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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】ヒータボックス及び可動式乾燥システム
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/10 20060101AFI20220905BHJP
   F26B 3/30 20060101ALI20220905BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20220905BHJP
   H05B 3/44 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
H05B3/10 B
F26B3/30
H05B3/00 345
H05B3/44
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020090727
(22)【出願日】2020-05-25
(65)【公開番号】P2021190167
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2021-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390018315
【氏名又は名称】メトロ電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】後藤 克尚
(72)【発明者】
【氏名】吉原 寛美
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-084831(JP,A)
【文献】特開昭54-012175(JP,A)
【文献】特開平10-339504(JP,A)
【文献】特開2018-132267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/10
F26B 3/30
H05B 3/00
H05B 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面側に開放された長尺箱状のカバーと、
前記カバー内に保持される曲板状の反射板と、
前記反射板及び前記カバーの少なくとも一方に保持され、加熱用の光線を放射する長尺形状のヒータと、
を備えており、
前記カバーは、正面側へ開口する長尺板状のカバー本体と、前記カバー本体の長手方向両端側にそれぞれ配置される側板と、を有しており、
前記側板の少なくとも一方は、第1の側板と、前記第1の側板の内側で前記第1の側板と所定の間隔を隔てて設けられる第2の側板と、を備えており、
前記第2の側板は、前記カバー本体と前記反射板との隙間に通じる貫通孔を備え、
前記第1の側板の1つに、前記貫通孔を介して前記隙間に空気を取り込むファンが設けられ、
前記反射板は、前記光線を正面側へ反射すると共に、取り込まれた前記空気を噴出可能とする通気孔を備えている
ことを特徴とするヒータボックス。
【請求項2】
前記ヒータは、長手方向両端部にそれぞれリード線を有しており、
前記リード線の一方は、前記隙間を通って、他方の前記リード線に隣接する前記側板に達しており、
各前記リード線は、当該側板から前記カバーの外部に引き出される
ことを特徴とする請求項1に記載のヒータボックス。
【請求項3】
前記ファンは、ファンリード線を備えており、
各前記リード線は、前記ファンが設けられた前記側板から、前記ファンリード線と共に引き出される
ことを特徴とする請求項2に記載のヒータボックス。
【請求項4】
前記ヒータは、赤外線を放射する赤外線ヒータである
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のヒータボックス。
【請求項5】
前記赤外線ヒータは、炭素質発熱体により、赤外線を放射する
ことを特徴とする請求項4に記載のヒータボックス。
【請求項6】
請求項1乃至5 の何れかに記載のヒータボックスを含むヒータユニットと、
前記ヒータユニットの位置及び旋回姿勢の少なくとも何れかを変更させるヒータユニット移動機構と、を備えている
