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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】生産監視システム及び生産監視方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20220905BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20220905BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017170276
(22)【出願日】2017-09-05
(65)【公開番号】P2019046293
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】512319232
【氏名又は名称】株式会社KMC
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】特許業務法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】安部 新一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 声喜
【審査官】山村 秀政
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-178654(JP,A)
【文献】特開2000-250885(JP,A)
【文献】特開2007-047970(JP,A)
【文献】特開平11-098491(JP,A)
【文献】特開2009-093498(JP,A)
【文献】特開2016-001425(JP,A)
【文献】特開平05-304695(JP,A)
【文献】特開2010-039733(JP,A)
【文献】特開2012-027834(JP,A)
【文献】特開2007-157007(JP,A)
【文献】特開2012-159942(JP,A)
【文献】特開2015-152943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工機が有する制御部であって、当該制御部に予め設定されている複数種類の第1の監視データを前記加工機が加工した一製品ごとに前記加工機から取得する第1のデータ取得部と、前記第1の監視データのそれぞれのしきい値に基づき、前記取得されたそれぞれの第1の監視データを前記一製品ごとに評価する第1の評価部とを有する制御部と、
前記加工機に外付けされたプログラマブルコントローラユニットであって、前記第1の監視データ以外の第2の監視データを前記加工機が加工した一製品ごとに前記加工機から取得する第2のデータ取得部を有するプログラマブルコントローラユニットと、
前記第1の評価部による一製品ごとの評価結果及び分別データに基づき前記加工機により加工された製品を分別する製品分別部と、
前記製品分別部が前記しきい値の範囲外となった第1又は第2の監視データに対応する製品を他の製品から分別したとき、所定の報知を行い、かつ、前記しきい値の範囲外となった第1又は第2の監視データを特徴付けて表示するコンピュータシステムと
を具備する生産監視システムであって、
前記コンピュータシステムの表示部は、前記複数種類の第1及び第2の監視データの各値を、所定の中心点より放射線状に表示された複数の軸上にそれぞれ点データとして表示し、隣接する点データを結ぶように連結直線を表示し、前記中心点と同心円状に前記複数種類の第1及び第2の監視データのそれぞれのしきい値の上限及び下限を示す線を表示する
生産監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の生産監視システムであって、
前記製品分別部は、前記複数種類の第1の監視データ及び第2の監視データのうち少なくとも1つの第1又は第2の監視データが当該監視データのしきい値の範囲外であるときに、当該しきい値の範囲外となった第1又は第2の監視データに対応する製品を他の製品から分別する
生産監視システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の生産監視システムであって、更に、
前記第1及び第2の監視データのしきい値を記憶する第1及び第2の記憶部と、
前記第1又は第2の監視データがしきい値の範囲外となったときに、前記第1又は第2の記憶部に記憶された当該しきい値を変更するための手段と
を具備する生産監視システム。
【請求項4】
制御部を有する加工機と、前記加工機に外付けされたプログラマブルコントローラユニットとを有するシステムにおける生産監視方法であって、
