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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】関節用サポータ
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/06 20060101AFI20220905BHJP
【FI】
A41D13/06 105
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018096279
(22)【出願日】2018-05-18
(65)【公開番号】P2019199672
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】509104894
【氏名又は名称】キングカップス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【弁理士】
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【弁理士】
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【弁理士】
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(74)【代理人】
【識別番号】100091834
【弁理士】
【氏名又は名称】室田 力雄
(72)【発明者】
【氏名】木村 公
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-054126(JP,A)
【文献】特開2016-132829(JP,A)
【文献】特開2003-052727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮素材を筒状に形成してなり、関節位置に着用して使用する関節用サポータであって、緊締力が強い強緊締力編地部と、前記強緊締力編地部よりも緊締力が弱い弱緊締力編地部とを備え、前記強緊締力編地部が、関節用サポータの着用時において、関節を支点として、てこの原理が働くように、体表面の一面側において関節用サポータの長手方向の一方側から関節を略U字状又は略V字状に囲むように通り、更に関節の側面を斜め方向に通って、前記一面側の裏面側となる体表面の他面側において関節用サポータの長手方向の他方側から関節を略U字状又は略V字状に囲むように閉じる一続きの一本の帯状編地体で形成されることを特徴とする関節用サポータ。
【請求項2】
サポータの端部に、すべり防止機能を備えるすべり防止用帯状片を備えることを特徴とする請求項1に記載の関節用サポータ。
【請求項3】
サポータの着用位置を示す着用位置指示用印を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の関節用サポータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節位置に着用して使用する関節用サポータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着用者の疲労を軽減すると共に、傷害の予防や治療を目的として使用する関節用サポータが各種開発されている。
このような従来の関節用サポータを示す従来技術として、下記特許文献1、2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特公平6-51921号公報
【文献】特開2012-245117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1は、テーピング機能を有する下腿部用サポーターまたはストッキングに関する発明で、下腿部に充当される伸縮素材より成る筒状サポータ(ストッキン)Aであって、略定幅を備えた帯状片1は、その上端2は膝蓋部4より稍々下方の外側下腿部5或いは内側下腿部6より後下腿部の腓腹部7へ斜行し、更に内側下腿部6或いは外側下腿部の踵部上方へ下端3が至るように形成され、該帯状片1はその他のサポーター構成部材8より緊締力に富む強い伸縮特性を保持させると共に、帯状片1の上端2と下端3とが位置する部位には、少なくとも筒状をした延長帯片9、9aを延設した構成が開示されている。このような構成を備えることで、緊締力の強い部位を以って在来法によるテーピング処置と同等の体表面の締付作用を呈せしめ、障害の予防と治療に便ならしめるメリットがある。
