(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】橋梁に対して適用される補修用足場の設置方法
(51)【国際特許分類】
E01D 22/00 20060101AFI20220905BHJP
E01D 21/00 20060101ALI20220905BHJP
E04G 21/24 20060101ALI20220905BHJP
E04G 21/32 20060101ALI20220905BHJP
E04G 5/00 20060101ALI20220905BHJP
【FI】
E01D22/00 A
E01D21/00 A
E04G21/24 A
E04G21/32 B
E04G5/00 301G
(21)【出願番号】P 2018216693
(22)【出願日】2018-11-19
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】503055554
【氏名又は名称】ヤマダインフラテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】山田 博文
(72)【発明者】
【氏名】山田 翔平
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03081718(EP,A1)
【文献】特開2004-324230(JP,A)
【文献】特開2000-240297(JP,A)
【文献】特開平07-150770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00-24/00
E04G 1/00-7/34
21/24-23/08
27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁に対して適用される補修用足場の設置方法であって、
前記橋梁における補修対象面を、複数の下地材で囲って、補修用足場に補修用の作業空間を形成する工程と、
前記下地材同士が突き合わされることで前記作業空間側に形成されてなる角辺部に、断面視略L字形状で一対の取付板面部を備えた長尺状の目張り部材を、前記角辺部の角辺方向と当該目張り部材の長手方向とを互いに一致させるように前記作業空間側から重ね合わせる工程と、
前記目張り部材の前記一対の取付板面部の少なくとも一方に、所定の固定部材を前記作業空間側から打ち込むことにより、前記目張り部材を前記下地材に固定して前記作業空間を遮蔽空間とする工程と、を含む
ことを特徴とする橋梁に対して適用される補修用足場の設置方法。
【請求項2】
前記角辺部の前記作業空間側に防塵シートを配置すると共に、前記目張り部材を前記角辺部に前記作業空間側から重ね合わせて、前記下地材と前記目張り部材との間に前記防塵シートが挟まれた状態を得る工程と、
前記目張り部材の前記一対の取付板面部の少なくとも一方に、所定の固定部材を前記作業空間側から打ち込むことにより、前記防塵シートごと前記目張り部材を前記下地材に固定する工程と、を含む
請求項1に記載の橋梁に対して適用される補修用足場の設置方法。
【請求項3】
前記所定の固定部材を介して前記下地材に固定された前記目張り部材の前記作業空間側に防塵シートを配置すると共に、前記防塵シートと前記目張り部材表面とに粘着テープを貼付して前記防塵シートを固定する工程を含む
請求項1に記載の橋梁に対して適用される補修用足場の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁に対して適用される補修用足場を設置する際に好適な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鋼構造体やコンクリート製構造体等からなる橋梁には補修工事が必要であり、その際には、工事に従事する作業者の足場確保、墜落防止、あるいは第三者に対する落下防止を目的として補修用足場が設置される(橋梁仮設工事の積算 平成28年度版 一般社団法人 日本建設機械施工協会より)。
【0003】
そして、このような補修用足場内では、例えばブラスト処理が行われる場合があり、粉塵が外部へ飛散しないように防塵シートで作業空間を囲うことが行われている(例えば特許文献1~特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-32305号公報
【文献】特開2005-213965号公報
【文献】特開2014-9561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、補修用足場の天井部や床部にあっては、突き合わせた下地材間に隙間が生じやすく、とりわけ粉塵が大量に発生する工事においては、防塵シートを突き抜けて粉塵が外部へ飛散するおそれがあるため、適切な環境を容易かつ迅速に構築することが重要となってくる。例えば従来にあっては、角辺部の隙間を埋めるべく養生テープを作業空間側から貼付する場合があったが、実際上、下地材表面に養生テープが貼付しにくいこともあり、養生テープが剥がれないよう幾重にも養生テープを長い距離にわたって重ねて貼っていくという煩雑で面倒な準備作業を要した。
【0006】
そこで本発明は、上記の背景事情に鑑み、橋梁に対して適用される補修用足場の設置方法を提供することを目的とする。
【0007】