ことを特徴とする可動式乾燥システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱物の加熱に用いられるヒータボックス及びそのようなヒータボックスを含む可動式乾燥システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ヒータは、被加熱物の加熱を行う様々な分野で利用され、種々の目的のために多様な開発が行われている。例えば、自動車の修理工場等で用いられる塗装乾燥装置として、特開2009-139076号公報(特許文献1)に記載されたものが知られている。
この乾燥装置は、一面が開口し、内部が熱反射加工されたヒータハウジング内に所定長さのランプヒータが収容されたヒータユニットを複数有している。また、複数のヒータユニットは、回動自在な連結手段を介在させて鎖状に連結され、複数のヒータユニットの内の1つは、床面に固定される基台から垂直に延びる支柱に上下動可能に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-139076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車の修理工場等では、塗装から乾燥までを同じ作業場で行う事が多い。そのため、上述した乾燥装置の場合、塗料ミストがヒータ及び反射板に付着して、照射率の低下及び反射率の低下等の劣化を生じる事がある。また、近年、多くのヒータで、発熱体として直管型ヒータが広く用いられている。しかし、一般に、直管型ヒータは、長手方向両端部からリード線を取るものであり、ヒータの熱放射に起因するリード線の断線を避けるために、配線する際に大きく迂回させる必要があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、ヒータ及び反射板への汚れの付着が防止されるヒータボックスを提供することにある。
また、本発明の別の目的は、整理された配線が可能なヒータボックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、正面側に開放された長尺箱状のカバーと、カバー内に保持される曲板状の反射板と、反射板及びカバーの少なくとも一方に保持され、加熱用の光線を放射する長尺形状のヒータと、を備えており、カバーは、正面側へ開口する長尺板状のカバー本体と、カバー本体の長手方向両端側にそれぞれ配置される側板と、を有しており、側板の少なくとも一方は、第1の側板と、第1の側板の内側で第1の側板と所定の間隔を隔てて設けられる第2の側板と、を備えており、第2の側板は、カバー本体と反射板との隙間に通じる貫通孔を備え、第1の側板の1つに、貫通孔を介して隙間に空気を取り込むファンが設けられ、反射板は、光線を正面側へ反射すると共に、取り込まれた空気を噴出可能とする通気孔を備えていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、ヒータは、長手方向両端部にそれぞれリード線を有しており、リード線の一方は、隙間を通って、他方のリード線に隣接する側板に達しており、各リード線は、当該側板からカバーの外部に引き出されることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2の構成において、ファンは、ファンリード線を備えており、各リード線は、ファンが設けられた側板から、ファンリード線と共に引き出されることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかの構成において、ヒータは、赤外線を放射する赤外線ヒータであることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4の構成において、赤外線ヒータは、炭素質発熱体により、赤外線を放射することを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の何れかのヒータボックスを含むヒータユニットと、ヒータユニットの位置及び旋回姿勢の少なくとも何れかを変更させるヒータユニット移動機構と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、ファンによってカバーと反射板との隙間に取り込まれた空気が反射板の通気孔から噴出することで、エアスクリーンを形成し、ヒータ及び反射板への汚れの付着を防止できるため、照射率の低下及び反射率の低下等の劣化を抑制できる 。また、カバーと反射板との隙間への送風を維持しながら、ヒータとファンとの間に隙間が形成されるため、ヒータの熱のファンへの伝熱を低減し、ファンの故障を防止できる。