また上記特許文献2は、膝関節サポーターに関する発明で、着用者の大腿に筒状編地を締着させる第1のアンカー部2と、着用者の下腿に筒状編地を締着させる第2のアンカー部3と、第1のアンカー部2に連結し、着用者の膝蓋骨に対応する部分を包囲する略U字形状に編成され、当該着用者の膝蓋骨を支持する支持部4と、筒状編地の正面側に編成され、着用者の膝蓋骨に対応する膝蓋骨対応部5とを備え、膝蓋骨対応部5が、メッシュ編地により編成される第1のメッシュ部5aと、筒状編地の長さ方向に併設されて第1のメッシュ部を複数の領域に区分する縦格子状の編地により編成される第1の縦格子部5bと、筒状編地の周方向に併設されて第1のメッシュ部5aを複数の領域に区分する横格子状の編地により編成される第1の横格子部5cとからなり、筒状編地の周方向における第1のアンカー部2及び第2のアンカー部3の伸縮抵抗が、筒状編地の周方向におけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きく、筒状編地の長さ方向における支持部4の伸縮抵抗が、筒状編地の長さ方向におけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きく、筒状編地の長さ方向における第1のメッシュ部5aの伸縮抵抗が、筒状編地の長さ方向におけるベース生地部1の伸縮抵抗より小さい構成が開示されている。このような構成を備えることで、支持部4が着用者の膝部を挟持すると共に、膝蓋骨対応部5が着用者の膝頭の曲面にフィットして着用者の膝頭を包み込むことで、膝関節サポーターの着用者の膝部が必要以上に左右にぶれずに安定性を確保することができるというメリットがある。
しかしながら上記特許文献1、2のような従来の関節用サポータにおいては、関節の曲げ伸ばしを容易に行うことができるような構成が全くないことから、そのような構成を備えるサポータの開発が望まれるところであった。
【0005】
そこで本発明は上記従来における問題点を解決し、関節の曲げ伸ばしを容易に行うことができ、また着用位置から移動し難く、正常な着用位置を把握し易い関節用サポータの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、本発明の関節用サポータは、伸縮素材を筒状に形成してなり、関節位置に着用して使用する関節用サポータであって、緊締力が強い強緊締力編地部と、前記強緊締力編地部よりも緊締力が弱い弱緊締力編地部とを備え、前記強緊締力編地部が、関節用サポータの着用時において、関節を支点として、てこの原理が働くように、体表面の一面側において関節用サポータの長手方向の一方側から関節を略U字状又は略V字状に囲むように通り、更に関節の側面を斜め方向に通って、前記一面側の裏面側となる体表面の他面側において関節用サポータの長手方向の他方側から関節を略U字状又は略V字状に囲むように閉じる一続きの一本の帯状編地体で形成されることを第1の特徴としている。
また本発明の関節用サポータは、上記第1の特徴に加えて、サポータの端部に、すべり防止機能を備えるすべり防止用帯状片を備えることを第2の特徴としている。
また本発明の関節用サポータは、上記第1又は第2の特徴に加えて、サポータの着用位置を示す着用位置指示用印を備えることを第3の特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
上記第1の特徴による関節用サポータによれば、伸縮素材を筒状に形成してなり、関節位置に着用して使用する関節用サポータであって、緊締力が強い強緊締力編地部と、前記強緊締力編地部よりも緊締力が弱い弱緊締力編地部とを備え、前記強緊締力編地部が、関節用サポータの着用時において、関節を支点として、てこの原理が働くように、体表面の一面側において関節用サポータの長手方向の一方側から関節を略U字状又は略V字状に囲むように通り、更に関節の側面を斜め方向に通って、前記一面側の裏面側となる体表面の他面側において関節用サポータの長手方向の他方側から関節を略U字状又は略V字状に囲むように閉じる一続きの一本の帯状編地体で形成されることから、
