の動作例を示すフローチャート図である。
図12】充電時の説明に供するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0020】
続いて、この発明に係るスイッチおよびこのスイッチの適用例としての照明器具の一例を、図面を参照して説明する。
【0021】
図1はこの発明に係るスイッチの一例を示す斜視図であり、図2はこのスイッチを構成する部品の分解斜視図である。図3図5は押圧部材の動きを示す部分的な動きとロック状態を示す斜視図である。そして、図6図8図3図5に対応した中央縦断面図である。
【0022】
図1に示すように、この発明に係るスイッチ70は、スイッチノブ80と、このスイッチノブ80のシーソー動作を支えるノブ取付筐体90と、ノブ取付筐体90の下面側に配され、スイッチ70の接点群が収納される収納筐体100とで構成される。
【0023】
図2に示すように、ノブ取付筐体90はその上下両端が開放された直方体状の中空筐体が使用され、その両内面には上面側の一部から下面に向かってスイッチノブ80を回動自在に軸支するための軸受け部(軸受け凹部)92が設けられる。この例では、スイッチノブ80はノブ取付筐体90の下面より挿入されて軸受け部92に軸支される。
ノブ取付筐体90の短辺側両側面にはこのノブ取付筐体90を収納筐体100に取り付け固定するための台座93a,93bが一体形成されている。
【0024】
ノブ取付筐体90は一対の係止片110によって収納筐体100に取り付け固定される。係止片110はコ字状に折り曲げられた一対の脚片11a,110bを有し、それぞれの脚片110a,110bの先端には係合爪112a,112bが設けられ、図1のように台座93a,93bに載置された状態で係合爪112a,112bを、収納筐体100の側面に形成された凸部102a,102bに引っ掛けて係止することで、ノブ取付筐体90が収納筐体100に取り付け固定される。
【0025】
係止状態をより確実にするため、係止片110には当接片114a,114bが設けられ、図1のようにL字状の当接片114a,114bをノブ取付筐体90の側面に密着させることで係止片110,110の取り付けを安定させると共に、台座93a,93bに設けられた凸部94a,94bと、収納筐体100に設けられた凸部102a,102bとで互いにガイドすることで、係止片110,110の係止位置が安定するようになされている。
【0026】
スイッチノブ80はその中心軸に対して左右の傾きを付与してシーソー動作が得られるように、この例では、一部が傾斜した平板が使用され、その長辺側の両側面には一対の支軸82,82が形成されている。これらの支軸82,82をノブ取付筐体90の軸受け部92に挿着することによってスイッチノブ80がシーソー動作できる状態でノブ取付筐体90に軸支される。スイッチノブ80の下面中央部には後述の可動接点120aを動かすための当接コマ130の取り付け部84が設けられている。取り付け部84はスイッチノブ80の中心軸(平板中央部)の直下に設けられているが、これについては後述する。
【0027】
図6に示すように収納筐体100の底部にはスイッチ接点群120が配される。この例ではその中央部に可動接点120aを支える支部接点120cが固定される。支部接点120cは図2も示すようにほぼ逆M状の形状をなし、上方に折り曲げられた一対の折り曲げ片で構成された支点122を有し、この支点122よりこの例では左側に接点導出片124が延在されており、さらにその先端は底部104より外面に突出して外部端子126bとなされている。接点導出片124の一部は上部に折り曲げられて突片124aとなされているが、これは図7に示すように可動接点120aの傾動範囲を規制するためのものである。
【0028】
支点122の右側には固定接点120bが設けられる。固定接点120bは平板構成で、支点122側には可動接点120aとの接触頭部125が設けられ、この接触頭部125と可動接点120aとの接触で導通(スイッチオン)が図られるように構成されている。固定接点120bの一端は折り曲げられて底部104より外面に突出して外部端子126aを構成する。
【0029】
可動接点120aも平板構成で、支点122を構成する一対の折り曲げ片122a,122bの間に嵌る幅を有し、一端は固定接点120bの接触頭部125に当接し、他端は突片124aに当接するような長さに選定される。
【0030】
図6に示すように、可動接点120aの中央には支点122によって挟持される支持片128が設けられている(図2参照)。これによって可動接点120aは支点122を中心に自由に支持されるので、運動方向が規制された状態でシーソー運動(シーソー動作)が付与される。
【0031】