前記制御部は、当該制御部に予め設定されている複数種類の第1の監視データを前記加工機が加工した一製品ごとに前記加工機から取得し、前記取得したそれぞれの第1の監視データが前記第1の監視データのそれぞれのしきい値の範囲内にあるかを前記一製品ごとに判定し、
前記プログラマブルコントローラユニットは、前記第1の監視データ以外の第2の監視データを前記加工機が加工した一製品ごとに前記加工機から取得し、前記第2の監視データを所定期間分保持し、複数個の前記第2の監視データにつき1個の前記第2の監視データが前記第2の監視データのしきい値の範囲内にあるかを判定し、
コンピュータシステムは、前記しきい値の範囲外となった第1又は第2の監視データに対応する製品を他の製品から分別する分別データが生成されたとき、所定の報知を行い、かつ、前記しきい値の範囲外となった第1又は第2の監視データを特徴付けて表示し、
前記コンピュータシステムの表示部は、前記複数種類の第1及び第2の監視データの各値を、所定の中心点より放射線状に表示された複数の軸上にそれぞれ点データとして表示し、隣接する点データを結ぶように連結直線を表示し、前記中心点と同心円状に前記複数種類の第1及び第2の監視データのそれぞれのしきい値の上限及び下限を示す線を表示す
生産監視方法。
【請求項5】
請求項4に記載の生産監視方法であって、
前記分別データは、前記複数種類の第1の監視データ及び第2の監視データのうち少なくとも1つが当該第1又は第2の監視データのしきい値の範囲外であるときに、当該しきい値の範囲外となった第1又は第2の監視データに対応する製品を他の製品から分別するためのデータであり、
前記分別データに基づき前記加工機により加工された製品を分別する
生産監視方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の生産監視方法であって、
前記第1又は第2の監視データがしきい値の範囲外となったときに分別された製品を評価し、
前記評価結果に基づき前記範囲外としたしきい値を見直す
生産監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機や切削加工機、プレス機などの加工機による生産を監視する生産監視システム及び生産監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造ラインにおいては、製造プロセス中で品質特性に関する温度、圧力などの実測データなどを収集し、これを集中的に管理することが行われている。
【0003】
特許文献1には、製造過程における品質特性に関するデータを収集し、データから検知対象となるデータを抽出し、これらのデータから異常傾向の発生を監視し、更にその深刻度の判断をする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-039733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された技術では、異常傾向の発生とその深刻度を知ることができるが、品質特性に関するデータを時間単位で収集していることから(段落0018など)、不良品が次工程に流れる可能性がある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、不良品が次工程に流れることを確実に防止でき、しかも不良品の不良原因を究明でき、かつ、不良発生を予知・予防できる生産監視システム及び生産監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る生産監視システムは、加工機から複数種類の監視データを前記加工機が加工した一製品ごとに取得するデータ取得部と、前記監視データのそれぞれのしきい値に基づき、前記取得されたそれぞれの監視データを前記一製品ごとに評価する評価部と、前記評価部による一製品ごとの評価結果に基づき前記加工機により加工された製品を分別する製品分別部と、前記製品分別部が前記しきい値の範囲外となった監視データに対応する製品を他の製品から分別したとき、所定の報知を行い、かつ、前記しきい値の範囲外となった監視データを特徴付けて表示するコンピュータシステムとを具備する。
【0008】
本発明では、加工機が加工した一製品ごとに、複数種類の監視データのそれぞれのしきい値に基づき加工機のそれぞれの監視データを評価し、一製品ごとの評価結果に基づき加工機により加工された製品を分別しているので、不良品が次工程に流れることを確実に防止できる。
また、製品分別部が前記しきい値の範囲外となった監視データに対応する製品を他の製品から分別したとき、コンピュータシステムにおいて、所定の報知を行い、かつ、しきい値の範囲外となった監視データを特徴付けて表示するので、作業者は不良品とみなされた製品を確認でき、またしきい値の範囲外となった監視データを確実に把握できる。よって、分別された不良品及びしきい値の範囲外となった監視データから、不良品の不良原因を究明できる。
