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特許7134435紙葉類検知装置、紙葉類検知方法および紙葉類処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】紙葉類検知装置、紙葉類検知方法および紙葉類処理装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 7/00 20160101AFI20220905BHJP
   G07D 7/121 20160101ALI20220905BHJP
   B65H 7/14 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
G07D7/00 J
G07D7/121
B65H7/14
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019047278
(22)【出願日】2019-03-14
(65)【公開番号】P2020149455
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000116079
【氏名又は名称】ローレルバンクマシン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500267170
【氏名又は名称】ローレル機械株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500265501
【氏名又は名称】ローレル精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 仁
(72)【発明者】
【氏名】稲毛 徹
【審査官】小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-138437(JP,A)
【文献】特開2018-144989(JP,A)
【文献】特開2018-036874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 7/00- 7/128
G07D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類の有無を検知する紙葉類検知装置であって、
光を照射する発光部と、当該発光部から照射された光を受光してその受光レベルに応じた信号を出力する受光部と、を有する光学センサと、
前記紙葉類があるか否かの判断に用いられる第1閾値と、前記紙葉類が存在しない場合の前記受光部での受光レベルの目標値として設定された目標受光レベルと、前記第1閾値以上かつ前記目標受光レベル未満の値に設定された第2閾値と、を記憶する記憶部と、
前記紙葉類の有無を推定する推定部と、
前記受光部での受光レベルが前記第1閾値以上かつ前記第2閾値未満である場合に、前記推定部により前記紙葉類が無いと推定されると、前記受光部での受光レベルが前記目標受光レベルとなるように前記発光部から照射される光の光量を調整する光量調整部と、を有する紙葉類検知装置。
【請求項2】
前記受光部での光の受光レベルが前記第1閾値以上かつ前記第2閾値未満である場合に前記紙葉類が存在する可能性を示す情報を報知する報知部を有し、
前記推定部は、
前記報知部により前記紙葉類が存在する可能性を示す情報が報知された後、当該報知に対する確認操作が入力された場合に前記紙葉類が無いと推定する請求項1に記載の紙葉類検知装置。
【請求項3】
前記受光部での光の受光レベルが前記第1閾値以上かつ前記第2閾値未満である場合に前記紙葉類が存在する可能性を示す情報を報知する報知部を有し、
前記推定部は、
前記報知部により前記紙葉類が存在する可能性を示す情報が報知された後、一定時間経過した場合に前記紙葉類が無いと推定する請求項1または2に記載の紙葉類検知装置。
【請求項4】
前記推定部は、
第1時刻における前記受光部での第1受光レベルと、前記第1時刻よりも後の第2時刻における前記受光部での第2受光レベルとに基づいて、前記紙葉類の有無の変化を推定する請求項1から請求項3の何れか一項に記載の紙葉類検知装置。
【請求項5】
前記紙葉類は、非透明領域と透明領域とを有し、
前記第1閾値は前記紙葉類の前記非透明領域を検知可能な値に設定されると共に、前記第2閾値は前記紙葉類の前記透明領域を検知可能な値に設定されている請求項1から請求項4の何れか一項に記載の紙葉類検知装置。
【請求項6】
前記透明領域を有する紙葉類が、前記推定部によって無いと推定された場合の前記目標受光レベルは、前記透明領域を有さない紙葉類が、前記推定部によって無いと推定された場合の前記目標受光レベルよりも低い値に設定されている請求項5に記載の紙葉類検知装置。
【請求項7】
前記透明領域を有する紙葉類が、前記推定部によって無いと推定された場合の前記目標受光レベルは変更可能である請求項5または請求項6に記載の紙葉類検知装置。
【請求項8】
紙葉類の有無を発光部と受光部とを有する光学センサにより検知する紙葉類の検知方法であって、
前記紙葉類があるか否かの判断に用いられる第1閾値と、前記紙葉類が存在しない場合の前記受光部での受光レベルの目標値として設定された目標受光レベルと、前記第1閾値以上かつ前記目標受光レベル未満の値に設定された第2閾値と、を設定し、
前記受光部での受光レベルが前記第1閾値以上かつ前記第2閾値未満である場合に、前記紙葉類が無いと推定されると、前記受光部での受光レベルが前記目標受光レベルとなるように前記発光部から照射される光の光量を調整する紙葉類検知方法。
【請求項9】
前記受光部での光の受光レベルが前記第1閾値以上かつ前記第2閾値未満である場合に前記紙葉類が存在する可能性を示す情報を報知し、
前記紙葉類が存在する可能性を示す情報が報知された後、当該報知に対する確認操作が入力された場合に前記紙葉類が無いと推定する請求項8に記載の紙葉類検知方法。
【請求項10】
受付部に投入された紙葉類を所定の条件で振り分けて集積部に集積させる紙葉類処理装置であって、
前記紙葉類の識別と計数とを行う識別計数部と、
前記識別計数部で識別および計数された紙葉類を所定の前記集積部に振り分ける振分部と、を有し、
請求項1から請求項7の何れか一項に記載の前記紙葉類検知装置が前記集積部に設けられている紙葉類処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類検知装置、紙葉類検知方法および紙葉類処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一部の国では、耐久性やセキュリティー性の向上を目的として、合成樹脂のポリマー素材を用いて作製された紙幣(以下、ポリマー紙幣と言う)が使用されている。この種のポリマー紙幣には、表面に印刷などがされている非透明領域と印刷などがされていない透明領域とが形成され、この透明領域に偽造防止対策が施されているものがある。
【0003】
従来、紙葉類検知装置では、このようなポリマー紙幣を検知するため、光を照射する発光部と、発光部から照射された光を受光する受光部とを有する光透過型の光学センサが用いられる。この光学センサでは、発光部と受光部との間にポリマー紙幣が存在しない場合、発光部から照射された光がポリマー紙幣で遮られず、照射された光のほぼ全てが受光部で受光される。一方、発光部と受光部との間にポリマー紙幣が存在する場合、発光部から照射された光がポリマー紙幣の非透明領域で遮られ、照射された光は受光部で受光されない。このように紙葉類検知装置は、光学センサの受光部で受光した光の受光レベルに基づいてポリマー紙幣の有無を検知する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-036874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の紙葉類検知装置は、光学センサの発光部から照射された光の光路上にポリマー紙幣の透明領域が位置する場合、発光部から照射された光の多くが透明領域を透過し、受光部での光の受光レベルが高くなってしまう。その結果、紙葉類検知装置は、発光部と受光部との間にポリマー紙幣が存在するにも拘らず、ポリマー紙幣が存在しないと誤判定していまい、ポリマー紙幣の有無を適切に検知することができない可能性がある。このような問題は、光反射型の光学センサを用いた場合にも生じ得る問題であり、場所によって光の透過状態や反射状態が異なるものであれば、ポリマー紙幣に限らず、他の紙葉類でも同様に生じ得る問題である。