請求項2に記載の発明によれば、上記効果に加えて、カバーと反射板との隙間を通った一方のリード線が、ファンによって取り込まれた空気によって冷却されるため、リード線の断線を防止することができる。また、他方のリード線に隣接する側板から各リード線を取り出し可能になるため、例えば、リード線の配線に際し、ヒータボックスの周囲が、従来は、一方のリード線を大きく迂回させる必要があったようなものであっても、迂回の必要がなく、整理された配線ができる。
請求項3に記載の発明によれば、上記効果に加えて、各リード線を、ファンに接続されたファンリード線と共に整理して配線できる。
請求項4に記載の発明によれば、上記効果に加えて、被加熱物への伝熱効果が高まり、ヒータにより被加熱物を加熱する際の処理速度が向上される。
請求項5に記載の発明によれば、上記効果に加えて、電力供給開始と共にすぐに発熱し、また、供給される電力の変更に対する発熱量の応答性に優れるため、ヒータにより被加熱物を加熱する際の処理速度が向上される。
請求項6に記載の発明によれば、上記効果に加えて、ヒータの照射率や反射板の反射率の低下等の劣化を抑制した可動式乾燥システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明のヒータボックスを示す説明斜視図である。
図2】本発明のヒータボックスの分解斜視図である。
図3】(a)は本発明のヒータボックスの正面図、(b)は図3(a)のA-A線断面図である。
図4】本発明のヒータボックスを装填したヒータユニットを有する可動式乾燥システムの上面側の斜視図である。
図5】本発明のヒータボックスを装填したヒータユニットの斜視図である。
図6】ヒータユニットにおける各赤外線ヒータの配線の様子を太実線として示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明のヒータボックスを示す説明斜視図であり、図2は、本発明のヒータボックスの分解斜視図である。図3(a)は本発明のヒータボックスの正面図、図3(b)は図3(a)のA-A線断面図である。
【0010】
ヒータボックス1は、図1に示すように、カバー2と、カバー2の内部に保持された反射板3と、加熱用の光線である赤外線を放射するヒータとしての赤外線ヒータ4とを有する。なお、説明の便宜上、ヒータボックスの方向は、光線(赤外線)の放射面側を正面側とし、正面側と向かい合った場合の左側を左側面、右側を右側面とする。
カバー2は、左右方向に延び、正面側へ開いた開蓋箱状であり、図2に示すように、折り曲げ板状のカバー本体21,21と、カバー本体21,21の左右方向両端側に配置される各側板、即ち左側板22及び右側板23とで形成される。
【0011】
カバー本体21,21は、左右方向に延びる長尺の折り曲げ板状で、一方のカバー本体21は、カバー2の上面及び背面上部を形成し、他方のカバー本体21は、カバー2の下面及び背面下部を形成する。
左側板22は、第1の左側板22aと、第2の左側板22bとを備える。第1の左側板22aは、カバー本体21,21と共にカバー2の外面として機能する。第2の左側板22bは、第1の左側板22aの内側、即ち第1の左側板22aの赤外線ヒータ4側(右側面側)に、図3(b)に示すように、第1の左側板22aと所定の間隔Lを隔てて設けられる。第2の左側板22bには、その上下方向中央の後部に赤外線ヒータ4を支持するための支持孔5が形成され、支持孔5の上下それぞれの側であって、第2の左側板22bの両辺縁には、貫通孔6a,6aが形成されている。貫通孔6a,6aによって、第2の左側板22bの左右方向両面側が連通している。
また、右側板23は、第1の右側板23aと、第2の右側板23bとを備える。第1の右側板23aは、カバー本体21,21と共にカバー2の外面として機能する。第1の右側板23aには、ファン7が設けられている。ファン7は、吸気ファンである。第2の右側板23bは、第1の右側板23aの内側、即ち第1の右側板23aの赤外線ヒータ4側(左側面側)に、図3(b)に示すように、第1の右側板23aと所定の間隔Lを隔てて設けられる。第2の右側板23bは、その上下方向中央の後部に赤外線ヒータ4を支持するための支持孔5が形成され、支持孔5の上下それぞれの側であって、第2の右側板23bの両辺縁には、貫通孔6b,6bが形成されている。貫通孔6b,6bによって、第2の左側板22bの左右方向両面側が連通している。
間隔Lを隔てて第1の右側板23aと第2の右側板23bが設けられることで、赤外線ヒータ4とファン7との間に隙間が形成されるため、赤外線ヒータ4の熱のファン7への伝熱を低減し、ファン7の故障を防止できる。