関節の曲げ伸ばしを行う際に、強緊締力編地部を介して関節を中心に、いわゆるてこの原理を働かせることができる。よって関節の曲げ伸ばしをスムーズ且つ容易に行うことを実現可能とするサポータとすることができる。また体表面の一面側から他面側に渡って関節を略U字状又は略V字状に囲むように強緊締力編地部を配置することで、関節を曲げ伸ばしする際に、強緊締力編地部で関節を効果的に支持することができる。よって帯状編地体を、いわゆるテーピングとして利用することができる。従って関節を曲げ伸ばしする際に、帯状編地体によって関節のぐらつきを防止できると共に、正しい位置に関節を固定することができる。よって関節の損傷を効果的に防止できる。また強緊締力編地部と弱緊締力編地部との両方を備えることで、関節を曲げ伸ばしする際に、強緊締力編地部が備える効果に加えて、関節を動かす時や運動時にも運動性を阻害することがない関節用サポータとすることができる。
【0008】
また上記第2の特徴による関節用サポータによれば、上記第1の特徴による作用効果に加えて、サポータの端部に、すべり防止機能を備えるすべり防止用帯状片を備えることから、 着用時にサポータが移動することを効果的に防止することができる。
【0009】
また上記第3の特徴による関節用サポータによれば、上記第1又は第2の特徴による作用効果に加えて、サポータの着用位置を示す着用位置指示用印を備えることから、着用時に正常な着用位置を把握し易い関節用サポータとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る関節用サポータを示す図で、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
図2】本発明の実施形態に係る関節用サポータを示す図で(a)は背面図、(b)は左側面図である。
図3】本発明の実施形態に係る関節用サポータを示す図で、着用時における斜め後方から見た図である。
図4】本発明の実施形態に係る関節用サポータを示す図で、着用時において力が負荷される状態を模式的に示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る関節用サポータを示す図で、着用時における強緊締力編地部の動きと力の関係を模式的示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、各図面を参照して、本発明の実施形態に係る関節用サポータを説明し、本発明の理解に供する。しかし、以下の説明は特許請求の範囲に記載の本発明を限定するものではない。
【0012】
先ず図1図3を参照して、本発明の実施形態に係る関節用サポータを説明する。
本発明の実施形態に係る関節用サポータ1は、丸編み機を用いて伸縮素材を筒状に形成してなるサポータで、膝やひじなどの関節位置に着用して使用するサポータである。本実施形態においては、関節用サポータ1を膝関節Hに着用して使用する場合として、以下の説明を行うものとする。
【0013】
図1図2を参照して、この関節用サポータ1は、強緊締力編地部10と、弱緊締力編地部20と、ずり落ち防止用帯状片30とで構成される。
【0014】
前記強緊締力編地部10は、緊締力に富む(伸縮力が弱く、着圧が強い)編み組織で構成される部位で、てこの原理を利用して関節の曲げ伸ばし時の負荷軽減を実現可能とする部分である。また関節を包むように支えて、関節を望ましい位置に保持する、いわゆるテーピング機能を発揮する部分である。
本実施形態においては,図1図3に示すように、強緊締力編地部10の構成として、関節用サポータ1の着用時において、体表面の一面側において膝関節Hを囲むように通り、更に膝関節Hの側面を斜め方向に通って、前記一面側の裏面側となる体表面の他面側において膝関節Hを囲むように閉じる一続きの帯状編地体で形成する構成としてある。
具体的には、図1(a)に示すように体表面の外面側において膝関節Hを下方から略U字状に囲むように通り、更に図1(b)に示すように膝関節Hの側面を斜め方向に通って、図2(a)、図2(b)に示すように体表面の内面側において膝関節Hを上方から略U字状に囲むように通って閉じる一続きの帯状編地体で形成する構成としてある。よって本実施形態においては、帯状編地体の形状を閉環状の楕円形に形成してある。なお、ここで「体表面の外面側、体表面の内面側」とは、「膝の表側を外面側、膝の裏面側を内面側」とするものである。
また本実施形態においては、強緊締力編地部10を形成する帯状編地体において、着用時に膝の裏面側に配置される略U字状の端部(帯状編地体の上方側の頂部)を、ずり落ち防止用帯状片30と連結させる構成としてある。
