IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 清華大学の特許一覧

特許7134490電子ビーム選択的溶融と電子ビーム切断とを組み合わせた積層造形装置
<>
  • 特許-電子ビーム選択的溶融と電子ビーム切断とを組み合わせた積層造形装置 図1
  • 特許-電子ビーム選択的溶融と電子ビーム切断とを組み合わせた積層造形装置 図2
  • 特許-電子ビーム選択的溶融と電子ビーム切断とを組み合わせた積層造形装置 図3
  • 特許-電子ビーム選択的溶融と電子ビーム切断とを組み合わせた積層造形装置 図4
  • 特許-電子ビーム選択的溶融と電子ビーム切断とを組み合わせた積層造形装置 図5
  • 特許-電子ビーム選択的溶融と電子ビーム切断とを組み合わせた積層造形装置 図6
  • 特許-電子ビーム選択的溶融と電子ビーム切断とを組み合わせた積層造形装置 図7
  • 特許-電子ビーム選択的溶融と電子ビーム切断とを組み合わせた積層造形装置 図8
  • 特許-電子ビーム選択的溶融と電子ビーム切断とを組み合わせた積層造形装置 図9
  • 特許-電子ビーム選択的溶融と電子ビーム切断とを組み合わせた積層造形装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】電子ビーム選択的溶融と電子ビーム切断とを組み合わせた積層造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/268 20170101AFI20220905BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20220905BHJP
   B29C 64/205 20170101ALI20220905BHJP
   B29C 64/245 20170101ALI20220905BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20220905BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220905BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220905BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20220905BHJP
【FI】
B29C64/268
B29C64/153
B29C64/205
B29C64/245
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019539168
(86)(22)【出願日】2018-01-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 CN2018073024
(87)【国際公開番号】W WO2018133799
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2019-09-09
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】201710047601.1
(32)【優先日】2017-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】502192546
【氏名又は名称】清華大学
【氏名又は名称原語表記】Tsinghua University
【住所又は居所原語表記】Tsinghua University,Haidian District,Beijing 100084,P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】林 峰
(72)【発明者】
【氏名】周 斌
(72)【発明者】
【氏名】▲やん▼ 文▲韜▼
(72)【発明者】
【氏名】李 宏新
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 磊
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲てぃん▼
(72)【発明者】
【氏名】郭 超
【合議体】
【審判長】松波 由美子
【審判官】井口 猶二
【審判官】清水 康司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-168228(JP,A)
【文献】国際公開第2016/103493(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104759623(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビーム選択的溶融と電子ビーム切断とを組み合わせた積層造形装置であって、
真空成形室と、
成形領域が少なくとも前記真空成形室内に設けられる作業台装置と、
粉末を前記成形領域に広げるための粉末供給装置と、
走査範囲が少なくとも前記成形領域の一部をカバーする少なくとも一つの電子ビーム放射集束走査装置と、
各前記電子ビーム放射集束走査装置の作動を制御して、加熱と、選択的溶融と、電子ビーム切断との三つのモードで電子ビームを放射させるコントローラと、を含み、
前記粉末供給装置は、粉末を成形領域に広げて所定の厚さの粉末床を形成し、
電子ビーム放射集束走査装置は、加熱モードである電子ビームを放射して前記粉末床を走査予熱し、粉末を加熱して予備焼結を発生させ、
電子ビーム放射集束走査装置は、選択的溶融モードである電子ビームを放射して断面内の粉末を走査して溶融し、前記粉末を溶融堆積して、所望の部品の断面層を形成し、
電子ビーム放射集束走査装置は、電子ビーム切断モードである電子ビームを放射して前記部品の断面の内外の輪郭に対して1回又は複数回の切断走査を行い、輪郭上の粗い縁部と熔接された粉末を除去または切除して、正確で滑らかな部品の断面の内外の輪郭を取得し、
前記切断輪郭の部品の断面層に粉末を広げてから、加熱と、溶融堆積と、輪郭切断を順次に行い、所望の3次元実体部品が得られるまで、上記の広げと、加熱と、溶融堆積と、輪郭切断との分層製造プロセスを繰り返し、
前記加熱モードにおいて、前記電子ビーム放射集束走査装置によって放射された電子ビームは、成形平面の上方又は下方に集束され、走査速度は、0.01メートル/秒~50メートル/秒であり、2回の隣接する走査パス間は重畳しなく、走査間隔は10ミクロンより大きく、