また、第1の左側板22a及び第2の左側板22bと、第1の右側板23a及び第2の右側板23bとが、それぞれ間隔Lを隔てて設けられることで、赤外線ヒータ4の熱がカバー2の外面へ伝熱することを防止し、安全にヒータボックス1を使用することができる。
【0012】
反射板3は、左右方向に延びて、赤外線ヒータ4から放射される赤外線を反射する折り曲げ板状の反射板本体3aと、横反射板3b,3bとを含む。また、反射板本体3aは、反射板3の短手方向(上下方向)の断面が放物線状となるように形成される。横反射板3b,3bは、反射板本体3aの正面側、左右方向両端部に設けられる。赤外線ヒータ4は、反射板3における放物線の焦点に合致するように、左側板22及び右側板23に保持される。反射板3は、正面側へ開いた状態であり、照射開口部10を形成する。この時、図3(b)に示すように、カバー本体21,21との間に所定の隙間Vが形成される。隙間Vは、カバー2の上面、背面及び下面にわたっている。第2の左側板22bの各貫通孔6a,6a及び第2の右側板23bの各貫通孔6b、6bは、隙間Vに通じている。隙間Vが設けられることで、赤外線ヒータ4の熱がカバー2の外面へ伝熱することを防止し、安全にヒータボックス1を使用することができる。また、隙間Vが設けられることで、ファン7により取り込まれた空気が通過可能となる。
また、反射板3の上下両辺縁には、左右方向に沿って、複数の通気孔9,9,9・・・が形成されている。
【0013】
図2に示すように、カバー本体21,21、第1の左側板22a、第1の右側板23a、第2の左側板22b、第2の右側板23b、反射板本体3a及び横反射板3bは、正面側左右両端に外部連結板11a,11bを伴って、図示しないビス等の任意の固定手段によって固定されながら正面が開口した長尺略箱状に組み立てられる。
【0014】
赤外線ヒータ4は、赤外線を放射するヒータである。また、赤外線ヒータ4は、長尺形状に形成された石英ガラス管4aに炭素質発熱体4bを入れたものであり、炭素質発熱体4bは、炭素質板から形成される。赤外線ヒータ4は、その長手方向両端部に、内蔵された炭素質発熱体4bの左右方向両端部にそれぞれつながれた各リード線8a,8bを有している。リード線8a,8bは、400℃程度の熱にも耐え得る耐熱線である。
炭素質発熱体4bは、リード線8a,8bを通じて電力の供給を受けると、点灯して赤外線を放射し、電力量に応じた発熱量で発熱する。赤外線による加熱は、被加熱物の伝熱効果が高く、また、炭素質発熱体4bは、電力供給開始と共にすぐに発熱し、また、供給される電力の変更に対する発熱量の応答性に優れるため、被加熱物を加熱する際の処理速度を向上できる。
赤外線ヒータ4は、図3(b)に示すように、その左右方向両端部が第2の左側板22b及び第2の右側板23bに設けられた支持孔5,5に挿通保持されるように取り付けられる。
【0015】
ファン7の作動中は、空気が、貫通孔6,6を介して隙間Vへ移動し、通気孔9,9,9・・・から照射開口部10側へ噴出し続ける。これにより、ヒータボックス1の照射開口部10が陽圧となると共に、反射板3を覆うエアスクリーンが形成される。従って、赤外線ヒータ4及び反射板3への汚れの付着を防止できるため、照射率の低下及び反射率の低下等の劣化を抑制できる。
【0016】
また、左側板22側のリード線8aは、隙間Vを経て、リード線8bと共に右側板23側からカバー2の外部へ引き出される。ヒータボックス1による被加熱物の加熱時には、赤外線ヒータ4の熱放射により反射板3が高温となるが、ファン7によって隙間Vに送られた空気によって反射板3とリード線8aとが冷却されるため、隙間Vに配置されたリード線8aは断線するほど高温に曝されることがない。このため、右側板23からリード線8a,8bの両方をカバー2の外部へ引き出し可能になる。従って、ヒータボックスの周囲が、従来は、一方のリード線を大きく迂回させる必要があったようなものであっても、迂回の必要がなく、整理された配線ができる。
また、ファン7が取り付けられた右側板23側からリード線8a,8bを取り出したことで、リード線8a,8bをファン7に接続されたファンリード線12と共に整理して配線できる。
【0017】
上記形態のヒータボックス1は、正面側に開放された長尺箱状のカバー2と、カバー2内に保持される折り曲げ板状の反射板本体3aと、左側板22及び右側板23に保持され、加熱用の赤外線を放射する長尺形状の赤外線ヒータ4と、を備えており、カバー2は、正面側へ開口する長尺板状のカバー本体21,21と、カバー本体21,21の長手方向両端側にそれぞれ配置される左側板22及び右側板23と、を有しており、右側板23に、カバー本体21,21と反射板本体3aとの隙間Vに空気を取り込むファン7が設けられ、反射板本体3aは、赤外線をカバー2の照射開口部10へ反射すると共に、取り込んだ空気を噴出可能とする通気孔9,9,9・・・を備えている。
