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  • 特許-安全帯用フック 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】安全帯用フック
(51)【国際特許分類】
   A62B 35/00 20060101AFI20220905BHJP
   F16B 45/02 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
A62B35/00 C
F16B45/02 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018205669
(22)【出願日】2018-10-31
(65)【公開番号】P2020069125
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】593125366
【氏名又は名称】新生テクノス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000130765
【氏名又は名称】株式会社サンキョウ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】新田 光洋
(72)【発明者】
【氏名】貝嶋 紀久雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴之
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 誠
(72)【発明者】
【氏名】熊沢 俊文
(72)【発明者】
【氏名】筒井 誠
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-131461(JP,U)
【文献】実開昭51-033649(JP,U)
【文献】特開2010-284279(JP,A)
【文献】特開2007-117573(JP,A)
【文献】特開2017-108822(JP,A)
【文献】特開平07-031687(JP,A)
【文献】特開2015-136485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 35/00
F16B 45/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に係止側開口を有する鉤状のフック本体に、下端が前記フック本体の下部へ回転可能に連結されて、前記係止側開口を前記フック本体の内側から閉塞する閉塞位置と、前記内側へ退避して前記係止側開口を開放する開放位置との間で移動可能なストッパが設けられた安全帯用フックであって、
前記ストッパより後方で前記フック本体の前記内側に、下端が前記フック本体の前記下部へ回転可能に連結されると共に、リンク部材により前記ストッパと連結された開閉レバーが設けられ、
前記開閉レバーは、前記リンク部材を介して、前記ストッパを前記閉塞位置とする第1の位置と、前記ストッパを前記開放位置とする第2の位置との間で移動可能であることを特徴とする安全帯用フック。
【請求項2】
前記フック本体の後方外側に、下端が前記フック本体の前記下部へ回転可能に連結されたロック解除レバーが設けられ、
前記ロック解除レバーは、前記開閉レバーを前記第1の位置に保持するロック位置と、前記開閉レバーを開放して前記第2の位置へ移動することを許容する解除位置との間で移動可能であり、前記ロック解除レバーが、弾性部材により前記ロック位置へ向けて付勢されることを特徴とする請求項1に記載の安全帯用フック。
【請求項3】
前記フック本体の先端部に備えた鉤部が、前記ストッパの先端部に設けられた係止部へ係止することを特徴とする請求項1又は2に記載の安全帯用フック。
【請求項4】
前記ストッパが、前記フック本体の前記内側へ向けて凹む非直線形状であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の安全帯用フック。
【請求項5】
前記フック本体の前記下部に、命綱を連結する連結孔が設けられ、
前記ストッパが、前記フック本体の前記下部において、前記連結孔よりも前方に連結されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の安全帯用フック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業現場において作業者の落下を防止するために使用される安全帯に接続された命綱を固定用構造物に係止するために使用されるフックに関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業現場に作業者が装着する安全帯にはハーネス型、胴ベルト型等があり、いずれの安全帯も命綱が接続され、その命綱の先端部に取り付けられたフックを固定用構造物に係止することで、作業者の落下を防止し、安全性を確保することが行われている。