【0006】
従って、本発明は、紙葉類の有無を良好に検知することが可能となる紙葉類検知装置、紙葉類検知方法および紙葉類処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る第1の態様は、紙葉類の有無を検知する紙葉類検知装置であって、光を照射する発光部と、当該発光部から照射された光を受光してその受光レベルに応じた信号を出力する受光部と、を有する光学センサと、前記紙葉類があるか否かの判断に用いられる第1閾値と、前記紙葉類が存在しない場合の前記受光部での受光レベルの目標値として設定された目標受光レベルと、前記第1閾値以上かつ前記目標受光レベル未満の値に設定された第2閾値と、を記憶する記憶部と、前記紙葉類の有無を推定する推定部と、前記受光部での受光レベルが前記第1閾値以上かつ前記第2閾値未満である場合に、前記推定部により前記紙葉類が無いと推定されると、前記受光部での受光レベルが前記目標受光レベルとなるように前記発光部から照射される光の光量を調整する光量調整部と、を有する。
【0008】
また、本発明に係る第2の態様は、紙葉類の有無を発光部と受光部とを有する光学センサにより検知する紙葉類の検知方法であって、前記紙葉類があるか否かの判断に用いられる第1閾値と、前記紙葉類が存在しない場合の前記受光部での受光レベルの目標値として設定された目標受光レベルと、前記第1閾値以上かつ前記目標受光レベル未満の値に設定された第2閾値と、を設定し、前記受光部での受光レベルが前記第1閾値以上かつ前記第2閾値未満である場合に、前記紙葉類が無いと推定されると、前記受光部での受光レベルが前記目標受光レベルとなるように前記発光部から照射される光の光量を調整する。
【0009】
また、本発明に係る第3の態様は、受付部に投入された紙葉類を所定の条件で振り分けて集積部に集積させる紙葉類処理装置であって、前記紙葉類の識別と計数とを行う識別計数部と、前記識別計数部で識別および計数された紙葉類を所定の前記集積部に振り分ける振分部と、を有し、前記紙葉類検知装置が前記集積部に設けられている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、紙葉類の有無を良好に検知することが可能となる紙葉類検知装置、紙葉類検知方法および紙葉類処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る紙葉類検知装置を含む紙葉類処理装置を正面側から見た内部の概略構成図である。
図2】実施形態に係る紙葉類検知装置で検知するポリマー紙幣を概略的に示す正面図である。
図3】実施形態に係る紙葉類検知装置を含む紙葉類処理装置の概略構成図である。
図4】実施形態に係る紙葉類検知装置の受光部で受光した光の受光レベルの一例を説明する模式図である。
図5】実施形態に係る紙葉類検知装置の構成図であって、ポリマー紙幣の透明領域を検知しているときの光の状態を模式的に示すものである。
図6】実施形態に係る紙葉類検知装置でポリマー紙幣の非透明領域を検知しているときの光の状態を模式的に示す正面図である。
図7】(A)は、従来例に係る紙葉類検知装置における閾値の設定方法を説明する図であり、(B)は、実施形態に係る紙葉類検知装置における閾値の設定方法を説明する図である。
図8】実施形態に係る紙葉類検知方法を説明するフローチャートである。
図9】実施形態に係る紙葉類検知方法における紙葉類の残留の推定方法を説明するフローチャートである。
図10】実施形態に係る紙葉類検知装置の操作表示部による報知の一例を説明する図である。
図11】実施形態に係る紙葉類検知方法における紙葉類の残留の推定方法の変形例を説明するフローチャートである。
図12】光量に対する受光部での光の受光レベルを示す特性線図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態]
実施形態に係る紙葉類検知装置、紙葉類検知方法および紙葉類処理装置を図面を参照して以下に説明する。図1は、実施形態に係る紙葉類処理装置1を示すものである。紙葉類処理装置1は、紙葉類として紙幣や証券、金券などの紙葉類を分類処理するものである。ここでは、紙葉類として紙幣を分類処理する場合を例にとり説明する。
【0013】
<紙葉類処理装置1のハードウェア構成>
まず、紙葉類処理装置1のハードウェア構成について説明する。
図1に示す実施形態に係る紙葉類処理装置1は、投入された紙幣Sを、計数対象である計数対象紙幣と計数対象ではないリジェクト紙幣とに分類し、計数対象紙幣を更に種類別に計数して種類別に収容し、計数結果と収容先とを関連付けて表示するものである。以下の説明において、「前」は操作者側、「後」は操作者とは反対側、「右」は操作者から見て右側、「左」は操作者から見て左側である。
【0014】
実施形態に係る紙葉類処理装置1は、紙幣Sを識別および計数する計数ユニット2と、計数ユニット2で識別および計数されて計数ユニット2から搬送されてきた紙幣Sを分類し集積して収容する処理を行う集積ユニット3とが組み合わされて構成されている。集積ユニット3は、金種ごとに振り分けられた紙幣Sを所定枚数ずつ集積する処理などが可能となっている。
【0015】
ここで、紙葉類処理装置1は、1台の計数ユニット2に対し所望の1台または複数台の集積ユニット3を連設して構成することが可能となっている。また、1台の計数ユニット2に対し、集積ユニット3と、所定枚数ずつ集積した紙幣に帯封を巻き付けて施封する施封ユニットと、を連設して構成することも可能となっている。ここでは、1台の計数ユニット2に対し1台の集積ユニット3を連設した場合を例にとり説明する。
【0016】
計数ユニット2は、その右側面側の下部に設けられて、図示は略すが右側面および前面に亘って計数ユニット2外、即ち紙葉類処理装置1外に常時開口する受付部11と、同じく右側面側の上部に設けられて右側面および前面に亘って計数ユニット2外、即ち紙葉類処理装置1外に常時開口するリジェクト部13と、を有している。リジェクト部13および受付部11は、前後方向および左右方向の位置を重ね合わせて上下に並んで配置されている。
【0017】
受付部11は、紙葉類処理装置1において外部から投入された紙幣Sを受け付ける部分であり、複数枚の紙幣Sが長辺部を前後に沿わせ、短辺部を左右に沿わせて、上下方向に集積された状態で、セットされることになる。受付部11は、このようにセットされた集積状態の紙幣Sを最下のものから一枚ずつ分離し繰り出して紙葉類処理装置1内に取り込む。受付部11から繰り出される紙幣Sは、その短辺部の延在方向に沿って移動する。
【0018】
計数ユニット2は、その内部に、受付部11に投入され受付部11から繰り出された紙幣Sを搬送する計数ユニット内搬送構成部21と、計数ユニット内搬送構成部21で搬送中の紙幣Sを識別しつつ計数する識別計数部22と、を有している。計数ユニット内搬送構成部21で搬送される紙幣Sは、その短辺部の延在方向に沿って移動する。
【0019】
計数ユニット内搬送構成部21は、受付部11から計数ユニット2の左側面に向けて延出する左方延出部31と、左方延出部31の左側面近傍の端部から上方に延出する上方延出部32と、上方延出部32の上端部から計数ユニット2の左側面に向け延出して左側面に開口する左方延出部33と、上方延出部32の識別計数部22よりも上側から分岐し、計数ユニット2の右側面に向け延出してリジェクト部13に繋がる分岐延出部34と、を有している。計数ユニット内搬送構成部21には、鉛直方向に沿う上方延出部32に識別計数部22が設けられている。
【0020】
集積ユニット3の内部には、計数ユニット2の左方延出部33に接続され、左方延出部33から繰り出された紙幣Sを搬送する集積ユニット内搬送構成部41が設けられている。よって、集積ユニット内搬送構成部41は、計数ユニット2の計数ユニット内搬送構成部21と連通して設けられている。集積ユニット内搬送構成部41で搬送される紙幣Sも、その短辺部の延在方向に沿って移動する。
【0021】
集積ユニット内搬送構成部41は、集積ユニット3の右側面の上部に開口し、集積ユニット3の左側面に向け水平且つ直線状に延出して、左側面の上部に開口する連結搬送構成部42と、連結搬送構成部42の左側の中間部分から下側に分岐する分岐搬送構成部43と、を有している。連結搬送構成部42は、計数ユニット2側から搬送されてきた紙幣Sを計数ユニット2から離れる水平方向に搬送し、分岐搬送構成部43は、連結搬送構成部42から分岐して、水平方向とは異なる鉛直下方に紙幣Sを搬送する。
【0022】