【0015】
なお本実施形態においては、強緊締力編地部10の編み組織として、以下の構成を用いている。糸使いとして、1口編みで編成され、第一コースはウーリーナイロンで70デニールの双糸で編成し、第二コースは20デニールのポリウレタンに70デニールのナイロンをシングルカバリングした糸をインレイ編みで挿入し、第三コースは360デニールのポリウレタンに70デニールのナイロンをダブルカバリングした糸をインレイ編みで挿入したものである。
勿論、このような構成に限るものではなく、弱緊締力編地部20よりも緊締力に富む構成とできるものであれば、編み組織は如何なる構成としてもよい。例えば上記構成に替えて以下のような構成としてもよい。具体的には、1口編みで編成され、第一コースはウーリーナイロンで70デニールの双糸で編成し、合わせてウーリーナイロンで70デニールの双糸を2本補強糸として編成する。帯状編地体部分以外の補強糸はカットされる。そして第二コースは20デニールのポリウレタンに70デニールのナイロンをシングルカバリングした糸をインレイ編みで挿入し、第三コースは360デニールのポリウレタンに70デニールのナイロンをダブルカバリングした糸をインレイ編みで挿入したものとすることができる。このような構成とすることで、強緊締力編地部10を形成する帯状編地体をカットボス編みで編成することができ、一段と強度を備えた耐久性のある帯状編地体とすることができる。
【0016】
前記弱緊締力編地部20は、関節用サポータ1において、強緊締力編地部10を除くその他の部分を構成するもので、強緊締力編地部10をその領域内に配置するように形成されて、いわゆる関節用サポータ1の骨格を構成するものである。また弱緊締力編地部20は、強緊締力編地部10よりも緊締力が弱い(伸縮力が強く、着圧が弱い)編み組織で構成される部位である。
【0017】
また本実施形態においては、図1図3に示すように、着用時において膝の表側(外面側)となる位置に、関節用サポータ1の望ましい着用位置を示す着用位置指示用印21を設けてある。本実施形態においては、着用位置指示用印21の構成として、水平方向に延びる細長い略矩形状に形成される編み組織を複数本配置する構成としてある。
より具体的には、略U字状に形成される強緊締力編地部10の内側において、中央位置に3本、その両側に前記3本と間隔を空けて5本の細長い略矩形状の編み組織を鉛直方向に並列配置させてある。また中央位置に配置される3本の細長い略矩形状の編み組織は、下方にいくにつれて編み組織の長さ(水平方向の幅)が短くなる構成としてある。一方、5本の細長い略矩形状の編み組織は、略U字状に形成される強緊締力編地部10の内側の湾曲線に沿って同じ長さの編み組織を一定の間隔を空けて並列配置する構成としてある。
また着用位置指示用印21を構成する略矩形状の編み組織と、弱緊締力編地部20の着用位置指示用印21を除くその他の領域の編み組織とで、緊締力を異ならせる構成としてある。具体的には、その他の領域を構成する編み組織の緊締力よりも、略矩形状の編み組織の緊締力の方が強い(伸縮力が弱く、着圧が強い)編み組織としてある。つまりは、緊締力の強い(伸縮力が弱い)領域と緊締力の弱い(伸縮力が強い)領域とが、上下方向と左右方向とに交互に連続する構成としてある。
【0018】
このような構成とすることで、図1(a)に示すように、3本の細長い略矩形状の編み組織であたかも膝関節Hを指す下向きの略三角形を形成すると共に、3本と5本の細長い略矩形状の編み組織の間に形成される間隙Dであたかも膝関節Hを指すV字形状を形成することができる。よって、関節用サポータ1の使用者に、望ましい着用位置を容易に示すことが可能な着用位置指示用印21とすることができる。
なお、本実施形態においては、図1(a)に示すように、着用時において膝の表側(外面側)となる面において、上下方向に並列配置される3本の細長い略矩形状の編み組織と、間隙Dで形成されるV字形状とが、膝関節Hの中心P(点線が交差する位置で示す)を指すような形状、配置とすることで、関節用サポータ1の望ましい着用位置を示す構成としてある。これによって着用者が関節用サポータ1を着用する際に、前後(体表面の外面側と内面側)と中心との両方を容易に把握できる構成としてある。このように前後と中心との正しい位置を容易に把握できるという効果は、関節用サポータ1の望ましい効果を発現させるために極めて重要なものである。
勿論、着用位置指示用印21の構成は本実施形態の構成に限るものではなく、適宜変更可能である。
