(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】空気調和機の施工方法および支持装置
(51)【国際特許分類】
F24F 1/0047 20190101AFI20220905BHJP
F24F 13/32 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
F24F1/0047
F24F13/32
(21)【出願番号】P 2017247620
(22)【出願日】2017-12-25
【審査請求日】2020-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2017113344
(32)【優先日】2017-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】398034319
【氏名又は名称】エヌパット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117651
【氏名又は名称】高垣 泰志
(72)【発明者】
【氏名】生野 真
(72)【発明者】
【氏名】石川 将司
(72)【発明者】
【氏名】中 悟史
(72)【発明者】
【氏名】中山 潤
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-046118(JP,U)
【文献】特開2010-249401(JP,A)
【文献】特開2016-205436(JP,A)
【文献】実開昭53-076668(JP,U)
【文献】実開昭54-177156(JP,U)
【文献】特開2017-145933(JP,A)
【文献】特開2002-310473(JP,A)
【文献】実開昭51-140553(JP,U)
【文献】特開2007-255767(JP,A)
【文献】特開平04-136636(JP,A)
【文献】実開昭59-103113(JP,U)
【文献】実開昭52-155346(JP,U)
【文献】特開2013-152052(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0061020(US,A1)
【文献】特開平07-042979(JP,A)
【文献】特開2017-146063(JP,A)
【文献】特開2017-146064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/0047
F24F 13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井吊り下げタイプの空気調和機の施工方法であって、
複数のフレーム材が水平面内において矩形状に組み付けられて形成された天吊り枠体を準備する天吊り枠体準備工程と、
前記天吊り枠体を形成する前記フレーム材に対して支持部材を垂下させた状態に取り付ける支持部材取付工程と、
前記天吊り枠体を前記空気調和機の上面側に配置し、前記支持部材の下端を前記空気調和機に接続することにより前記天吊り枠体に対して前記空気調和機を取り付ける空気調和機取付工程と、
前記支持部材の下端に前記空気調和機が接続された状態の前記天吊り枠体を天井スラブから所定の高さ位置まで搬送し、前記天井スラブから垂下する吊りボルトに前記フレーム材を固定して前記天吊り枠体を前記所定の高さ位置に設置する天吊り枠体設置工程と、
を有することを特徴とする空気調和機の施工方法。
【請求項2】
前記天吊り枠体を形成する前記フレーム材に対して吊り部材を垂下させた状態に取り付ける吊り部材取付工程と、
前記吊り部材に対して予め所定形状に加工された配管を取り付ける配管取付工程と、
を更に有することを特徴とする請求項1に記載の空気調和機の施工方法。
【請求項3】
前記天吊り枠体設置工程は、前記天吊り枠体に対して前記空気調和機および前記配管が取り付けられた後に行われることを特徴とする請求項2に記載の空気調和機の施工方法。
【請求項4】
前記複数のフレーム材は、前記支持部材が取り付けられる位置に予め第1の標識が付与されていることを特徴とする請求項2
又は3に記載の空気調和機の施工方法。
【請求項5】
前記複数のフレーム材は、前記吊り部材が取り付けられる位置に予め第2の標識が付与されていることを特徴とする請求項2乃至
4のいずれかに記載の空気調和機の施工方法。
【請求項6】
前記配管は、施工現場以外で予め所定形状に形成された冷媒配管を含み、
前記冷媒配管は、少なくとも1箇所に分岐部を有することを特徴とする請求項2乃至
5のいずれかに記載の空気調和機の施工方法。
【請求項7】
前記天吊り枠体を形成する前記複数のフレーム材の配置態様に応じて前記天井スラブの打設前のデッキプレート又は型枠に予めインサートを設置する工程を更に有することを特徴とする請求項1乃至
6のいずれかに記載の空気調和機の施工方法。
【請求項8】
前記天吊り枠体は、下部枠体と、前記下部枠体に取り付けられる上部枠体とを含んでおり、
前記天吊り枠体準備工程は、前記下部枠体と前記上部枠体とを別々に準備する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至
7のいずれかに記載の空気調和機の施工方法。
【請求項9】
前記天吊り枠体準備工程は、前記下部枠体の上部に前記上部枠体を予め固定する工程を含むことを特徴とする請求項
8に記載の空気調和機の施工方法。
【請求項10】
前記天吊り枠体準備工程は、前記上部枠体を前記天井スラブに対して予め固定する工程を含み、
前記天吊り枠体設置工程は、前記下部枠体を前記天井スラブから前記所定の高さ位置まで搬送し、前記下部枠体を前記上部枠体に固定する工程を含むことを特徴とする請求項
8に記載の空気調和機の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井吊り下げタイプの空気調和機の施工方法および支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天井吊り下げタイプの空気調和機を施工する方法のひとつに、空気調和機を内側に収容可能な立体的な架台を用いる方法がある(例えば特許文献1)。この従来方法では、複数のフレーム材を組み付けて架台を作成する工程、並びに、架台に対して空気調和機および各種配管を取り付けてユニット化する工程が、施工現場以外の工場で行われる。工場でユニット化された複数の架台は、パレットに積載された状態で工場から施工現場に搬送される。そして施工現場では、天井スラブから吊り下げられた吊りボルトにユニット化された架台を固定する作業が行われる。
【0003】
このような施工方法によれば、空気調和機に接続される各種配管が架台に取り付けられた吊りバンドによって支持されるため、施工現場において高所作業で天井スラブに吊りバンドを設置する必要がなく、作業効率に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の施工方法は、架台に対して空気調和機および各種配管を組み付けてユニット化する作業を工場で行うため、施工現場に設置する予定の空気調和機および各種配管を一旦工場に搬送しなければならず、搬送効率が悪く、搬送コストが上昇する。加えて、ユニット化された架台は内側の空気調和機を損傷させないようにするために立体的なフレーム構造を有しており、パレットに積載可能な台数が少ないため、工場から施工現場への搬送効率を著しく低下させる要因となっている。
【0006】
また従来の施工方法は、ユニット化された複数の架台をパレットに積載して施工現場となる建物へ搬送される。そのため、建物にパレットを搬入する十分なスペースがないとき、或いは、建物内にパレットを置いておくための十分なスペースがないときには、建物の外にパレットを置かなくてはならない。この場合、作業者は、施工現場となるフロアから建物の外に置かれたパレットまでユニット化された架台を1つずつ取り行かなければならなくなるため、作業者の負担が却って増加してしまう可能性がある。