連結搬送構成部42と分岐搬送構成部43とは、それぞれ個別の駆動モータを有しており、独立して駆動可能となっている。1台の計数ユニット2に対し集積ユニット3が複数台連設される場合、これらは左右方向に並べられて連結され、複数台の集積ユニット3の隣り合うもの同士が連結搬送構成部42を接続させて連結される。このように構成すれば、紙葉類処理装置1では、計数ユニット内搬送構成部21が、受付部11で受け付けた紙幣Sを複数の集積ユニット3側に向けて搬送可能となる。
【0023】
集積ユニット3の分岐搬送構成部43は、連結搬送構成部42の左側の中間部分から分岐して鉛直下方に延出する下方延出部44と、1つが下方延出部44の下端位置から集積ユニット3の右側面に向けて延出し、また複数が下方延出部44の中間位置から分岐して集積ユニット3の右側面に向けて延出する、複数具体的には3つの側方延出部45と、を有している。下方延出部44の中間位置から分岐する側方延出部45の分岐位置には、それぞれ、下方延出部44と側方延出部45とに紙幣Sを振り分ける振分部46が設けられている。これらの振分部46によって、紙幣Sを3つの側方延出部45に振り分け可能となっている。
【0024】
3つの側方延出部45には、それぞれ、紙幣Sを集積させて収容する集積部51が接続されている。ここで、1台の集積ユニット3に3個の集積部51が設けられているのは一例であり、例えば1台の集積ユニット3に4個の集積部51が設けられていても良く、1台の集積ユニット3に2個の集積部51が設けられていても良く、1台の集積ユニット3に1個の集積部51が設けられていても良い。また、計数ユニット2に複数台の集積ユニット3を連設する場合、複数台の集積ユニット3のそれぞれの集積部51の数も、任意に選択可能である。
【0025】
各集積部51には、識別計数部22で識別および計数された紙幣Sのうち、それぞれ収容対象と識別された紙幣Sが収容される。例えば、集積ユニット3が、金種ごとに振り分けられた紙幣Sを所定枚数ずつ集積する処理を行う場合、各集積部51に対して、それぞれ収容する金種が設定されることになって、各集積部51が、それぞれ設定された対象金種の紙幣Sを収容することになり、振分部46は、このように収容するように紙幣Sを何れかの集積部51に振り分ける。すなわち、紙葉類処理装置1は、受付部11に投入され、識別計数部22で識別および計数された紙幣Sを所定の条件で振分部46によって振り分けて集積部51に集積させる。
【0026】
集積部51は、いずれも、集積ユニット3の前面、即ち紙葉類処理装置1の前面に設けられた図示略の開口部を有しており、それぞれの開口部において、集積ユニット3外、即ち紙葉類処理装置1外に常時開口するポケット状をなしている。
【0027】
集積ユニット3に設けられた複数の集積部51は、前後方向および左右方向の位置を重ね合わせて上下方向(高さ方向)に所定の間隔をあけて並んで配置されている。複数の集積部51は、計数ユニット2に設けられた受付部11およびリジェクト部13に対しても、前後方向の位置を重ね合わせている。
【0028】
互いに接続された計数ユニット内搬送構成部21と集積ユニット内搬送構成部41とが、受付部11から繰り出された紙幣Sを紙葉類処理装置1内で搬送する搬送部55を構成している。搬送部55は、その搬送中に紙幣Sが識別計数部22で識別されると、識別計数部22よりも下流側の部分が、識別計数部22の識別結果に基づいて紙幣Sを、リジェクト部13および複数の集積部51のうちの一つに択一的に振り分ける。搬送部55による紙幣Sの搬送方向において、上流側に計数ユニット2が、下流側に集積ユニット3が配置されている。
【0029】
紙葉類処理装置1において、リジェクト部13および複数の集積部51は、識別計数部22の識別結果に基づいて紙幣Sを分類して紙葉類処理装置1外に取り出し可能に収容する。複数の集積部51は、紙葉類処理装置1の前面に設けられた図示略の開口部から紙葉類処理装置1の前方に紙幣Sが引き抜かれる。
【0030】
リジェクト部13は、受付部11で紙葉類処理装置1内に取り込まれた紙幣Sのうち、識別計数部22で計数対象紙幣以外のリジェクト紙幣と識別された紙幣Sを集積させて紙葉類処理装置1外に取り出し可能に収容するものである。リジェクト部13は、計数ユニット内搬送構成部21から紙幣Sが繰り出されることになり、このように繰り出された紙幣Sを繰り出し順に下から上に集積させる。紙幣Sは、計数ユニット内搬送構成部21の分岐延出部34からリジェクト部13に繰り出されると、リジェクト部13内で、長辺部を前後に沿わせ、短辺部を左右に沿わせて下から上に集積される。
【0031】
複数の集積部51は、受付部11で紙葉類処理装置1内に取り込まれた紙幣Sのうち、識別計数部22で計数対象紙幣と識別されて種類別に計数された紙幣Sを種類別に集積させて紙葉類処理装置1外に取り出し可能に収容するものである。複数の集積部51は、いずれも、集積ユニット内搬送構成部41から紙幣Sが繰り出されることになり、このように繰り出された紙幣Sを繰り出し順に右下から左上の方向に集積させる。
【0032】
紙葉類処理装置1の計数ユニット2の前面には、操作入力を受け付けると共に情報の画面表示を行う操作表示部60(報知部)と音声出力を行う音声出力部61(報知部)とが設けられている。操作表示部60は、紙葉類処理装置1の操作画面や集積ユニット3における紙幣Sの集積状態などを表示する装置であり、本実施形態では、オペレータがタッチ操作を行うことができるタッチパネルを含んでいる。すなわち、オペレータは、操作表示部60に表示された操作ボタンをタッチすることで紙葉類処理装置1における各種の操作を行うことができる。
【0033】
また、計数ユニット2の内部には、計数ユニット2と、計数ユニット2に連結された集積ユニット3の各部とを制御する制御部62と、後述する複数の閾値(第1閾値、第2閾値、目標受光レベル)、制御プログラムおよび各種パラメータなどを記憶する記憶部63とが設けられている。制御部62は、紙葉類処理装置1の全体制御を行う。
【0034】
計数ユニット2に設けられた受付部11は、上述したように紙葉類処理装置1の右側面側に右側方および前方に常時開口するように設けられている。受付部11は、水平に対して若干左下がりに傾斜して配置される底部70と、底部70の左端位置から底部70に対して垂直をなして上方に延出する壁部71と、底部70の後端縁部から鉛直上方に延出する壁部72と、を有している。底部70および壁部71は前後方向に広がっており、壁部72は鉛直方向および左右方向に広がっている。底部70と壁部71と壁部72とは互いに垂直に配置されている。受付部11には、紙幣Sが、壁部71に一方の長辺部を、壁部72に一方の短辺部を、それぞれ当接させるようにして、底部70上に集積状態でセットされる。受付部11は、底部70の上方に設けられて壁部71に沿って昇降するビルプレス74を有しており、ビルプレス74は、底部70上に載置された紙幣Sを底部70に向けて押圧する。
【0035】
受付部11は、底部70上にセットされた紙幣Sのうちの最下の紙幣Sを左方の計数ユニット内搬送構成部21に向けて蹴り出す蹴出ローラ75と、蹴出ローラ75で蹴り出された紙幣Sを紙葉類処理装置1の内部に取り込んで計数ユニット内搬送構成部21に受け渡す取込ローラ76と、取込ローラ76で取り込む紙幣Sを一枚ずつに分離する分離ローラ77と、を有している。蹴出ローラ75、取込ローラ76および分離ローラ77が、受付部11にセットされた紙幣Sを一枚ずつ分離して紙葉類処理装置1の内部に取り込む取込部78を構成している。
【0036】
識別計数部22は、紙幣Sの画像を検出すると共に、それぞれを基準データと比較して、一致すると判定できる基準データの種類を、紙幣Sの種類と特定する。このように種類が特定された紙幣Sは、識別異常なしの紙幣Sとなる。一方、一致すると判定できる基準データがない場合、識別異常ありの紙幣Sと特定する。
【0037】
計数ユニット2に設けられたリジェクト部13は、水平に対して若干左下がりに傾斜して配置される底部80と、底部80の左端位置から底部80に略垂直をなして上方に延出する壁部81と、底部80の後端縁部から鉛直上方に延出する壁部82と、を有している。底部80および壁部81は前後方向に広がっており、壁部82は鉛直方向および左右方向に広がっている。底部80と壁部82とは互いに垂直に配置されている。
【0038】
壁部81の上部には、計数ユニット内搬送構成部21の分岐延出部34の端末位置の近傍に設けられて分岐延出部34で搬送されてきた紙幣Sを繰り出して底部80に集積させる羽根車85が設けられている。羽根車85には、図示は略すが多数の羽根が周方向に所定の間隔で設けられている。羽根車85は、分岐延出部34で搬送されてきた紙幣Sを羽根と羽根との間に挟んで共に回転し、この紙幣Sが壁部81に当接して羽根と羽根との間から抜け出すと、この紙幣Sを羽根で底部80側、即ち下方に押す。