このようにして構成されるヒータボックス1によれば、ファン7によって隙間Vに取り込まれた空気が反射板本体3aの通気孔9,9,9・・・を介して反射板3の照射開口部10へ噴出することで、エアスクリーンを形成し、赤外線ヒータ4及び反射板3への汚れの付着を防止できるため、照射率の低下及び反射率の低下等の劣化を抑制できる。
【0018】
また、赤外線ヒータ4は、長手方向両端部にそれぞれリード線8a,8bを有しており、リード線8aは、隙間Vを通って、リード線8bに隣接する右側板23に達しており、各リード線8a,8bは、右側板23からカバー2の外部に引き出される。
よって、隙間Vに配置されたリード線8aが、ファン7によって取り込まれた空気によって冷却されるため、リード線8aの断線を防止することができる。このため、リード線8bに隣接する右側板23から各リード線8a,8bを取り出し可能になるため、例えば、リード線8a,8bの配線に際し、ヒータボックス1の周囲が、従来は、リード線8aを大きく迂回させる必要があったようなものであっても、迂回の必要がなく、整理された配線ができる。
【0019】
また、ファン7は、ファンリード線12を備えており、各リード線8a,8bは、ファン7が設けられた右側板23から、ファンリード線12と共に引き出される。
よって、各リード線8a,8bを、ファン7に接続されたファンリード線12と共に整理して配線できる。
【0020】
また、左側板22及び右側板23は、第1の左側板22a及び第1の右側板23aと、第1の左側板22a及び第1の右側板23aの内側で第1の左側板22a及び第1の右側板23aと所定の間隔Lを隔てて設けられる第2の左側板22b及び第2の右側板23bと、を備えており、第2の左側板22b及び第2の右側板23bは、隙間Vに通じる貫通孔6を備えている。
よって、赤外線ヒータ4とファン7との間に空間が形成されるため、赤外線ヒータ4の熱のファン7への伝熱を低減し、ファン7の故障を防止できる。また、赤外線ヒータ4の熱がカバー2の外面へ伝熱することを防止し、安全にヒータボックス1を使用することができる。
【0021】
また、ヒータは、赤外線を放射する赤外線ヒータ4である。
よって、被加熱物への伝熱効果が高まり、赤外線ヒータ4により被加熱物を加熱する際の処理速度が向上される。
【0022】
また、赤外線ヒータ4は、炭素質発熱体4bにより、赤外線を放射する。
よって、電力供給開始と共にすぐに発熱し、また、供給される電力の変更に対する発熱量の応答性に優れるため、赤外線ヒータ4により被加熱物を加熱する際の処理速度が向上される。
【0023】
以上は、本発明を図示例に基づいて説明したものであり、その技術範囲はこれに限定されるものではない。例えば、ヒータボックスは、複数の赤外線ヒータを有していても良い。
また、赤外線ヒータは、ニクロム線及びタングステン線の少なくとも一方(電熱線)を有しており、電熱線に対する電力の印加により赤外線が放射されるものであっても良いし、赤外線以外の加熱用光線あるいは加熱用媒体(温風等)を発するヒータ等(乾燥用光線等発出体)とされても良い。また、赤外線ヒータと赤外線以外のヒータ等とが併用されても良い。
また、赤外線ヒータは、各種の部材又は部分の材質が変更されても良く、石英ガラス管が耐熱プラスチック製とされる等しても良い。
また、カバーは、カバー本体と側板が別体でも一体でも良く、例えば、一面が開口した箱状であっても良い。
また、カバー本体は、折り曲げ板状でなくても良く、滑らかに曲がる屈曲版でも良い。加えて、カバー本体は、一枚のみで形成されたものでもよい。
また、反射板は、折り曲げ板状でなくても良く、滑らかに曲がる屈曲板でも良い。
また、側板は、第1の側板と第2の側板とを備えることが望ましいが、その限りではなく、第1の側板のみであっても良い。
また、第2の側板に設けられる貫通孔の数、形成位置及び形状は、ファンによって取り込まれた空気によって反射板及びリード線を所望の温度まで冷却可能であれば、任意に設定できる。
また、反射板に設けられた通気孔の数、形成位置及び形状は、照射開口部10を陽圧にでき、エアスクリーンが形成可能であれば良く、任意に設定できる。
また、ファンは、空気を隙間Vへ移動させられるものであれば軸流ファンでも、遠心ファンでも良く、種類は限定されない。
また、リード線を引き出す側板は、ファンを設けていない側としても良い。