前記選択的溶融モードにおいて、前記電子ビーム放射集束走査装置によって放射された電子ビームは、成形平面に集束され、走査速度は、0.01メートル/秒~10メートル/秒であり、2回の隣接する走査パス間は重畳しなく、走査間隔は10ミクロンより大きく、
前記電子ビーム切断モードにおいて、前記電子ビーム放射集束走査装置によって放射された連続的電子ビームは、部品の断面平面に集束され、走査速度は、1メートル/秒~50メートル/秒であり、かつ2回の隣接する走査パスは完全に重畳するか、又は走査間隔は8ミクロンより小さい、または、前記電子ビーム切断モードにおいて、前記電子ビーム放射集束走査装置によって放射されたパルス電子ビームは、部品の断面平面に集束され、パルス周波数は、1Hzから100kHzであり、走査速度は、0.1メートル/秒~5メートル/秒であり、かつ2回の隣接する走査パスは重畳するか、又は走査間隔は8ミクロンより小さい、
ことを特徴とする電子ビーム選択的溶融と電子ビーム切断とを組み合わせた積層造形装置。
【請求項2】
前記電子ビーム放射集束走査装置の電子ビーム加速電圧は、10kV~200kVで変化する、
ことを特徴とする請求項1に記載の積層造形装置。
【請求項3】
前記電子ビーム放射集束走査装置は、連続的電子ビームとパルス電子ビームを生成可能である、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の積層造形装置。
【請求項4】
前記選択的溶融モードにおいて、前記電子ビーム放射集束走査装置は、電子ビームのビーム強度と、成形平面における焦点移動速度と、隣接する走査パスの走査間隔と、間隔時間とを調整することによって溶融の深さを調整し、
現在の成形層の下に部品実体があり、かつ現在の成形層がそれに熔合する必要がある領域である場合、溶融の深さは現在の成形層の厚さを超え、現在の成形層の下が粉末床又は切断された輪郭の縁部の領域である場合、溶融の深さは現在の成形層の厚さ以下である、
ことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の積層造形装置。
【請求項5】
前記電子ビーム放射集束走査装置は、前記真空成形室の頂部に設けられ、かつ成形領域の真上に位置する
ことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の積層造形装置。
【請求項6】
前記粉末は、セラミック粉末及び/又は金属粉末を含む、
ことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の積層造形装置。
【請求項7】
二つの前記電子ビーム放射集束走査装置を含み、各前記電子ビーム放射集束走査装置によって放射された電子ビームは、いずれも加熱と、選択的溶融と、電子ビーム切断との三つのモードを有し、かつ二つの前記電子ビーム放射集束走査装置の走査領域は、縁部で重畳し、残りの90%以上の走査領域は、互いに重畳していない、
ことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の積層造形装置。
【請求項8】
アレイ状に配置される少なくとも四つの前記電子ビーム放射集束走査装置を含み、各前記電子ビーム放射集束走査装置によって放射された電子ビームは、いずれも加熱と、選択的溶融と、電子ビーム切断との三つのモードを有し、かつ各前記電子ビーム放射集束走査装置の走査領域は、縁部で重畳し、残りの80%以上の走査領域は、互いに重畳していない、
ことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の積層造形装置。
【請求項9】
前記電子ビーム放射集束走査装置は、前記作業台装置に対して移動可能である、
ことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の積層造形装置。
【請求項10】
前記作業台装置は、前記真空成形室内に移動可能に設けられる、
ことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の積層造形装置。
【請求項11】
前記作業台装置は、
前記成形領域が設けられる作業プラットフォームと、
前記作業プラットフォームの下に設けられ、成形シリンダとピストン式昇降装置とを含み、前記成形シリンダの上縁は、前記作業プラットフォームと同一平面にあり、前記ピストン式昇降装置は、前記成形シリンダ内で昇降可能であるピストン式成形シリンダ装置と、を含む、
ことを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の積層造形装置。
【請求項12】
前記粉末供給装置は、
前記粉末を前記作業プラットフォームの上面に供給する粉末供給器と、
前記作業プラットフォームに設けられ、かつ前記粉末を前記成形シリンダ内に搬送し、平らにする粉末敷設器と、を含む、
ことを特徴とする請求項11に記載の積層造形装置。
【請求項13】
前記電子ビーム放射集束走査装置は、
前記真空成形室の外部に設けられるハウジングと、
前記ハウジング内に設けられ、電子ビームを生成するフィラメントと、
前記ハウジング内にあり、かつ前記フィラメントに接続されるカソードと、
前記ハウジング内にあり、かつ前記フィラメントの下に位置するグリッド電極と、
前記ハウジング内にあり、かつ前記グリッド電極の下に位置するアノードと、
前記ハウジング内にあり、かつ前記アノードの下に位置する集束コイルと、
前記ハウジング内にあり、かつ前記集束コイルの下に位置する一対のX/Y偏向コイルと、を含む、
ことを特徴とする請求項12に記載の積層造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形の分野に関し、具体的には、電子ビーム選択的溶融加熱材料を使用して、材料を層ごとに焼結又は溶融堆積しながら、電子ビームを使用して成形材料の輪郭を切断し、成形材料を粉末から分離させ、高性能、高効率及び高精度の3次元部品の積層造形装置を実現する。
【背景技術】
【0002】
電子ビーム選択的溶融(Electron Beam selective Melting、EBSM)は、典型的な積層造形プロセスであり、複雑の構造と特殊な材料の3次元成形の点で大きい利点がある。電子ビーム選択的溶融プロセスは、高エネルギー電子ビームを熱源として使用して、粉末材料を層ごとに焼結又は溶融して、材料が層ごとに堆積されて成形するようにする。
【0003】
しかし、他の積層造形プロセスと同様に、電子ビーム選択的溶融プロセスにより製造された部品の表面粗さが悪く、作業対象の部品の表面仕上げと精度を改善するために、後続の機械加工又は研磨が必要とする。これらの後続の加工ステップは、部品の製造効率を低下するだけでなく、一部の刃具が進入できない部位(内部チャンネルなど)に対して加工を実施することができず、その表面の品質を改善することができないことがさらに大切なことである。したがって、作業対象の部品の表面仕上げが悪くことは、積層造形技術の一つのボトルネックとなる。