不測の事態によりフックが開き、外れてしまうことを回避するために、従来のフックでは、ストッパをロックできるフックが発明されている(特許文献1)。一般に、同様の構造を具備したフックは、ロック解除ハンドルとストッパをフック本体ごと握りこむことで開口部を開放し、構造物へ係止する。そのため、ストッパ中間部にかかった使用者の指が、開口部の一部を塞いでしまい、固定用構造物にフックを係止又は取り外しする際に邪魔となることがあった。そこで、ストッパの形状を湾曲させることで、使用者の指が邪魔にならない安全帯用のフック(特許文献2)や、ストッパ自体に手を掛けずにストッパを開閉させられるため、鉤部の有効径を確保することのできるフック等が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-031687号公報
【文献】特開2007-117573号公報
【文献】特開2017-108822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、高所作業時の落下を防止する一般的な命綱には最大口径50mmの安全帯用フックが装備されている一方、鉄道の電車線設備が等辺山形鋼75を採用しているように、一般的な安全帯用のフック(以下、従来フック)の最大口径を上回るサイズの固定用構造物が存在しており、従来フックを直接取り付けることが不可能な場合があった。
現状、この問題には、口径の大きな大型フックを使用する若しくは従来フックを固定用構造物へ回し掛けすることで対応している。従来フックの取り付けが不可能な固定用構造物への直接掛けが可能な既存の大型フックは、従来フックと比べて非常に大きく重たいため、操作性の観点から、当業者は従来フックからの付け替えに否定的であった。大型フックを固定用構造物へ係止し、係止した大型フックに従来フックを掛けて対処する方法もあるが、フックを2つ使用するため、作業効率が著しく低下してしまう。一方、従来フックを用いて回し掛けする場合、固定用構造物が等辺山形鋼のようにエッジを有する固定用構造物であると、落下時にエッジで命綱が切断されることが考えられる。そのため、固定用構造物のエッジを隠す養生が必要となるが、養生用具を持ち歩かなくてはならないことから作業性が低下し、また、養生の仕方によってはエッジが露出してしまう可能性がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、従来フックの最大口径を上回るサイズの固定用構造物に対しても直接掛けが可能な大きな開口寸法を備えつつ、従来フックと使用上の違和感がない、できるだけ小型の安全帯用フックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、前方に係止側開口を有する鉤状のフック本体に、下端がフック本体の下部へ回転可能に連結されて、係止側開口をフック本体の内側から閉塞する閉塞位置と、内側へ退避して係止側開口を開放する開放位置との間で移動可能なストッパが設けられた安全帯用フックであって、ストッパより後方でフック本体の内側に、下端がフック本体の下部へ回転可能に連結されると共に、リンク部材によりストッパと連結された開閉レバーが設けられ、開閉レバーは、リンク部材を介して、ストッパを閉塞位置とする第1の位置と、ストッパを開放位置とする第2の位置との間で移動可能であることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、フック本体後方外側に、下端がフック本体の下部へ回転可能に連結されたロック解除レバーが設けられ、ロック解除レバーは、開閉レバーを第1の位置に保持するロック位置と、開閉レバーを開放して第2の位置へ移動することを許容する解除位置との間で移動可能であり、ロック解除レバーが弾性部材によりロック位置へ向けて付勢されることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の構成において、フック本体先端部に備えた鉤部が、ストッパ先端部に設けられた係止部へ係止することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかの構成において、ストッパが、フック本体の内側へ向けて凹む非直線形状であることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れかの構成において、フック本体の下部に、命綱を連結する連結孔が設けられ、ストッパが、フック本体の下部において、連結孔よりも前方に連結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、開閉レバーを操作することでリンク部材を介してストッパを操作できるため、従来フックのようにストッパ自体を握りこむ必要がなく、作業者の手指がフックの係止側開口の一部を閉塞しないことから、係止側開口を最大限に利用することができる。