更に、評価部による評価結果から、不良発生を予知・予防できる。
【0009】
本発明の一形態に係る生産監視システムは、前記製品分別部は、前記複数種類の監視データのうち少なくとも1つの監視データが当該監視データのしきい値の範囲外であるときに、当該しきい値の範囲外となった監視データに対応する製品を他の製品から分別する。
これにより、不良品が次工程に流れることをより確実に防止できる。
【0010】
本発明の一形態に係る生産監視システムは、更に、前記監視データのしきい値を記憶する記憶部と、前記監視データがしきい値の範囲外となったときに、前記記憶部に記憶された当該しきい値を変更するための手段とを具備する。
これにより、しきい値をより適切な値にすることができ、不良品が次工程に流れることをより確実に防止できる。
【0011】
本発明の一形態に係る生産監視方法は、加工機から複数種類の監視データを前記加工機が加工した一製品ごとに取得し、前記取得したそれぞれの監視データが前記監視データのそれぞれのしきい値の範囲内にあるかを前記一製品ごとに判定し、前記一製品ごとの判定結果に基づき前記加工機により加工された製品を分別するための分別データを生成し、前記しきい値の範囲外となった監視データに対応する製品を他の製品から分別する分別データが生成されたとき、典型的には前記加工機から生産情報を収集するコンピュータシステムにおいて、所定の報知を行い、かつ、前記しきい値の範囲外となった監視データを特徴付けて表示する。
これにより、不良品が次工程に流れることを確実に防止でき、また不良品の不良原因を究明でき、更に不良発生を予知・予防できる。
【0012】
本発明の一形態に係る生産監視方法は、前記分別データが、前記複数種類の監視データのうち少なくとも1つが当該監視データのしきい値の範囲外であるときに、当該しきい値の範囲外となった監視データに対応する製品を他の製品から分別するためのデータである。当該方法は、更に、前記分別データに基づき前記加工機により加工された製品を分別する。
これにより、不良品が次工程に流れることをより確実に防止できる。
【0013】
本発明の一形態に係る生産監視方法は、前記監視データがしきい値の範囲外となったときに分別された製品の外観などを評価し、前記評価結果に基づき前記範囲外としたしきい値を見直す。
これにより、しきい値をより適切な値にすることができ、不良品が次工程に流れることをより確実に防止できる。
【0014】
本発明の一形態に係る生産監視用プログラムは、加工機から複数種類の監視データを前記加工機が加工した一製品ごとに取得するステップと、前記取得したそれぞれの監視データが前記監視データのそれぞれのしきい値の範囲内にあるかを前記一製品ごとに判定するステップと、前記判定結果に基づき前記加工機により加工された製品を分別するための分別データを生成するステップと、前記しきい値の範囲外となった監視データに対応する製品を他の製品から分別する分別データが生成されたとき、前記加工機から生産情報を収集するコンピュータシステムにおいて、所定の報知を行わせ、かつ、前記しきい値の範囲外となった監視データを特徴付けて表示さえるステップとをコンピュータに実行させる。
【0015】
本発明の一形態に係る生産監視システムは、前記加工機から生産情報を収集するコンピュータシステムと前記加工機との間に介在されたプログラマブルコントローラユニットを具備し、前記プログラマブルコントローラユニットは、前記加工機により順次取得する監視データを少なくとも所定期間分保持し、前記加工機により順次取得する監視データから前記所定期間に1度、当該監視データが前記しきい値の範囲内にあるかを評価する前記評価部として機能し、前記監視データが前記しきい値の範囲外であるときに、少なくとも前記保持した前記所定期間分の監視データを前記コンピュータシステムに送るように構成してもよい。
これにより、プログラマブルコントローラユニットからコンピュータシステムに送るデータの量を減らし、コンピュータシステム側での処理負担を低減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、不良品が次工程に流れることを確実に防止でき、しかも不良品の不良原因を究明でき、かつ、不良発生を予知・予防できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る生産監視システムの構成を示す図である。
図2図1に示した制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
図3図1に示したプログラマブルコントローラユニットの動作の一例を示すフローチャートである。
図4図1に示したコンピュータシステムの動作の一例を示すフローチャートである。
図5】コンピュータシステムの表示部に表示される監視データの表示形態を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る生産監視システムにおける第2の表示モードを説明するための監視データの概念図である。
