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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】エビ管用断熱材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/22 20060101AFI20220905BHJP
   F16L 43/00 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
F16L59/22
F16L43/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021027098
(22)【出願日】2021-02-24
(65)【公開番号】P2022128724
(43)【公開日】2022-09-05
【審査請求日】2021-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】516202604
【氏名又は名称】株式会社冨士パーライト
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【弁理士】
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 憲正
(72)【発明者】
【氏名】吉村 光博
(72)【発明者】
【氏名】嵐 香信
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-017327(JP,A)
【文献】特開昭51-038120(JP,A)
【文献】特表2008-542651(JP,A)
【文献】特開昭52-109901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/22
F16L 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが円筒形状を有する3つの直管を組み合わせて構成されたエビ管であって、一の直管と他の直管との接続部に屈曲した節が形成されたエビ管を被覆す エビ管用断熱材の製造方法であって、
同一の湾曲形状かつ同一の寸法を有する複数の断熱板を準備する工程と、
一の前記断熱板の内周の弧の長さLaと、エビ管の各部の長さとから、前記複数の断熱板を、前記エビ管の周方向に沿って並べた際の、エビ管の外周における余り長さLbを求める算出工程と、
1つの前記断熱板について、内周の弧の長さが前記余り長さLbとなるように、前記断熱板の長手方向に沿って切断する第1切断工程と、
を備え
前記算出工程では、さらに、上面視において一辺が他辺に対して傾斜した四角形状を有する複数の傾斜断熱材片について、対応する直管の中心軸に対してどれだけ傾斜しているかを表す傾斜角度θ1と、最長辺の長さL1と、をそれぞれ算出し、
さらに、前記複数の断熱板のそれぞれについて、工程(a),(b),(c)を実行することで前記複数の傾斜断熱材片を得る第2切断工程を備え、
前記第2切断工程では、
(a)前記断熱板を前記傾斜角度θ1に傾けた状態とし、
(b)傾けた前記断熱板の下面を接地させた状態で、一方の下端と他方の下端とを結ぶ線分が、水平線に対して、エビ管の節の分割角度AL1を成すように、前記他方の下端をずらして固定し、
(c)固定された前記断熱板を、前記一方の下端に対応する上端を基準として、前記最長辺の長さL1だけ離れた場所から垂直に切断する、エビ管用断熱材の製造方法。
【請求項2】
請求項に記載のエビ管用断熱材の製造方法であって、
前記エビ管は、前記エビ管のうち一方の端部に位置する第1の直管と、他方の端部に位置する第2の直管と、前記第1の直管と前記第2の直管とを結ぶ第3の直管と、を有しており、
前記算出工程では、前記エビ管の各部の長さとして、
前記第1の直管の外径と、
前記第1の直管と前記第2の直管とが成す角度と、
前記第1の直管と前記第2の直管との間の節の数と、
前記第1の直管の中心軸と、前記第2の直管の端面との間の長さと、
を用いる、エビ管用断熱材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エビ管用断熱材、及びエビ管用断熱材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物やプラントなどに設置される配管形状の一つとしてエビ管がある。エビ管は、円筒状の直管を複数組み合わせて構成されており、直管と直管との接続部に、屈曲した節が形成されている(例えば、特許文献1参照)。このようなエビ管は、内部を流通する流体の保温又は保冷効果を向上させるため、断熱材で覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭51-38120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エビ管に対する断熱材としては、繊維材料(ガラス繊維、ロックウール等)や、無機多孔質材料(パーライト、ケイ酸カルシウム等)を用いることができる。繊維材料を用いた場合、現場での施工が容易である反面、内部に雨水等の浸入を受けやすく、耐久性や、断熱性に劣るという課題がある。無機多孔質材料を用いた場合、雨水等に強く、耐久性及び断熱性を向上できる反面、施工コストが高いという課題があった。具体的には、無機多孔質材料を用いた場合、現場で無機多孔質材料により形成された断熱板を、エビ管の形状に合わせて切断する必要が生じるため、作業に熟練工を要すると共に、手間と時間を要し、結果として施工コストが高くなる。