【0004】
このボトルネックを克服するために、関連技術では、積層造形作業対象の部品の表面の品質を改善するように、いくつかのオンライン切削加工の処理方法を提案する。すなわち「積層製造」(additive manufacturing)と「減法製造」(subtractive manufacturing)を組み合わせて積層製造と減法製造との組み合わせプロセスの発想である。発明特許出願CN104741609Aと、CN104526359Aと、CN105945578Aは、それぞれ電子ビーム選択的溶融とヒューズ成形された過程で機械減法製造と、レーザ切断とを組み合わせて、機械的ミリングヘッド又はレーザによって部品の断面輪郭をリアルタイムに切削加工して、部品精度と表面仕上げを改善することを提供する。
【0005】
これらの発明は、切削加工をオンライン積層造形プロセスに組み込まれているが、別の切削工具又はレーザシステムが必要であり、ワークが積層製造と減法製造との二つのステーションの間で連続的に移動する必要があり、加工精度に影響するか(例えば、CN104741609AとCN105945578A)、積層製造と減法製造の二つのシステムが同時に最適な加工位置に配置することができなく(例えば、CN104526359Aのように、電子ビーム放射構造とレーザ切削ヘッドは、同時に成形/加工領域の真上の最適な場所に位置することができない)、加工品質にも影響することができる。一つの切削装置(切削カッター又はレーザ切削システム)を追加すると、ある程度で機器構造の複雑性を増加する。
【0006】
発明特許出願CN105538728Aは、レーザ選択的溶融積層造形プロセス中でパルスレーザビームを使用して輪郭の縁部を走査して表面の凹凸を除去し、作業対象の部品の表面仕上げを改善することを提案する。当該特許は、同一走査検流計システムで、異なるレーザ光源によって放射された連続レーザとパルスレーザを入力して、積層製造と減法製造との組み合わせ加工を行う。上記の「積層製造」と「減法製造」の二つのレーザ走査システムが同時に最適な加工位置に位置できない構造的干渉の問題を避けたが、依然として二つの性質が異なるレーザ器と光路統合システムを配置する必要があるため、機器コストとデバッグの難しさを増加する。
【0007】
また、当該特許が対するレーザ選択的溶融プロセスは、レーザが材料を溶融するときに酸化と材料の気化でレーザレンズの蒸発が発生することを防止するために、大気圧力より大きい正圧である不活性保護雰囲気で実行する必要があり、パルスレーザ切断材料の効率を大幅に制限する。当該発明は、パルスレーザで輪郭の縁部を走査して「表面の凹凸を除去する」ことを提供するため、多くの材料を切削する必要があり、当該発明の実施の難しさがさらに増大する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願は、発明者が以下の事実と問題の発見と理解に基づいて行う。
現在のすべての電子ビーム選択的溶融プロセスでは、電子ビームは、熱源として粉末材料を予熱、溶融、保温、成形するために用いられ、粉末材料を層ごとに焼結又は溶融して、材料が層ごとに堆積成形されて、積層造形の「積層製造」の目的を達成する。電子ビーム選択的溶融プロセスでの部品の表面仕上げが良くない課題については、通常、後続工程で、「減法製造」という手段で表面の品質を向上させるため、部品製造の全体的な効率を低下するだけでなく、内部チャンネルなどの表面の加工を行うことができない課題が存在する。
【0009】
電子ビーム選択的溶融プロセスでは、デジタル制御システムを使用して、電子ビーム走査の精度と任意の図形走査の能力を大幅に向上させることができ、電子ビーム選択的溶融と電子ビーム切断に所望な電子ビームパラメータと走査パラメータは、電子ビームの発生、加速、集束及び走査が完全に一つのシステムに統合することを実現することができる。レーザ選択的溶融とレーザ切断のような異なる性質のレーザ(連続レーザと超短パルスレーザ)を使用しなくてはいけない必要がなく、一つの電子銃(電子ビームの発生、加速、集束、走査機能を含む)のみを使用して、異なる作動パラメータ(低速走査と高速走査)又は作動モード(連続ビームとパルスビーム)を使用することによって、選択的溶融や輪郭切断加工にも用いられることを実現する積層製造と減法製造との組み合わせ製造である。
【0010】
これにより、システムが簡素化され、機器コストが削減される。同時に、電子ビーム選択的溶融の真空環境では、材料の気化がもっと容易になり、電子ビーム切断の効率がレーザ切断の効率より高い。専用の切断ステーション又は切断工具を増加する積層製造と減法製造との技術(例えば、発明特許出願CN104741609A、CN104526359A、CN105945578Aなど)に対して、システムがさらに簡素化され、一つの走査加工システムは、「積層製造」を完成し、「減法製造」も完成して、有効的に加工精度を保証する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、新型の電子ビーム選択的溶融と電子ビーム切断とを組み合わせた積層造形装置を提供し、当該積層造形装置は、電子ビーム選択的溶融と電子ビーム切断を組み合わせて複雑な3次元部品を成形することができる。
【0012】
本発明の実施例に係る電子ビーム選択的溶融と電子ビーム切断とを組み合わせた積層造形装置は、真空成形室と、成形領域が少なくとも前記真空成形室内に設けられる作業台装置と、粉末を前記成形領域に広げるための粉末供給装置と、走査範囲が少なくとも前記成形領域の一部をカバーする少なくとも一つの電子ビーム放射集束走査装置と、各前記電子ビーム放射集束走査装置の作動を制御して、加熱と、選択的溶融と、電子ビーム切断との三つのモードで電子ビームを放射させるコントローラと、を含み、前記粉末供給装置は、粉末を成形領域に広げて所定の厚さの粉末床を形成し、電子ビーム放射集束走査装置は、加熱モードである電子ビームを放射して前記粉末床を走査予熱し、粉末を加熱して予備焼結を発生させ、電子ビーム放射集束走査装置は、選択的溶融モードである電子ビームを放射して断面内の粉末を走査して溶融し、前記粉末を溶融堆積して、所望の部品の断面層を形成し、電子ビーム放射集束走査装置は、電子ビーム切断モードである電子ビームを放射して前記部品の断面の内外の輪郭に対して1回又は複数回の切断走査を行い、輪郭上の粗い縁部と熔接された粉末を除去または切除して、正確で滑らかな部品の断面の内外の輪郭を取得し、前記切断輪郭