図7】本発明の一実施形態に係る生産監視システム第2の表示モードの表示形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る生産監視システムの構成を示す図である。
生産監視システム10は、複数の加工機11と、これらの加工機11から生産情報を収集するコンピュータシステム12と、コンピュータシステム12と各加工機11との間に介在されたプログラマブルコントローラユニット(PLC)13と、加工機11ごとに設けられた製品分別部としての取り出し機14とを有する。
【0019】
加工機11としては、典型的には成形機や切削加工機、プレス機などである。加工機11は、それぞれ、制御部15を有する。
【0020】
コンピュータシステム12が収集する生産情報とは、監視データとしての情報も含むものであり、例えば加工機11における成形サイクル時間、生産数/生産ロット、成形条件/冷却水温度/成形温度(金型温度/水管温度)、成形機環境/工場温度などである。
【0021】
プログラマブルコントローラユニット13は、コンピュータシステム12の要求に応じて、加工機11を制御すると共に、加工機11に当初から備えられていない、いわゆる後付けの測定器などからのデータ(監視データ)をコンピュータシステム12に送る。
【0022】
制御部15及びプログラマブルコントローラユニット13は、コンピュータシステム12に対して通信路19を介して生産情報を送る。通信路19は、有線の通信路ばかりでなく、無線の通信路が含まれる。
【0023】
コンピュータシステム12は、工場内の加工機11の制御部15や加工機11に設置されたプログラマブルコントローラユニット13などから生産情報を収集する。コンピュータシステム12は、収集した生産情報をリアルタイムに表示する表示部12aを有する。
【0024】
制御部15は、当該加工機11から複数種類の監視データをリアルタイムに、より具体的には加工機11により加工される一製品ごとに取得する第1のデータ取得部15aと、複数種類の監視データのそれぞれのしきい値に基づき、取得されたそれぞれの監視データをリアルタイムに、より具体的には加工機11により加工される一製品ごとに評価する第1の評価部15bと、上記のしきい値を予め記憶する第1の記憶部15cとを有する。
【0025】
プログラマブルコントローラユニット13は、加工機11から監視データ(上記の測定器の測定データなど)をリアルタイムに、より具体的には加工機11により加工される一製品ごとに取得する第2のデータ取得部13aと、監視データのしきい値に基づき、取得された監視データをリアルタイムに、より具体的には加工機11により加工される一製品ごとに評価する第2の評価部13bと、上記のしきい値を予め記憶し、また取得した監視データを順次記憶する第2の記憶部13cとを有する。プログラマブルコントローラユニット13は、制御部15で予め設定されている監視データ以外の監視データが必要になった場合に、その監視データを収集し、評価する。これにより、いわば外付けのような形態で監視データを収集、評価が可能となる。
【0026】
第1の評価部15b及び第2の評価部13bは、一製品ごとに、複数種類の監視データのうち少なくとも1つの監視データが当該監視データのしきい値の範囲外であるかを判断し、範囲外であるときには、しきい値の範囲外となった監視データに対応する製品を他の製品から分別させる分別データを取り出し機14に送る。
【0027】
取り出し機14は、第1の評価部15b及び第2の評価部13bによる一製品ごとの評価結果に基づき加工機11により加工された製品を分別する。具体的には、取り出し機14は、取り出し機14は、第1の評価部15b及び第2の評価部13bより分別データが送られたときに、当該しきい値の範囲外となった監視データに対応する製品を他の製品(不良品)から分別する。取り出し機14は、典型的には、加工機11により加工された製品を加工機11から取り出すロボットを有し、このロボットが良品の場合には良品のラインにその製品を運び、不良品の場合には不良品を入れる箱にその製品を運ぶ。
【0028】
加工機11が成形機である場合の複数種類の監視データとしては、金型温度、金型内圧力、乾燥機温度、乾燥時間などの付帯設備情報と、成形用の樹脂温度(ホッパー内樹脂温度)、射出速度、クッション量(クッション位置)、一次圧(ピーク圧)、二次圧(ピーク圧)、保圧時間、チャージ時間、成形品(製品)重量、加熱筒各位置温度、ノズル先端温度、ホッパー下(可塑化前)温度などの成形機本体情報とがある。
【0029】
表1に複数種類の監視データ及びこれら監視データのそれぞれのしきい値の一例を示す。ここでは、加工機11が成形機である場合を例示している。
【0030】
【表1】
【0031】