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、エビ管用断熱材において、耐久性及び断熱性を向上させ、かつ、施工コストを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現できる。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、エビ管用断熱材が提供される。このエビ管用断熱材は、エビ管のうち一方の端部に位置する第1の直管を覆う複数の第1断熱材片と、前記エビ管のうち他方の端部に位置する第2の直管を覆う複数の第2断熱材片と、前記エビ管のうち、前記第1の直管と前記第2の直管とを結ぶ第3の直管を覆う複数の第3断熱材片と、を備え、前記複数の第1断熱材片は、前記第1の直管の周方向に3つ以上に分割されており、周方向における1つの前記第1断熱材片は、内周の弧の長さが他の前記第1断熱材片よりも短く、周方向における残余の前記第1断熱材片は、内周の弧の長さが互いに等しく、前記複数の第2断熱材片は、前記第2の直管の周方向に3つ以上に分割されており、周方向における1つの前記第2断熱材片は、内周の弧の長さが他の前記第2断熱材片よりも短く、周方向における残余の前記第2断熱材片は、内周の弧の長さが互いに等しく、前記複数の第3断熱材片は、前記第3の直管の周方向に3つ以上に分割されており、周方向における1つの前記第3断熱材片は、内周の弧の長さが他の前記第3断熱材片よりも短く、周方向における残余の前記第3断熱材片は、内周の弧の長さが互いに等しい。
【0008】
この構成によれば、エビ管用断熱材は、両端に配置された第1,2の直管を覆う複数の第1,2断熱材片と、第1,2の直管を結ぶ第3の直管を覆う第3断熱材片とを備えるため、複数の第1~3断熱材片を用いて、「節を挟んで直管が接続されている」というエビ管の形状に沿ったエビ管用断熱材を提供できる。また、複数の第1~3断熱材片は、それぞれ、周方向に3つ以上に分割されており、周方向における1つの断熱材片は、内周の弧の長さが他の断熱材片よりも短く、周方向における残余の断熱材片は、内周の弧の長さが互いに等しい。このため、無機多孔質材料により形成された湾曲形状の断熱板の既製品を利用して、残余の断熱材片とし、断熱板の既製品を切断して1つの断熱材片(内周の弧の長さが他の断熱材片よりも短い断熱材片)を形成できる。このようにして、複数の第1~3断熱材片に予め分割されたエビ管用断熱材を用いることで、現場での施工に熟練工を必要とせず、かつ、施工に要する手間と時間を削減できる。これらの結果、本構成によれば、エビ管用断熱材において、耐久性及び断熱性を向上させ、かつ、施工コストを低減することができる。
【0009】
(2)上記形態のエビ管用断熱材において、前記複数の第1断熱材片と、前記複数の第2断熱材片と、前記複数の第3断熱材片とは、それぞれ、上面視において長方形状を有する複数の断熱材片と、上面視において一辺が他辺に対して傾斜した四角形状を有する複数の傾斜断熱材片と、を含み、前記エビ管の外表面において、前記第1断熱材片の前記複数の断熱材片は、前記第1の直管の端部側に配置され、前記第1断熱材片の前記複数の傾斜断熱材片は、前記第3断熱材片の前記複数の傾斜断熱材片と隣接して配置され、前記第2断熱材片の前記複数の断熱材片は、前記第2の直管の端部側に配置され、前記第2断熱材片の前記複数の傾斜断熱材片は、前記第3断熱材片の前記複数の傾斜断熱材片と隣接して配置されていてもよい。
この構成によれば、複数の第1~3断熱材片はそれぞれ複数の傾斜断熱材片を含み、第1断熱材片の複数の傾斜断熱材片は、第3断熱材片の複数の傾斜断熱材片と隣接して配置され、第2断熱材片の複数の傾斜断熱材片は、第3断熱材片の複数の傾斜断熱材片と隣接して配置されている。このように、第1,3の直管の接続部分、及び、第2,3の直管の接続部分(換言すれば、エビ管の節に相当する部分)に対して、複数の傾斜断熱材片を配置することで、直管の接続部分(エビ管の節の部分)を、隙間なく断熱材で覆うことができる。この結果、エビ管用断熱材の断熱性を向上させると共に、施工後の美観を向上させることができる。
【0010】
(3)上記形態のエビ管用断熱材において、前記複数の第1断熱材片と、前記複数の第2断熱材片と、前記複数の第3断熱材片とは、それぞれ、周方向における分割数が等しくてもよい。
この構成によれば、複数の第1~3断熱材片はそれぞれ、周方向における分割数が等しい。このため、複数の第1~3断熱材片の分割数が異なる場合と比較して、断熱材片の作成工程を単純化できると共に、エビ管用断熱材の施工後の美観を向上させることができる。
【0011】
(4)本発明の一形態によれば、エビ管用断熱材の製造方法が提供される。このエビ管用断熱材の製造方法は、同一の湾曲形状かつ同一の寸法を有する複数の断熱板を準備する工程と、一の前記断熱板の内周の弧の長さLaと、エビ管の各部の長さとから、前記複数の断熱板を、前記エビ管の周方向に沿って並べた際の、エビ管の外周における余り長さLbを求める算出工程と、1つの前記断熱板について、内周の弧の長さが前記余り長さLbとなるように、前記断熱板の長手方向に沿って切断する第1切断工程と、を備える。