シーソー動作はスイッチノブ80によって付与される。そのため、スイッチノブ80の下面の中心軸直下に取り付け部84が設けられる。取り付け部84は中空の筒体として一体形成されたもので、筒体内部には弦巻バネ132を介して当接コマ130が配される。当接コマ130は先端が丸味を帯びた棒(絶縁棒)であって、当接コマ130の先端が可動接点120aの上面に適度な軽さで接触するように、その長さや当接位置関係が適宜選定されている。
【0032】
なお、スイッチノブ80は上述したように一端が傾いた平板が使用されており、この傾斜片80aを押すとスイッチがオフとなるが、一旦手を離すと、押す前の状態に自動的に戻り、可動接点120aは固定接点120bに接触した状態となる。つまり、このスイッチ70は一旦オフに切り替えられるも、常時オン状態となっているスイッチとして動作する。
【0033】
常時オン状態を保持するため、スイッチノブ80には自動復帰機能が付与される。図2図6等を参照して説明する。傾斜片80aの下面に対峙して押圧部材140が設けられる。
【0034】
図2では図示の関係で、スイッチノブ80から離れて図示されているが、実際には図6以下に示すように、スイッチノブ80の直下に存在する。押圧部材140は押圧ピン140aと押圧バネ140bとで構成され、押圧ピン140aが上方に位置するように固定筒体150内に支持される。
【0035】
固定筒体150は収納筐体100内の所定位置に固定して支持できるようにするため、この例では下面側が開放された中空の筐体160が使用され、この中空筐体160の上面中央部には、当接コマ130が挿通できる長孔151が穿設されると共に、長孔151の右端部に上方に突出した固定筒体150が設けられる。
【0036】
固定筒体150には軸方向に延びるスリット152が軸を中心として左右に設けられると共に、スリット152の末端部側にはそれぞれ切り欠き154が設けられている。
【0037】
固定筒体150の内部に進退自在に収納された押圧ピン140aの下端部には切り欠き154に係合する大きさのロックピン142が一対設けられており、押圧ピン140aを押した状態で回動させることで、押圧ピン140aの進退位置をロックできる。このロック位置では押圧ピン140aの先端は傾斜片80aの下面とは所定の距離を隔てて対峙した状態にあり、ロックを解除することで押圧ピン140aの先端が傾斜片80aの下面と接触して、押圧ピン140aからの偏倚力がスイッチノブ80に伝わるようになっている。
【0038】
図6以下に示すように固定筒体150と対峙する中空筐体160の上面側には、押圧バネ140bの下側の一部を支える柱状突起162が一体形成されている。押圧バネ140bの伸縮時の安定性を確保するためである。
【0039】
押圧部材140をロックさせるか否かの操作は、この例では傾斜片80aを介して行われる。そのため図3のように押圧部材140と対峙する傾斜片80aに操作用の透孔86が設けられ、ここに操作治具(マイナスドライバーなど)を入れて、押圧ピン140aを押しながら回動させて押圧ピン140aをロックすれば、押圧ピン140aの後退位置でロックできるから、この操作で押圧部材140がロックされて、傾斜片80aへの偏倚力が解除される。
【0040】
図3図5は押圧部材140のロックおよびその解除を説明する分解斜視図であって、図3は、押圧部材140がロックされていない状態を、図4押圧部材140を押し下げて押圧部材140をロックする直前の状態を、図5がロック状態を示す。
【0041】
図3に対応する断面図は図6であり、スイッチオン状態を示し、図4に対応する断面図は図7であり、スイッチオフ状態を示す。図5に対応する断面図が図8であるが、この状態ではスイッチノブ80への偏倚力は解除されている。
【0042】
このように、押圧部材140がロックされていない図5および図8の状態ではスイッチノブ80の操作は全く規制されていないため、スイッチノブ80は自由なシーソー動作となる。つまり、傾斜片80aを押すとスイッチノブ80は右に傾いた状態となり、傾斜片80aの反対側の片を押すとスイッチノブ80は左に傾いた状態となるから、通常のシーソースイッチ動作となる。つまり、このスイッチ70はロッカースイッチとして機能する。
【0043】
これに対し、押圧部材140がロックされていないと、常時は可動接点120aが固定接点120bに接触しているので、図6の状態(オン状態)となり、スイッチノブ80を操作すると図7のようにスイッチ70は一旦オフ状態となるが、スイッチノブ80から指を離すと図6のオン状態に自動的に復帰する。そのためこのスイッチ70はモーメンタリースイッチとして機能する。
【0044】
この例におけるモーメンタリースイッチの場合、常にオン状態となるので、このスイッチ70を電源スイッチとして使用する場合には、スイッチ70によって制御される被制御対象側にはスイッチノブ80の操作を監視し、オフ操作がなされたことを検知することで、電気的にオンオフさせる必要がある。