【0039】
集積ユニット3に設けられた複数の集積部51は、いずれも同様の構成であり、紙葉類処理装置1の前面に開口する図示略の開口部と、水平に対し右下がりに傾斜する収容底部90と、収容底部90の後側で広がる収容奥壁部91と、収容底部90の右端位置から収容底部90に垂直をなして上方に延出する支持壁部92と、を有している。収容底部90および支持壁部92は、前後方向に広がっており、収容奥壁部91は、鉛直方向および左右方向に広がっている。収容底部90と収容奥壁部91と支持壁部92とは互いに垂直に配置されている。
【0040】
分岐搬送構成部43の各側方延出部45の末端位置には、対応する集積部51内に紙幣Sを繰り出す羽根車95が設けられている。羽根車95は、集積部51における収容底部90の支持壁部92とは反対側、即ち左側に設けられている。羽根車95には、図示は略すが多数の羽根が周方向に所定の間隔で周方向同側に延出するように設けられている。羽根車95は、支持壁部92と対向する側が上から下に移動するように回転することになり、支持壁部92と対向する側の羽根は、支持壁部92と対向する際に固定端が下側に、自由端が上側に位置するように延びている。
【0041】
羽根車95は、分岐搬送構成部43の下方延出部44および3つの側方延出部45のうちの対応するもので左側から右側に搬送されてきた紙幣Sを羽根と羽根との間に挟んで紙幣Sと共に回転し、この紙幣Sが収容底部90の上面に当接して羽根と羽根との間から抜け出すと、この紙幣Sを羽根で支持壁部92側に押す。このとき、紙幣Sは、短辺部を上下に沿わせて収容底部90の上面に下端の長辺部で当接して支持されると共に、この上面にガイドされて支持壁部92側に移動し、支持壁部92に厚さ方向一側の面が重なって支持されることになる。次に繰り出される紙幣Sは、同様にして、短辺部を上下に沿わせて収容底部90の上面に下端の長辺部で当接して支持されると共に、この上面にガイドされて支持壁部92側に移動し、既に支持壁部92に支持されている紙幣Sの厚さ方向他側の面に、厚さ方向一側の面が重なって支持される。このようにして、紙幣Sが厚さ方向に順に集積されて、支持壁部92に支持される。
【0042】
複数の集積部51には、それぞれに紙幣Sの有無、すなわち紙幣Sの残留を検知する光学センサ101が設けられている。言い換えれば、複数の集積部51には、集積部51ごとに光学センサ101が配置されている。光学センサ101は、光を照射する発光部102と、発光部102から照射された光を受光してその受光レベルに応じた信号を出力する受光部103と、を有している。受光部103は、同じ光学センサ101を構成する発光部102から照射された光の光軸の軸線上に設けられて、この発光部102から照射された光を受光可能に設けられている。本実施形態においては、受光した光の受光レベルに応じて受光部103が出力する出力信号は、電圧値または電流値で表されるアナログ信号である。
【0043】
光学センサ101は、前述のように、発光部102の光の照射方向に受光部103が配置されることになり、発光部102の光の照射方向、言い換えれば発光部102と受光部103とを結ぶ方向が、集積部51に集積される紙幣Sの集積方向、言い換えれば集積部51に集積される紙幣Sの厚さ方向に沿うように配置されている。ここでは、発光部102が羽根車95の近傍に、受光部103が支持壁部92に設けられている。これとは逆に、受光部103を羽根車95の近傍に、発光部102を支持壁部92に設けても良い。光学センサ101は、発光部102で照射された光を、紙幣Sを透過する方向において受光部103で受光する光透過型の光学センサであり、発光部102は、所定の波長の光を受光部103に向けて照射することになる。本実施形態では、発光部102は、例えば赤外線を照射する。
【0044】
発光部102および受光部103からなる光学センサ101は、操作表示部60、音声出力部61、制御部62および記憶部63と共に、集積部51にある紙幣Sの有無を検知する紙葉類検知装置105を構成している。
【0045】
ここで、紙葉類検知装置105が有無の検知を行う検知対象の紙幣Sには、図2に概略的に示すような、合成樹脂材料で形成され、非透明領域A1と、偽造防止対策としてホログラムなどが施された透明領域A2とを有する、いわゆるポリマー紙幣S(p)が含まれることになり、紙葉類検知装置105は、このようなポリマー紙幣S(p)の有無の検知に好適なものとなっている。ポリマー紙幣S(p)は、非透明領域A1で囲まれた範囲、言い換えれば、非透明領域A1の内側の一部の範囲に透明領域A2が設けられている。例えば、このようなポリマー紙幣S(p)として英国ポンド紙幣が挙げられる。
【0046】
図3に示すように、制御部62は、集積ユニット3の集積部51におけるポリマー紙幣S(p)の有無(残留)を推定する推定部111と、光学センサ101の発光部102が照射する光の光量を調整する光量調整部112と、各種閾値を設定する閾値設定部113と、を含んで構成されている。
【0047】
推定部111は、各集積部51においてポリマー紙幣S(p)の残留が無いことを推定する。推定部111は、操作表示部60および音声出力部61によりポリマー紙幣S(p)が存在する可能性を示す情報が報知された後、当該報知に対する確認操作が操作表示部60に入力された場合にポリマー紙幣S(p)が無いと推定する。
【0048】
すなわち、推定部111は、集積部51にポリマー紙幣S(p)が存在する可能性があることを示す情報を操作表示部60および音声出力部61で報知した後、オペレータによる、報知に対する確認操作の入力が操作表示部60にあった場合、オペレータにより集積部51からポリマー紙幣S(p)が取り出された可能性が高いと判断し、集積部51にポリマー紙幣S(p)が無いことを推定する。
【0049】
なお、推定部111は、光学センサ101の検出結果から、集積部51にポリマー紙幣S(p)が無いことを推定するようにしても良い。その場合、推定部111は、例えば、第1時刻における受光部103での第1受光レベルと、この第1時刻よりも後の第2時刻における受光部103での第2受光レベルとに基づいて、ポリマー紙幣S(p)の有無の変化を推定する。
【0050】
すなわち、推定部111は、光学センサ101の発光部102の一定の発光状態での発光中、図4に示すように、時系列における第1時刻における受光部103での第1受光レベルと、第1時刻よりも後の第2時刻における受光部103での第2受光レベルとの差分を演算する。そして、推定部111は、第1受光レベルと第2受光レベルとの差分が所定の範囲未満である場合、この光学センサ101が設けられた集積部51内でのポリマー紙幣S(p)の有無の変化がないと判断し、第1受光レベルと第2受光レベルとの差分が所定の範囲以上である場合、この光学センサ101が設けられた集積部51内でのポリマー紙幣S(p)の有無の変化があると判断する。
【0051】
例えば、図4に示すように、第1時刻における受光部103での第1受光レベルがOFF状態(集積部51内にポリマー紙幣S(p)が存在する又は存在する可能性が有る状態)であり、第2時刻における第2受光レベルがON状態(集積部51内にポリマー紙幣S(p)が存在しない状態)である場合、第1受光レベルと第2受光レベルとの差分が所定の範囲以上となり、これにより推定部111は、集積部51内のポリマー紙幣S(p)が存在する状態から存在しない状態に変化したと推定する。
【0052】
図3に示す光量調整部112は、推定部111によりポリマー紙幣S(p)が集積部51に無いと推定されると、この集積部51に設けられた受光部103での受光レベルが所定の目標受光レベルとなるように、この集積部51に設けられた発光部102から照射される光の光量を調整する。
【0053】
すなわち、光量調整部112は、推定部111により集積部51にポリマー紙幣S(p)が残留していないと推定された場合、この集積部51に設けられた受光部103での現時点で受光レベルが所定の目標受光レベルとなるように、この集積部51に設けられた発光部102から照射される光の光量を調整する。
【0054】