この構成によれば、算出工程において、複数の断熱板をエビ管の周方向に沿って並べた際のエビ管の外周における余り長さLbを求め、第1切断工程において、1つの断熱板について内周の弧の長さが余り長さLbとなるように、断熱板の長手方向に沿って切断する。そうすれば、簡単に、1つの断熱材片(内周の弧の長さが他の断熱材片よりも短い断熱材片)を形成できる。また、残余の断熱材片としては、湾曲形状の断熱板の既製品をそのまま用いることができる。この結果、本構成によれば、耐久性及び断熱性を向上させ、かつ、施工コストを低減することが可能なエビ管用断熱材を簡単に得ることができる。
【0012】
(5)上記形態のエビ管用断熱材の製造方法において、前記算出工程では、さらに、上面視において一辺が他辺に対して傾斜した四角形状を有する複数の傾斜断熱材片について、対応する直管の中心軸に対してどれだけ傾斜しているかを表す傾斜角度θ1と、最長辺の長さL1と、をそれぞれ算出し、さらに、前記複数の断熱板のそれぞれについて、工程(a),(b),(c)を実行することで前記複数の傾斜断熱材片を得る第2切断工程を備えてもよい。前記第2切断工程では、(a)前記断熱板を前記傾斜角度θ1に傾けた状態とし、(b)傾けた前記断熱板の下面を接地させた状態で、一方の下端と他方の下端とを結ぶ線分が、水平線に対して、エビ管の節の分割角度AL1を成すように、前記他方の下端をずらして固定し、(c)固定された前記断熱板を、前記一方の下端に対応する上端を基準として、前記最長辺の長さL1だけ離れた場所から垂直に切断してもよい。
この構成によれば、算出工程ではさらに、複数の傾斜断熱材片について、傾斜角度θ1と、最長辺の長さL1とをそれぞれ算出し、これらの算出値を用いて第2切断工程を実行することにより、簡単に、上面視において一辺が他辺に対して傾斜した四角形状を有する複数の傾斜断熱材片であって、エビ管の節に沿った形状を有する複数の傾斜断熱材片を形成できる。
【0013】
(6)上記形態のエビ管用断熱材の製造方法において、前記エビ管は、前記エビ管のうち一方の端部に位置する第1の直管と、他方の端部に位置する第2の直管と、前記第1の直管と前記第2の直管とを結ぶ第3の直管と、を有しており、前記算出工程では、前記エビ管の各部の長さとして、前記第1の直管の外径と、前記第1の直管と前記第2の直管とが成す角度と、前記第1の直管と前記第2の直管との間の節の数と、前記第1の直管の中心軸と、前記第2の直管の端面との間の長さと、を用いてもよい。
この構成によれば、算出工程において、エビ管の形状や大きさに即した、余り長さLbや、傾斜角度θ1及び最長辺の長さL1を算出できる。
【0014】
本発明は、断熱部材以外の種々の形態で実現できる。本発明は、例えば、上記形態のエビ管用断熱材を備える配管、上記形態のエビ管用断熱材を構成する部材、エビ管用断熱材の製造方法、その製造方法を実施する製造装置、エビ管用断熱材の施工方法などの形態で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態のエビ管用断熱材が取り付けられるエビ管の断面図である。
図2】エビ管用断熱材の斜視図である。
図3】エビ管用断熱材の上面図である。
図4】A-A線(図2)におけるエビ管用断熱材の横断面図である。
図5】エビ管用断熱材を構成する断熱材片を並べた状態で上面視から見た様子を表す図である。
図6図5の一部を拡大した図である。
図7】エビ管用断熱材の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図8】断熱板の一例と、第1切断工程の様子とを示す説明図である。
図9】第2切断工程の様子を示す説明図である。
図10】第2実施形態のエビ管用断熱材の斜視図である。
図11】第3実施形態のエビ管用断熱材の斜視図である。
図12】第4実施形態のエビ管用断熱材の斜視図である。
図13】第5実施形態のエビ管用断熱材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.第1実施形態:
図1は、本実施形態のエビ管用断熱材1が取り付けられるエビ管9の断面図である。図1では、エビ管9の中心に通る軸を軸線O(一点鎖線)で表す。また、図1には、相互に直交するXYZ軸を図示する。X軸は、エビ管9の幅方向に対応し、Y軸は、エビ管9の高さ方向に対応し、Z軸は、エビ管9の奥行き方向に対応する。図1に示すXYZ軸と、図2以降に示すXYZ軸とは、それぞれ対応している。エビ管9は、建築物やプラントなどに設置される配管である。エビ管9は、第1の直管91と、第2の直管92と、第3の直管93とを有している。
【0017】
本実施形態の例では、エビ管9は、3つの円筒形状の直管(第1の直管91、第2の直管92、第3の直管93)を組み合わせて構成されている。第1の直管91は、一方の端部に配置された、円筒形状の直管である。第2の直管92は、他方の端部に配置された、円筒形状の直管である。第3の直管93は、第1の直管91と第2の直管92との間に配置されており、第1の直管91と第2の直管92とを結ぶ、円筒形状の直管である。第1の直管91のうち、第3の直管93に面する側は、斜めに切断されている。第2の直管92のうち、第3の直管93に面する側は、斜めに切断されている。第3の直管93の両端は、それぞれ、斜めに切断されている。
【0018】
第1の直管91の斜めに切断された端部(周縁部)と、第3の直管93の一方の端部(周縁部)とは、溶接されている。同様に、第2の直管92の斜めに切断された端部(周縁部)と、第3の直管93の他方の端部(周縁部)とは、溶接されている。この結果、第1の直管91と第3の直管93との接続部には、屈曲した節91aが形成されている。また、第2の直管92と第3の直管93との接続部には、屈曲した節92aが形成されている。本実施形態では、節91aの角度θ91(すなわち、第1の直管91の中心軸に対して第3の直管93の中心軸が成す鋭角の角度)は、45°である。同様に、節92aの角度θ92(すなわち、第2の直管92の中心軸に対して、第3の直管93の中心軸が成す鋭角の角度)は、45°である。