【0007】
そこで本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、従来よりも搬送効率に優れ、施工現場での作業者の負担を軽減できるようにした空気調和機の施工方法および支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、第1に、本発明は、天井吊り下げタイプの空気調和機の施工方法であって、複数のフレーム材が水平面内において矩形状に組み付けられて形成された天吊り枠体を準備する天吊り枠体準備工程と、前記天吊り枠体を形成する前記フレーム材に対して支持部材を垂下させた状態に取り付ける支持部材取付工程と、前記天吊り枠体を前記空気調和機の上面側に配置し、前記支持部材の下端を前記空気調和機に接続することにより前記天吊り枠体に対して前記空気調和機を取り付ける空気調和機取付工程と、前記支持部材の下端に前記空気調和機が接続された状態の前記天吊り枠体を天井スラブから所定の高さ位置まで搬送し、前記天井スラブから垂下する吊りボルトに前記フレーム材を固定して前記天吊り枠体を前記所定の高さ位置に設置する天吊り枠体設置工程と、を有している。
【0009】
この施工方法によれば、従来よりも搬送効率に優れ、しかも施工現場における作業者の負担を軽減することができるようになる。
【0010】
第2に、本発明は、第1の施工方法において、前記天吊り枠体を形成する前記フレーム材に対して吊り部材を垂下させた状態に取り付ける吊り部材取付工程と、前記吊り部材に対して予め所定形状に加工された配管を取り付ける配管取付工程と、を更に有することを特徴とするものである。
【0011】
第3に、本発明は、第2の施工方法において、前記天吊り枠体設置工程は、前記天吊り枠体に対して前記空気調和機および前記配管が取り付けられた後に行われることを特徴とするものである。
【0013】
第4に、本発明は、第2又は第3の施工方法において、前記複数のフレーム材は、前記支持部材が取り付けられる位置に予め第1の標識が付与されていることを特徴とするものである。
【0014】
第5に、本発明は、第2乃至第4のいずれかの施工方法において、前記複数のフレーム材は、前記吊り部材が取り付けられる位置に予め第2の標識が付与されていることを特徴とするものである。
【0015】
第6に、本発明は、第2乃至第5のいずれかの施工方法において、前記配管は、施工現場以外で予め所定形状に形成された冷媒配管を含み、前記冷媒配管は、少なくとも1箇所に分岐部を有することを特徴とするものである。
【0016】
第7に、本発明は、第1乃至第6のいずれかの施工方法において、前記天吊り枠体を形成する前記複数のフレーム材の配置態様に応じて前記天井スラブの打設前のデッキプレート又は型枠に予めインサートを設置する工程を更に有することを特徴とするものである。
【0017】
第8に、本発明は、第1乃至第7のいずれかの施工方法において、前記天吊り枠体は、下部枠体と、前記下部枠体に取り付けられる上部枠体とを含んでおり、前記天吊り枠体準備工程は、前記下部枠体と前記上部枠体とを別々に準備する工程を含むことを特徴とするものである。
【0018】
第9に、本発明は、第8の施工方法において、前記天吊り枠体準備工程は、前記下部枠体の上部に前記上部枠体を予め固定する工程を含むことを特徴とするものである。
【0019】
第10に、本発明は、第8の施工方法において、前記天吊り枠体準備工程は、前記上部枠体を前記天井スラブに対して予め固定する工程を含み、前記天吊り枠体設置工程は、前記下部枠体を前記天井スラブから前記所定の高さ位置まで搬送し、前記下部枠体を前記上部枠体に固定する工程を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、従来よりも搬送効率に優れ、施工現場での作業者の負担を軽減することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】空気調和機を支持する支持装置の一構成例を示す図である。
【
図2】天吊り枠体を構成するフレーム材の構成例を示す図である。
【
図4】支持ボルトおよび吊りバンドの取り付け態様の一例を示す図である。
【
図5】天吊り枠体に対して支持ボルトおよび吊りバンドが取り付けられた状態を示す図である。
【
図6】天井スラブが打設される前のデッキプレートの一例を示す図である。
【
図7】天井吊り下げタイプの空気調和機を施工する際の各工程を示す図である。
【
図8】第2実施形態における天吊り枠体の一構成例を示す図である。
【
図9】門形のフレーム構造として構成される上部枠体の拡大図である。
【
図10】第2施形態における支持装置を示す図である。
【
図11】第2実施形態における第1の施工方法の各工程を示す図である。
【
図12】第2実施形態における第2の施工方法の各工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下において参照する各図面では互いに共通する部材に同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0024】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態において天井吊り下げタイプの空気調和機10を支持する支持装置1の一構成例を示す図である。
図1には、互いに直交するXYZの3軸座標系を示しており、他の図に示す3軸座標系と共通する座標系である。この支持装置1は、長手方向にスリット33を有する複数のフレーム材3a~3fが一平面内(XY平面内)で組み付けられることによって構成される矩形状の天吊り枠体2と、天吊り枠体2を構成する複数のフレーム材3b,3cのスリット33に対し、予め定められた4箇所の位置から垂下させた状態に取り付けられ、空気調和機10の四隅を支持する支持部材4a~4dと、天吊り枠体2を構成する複数のフレーム材3a,3e,3fのスリット33に対し、予め定められた位置から垂下させた状態に取り付けられ、空気調和機10に接続される配管21,25を支持する吊り部材5a~5f,6a,6bと、を備える構成である。以下の説明では、主として、支持部材4a~4dが支持ボルトであり、吊り部材5a~5f,6a,6bが吊りバンドであり、配管21が冷媒配管であり、配管25がドレン配管である場合を例に挙げて説明する。
【0025】
この支持装置1は、4本の支持ボルト4a~4dで空気調和機10を天吊り枠体2から吊り下げた状態に支持し、複数の吊りバンド5a~5fで空気調和機10に接続される冷媒配管21を天吊り枠体2から吊り下げた状態に支持し、さらに複数の吊りバンド6a,6bで空気調和機10に接続されるドレン配管25を天吊り枠体2から吊り下げた状態に支持する。そして支持装置1は、天井スラブから垂下する棒状部材である吊りボルトに固定されることにより、空気調和機10を天井スラブの下方の所定高さの位置で支持する。
【0026】
図2は、天吊り枠体2を構成するフレーム材3a~3fの構成例を示す図である。
図2(a)に示すようにフレーム材3a~3fは、リップ溝形鋼又は軽溝形鋼などの一対の形鋼31,32の平板部を所定間隔で互いに対向させた状態に連結された構成である。具体的には、
図2(b)に示すように、互いに同一長さを有する一対の形鋼31,32の両端部にボルト35を挿通する孔31a,31b,32a,32bが設けられており、その孔31a,31b,32a,32bにボルト35が挿通され、ボルト35の先端にナット36が締着されることにより、一対の形鋼31,32が連結される。このとき、形鋼31,32の間においてボルト35の軸部に円筒状のスペーサ34を挿入することで、形鋼31,32の間に所定間隔のスリット33を形成する。スリット33の間隔は、吊りボルトや、支持ボルト4a~4dなどを挿通可能な間隔である。したがって、各フレーム材3a~3fは、一端から他端まで延びるスリット33の任意の位置に、吊りボルトや、支持ボルト4a~4dなどを取り付けることが可能である。