また本発明は、上記した橋梁に対して適用される補修用足場の設置方法に用いられる目張り部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、橋梁に対して適用される補修用足場の設置方法であって、前記橋梁における補修対象面を、複数の下地材で囲って、補修用足場に補修用の作業空間を形成する工程と、前記下地材同士が突き合わされることで前記作業空間側に形成されてなる角辺部に、断面視略L字形状で一対の取付板面部を備えた長尺状の目張り部材を、前記角辺部の角辺方向と当該目張り部材の長手方向とを互いに一致させるように前記作業空間側から重ね合わせる工程と、前記目張り部材の前記一対の取付板面部の少なくとも一方に、所定の固定部材を前記作業空間側から打ち込むことにより、前記目張り部材を前記下地材に固定して前記作業空間を遮蔽空間とする工程と、を含むことを特徴とする橋梁に対して適用される補修用足場の設置方法である。
【0009】
ここで一般的に角辺部には、作業空間と外部空間とを連通する隙間が生じやすいところ、本発明においては、前記角辺部に、作業空間側から目張り部材が配置されることになるため、隙間が閉塞されることで当該作業空間が遮蔽された空間となる。このように、作業空間が遮蔽されると、粉塵が外部に飛散してしまうことを防止できたり、作業空間内への雨水の浸入を防止できたりする。特に、例えば投射材を使った補修工事を行う場合には、粉塵が大量に発生するため本発明はとりわけ有効に機能する。なお、作業空間を遮蔽するための作業は、長尺状の目張り部材を角辺部にあてがって固定部材を打ち込むという簡便なものでよいため、作業性が従来に比して飛躍的に向上する。
【0010】
また、前記角辺部の前記作業空間側に防塵シートを配置すると共に、前記目張り部材を前記角辺部に前記作業空間側から重ね合わせて、前記下地材と前記目張り部材との間に前記防塵シートが挟まれた状態を得る工程と、前記目張り部材の前記一対の取付板面部の少なくとも一方に、所定の固定部材を前記作業空間側から打ち込むことにより、前記防塵シートごと前記目張り部材を前記下地材に固定する工程と、を含む構成が提案される。
【0011】
あるいは、前記所定の固定部材を介して前記下地材に固定された前記目張り部材の前記作業空間側に防塵シートを配置すると共に、前記防塵シートと前記目張り部材表面とに粘着テープを貼付して前記防塵シートを固定する工程を含む構成が提案される。
【0012】
かかる構成とすることにより、容易かつ迅速に防塵シートを張設することができる。
【0013】
また本発明は、前記橋梁に対して適用される補修用足場の設置方法に用いられる目張り部材であって、樹脂材料からなる可撓性の成形品で構成されていることを特徴とする目張り部材である。
【0014】
ここで、前記角辺部の内角は必ずしも直角(90°)になるとは限らないところ、かかる構成にあっては、前記角辺部の形状に応じて目張り部材を、適宜、弾性変形させて当該目張り部材を角辺部に適切に収めることが可能となる。また、その材料特性により、所定の固定部材を打ち込んで係止させることも容易となる。
【0015】
さらに、前記一対の取付板面部同士が形成する内角が前記下地材に固定される前の状態では鈍角であって、前記下地材に固定された状態における前記内角は、前記下地材に固定される前の状態における内角より小さくなる構成が提案される。
【0016】
かかる構成とすることにより、当該目張り部材を角辺部に弾接させて当該角辺部に保持させることも可能となる。これにより、より一層、作業性が良好となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の橋梁に対して適用される補修用足場の設置方法は、作業空間を効率良く遮蔽することができる効果がある。
【0018】
また本発明の目張り部材は、角辺部に容易に取り付けることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】補修工事の形態を説明する概要説明図である。
【
図2】目張り部材を示し、(a)は斜視図であり、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、橋梁に対して適用される補修用足場の設置方法、及びこれに用いられる目張り部材を具体化した実施例を詳細に説明する。なお、本発明は、下記に示す実施例に限定されることはなく、適宜設計変更が可能である。
【0021】
〔第1の実施形態〕
図1に示すように、橋梁Kには補修用足場Lが設置されており、補修用足場Lには作業現場αが形成されている。なお、作業現場αに設けられる作業空間βについては、本発明の要部にかかるため後で詳述する。
【0022】
また、
図1に示すように、作業現場αに隣接する場所には、循環式ブラスト装置1が設置されている。ここで、循環式ブラスト装置1は、装置本体部2を備えており、装置本体部2は、噴射器3が接続された圧送ホース4を具備している。そして、この噴射器3からは、投射材としてのグリットgやショットsが噴射される。
【0023】
また、装置本体部2は、吸引ホース5を具備し、吸引ホース5の先端が作業現場αに配置されている。これにより、吸引ホース5を介して、作業現場αで発生した使用済みグリットg’、使用済みショットs’、及び剥離した塗膜やサビ等を含む異物Dからなる粉塵Xを吸引することができる。なお、粉塵Xが外部に漏出しないように、後述する防塵シート70が作業現場αには張設され、図示しない送風機や集塵装置等も適宜設置される。
【0024】
次に、作業現場αに設けられる作業空間βについて説明する。
【0025】