【0019】
本実施形態において、第1の直管91、第2の直管92、及び第3の直管93の外径はいずれも、Dである。Dの値は任意に決定できる。また、第1の直管91と第2の直管92とが成す角度ALは、90°である。角度ALは、節91aの角度θ91+節92aの角度θ92と等しい。エビ管9の曲げ数Nは、2である。曲げ数Nは、エビ管9が有する節の数と等しい。第1の直管91の中心軸から、第2の直管92の端面(第3の直管93と面していない側の端面)までの長さは、Rである。Rの値は任意に決定できる。第1の直管91のあご側(短辺側、-Y軸側)について、第1の直管91の端面(第3の直管93と面していない側の端面)から節91aまでの長さはL2であり、第3の直管93の一端から他端までの長さはL4である。また、第1の直管91の背中側(長辺側、+Y軸側)について、第1の直管91の端面(第3の直管93と面していない側の端面)から節91aまでの長さはL3であり、第3の直管93の一端から他端までの長さはL5である。なお、第1の直管91、第2の直管92、及び第3の直管93は、一体成型されていてもよい。
【0020】
図2は、エビ管用断熱材1の斜視図である。図3は、エビ管用断熱材1の上面図である。図4は、A-A線(図2)におけるエビ管用断熱材1の横断面図である。図5は、エビ管用断熱材1を構成する断熱材片を並べた状態で上面視から見た様子を表す図である。図6は、図5の一部を拡大した図である。なお、図4下段の破線枠内には、1つの傾斜断熱材片11dの拡大図を示す。また、図5では、図示の便宜上、小断熱材片11g,14g,15g,18gと、傾斜小断熱材片12g,13g,16g,17gとを、図の両端部に分割して図示している。しかし、図4に示すように、これらはそれぞれ1つの断熱材片である。
【0021】
エビ管用断熱材1は、エビ管9の内部(内管9L)を流通する流体の保温又は保冷効果を向上するための断熱材である。エビ管用断熱材1は、図2及び図4に示すように、エビ管9の外表面を覆うようにして配置される。エビ管用断熱材1は、第1の直管91を覆う第1断熱材片11,12と、第2の直管92を覆う第2断熱材片17,18と、第3の直管93を覆う第3断熱材片13,14,15,16とを備えている。
【0022】
第1断熱材片11,12は、図2図4、及び図5に示すように、第1の直管91の周方向に13個(a~mの添え字を付して表す)に分割されており、かつ、第1の直管91の延伸方向に2個(11,12)に分割されている。第1断熱材片11,12は、図5に示すように、複数の断熱材片11a~11mと、複数の傾斜断熱材片12a~12mと、を含んでいる。断熱材片11a~11mは、図5に示す上面視において、長方形状を有する湾曲した断熱材片である。傾斜断熱材片12a~12mは、図5に示す上面視において、一辺(例えば、図6の辺12dd)が他辺に対して傾斜した四角形状を有する湾曲した断熱材片である。
【0023】
複数の断熱材片11a~11mのうち、周方向における1つの断熱材片(以降「小断熱材片11g」とも呼ぶ)は、内周の弧の長さLbが、他の断熱材片11a~11f,11h~11mの内周の弧の長さLaよりも短い(図4)。また、他の断熱材片11a~11f,11h~11mの内周の弧の長さLaは、互いに等しい(図4)。なお、本実施形態において「等しい」とは、厳密に一致する場合に限らず、製造誤差等に起因した相違を許容する意味である。さらに、小断熱材片11gと、断熱材片11a~11f,11h~11mとは共に、長手方向の辺の長さがLcである(図6)。なお、図4に示すように、小断熱材片11gが中心軸Oに対して占める角度はθbであり、他の断熱材片11a~11f,11h~11mがそれぞれ、中心軸Oに対して占める角度はθaである。角度θa>角度θbである。
【0024】
複数の傾斜断熱材片12a~12mについても、断熱材片11a~11mと同様に、周方向における1つの断熱材片(以降「傾斜小断熱材片12g」とも呼ぶ)は、内周の弧の長さLbが、他の傾斜断熱材片12a~12f,12h~12mの内周の弧の長さLaよりも短い。また、他の傾斜断熱材片12a~12f,12h~12mの内周の弧の長さLaは、互いに等しい。一方、傾斜小断熱材片12gと、傾斜断熱材片12a~12f,12h~12mとは、第1の直管91の長手方向に沿う辺のうち、長い方の辺(以降「最長辺」とも呼ぶ。例えば、図6の辺12de)の長さがL1である。図5に示すように、傾斜小断熱材片12gと、傾斜断熱材片12a~12f,12h~12mとは、いずれも、最長辺の長さL1が相違する。
【0025】
第2断熱材片17,18は、第1断熱材片11,12と同様に、第2の直管92の周方向に13個(a~mの添え字を付して表す)に分割されており、かつ、第2の直管92の延伸方向に2個(17,18)に分割されている。第2断熱材片17,18は、図5に示すように、複数の傾斜断熱材片17a~17mと、複数の断熱材片18a~18mと、を含んでいる。傾斜断熱材片17a~17mの詳細は、傾斜断熱材片12a~12mと同様である。断熱材片18a~18mの詳細は、断熱材片11a~11mと同様である。
【0026】