【0027】
図3は、天吊り枠体2の構成例を示す図である。天吊り枠体2は、例えば長尺のフレーム材3a,3bの両端と短尺のフレーム材3d,3eの両端とを互いに直交するように配置して連結した矩形状の外枠体を有している。すなわち、外枠体は、4本のフレーム材3a,3b,3d,3eで構成される矩形枠体である。外枠体のコーナー部には、上述したスペーサ34の代わりに、L字状に折り曲げたスペーサ37が用いられ、このスペーサ37が長尺のフレーム材3a,3bと短尺のフレーム材3d,3eのそれぞれの両端部を連結している。外枠体の内側には、更に別の長尺のフレーム材3cと短尺のフレーム材3fとが配置されており、各フレーム材3c,3fの両端部が連結金具38で外枠体に連結されている。本実施形態では、外枠体の内側に2本のフレーム材3c,3fがクロス配置される場合を例示するが、これに限られるものではない。このように本実施形態では、外枠体と、外枠体の内側に配置される少なくとも1つのフレーム材とによって矩形状の天吊り枠体2が構成される。
【0028】
このような天吊り枠体2は、施工現場における個々の空気調和機10の設置環境に応じて予め工場で作成される。例えば、施工対象が新築建物である場合、各フロアの設計図面に基づいて天井スラブに対する個々の空気調和機の10の設置環境を予め把握することが可能である。そのため、各フロアに設置される個々の空気調和機10の吊り下げ方向、冷媒配管21およびドレン配管25の配管方向などに応じた天吊り枠体2を設計し、それぞれの設置環境に応じた天吊り枠体2を個別に作成する。
【0029】
天吊り枠体2は、空気調和機10だけでなく、空気調和機10の周囲に配置される冷媒配管21およびドレン配管25を吊り下げた状態で支持する。そのため、天吊り枠体2の外枠体は、空気調和機10の平面サイズよりも大きいサイズの矩形状に形成される。また外枠体の内側には、空気調和機10のX方向又はY方向の長さに応じて外枠体の内側を横断する少なくとも1つのフレーム材3cが配置されると共に、冷媒配管21およびドレン配管25の敷設位置に応じて外枠体の内側を横断する少なくとも1つのフレーム材3fが配置される。
【0030】
天吊り枠体2を構成する複数のフレーム材3a~3fには、支持ボルト4a~4dが取り付けられる4箇所の位置に予め第1の標識7aが付与される。第1の標識7aは、例えば記号や文字、色彩などで表された標識であり、支持ボルト4a~4dの取り付け位置を示すためのものである。本実施形態では、天吊り枠体2に対して支持ボルト4a~4dを取り付ける作業を施工現場において行うようにしている。そのため、施工現場において作業者が支持ボルト4a~4dを取り付ける際には、第1の標識7aに合わせて取り付ければ、支持ボルト4a~4dを天吊り枠体2に対して正しい位置に取り付けることができ、作業効率が向上する。
【0031】
また天吊り枠体2を構成する複数のフレーム材3a~3fにおいて冷媒配管21又はドレン配管25を支持する吊りバンド5a~5f,6a,6bが取り付けられる位置には、第1の標識7aとは異なる第2の標識7b,7cが予め付与される。第2の標識7b,7cは、冷媒配管21又はドレン配管25を支持する吊りバンド5a~5f,6a,6bの取り付け位置を示すためのものである。本実施形態では、天吊り枠体2に対して吊りバンド5a~5f,6a,6bを取り付ける作業を施工現場において行うようにしている。そのため、施工現場において作業者が吊りバンド5a~5f,6a,6bを取り付ける際には、第2の標識7b,7cに合わせて取り付ければ、吊りバンド5a~5f,6a,6bを天吊り枠体2に対して正しい位置に取り付けることができ、作業効率が向上する。
【0032】
冷媒配管21を支持する吊りバンド5a~5fと、ドレン配管25を支持する吊りバンド6a,6bとが異なるタイプのものである場合には、冷媒配管21を支持する吊りバンド5a~5fの取り付け位置に付与される標識7bと、ドレン配管25を支持する吊りバンド6a,6bの取り付け位置に付与される標識7cとを更に異なる標識としても良い。標識7bと標識7bとを異なる標識とすることにより、冷媒配管21を支持する吊りバンド5a~5fと、ドレン配管25を支持する吊りバンド6a,6bとを誤って取り付けてしまうことを未然に防止できるようになる。
【0033】
図4は、支持ボルト4a~4dおよび吊りバンド5a~5f,6a,6bの取り付け態様の一例を示す図である。
図4(a)は支持ボルト4a~4dの取り付け態様を示している。例えばフレーム材3cにおける支持ボルト4aの取り付け位置には第1の標識7aが付与されている。そのため、軸方向に所定長さを有する支持ボルト4aを第1の標識7aに合わせてフレーム材3cのスリット33に差し込み、フレーム材3cの下側を円盤状のプレート部材41およびナット42で固定すると共に、フレーム材3cの上側を円盤状のプレート部材43およびナット44で固定する。すなわち、プレート部材41,43の直径がフレーム材3cのスリット33の幅よりも大きいため、フレーム材3cの上下を挟み込むことによって支持ボルト4aをフレーム材3cに固定することができる。またスリット33は、フレーム材3cの長手方向に沿って延びているため、支持ボルト4aを取り付ける際にはフレーム材3cの長手方向に沿って簡単に位置調整を行うことが可能であり、第1の標識7aの位置に合わせて支持ボルト4aを取り付けることができる。尚、他の支持ボルト4b~4dについても同様である。
【0034】
図4(b)は吊りバンド5a~5fの取り付け態様を示している。吊りバンド5aは、冷媒配管22を支持するための円環部の上部にボルト45が連結されており、そのボルト45がフレーム材3aに固定される。例えばフレーム材3aにおける吊りバンド5aの取り付け位置には第2の標識7bが付与されている。そのため、軸方向に所定長さを有するボルト45を第2の標識7bに合わせてフレーム材3aのスリット33に差し込み、上記と同様に、フレーム材3aの下側を円盤状のプレート部材41およびナット42で固定すると共に、フレーム材3aの上側を円盤状のプレート部材43およびナット44で固定する。このとき、スリット33は、フレーム材3aの長手方向に沿って延びているため、ボルト45を取り付ける際にはフレーム材3aの長手方向に沿って簡単に位置調整を行うことが可能であり、第2の標識7bの位置に合わせて吊りバンド5aを取り付けることができる。尚、他の吊りバンド5b~5fについても同様である。
【0035】
図4(c)は吊りバンド6a,6bの取り付け態様を示している。吊りバンド6aは、ドレン配管25を支持するための円環部の上部にボルト46が連結されており、そのボルト46がフレーム材3eに固定される。例えばフレーム材3eにおける吊りバンド6aの取り付け位置には第2の標識7cが付与されている。そのため、軸方向に所定長さを有するボルト46を第2の標識7cに合わせてフレーム材3eのスリット33に差し込み、上記と同様に、フレーム材3eの下側を円盤状のプレート部材41およびナット42で固定すると共に、フレーム材3eの上側を円盤状のプレート部材43およびナット44で固定する。このとき、スリット33は、フレーム材3eの長手方向に沿って延びているため、ボルト46を取り付ける際にはフレーム材3eの長手方向に沿って簡単に位置調整を行うことが可能であり、第2の標識7cの位置に合わせて吊りバンド6aを取り付けることができる。尚、他の吊りバンド6bについても同様である。
【0036】
さらに本実施形態では、天吊り枠体2を構成する複数のフレーム材3a~3fにおいて吊りボルトが取り付けられる位置にも、第1および第2の標識7a,7b,7cとは異なる第3の標識7dが予め付与される。これにより、施工現場において作業者が天吊り枠体2を天井スラブから垂下する吊りボルトに取り付ける際に、吊りボルトの取り付け位置を簡単に把握することができるようになり、各フロアの設計図面において定められた空気調和機10の設置位置となるように天吊り枠体2を設置することが可能である。
