(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】パイプの欠陥を検出するための反射測定装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20220905BHJP
【FI】
G01N17/00
(21)【出願番号】P 2019555143
(86)(22)【出願日】2018-04-04
(86)【国際出願番号】 US2018026526
(87)【国際公開番号】W WO2018187730
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-03-12
(32)【優先日】2017-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510162539
【氏名又は名称】ザ テキサス エーアンドエム ユニバーシティ システム
【氏名又は名称原語表記】THE TEXAS A&M UNIVERSITY SYSTEM
【住所又は居所原語表記】3369 TAMU College Station, Texas 77843-3369, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】カスタネダ-ロペス, オメロ
(72)【発明者】
【氏名】プティ デ セルヴァンス デリクール, トリスタン
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0007121(US,A1)
【文献】特開平06-074932(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0168975(US,A1)
【文献】特開2012-037537(JP,A)
【文献】国際公開第2014/050378(WO,A1)
【文献】米国特許第04970467(US,A)
【文献】国際公開第2017/011871(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプラインの欠陥を検出する方法であって、
第1パイプライン及び第2パイプラインと電気的に接続される信号生成器により、第1パイプライン及び第2パイプラインにおいて電気信号を生成する工程と、
第1パイプライン及び第2パイプラインと電気的に接続されるデータ取得機器により、反射信号を取得する工程であって、
第1パイプライン及び第2パイプラインは、シャントケーブルに接続され、前記反射信号は、第1パイプライ
ンの欠陥に少なくとも部分的に反射
して、
第2パイプラインを通り前記データ取得機器に向かって伝達される、工程と、
前記反射信号を解析して前記欠陥の位置及び前記欠陥の重大度のうち少なくとも一方を決定する工程とを含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記電気信号は、差動電気信号であり、
前記信号生成器は、第1パイプラインにおいてハイ信号を、第2パイプラインにおいてロー信号を生成する、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記電気信号の表皮深さ(δ)が前記パイプラインの壁厚(e)に対応するように前記電気信号の周波数を調整する工程をさらに含む、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
前記欠陥のインピーダンス(Z
D)が第1パイプライン及び第2パイプラインのインピーダンス(Z
0)よりも一桁大きいように、前記電気信号の周波数を調整する工程をさらに含む、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、
下限率をβ
Γ、上限率をα
Γとすると、前記
電気信号の反射係数(Γ)が以下の式(1)により制限されるように、前記電気信号の周波数を調整する工程をさらに含む、方法。
β
Γ≦Γ≦α
Γ (1)
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、
前記電気信号は、マンホールの第1端部において生成される第1電気信号であり、前記反射信号は、前記マンホールの第1端部において取得される第1反射信号であり、
前記方法は、
前記マンホールの第2端部において第1パイプラインと電気的に接続される前記信号生成器により、第1パイプラインにおいて第2電気信号を生成する工程であって、前記マンホールの第2端部は、第1パイプラインに沿った長手方向において前記マンホールの第1端部と反対側にある、工程と、
前記マンホールの第2端部において第1パイプラインと電気的に接続される前記データ取得機器により、第2反射信号を取得する工程であって、第2反射信号は、前記欠陥に少なくとも部分的に反射する、工程と、
第1反射信号及び第2反射信号を解析して前記欠陥の位置及び前記欠陥の重大度のうちの少なくとも一方を決定する工程とをさらに含む、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、
第1パイプラインは、前記マンホールの壁と接触する前記欠陥を含む、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、
前記反射信号は、第1パイプライン及び第2パイプラインを囲む腐食性電解質環境中を少なくとも部分的に伝搬する、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、
前記欠陥の位置は、前記電気信号の生成と前記反射信号の受信との間の往復遅延に基づいて決定される、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、