さらに、外部連結板11a,11b及び横反射板3b,3bの少なくとも何れかを設けない構成としても良い。
【0024】
続いて、本発明の適用例として、ヒータボックス1を装填した可動式乾燥システム100について説明する。
図4は、本発明のヒータボックス1を装填したヒータユニット110を有する可動式乾燥システム100の上面側の斜視図である。図5は、本発明のヒータボックス1を装填したヒータユニット110の斜視図である。図6は、ヒータユニット110における各赤外線ヒータ4の配線の様子を太実線として示す模式図である。
可動式乾燥システム100は、車両に対し施工された自動車補修塗装や車両のパーツの塗装を乾燥するものであって、レールユニットRと、左乾燥ユニットLDと、右乾燥ユニットRDと、制御装置Cとを有している。
なお、以下における説明の便宜上、左乾燥ユニットLD及び右乾燥ユニットRDの方向は、乾燥用光線(赤外線)の放射面側を正面側とし、その裏側を背面側とし、正面側に向かい合った場合の左側の面を左側面とし、正面側に向かい合った場合の右側の面を右側面とすることがある。これらの方向は、説明の便宜上定められたものであり、各種の部材及び部分の移動並びに設置の態様等により、変化することがある。
【0025】
レールユニットRは、3本の幅方向レール101と、2本の前後方向レール102と、2個の第1のサーボモータM1と、2個の第2のサーボモータM2とを有している。
各幅方向レール101は、整備場(塗装ブース)の天井に固定されている。各幅方向レール101は、左右方向に延びて、前後に並べられている。
【0026】
各幅方向レール101の下側に、前後方向レール102がそれぞれ設けられる。各前後方向レール102は、幅方向レール101の直交方向に沿っている。各前後方向レール102の前端部、後端部及び中央部は、前後及び中央の幅方向レール101に、移動可能に支持され、各幅方向レール101を走行可能である。各前後方向レール102は、2本のレール部103を有しており、1つの前後方向レール102における各レール部103は、互いに平行である。
【0027】
各前後方向レール102は、対応する第1のサーボモータM1により自動走行される。各第1のサーボモータM1は、中央の幅方向レール101に設けられる。各第1のサーボモータM1は、制御装置Cに接続されており、制御装置Cにより制御される。
各第2のサーボモータM2は、対応する前後方向レール102に設けられる。各第2のサーボモータM2は、制御装置Cに接続されており、制御装置Cにより制御される。
なお、第1のサーボモータM1及び第2のサーボモータM2の少なくとも一方は、他の駆動装置に代えられても良い。
また、各前後方向レール102が天井に固定され、各幅方向レール101が各前後方向レール102に前後移動可能に設けられても良い。
【0028】
左乾燥ユニットLDは、右乾燥ユニットRDと、全体的な配置が左右対称であることを除き、同様に成る。以下、主に左乾燥ユニットLDが説明される。右乾燥ユニットRDにおける左乾燥ユニットLDと同様に成る部材及び部分については、左乾燥ユニットLDと同じ符号が付され、説明が適宜省略される。なお、乾燥ユニットの数は、1であっても良いし、3以上であっても良い。例えば、乾燥ユニットは、左右に2台ずつ、合計4台設けられても良い。
左乾燥ユニットLDは、ヒータユニット110と、ヒータユニット移動部160とを有する。
【0029】
ヒータユニット110は、ベースモジュール111と、アンダーモジュール112と、ミドルモジュール113と、トップモジュール114とを有する。
【0030】
ベースモジュール111は、全体的には板状であり、正面から背面への方向に垂直となっており、ベースモジュールフレーム120と、ベース上アーム121と、ベース下アーム122と、4個の配線ボックスBと、6台のヒータボックス1とを有している。
ベースモジュールフレーム120は、6つの穴Hを有している。各穴Hは、正面から背面側へ窪んでおり、上下2行、左右3列の格子状に配置されている。ベース上アーム121は、ベースモジュールフレーム120上部の左右端部から、上方へ円弧状に延びるように設けられている。ベース上アーム121には、ピンPが進入可能な1つの孔が設けられる。ベース下アーム122は、ベースモジュールフレーム120下部の左右端部において、ベース上アーム121と同様に設けられる。各配線ボックスBは、ベースモジュールフレーム120の背面に配置されている。各ヒータボックス1は、正面側が露出した状態で、ベースモジュールフレーム120の穴Hに装填され、外部連結板11a,11bを介して固定される。各ヒータボックス1のリード線8a,8bは、何れかの配線ボックスBへ配線される。