【0037】
天吊り枠体2に取り付けられる支持ボルト4a~4dは、工場において予め所定長さに形成される。また吊りバンド5a~5f,6a,6bのボルト45,46も、工場において予め所定長さに形成される。ただし、吊りバンド5a~5fのボルト45は同じ長さには限られず、異なる長さであっても良い。また吊りバンド6a,6bのボルト46も同じ長さに限られず、異なる長さであっても良い。支持ボルト4a~4dおよびボルト45,46のそれぞれの長さは、空気調和機10の設置環境に応じて定められるものである。ただし、支持ボルト4a~4dの長さが異なる場合には、第1の標識7aを更に長さに応じて区別できるようにしておくことが好ましい。またボルト45,46のそれぞれの長さも互いに異なる場合には、第2の標識7b,7cを更に長さに応じて区別できるようにしておくことが好ましい。
【0038】
また天吊り枠体2に取り付けられる冷媒配管21も工場において作成される。一般に、1台の室外機に対して複数台の室内機(空気調和機10)が接続されるため、室外機に対して循環するように配管される冷媒配管21は、空気調和機10の周囲において分岐する配管構造を有する。そのため、天吊り枠体2に吊り下げられた状態に配置される冷媒配管21は、
図1に示すように分岐部22,23を有している。尚、
図1では、冷媒配管21の2箇所に分岐部22,23が存在する場合を例示しているが、空気調和機10の近辺に存在する分岐部は1箇所であっても良い。
【0039】
冷媒配管21を分岐させる作業は、外装の断熱材を剥がして剥き出しになった金属管に分岐管をろう付けする作業と、その分岐管の接合部に再び断熱材を巻き付ける作業と含んでいる。このような作業を施工現場で行うようにすると、天吊り枠体2に取り付けるための冷媒配管21を作成するのに多大な時間を要し、施工現場での作業効率が低下する。これに対し、各フロアの設計図面には冷媒配管21のレイアウトも含まれているため、個々の空気調和機10の周囲における冷媒配管21の構成は設計図面から明らかである。そのため、天吊り枠体2に取り付ける冷媒配管21を予め工場で加工して少なくとも1箇所に分岐部を有する所定形状のものとして作成しておくことにより、施工現場での作業時間を短縮できるという利点がある。
【0040】
さらに天吊り枠体2に取り付けられるドレン配管25も工場において作成される。ドレン配管25は、例えば塩化ビニル管で構成される配管であり、天吊り枠体2の下方に屈曲部が設けられることがある。ドレン配管に屈曲部を設ける場合、直管に対して屈曲管を接続する作業が行われる。このような作業を施工現場で行うようにすると、天吊り枠体2に取り付けるためのドレン配管25を作成するのに時間を要し、施工現場での作業効率が低下する。これに対し、各フロアの設計図面にはドレン配管25のレイアウトも含まれているため、個々の空気調和機10の周囲におけるドレン配管25の構成は設計図面から明らかである。そのため、天吊り枠体2に取り付けるドレン配管25を予め工場で加工して所定形状のものとして作成しておくことにより、施工現場での作業時間を短縮できるという利点がある。
【0041】
上述のように本実施形態では、施工現場以外の工場において、天吊り枠体2を作成すると共に、天吊り枠体2に吊り下げる冷媒配管21およびドレン配管25を作成する。天吊り枠体2を作成する工場と、冷媒配管21およびドレン配管25を作成する工場は、それぞれ別の工場であっても構わない。さらに冷媒配管21を作成する工場と、ドレン配管25を作成する工場も、それぞれ別の工場でも構わない。
【0042】
天吊り枠体2、冷媒配管21およびドレン配管25は、車両に積載され、工場から施工現場に搬送される。このとき、天吊り枠体2に取り付けられる支持ボルト4a~4d、吊りバンド5a~5f,6a,6bも同梱される。工場出荷時における天吊り枠体2は、支持ボルト4a~4dなどが取り付けられていないため、ほぼ一平面内に収まる形状である。そのため、天吊り枠体2を車両に積載するときには、複数の天吊り枠体2を重ねて積載することができ、従来のユニット化された架台よりも多くの天吊り枠体2を同時に搬送することができる。また冷媒配管21やドレン配管25も同時に積載すれば、搬送効率が従来よりも格段に優れたものとなる。そして施工現場である建物に到着すれば、天吊り枠体2、冷媒配管21およびドレン配管25のそれぞれを既設のエレベータなどを用いて各フロアに搬入することが可能であり、作業者の作業負担が軽減される。
【0043】
そして作業者は、各フロアの施工現場において、天吊り枠体2に支持ボルト4a~4dを取り付けると共に、吊りバンド5a~5f,6a,6bを取り付ける。
図5は、天吊り枠体2に対して支持ボルト4a~4dおよび吊りバンド5a~5f,6a,6bが取り付けられた状態を示す図である。施工現場において天吊り枠体2に支持ボルト4a~4dおよび吊りバンド5a~5f,6a,6bを取り付ける際には、例えば天吊り枠体2を仮置き台などに載置し、複数のフレーム材3a~3fを床面から120~160cm程度の高さ位置となるように設置する。これにより、作業者は、床面に立った姿勢のままでフレーム材3a~3fに付与された標識7a~7cを確認しながら、支持ボルト4a~4dや吊りバンド5a~5f,6a,6bをフレーム材3a~3fに取り付けていくことができる。したがって、作業者は、楽な姿勢のままで簡単に支持ボルト4a~4dや吊りバンド5a~5f,6a,6bを天吊り枠体2に取り付けていくことができ、作業効率が向上する。特に支持ボルト4a~4dや吊りバンド5a~5f,6a,6bを天吊り枠体2に取り付ける際には、高所作業を行う必要がないので、安全に作業を進めることができる。さらに予め標識7a~7cの付与されている位置に支持ボルト4a~4dなどを固定していけば良いため、作業に熟練度が求められることはなく、誰でも簡単に作業を行うことができるという利点がある。その結果、
図5に示すように、天吊り枠体2に対して支持ボルト4a~4dおよび吊りバンド5a~5f,6a,6bが取り付けられた状態の支持装置1が施工現場の床面作業で簡単に完成する。
【0044】
天吊り枠体2に支持ボルト4a~4dおよび吊りバンド5a~5f,6a,6bが取り付けられると、続いて4本の支持ボルト4a~4dの下端に空気調和機10が取り付けられる。また吊りバンド5a~5fには、冷媒配管21が取り付けられる。このとき、
図1に示すように、冷媒配管21の分岐部23から分岐した分岐管の先端が空気調和機10の冷媒配管接続口11の近傍に位置するように配管される。さらに吊りバンド6a,6bには、ドレン配管25が取り付けられる。このときも、
図1に示すように、ドレン配管25の端部が空気調和機10のドレン配管接続口12の近傍に位置するように配管される。これらの作業も、上記と同様に、天吊り枠体2を仮置き台などに載置した状態のままで行うことができる。したがって、作業者は、高所作業を行うことなく、空気調和機10、冷媒配管21およびドレン配管25を支持装置1に取り付けることができ、この点でも作業効率が向上する。その結果、
図1に示すように、支持装置1は、略水平な面内に設置される天吊り枠体2から空気調和機10を吊り下げた状態で支持すると共に、空気調和機10の周囲において更に冷媒配管21とドレン配管25とを吊り下げた状態で支持する状態となる。
【0045】
支持装置1に、空気調和機10、冷媒配管21およびドレン配管25が取り付けられると、支持装置1が天井スラブから垂下する状態に設けられた吊りボルトに取り付けられる。
図6は、天井スラブが打設される前のデッキプレート50の一例を示す図である。上述したように新築建物の場合には、各フロアの設計図面に基づいて天吊り枠体2を設計することができる。これにより、天吊り枠体2のX方向およびY方向の寸法がほぼ決まる。
【0046】