前記欠陥の重大度は、前記反射信号の振幅に対応する、方法。
【請求項11】
パイプラインの欠陥を検出する方法であって、
第1パイプライン及び第2パイプラインと電気的に接続される信号生成器により第1パイプラインにおいて第1電気信号を生成する工程と、
第1パイプライン及び第2パイプラインと電気的に接続されるデータ取得機器により第1反射信号を取得する工程であって、
第1パイプライン及び第2パイプラインは、シャントケーブルに接続され、前記反射信号は、第1パイプライ
ンの欠陥に少なくとも部分的に反射
して、第2パイプラインを通り前記データ取得機器に向かって伝達される、工程と、
前記信号生成器により、第2パイプラインにおいて第2電気信号を生成する工程と、
前記データ取得機器により第2反射信号を取得する工程であって、当該反射信号は、少なくとも部分的に前記欠陥に反射する工程と、
第1反射信号及び第2反射信号を解析して前記欠陥の位置及び前記欠陥の重大度のうち少なくとも一方を決定する工程とを含む、方法。
【請求項12】
パイプラインの欠陥を検出するためのシステムであって、信号生成器及びデータ取得機器を備え、
前記信号生成器は、第1パイプライン及び第2パイプラインと電気的に接続され、且つ第1パイプライ
ンにおいて差動信号を生成するように構成され、
前記データ取得機器は、第1パイプライン及び第2パイプラインと電気的に接続され、且つ第1パイプラインにおいて反射信号を受信するように構成され、
第1パイプライン及び第2パイプラインは、シャントケーブルに接続され、
前記反射信号は、第1パイプライ
ンにおいて少なくとも部分的に欠陥に反射さ
れ、第2パイプラインを通り前記データ取得機器に向かって伝達される、システム。
【請求項13】
請求項1
2に記載のシステムであって、
前記シャントケーブルは、調整可能なインピーダンスを有する、システム。
【請求項14】
請求項1
2に記載のシステムであって、
第1パイプライン及び第2パイプラインは、少なくとも部分的に埋設される、システム。
【請求項15】
請求項1
2に記載のシステムであって、
第1パイプライン及び第2パイプラインは、少なくとも部分的にマンホール内にある、システム。
【請求項16】
請求項1
2に記載のシステムであって、
前記信号生成器は、少なくとも1つの差動ケーブルにより、第1パイプライン及び第2パイプラインと接続される、システム。
【請求項17】
請求項
16に記載のシステムであって、
前記信号生成器を前記差動ケーブルと接続するためのスイッチをさらに備える、システム。
【請求項18】
請求項1
2に記載のシステムであって、
前記データ取得機器は、少なくとも1つの差動ケーブルにより第1パイプライン及び第2パイプラインと接続される、システム。
【請求項19】
請求項1
2に記載のシステムであって、
前記データ取得機器は、オシロスコープ、アナログ-デジタル(A/D)変換器、及びスペクトル分析器からなる群より選択される、システム。
【請求項20】
請求項1
2に記載のシステムであって、
電気信号の表皮深さ(δ)は、パイプラインの壁厚(e)に対応する、システム。
【請求項21】
請求項1
2に記載のシステムであって、
前記欠陥のインピーダンス(Z
D)は、第1パイプライン及び第2パイプラインのインピーダンス(Z
0)よりも一桁大きい、システム。
【請求項22】
請求項1
2に記載のシステムであって、
下限率をβ
Γ、上限率をα
Γとすると、前記
差動信号の反射係数(Γ)は、以下の式(2)により制限される、システム。
β
Γ≦Γ≦α
Γ (2)
【請求項23】
請求項1
2に記載のシステムであって、
前記欠陥は、マンホールの壁と接触する、システム。
【請求項24】
請求項1
2に記載のシステムであって、
前記欠陥は、脱離、剥離、及び腐食領域のうちの1つである、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術は、概して金属パイプの検査に関するものである。特に、本発明の技術は、パイプライン上のコーティングの欠陥、脱離、剥離、腐食、又は他の欠陥の反射測定を用いた検出に関するものである。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年4月7日に出願された米国仮出願第62/483183号の利益を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
金属パイプラインは、時間の経過とともに欠陥を生じる可能性がある。そのような欠陥の例として、パイプコーティングの劣化、パイプコーティングの脱離又は剥離、及びパイプ又はそのコーティングの腐食が挙げられる。埋設パイプラインは、特にこれらの欠陥を起こしやすい。パイプを検査及び/又は修理するためには、パイプの欠陥を特定しなければならず、周囲の土を取り除いてパイプラインを露出することなく特定が行われることが好ましい。
【0004】
パイプの欠陥を特定するための従来技術として、パイプの材料内部への音響信号(例えば、超音波)を生成し、次いで反射音響信号を測定することによるものがある。音響信号はパイプ内の欠陥に反射するため、欠陥の位置を、例えば音響信号の往復時間に基づいて決定することができる。しかし、音響信号は比較的急速に減衰するため、この性質により従来技術の感度が制限される。さらに、音響信号の反射を予測することは一般に困難である。例えば、反射角度は特定の欠陥の形状に強く影響を受けるため、欠陥の位置を特定することが難しい場合がある。
【0005】