【0031】
このように複数のヒータボックス1を集合させて取り付ける場合、例えば、各ヒータボックス1が従来型のようにその両端側からリード線8a,8bをヒータボックス1の外部へ引き出す形態であった場合、いずれかの配線ボックスBとの配線に際し、大きくベースモジュールフレーム120を迂回する形で行う必要がある上、特に上行と下行の間では複数のヒータボックス1に接続された複数のリード線が混在することになるため、それらの配線が煩雑なものとなる可能性がある。一方、本発明のヒータボックス1は、ファン7によるリード線8a,8bの冷却効果を利用し、右側板23側から一対のリード線8a,8bの両方を取り出し可能としているため、ベースモジュールフレーム120の背面を迂回する必要が無く、図6に示すように、各ヒータボックス1と各配線ボックスBとの間で、整理された配線ができる。
なお、図6に示すヒータユニット110は、模式的に示したものであり、説明のために太実線で表したリード線8a,8bをはじめ、実際の構造及び配置とは異なる場合がある。
【0032】
アンダーモジュール112は、ベースモジュール111の下側に蝶番を介して、ベースモジュール111に対して幅方向の軸周りで回転可能に設けられる。
アンダーモジュール112は、アンダーモジュールフレーム130と、アンダー上アーム131と、ヒータボックス1’とを有している。ヒータボックス1’は、長手方向の長さを除いて、ヒータボックス1と同様に成る。ヒータボックス1’は、アンダーモジュールフレーム130の穴Hに嵌め込まれている。
アンダーモジュールフレーム130は、穴Hが1つのみで横向きとなり一層長くなっており、外形が穴Hに合わせて小さくなったことを除き、ベースモジュールフレーム120と同様に成る。
アンダー上アーム131は、アンダーモジュールフレーム130上部の左右端部から、上方へ円弧状に延びるように設けられて、ベース下アーム122と向かい合い、互いに接触している。ベース下アーム122には、その中心線に沿って並ぶ孔の集合である孔群190が設けられる。孔群190における各孔の何れかには、対応するベース下アーム122に設けられた1つの孔が重なり、その重なった2つの孔には、ピンPが進入可能である。ピンPが進入する孔群190の孔を変えることにより、アンダー上アーム131は、ベース下アーム122との距離を変更した状態で、そのベース下アーム122に対し固定される。従って、アンダーモジュール112のベースモジュール111に対する左右方向の軸周りの傾きは、ベース下アーム122及びアンダー上アーム131での固定により、変更可能である。
【0033】
ミドルモジュール113は、ベースモジュール111の上側に蝶番を介して、ベースモジュール111に対して幅方向の軸周りで回転可能に設けられる。
ミドルモジュール113は、ミドルモジュールフレーム140と、ミドル上アーム141と、ミドル下アーム142と、2個の配線ボックスBと、3台のヒータボックス1とを有している。
ミドルモジュールフレーム140は、穴Hが1行に配置された3つのみであり、又外形が3つの穴Hに合わせて小さくなったことを除き、ベースモジュールフレーム120と同様に成る。
ミドル上アーム141は、ベース上アーム121と、ピンPの孔も含め同様に成る。ミドル下アーム142は、アンダー上アーム131と、孔群190も含め同様に成る。ミドル下アーム142のベース上アーム121に対する関係は、アンダー上アーム131のベース下アーム122に対する関係と同様である。よって、ミドルモジュール113のベースモジュール111に対する傾きは、変更可能である。
各配線ボックスBは、設置数を除き、ベースモジュール111の配線ボックスBと同様に成る。各配線ボックスBは、ミドルモジュールフレーム140の背面における下部の左右に配置されている。
各ヒータボックス1は、穴Hに入れられている。
【0034】
トップモジュール114は、ミドルモジュール113の上側に蝶番を介して、ミドルモジュール113に対して幅方向の軸周りで回転可能に設けられる。
トップモジュール114は、トップモジュールフレーム150と、トップ下アーム151と、2個の配線ボックスBと、3台のヒータボックス1’とを有している。
トップモジュールフレーム150は、各穴Hが長くなったことを除き、ミドルモジュールフレーム140と同様に成る。
トップ下アーム151は、アンダー上アーム131と、孔群190も含め同様に成る。トップ下アーム151のミドル上アーム141に対する関係は、アンダー上アーム131のベース下アーム122に対する関係と同様である。よって、トップモジュール114のミドルモジュール113に対する傾きは、変更可能である。