【0045】
続いて、このスイッチ70をモーメンタリースイッチとして使用した照明器具の一例を以下に説明する。この照明器具は停電検知機能を備え、停電を検知したときで、停電が夜間に発生したとき、この照明器具を非常灯としても使用できるようにした具体例である。
【0046】
夜間では照明器具は消灯している場合が多い。そのため、照明器具を制御する電源スイッチもオフとなっているから、通常の電源スイッチの場合には地震等による停電を検知できない。
【0047】
この発明に係るスイッチ70を停電検知素子としても機能させる。照明器具がオフであっても、スイッチそれ自体はオン状態を保持できるスイッチとして、この発明に係るスイッチ70を使用する。もちろん、先に示したスイッチ以外でもモーメンタリースイッチ機能を有するものであれば、そのスイッチを停電検知素子として利用できる。
【0048】
図9はモーメンタリースイッチとして機能するスイッチを使用した照明器具の一例を示す要部系統図である。以下の例はLEDなどの発光素子をベースにした照明器を例示する。一例としてLEDが10個直列に接続され、その一列に60mAの電流を流し、そのブロックが10列並列に接続され、全体で100個のLEDが使用されたプリント基板を有し、全体で600mAの定電流を流すように構成されたLED照明器(LED集合ユニット)について説明する。
【0049】
このLED照明器全体を灯具に組み込んだり、現状の蛍光灯と互換するチューブ(管体)の中に組み込んだりして光源として使用される。
【0050】
図9において、照明器具10は照明器具制御用の電源スイッチの操作の有無に拘わらず、所定の電源電圧が供給される、LED用のDC電源回路12と、LED照明器(LED集合ユニット)14とそのDC電源回路12との間に接続されてLEDに上述した駆動電流を供給する電流回路(定電流回路)16と、主制御回路25で構成される。電源スイッチとしてこの発明に係るスイッチ70が使用される。
【0051】
DC電源回路12はLED集合ユニット14に対する駆動電圧とマイコンで構成された主制御回路25に対する動作電圧とを供給するためのもので、35V,600mAのDC電圧に変換され、主制御回路25には非常用電源として使用される二次電池26を有し、上述したDC電圧は充電制御回路30と制御回路用電源回路28とに供給される。ダイオードDa,Dbはいずれも逆流防止用のダイオードである。
【0052】
DC電源回路12からマイコン制御回路27に所定の動作電圧が供給される。マイコン制御回路27によって上述した充電制御回路30の他に、定電流回路16、昇圧回路33などが制御される。
【0053】
まず、定電流回路16に対してはLED集合ユニット14に対する点灯・消灯をDC出力電圧の出力状態に応じて制御するための制御信号が供給される。DC出力電圧の出力状態は図10Bに示すように電源スイッチ70の操作に応じて変化するからである。
【0054】
マイコン制御回路27では二次電池26の充電電圧が監視される。この例では、1.2Vのニッケル水素電池が4個直列接続されたものが使用されており、充電制御回路30を介して充電電流がこの二次電池26に供給されるように構成されている。マイコン制御回路27ではそのトータル充電電圧が監視され、充電が完了するまで充電電流が二次電池26に供給される。充電制御回路30はDC出力電圧(35ボルト)を充電に適した電圧に変換するためのものである。
【0055】
充電電圧は昇圧回路33で、この例では30~35ボルトの駆動電圧に昇圧され、昇圧された駆動電圧はスイッチング素子(トランジスタ)Tr及び逆流阻止用素子(ダイオード)Dcを介してLED集合ユニット14に供給される。昇圧回路33はDC-DCコンバータ等で構成できる。
【0056】
昇圧回路33及びスイッチングトランジスタTrはいずれも、停電時のみに動作するようにマイコン制御回路27によって制御される。
【0057】
主制御回路25には停電検知回路35の出力が供給される。この例ではDC電源回路12の入力側、したがって電源スイッチ70の出力側の交流電圧の有無を検知できるように停電検知回路35が設けられている。この例では電流制御用抵抗Rを介してホトカプラー36のホトダイオード36aに交流電流が印加され、交流電流が流れることによってホトダイオード36aからの光がホトトランジスタ36bによって検知される。このホトトランジスタ36bの出力が電圧検知回路29を経てマイコン制御回路27に供給される。交流電流が得られなくなると、つまり交流源が停電になったときには停電検知信号がゼロになるから、この検知信号の有無で停電の状態を検知できる。
【0058】
マイコン制御回路27には光センサー31からのセンサー出力が供給され、停電が夜間(周囲が暗いとき)に発生したときにのみ非常灯として点灯させる。詳細は後述する。