一方、デッキプレート50の上面にコンクリートなどの天井スラブが打設される前の状態のときには、デッキプレート50に穿孔してインサート56を設置し、インサート56の螺子孔をデッキプレート50の下面に露出させることができる。インサート56の螺子孔は、吊りボルト9を装着するためのものである。デッキプレート50は、剛性を高めるために、
図6に示すような波形鋼板として構成される。そのため、デッキプレート50は、所定方向(X方向)に沿って、比較的高い位置にある第1面51と、第1面51よりも低い位置にある第2面52とが交互に繰り返すように配置された構成である。このようなデッキプレート50にインサート56を設置する場合、インサート56の周囲のコンクリート強度を確保するために第2面52ではなく、第1面51に対して設置することが義務付けられることが多い。
【0047】
そこで、天吊り枠体2を設計するときには、施工現場に導入されるデッキプレート50の第1面51の配置間隔に応じてX方向における各フレーム材3a~3fの配置間隔や長さなどを決定すれば良い。
図6に示す例では、外枠体を構成する2本のフレーム材3a,3bのX方向の配置間隔を、第1面51のX方向の配置間隔に応じて決定している。そしてデッキプレート50にインサート56を設置するときには、外枠体の2本のフレーム材3a,3bの配置間隔に基づき、各フレーム材3a,3bのスリット33に対して吊りボルト9を挿入可能となるようにインサート56の設置位置を決定し、その決定した位置にインサート56を設置する。つまり、天吊り枠体2を構成する複数のフレーム材3a~3fの配置態様に適合するようにデッキプレート50の第1面51に対してインサート56を設置するのである。
【0048】
図6の例では、複数のインサート56が、2本のフレーム材3a,3bの両端近傍位置に吊りボルト9を設置することができるように配置される。これにより、支持装置1が天井スラブから垂下する吊りボルト9に取り付けられるときには、吊りボルト9の位置と、2本のフレーム材3a,3bの両端近傍において第3の標識7dが付与された位置のスリット33とが適合し、インサート56に装着された吊りボルト9に対して支持装置1を固定することができる。つまり、支持装置1を吊りボルト9に取り付けるときに、吊りボルト9の位置が合致しないという不都合が生じることを未然に防止することができる。それ故、あと施工アンカーなどを用いて吊りボルト9の設置位置を変更するなどの手間が発生することもなく、効率的に作業を行うことができるのである。
【0049】
また天吊り枠体2は、吊りボルト9に固定するフレーム材3a,3bを、フレーム材3a,3bに直交するフレーム材3d,3eの下側に配置している。吊りボルト9にフレーム材3a,3bを取り付けるときには、
図4に示したように、フレーム材3a,3bの下側を円盤状のプレート部材41およびナット42で固定すると共に、フレーム材3a,3bの上側を円盤状のプレート部材43およびナット44で固定する。そのため、仮にフレーム材3d,3eをデッキプレート50の下面に接近させて取り付ける場合であっても、吊りボルト9に取り付けるフレーム材3a,3bの上面および下面にはナットを締め付けるために十分な隙間を確保することができる。つまり、吊りボルト9に固定するフレーム材3a,3bを、フレーム材3a,3bに直交するフレーム材3d,3eの下側に配置することで、ナットの締め付け作業をスムーズに行うことができるので、作業効率が向上するのである。
【0050】
図7は、本実施形態において天井吊り下げタイプの空気調和機10を施工する際の各工程を示す図である。この施工方法に含まれる各工程は、工場で行われる工程と、施工現場で行われる工程とに区別される。
【0051】
まず工場では、複数のフレーム材3a~3fを組み付けて天吊り枠体2が作成される(ステップS10)。このとき、空気調和機10が設置されるフロアの設計図面と、施工現場に導入されるデッキプレート50の詳細情報とに基づいて天吊り枠体2が設計され、その設計に基づいて天吊り枠体2が作成される。したがって、工場で作成される天吊り枠体2は、個々の空気調和機10が設置される現場に応じて個別に作成される。
【0052】
天吊り枠体2が作成されると、その天吊り枠体2に対して第1乃至第3の標識7a~7dが付与される(ステップS11)。このときも、空気調和機10が設置されるフロアの設計図面などに基づいて支持ボルト4a~4dなどを設置する位置が決定され、天吊り枠体2を構成する複数のフレーム材3a~3fの適切な位置に標識7a~7dが付与される。
【0053】
続いて支持装置1に設置される冷媒配管21が作成される(ステップS12)。このときも、空気調和機10が設置されるフロアの設計図面などに基づいて支持装置1に設置する冷媒配管21の形状や寸法などが決定され、必要に応じて冷媒配管21を分岐させる分岐部22,23を設けることにより、設計図面などに応じた冷媒配管21が作成される。そして支持装置1に設置されるドレン配管25が作成される(ステップS13)。このときも、上記と同様であり、設計図面などに応じたドレン配管25が作成される。
【0054】
次に工場において、支持装置1に設置する支持ボルト4a~4dと、吊りバンド5a~5f,6a,6bとが準備される(ステップS14)。すなわち、支持ボルト4a~4dを適切な長さにしたり、吊りバンド5a~5f,6a,6bのボルト45,46を適切な長さにしたりする作業が行われる。
【0055】
工場においてステップS10~S14の作業が完了すると、天吊り枠体2、冷媒配管21、ドレン配管25、支持ボルト4a~4d、吊りバンド5a~5f,6a,6bおよび付属金具(プレート部材やナットなど)を車両に積載し、工場から施工現場へ搬送する(ステップS15)。このとき、車両には、従来よりも多くの天吊り枠体2を積載することができるため、搬送効率が高く、搬送コストを抑えることができる。また施工現場に設置される空気調和機10は、製造工場から施工現場に直接搬送すれば良い。そのため、空気調和機10の搬送コストも安く抑えることができる。尚、上述したステップS10、S12、S13、S14が行われる順番は、
図7に示したものに限られない。
【0056】
一方、施工現場では、各フロアの下地材となるデッキプレート50が設置される(ステップS20)。そしてデッキプレート50が設置された後、天井スラブが打設される前に、デッキプレート50上の支持装置1の取り付け位置に対してインサート56が設置される(ステップS21)。このとき、例えば天吊り枠体2のフレーム構造を写し取ったシート状のテンプレートをデッキプレート50の上面に設置する。このテンプレートには、例えば天吊り枠体2のフレーム構造に応じてインサート56を設置すべき位置に孔が形成されている。そのため、テンプレートを設計図面に基づいてデッキプレート50の上面に設置すれば、デッキプレート50の上面に対してインサート56を設置する位置の墨出しを簡単に行うことができる。そして、その墨出しした位置にインサート56が設置される。その後、デッキプレート50の上面に対して天井スラブが打設される(ステップS22)。
【0057】
天井スラブが十分に固まると、空気調和機10を設置可能な状態となる。そのタイミングで工場から搬送される、天吊り枠体2、冷媒配管21、ドレン配管25、支持ボルト4a~4d、吊りバンド5a~5f,6a,6bおよび付属金具を受け入れる。そして施工現場となる各フロアに搬入し、天吊り枠体2、冷媒配管21、ドレン配管25、支持ボルト4a~4d、吊りバンド5a~5f,6a,6bおよび付属金具を準備する。このとき、天吊り枠体2、冷媒配管21、ドレン配管25、支持ボルト4a~4d、吊りバンド5a~5f,6a,6bおよび付属金具のそれぞれが別々の状態であるため、それぞれのサイズが小さい。そのため、建物内に搬入して置いておくことができる。それ故、作業者が施工時に各部材を1つずつ建物の外へ取りに行かなければならない事態は生じず、作業者の負担を軽減することができる。
【0058】