【0019】
また本実施形態においては、上記のように水平方向に延びる細長い略矩形状の複数本の編み組織で着用位置指示用印21を形成する構成とすることで、着用位置指示用印21に同時に滑り止め防止用矩形状片としての役割を兼ねさせている。つまり関節用サポータ1を着用して膝の曲げ伸ばしを行う際、関節用サポータ1は、膝関節Hを中心として上下方向に伸縮することから上下方向にずれ易いところ、上下方向と直交する、水平方向に延びる細長い略矩形状の編み組織を鉛直方向に複数本配置し、且つ略矩形状の編み組織と、弱緊締力編地部20の着用位置指示用印21を除くその他の領域の編み組織とで、緊締力を異ならせる構成とすることで、略矩形状の編み組織が上下方向へのずれに対する抵抗となり、関節用サポータ1が上下方向にずれることを効果的に防止することができる。
【0020】
なお、本実施形態においては、弱緊締力編地部20の編み組織として、以下の構成を用いている。弱緊締力編地部20のうち、着用位置指示用印21を除く部分においては、糸使いとして、2口編みで編成され、第一コースはウーリーナイロンで70デニールの双糸で編成し、第二コースは360デニールのポリウレタンに70デニールのナイロンをダブルカバリングした糸をインレイ編みで挿入し、第三コースは20デニールのポリウレタンに70デニールのナイロンをシングルカバリングした糸で編成したものである。
また弱緊締力編地部20のうち、着用位置指示用印21の部分においては、以下の構成を用いている。糸使いとして、2口編みで編成され、第一コースはウーリーナイロンで70デニールの双糸で編成し、合わせてウーリーナイロンで70デニールの双糸を2本補強糸として編成する。補強糸は中央に配置される3本の細長い略矩形状の編み組織部分以外はカットされる。そして第二コースは20デニールのポリウレタンに70デニールのナイロンをシングルカバリングした糸が編成され、第三コースは360デニールのポリウレタンに70デニールのナイロンをダブルカバリングした糸をインレイ編みで挿入したものである。
勿論、弱緊締力編地部20や着用位置指示用印21の編み組織はこのような構成に限るものではなく、適宜変更可能である。
【0021】
前記ずり落ち防止用帯状片30は、関節用サポータ1を着用した際に、サポータが移動することを防止するためのすべり防止用帯状片である。また関節用サポータ1を着用した際に脚を一定の強度で締めつける、いわゆるテーピングのアンカー部を構成するものである。
本実施形態においては、図1図3に示すように、関節用サポータ1の上端と下端とに、ずり落ち防止機能を備えるずり落ち防止用帯状片30を1対設ける構成としてある。
具体的には、関節用サポータ1の上端に配置される上側ずり落ち防止用帯状片31と、関節用サポータ1の下端に配置される下側ずり落ち防止用帯状片32とを備える構成としてある。また上側ずり落ち防止用帯状片31の上下方向の長さ(幅)が、下側ずり落ち防止用帯状片32の上下方向の長さ(幅)よりも長い構成としてある。
なお、このずり落ち防止用帯状片30は、強緊締力編地部10よりも緊締力が弱い編地部で構成してある。
【0022】
なお、本実施形態においては、ずり落ち防止用帯状片30の構成として、内側に配置されて脚に接する内側編み組織と、内側編み組織の外側を被覆する外側編み組織との2層の編み組織を用いる構成としてある。
内側編み組織の構成として、2口編みで編成され、第一コースは滑り止め糸(280デニールのポリウレタンに20デニールのナイロンをシングルカバリングした糸)で編成し、第二コースは360デニールのポリウレタンに70デニールのナイロンをダブルカバリングした糸をインレイ編みで挿入し、第三コースは滑り止め糸(280デニールのポリウレタンに20デニールのナイロンをシングルカバリングした糸)で編成したものを用いてある。
また外側編み組織の構成として、2口編みで編成され、第一コースはウーリーナイロンで70デニールの双糸で編成し、第二コースは360デニールのポリウレタンに70デニールのナイロンをダブルカバリングした糸をインレイ編みで挿入し、第三コースはウーリーナイロンで78デニールの双糸で編成したものを用いてある。
このように本実施形態においては、内側編み組織に滑り止め糸を用いることで、ずり落ち防止用帯状片30がすべり防止機能を発揮できる構成としてある。
勿論、すべり防止用帯状片たるずり落ち防止用帯状片30の構成(数やすべり防止機能の構成など)は上記構成に限るものではなく、適宜変更可能である。