【0059】
マイコン制御回路27にはスピーカを内蔵したLED表示器32が接続されている。LED表示器32は、外部からの操作信号を受信したとき、受信の都度断続的に点灯状態が制御される。外部からの操作は非常時を考慮し、特定のリモコン等は使用せず光を発する物、例えば懐中電灯やスマートホン等の画面そのものの明かりでも良く、その点滅制御は、例えば0.5秒間だけ点灯し、その後3秒間消灯するようなサイクルを1サイクルとして数サイクルで完了するような制御が考えられる。明かりを遮っての点灯/消灯による点灯制御でも良い。
【0060】
停電時に非常灯として使用する場合、点灯時間が長くなって電池の容量が減少し、一定の電圧以下であることがマイコン制御回路27で検出されたようなときには、LED集合ユニット14自体を点滅制御表示すると共に、スピーカを駆動して注意喚起を促すような機能も備えている。
【0061】
このように構成された照明器具10の動作を図10図12参照して説明する。
【0062】
電源スイッチ70としては上述したモーメンタリースイッチを使用した場合である。電源スイッチ70の初期状態はオン状態である(図7参照)。そのため電源スイッチ70を取り付けた直後(時点t1まで)では、DC電源回路12から所定の出力電圧(図10B)が得られ、このとき、マイコン制御回路27には最初のトリガーが入力するも、この最初のトリガーでは定電流回路16からは駆動電圧が出力されないような初期設定されているものとする(図10C)。したがって、LED集合ユニット14は消灯状態を保持する(図10D)。
【0063】
次に、スイッチノブ80を操作(1度目操作)すると(図10A、時点t2)、スイッチ70は一旦オフに切り替えられるが、その直後にオン状態に自動的に復帰する(モーメンタリースイッチ動作)。その結果、DC出力電圧は図10Bのように瞬電の後再び所定の出力電圧が得られると共に、マイコン制御回路27ではこの1度目操作状態が検知され、定電流回路16からの電流がLED集合ユニット14に供給されてLED集合ユニット14が点灯する。以後はスイッチノブ80の操作と1対1に対応して、時点t2,t3,・・・のように消灯―点灯―消灯―・・・が繰り返される。
【0064】
以上の動作を実現するフローチャートを、図11を用いて説明する。
【0065】
図11に示すように、まずAC100Vラインが接続されているかどうかがチェックされ(ステップ41)、接続されているときには初期設定として消灯処理が行われる(ステップ42)。ここに、AC100Vラインとはす電源スイッチ70に接続された交流源21の電源ラインのことであり、電源スイッチ70が設置されることによって電源ラインが接続されたものと判断する。
【0066】
その後、DC電源回路12からのDC出力の有無が確認され(ステップ43)、DC出力電圧が出力されているときには電源スイッチ70の操作確認モードに遷移する(ステップ44)。電源スイッチ70の操作確認は、スイッチノブ80が操作されたかどうかの判断であって、図10Aのように1度目の操作が行われ、続けてもう1度操作されたかどうか、つまり再度の操作が判断される(ステップ45)。連続操作ではなく、単独操作であるときにはLED集合ユニット14が点灯状態に制御される(ステップ46)。1度目の操作に対し、再度の操作が行われたときには消灯状態に制御される(ステップ45,47)。
【0067】
LED集合ユニット14が消灯してもAC100Vラインは接続された状態であるのでDC電源回路12にはAC100Vが供給された状態が保持される(図10B,C)。これはスイッチノブ80の操作とその解除で、電源スイッチ70は一旦オフするも、直後にオン状態に強制復帰するからである(図10A)。
【0068】
AC100Vが供給されない状態は停電したと判断できるから(ステップ43)、この場合には停電による非常灯点灯処理に遷移し、瞬電よりも長く停電が続いたときには、停電と判断する。そのためマイコン制御回路27でこの停電状態が検知されると(ステップ48)、光センサー31からの光量の多少(センサー出力)が判別される(ステップ49)。地震などによる停電は昼夜の如何を問わずいずれの時間帯でも発生するが、昼間では停電してもLEDを点灯させる必要はないので消灯のままとなる(ステップ50)。
【0069】
しかし、周囲が暗いときには光量も少ないので、既定光量以下のセンサー出力と判断したときには、LEDを点灯させ(ステップ51)、非常灯として使用する。これによって、周囲が暗いときに、LED集合ユニット14が取り付けられた居間などの灯りを確保できる。
【0070】
非常灯として点灯させたときのLEDの明るさは、予め定められた明るさ(例えば、通常の1/2の明るさ)となるように設定されているが、調光すべき情報が光センサー31の光量変化として確認されたときには、調光処理が行われる(ステップ52,53)。