これにより、従来構造の大型フックよりも小さなサイズでも、等辺山形鋼75のような、従来フックの最大口径を上回るサイズの固定用構造物に対してフックを直接掛けすることができるため、できる限りの小型化が可能となる。また、ストッパと開閉レバーをリンクさせたことで、従来フックと同様のアクションでストッパをフック本体内側の開放位置へ移動できるため、従来フックの使用感を損なうことがない。また、不測の事態により開閉レバー、リンク部材及びロック解除レバーが破損したとしても、ストッパは内側から係止側開口を塞ぐため、固定用構造物によって係止側開口が開放されることはなく、安全を確保できる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、ロック解除レバーは、ロック位置において開閉レバーが第1の位置から移動することを妨げ、弾性部材によってロック位置へ向けて付勢されるため、常時、開閉レバーを第1の位置で保持し、開閉レバーとリンク部材で連結されたストッパを閉塞位置に保持できることから、安全性が向上する。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加え、フック本体の先端鉤部がストッパ先端の切欠部へ係止することで、安全帯用フック全体の破断強度が向上するため、落下時の安全性が高まる。
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の何れかの効果に加え、同サイズのフックのおいてストッパを直線形状とした場合と比べて、利用可能な最大口径を大きく確保すると共に、フック全体の大きさを抑制できるため、操作性が向上する。
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4の何れかの効果に加え、ストッパの回転中心からリンク部材の軸までの距離と開閉レバーの回転中心からリンク部材の軸までの距離が調整され、開閉レバーの小さな移動距離でストッパ4の移動距離を大きくすることが可能となり、省スペースな構造となってフック全体の大きさを抑制できると共に、小さな手でも握りやすくなり操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】安全帯用フックの分解斜視図である。
図2】(A)は閉塞状態の安全帯用フックの斜視図、(B)は側面図である。
図3】(A)は開放状態の安全帯用フックの斜視図、(B)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、安全帯用フック1は、前方に係止側開口3を有する上部を平坦とした鉤状であって、全体が板状である金属製のフック本体2を備える。フック本体2の上部先端には鉤部14が形成され、フック本体2の下部には、命綱等(図示せず)を連結する接続孔9と、接続孔9の前方にはストッパ4が連結される取付孔10aと、接続孔9の後方には開閉レバー5及びロック解除レバー6がそれぞれ連結される取付孔10b,10cと、弾性部材8a,8bの一端11a,11bがそれぞれ挿入される挿入孔12a,12bとが穿設され、弾性部材8a,8bを取り付ける突起部13a,13bが設けられている。
【0010】
ストッパ4は、帯板状で一対のストッパアーム16,16と、そのストッパアーム16,16に挟まれた、前方から後方へ向けて切り込み形成された係止部19を有するコ字状の係止板20と、平板部材21a,21aとからなる。ストッパアーム16,16の下端はフック本体2の係止側開口3を内側から開閉可能に、フック本体2の下部に設けられた取付孔10aへ左右方向からピン15aによって連結孔22a,22aの位置で連結される。また、ストッパアーム16,16は、フック本体2の内側へ向けて凹むくの字形状に成形される。
このように構成されるストッパ4は、連結孔22aの位置を回転中心として、フック本体2の内側から前方へ向けて回動し、係止部19とフック本体2の鉤部14とが嵌合して係止側開口3を閉塞する閉塞位置と、同様に連結孔22aの位置を回転中心として回動し、フック本体2の内側へ退避して係止側開口3を開放する開放位置との間で移動が可能となる。
【0011】
開閉レバー5は、帯板状で一対の開閉アーム17,17と、その開閉アーム17,17に挟まれた平板部材21b,21bとからなり、フック本体2の下部に設けられた取付孔10bへ左右方向からピン15bによって下端の連結孔22b,22bで連結される。また、開閉アーム17,17には、後述するロック解除レバー6を構成するロック部材24が嵌合する切欠部23が設けられている。
このように構成される開閉レバー5は、連結孔22bの位置を回転中心として上部が前方へ向けて回動し、後述するリンク部材7を介してストッパ4を閉塞位置とする第1の位置と、同様に連結孔22bの位置を回転中心として上部が後方へ向けて回動し、リンク部材7を介してストッパ4を開放位置へ引っ張る第2の位置との間で移動が可能となる。