第3断熱材片13,14,15,16は、第3の直管93の周方向に13個(a~mの添え字を付して表す)に分割されており、かつ、第3の直管93の延伸方向に4個(13,14,15,16)に分割されている。第3断熱材片13,14,15,16は、図5に示すように、複数の傾斜断熱材片13a~13mと、複数の断熱材片14a~14mと、複数の断熱材片15a~15mと、複数の傾斜断熱材片16a~16mと、を含んでいる。傾斜断熱材片13a~13mと、傾斜断熱材片16a~16mとの詳細は、傾斜断熱材片12a~12mと同様である。断熱材片14a~14mと、断熱材片15a~15mとの詳細は、断熱材片11a~11mと同様である。
【0027】
図2に示すように、エビ管9の外表面において、第1断熱材片11,12の断熱材片11a~11mは、第1の直管91の端部側(第3の直管93と面していない側)に配置される。また、第1断熱材片11,12の傾斜断熱材片12a~12mは、第3断熱材片13,14,15,16のうち、傾斜断熱材片13a~13mと隣接して配置される。同様に、エビ管9の外表面において、第2断熱材片17,18の断熱材片18a~18mは、第2の直管92の端部側(第3の直管93と面していない側)に配置される。また、第2断熱材片17,18の傾斜断熱材片17a~17mは、第3断熱材片13,14,15,16のうち、傾斜断熱材片16a~16mと隣接して配置される。
【0028】
また、図2に示すように、第1断熱材片11,12及び第2断熱材片17,18と、第3断熱材片13,14,15,16とは、エビ管9の外表面において、互い違いに配置される。具体的には、図2の例では、エビ管9の外表面において、第1断熱材片11,12の180°位置(換言すれば、小断熱材片11g及び傾斜小断熱材片12gの中心位置)と、第3断熱材片13,14,15,16の0°位置(換言すれば、断熱材片13a~16a及び断熱材片13m~16mの境界位置)とが隣り合った状態で配置される。同様に、エビ管9の外表面において、第2断熱材片17,18の180°位置(換言すれば、小断熱材片18g及び傾斜小断熱材片17gの中心位置)と、第3断熱材片13,14,15,16の0°位置(換言すれば、断熱材片13a~16a及び断熱材片13m~16mの境界位置)とが隣り合った状態で配置される。
【0029】
上述した第1断熱材片11a~11m,12a~12m、第2断熱材片17a~17m,18a~18m、及び第3断熱材片13a~13m,14a~14m,15a~14m,16a~16mは、それぞれ、無機多孔質材料(パーライト、ケイ酸カルシウムなど)により形成された断熱板の既製品から、後述する方法によって製造できる。断熱板の既製品には、日本工業規格JIS A 9501:2014、JIS A 9510:2009、JIS A 9511:2009およびJIS A 9504:2011に規定される材料が用いられていることが好ましい。また、断熱板の既製品は、例えば、発泡プラスチック材料(硬質ウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、フェノールフォームなど)により形成されていてもよい。
【0030】
以上のように、第1実施形態のエビ管用断熱材1は、両端に配置された第1,2の直管91,92を覆う複数の第1断熱材片11,12及び複数の第2断熱材片17,18と、第1,2の直管91,92を結ぶ第3の直管93を覆う第3断熱材片13,14,15,16とを備える。このため、複数の第1~3断熱材片11~18を用いて、「節を挟んで直管が接続されている」というエビ管9の形状に沿ったエビ管用断熱材1を提供できる。また、複数の第1~3断熱材片11~18は、それぞれ、周方向に3つ以上(a~m)に分割されており、周方向における1つの断熱材片11g~18gは、内周の弧の長さが他の断熱材片11a~11f,11h~11m・・・18a~18f,18h~18mよりも短く、周方向における残余の断熱材片11a~11f,11h~11m・・・18a~18f,18h~18mは、内周の弧の長さLaが互いに等しい。このため、無機多孔質材料により形成された湾曲形状の断熱板の既製品を利用して、残余の断熱材片11a~11f,11h~11m・・・18a~18f,18h~18mとし、断熱板の既製品を切断して1つの断熱材片11g~18g(内周の弧の長さLbが他の断熱材片よりも短い断熱材片11g~18g)を形成できる。このようにして、複数の第1~3断熱材片11~18に予め分割されたエビ管用断熱材1を用いることで、現場での施工に熟練工を必要とせず、かつ、施工に要する手間と時間を削減できる。これらの結果、第1実施形態のエビ管用断熱材1によれば、エビ管用断熱材1において、耐久性及び断熱性を向上させ、かつ、施工コストを低減することができる。
【0031】
また、第1実施形態のエビ管用断熱材1において、複数の第1~3断熱材片11~18はそれぞれ複数の傾斜断熱材片12,13,16,17を含む。第1断熱材片11,12の複数の傾斜断熱材片12a~12mは、第3断熱材片13,14,15,16の複数の傾斜断熱材片13a~13mと隣接して配置され、第2断熱材片17,18の複数の傾斜断熱材片17a~17mは、第3断熱材片13,14,15,16の複数の傾斜断熱材片16a~16mと隣接して配置されている。このように、第1,3の直管91,93の接続部分、及び、第2,3の直管92,93の接続部分(換言すれば、エビ管9の節91a,92aに相当する部分)に対して、複数の傾斜断熱材片12,13,16,17を配置することで、直管の接続部分(エビ管9の節91a,92aの部分)を、隙間なく断熱材で覆うことができる。この結果、エビ管用断熱材1の断熱性を向上させると共に、施工後の美観を向上させることができる。