【0071】
調光すべき情報としては、光セセンサー出力を断続させて行うことが考えられる。例えば1回目の光遮断で、より明るく調光し(最大調光)、2回目の遮断で今度は消灯から、段階的に明るさを増すようなサイクル制御が考えられる。これとは逆に、1回目の光遮断で明るさを最小限に絞り込み、2回目の遮断から消灯のあと、段階的に光量を増すようなサイクル制御も考えられる。
【0072】
このような調光処理、例えば光量を絞る調光は、停電が長引くと判断したとき、長時間非常用灯として使用できるようにするためであり、長い時間に亘り非常灯として使用する代わりに、明るさを多少犠牲にする処理である。周囲が明るくなってきたときは、積極的に灯りを消す。
【0073】
図9の電圧検知回路29で停電が検知され、マイコン制御回路27で瞬電以外の停電であることが判断されると、その制御出力で昇圧回路33とスイッチングトランジスタTrが制御される。つまり、停電が生じたときにはスイッチングトランジスタTrがオンになされると共に、二次電池26からの充電電圧(4.6V位)が昇圧回路33で昇圧され、30~35Vまで昇圧された電圧が、LED駆動に必要な電圧(30V程度)として、逆流阻止用のダイオードDcを介してLED集合ユニット14に印加される。
【0074】
この制御処理によって停電時でもLED集合ユニット14を非常灯として使用することができる。二次電池26の充電電圧はマイコン制御回路27で充電状態が監視されると共に、逆流阻止用のダイオードDbを介して制御回路用電源回路28にもその動作電圧として供給される。
【0075】
図12は二次電池26に対する充電処理フローの一例を示すもので、DC電源回路12からのDC出力電圧を確認した上で、充電電圧(電池電圧)が監視され(ステップ61,62)、規定電圧以下のときは充電を続行するため、充電制御回路30から充電用の電圧が二次電池26にダイオードDaを介して供給される(ステップ64)。
【0076】
充電が完了したときは、充電用電圧の供給が停止され、充電オフの状態となる(ステップ65)。このような充電制御がDC出力電圧をみながら継続される。
【0077】
このようにモーメンタリースイッチ機能を有した上述のスイッチを照明器具の電源スイ ッチとして使用ことによって照明器具を非常灯として機能させることができる。
【0078】
ところで、リモコンでコントロールできる照明器具は相当昔から屋内照明器具として活躍している。この場合、電源スイッチがオン状態に切り替えられたモードでないと、リモコンによって照明器具をオンオフしたり、光量の調整ができない。
【0079】
照明器具がオフされている状態では、電源スイッチがオン状態に切り替えられているかどうかを咄嗟に使用者が判別することはなかなか難しい。リモコンの故障と判断したり、照明器具自体の断線と判断してしまうことがあり、何度か操作を繰り返している内に壁スイッチの切り替え状態に気づき、壁スイッチを操作してやっとコントロールできることがしばしば経験する。
【0080】
これはスイッチ自体オンかオフかの切り替え状態を把握できないことに起因する。このことは、スイッチ自体にスイッチノブの操作に拘わらず常時オン状態となるようなモーメンタリー機能を付与しておき、その代わりに、スイッチ操作を監視して、電気的に電源のオンオフを可能にするような処理系を照明器具自体に付与しておけば、照明器具がオフ状態であっても壁スイッチの切り替えモードを気にすることなくリモコンによって照明器具をオンオフ制御したり、光量を適切にコントロールできるようになる。
【0081】
このような照明器具用の壁スイッチとして、上述したこの発明に係るスイッチ70を使 用すると、壁スイッチは常時オン状態となっているから、壁スイッチの切り替え状態を気にすることなく、リモコンのみで照明器具を制御できる
【産業上の利用可能性】
【0082】
この発明は、室内の照明器具を停電時の非常灯として使用するときの電源スイッチなど 適用して好適である。
【符号の説明】
【0083】
10・・・照明器具
12・・・DC電源回路
14・・・LED集合ユニット(照明器)
16・・・定電流回路
25・・・主制御回路
26・・・非常用電源(二次電池)
27・・・マイコン制御回路
29・・・電圧検知回路
30・・・充電制御回路
35・・・停電検知回路
31・・・光センサー
70・・・スイッチ(電源スイッチ)
80・・・スイッチノブ
80a・・・傾斜片
90・・・ノブ取付筐体
100・・・収納筐体
120a・・・可動接点
120b・・・固定接点
120c・・・支部接点
140・・・押圧部材
140a・・・押圧ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
図12