【0012】
リンク部材7は、長手方向の両端に取付孔10d,10dが設けられる直線状で、前方の取付孔10dとストッパアーム16,16に設けられた連結孔22d,22dとがピン15dによって連結され、後方の取付孔10dと開閉アーム17,17に設けられた連結孔22d、22dとがピン15dによって連結される。
【0013】
ロック解除レバー6は、帯板状で一対のロックアーム18,18と、そのロックアーム18,18に挟まれた平板部材21c及び開閉レバー5の下部に設けられた切欠部23に嵌合する嵌合部であるロック部材24とからなり、フック本体2の外側後方から、フック本体2の下部に設けられた取付孔10cへ左右方向からピン15cによって連結孔22c,22cで連結される。この時、ロック部材24の左右方向の幅は、開閉レバー5の左右方向の幅と等しい。
このようにして構成されるロック解除レバー6は、連結孔22cの位置を回転中心として下部が前方へ向けて回動し、第1の位置にある開閉レバー5の切欠部23にロック部材24が後方下側から嵌合して、開閉レバー5を第1の位置に固定するロック位置と、同様に連結孔22cの位置を回転中心として下部が後方へ向けて回動し、開閉レバー5の切欠部23からロック部材24が退避して、開閉レバー5が第2の位置へ移動することを許容する解除位置との間で移動が可能となる。
【0014】
ねじりコイルバネである弾性部材8aは、その一端11aが挿入孔12aへ挿入され、他端がストッパ4の平板部材21aと当接している。これによりストッパ4は閉塞位置へ向けて付勢される。もう一つのねじりコイルバネである弾性部材8bは、その一端11bが挿入孔12bへ挿入され、他端がロック解除レバー6の平板部材21cと当接している。これによりロック解除レバー6はロック方向へ向けて付勢される。
【0015】
以上の如く構成された安全帯用フック1は、図2(A)に示すように、開閉レバー5が第1の位置をとる時、ストッパ4はリンク部材7により開閉レバー5と連動するため閉塞位置をとり、弾性部材8aによってストッパ4が常時前方へ向けて付勢されながら、係止側開口3を内側から閉塞する。この時、ロック解除レバー6は、弾性部材8bによって後方へ向けて付勢されることでロック位置をとり、ロック解除レバー6下部に設けられたロック部材24が開閉レバー5の切欠部23へ嵌合することで、開閉レバー5を第1の位置に固定し、開閉レバー5と連動するストッパ4が閉塞位置から開放位置へ移動することを阻止する。また、ストッパ4が閉塞位置をとる時、フック本体2の先端に設けられた鉤部14がストッパ4の係止部19へ係止されることで、安全帯用フック1全体の破断強度が向上する。
【0016】
一方、固定用構造物(図示せず)への取り付け又は取り外しは、開閉レバー5とロック解除レバー6を同時に握りこみ、図3(A)に示すように、ストッパ4を開放位置へ移動させて行う。
この時、ロック解除レバー6下部が連結孔22cを回転中心として後方へ向けて旋回して解除位置へ移動することで、ロック解除レバー6に設けられたロック部材24が開閉レバー5の切欠部23から退避するため、開閉レバー5が開放され、開閉レバー5の回動を許容する。同時に、開閉レバー5上部が連結孔22bを回転中心として後方へ向けて旋回して第2の位置へ移動するため、リンク部材7によって連結されたストッパ4が連動し、連結孔22aを回転中心としてフック本体2の内側へ退避して開放位置へ移動することで、係止側開口3を開放する。
図3(B)に示すように、開放状態の安全帯用フック1では、ストッパ4がフック本体2の内側へ向いて凹むくの字形状であるため、係止側開口3の利用可能な最大口径L1を大きく確保することができる。仮に同サイズの安全帯用フックにおいてストッパが直線形状だった場合、非直線形状の場合と同等の最大口径を得るためには、ストッパの回転中心をより下方に設定する必要があり、安全帯用フック全体の上下方向サイズが大きくなる要因となる。すなわち、ストッパ4をくの字形状とすることで、最大口径L1の大きさを確保しつつ、フック全体のサイズを抑制できる。また、フック本体2へストッパ4を連結する取付孔10aを接続孔9より前方に設けたことで、開閉レバー5の小さな移動距離L3でストッパ4の移動距離L2を大きくすることが可能となり、構造的に省スペース化できると共に、作業者の手が小さくても操作しやすくなる。加えて、開閉レバー5を握った使用者の手指(図示せず)は、ストッパ4と開閉レバー5の隙間Vに位置するため、固定用構造物への取り付け又は取り外し時にストッパ4によって使用者の手指を保護できる。
【0017】