そして施工現場に準備した天吊り枠体2を仮置き台などに載置した状態で、支持ボルト4a~4dを取り付ける作業が行われる(ステップS23)。このとき、作業者は、天吊り枠体2の第1の標識7aが付与された位置に支持ボルト4a~4dを取り付けていけば良いため、効率的に作業を行うことができる。
【0059】
また天吊り枠体2を仮置き台などに載置した状態で、吊りバンド5a~5f,6a,6bを取り付ける作業も行われる(ステップS24)。このときも、作業者は、天吊り枠体2の第2の標識7b,7cが付与された位置に吊りバンド5a~5f,6a,6bを取り付けていけば良いため、効率的に作業を行うことができる。
【0060】
天吊り枠体2に支持ボルト4a~4dが取り付けられると、その支持ボルト4a~4dの下端に空気調和機10を取り付ける作業が行われる(ステップS25)。このときも、天吊り枠体2を仮置き台などに載置した状態のままで作業を行うことができるため、作業効率が良い。そして吊りバンド5a~5fに対する冷媒配管21の取り付け作業(ステップS26)と、吊りバンド6a,6bに対するドレン配管25の取り付け作業(ステップS27)とが行われる。これらの作業も天吊り枠体2を仮置き台などに載置した状態のままで行うことができる。
【0061】
その後、昇降機などを用いて、空気調和機10、冷媒配管21およびドレン配管25を吊り下げた状態の支持装置1が天井スラブ近傍の所定高さ位置まで持ち上げられ(ステップS28)、インサート56に装着された吊りボルト9に天吊り枠体2が固定される(ステップS29)。これにより、空気調和機10、冷媒配管21およびドレン配管25を吊り下げた状態の支持装置1が吊りボルト9によって所定高さ位置に設置された状態となる。
【0062】
その後、専門知識を備えた作業員によって冷媒配管21およびドレン配管25の連結作業が行われる。このとき、支持ボルト4a~4dの取り付け位置をスリット33に沿って調整することができるため、作業員は、空気調和機10の設置位置を微調整することができる。また吊りバンド5a~5f,6a,6bの取り付け位置もスリット33に沿って調整することができるため、作業員は、冷媒配管21およびドレン配管25の吊り下げ位置も調整することができる。したがって、専門知識を備えた作業員が冷媒配管21およびドレン配管25の連結作業を行うときにも効率的に作業を行うことができる。
【0063】
上記においては、空気調和機10、冷媒配管21およびドレン配管25を支持装置1に取り付けた状態で支持装置1を吊りボルト9に固定する場合を例示した。すなわち、
図7では、ステップS25~S27の作業が行われた後に、ステップS28,S29の作業が行われる。しかし、これに限られるものではなく、支持装置1を吊りボルト9に固定した後に、空気調和機10、冷媒配管21およびドレン配管25を支持装置1に取り付けるようにしても良い。この場合、
図7におけるステップS25~S27の作業は、ステップS28,S29の作業が行われた後に、行われることになる。
【0064】
以上のように、上述した空気調和機10の施工方法は、複数のフレーム材3a~3fが一平面内に組み付けられた矩形状の天吊り枠体2を施工現場に準備する天吊り枠体準備工程(ステップS10~S15)と、天吊り枠体2を構成するフレーム材3a~3fに対して支持ボルト4a~4dを垂下させた状態に取り付ける支持部材取付工程(ステップS23)と、空気調和機10に支持ボルト4a~4dの下端を接続することにより天吊り枠体2に対して空気調和機10を取り付ける空気調和機取付工程(ステップS25)と、天吊り枠体2を構成するフレーム材3a~3fに対して吊りバンド5a~5f,6a,6bを垂下させた状態に取り付ける吊り部材取付工程(ステップS24)と、吊りバンド5a~5f,6a,6bに対して予め所定形状に加工された配管(冷媒配管21およびドレン配管25など)を取り付ける配管取付工程(ステップS26,S27)と、天吊り枠体2を天井スラブ近傍位置の所定高さ位置まで搬送し、複数のフレーム材3a~3fに、天井スラブから垂下する吊りボルト9を固定して天吊り枠体2を設置する天吊り枠体設置工程(ステップS28,S29)と、を有している。
【0065】
このような施工方法によれば、従来のユニット化された架台と比較すると、工場から施工現場への搬送時に多くの天吊り枠体2を車両に積載することができるため、搬送効率に優れている。また施工現場において、作業者は、床面に立った姿勢のままで簡単に支持ボルト4a~4dや吊りバンド5a~5f,6a、6bなどを天吊り枠体2に取り付けていくことができるため、施工現場における作業者の作業負担を軽減することができるという利点もある。
【0066】
これに対し、天井スラブから垂下する吊りボルトに対して空気調和機10や冷媒配管21などを直接取り付ける場合には、天井スラブに対して多数の吊りボルト9を予め設置しておく必要がある。天井スラブから垂下する多数の吊りボルト9に対して吊りバンドなどを取り付けていく作業は全て天井スラブ近傍での高所作業となるため、作業効率が悪くなる。それ故、本実施形態の施工方法は、そのような高所作業を行う必要がない点においても作業効率に優れた施工方法である。
【0067】
また上述した施工方法は、天吊り枠体2を構成する複数のフレーム材3a~3fの配置態様に応じて天井スラブの打設前のデッキプレート50に予めインサート56を設置する工程(ステップS21)を含んでいる。このような工程を含むことにより、天吊り枠体2を天井スラブから吊り下げた状態に設置する際に、吊りボルト9の位置が適合しないといった不具合が生じることを未然に防止することができるので、作業効率をより一層向上させることができる。
【0068】
上記においては、施工現場以外の工場において、天吊り枠体2を作成する場合を例示した。しかし、これに限られるものではなく、天吊り枠体2を施工現場において作成するようにしても良い。すなわち、工場では施工現場に適合する複数のフレーム材3a~3fを作成し、それら複数のフレーム材3a~3fを施工現場に搬入して施工現場で天吊り枠体2を作成するのである。この場合であっても、工場から施工現場への搬送時に多くのフレーム材3a~3fを車両に積載することができるため、搬送効率に優れている。
【0069】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態について説明する。上述した第1実施形態における天吊り枠体2は、複数のフレーム材3a~3fを一平面内で組み付けて矩形状に形成するものを例示した。本実施形態では、天吊り枠体2を平面的なものではなく、立体的な形状とするものを例示する。
【0070】
図8は、本実施形態における天吊り枠体2の一構成例を示す図である。
図8に示すように、本実施形態の天吊り枠体2は、下部枠体2aと上部枠体2bとを備えて構成される。
【0071】
ここで、下部枠体2aは、第1実施形態で説明した天吊り枠体2と同様の構成である。すなわち、下部枠体2aは、第1実施形態で説明したように、長手方向にスリット33を有する複数のフレーム材3a~3fを一平面内(XY平面内)で組み付けることによって形成した矩形状の枠体である。
【0072】
これに対し、上部枠体2bは、下部枠体2aの上部に取り付けられる枠体である。本実施形態では、門形に形成された2つの上部枠体2bが下部枠体2aの上部に取り付けられる場合を例示している。上部枠体2bは、例えば垂直方向(Z方向)に配置される2つの縦フレーム材61を、水平方向(X方向)に配置される横フレーム材62の両端近傍位置に立設させた状態に組み付けることにより、門形のフレーム構造として構成される。
【0073】
ただし、上部枠体2bは、必ずしも門形のフレーム構造に限られるものではない。例えば、上部枠体2bは、4本の横フレーム材62を一平面内(XY平面内)で矩形状に組み付け、その四隅のそれぞれから縦フレーム材61を立設させたテーブル形のフレーム構造としても良い。また縦フレーム材61と横フレーム材62とを組み付けることにより、その他の形状のフレーム構造としても良い。