の部品の断面層に粉末を広げてから、加熱と、溶融堆積と、輪郭切断を順次に行い、所望の3次元実体部品が得られるまで、上記の広げと、加熱と、溶融堆積と、輪郭切断との分層製造プロセスを繰り返し、前記加熱モードにおいて、前記電子ビーム放射集束走査装置によって放射された電子ビームは、成形平面の上方又は下方に集束され、走査速度は、0.01メートル/秒~50メートル/秒であり、2回の隣接する走査パス間は重畳しなく、走査間隔は10ミクロンより大きく、前記選択的溶融モードにおいて、前記電子ビーム放射集束走査装置によって放射された電子ビームは、成形平面に集束され、走査速度は、0.01メートル/秒~10メートル/秒であり、2回の隣接する走査パス間は重畳しなく、走査間隔は10ミクロンより大きく、前記電子ビーム切断モードにおいて、前記電子ビーム放射集束走査装置によって放射された連続的電子ビームは、部品の断面平面に集束され、走査速度は、1メートル/秒~50メートル/秒であり、かつ2回の隣接する走査パスは完全に重畳するか、又は走査間隔は8ミクロンより小さい、または、前記電子ビーム切断モードにおいて、前記電子ビーム放射集束走査装置によって放射されたパルス電子ビームは、部品の断面平面に集束され、パルス周波数は、1Hzから100kHzであり、走査速度は、0.1メートル/秒~5メートル/秒であり、かつ2回の隣接する走査パスは重畳するか、又は走査間隔は8ミクロンより小さい
【0013】
本発明より提供される電子ビーム選択的溶融と切断を組み合わせる積層造形装置は、電子ビーム選択的溶融プロセスでは、電子ビームの放射パラメータと走査パラメータなどを変更することによって、電子ビーム放射集束走査装置が粉末床の加熱機能と、選択的溶融堆積機能と、部品の断面の内外の輪郭切断機能とを備える、電子ビーム選択的溶融と電子ビーム輪郭切断を組み合わせて、「積層製造」と「減法製造」の同期組み合わせ加工を実現する。
【0014】
電子ビーム放射集束走査装置における機能の統合を使用して、粉末材料を電子ビーム選択的溶融するとともに、電子ビームを使用して堆積されたばかりの部品の断面輪郭を切断し、輪郭上の粗い縁部と熔接された粉末を除去又は切除して、正確で滑らかな部品の断面の内外の輪郭を取得する。このような電子ビーム選択的溶融堆積(すなわち「積層製造」プロセス)と内外の輪郭電子ビーム切断(すなわち「減法製造」プロセス)を交互に行って、最後に、サイズ精度と表面仕上げがいずれも高い3次元実体部品を取得することを保証し、特に、部品の内部チャンネルなどの加工しにくい部位の表面仕上げと精度を保証する。
【0015】
また、本発明により提供される上記の電子ビーム選択的溶融と電子ビーム切断とを組み合わせた積層造形装置は、以下のような付加的な技術的特徴を有することもできる。
本発明の一例によれば、真空形成室の圧力は、10Pa未満であり、不均衡な要素の過剰な蒸発を防ぐように、不活性ガスで再充填される。不活性ガスは、ヘリウム、アルゴン、窒素を含むが、これらに限定されていない。
本発明の一例によれば、前記真空形成室の圧力は、1Pa~10 -3 Paである。
本発明の一例によれば、前記電子ビーム放射集束走査装置の電子ビーム加速電圧は、10kV~200kVで変化する。
【0016】
本発明の一例によれば、前記電子ビーム放射集束走査装置は、連続的電子ビームとパルス電子ビームを生成することができる。
【0020】
本発明の一例によれば、前記選択的溶融モードにおいて、前記電子ビーム放射集束走査装置は、電子ビームのビーム強度と、成形平面における焦点移動速度と、隣接する走査パスの走査間隔と、間隔時間とを調整することによって溶融の深さを調整し、その中、現在の成形層の下に部品実体があり、かつ現在の成形層がそれに熔合する必要がある領域である場合、溶融の深さは現在の成形層の厚さを超え、現在の成形層の下が粉末床又は切断された輪郭の縁部の領域である場合、溶融の深さは現在の成形層の厚さ以下である。
【0023】
本発明の一例によれば、前記電子ビーム放射集束走査装置は、前記真空成形室の頂部に設けられ、かつ成形領域の真上に位置する。
【0024】
本発明の一例によれば、前記粉末は、セラミック粉末及び/又は金属粉末を含む。
【0025】
さらに、前記電子ビーム放射集束走査装置は、走査範囲を拡大するために、前記作業台装置に対して移動可能である。
【0026】
さらに、前記作業台装置は、走査範囲を拡大するために、前記真空成形室内に移動可能に設けられる。
【0027】
本発明の一例によれば、二つの前記電子ビーム放射集束走査装置を含み、各前記電子ビーム放射集束走査装置によって放射された電子ビームは、いずれも加熱と、選択的溶融と、電子ビーム切断との三つのモードを有し、かつ二つの前記電子ビーム放射集束走査装置の走査領域は、縁部で重畳し、残りの90%以上の走査領域は、互いに重畳していない。
【0028】
本発明の一例によれば、アレイ状に配置される少なくとも四つの前記電子ビーム放射集束走査装置を含み、各前記電子ビーム放射集束走査装置によって放射された電子ビームは、いずれも加熱と、選択的溶融と、電子ビーム切断との三つのモードを有し、かつ各前記電子ビーム放射集束走査装置の走査領域は、縁部で重畳し、残りの80%以上の走査領域は、互いに重畳していない。
【0029】
本発明の一例によれば、前記作業台装置は、前記成形領域が設けられる作業プラットフォームと、前記ピストン式成形シリンダ装置は、前記作業プラットフォームの下に設けられ、成形シリンダとピストン式昇降装置とを含み、前記成形シリンダの上縁は、前記作業プラットフォームと同一平面にあり、前記ピストン式昇降装置は、前記成形シリンダ内で昇降可能なピストン式成形シリンダ装置と、を含む。
【0030】
本発明の一例によれば、前記粉末供給装置は、前記粉末を前記作業プラットフォームの上面に供給する粉末供給器と、前記作業プラットフォームに設けられ、かつ前記粉末を前記成形シリンダ内に搬送し、平らにする粉末敷設器と、を含む。
【0031】
本発明の一例によれば、前記電子ビーム放射集束走査装置は、前記真空成形室の外部に設けられるハウジングと、前記ハウジング内に設けられ、電子ビームを生成するフィラメントと、前記ハウジング内にあり、かつ前記フィラメントに接続されるカソードと、前記ハウジング内にあり、かつ前記フィラメントの下に位置するグリッドと、前記ハウジング内にあり、かつ前記グリッドの下に位置するアノードと、前記ハウジング内にあり、かつ前記アノードの下に位置する集束コイルと、前記ハウジング内にあり、かつ前記集束コイルの下に位置する一対のX/Y偏向コイルと、を含む。
【0032】