成形品を安定生産するために射出工程で保圧をかけ、その圧力を伝達させるためにプランジャ先端部に溶融樹脂を残す。クッション量とは、その樹脂量をいう。
【0032】
プラスチックを射出成型するためには、スクリューから押し出すには圧力が必要であり、
一次圧とは樹脂を押し出すのに必要な圧力であり、一次圧で押された樹脂がキャビティに充填されると、二次圧(保圧)に切り替える。二次圧(保圧)とは、充填されてからその樹脂が固化するまでの間保持する圧力をいう。一次圧と二次圧の設定条件で、成形品の形がほぼ決まる。
【0033】
保圧時間とは、二次圧をかける時間である。
【0034】
これらの監視データのうち、金型温度、金型内圧力、成形用の樹脂温度(ホッパー内樹脂温度)、射出温度、射出速度、クッション量(クッション位置)、一次圧(ピーク圧)、二次圧(ピーク圧)、保圧時間、チャージ時間、成形品(製品)重量、加熱筒各位置温度及びノズル先端温度は、加工機11の制御部15の第1のデータ取得部15aにより取得される監視データである。
監視データのうち、ホッパー下温度は、プログラマブルコントローラユニット13などの第2のデータ取得部13aにより取得される監視データである。
【0035】
図2は制御部15の動作の一例を示すフローチャートである。
【0036】
制御部15は、第1のデータ取得部15aが上記の複数種類の監視データを、加工機11が加工した一製品ごとに取得し(ステップ201)、コンピュータシステム12に送信する(ステップ202)。
【0037】
制御部15の第1の評価部15bは、取得したそれぞれの監視データが監視データのそれぞれのしきい値の範囲内にあるかを一製品ごとに判定する(ステップ203)。この判定は、典型的には、複数種類の監視データのうち少なくとも1つが当該監視データのしきい値の範囲外であるかを判定する。
【0038】
制御部15は、第1の評価部15bが一製品ごとの判定結果に基づき、加工機に11より加工された製品を分別するための分別データを生成し(ステップ204)、それを取り出し機14に送信し(ステップ205)、コンピュータシステム12にしきい値の範囲外になったことを通知する(ステップ206)。この分別データは、典型的には、数種類の監視データのうち少なくとも1つが当該監視データのしきい値の範囲外のときに、当該しきい値の範囲外となった監視データに対応する製品を他の製品から分別するためのデータである。
【0039】
図3はプログラマブルコントローラユニット13の動作の一例を示すフローチャートである。
【0040】
プログラマブルコントローラユニット13は、第2のデータ取得部13aが、一製品ごとに、加工機11より所定の監視データを取得し(ステップ301)、その監視データを第2の記憶部13cに所定期間分保持する(ステップ302)。
【0041】
プログラマブルコントローラユニット13の第2の評価部13bは、所定期間に1度、つまり複数個の監視データにつき1個の監視データ(すなわち複数の製品のうち1個の製品の監視データ)が所定のしきい値の範囲内にあるかを判定する(ステップ303、304)。
【0042】
プログラマブルコントローラユニット13は、第2の評価部13bがステップ304でしきい値の範囲外と判定すると、加工機により加工された製品を分別するための分別データを生成し(ステップ305)、それを取り出し機14に送信し(ステップ306)、コンピュータシステム12にはしきい値の範囲外になったことを通知する(ステップ307)と共に、それまでに第2の記憶部13cに保持した監視データを典型的には一括で送信する(ステップ308)。このように一括で監視データを送信するように構成することで、プログラマブルコントローラユニット13の負荷を低減することができる。
【0043】
図4はコンピュータシステム12の動作の一例を示すフローチャートである。
【0044】
コンピュータシステム12は、制御部15及びプログラマブルコントローラユニット13より監視データを受信し(ステップ401)、蓄積し(ステップ402)、表示部12aに監視データを表示する(ステップ403)。
【0045】
コンピュータシステム12は、制御部15又はプログラマブルコントローラユニット13より上記のしきい値範囲外の通知を受信すると(ステップ404)、所定の報知を行い、かつ、しきい値の範囲外となった監視データを表示部12aに特徴付けて表示する(ステップ405)。所定の報知は、例えばパトライトにより行ってもよいし、スピーカなどから所定の報知音を出力してもよい。
【0046】
作業者は、上記の報知や表示に応じて、取り出し機14まで移動して、分別された製品、すなわち不良品とみなされた製品を目視などにより確認でき、不良品の不良原因を究明できる。
【0047】