【0032】
さらに、第1実施形態のエビ管用断熱材1において、複数の第1~3断熱材片11~18はそれぞれ、周方向における分割数が等しい(上記実施形態の例では、周方向における分割数=13である)。このため、複数の第1~3断熱材片11~18の分割数が異なる場合と比較して、断熱材片(第1~3断熱材片11~18)の作成工程を単純化できると共に、図2に示すように、エビ管用断熱材1の施工後の美観を向上させることができる。
【0033】
図7は、エビ管用断熱材1の製造方法の一例を示すフローチャートである。図8は、断熱板2の一例と、第1切断工程の様子とを示す説明図である。まず、ステップS10において作業者は、同一の湾曲形状かつ同一の寸法を有する複数の断熱板2を準備する。この断熱板2は、既製品の断熱板であって、円筒を縦割りにした湾曲板状を有しており、上述した無機多孔質材料や、発泡プラスチック材料により形成されている。断熱板2は、内周の弧の長さがLaであり、長手方向の辺の長さがLcである(図8)。
【0034】
ステップS12において作業者は、算出工程のための条件を取得する。この条件には、例えば、次の条件a1~a5を使用できる。条件a1~a4には、エビ管用断熱材1の施工対象となるエビ管9についての、実測値又はカタログ値を用いることができる。条件a1~a4は「エビ管9の各部の長さ」に相当する。条件a5には、ステップS10で準備した断熱板2についての、内周の弧の長さの実測値又はカタログ値を用いることができる。
(a1)第1の直管91の外径D(図1:D)、
(a2)第1の直管91と第2の直管92とが成す角度AL(図1:AL=θ91+θ92=90°)、
(a3)エビ管9の曲げ数N、換言すれば、第1の直管91と第2の直管92との間の節の数(図1:N=2)、
(a4)第1の直管91の中心軸から、第2の直管92の端面までの長さR(図1:R)、
(a5)断熱板2の内周の弧の長さLa(図8:La)。
【0035】
ステップS14において作業者は、ステップS12で取得した条件を用いて、エビ管9の外周における余り長さLbを算出する。余り長さLbとは、換言すれば、エビ管9の外周面に対して、内周の弧の長さLaの断熱板2を周方向に沿って隙間なく並べた際の、エビ管9の外周における余白の長さである(図4)。余白の長さとは、換言すれば、エビ管9の周方向において、内周の弧の長さLaの断熱板2によって覆いきれない部分の長さである。余り長さLbは、条件a1の外径Dと、条件a5の長さLaとを用いて、周知の円周の公式より算出できる。
【0036】
ステップS16において作業者は、ステップS12で取得した条件を用いて、傾斜断熱材片12a~12m,13a~13m,16a~16m,17a~17m、それぞれの傾斜角度θ1と、最長辺の長さL1とを算出する。傾斜角度θ1は、各傾斜断熱材片12a~12m,13a~13m,16a~16m,17a~17mが、対応する直管91,92,93の中心軸Oに対して、それぞれどれだけ傾斜しているかを表す角度である。例えば、図4下段の破線枠内に示す例の場合、傾斜断熱材片11dの傾斜角度θ1は、図示の横断面において、傾斜断熱材片11dの中心を通る仮想線V1と、中心Oに対して90°で交わる仮想線V2と、が成す角度である。また、最長辺の長さL1は、図6で説明した通り、第1の直管91(または、第2の直管92、第3の直管93)の長手方向に沿う辺のうち、長い方の辺の長さである。
【0037】
傾斜角度θ1と、最長辺の長さL1とは、次のようにして求める。まず、条件a1~a5を用いて、周知の幾何学理論より以下の項目b1~b6を求める。次に、項目b1~b6を用いて、周知の幾何学理論より傾斜角度θ1と、最長辺の長さL1とを算出する。
(b1)第1の直管91の外周長さL、
(b2)第1の直管91の外周に配置される断熱材片11のうち、小断熱材片11gを除く断熱材片11の数P、
(b3)1つの節91aの分割角度AL1(図1:角度θ91/2、換言すれば、(AL/N)/2)、
(b4)第1の直管91のあご側(短辺側、-Y軸側)についての、第3の直管93の一端から他端までの長さL4(図1)、
(b5)第1の直管91のあご側(短辺側、-Y軸側)についての、第1の直管91の端面から節91aまでの長さL2(図1)、
(b6)第1の直管91の背中側(長辺側、+Y軸側)についての、第1の直管91の端面から節91aまでの長さL3(図1)。
【0038】
なお、ステップS14及びS16を総称して「算出工程」とも呼ぶ。ステップS14及びS16の算出方法はあくまで一例であり、条件a1~a5の少なくとも一部を用いた、幾何学理論に基づく任意の算出方法を採用できる。また、ステップS14及びS16の算出処理は、幾何学理論を用いた計算アルゴリズムを実装したコンピューターを利用して実施してもよい。
【0039】
ステップS18において作業者は、第1切断工程を実行する。具体的には、図8に示すように、断熱板2について、円周の弧の長さがステップS14で求めた余り長さLbとなるように、断熱板2の長手方向に沿って断熱板2を切断する(図8:黒矢印と二点鎖線)。この工程を繰り返し、小断熱材片11g,14g,15g,18gと、傾斜小断熱材片12g,13g,16g,17g用の各部材と、を作成する。
【0040】
なお、本実施形態では、断熱材片11,14,15,18について、長手方向の長さLcと、断熱板2の長手方向の長さLcとは等しい。このため、第1切断工程では、断熱板2の短手方向に沿った切断は行わない。しかし、断熱材片11,14,15,18について、長手方向の長さを、断熱板2の長手方向の長さLcと相違させる場合、第1切断工程では、所望の長さとなるように、断熱板2の短手方向に沿って断熱板2を切断してもよい。