本発明の付加的な特徴及び利点は、以下の説明において部分的に示され、この説明から一部が明らかになるか、または、本発明の実施により理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の一実施例に係る電子ビーム選択的溶融と切断を組み合わせる積層造形装置の概略図である。
図2図1に示す装置の電子ビーム選択的溶融と切断領域の概略図である。
図3図1に示す装置の電子ビーム選択的溶融と切断領域の概略図である。
図4図1に示す装置の電子ビーム選択的溶融と切断領域の概略図である。
図5図1に示す装置の電子ビーム選択的溶融と切断領域の概略図である。
図6図1に示す装置の電子ビーム選択的溶融と切断領域の概略図である。
図7図1に示す装置の電子ビーム選択的溶融と切断領域の概略図である。
図8】本発明の他の実施例に係る電子ビーム選択的溶融と切断を組み合わせる積層造形装置の概略図である。
図9】本発明のもう一つの実施例に係る電子ビーム選択的溶融と切断を組み合わせる積層造形装置の概略図である。
図10図9に示す装置の走査範囲及び目標領域の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、本発明の実施形態を詳細に説明する。前記実施形態の例が図面に示されるが、同一または類似する符号は、常に、同一又は類似の部品、或いは、同一又は類似の機能を有する部品を表す。以下に、図面を参照しながら説明される実施形態は例示的なものであり、本発明を解釈するためだけに用いられ、本発明を限定するものと理解されてはならない。
【0035】
以下、図面を組み合わせて本発明の実施例に係る積層造形装置に対して詳細に説明する。
【0036】
図1図10に示すように、本発明の実施例に係る電子ビーム選択的溶融と切断を組み合わせる積層造形装置は、真空成形室1と、作業台装置と、粉末供給装置と、少なくとも一つの電子ビーム放射集束走査装置6と、コントローラ(図示せず)と、を含むことができる。
【0037】
具体的には、前記作業台装置の成形領域は、少なくとも真空成形室1内に設けられる。
本発明の一例によれば、真空形成室1の圧力は、10Pa未満であり、不均衡な要素の過剰な蒸発を防ぐように、不活性ガスで再充填される。不活性ガスは、ヘリウム、アルゴン、窒素を含むが、これらに限定されていない。好ましくは、前記真空形成室の圧力は、1Pa~10 -3 Paである。
【0038】
本発明の一実施例によって、前記作業台装置は、作業プラットフォーム2とピストン式成形シリンダ装置とを含む。前記成形領域は、作業プラットフォーム2に設けられる。前記ピストン式成形シリンダ装置は、作業プラットフォーム2の下に設けられ、成形シリンダ31とピストン式昇降装置32とを含む。成形シリンダ31の上縁は、作業プラットフォーム2と同一平面にあり、ピストン式昇降装置32は、成形シリンダ31内で昇降可能である。
【0039】
前記粉末供給装置は、粉末を前記成形領域に供給するために用いられる。本発明の一実施例によって、当該粉末は、セラミック粉末と金属粉末のうちの少なくとも一つであってもよいが、当該粉末は、積層造形に必要な部品のニーズに応じて適切な材料を選択しても良く、それも本発明の保護範囲内に含まれる。
【0040】
本発明の一実施例によって、前記粉末供給装置は、粉末供給器4と粉末敷設器5とを含むことができる。図1を示すように、粉末供給器4は、粉末を作業プラットフォーム2の上面に供給する。粉末敷設器5は、作業プラットフォーム2に設けられ、粉末を成形シリンダ31内に搬送し、平らにすることができる。
【0041】
電子ビーム放射集束走査装置6は、電子ビーム放射集束走査装置6の走査範囲が少なくとも前記成形領域の一部をカバーするように設けられ、具体的な走査範囲は、成形ニーズなどによって設置することができる。図1を示すように、本発明のいくつかの実施例では、電子ビーム放射集束走査装置6内には、上から下にフィラメント61と、カソード62と、グリッド63と、アノード64と、集束コイル65と、x方向偏向巻線とy方向偏向巻線とを含む一対の走査偏向コイル66が順次的に設けることができる。
【0042】
各電子ビーム放射集束走査装置6は、いずれも電子ビームを放射することができ、一つのビーム又は複数のビームの走査を行うために、各ビームの電子ビームは、いずれも十分な電力があり、加熱と、選択的溶融と、電子ビーム切断との三つのモードを有し、成形材料に対して加熱と、溶融と、焼結と、切断輪郭処理を行うことができる。また、ここに記載の走査と、加熱と、溶融と、焼結と、切断輪郭は、材料加工分野において一般的に理解されるべきであり、例えば、加熱は、連続的又は断続的な予熱、昇温などを含むことができる。
【0043】
具体的には、図2図3に示すように、本発明の実施例に係る積層造形装置が具体的に使用されている場合、電子ビーム放射集束走査装置6によって放射される電子ビーム67がコントローラの制御で成形領域を走査するために用いられることができる。まず、電子ビーム放射集束走査装置6を使用して加熱モードである電子ビームを放射し、粉末床を走査予熱して、粉末を加熱して予備焼結を発生させることができ、次に、電子ビーム放射集束走査装置6を使用して選択的溶融モードである電子ビームを放射し、断面内の粉末を走査して溶融し、前記粉末を溶融堆積して、所望の部品の断面層を形成し、その後、電子ビーム放射集束走査装置6を使用して電子ビーム切断モードである電子ビームを放射し、前記部品の断面の内外の輪郭に対して1回又は複数回の切断走査を行い、輪郭上の粗い縁部と熔接された粉末を除去又は切除して、正確で滑らかな部品の断面の内外の輪郭を取得し、その後、切断輪郭の部品の断面層に粉末を広げることができ、次に、加熱と、溶融堆積と、輪郭切断を順次に行い、所望の3次元実体部品が得られるまで、上記の広げと、加熱と、溶融堆積と、輪郭切断との分層製造プロセスを繰り返す。
【0044】
これにより、断面内の材料を徐々に昇温、焼結、溶融して、明瞭、連続、完全な断面とその輪郭を形成し、製造のプロセスにおける積層製造と減法製造を同期に行うことを実現することができ、後続の処理を不要又は減少することで、高性能と高精度の部品を取得することができる。
【0045】
本発明の実施例に係る積層造形装置は、コントローラによって異なるパラメータを有する電子ビームを放射するように電子ビーム放射集束走査装置6を制御することができ、電子ビームが製造プロセスにおける成形領域の材料に対して柔軟に加熱、溶融、焼結、切断輪郭処理を行うことができ、電子ビーム選択的溶融と切断輪郭を組み合わせて、「積層製造」と「減法製造」との同期加工を実現し、製造のプロセス中に高性能と高精度の部品を取得することができ、後続の処理を不要又は減少することができる。
【0046】