【0074】
図9は、門形のフレーム構造として構成される上部枠体2bの拡大図である。縦フレーム材61は、例えば所定長さを有する1本の角形鋼管によって構成され、その上下両端にL型アングル材63が取り付けられる。これに対し、横フレーム62は、縦フレーム材61よりも細い2本の角形鋼管62a,62bを、所定間隔を隔てて平行に配置し、その両端をボルトとナットなどの固定手段68で固定した構造である。したがって、横フレーム材62の中央には、所定間隔のスリット67が形成される。このスリット67の間隔は、上述したフレーム材3a~3fに設けられるスリット33の間隔にほぼ等しい。そのため、スリット67には、吊りボルトや支持ボルト4aから4dなどと同径のボルトを挿通することが可能である。
【0075】
縦フレーム材61は、下端に設けられたL型アングル材63の平板部が横フレーム材62に対してボルト69で固定されることにより、横フレーム材62の長手方向所定位置に対して立設した状態に取り付けられる。つまり、2つの縦フレーム材61の間隔は、横フレーム材62に対する取り付け位置を変更することにより、適宜調整することができる。
【0076】
上記のようにして構成される上部枠体2bは、
図8に示すように、下部枠体2aに対して取り付け可能である。すなわち、上部枠体2aの横フレーム材62に形成されているスリット67と、下部枠体2aのフレーム材3a,3bに形成されているスリット33との双方にボルトを挿通してナットを締着することにより、上部枠体2bを下部枠体2aに対して固定することができる。このとき、上部枠体2bを取り付けるY方向の位置は、フレーム材3a,3bに形成されているスリット33に沿って適宜調整することが可能である。
【0077】
上記のように構成される天吊り枠体2は、上部枠体2bが天井スラブから垂下する吊りボルト9に対して固定される。すなわち、上部枠体2bの上端に設けられたL型アングル材63の平板部に設けられた孔64に対して吊りボルト9が挿入され、その吊りボルト9にナットが締着されることにより、上部枠体2bが天井スラブに固定される。そして上部枠体2bは、縦フレーム材61の長さに応じた高さ位置で下部枠体2aを支持するのである。
【0078】
尚、上部枠体2bは必ずしも天井スラブに固定されるものに限られない。例えば天井スラブ近傍に予め設けられている剛性の高い天井構造などに対して上部枠体2bが固定されるものであっても構わない。
【0079】
このように上部枠体2bが天井スラブよりも低い位置で下部枠体2aを支持することにより、第1実施形態よりも優れた耐震性能を発揮する。すなわち、上部枠体2bの縦フレーム剤61は角形鋼管で構成されており、天井スラブから垂下する吊りボルト9よりも太くて剛性が高いため、下部枠体2aを所定高さ位置で安定して支持することができるのである。
【0080】
例えば、上部枠体2bを設けることなく、下部枠体2aを吊りボルト9で直接支持する構造の場合、吊りボルト9が長くなる程、地震発生時には吊りボルト9自体が振動し、それに従って下部枠体2aの振動も大きくなる。そのため、下部枠体2aの振動を抑制するためには、下部枠体2aをなるべく天井スラブの近傍位置に取り付けることが必要となる。しかし、空気調和機10を設置する高さ位置が決まっているため、下部枠体2aを天井スラブの近傍位置に取り付けると、空気調和機10を支持する支持ボルト4a~4dが長くなる。支持ボルト4a~4dが長くなると、地震発生時に支持ボルト4a~4dが振動し、空気調和機10の振動も大きくなる。そこで、互いに隣接する一対の支持ボルト間に斜め補強材となるブレースをクロス状に配置することで支持ボルト4a~4dの振動を抑制し、空気調和機10の振動を抑制することが行われる。しかし、支持ボルト4a~4dの長さが長くなる程、ブレースによる振動抑制効果が低減するため、支持ボルト4a~4dが所定長さよりも長くなる場合にはあまり有効でない。
【0081】
これに対し、本実施形態のように剛性の高い上部枠体2bを天井スラブや天井構造などに固定し、その上部枠体2bの下端に対して下部枠体2aを取り付けることにより、上述したような問題が解消され、地震発生時においても空気調和機10の振動を効果的に抑制することができるという利点がある。
【0082】
図10は、本実施形態における支持装置1を示す図である。支持装置1は、下部枠体2aと上部枠体2bとが互いに組み付けられて構成される天吊り枠体2を備え、下部枠体2aに取り付けられる支持部材によって空気調和機10の四隅を支持すると共に、下部枠値2aに取り付けられる吊り部材によって冷媒配管21やドレン配管25を支持する。そして
図10に示す支持装置1が天井スラブや天井構造に固定されることにより、空気調和機10などが天井スラブから所定の高さ位置に支持された状態に取り付けられる。ここで、本実施形態の支持装置1を用いて空気調和機10などを天井スラブや天井構造に対して吊り下げた状態に施工する施工方法としては、次の2つの方法がある。
【0083】
まず第1の施工方法について説明する。
図11は、本実施形態における第1の施工方法の各工程を示す図である。まず工場において、複数のフレーム材3a~3fを組み付けて下部枠体2aを作成すると共に、縦フレーム材61と横フレーム材62とを組み付けて上部枠体2bを作成する(ステップS30)。下部枠体2a及び上部枠体2bは、少なくとも施工現場に搬入されるまでは別々の状態で管理される。尚、工場において行われるステップS31~S35の作業は、
図7に示したステップS11~S15の作業と同じである。また施工現場で行われるステップS40~S42の作業も、
図7に示したステップS20~S22の作業と同じである。
【0084】
施工現場では、工場から搬送される、下部枠体2a、上部枠体2b、冷媒配管21、ドレン配管25、支持ボルト4a~4d、吊りバンド5a~5f,6a,6bおよび付属金具を受け入れると、それらを各フロアに搬入して空気調和機10の設置作業に取りかかる。このとき、まず上部枠体2bを下部枠体2bに取り付け、天吊り枠体2を構築する(ステップS43)。そして天吊り枠体2を仮置き台などに載置した状態で、支持ボルト4a~4dや吊りバンド5a~5f,6a,6bなどを下部枠体2aに取り付ける作業が行われる(ステップS44,S45)。そして支持ボルト4a~4dの下端に空気調和機10を取り付ける作業が行われると共に(ステップS46)、冷媒配管21やドレン配管25の取り付け作業も行われる(ステップS47~S48)。
【0085】
その後、昇降機などを用いて、
図10に示したように、空気調和機10、冷媒配管21およびドレン配管25を吊り下げた状態の支持装置1が天井スラブ近傍の所定高さ位置まで持ち上げられ(ステップS28)、インサート56に装着された吊りボルト9に天吊り枠体2が固定される(ステップS29)。これにより、空気調和機10、冷媒配管21およびドレン配管25を吊り下げた状態の支持装置1が吊りボルト9によって所定高さ位置に設置された状態となる。
【0086】
次に第2の施工方法について説明する。
図12は、本実施形態における第2の施工方法の各工程を示す図である。
図12において工場で行う作業(ステップS30~S35)は、
図11に示したものと同じである。また施工現場で行われるステップS60~S62の作業も、
図7に示したステップS20~S22の作業と同じである。
【0087】
第2の施工方法では、施工現場において工場から搬送される各部材を受け入れると、まず昇降機などを用いて、上部枠体2bだけを天井スラブ近傍位置まで持ち上げ、上部枠体2bを天井スラブから垂下する吊りボルト9に固定する(ステップS63)。尚、上部枠体2bを固定する対象は、天井スラブとは異なる天井構造であっても構わない。
【0088】