記憶部63は、ポリマー紙幣S(p)を検知するための複数の閾値と所定の目標受光レベルとを記憶する。本実施形態では、記憶部63は、ポリマー紙幣S(p)の非透明領域A1を検知するための第1閾値を記憶する第1閾値記憶領域121と、集積部51にポリマー紙幣S(p)が存在しない場合の受光部103での受光レベルの目標値として設定された目標受光レベルを記憶する目標受光レベル記憶領域122と、第1閾値以上であり、かつ目標受光レベル未満の値に設定された第2閾値を記憶する第2閾値記憶領域123と、を有して構成されている。第1閾値は、集積部51にポリマー紙幣S(p)を含む紙幣Sがあるか否かの判断に用いられる閾値であり、ポリマー紙幣S(p)の非透明領域A1を検知可能な値に設定される。第2閾値は、集積部51にポリマー紙幣S(p)があるか否かの判断に用いられる閾値であり、ポリマー紙幣S(p)の透明領域A2を検知可能な値に設定される。
【0055】
なお、本実施形態においては、第1閾値および第2閾値は、予め実機データ実験が行われて、制御部62の閾値設定部113により工場出荷時に予め設定されている。また、目標受光レベルは、集積部51に紙幣Sが無い状態で、受光部103での光の受光レベルが所定の目標値となるまで、発光部102から照射される光の光量を徐々に高くすることで予め設定されている。
【0056】
<紙葉類検知装置105のハードウェア構成>
次に、紙葉類検知装置105のハードウェア構成及び紙葉類検知装置105によるポリマー紙幣S(p)の検知方法を説明する。
【0057】
図5に示すように、紙葉類検知装置105は、前述した操作表示部60、音声出力部61、制御部62、記憶部63および光学センサ101のほか、光学センサ101の受光部103の出力信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換して制御部62に向けて出力するA/D変換器131を含んで構成されている。
【0058】
紙葉類検知装置105では、光学センサ101の発光部102から照射された光が受光部103で受光されると、受光部103では光の受光レベルに応じた出力信号(アナログ信号)を出力する。受光部103から出力されたアナログ信号はA/D変換器131に入力されてデジタル信号に変換される。本実施形態では、A/D変換器131は8ビットの変換器であり、受光部103から出力されたアナログ信号を、このアナログ信号の大きさに応じた256段階の分解能でデジタル信号に変換する。A/D変換器131で変換されたデジタル信号は、制御部62に入力される。制御部62には、A/D変換後のデジタル信号のほか、受光部103から出力されたアナログ信号もそのまま入力される。
【0059】
前述した構成により、集積ユニット3の集積部51にポリマー紙幣S(p)があって、ポリマー紙幣S(p)の透明領域A2が発光部102から照射された光Lの光路上に位置する場合、図5に模式的に示すように、発光部102から照射された光Lの多くは透明領域A2を透過して受光部103で受光される。なお、発光部102から照射された光Lの一部は透明領域A2で吸収または反射され受光部103で受光されないため、受光部103で受光される光Lの受光レベルは、集積部51にポリマー紙幣S(p)が無い場合よりも低くなる。
【0060】
一方、集積ユニット3の集積部51にポリマー紙幣S(p)があって、図6に模式的に示すように、集積部51にあるポリマー紙幣S(p)の非透明領域A1が発光部102から照射された光Lの光路上に位置する場合、発光部102から照射された光Lは、ポリマー紙幣S(p)の非透明領域A1で遮られ受光部103では、ほとんど受光されない。
【0061】
なお、集積部51にポリマー紙幣S(p)が無い場合、発光部102から照射された光Lは、これを遮るものがないため、ほぼ照射時の状態のまま受光部103で受光されることとなる。
【0062】
図5に示す制御部62では、A/D変換後の受光部103からの出力信号と、記憶部63に記憶されている所定の閾値とに基づいて、集積ユニット3の集積部51におけるポリマー紙幣S(p)の有無を判断する。なお、受光部103から出力される出力信号(A/D変換後のデジタル信号も含む)は、受光部103で受光した光の受光レベルに応じて出力されるので、特に区別しない場合には受光レベルとして説明する。
【0063】
<閾値の設定方法>
次に、制御部62によるポリマー紙幣S(p)を検知するための閾値の設定方法を、従来の閾値の設定方法と比較しながら説明する。
【0064】
図7の(A)は、従来例に係る紙葉類検知装置における閾値の設定方法を説明する図であり、図7の(B)は、本実施形態に係る紙葉類処理装置105における閾値の設定方法を説明する図である。
【0065】
図7の(A)に示すように、従来の紙葉類検知装置では、ポリマー紙幣S(p)を含む紙幣Sの非透明領域を検知可能な受光レベルで閾値が設定されている。そして、受光部で受光した光の受光レベルがこの閾値未満である場合にはポリマー紙幣S(p)を含む紙幣Sが集積部内に存在する(すなわち残留あり)と判断する一方、受光部で受光した光の受光レベルがこの閾値以上である場合にはポリマー紙幣S(p)を含む紙幣Sが集積部内に存在していない(すなわち残留なし)と判断するようになっている。
【0066】
このように、従来の紙葉類検知装置は、発光部から照射された光が紙幣Sの非透明領域により遮られた場合の受光部での光の受光レベルを基準とした1つの閾値を設定することで、集積ユニットの集積部における紙幣Sの有無を検知していた。
【0067】
ところが、前述したように、ポリマー紙幣S(p)は、発光部102から照射された光Lの光路上に透明領域A2が位置する状態で集積部51に複数枚が集積され、あるいは一枚のみ収容されていることがある。この場合、発光部102から照射された光Lの多くはポリマー紙幣S(p)の透明領域A2を透過して受光部103で受光されることとなる。その結果、受光部103で受光された光Lの受光レベルが設定された閾値以上となり、ポリマー紙幣S(p)が集積部51内に存在しているにも拘らず、ポリマー紙幣S(p)が存在していないと誤判定してしまう恐れがある。
【0068】
そこで本実施形態では、図7の(B)に示すように、発光部102から照射された光Lがポリマー紙幣S(p)の非透明領域A1により遮られた場合の受光部103での光Lの受光レベルを基準として設定した第1閾値と、集積部51内にポリマー紙幣S(p)を含む紙幣Sが一切存在していない場合の受光部103での光Lの受光レベルの目標値として予め設定された目標受光レベルと、第1閾値以上かつ目標受光レベル未満となる値に設定された第2閾値と、が設定されている。
【0069】
ここで、第2閾値は、第1閾値以上で、かつ目標受光レベルの85%~95%の範囲となるように設定されていることが好ましい。つまり、第2閾値を、この範囲となるように設定することで、第2閾値は、発光部102と受光部103との間にポリマー紙幣S(p)の非透明領域A1が有る場合に受光部103で受光する光の受光レベル以上となり、発光部102と受光部103との間にポリマー紙幣S(p)を含む紙幣Sが一切無い場合に受光部103で受光する光Lの目標受光レベルよりも小さい範囲となる。
【0070】
このように第2閾値を設定することで、制御部62は、例えばポリマー紙幣S(p)が一枚しかないなど、ポリマー紙幣S(p)の透明領域A2での光Lの透過度が高い場合でも、受光部103での光Lの受光レベルが、ポリマー紙幣S(p)が存在している、または存在する可能性があることを示す、第1閾値と第2閾値との間のグレー判定領域内であることを適切に判断することができる。
【0071】
<紙幣の検知方法>
次に紙葉類検知装置105における紙幣Sの検知方法を説明する。
前述した第1閾値、第2閾値、及び目標受光レベルは、紙葉類検知装置105が設けられた紙葉類処理装置1ごとの実機データ実験などにより予め設定され、工場出荷時に紙葉類検知装置105の記憶部63に記憶されている。そして、紙葉類処理装置1においてリセット動作または計数動作が行われ、受付部11および搬送部55に存在する全てのポリマー紙幣S(p)が、リジェクト部13および集積ユニット3の全ての集積部51のうちの何れかに集積された後、以下の処理が行われる。
【0072】
制御部62は、全ての集積部51に設けられた光学センサ101のそれぞれに対して図8に示すフローチャートに沿う制御を行う。
【0073】
図8に示すように、初めに、ステップS101において、制御部62は、設定された所定の出力で光学センサ101の発光部102により発光させ、この光学センサ101の受光部103での光Lの受光レベルがポリマー紙幣S(p)の非透明領域A1を検知するための第1閾値(図7の(B)参照)未満か否かを判定する。
【0074】