【0041】
図9は、第2切断工程の様子を示す説明図である。なお、図9に示すxyz軸は、図1図3に示すXYZ軸とは対応していない。図7のステップS20において作業者は、第2切断工程を実行する。まず作業者は、図9(A)に示すように、断熱板2を、ステップS16で求めた傾斜角度θ1だけ傾ける。この結果、B方向から見た断熱板2の中心は、図9(B)に示すように傾斜角度θ1だけ傾いた状態とされる。次に作業者は、図9(C)に示すように、断熱板2の下面を接地させた状態で、一方の下端P1を固定し、他方の下端P3をz軸方向にずらして固定する。このとき、下端P1及びP3を結ぶ線分と、水平線V3とが成す角度θ2は、ステップS16の分割角度AL1(項目b3:角度θ91/2)とする。最後に作業者は、下端P1に対向する上端P2を基準として、ステップS16で求めた最長辺の長さL1だけ離れた場所から、水平線V3に向かって垂直に断熱板2を切断する(図9:黒矢印と二点鎖線)。
【0042】
作業者は、傾斜角度θ1と最長辺の長さL1とを変更しつつ(ステップS16でそれぞれ算出された値としつつ)この工程を繰り返し、傾斜断熱材片12a~12m(12gを除く全て),13a~13m(13gを除く全て),16a~16m(16gを除く全て),17a~17m(17gを除く全て)を作成する。なお、作業者は、全ての傾斜断熱材片について、分割角度AL1には同じ値を用いる。また、作業者は、第1切断工程(ステップS18)で作成した傾斜小断熱材片12g,13g,16g,17g用の各部材に対して、同様に第2切断工程を行うことで、傾斜断熱材片12g,13g,16g,17gを作成する。
【0043】
このようにして製造されたエビ管用断熱材1は、実際にエビ管9が設置されている建築物やプラントの場所に運搬されて、施工される。エビ管用断熱材1の施工に際しては、エビ管9の外表面に、断熱材片11a~11f,11h~11m・・・18a~18f,18h~18mを並べて敷き詰め、接着剤や保持具などで固定するのみで足りる。このため、熟練工でなくても簡単に施工できると共に、施工に要する手間と時間を、従来の場合(エビ管9の形状に合わせて、現場で断熱板2を切断し、取り付ける場合)と比較して、大幅に削減できる。
【0044】
以上のように、第1実施形態のエビ管用断熱材1の製造方法によれば、算出工程(ステップS14)において、複数の断熱板2をエビ管9の周方向に沿って並べた際のエビ管9の外周における余り長さLbを求め、第1切断工程(ステップS18)において、1つの断熱板2について内周の弧の長さが余り長さLbとなるように、断熱板2の長手方向に沿って切断する(図8)。そうすれば、簡単に、1つの断熱材片11g~18g(内周の弧の長さが他の断熱材片よりも短い断熱材片11g~18g)を形成できる。また、残余の断熱材片11a~11f,11h~11m・・・18a~18f,18h~18mとしては、湾曲形状の断熱板2の既製品をそのまま用いることができる。この結果、第1実施形態のエビ管用断熱材1の製造方法によれば、耐久性及び断熱性を向上させ、かつ、施工コストを低減することが可能なエビ管用断熱材1を簡単に得ることができる。
【0045】
また、第1実施形態のエビ管用断熱材1の製造方法によれば、算出工程(ステップS16)ではさらに、複数の傾斜断熱材片12a~12m,13a~13m,16a~16m,17a~17mについて、傾斜角度θ1と、最長辺の長さL1とをそれぞれ算出し、これらの算出値を用いて第2切断工程(ステップS20)を実行することにより、簡単に、上面視において一辺が他辺に対して傾斜した四角形状を有し、かつ、エビ管9の節91a,92aに沿った形状を有する複数の傾斜断熱材片12a~12m,13a~13m,16a~16m,17a~17mを形成できる。
【0046】
さらに、第1実施形態のエビ管用断熱材1の製造方法によれば、算出工程(ステップS14、S16)において、エビ管9の形状や大きさに即した、余り長さLbや、傾斜角度θ1及び最長辺の長さL1を算出できる。
【0047】
B.第2実施形態:
図10は、第2実施形態のエビ管用断熱材1Aの斜視図である。第2実施形態のエビ管用断熱材1Aは、第1実施形態の構成において、断熱材片11,14,15,18を備えていない。このため、第1断熱材片12Aは、第1の直管91の周方向に13個(a~m)に分割されており、第1の直管91の延伸方向には分割されていない。また、第2断熱材片17Aは、第2の直管92の周方向に13個(a~m)に分割されており、第2の直管92の延伸方向には分割されていない。さらに、第3断熱材片13A,16Aは、第3の直管93の周方向に13個(a~m)に分割されており、第3の直管93の延伸方向に2個(13A,16A)に分割されている。第2実施形態の傾斜断熱材片12A,13A,16A,17Aはそれぞれ、長手方向における長さが、第1実施形態の傾斜断熱材片12,13,16,17よりも長い。
【0048】
このように、エビ管用断熱材1Aの構成は種々の変更が可能であり、第1断熱材片、第2断熱材片、及び、第3断熱材片の長手方向における分割数は、任意に変更できる。このような第2実施形態のエビ管用断熱材1Aにおいても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第2実施形態のエビ管用断熱材1Aでは、エビ管用断熱材1Aを構成する部品の数を減らすことができ、施工に要する手間と時間をより一層削減できる。