図3に示すように、作業現場αにあっては、補修対象面を複数の下地材80で囲って作業空間βを形成する。下地材80は、通常、木製の板材(例えば型枠用合板、あるいは足場板合板)からなり、下地材80を複数並べて床部、側壁部、あるいは天井部を構成して遮蔽性のある空間を形成する。
【0026】
さらに、本発明にあっては、
図2に示すような目張り部材90を使用する。目張り部材90は、可撓性を有する断面視略L字形状の樹脂成形品からなり、一対の取付板面部91,92を備えた長尺部材で構成される。そして、一対の取付板面部91,92同士が形成する内角は、鈍角に設定されている。なお、本実施例における目張り部材90における長尺方向の長さは900mmであり、取付板面部91,92の幅長さは各75mmであり、厚さは2mmであり、取付板面部91,92同士が形成する内角は100°である。
【0027】
次に、補修用足場の設置方法について説明する。
図3(a)に示したように、下地材80で床部、側壁部及び天井部を構成した後、防塵シート70を作業空間β側から下地材80に沿うように配置する。
【0028】
ここで、防塵シート70を下地材80に取り付けるべく、
図3(b)に示したように、下地材80,80同士が付き合わされて隙間が形成された長尺状の角辺部Zに、上述の目張り部材90を作業空間β側から重ね合わせる。
【0029】
ここで、目張り部材90を角辺部Zに重ね合わせる際は、目張り部材90の長手方向と、角辺部Zの長手方向(辺の方向)とを一致させる。そして、下地材80と目張り部材90との間に防塵シート70が挟まれた状態とする。
【0030】
その上で、目張り部材90に対して、作業空間β側から固定部材としての釘(タッカー)95を打ち込んで、防塵シート70ごと、目張り部材90を下地材80に固定する。この固定作業は、一方の手で目張り部材90を支え、他方の手で釘打ち機等によって釘95を打ち込むことで可能となるため、一人で作業することができる。ここで、目張り部材90は、樹脂成形品であり、内角が鈍角に設定されているため、一方の取付板面部92を側壁部に固定するだけで、他方の取付板面部91は、その反力によって天井部に対して弾接することとなり、釘(タッカー)を打ち込む必要がない。ただし、本発明は、他方の取付板面部91にも釘(タッカー)を打ち込む構成を積極的に排除するものではない。
【0031】
かかる構成とすることにより、作業空間β内でブラスト作業による粉塵が多量に発生した場合でも、粉塵が角辺部Zの隙間から外部に飛散してしまうことを適切に阻止することができる。また、外部から雨水等が作業空間βに浸入することも防止することができる。なお、目張り部材90の厚みは、投射材が突き抜けない強度を確保できる寸法にすることが望ましい。
【0032】
〔第2の実施形態〕
目張り部材90は、例えば
図4に示したような下地材80,80同士がなす角が鋭角である角辺部Zにおいても適用可能である。すなわち、目張り部材90が可撓性を有しているために角辺部Zの角度に応じて弾性変形させて弾接させることで、防塵シート70の張設作業が容易となる。また、場合によっては目張り部材90の内角を押し広げた状態で角辺部Zに固定させてもよい。
【0033】
〔第3の実施形態〕
例えば
図5に示すように、目張り部材90を、直接、下地材80,80に固定して角辺部Zの隙間を閉塞した後、防塵シート70の縁部を目張り部材90の表面に配して粘着テープ98で貼付するようにしてもよい。
【0034】
このように、粘着テープ98を目張り部材90の表面に貼付する構成とすることにより、粘着テープ98の剥がれを適切に防止することができる。
【0035】
これまでに述べた上記の実施例において、各部の寸法形状は適宜自由に選択可能である。
【0036】
また、例えば固定部材としての釘95は、例えばステープル等でも構わない。
【0037】
また、目張り部材90において、取付板面部91,92に所定の固定部材が挿通される案内孔部が形成されていても構わない。
【0038】
また、取付板面部91,92同士が形成する内角は鈍角である必要はないが、防塵シート70を張設する作業を容易とする点を考慮すれば、90°以上110°以下であることが好ましい。前記内角が、90°未満だと、取付板面部91,92と下地材80との間に隙間が生じやすくなり、防塵シート70を適切に固定できないおそれがある。また前記内角が110°を越えると、目張り部材90を角辺部Zに収める作業が困難となるおそれがある。
【0039】
目張り部材90は、例えばポリ塩化ビニルやポリエチレンからなる樹脂成形品とすることができるが、これに限定されることはない。また、場合によっては、再利用に適した材料が選択されてもよい。
【0040】
また、本発明が適用可能な補修工事には、ブラストやピーニング作業のほか、ウォータージェットによる作業が含まれてもよい。
【0041】
また、補修用足場Lは、いわゆるTYPEA1等に対応する吊足場であってもよいし、いわゆるTYPEBの朝顔であってもよいし、中段足場等のその他の足場であってもよい。
【0042】
また、補修箇所としては床版補修であってもよく、補修用足場Lにおける角辺部Zとしては、天井部と側壁部とからなる角辺部Zであってもよいし、床部と側壁部とからなる角辺部Zであってもよいし、他の部位に形成された角辺部Zであってもよい。
【符号の説明】
【0043】
70 防塵シート
80 下地材
90 目張り部材
91,92 取付板面部
95 釘(固定部材)
K 橋梁
L 補修用足場
Z 角辺部
β 作業空間