また、ずり落ち防止用帯状片30の編み組織の構成も上記の構成に限るものではなく、強緊締力編地部10よりも緊締力が弱い編地部とすることが可能で、且つすべり防止機能を備えることができるものであれば、如何なる構成としてもよい。
更に本実施形態においては、上側ずり落ち防止用帯状片31と下側ずり落ち防止用帯状片32との二つのずり落ち防止用帯状片を備える構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、上下の端部のうち、何れか一つの端部にずり落ち防止用帯状片を備える構成としてもよい。但し、何れか一つの端部に設ける場合は、上側の端部に設けることが望ましい。
【0023】
このような構成からなる関節用サポータ1は、各部の編地の編成に伴って、プログラムを作成し、このプログラムを丸編み機に転送することで製造することができる。
【0024】
次に図4図5も参照して、本発明の実施形態に係る関節用サポータ1を着用して歩行する場合の各部の動きと力の関係を説明する。図4図5は図面の右側から左側に向かって歩行する場合を示すものである。なお図5において、説明の便宜上、強緊締力編地部10のみを示しており、また膝関節Hを他の図面より小さく記載している。
【0025】
図3に示すように、着用位置指示用印21を基に着用者が関節用サポータ1を脚Kの正規の着用位置に着用する。この状態において、本実施形態の関節用サポータ1は、伸縮素材を筒状に形成してなると共に、弱緊締力編地部20の領域内に緊締力編地部10(帯状編地体)を配置するような構成であることから、関節用サポータ1を正規の位置に着用するだけで、帯状編地体が望ましい位置に配置されることになる。
図4(a)、図5(a)を参照して、関節用サポータ1の着用者が歩行を始める場合、膝屈筋(図示しない)を介して膝裏の上部側に、白抜き矢印で示す図面上で右から左に向かう力F1が発生する。この際、図5(a)に示すように、強緊締力編地部10(帯状編地体)の略中心に配置されることになる膝関節Hが支点C、強緊締力編地部10を形成する略U字状の帯状編地体のうち、内面側(膝裏側)の湾曲部分が力点R、強緊締力編地部10を形成する略U字状の帯状編地体のうち、外面側(膝表側)の湾曲部分が作用点Sとなって、てこの原理が働き、力F1に相反する方向に働く力F2が発生する。
これにより、図4(b)、図5(b)に示すように、膝関節Hを挟んで相反する方向に働く力F1と力F2(白抜き矢印で示す左から右に向かう力)とが脚Kに負荷され、膝を容易に曲げることができる。
一方、膝を伸ばす場合においては、屈曲状態にある関節用サポータ1に伸縮素材の復元力が発生する。この際、図5(c)に示すように、膝関節Hが支点C、強緊締力編地部10を形成する略U字状の帯状編地体のうち外面側(膝表側)の湾曲部分が力点R、強緊締力編地部10を形成する略U字状の帯状編地体のうち内面側(膝裏側)の湾曲部分が作用点Sとなり、てこの原理が働く。
これにより、図4(c)、図5(c)に示すように、膝関節Hを挟んで相反する方向に働く力F1と力F2とが脚Kに負荷され、膝を容易に伸ばすことができる。
【0026】
以上のような構成からなる関節用サポータ1は以下の効果を奏する。
【0027】
伸縮素材を筒状に形成してなり、伸縮力の異なる(伸縮力に強弱のある)強緊締力編地部10と弱緊締力編地部20とを備え、強緊締力編地部10の構成を、関節用サポータ1の着用時において、体表面の外面側において膝関節Hを囲むように通り、更に膝関節Hの側面を斜め方向に通って、前記一面側の裏面側となる体表面の内面側において膝関節Hを囲むように閉じる一続きの帯状編地体で形成する構成とすることで、膝関節Hを中心として膝関節Hの曲げ伸ばしを行う際に、強緊締力編地部10(帯状編地体)を介して、いわゆるてこの原理を働かせることができる。よって膝関節Hの曲げ伸ばし時に着用者の脚Kに働く力を有効に利用することができる。従って膝関節Hの曲げ伸ばしを少量の力でもスムーズ且つ容易に行うことを実現可能とする関節用サポータとすることができる。加えて、膝関節Hの曲げ伸ばしをスムーズに行うことができることで、足を前方に出し易く、上方に上げ易くすることが可能な関節用サポータとすることができる。このような効果は、歩行時や階段の昇降時に膝の曲げ伸ばしや、上げ下げが億劫となっている高齢者や膝に疾患を有する者にとって、特に有効な効果である。
【0028】