電子ビーム放射集束走査装置6の電子ビーム加速電圧は、10kV~200kVで変化することができる。電子ビーム放射集束走査装置6によって放射される電子ビームの成形領域の走査速度は、0~100メートル/秒で任意に変化することができる。これにより、コントローラによって電子ビーム放射集束走査装置6の電子ビーム加速電圧及び走査速度が所定の範囲内で変化するように制御することによって、電子ビームは異なるエネルギー及び作用時間を有し、加熱、溶融、焼結、切断輪郭機能を実現することができる。
【0047】
本発明のいくつかの実施例では、加熱モードにおいて、電子ビーム放射集束走査装置6によって放射された電子ビームは、成形平面の上方又は下方に集束されることができ、走査速度は、0.01メートル/秒から50メートル/秒であり、2回の隣接する走査パス間は重畳しなく、走査間隔は10ミクロンより大きい。これにより、より良い加熱効果及び加熱効率を実現することができる。例えば、電子ビームの加熱モードでの走査速度は、10メートル/秒、20メートル/秒、30メートル/秒、又は40メートル/秒などであってもよく、隣接する2回の走査の走査パスの走査間隔は、15ミクロン、20ミクロン、又は25ミクロンなどであってもよい。
【0048】
選択的溶融モードでは、電子ビーム放射集束走査装置6によって放射された電子ビームは、成形平面に集束されることができ、走査速度は、0.01メートル/秒から10メートル/秒であり、2回の隣接する走査パス間は重畳しなく、走査間隔は10ミクロンより大きく、溶融焼結効果及び焼結効率が良い。例えば、電子ビームの選択的溶融モードでの走査速度は、1メートル/秒、3メートル/秒、5メートル/秒、7メートル/秒、又は9メートル/秒などであってもよく、隣接する2回の走査の走査パスの走査間隔は、15ミクロン、20ミクロン、又は25ミクロンなどであってもよい。
【0049】
さらに、選択的溶融モードでは、電子ビーム放射集束走査装置6は、電子ビームのビーム強度と、成形平面における焦点移動速度と、隣接する走査パスの走査間隔と、間隔時間とを調整することによって溶融の深さを調整して、良好な溶融焼結効果を保証することができる。
【0050】
本発明では、電子ビーム放射集束走査装置6は、連続的電子ビームとパルス電子ビームを生成することができる。有利には、電子ビーム切断処理を行うときの電子ビームは、パルス電子ビームであり、より良い切断効果を保証することができる。
【0051】
なお、電子ビームを切断するときに、エネルギー密度が不足したり、又は作用時間が長すぎる場合、焦点周囲の材料が溶融し、気化して除去された部分は再充填されるため、切断ができなく、又は切断効率が低下され、また、温度勾配効果を起こして、亀裂が発生され、切断効果が理想的ではなく、製品の表面仕上げが悪い。切断効果を向上させるために、本願の発明者は、電子ビーム切断のいくつかのパラメータに対して最適な設計を行い、切断効果を著しく改善することができる。
【0052】
例えば、本発明のいくつかの実施例では、電子ビーム切断モードにおいて、電子ビーム放射集束走査装置6は、連続的電子ビームを放射し、連続的電子ビームは部品の断面平面に集束され、走査速度は、1メートル/秒から50メートル/秒であり、2回の隣接する走査パスは完全に重畳するか、又は走査間隔は8ミクロンより小さい。これにより、切断深さを有効に深めることを保証することができる。例えば、電子ビームの電子ビーム切断モードにおける走査速度は、10メートル/秒、20メートル/秒、30メートル/秒、又は40メートル/秒などであってもよく、隣接する2回の走査パスの走査間隔は、0ミクロン、2ミクロン、4ミクロン、又は6ミクロンなどであってもよい。
【0053】
さらに、例えば、本発明の別の実施例では、電子ビーム切断モードにおいて、電子ビーム放射集束走査装置6はパルス電子ビームを放射し、パルス電子ビームは部品の断面平面に集束し、パルス周波数は、1Hzから100kHzであり、走査速度は、0.1メートル/秒から5メートル/秒であり、かつ2回の隣接する走査パスは重畳するか、又は走査間隔は8ミクロンより小さく、切断効果は良い。例えば、電子ビームの電子ビーム切断モードにおける走査速度は1メートル/秒、2メートル/秒、3メートル/秒、又は4メートル/秒などであってもよく、隣接する2回の走査の走査パスの走査間隔は0ミクロン、2ミクロン、4ミクロン、又は6ミクロンなどであってもよい。
【0054】
なお、本発明では、走査間隔は、前記電子ビームが前記粉末床又は部品の断面に走査して形成された隣接する二つの走査軌跡中心線又は走査トレース中心線の距離と理解することもでき、入力された前記電子ビーム放射集束走査装置の前記コントローラの走査データにより定義される隣接する二つの走査パスの距離と理解することもできる。
【0055】
図1を示すように、本発明の一例によれば、電子ビーム放射集束走査装置6は、真空成形室1の上部に設けられ、成形領域の真上に位置する。これにより、取り付けが容易であるだけでなく、良好な成形効果を保証することができる。
【0056】
有利には、電子ビーム放射集束走査装置6は、作業台装置に対して移動可能であり、つまり、電子ビーム放射集束走査装置6は、作業台装置に対して位置移動が発生することができるため、走査範囲を拡大することができる。さらに、作業台装置は、真空成形室1内に位置移動が発生して、電子ビーム放射集束走査装置6の走査範囲をさらに拡大することができる。
【0057】
図8に示すように、本発明の一例によれば、積層造形装置は、二つの電子ビーム放射集束走査装置6を含むことができ、二つの電子ビーム放射集束走査装置6は、いずれも加熱と、選択的溶融と、電子ビーム切断との三つの異なる作動モードを有し、二つの電子ビーム放射集束走査装置6の走査領域は、縁部のみ重畳し、残りの90%以上の走査領域は、互いに重畳していない。これにより、走査範囲をさらに拡大することができ、積層造形装置が良好な成形効果と高い成形効率を有することができる。
【0058】
選択可能に、二つの電子ビーム放射集束走査装置6は、真空成形室1の上部に並列に設けられる。これにより、取り付けが容易であるだけでなく、走査範囲を拡大することができ、成形品質と成形効率を向上させることができる。
【0059】
図9に示すように、本発明の一例によれば、電子ビーム放射集束走査装置6を四つ含むことができ、電子ビーム放射集束走査装置6はアレイ状に分布することができ、アレイの各電子ビーム放射集束走査装置6は、いずれも加熱と、選択的溶融と、電子ビーム切断との三つの作動モードを有し、各電子ビーム放射集束走査装置6の走査領域は、縁部のみ重畳し、残りの80%以上の走査領域は、互いに重畳していない。これにより、走査範囲をさらに拡大することができ、積層造形装置が良好な成形効果と高い成形効率を有することができる。