一方、下部枠体2aは、仮置き台などに載置された状態で、支持ボルト4a~4dや吊りバンド5a~5f,6a,6bなどが取り付けられる(ステップS64,S65)。そして支持ボルト4a~4dの下端に空気調和機10を取り付ける作業が行われると共に(ステップS66)、冷媒配管21やドレン配管25の取り付け作業も行われる(ステップS67~S38)。尚、ステップS64~S68の作業は、ステップS63の作業と並行して行うようにしても良い。
【0089】
その後、再び昇降機などを用いて、空気調和機10、冷媒配管21およびドレン配管25を吊り下げた状態の下部枠体2aを天井スラブ近傍の所定高さ位置まで持ち上げ(ステップS69)、天井スラブなどに固定された状態の上部枠体2bに対して下部枠体2aを固定する(ステップS70)。これにより、空気調和機10、冷媒配管21およびドレン配管25を吊り下げた状態の支持装置1が所定高さ位置に設置された状態となる。
【0090】
このように本実施形態では、天吊り枠体2を下部枠体2aと上部枠体2bとで構成し、空気調和機10を設置すべき高さ位置に合わせて上部枠体2bの縦フレーム材61の寸法を予め調整しておくことにより、上部枠体2bを天井スラブや天井構造に固定することで空気調和機10などを適切な高さ位置に設置することが可能である。そして天吊り枠体2を下部枠体2aと上部枠体2bとで構成することにより、耐震性能に優れた支持金具1を構築することが可能である。
【0091】
上記においては、施工現場以外の工場において、下部枠体2aと上部枠体2bのそれぞれを作成する場合を例示した。しかし、これに限られるものではなく、下部枠体2aと上部枠体2bを施工現場において作成するようにしても良い。すなわち、工場では施工現場に適合する複数のフレーム材を作成し、それら複数のフレーム材を施工現場に搬入して施工現場で下部枠体2aと上部枠体2bとを作成するのである。この場合であっても、工場から施工現場への搬送時に多くのフレーム材を車両に積載することができるため、搬送効率に優れている。
【0092】
尚、本実施形態において上述した点以外については、第1実施形態で説明したものと同様である。
【0093】
(変形例)
以上、本発明に関する実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態で説明したものに限られない。すなわち、本発明には、上記実施形態で説明したもの以外にも種々の変形例が適用可能である。
【0094】
例えば、上記実施形態では、工場で天吊り枠体2を作成し、その天吊り枠体2を施工現場に搬送する場合を例示した。しかし、これに限られるものではなく、例えば複数のフレーム材3a~3fを工場から施工現場に搬送し、施工現場で複数のフレーム材3a~3fを組み付けて天吊り枠体2を作成するようにしても構わない。
【0095】
また上記実施形態では、複数のフレーム材3a~3fのそれぞれが長手方向にスリット33を有しており、支持ボルト4a~4dや吊りバンド5a~5f,6a,6bなどをそのスリット33に通して固定する例を説明した。しかしながら、フレーム材3a~3fは、必ずしもスリット33を有するものに限定されない。例えば、フレーム材3a~3fがスリット33を有さない場合には、専用の金具などを用いて支持ボルト4a~4dや吊りバンド5a~5f,6a,6bなどをフレーム材3a~3fに取り付けるようにすれば良い。
【0096】
また上記実施形態では、支持部材4a~4dが支持ボルトであり、吊り部材5a~5f,6a,6bが吊りバンドである場合を例に挙げて説明した。しかし、支持部材4a~4dは必ずしもボルト状のものに限られず、また吊り部材5a~5f,6a,6bは必ずしも吊りバンドに限られない。例えば支持部材4a~4dはアングル材などで構成されるものであっても良い。また吊り部材5a~5f,6a,6bも同様にアングル材などで構成されるものであっても構わない。すなわち、施工現場において床面での作業を行うだけで天吊り枠体2に支持部材4a~4dや吊り部材5a~5f,6a,6bを取り付けることができるものであれば、高所作業を行う必要がなくなるので、作業効率を向上させることができるのである。
【0097】
また上記実施形態では、支持装置1が天井スラブから垂下する吊りボルト9に取り付けられる例を説明した。しかし、天井スラブから垂下する部材は、必ずしもボルト状のものに限られず、単なる棒状部材であっても構わない。
【0098】
また上記実施形態では、冷媒配管21およびドレン配管25のそれぞれが空気調和機10の横方向を配管される場合を例示した。しかし、これに限られるものではなく、空気調和機10の上方、すなわち空気調和機10と天吊り枠体2との間の空間に、冷媒配管21およびドレン配管25の少なくとも一方を配管することも可能である。この場合、空気調和機10の上方に吊り部材5a~5f,6a,6bを吊り下げた状態に取り付けるようにしても良い。
【0099】
また上記実施形態では、デッキプレート50の上面に天井スラブが打設される形態について説明した。しかし、天井スラブは必ずしもデッキプレート50の上側に形成されるものに限られない。例えば木製の型枠の上側にコンクリートを流し込んで天井スラブが形成されることもある。この場合、コンクリートが固化した後に型枠が取り除かれるため、天井スラブの下面はほぼフラットな状態に仕上がる。そして型枠の上側に天井スラブを打設する前に、型枠に対してインサート56を設置しておけば、型枠を撤去した後にインサート56に対して吊りボルト9を装着することが可能である。このように型枠を利用して天井スラブが形成される場合であっても、上述したステップS21において、天吊り枠体2を構成する複数のフレーム材3a~3fの配置態様に応じて天井スラブの打設前の型枠に予めインサート56を設置することが可能である。そのため、天吊り枠体2を天井スラブから吊り下げた状態に設置する際に、吊りボルト9の位置が適合しないといった不具合が生じることを未然に防止することができるので、デッキプレート50の場合と同様の作用効果を奏する。
【0100】
さらに、型枠を利用して天井スラブが形成される場合であっても、上述したように例えば天吊り枠体2のフレーム構造を写し取ったシート状のテンプレートを型枠の上面に設置することで、型枠の上面に対してインサート56の設置位置の墨出しを簡単に行うことができるという利点もある。
【0101】
また上記実施形態では、天吊り枠体2を構成するフレーム3a~3fを天井スラブから垂下する吊りボルト(棒状部材)9に固定することにより、天吊り枠体2を天井スラブから所定高さの位置に設置する形態について説明した。しかし、天吊り枠体2が固定される吊りボルト(棒状部材)9は、必ずしも天井スラブから直接垂下しているものには限られず、例えば天井スラブなどの躯体に接続された支持構造部(例えばH形鋼など)から垂下するように設けられたものであっても構わない。
【0102】
また天吊り枠体2は、必ずしも天井スラブ又は支持構造部から垂下する吊りボルト(棒状部材)9に固定されるものに限られない。例えば、H形鋼などの支持構造部が下方位置でリップ溝形鋼又は軽溝形鋼などの形鋼を水平姿勢で支持する天井構造の場合、天吊り枠体2を構成するフレーム材3a~3fを水平姿勢の形鋼に対して直接固定することにより、天吊り枠体2を所定高さの位置に設置するようにしても良い。すなわち、天吊り枠体2は、天井構造によって所定高さの位置に支持されている任意の部材にフレーム材3a~3fを固定することにより、天井スラブから所定高さの位置に設置することができるものである。
【0103】
また上記実施形態では、一例として冷媒循環タイプの空気調和機10を例に挙げたが、これに限られるものではない。例えば空気調和機10は、ファンコイルユニットなどであっても構わない。
【符号の説明】
【0104】
1…支持装置、2…天吊り枠体、3a~3f…フレーム材、4a~4d…支持ボルト(支持部材)、5a~5f…吊りバンド(吊り部材)、6a,6b…吊りバンド(吊り部材)、7a,7b,7c,7d…標識、9…吊りボルト(棒状部材)、21…冷媒配管(配管)、25…ドレン配管(配管)、50…デッキプレート。