制御部62は、この光学センサ101について、受光部103での光Lの受光レベルが第1閾値未満であると判定した場合(ステップS101:YES)、この受光部103が設けられた集積部51にポリマー紙幣S(p)を含む紙幣Sがある、すなわち残留ありと判断し(ステップS108)、操作表示部60および音声出力部61によって、この集積部51に残留している紙幣Sの抜き取りを指示する情報を報知して処理を終了する(ステップS109)。なお、制御部62は、光学センサ101の検出結果により、この集積部51から紙幣Sが抜き取られたことを検知した場合、操作表示部60および音声出力部61による報知を停止する。
【0075】
一方、制御部62は、ステップS101において、この光学センサ101について、受光部103での受光レベルが第1閾値未満でないと判断した場合(ステップS101:NO)、ステップS102の処理に進む。
【0076】
制御部62は、ステップS102において、この受光部103での光Lの受光レベルが、ポリマー紙幣S(p)の透明領域A2を検知するための第2閾値以上であるか否かを判定する(ステップS102)。制御部62は、この受光部103での光Lの受光レベルが第2閾値以上であると判定した場合(ステップS102:YES)、この受光部103が設けられた集積部51にポリマー紙幣S(p)が無いと判断して処理を終了する(ステップS110)。
【0077】
一方、制御部62は、ステップS102において、この受光部103での受光レベルが第2閾値以上でないと判定した場合(ステップS102:NO)、ステップS103の処理に進む。
【0078】
制御部62は、ステップS103において、ポリマー紙幣S(p)がこの受光部103が設けられた集積部51に残留していないことを推定する。
【0079】
ここで、制御部62によるポリマー紙幣S(p)が集積部51に残留していないことの推定処理を以下で説明する。
【0080】
制御部62は、受光部103での光Lの受光レベルが、記憶部63に記憶されている第1閾値以上であり(ステップS101:NO)、かつ記憶部63に記憶されている第2閾値未満である(ステップS102:NO)場合は、ポリマー紙幣S(b)が、この受光部103が設けられた集積部51に残留している可能性があると判断し、図9に示すように、ステップS201において、操作表示部60および音声出力部61により、オペレータに対して紙幣の、この集積部51からの抜き取りを指示する報知を行う。言い換えれば、操作表示部60および音声出力部61は、受光部103での光Lの受光レベルが第1閾値以上かつ第2閾値未満である場合に、紙幣Sが存在する可能性を示す情報を報知する。
【0081】
そして、制御部62は、推定部111が、ステップS202において、この集積部51に対する、紙幣Sの抜き取りを確認した旨のオペレータによる入力操作を操作表示部60が受け付けたか否かを判定する。推定部111は、この集積部51に対する紙幣Sの抜き取りを確認した旨の入力操作を操作表示部60が受け付けたと判定した場合(ステップS202:YES)、オペレータにより、この集積部51から紙幣Sが抜き取られたと判断し、ステップS203において、ポリマー紙幣S(p)がこの集積部51に残留していないと推定する。一方、推定部111は、ステップS202において、この集積部51に対する紙幣Sの抜き取りを確認した旨の入力操作を操作表示部60が受け付けていないと判定した場合(ステップS202:NO)、操作表示部60が確認の入力操作を受け付けたと判定するまで、ステップS202を繰り返して待機する。
【0082】
本実施形態では、制御部62は、紙葉類処理装置1の集積部51にポリマー紙幣S(p)が残留している可能性がある旨を、図10に示すように、ポリマー紙幣S(p)が残留している可能性がある集積部51を特定しつつ、操作表示部60に報知させる。図10の例では、操作表示部60に、「Fitness1」の注意表示141と、紙幣の取り除きを指示する「Remove notes」の指示表示142とを表示する。また、これらと共に、集積ユニット3の何れの集積部51にポリマー紙幣S(p)が残留しているかを視認可能に表示する。すなわち、全ての集積部51のイラスト表示145を含む集積ユニット3のイラスト表示146を表示させると共に、全ての集積部51のイラスト表示145のうち、ポリマー紙幣S(p)が残留している、またはその可能性がある集積部51のイラスト表示145(図10では、網掛けで表示)を、ポリマー紙幣S(p)が残留していない集積部51のイラスト表示145(図10では、白抜きで表示)に対して、表示を異ならせて視認可能とする。
【0083】
さらに制御部62は、操作表示部60に、「ENT(ENTER)」の確認ボタン148を表示し、オペレータからの確認ボタン148の押下操作を受け付けた場合、推定部111が、この集積部51からオペレータによりポリマー紙幣S(p)が抜き取られたと判断し、残留無しと推定する(ステップS203)。
【0084】
そして、前述したステップS101およびステップS102において、光学センサ101の受光部103での受光レベルが第1閾値以上であり、かつ第2閾値未満(第1閾値≦受光レベル<第2閾値)であると判定した後、推定部111により、集積部51におけるポリマー紙幣S(p)の残留無しが推定された場合(ステップS103)、ステップS104において、光量調整部112が、この集積部51に設けられた光学センサ101の受光部103での受光レベルが、予め設定された目標受光レベルとなるように、この集積部51に設けられた発光部102から照射される光Lの光量を調整する調整処理を行う。すなわち、光量調整部112は、受光部103での受光レベルが第1閾値以上かつ第2閾値未満である場合に、推定部111によりポリマー紙幣S(p)が無いと推定されると、受光部103での受光レベルが目標受光レベルとなるように発光部102から照射される光の光量を調整する。光量調整部112は、例えば、発光部102から照射される光の光量を徐々に高くするように調整する。
【0085】
制御部62は、この光学センサ101の発光部102から照射される光Lの光量を、この光学センサ101の受光部103での受光レベルが目標受光レベルとなるように調整後、ステップS105において、この光学センサ101の受光部103での受光レベルが第2閾値未満であるか否かを判定する(ステップS105)。制御部62は、この受光部103での受光レベルが第2閾値未満でないと判定した場合(ステップS105:NO)、この光学センサ101によりポリマー紙幣S(p)が無いことの判断を適切に行えると判定して、この調整後の発光部102の駆動状態を、この発光部102の駆動状態として設定して記憶部63に更新記憶して、処理を終了する。これにより、その後、この光学センサ101においては、発光部102が照射する光Lの光量を、この調整後の光量とすることになる。
【0086】
一方、制御部62は、光量調整部112により、この光学センサ101の発光部102から照射される光Lの光量を、この光学センサ101の受光部103での受光レベルが目標受光レベルとなるように調整後、この光学センサ101の受光部103での受光レベルが第2閾値未満であると判定した場合、ステップS106の処理に進む。
【0087】
ステップS106において、制御部62は、光量調整部112による、この光学センサ101の発光部102から照射される光Lの光量を目標受光レベルとなるように調整する調整処理の実行回数が所定回数n(例えば、n=3)以上であるか否かを判定する。制御部62は、この実行回数が予め設定された所定回数n以上であると判定した場合(ステップS106:YES)、ステップS107の処理を行う。一方、制御部62は、この光学センサ101の発光部102から照射される光Lの光量を目標受光レベルとなるように調整する調整処理の実行回数が予め設定された所定回数n未満であると判定した場合(ステップS106:NO)、この光学センサ101が設けられた集積部51からポリマー紙幣S(p)が取り出されていない可能性があるため、ステップS103に戻って、ステップS103~S105の処理を繰り返して行う。
【0088】
ステップS107において、制御部62は、この光学センサ101によるポリマー紙幣S(p)の検知方法を従来の閾値を用いた方法(図7の(A)に示す方法)に変更し、処理を終了する。
【0089】
以上の実施形態においては、ステップS103において、推定部111は、操作表示部60および音声出力部61により紙幣Sの抜き取り報知後、オペレータによる操作表示部60への抜き取り確認の入力操作を受け付けたことに基づいて集積部51にポリマー紙幣S(p)の残留が無いと推定する場合を例示して説明したが、ポリマー紙幣S(p)の残留が無いことの推定方法はこれに限定されるものではない。