各配線ボックスBは、ミドルモジュール113の配線ボックスBと同様に成る。
各ヒータボックス1’は、穴Hに入れられている。
【0035】
なお、ヒータユニットにおけるモジュールの数は、3以下(1を含む)であっても良いし、5以上であっても良い。例えば、アンダーモジュールが省略されても良い。
また、各モジュールにおけるヒータボックスの種類、数及び配置の少なくとも何れかは、上述のものから変更されても良い。例えば、アンダーモジュールに複数のヒータボックスが設けられても良い。また、トップモジュールにヒータボックスが用いられても良い。
また、各穴には、ヒータボックスとは異なる構成のヒータボックスを装填しても良い。
さらに、ベースモジュールの他のモジュールに対する傾きが変更可能であっても良い。
またさらに、各モジュールの少なくとも何れかの傾き姿勢の変化は、各アームを用いて手動で行われても、各モジュール間毎の傾動モータ等により自動で行われても良い。
加えて、ヒータボックスの一部又は全部において、赤外線ヒータが複数設けられても良い。この場合、各赤外線ヒータは、直列に配置されても良いし、並列に配置されても良いし、直列且つ並列に配置されても良いし、千鳥状に配置されても良い。この場合、制御装置Cは、一部の赤外線ヒータ毎に点灯を制御しても良い。
【0036】
ヒータユニット移動部160は、ヒータユニット110の移動(姿勢変化を含む)を行う。ヒータユニット移動部160は、レールユニットRとヒータユニット110の間に介装され、ヒータユニット110は、ヒータユニット移動部160を介して、レールユニットRに吊り下げられる。
レールユニットR及びヒータユニット移動部160により、ヒータユニット移動機構が構成され、ヒータユニット移動機構は、ヒータユニット110を移動させる。即ち、ヒータユニット移動機構は、ヒータユニット110の位置及び旋回姿勢を変更させる。
ヒータユニット移動部160は、レール接続部(図示せず)と、旋回装置170と、単軸駆動装置180とを有する。
【0037】
レール接続部は、旋回装置170、単軸駆動装置180、及びヒータユニット110を吊り下げた状態で、レール部103を走行可能である。レール接続部は、制御装置Cで制御された第2のサーボモータM2により、自動走行される。
【0038】
旋回装置170は、レール接続部の下部に固定され、ヒータユニット110を上下方向の旋回軸周りに旋回させる。旋回装置170による旋回は、制御装置Cにより制御される。
【0039】
単軸駆動装置180は、単軸ロボットであり、旋回装置170の下側に配置される。
単軸駆動装置180は、軸体181と、走行部182とを有し、軸体181の上端部は、旋回装置170に固定されている。走行部182は、軸体181に貫かれる一方、ベースモジュール111の背面に固定されている。走行部182は、軸体181に対して、上下移動可能であり、任意の位置で停止可能である。走行部182は、制御装置Cと接続され、走行部182の上下移動、即ちヒータユニット110の上下移動は、制御装置Cにより制御される。
【0040】
上述のような可動式乾燥システム100は、ヒータボックス1,1’を含むヒータユニット110と、ヒータユニット110の位置及び旋回姿勢を変更させるヒータユニット移動機構とを備える。
よって、複雑な外形を有する車両等の乾燥対象であっても、様々な移動により対応することで、適切に乾燥可能である。
また、可動式乾燥システム100が固定された整備場において、車両等の被塗装物の塗装を行う場合のような、塗装乾燥を行っていない時間にも、各ヒータボックス1,1’のファン7を作動させておくことで、各ヒータボックス1,1’の照射開口部10が陽圧になると共にエアスクリーンが形成されるため、飛散した塗料ミストをはじめとした汚れが赤外線ヒータ4及び反射板3に付着することを防止でき、照射率の低下及び反射率の低下等の劣化を抑制できる。
【符号の説明】
【0041】
1,1’・・ヒータボックス、2・・カバー、21・・カバー本体、22,23・・側板、22a,23a・・第1の側板、22b,23b・・第2の側板、3・・反射板、4・・赤外線ヒータ、4b・・炭素質発熱体、6a,6b・・貫通孔、7・・ファン、8a,8b・・リード線、9・・通気孔、V・・隙間、L・・間隔、100・・可動式乾燥システム、110・・ヒータユニット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6