係止側開口3が開放された状態の安全帯用フック1を固定用構造物に引っ掛けた後、開閉レバー5とロック解除レバー6から手を離すことで、安全帯用フック1は再び図2に示す様態となる。すなわち、図2(B)に示すように、ストッパ4は弾性部材8aに付勢されて閉塞位置へ移動すると共に、リンク部材7により連結された開閉レバー5はストッパ4と連動して第1の位置へ移動する。同時に、ロック解除レバー6が弾性部材8bによって付勢されてロック位置へ移動し、ロック部材24が開閉レバー5の切欠部23へ嵌合することで開閉レバー5を第1の位置に固定し、開閉レバー5と連動するストッパ4が閉塞位置から開放位置へ移動することを阻止する。
【0018】
上記形態の安全帯用フック1は、前方に係止側開口3を有する鉤状であって、全体が板状のフック本体2と、フック本体2の下部に設けられ命綱等を連結する接続孔9の前方に設けられた取付孔10aに、係止側開口3を内側から閉塞する閉塞位置と係止側開口3を開放する開放位置との間で移動可能に連結されたフック本体2の内側へ向いて凹むくの字形状のストッパ4と、接続孔9よりも後方でフック本体2の下部に設けられた取付孔10bに、ストッパ4を閉塞位置とする第1の位置と開放位置とする第2の位置で移動可能に連結された開閉レバー5と、フック本体2の下部に設けられた取付孔10cに、開閉レバー5を第1の位置に固定するロック位置と開閉レバー5の移動を許容する解除位置との間で移動可能にフック本体2の後方外側から連結されたロック解除レバー6とからなり、ストッパ4と開閉レバー5とは連動可能にリンク部材7を介して連結されている。
このように構成される安全帯用フック1によれば、開閉レバー5を操作することでリンク部材7を介してストッパ4を操作できるため、従来フックのようにストッパ4自体を握りこむ必要がなく、作業者の手指がフックの係止側開口3の一部を閉塞しないことから、利用可能な最大口径L1を大きくすることができる。これにより、従来構造の大型フックよりも小さなサイズでも、等辺山形鋼75のような、従来フックの最大口径を上回るサイズの固定用構造物に対してフックを直接掛けすることができるため、できる限りの小型化が可能となる。また、ストッパ4と開閉レバー5をリンクさせたことで、従来フックと同様のアクションでストッパ4をフック本体2内側の開放位置へ移動できるため、従来フックの使用感を損なうことがない。また、不測の事態により開閉レバー5、リンク部材7及びロック解除レバー6が破損したとしても、ストッパ4は内側から係止側開口3を塞ぐため、固定用構造物によって係止側開口3が開放されることはなく、安全を確保できる。
【0019】
さらに、ロック解除レバー6は、ロック位置において開閉レバー5が第1の位置から移動することを妨げ、弾性部材8bによってロック位置へ向けて付勢されるため、常時、開閉レバー5を第1の位置で保持し、開閉レバー5とリンク部材7で連結されたストッパ4を閉塞位置に保持できることから、安全性が向上する。
さらにまた、フック本体2先端の鉤部14がストッパ4先端の係止部19へ係止することで、安全帯用フック1全体の破断強度が向上するため、落下時の安全性が高まる。また、ストッパ4をくの字形状としたことで、仮にストッパを直線形状とした場合と比べて、利用可能な最大口径L1を大きく確保すると共に、フック全体の大きさを抑制できるため、操作性が向上する。
加えて、ストッパ4を接続孔9の前方に設けた取付孔10aに連結したことで、ストッパ4の回転中心からリンク部材7の軸までの距離と開閉レバー5の回転中心からリンク部材7の軸までの距離が調整され、開閉レバー5の小さな移動距離L3でストッパ4の移動距離L2を大きくすることが可能となり、省スペースな構造となってフック全体の大きさを抑制できると共に、小さな手でも握りやすくなり操作性が向上する。
【0020】
以上は、本発明を図示例に基づいて説明したものであり、その技術範囲はこれに限定されるものではない。例えば、安全帯用フックを構成する各部品の素材は、使用者の安全を確保できるものであれば、鉄、アルミ、樹脂等から自由に選択できる。また、ストッパ、開閉レバー及びロック解除レバーを構成する部品群は、単一素材で製造しても、複数素材で製造しても良いし、実施例のように部品群からなるものではく、一体成形で製造しても良い。さらに、各部品の形状は図示したものに限定されるものではなく、係止側開口を内側から閉塞可能なストッパをリンク部材を介したフック本体内側に設置された開閉レバーで操作でき、開閉レバーをロック解除レバーによって固定・開放できる形状であれば、上記実施形態に限定されず、例えば、非直線形状のストッパは、例示したくの字形状以外に、円弧状や台形状等であっても良い。さらにまた、フック本体、ストッパ、開閉レバー、リンク部材、ロック解除レバーの連結に使用されるピンは、それぞれの連結が可能であり、使用者の安全を確保できるものであれば、その種類、材質の組み合わせは限定されない。
【符号の説明】
【0021】
1・・安全帯用フック、2・・フック本体、3・・係止側開口、4・・ストッパ、5・・開閉レバー、6・・ロック解除レバー、7・・リンク部材、8・・弾性部材、9・・接続孔、10・・取付孔、14・・鉤部、22・・連結孔。
図1
図2
図3