【0049】
C.第3実施形態:
図11は、第3実施形態のエビ管用断熱材1Bの斜視図である。第3実施形態のエビ管用断熱材1Bは、第2実施形態の構成において、傾斜断熱材片17を備えていない。このため、第3断熱材片13Bは、第3の直管93の周方向に13個(a~m)に分割されており、第3の直管93の延伸方向には分割されていない。第3実施形態の傾斜断熱材片13Bは、長手方向における長さが、第1実施形態の傾斜断熱材片13よりも長く、かつ、長手方向における両端部が、多辺に対して傾斜している。
【0050】
このように、エビ管用断熱材1Bの構成は種々の変更が可能であり、第1断熱材片、第2断熱材片、及び、第3断熱材片の長手方向における分割数は、任意に変更できる。このような第1実施形態のエビ管用断熱材1Bにおいても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第3実施形態のエビ管用断熱材1Bでは、エビ管用断熱材1Bを構成する部品の数を減らすことができ、施工に要する手間と時間をより一層削減できる。
【0051】
D.第4実施形態:
図12は、第4実施形態のエビ管用断熱材1Cの斜視図である。第4実施形態のエビ管用断熱材1Cは、第1実施形態(図5)と同様に、複数の第1~3断熱材片11~18を有する。しかし、第4実施形態のエビ管用断熱材1Cは、エビ管9への施工の方向が、第1実施形態とは逆向きである。このように、エビ管用断熱材1Cの構成は種々の変更が可能であり、例えば図12に示すような任意の向きで、エビ管9の外表面に配置できる。
【0052】
E.第5実施形態:
図13は、第5実施形態のエビ管用断熱材1Dの斜視図である。第5実施形態のエビ管用断熱材1Dは、第1実施形態(図5)と同様に、複数の第1~3断熱材片11~18を有する。しかし、第5実施形態のエビ管用断熱材1Dは、第1実施形態で説明した形状とは異なる形状(第2の直管92の延伸方向が、第1の直管91の延伸方向と同じ形状)のエビ管9に対して施工される。この場合、エビ管用断熱材1Dのうち、第2断熱材片17D,18Dの向きを、第1実施形態とは逆向きにして施工すればよい。このように、エビ管用断熱材1Dの構成は種々の変更が可能であり、例えば図13に示すような異なる形状のエビ管9に対しても施工できる。
【0053】
F.変形例:
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0054】
上記第1~5実施形態では、エビ管用断熱材の構成について一例を示した。しかし、エビ管用断熱材の構成は種々の変更が可能である。例えば、複数の第1~3断熱材片11~18は、周方向に3つ以上に分割されている限りにおいて、任意の分割数とできる(すなわち、分割数は、第1~5実施形態で例示した13に限られない)。例えば、複数の第1~3断熱材片11~18は、上述した傾斜断熱材片12,13,16,17のうちの少なくとも一部を備えていなくてもよい。例えば、第1断熱材片の分割数と、第2断熱材片の分割数と、第3断熱材片の分割数とは、それぞれ相違していてもよい。
【0055】
上記第1~5実施形態では、エビ管用断熱材の製造方法について一例を示した。しかし、エビ管用断熱材の製造方法は種々の変更が可能である。例えば、図7で説明した製造方法のうち、傾斜角度θ1と最長辺の長さL1を算出する工程(ステップS16)と、第2切断工程(ステップS20)とのうち、少なくとも一方は省略してもよい。
【0056】
上記第1~5実施形態、及び、上記変形例の構成は、適宜組み合わせてもよい。なお、上述したエビ管用断熱材の、複数の第1~3断熱材片11~18の材料(断熱板2の材料)は任意に変更できる。例えば、日本工業規格JIS A 9501:2014、JIS A 9510:2009、JIS A 9511:2009およびJIS A 9504:2011に規定される材料が好ましく、無機多孔質材料(パーライト、ケイ酸カルシウムなど)以外にも、例えば、発泡プラスチック材料(硬質ウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、フェノールフォームなど)や、繊維材料(ガラス繊維、ロックウールなど)であってもよい。
【0057】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0058】
1,1A~1D…エビ管用断熱材
2…断熱板
9…エビ管
11,11a~11f,11h~11m…断熱材片(第1断熱材片)
11g…小断熱材片(第1断熱材片)
12,12a~12f,12h~12m…傾斜断熱材片(第1断熱材片)
12g…傾斜小断熱材片(第1断熱材片)
13,13a~13f,13~13m…傾斜断熱材片(第3断熱材片)
13g…傾斜小断熱材片(第3断熱材片)
14,14a~14f,14h~14m…断熱材片(第3断熱材片)
14g…小断熱材片(第3断熱材片)
15,15a~15f,15h~15m…断熱材片(第3断熱材片)
15g…小断熱材片(第3断熱材片)
16,16a~16f,16~16m…傾斜断熱材片(第3断熱材片)
16g…傾斜小断熱材片(第3断熱材片)
17,17a~17f,17h~17m…傾斜断熱材片(第2断熱材片)
17g…傾斜小断熱材片(第2断熱材片)
18g…小断熱材片(第2断熱材片)
18,18a~18f,18h~18m…傾斜断熱材片(第2断熱材片)
91…第1の直管
92…第2の直管
93…第3の直管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13