【0090】
例えば、推定部111は、操作表示部60および音声出力部61によりポリマー紙幣S(p)が存在する可能性を示す情報が報知された後、一定時間経過した場合にポリマー紙幣S(p)が無いと推定するようにしても良い。すなわち、推定部111は、集積部51にポリマー紙幣S(p)が存在する可能性があることを示す情報を操作表示部60および音声出力部61で報知した後、所定時間経過した場合、オペレータによりこの集積部51からポリマー紙幣S(p)が取り出された可能性が高いと判断し、この集積部51にポリマー紙幣S(p)が無いことを推定する。具体的には、図11に示すように、操作表示部60および音声出力部61によって紙幣Sの抜き取り報知を行い(ステップS201)、その後、所定時間経過した場合(ステップS301:YES)、オペレータによりポリマー紙幣S(p)が抜き取られた可能性が高いと判定し、この集積部51にポリマー紙幣S(p)の残留が無いと推定する(ステップS203)ようにしてもよい。
【0091】
また、前述した実施形態では、光学センサ101の受光部103は、発光部102から照射された光Lを受光した場合、受光した光Lの受光レベルに応じた出力信号(例えば、+5VのON信号)を出力し、発光部102から照射された光Lを受光しない場合、出力信号を出力しない(もしくは0VのOFF信号を出力する)場合を例示して説明したが、受光部103の出力例はこれに限定されるものではない。例えば、光学センサ101の受光部103は、発光部102から照射された光を受光した場合、出力信号を出力せず(もしくは0VのOFF信号を出力する)、発光部102から照射された光を受光しない場合、光の受光レベルに応じた出力信号(例えば、+5VのON信号)を出力するように構成してもよい。
【0092】
また、前述した実施形態では、光学センサ101の受光部103から出力された出力信号をA/D変換器131でデジタル信号に変換した場合を例示して説明したが、光学センサ101の受光部103とA/D変換器131とが同一のパッケージに収まったIC(Integrated Circuit)を用いてもよい。また、光学センサ101の受光部103から出力されたアナログ信号と前述した閾値を用いてポリマー紙幣S(p)の検知を行うように構成してもよい。
【0093】
また、前述した実施形態では、発光部102が赤外線を照射する場合を例示して説明したが、赤外線以外の他の波長を照射するものであっても良い。
【0094】
また、前述した実施形態では、光透過型の光学センサ101を用いた場合を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、発光部から照射された光の紙幣による反射光を受光部で受光する光反射型の光学センサを用いても良い。
【0095】
なお、前述した目標受光レベルは、操作表示部60への変更操作で変更可能に設定されることが好ましい。例えば、目標受光レベルは、透明領域A2を有する紙幣と透明領域A2を有さない紙幣とで変更することが好ましい。図12に示すように、従来の透明領域を有さない紙幣を検知する際の受光部103での光の受光レベルは、曲線LA(図12の一点鎖線)のようになる。この受光レベル曲線LAを本発明に係る紙葉類検知装置105に適用して目標受光レベルを設定した場合、第1閾値と第2閾値との間の領域(グレー判定領域)の傾きが大きいため、受光レベルの僅かな変化でもグレー判定領域から外れてしまう可能性があり、紙幣があるかもしれないというグレー判定を適切に行うことができない。
【0096】
そのため、本実施形態に係る紙葉類検知装置105では、透明領域A2を有する紙幣を検知する場合には、操作表示部60への透明領域A2を有する紙幣を検知する旨の操作で、受光部103での光の受光レベルの曲線LB(図12の実線)を適用して目標受光レベルを設定する。本実施形態に係る受光レベルの曲線LBは、透明領域を有しない場合の受光レベルの曲線LAよりも目標受光レベルを低くすると共に、それに伴って第1閾値と第2閾値との間の領域(グレー判定領域)の傾きが小さくなるようにしているため、受光レベルが多少変化した場合でも、グレー判定領域から外れることは無く、紙幣があるかもしれないというグレー判定を適切に行うことができる。
【0097】
また、前述した実施形態では、紙葉類として紙幣Sを検知する場合を例示して説明したが、紙幣以外の証券、金券などの紙葉類を検知する場合にも適用可能であり、特に、非透明領域と透明領域とを有する紙葉類に適用して好適である。
【0098】
以上の通り、実施形態では、
(1)紙葉類(紙幣S)の有無を検知する紙葉類検知装置105であって、光を照射する発光部102と、当該発光部102から照射された光を受光してその受光レベルに応じた信号を出力する受光部103と、を有する光学センサ101と、前記紙幣Sがあるか否かの判断に用いられる第1閾値と、前記紙幣Sが存在しない場合の前記受光部103での受光レベルの目標値として設定された目標受光レベルと、前記第1閾値以上かつ前記目標受光レベル未満の値に設定された第2閾値と、を記憶する記憶部63と、前記紙幣Sの有無を推定する推定部111と、前記受光部103での受光レベルが前記第1閾値以上かつ前記第2閾値未満である場合に、前記推定部111により前記紙幣Sが無いと推定されると、前記受光部103での受光レベルが前記目標受光レベルとなるように前記発光部102から照射される光の光量を調整する光量調整部112と、を有する構成とした。
【0099】
従来、光学センサにより紙葉類の有無を検知する紙葉類検知装置が知られている。この紙葉類検知装置では、紙葉類の有無により光学センサの発光部から照射された光の受光部での受光レベルが異なり、この受光部での光の受光レベルを測定することにより紙葉類の有無を検知する。具体的には、光学センサの発光部と受光部との間に紙葉類が存在する場合、光学センサの発光部から照射された光は紙葉類で遮られるので、受光部での光の受光レベルは所定の閾値未満となる。一方、光学センサの発光部と受光部との間に紙葉類が存在しない場合、光学センサの発光部から照射された光は紙葉類で遮られないため、受光部での光の受光レベルは所定の閾値以上となる。これにより紙葉類検知装置は、受光部での受光レベルに基づいて紙葉類の有無を検知することができる。
【0100】
ここで、場所によって光の透過状態や反射状態が異なる紙葉類、例えば、紙葉類が非透明領域A1と透明領域A2とを有するポリマー紙幣S(p)である場合、ポリマー紙幣S(p)に施された透明領域A2が光学センサ101の発光部102から照射される光の光路上に位置すると、受光部103で受光される光の受光レベルが所定の閾値よりも大きくなり、ポリマー紙幣S(p)が有るにも拘わらず無いと誤判定してしまう可能性がある。
【0101】
そこで、本実施形態に係る紙葉類検知装置105では、ポリマー紙幣S(p)の非透明領域A1を検知するための第1閾値以上であり、かつポリマー紙幣S(p)を含む紙幣Sが存在しない場合の受光部103での光の受光レベルの目標値として設定された目標受光レベル未満の値に、第2閾値を設定した。
【0102】
これにより、紙葉類検知装置105は、ポリマー紙幣S(b)の透明領域A2が発光部102から照射される光の光路上に位置することにより、受光部103での光の受光レベルが第1閾値以上であっても、目標受光レベルよりも低い値に設定された第2閾値未満である場合、ポリマー紙幣S(p)が存在し、または存在する可能性があると判断することができる。
【0103】
また、紙葉類検知装置105は、紙幣Sの有無を推定する推定部111を有し、受光部103での受光レベルが第1閾値以上かつ第2閾値未満であり、その後、推定部111により紙幣Sが無いと推定された場合、受光部103での受光レベルを紙幣Sが存在しない場合の目標受光レベルとなるように発光部102から照射される光の光量を調整する。よって、紙幣Sが無い場合の受光部103での受光レベルが目標受光レベルとなるため、発光部102から照射された光の光路上に紙幣Sの透明領域A2が位置する場合でも、紙葉類検知装置105はポリマー紙幣S(p)が有るという判断を適切に行うことができる。
【0104】
つまり、透明領域A2を検出するためには、第2閾値を、紙幣Sが無い状態で受光部103での光の受光レベルに近い値に設定する必要があるが、このように設定すると、例えば、発光部102の汚れや経年的な性能低下で、紙幣Sが無い状態での受光部103の光の受光レベルが、設定された第2閾値未満に容易になってしまう。この場合は、紙幣Sが無い状態でも、受光部103での光の受光レベルが第2閾値未満となってしまってポリマー紙幣S(p)があると判断してしまうことになる。これに対して、紙葉類検知装置105は、紙幣Sが無い状態で受光部103での光の受光レベルが目標受光レベルとなるように調整するため、このような状況になることを防止することができる。よって、ポリマー紙幣S(p)が有るという判断を適切に行うことができる。