また弱緊締力編地部20よりも緊締力の強い(伸縮力の弱い)強緊締力編地部10(帯状編地体)の構成として、体表面の外面側から内面側に渡って膝関節Hを囲むように強緊締力編地部10(帯状編地体)を配置することで、膝関節Hを曲げ伸ばしする際に、強緊締力編地部10(帯状編地体)で膝関節Hを効果的に支持することができる。即ち、強緊締力編地部10(帯状編地体)を、いわゆるテーピングとして利用することができるので、膝関節Hを曲げ伸ばしする際に、強緊締力編地部10(帯状編地体)によって関節のぐらつきを防止できると共に、正しい位置に膝関節Hを固定することができる。よって膝関節Hの損傷を効果的に防止できる。
更に体表面の外面側において膝関節Hを下方から略U字状に囲むと共に、膝の裏面側に配置される略U字状の端部(帯状編地体の上方側の頂部)を、上下方向に幅広な長さを有するずり落ち防止用帯状片30(上側ずり落ち防止用帯状片31)と連結させる構成とすることで、強緊締力編地部10(帯状編地体)で膝関節Hをしっかりと保持させながら、膝関節Hを持ち上げるような効果を奏することができる。よって一段と楽に膝を上げることができる関節用サポータ1とすることができる。
また体表面の外面側に配置される強緊締力編地部10(帯状編地体)の端部を略U字状に形成することで、図1(a)に示すように、膝関節Hをロスなく囲むことができる。よって強緊締力編地部10(帯状編地体)で膝関節Hを一段としっかりと保持させることができる。
加えて、伸縮性に乏しい強緊締力編地部10と、良好な伸縮性を備える弱緊締力編地部20との両方を備えることで、膝関節Hを曲げ伸ばしする際に、強緊締力編地部10が備える効果に加えて、関節を動かす時や運動時にも運動性を阻害することがない関節用サポータ1とすることができる。
【0029】
また上端と下端とにずり落ち防止用帯状片30を備える構成とすることで、使用時にサポータがずり落ちることを効果的に防止することができる。
また上側ずり落ち防止用帯状片31の上下方向の長さ(幅)を、下側ずり落ち防止用帯状片32の上下方向の長さ(幅)よりも長い構成とすることで、使用時にサポータがずり落ちることを一段と効果的に防止することができる。
【0030】
また、関節用サポータ1の着用位置を示す着用位置指示用印21を備える構成とすることで、使用者が正常な着用位置を容易に把握し易い関節用サポータ1とすることができる。
【0031】
なお、強緊締力編地部(帯状編地体)の形状、向き、幅などは本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。例えば、既述した実施形態の構成に替えて、体表面の外面側において膝関節Hを上方から略U字状に囲むように通り、更に膝関節Hの側面を斜め方向に通って、体表面の内面側において膝関節Hを下方から略U字状に囲むように通って閉じる一続きの帯状編地体で強緊締力編地部を形成する構成としてもよい。或いは体表面の外面側に配置される強緊締力編地部(帯状編地体)の端部の形状と、体表面の内面側に配置される強緊締力編地部(帯状編地体)の端部の形状とを、略U字状ではなく、略V字形状にする構成としてもよい。
つまり強緊締力編地部が、サポータの着用時において、体表面の一面側(外面側)において関節を囲むように通り、更に関節の側面を斜め方向に通って、前記一面側の裏面側となる体表面の他面側(内面側)において膝関節Hを囲むように閉じる一続きの帯状編地体で形成するものであれば、その形状や向きなどは適宜変更可能である。
【0032】
また本実施形態においては、関節用サポータを膝関節に使用するものとしたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、ひじや足首、手首や指の関節など、他の如何なる関節に使用する関節用サポータとしてもよい。本発明の関節用サポータは、そのような概念も含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、関節の曲げ伸ばしを容易に行うことができることから、膝やひじなどの関節に着用する関節用サポータとして、産業上の利用性が高い。
【符号の説明】
【0034】
1 関節用サポータ
10 強緊締力編地部
20 弱緊締力編地部
21 着用位置指示用印
30 ずり落ち防止用帯状片
31 上側ずり落ち防止用帯状片
32 下側ずり落ち防止用帯状片
C 支点
D 間隙
F1 力
F2 力
K 脚
H 膝関節
P 中心
R 力点
S 作用点
図1
図2
図3
図4
図5