【0060】
選択可能に、四つの電子ビーム放射集束走査装置6は、真空室1の上部にアレイに設けられる。これにより、取り付けが容易であるだけでなく、走査範囲を拡大することができ、成形品質と成形効率を向上させることができる。
【0061】
なお、本発明では、電子ビーム放射集束走査装置6の数が特に限定されず、三つ、五つ、又は五つより多いなどであってもよく、具体的な状況に応じて柔軟に設置することができる。
【0062】
本発明の一例によれば、電子ビーム放射集束走査装置6は、ハウジング60と、フィラメント61と、カソード62と、グリッド63と、アノード64と、集束コイル65と、一対の偏向コイル66とを含むことができる。ハウジング60は、真空成形室1の外部に設けられる。フィラメント61は、ハウジング60内に設けられて電子ビームを生成する。カソード62は、ハウジング60内のフィラメント61に接続される。グリッド63は、ハウジング60内のフィラメント61の下に位置する。アノード64は、ハウジング60内のグリッド63の下に位置する。集束コイル65は、ハウジング60内のアノード64の下に位置する。一対のX/Y偏向コイル66は、ハウジング60内の集束コイル65の下に位置する。
【0063】
以上により、上記の電子ビーム選択的溶融と切断を組み合わせる積層造形装置によって、電子ビーム選択的溶融と切断輪郭を組み合わせて、「積層製造」と「減法製造」との同期加工を実現し、高性能、高効率、高精度、材料適応面がより広い選択的溶融の積層造形技術を実現する。
【0064】
電子ビーム放射集束走査装置によって放射された走査電子ビームは、成形領域の走査、粉末の予熱、冷却過程を制御するために用いられ、成形領域の温度場が適切な範囲になるようにすることができ、温度勾配を制御し、熱応力を低減し、部品の断面を走査し、内外の輪郭を切断することにより断面内の材料を徐々に昇温、焼結、溶融して、明瞭と、連続と、完全な断面とその輪郭を形成し、高性能と高精度の部品を取得する。
【0065】
大きな成形領域に対して、真空室の上部に複数の電子ビーム放射集束走査装置6を配置することができ、複数の電子ビーム放射集束走査装置6の走査領域は、大きな合成走査領域に構成され、各電子ビーム放射集束走査装置6の走査領域間に隙間が存在してはならず、部分が重畳したり、又は隣接して、成形領域に走査できない箇所が存在するため、製造プロセスに影響することを避ける。
【0066】
より大きな成形領域に対して、少なくとも一つの電子ビーム放射集束走査装置6は、真空成形室1上部の作業プラットフォーム2に対する移動位置によって、走査範囲を拡大することができる。選択可能に、より大きな成形領域に対して、真空成形室で成形シリンダ31と作業プラットフォーム2の位置移動によって、前記電子ビーム放射集束走査装置の走査範囲を拡大することができる。
【0067】
以下、図1図10に開示された具体的な実施例を簡単に説明する。
【0068】
実施例1
図1を示すように、本発明一実施例による電子ビーム選択的溶融と切断を組み合わせる積層造形装置は、真空成形室1と、作業プラットフォーム2と、成形シリンダ31と、ピストン式昇降装置32と、粉末供給器4と、粉末敷設器5と、電子ビーム放射集束走査装置6と、コントローラとする制御コンピュータと、を含む。
【0069】
電子ビーム放射集束走査装置6は、電子ビーム67を生成するフィラメント61と、カソード62と、グリッド63と、アノード64と、集束コイル65と、一対のX/Y偏向コイル66とを含み、電子ビーム67を生成することは、成形領域を走査し、粉末を加熱、焼結、溶融し、成形材料内外の輪郭を切断するために用いられる。
【0070】
真空成形室1は、選択的溶融プロセスに真空環境を提供し、作業プラットフォーム2を中間水平に設置する。前記真空環境の圧力は、10Pa未満であり、好ましくは、1Pa~10 -3 Paであり、不活性ガスで再充填される。
【0071】
粉末供給器4は、作業プラットフォーム2の上方に設けられ、粉末を貯蔵し、粉末41を定量的に供給するために用いられる。
【0072】
粉末敷設器5は、作業プラットフォーム2で往復移動し、粉末を成形領域に搬送して平らにする。
【0073】
成形シリンダ31は、作業プラットフォーム2の下に設けられ、成形シリンダ31には、ピストン式昇降装置32がある。ピストン式昇降装置32と成形シリンダ31によって構成される高さ可変の収容チャンバ内には、粉末床7と、既に成形されたワークピース72とが格納されている。
【0074】
図1図2に示すように、本発明一実施例による電子ビーム選択的溶融と切断を組み合わせる積層造形装置の加工プロセスは、以下の、先の層の堆積層の成形が完了し、新しい堆積層の成形が開始する場合、ピストン式昇降装置32は、作業プラットフォーム2に対して一つの粉末層の厚さほどの高さを降下して、粉末床7の上面と作業プラットフォーム2の表面は、一つの粉末層の厚さの差を形成する。制御コンピュータの制御によって、粉末供給器4は、一定量の成形材料粉末41を出力して、作業プラットフォーム2の表面に落下し、その後、粉末敷設器5は粉末41を成形シリンダ31内に搬送し、粉末床7に平らにして1層の新しい粉末層を形成する。
【0075】
電子ビーム放射集束走査装置6は、加熱モードの電子ビームを放射して新しい粉末層を組み合わせ走査し、成形領域内の粉末を加熱して予備焼結を発生させる。電子ビーム放射集束走査装置6は、選択的溶融モードの電子ビーム67を放射して成形部品の断面内の粉末71を走査溶融する。電子ビーム放射集束走査装置6は、切断モードの電子ビーム68を放射して成形材料の内輪郭75と外輪郭74を切断し、1回又は複数回の切断走査を行い、輪郭の粗さ部分と走査成形されなかった粉末を直接に切除する。ワーク72の上面に新しい堆積層71が堆積される。
【0076】
このように繰り返して、逐次に層ごとにワーク72に新しい堆積層が堆積され、ワーク72の最終形状が取得されるまで、ワークの積層造形プロセスが完了する。
【0077】
図3図6には、本発明一実施例の電子ビーム選択的溶融と切断を組み合わせる走査方式を示す。溶融堆積モードでは、電子ビーム放射集束走査装置6は、電子ビームのビーム強度、成形平面における焦点移動速度、隣接する走査パスの走査間隔、間隔時間などの走査パラメータを調整することによって、溶融の深さを調整することができる。
【0078】