【0105】
(2)前記受光部103での光の受光レベルが前記第1閾値以上かつ前記第2閾値未満である場合に紙幣Sが存在する可能性を示す情報を報知する報知部(操作表示部60および音声出力部61)を有し、前記推定部111は、前記操作表示部60および音声出力部61により前記紙幣Sが存在する可能性を示す情報が報知された後、当該報知に対する確認操作が入力された場合に前記紙幣Sが無いと推定する構成とした。
【0106】
このように構成すると、推定部111は、操作表示部60および音声出力部61により紙幣Sが存在する可能性を示す情報が報知された後、当該報知に対する確認操作が入力された場合、オペレータにより紙幣Sが取り除かれた可能性が高いと推定する。よって、推定部111は、紙幣Sが無い旨の推定を適切に行うことができる。
【0107】
(3)前記受光部103での光の受光レベルが前記第1閾値以上かつ前記第2閾値未満である場合に前記紙幣Sが存在する可能性を示す情報を報知する報知部(操作表示部60および音声出力部61)を有し、前記推定部111は、前記操作表示部60および音声出力部61により前記紙幣Sが存在する可能性を示す情報が報知された後、一定時間経過した場合に前記紙幣Sが無いと推定する構成とした。
【0108】
このように構成すると、推定部111は、操作表示部60および音声出力部61により紙幣Sが存在する可能性を示す情報が報知された後、一定時間経過した場合にはオペレータにより紙幣Sが取り除かれた可能性が高いと推定する。よって、推定部111は、紙幣Sが無い旨の推定を適切に行うことができる。
【0109】
(4)前記推定部111は、第1時刻における前記受光部103での第1受光レベルと、前記第1時刻よりも後の第2時刻における前記受光部103での第2受光レベルとに基づいて、前記紙幣Sの有無の変化を推定する構成とした。
【0110】
このように構成すると、推定部111は、時系列における第1時刻における第1受光レベルと第2時刻における第2受光レベルとの差分が所定の範囲内である場合、紙幣Sの有無の変化が無いと判断し、差分が所定の範囲を超えた場合、紙幣Sの有無の変化があると判断する。よって、推定部111は、紙幣Sが存在する可能性があると判断した第1時刻での受光部103の第1受光レベルと、その後の第2時刻での受光部103の受光レベルとの差分を比較することで、紙幣Sが存在する可能性があると判断された状態から、紙幣Sが存在しなくなった状態への変化を検知することができる。その結果、紙葉類検知装置105は、オペレータなどにより紙葉類が取り除かれたか否かの判断を行うことができる。
【0111】
(5)前記紙幣Sは、非透明領域A1と透明領域A2とを有し、前記第1閾値は前記紙幣Sの前記非透明領域A1を検知可能な値に設定されると共に、前記第2閾値は前記紙幣Sの前記透明領域A2を検知可能な値に設定されている構成とした。
【0112】
このように構成すると、紙葉類検知装置105は、非透明領域A1を検知可能な第1閾値と透明領域A2を検知可能な第2閾値とを有しているので、透明領域A2を有する紙葉類(例えば、ポリマー紙幣)の有無の検知を適切に行うことができる。
【0113】
(6)前記透明領域A2を有する紙幣S(p)が、前記推定部111によって無いと推定された場合の前記目標受光レベルは、前記透明領域A2を有さない紙幣Sが、前記推定部111によって無いと推定された場合の前記目標受光レベルよりも低い値に設定されている構成とした。
【0114】
紙葉類検知装置105では、非透明領域A1を検知するための第1閾値と、紙幣Sが存在しない場合の受光部103での受光レベルの目標値として設定された目標受光レベルとの間に、透明領域A2を検知するための第2閾値を設定した。ここで、透明領域A2を有する紙幣S(p)が存在しない状態で設定される目標受光レベルが、透明領域A2を有さない紙幣Sが存在しない状態で設定される目標受光レベルと同じか、若しくは高い場合、透明領域A2を検知するための第2閾値が設定されるグレー判定領域での受光レベルの変化が急激となり、受光レベルがグレー判定領域か否かの判定が適切に行えない恐れがある。そのため、本実施形態に係る紙葉類検知装置105では、透明領域A2を有する紙幣S(p)が集積部51に存在しない状態となってから設定される目標受光レベルを、透明領域を有さない紙幣Sが集積部51に存在しない状態となってから設定される目標受光レベルよりも低く設定することで、第2閾値が設定されるグレー判定領域での受光レベルの変化が緩やかとなり、受光レベルがグレー判定領域か否かの判定を適切に行うことができる。
【0115】
(7)前記透明領域A2を有する紙幣S(p)が、前記推定部111によって無いと推定された場合の前記目標受光レベルは変更可能である構成とした。
【0116】
このように構成すると、目標受光レベルを変更可能にすることで、紙葉類の有無の検知を紙葉類の種類に応じて適切に行うことができる。
【0117】
(8)紙葉類(紙幣S)の有無を発光部102と受光部103とを有する光学センサ101により検知する紙幣Sの検知方法であって、前記紙幣Sがあるか否かの判断に用いられる第1閾値と、前記紙幣Sが存在しない場合の前記受光部103での受光レベルの目標値として設定された目標受光レベルと、前記第1閾値以上かつ前記目標受光レベル未満の値に設定された第2閾値と、を設定し、前記受光部103での受光レベルが前記第1閾値以上かつ前記第2閾値未満である場合に、前記紙幣Sが無いと推定されると、前記受光部103での受光レベルが前記目標受光レベルとなるように前記発光部102から照射される光の光量を調整する構成とした。
【0118】
これにより、ポリマー紙幣S(b)の透明領域A2が発光部102から照射される光の光路上に位置することにより、受光部103での光の受光レベルが第1閾値以上であっても、目標受光レベルよりも低い値に設定された第2閾値未満である場合、ポリマー紙幣S(p)が存在し、または存在する可能性があると判断することができる。
【0119】
また、受光部103での受光レベルが第1閾値以上かつ第2閾値未満であり、その後、推定部111により紙幣Sが無いと推定された場合、受光部103での受光レベルを紙幣Sが存在しない場合の目標受光レベルとなるように発光部102から照射される光の光量を調整する。よって、紙幣Sが無い場合の受光部103での受光レベルが目標受光レベルとなるため、発光部102から照射された光の光路上に紙幣Sの透明領域A2が位置する場合でも、ポリマー紙幣S(p)が有るという判断を適切に行うことができる。
【0120】
(9)前記受光部103での光の受光レベルが前記第1閾値以上かつ前記第2閾値未満である場合に前記紙幣Sが存在する可能性を示す情報を報知し、前記紙幣Sが存在する可能性を示す情報が報知された後、当該報知に対する確認操作が入力された場合に前記紙幣Sが無いと推定する構成とした。
【0121】
このように構成すると、推定部111は、操作表示部60および音声出力部61により紙幣Sが存在する可能性を示す情報が報知された後、当該報知に対する確認操作が入力された場合、オペレータにより紙幣Sが取り除かれた可能性が高いと推定できる。よって、推定部111は、紙幣Sが無い旨の推定を適切に行うことができる。
【0122】
(10)受付部11に投入された紙葉類(紙幣S)を所定の条件で振り分けて集積部51に集積させる紙葉類処理装置1であって、前記紙幣Sの識別と計数とを行う識別計数部22と、前記識別計数部22で識別および計数された紙幣Sを所定の前記集積部51に振り分ける振分部46と、を有し、(1)から(8)の何れか一つに記載の前記紙葉類検知装置105が前記集積部51に設けられている構成とした。
【0123】
このように構成すると、紙葉類検知装置105を紙葉類処理装置1の集積部51に設けることで、集積部51に集積されたポリマー紙幣S(p)の残留を良好に検知することができる。
【符号の説明】
【0124】
1 紙葉類処理装置
60 操作表示部(報知部)
61 音声出力部(報知部)
101 光学センサ
102 発光部
103 受光部
105 紙葉類検知装置
111 推定部
112 光量調整部
A1 非透明領域
A2 透明領域
S 紙幣(紙葉類)
S(p) ポリマー紙幣
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12