作業者は、典型的には、分別された製品を目視などにより確認し、良品であると判断する場合には、コンピュータシステム12においてしきい値の見直しができる(ステップ406)。例えば、作業者は、コンピュータシステム12の入力部(図示せず)において、不良の基となったしきい値を、良品と判定される新たなしきい値に設定する。そのようなしきい値の設定は作業者が行っても良いが、コンピュータシステム12が所定のルールに従って設定してもよい。
【0048】
ステップ406でしきい値が見直されたときに、新たに設定されたしきい値がコンピュータシステム12より制御部15又はプログラマブルコントローラユニット13に送信される(ステップ407)。制御部15及びプログラマブルコントローラユニット13では、それまでのしきい値から送信されたしきい値に書き換えられる(図示せず)。
【0049】
図5にコンピュータシステム12の表示部12aに表示される監視データの表示形態を示す。なお、表示形態には、図5に示す第1の表示モードの他に第2の表示モードがある。第1の表示モードと第2の表示モードとは典型的には作業者による所定の操作によって切り替えることができる。
【0050】
・第1の表示モード
図5に示すように、表示部12aには、複数種類の監視データの各値(監視値)が中心点Cより放射線状に所定の間隔で表示されたそれぞれの軸A上に点データDとして表示され、隣接する点データDを結ぶように連結直線Llinkingが表示され、中心点Cと同心円状に各監視データのしきい値の上限及び下限を示す線Lupper及びLlowが表示される。
【0051】
監視データがしきい値の上限又は下限を超えた場合或いは上記のしきい値範囲外の通知を受信した場合に、図5に示す線Lupperと線Llowとの間の領域から外れた領域に点データDが表示される(図5では点線で表示)が、この点データDについては他のデータとは異なる色で表示することで、しきい値の範囲外となった監視データを特徴付けて表示することができる。
【0052】
これにより、作業者は不良品とみなされた製品を確認でき、また図5に示した表示によって、作業者はしきい値の範囲外となった監視データを確実に把握できる。
【0053】
本実施形態では、特に、複数種類の監視データの各値(監視値)を中心点Cより放射線状に所定の間隔で表示するように構成したことで、監視データの数が大きく変化しても、限られた画面上に監視データを把握し易く表示することが可能である。また、中心点Cと同心円状に各監視データのしきい値の上限及び下限を示す線Lupper及びLlowを表示するように構成することで、しきい値内にある各監視データの相対的な状態を把握することが可能である。
【0054】
・第2の表示モード
図6図5に示したような表示形態を概念的に示した図である。
例えば領域61には加工機11に使われる金型に関する監視データが表示され、領域62には加工機11に使われる材料に関する監視データが表示され、領域63には加工機11に使われるホッパーに関する監視データが表示される。
【0055】
第2の表示モードは、図7に示すように、初期値乃至所定のタイミングにおけるしきい値の上限及び下限が同心円状に表示された第1の表示モード上に、不良品と判定された監視データを含む監視データ72(点データ)をマッピングして表示するモードである。
【0056】
このような第2の表示モードによって、加工機11において不良品が発生する要因、例えば金型がその要因なのか、或いは材料がその要因なのかなどを視覚的に把握することができる。これにより、より迅速にかつ的確に不良品の不良原因を究明でき、かつ、不良発生を予知・予防できる。
【0057】
なお、本発明は上記の実施形態には限定されない。
例えば、上記の実施形態では、加工機として成形機を例示して説明したが、切削加工機、プレス機などの加工機についても本発明を適用することができる。
【0058】
上記の実施形態では、システム上にプログラマブルコントローラユニットを介在させた例を説明したが、プログラマブルコントローラユニットをこのような監視に用いないシステムにも本発明を適用することができる。
【0059】
上記の実施形態では、制御部が加工機内に組み込まれた構成であったが、本発明では、制御部を独立させても良いし、制御部の機能をコンピュータシステム内に組み込んでも構わない。
【0060】
コンピュータシステムの表示部に表示される監視データの表示形態も上記の実施形態には限定されず、様々な表示が可能である。
また、本発明では、作業者は人に限定されず、ロボットであっても勿論構わない。
【符号の説明】
【0061】
10 :生産監視システム
11 :加工機
12 :コンピュータシステム
12a :表示部
13 :プログラマブルコントローラユニット
13a :第2のデータ取得部
13b :第2の評価部
13c :第2の記憶部
14 :取り出し機
15 :制御部
15a :第1のデータ取得部
15b :第1の評価部
15c :第1の記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7