図3図4は、現在の成形層が前の成形層(図の現在の成形層の下に位置する)以上の概略図であり、すなわち現在の成形層の外縁は、前の成形層を超えて外側に延びる。図5図6は、現在の成形層が前の成形層(図の現在の成形層の下に位置する)より小さい概略図であり、すなわち前の成形層の外縁は、現在の成形層を超えて外側に延びる。その中、図3図5は、電子ビーム切断輪郭を追加しないで成形される場合であり、このときに、選択的溶融モードのみの電子ビーム67を使用して成形粉末を走査し、既に溶融成形されたワーク72表面は処理されず、表面の品質は粗く、縁部はギザギザになり、図4及び図6は、電子ビーム選択的溶融と電子ビーム切断を組み合わせる走査領域の概略図である。
【0079】
図4に示す上方の3層では、現在の成形層が前の成形層より大きい部分76(図の白い断面線の部分)であり、その下が粉末床又は切断された輪郭の縁部の領域であるため、溶融の深さが現在の成形層の厚さ以下である必要があり、現在の成形層の下方の粉末が前の成形層の既に切断された表面に付着され、切断された表面の品質に影響することを回避し、下に部品実体があり、現在の成形層がそれに熔合する必要がある領域77(図の灰色の中実部分)では、現在の成形層が前の成形層と完全に熔合するように、溶融の深さが現在の成形層の厚さを超える必要がある。これにより、上下の二つの成形層の接続効果を保証することができるだけでなく、より良い表面仕上げを保証することができる。
【0080】
図4に示す下方の3層では、現在の成形層が前の成形層と等しい場合、つまり、現在の成形層の縁部が前の成形層の縁部と同一平面にある場合、現在の成形層の溶融の深さは、前の成形・切断された表面の品質に影響しないため、現在の成形層の溶融の深さは、いずれも現在の成形層の厚さを超えて、現在の成形層が前の成形層と完全に熔合し、切断平面が平らにするようにする必要がある。図6に示す現在の成形層が前の成形層より小さい場合、現在の成形層の溶融の深さは、前の成形層の切断された表面の品質を影響しないため、現在の成形層の溶融の深さも現在の成形層の厚さを超え、現在の成形層が前の成形層と完全に熔合して、切断効果及び成形品質を保証するようにする必要がある。
【0081】
図7に示すように、本発明一実施例の電子ビーム選択的溶融と電子ビーム切断を組み合わせる走査方式では、電子ビーム切断モードである電子ビーム68は、1回又は複数回の輪郭切断を行い、粗さ部分78と走査成形されなかった粉末73を直接に切除して、粗さ部分78と走査成形されなかった粉末73が、既に成形されたワーク72から完全に分離し、より高い成形精度と表面仕上げの成形件を取得する。
【0082】
実施例2
図8図9には、本発明の他の実施例に係る電子ビーム選択的溶融と切断を組み合わせる積層造形装置を示す。複数の電子ビーム放射集束走査装置6が選択的溶融と切断を行う積層造形装置を含む。他の構成は実施例1と同様であり、その加工プロセスも実施例1と同様であり、ここでは詳細に説明しない。
【0083】
その中、図8は、二つの電子ビーム放射集束走査装置6の組み合わせを示しており、前記二つの電子ビーム放射集束走査装置6によって放射される電子ビームは、いずれも加熱と、溶融堆積と、電子ビーム切断との三つの異なる作動モードを有し、二つの電子ビーム放射集束走査装置6の走査領域は、縁部のみ重畳し、残りの90%以上の走査領域は、互いに重畳していない。二つの電子ビーム放射集束走査装置6は、真空室1の上部に並列に設けられる。
【0084】
図9は、四つの電子ビーム放射集束走査装置6の組み合わせを示しており、四つの電子ビーム放射集束走査装置6によって放射される電子ビームは、いずれも加熱と、溶融堆積と、電子ビーム切断との三つの異なる作動モードを有し、各電子ビーム放射集束走査装置6の走査領域は、縁部のみ重畳し、残りの80%以上の走査領域は、互いに重畳していない。例えば、四つの電子ビーム放射集束走査装置6は、2×2アレイに配置され、各電子ビーム放射集束走査装置6の走査領域771、772、773、774の大きさが一致し、より大きい合成走査領域77が構成され(図10に示すように)、各電子ビーム放射集束走査装置6の走査領域間には、隙間が存在しなく(例えば、部分が重畳したり、又は隣接する)、成形領域に走査できない箇所が存在することを回避する。また、四つの電子ビーム放射集束走査装置6を一つの電子ビーム走査モジュールに構成することもでき、機械的に平行移動する運動機構を使用し、より大きな成形走査領域を取得し、より大きなサイズの3次元部品の積層造形を実現する。
【0085】
本発明の説明において、「上」、「下」、「前」、「後」、「頂」、「底」、「内」、「外」などの用語が示す方位又は位置関係は、図面に示す方位又は位置関係に基づき、本発明を便利にまたは簡単に説明するために使用されるものであり、指定された装置又は素子が所定の方位にあり、所定の方位において構造され操作されると指示又は暗示するものではないので、本発明に対する限定と理解してはいけない。本発明の説明で、特に明確で具体的に限定されない限り、「複数」との意味は少なくとも二つであり、例えば、二つ、三つなどである。
【0086】
本発明において、明確な規定と限定がない限り、「取り付け」、「互いに接続」、「接続」、「固定」との用語の意味は広く理解されるべきである。例えば、固定接続や、着脱可能な接続や、あるいは一体的な接続でも可能である。机械的な接続や、電気的な接続や、相互の通信も可能である。直接的に接続することや、中間媒体を介して間接的に接続することや、二つの素子の内部が連通することや、あるいは二つの素子の間に相互の作用関係があることも可能である。当業者にとって、具体的な場合により上記用語の本発明においての具体的な意味を理解することができる。
【0087】
本発明において、明確な規定と限定がない限り、第1特徴が第2特徴の「上」又は「下」にあることは、第1特徴と第2特徴とが直接的に接触することを含んでもよく、第1特徴と第2特徴とが中間媒体を介して接触することを含んでもよい。
【0088】
本明細書の説明において、「実施例」、「示例」などの用語を参考した説明とは、当該実施形態例或いは示例に結合して説明された具体的な特徴、構成、材料或いは特徴が、本発明の少なくとも一つの実施形態例或いは示例に含まれることである。本明細書において、上記用語に対する例示的な説明は、必ずしも同じ実施例或いは示例を示すことではない。また又、説明された具体的な特徴、構成、材料或いは特徴は、いずれか一つ或いは複数の実施例又は示例において適切に結合することができる。なお、お互いに矛盾しない場合、当業者は本明細書で説明された異なる実施例或いは示例、及び異なる実施例或いは示例の特徴を結合且つ組み合わせることができる。
【0089】
以上、本発明の実施例を示して説明したが、上記実施例は例示的なもので、本発明を限定するものであると理解してはいけない。当業者は、本発明の範囲内で、上記実施例に対して各種の変化、補正、切り替え及び変形を行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10