従来技術として、パイプのセグメントに直流又は交流電流の何れかを流してパイプラインを調査するものがある。これらの従来技術は、直流電圧勾配(DCVG)調査及び交流電圧勾配(ACVG)調査として知られている。検査においては、例えば、土壌に突出してパイプの表面に接触する金属製の棒を使用して、パイプのセグメントに電圧を印加する。一般に、パイプのセグメントに沿った電圧降下は、パイプの状態と相関する。例えば、パイプラインに沿った欠陥は、他のすべての条件が等しい場合、より大きな電圧降下を引き起こす。パイプの1つのセグメントが検査された後、検査員は次のセグメントに移動し、パイプライン全体が検査されるまでこれが続く。したがって、DCVG/ACVG調査は労働集約型の作業であり、完了するまでに長時間を要する。さらに、DCVG/ACVG調査の結果は、電流の一部がパイプ周辺の土壌を通過するため、土壌の抵抗率に大きく依存する。土壌中の塩又は水分の濃度が土壌の抵抗率を大きく変化させる可能性があるため、測定結果は信頼性が低く、解釈が困難である。
【0006】
したがって、欠陥の位置及び重大度を検出するための方法及びシステムが、依然として必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明の技術に係る上述の態様及び付随する利点の多くは、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照することでより深く理解され、より容易に認識されるであろう。
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の技術の実施形態に係る信号伝搬の概略図である。
【
図2】
図2は、本開示の技術の実施形態に係る欠陥検出の概略図である。
【
図3】
図3は、本開示の技術の実施形態に係る欠陥検出の概略図である。
【
図3A】
図3Aは、本開示の技術の実施形態に係る欠陥検出の概略図である。
【
図4】
図4は、本開示の技術の実施形態に係る試験信号のグラフである。
【
図5】
図5は、本開示の技術の実施形態に係る試験信号のグラフである。
【
図6】
図6は、本開示の技術の実施形態に係る欠陥検出のための方法のフロー図である。
【
図7】
図7は、本開示の技術の実施形態に係る伝送路モデルの概略図である。
【
図8】
図8は、本開示の技術の実施形態に係る伝送路モデルの概略図である。
【
図9】
図9は、本開示の技術の実施形態に係るパイプライン欠陥の概略図である。
【
図10】
図10は、本開示の技術の実施形態に係るパイプライン欠陥の概略図である。
【
図11】
図11は、本開示の技術の実施形態に係る信号伝搬の概略図である。
【
図12】
図12は、本開示の技術の実施形態に係る信号伝搬の概略図である。
【
図13】
図13は、本開示の技術の実施形態に係るパイプラインのインピーダンスのグラフである。
【
図14】
図14は、本開示の技術の実施形態に係るパイプラインのインピーダンスのグラフである。
【
図16】
図16は、本開示の技術の実施形態に係る欠陥検出の概略図である。
【
図17】
図17は、本開示の技術の実施形態に係る欠陥検出の概略図である。
【
図18】
図18は、本開示の技術の実施形態に係る欠陥検出のグラフである。
【
図19】
図19は、本開示の技術の実施形態に係る欠陥検出のグラフである。
【
図20】
図20は、本開示の技術の実施形態に係る欠陥検出のグラフである。
【
図21】
図21は、本開示の技術の実施形態に係る欠陥検出の概略図である。
【
図22】
図22は、本開示の技術の実施形態に係る欠陥検出の概略図である。
【
図23】
図23は、本開示の技術の実施形態に係る欠陥検出のグラフである。
【
図24】
図24は、本開示の技術の実施形態に係る欠陥検出のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<概要>
本概要は、以下の詳細な説明においてさらに説明される概念の一部を簡略化された形式で紹介するために提供されるものである。本概要は、請求される主題の主要な特徴を特定することを意図したものではない。
【0010】
本発明の技術は、パイプの欠陥の位置を特定し重大度を推定するためのものである。一部の実施形態において、試験電気信号が信号生成器により生成され、検査中のパイプラインに送られる。信号はパイプラインを通して伝搬し、パイプラインの欠陥と相互作用する。パイプラインの欠陥により、パイプラインの電気インピーダンスが変化する。そのため、試験信号の一部(例えば、電圧又は電流信号)は、欠陥に反射して、反射信号を取得するためのデータ取得機器(オシロスコープ、アナログ-デジタル(A/D)変換器、スペクトル分析器等)に向かう。反射信号を解析することで、欠陥の位置及び重大度を推定できる。例えば、一部の実施形態においては、発信信号と受信信号との間の時間遅延(例えば、往復遅延)が欠陥までの距離に対応し、受信信号の振幅が欠陥の重大度に対応する。
【0011】
一部の実施形態においては、隣接するパイプラインを信号の帰還経路として用いることができる。そのような帰還経路は、土壌中の水分及び/又は塩の異なる含有量によって電磁特性が可変である土壌を信号の帰還経路とする場合と異なり、安定した電磁特性を有する。2つのパイプラインは、例えばシャントケーブルで接続できる。さらに、2つのパイプラインは類似の電磁特性を有する土壌に囲まれているため、土壌への信号の漏れに起因する電磁ノイズは較正され相殺される。調査対象のパイプラインの周囲の環境は、「腐食性電解質環境」と称される場合がある。通常、腐食性電解質環境は土壌であるが、パイプライン内のパイプの周囲には、例えば、水、コンクリート、ガス、及びそれらの組み合わせ等、他の多くの物質が存在する可能性があることが理解されよう。
【0012】
一部の実施形態においては、所定長さのマンホールの内部においてパイプにアクセスすることができる。マンホールの両端のパイプラインに信号を送ることにより、測定を実行できる。信号のエントリポイントは、マンホールの長さにより相殺されるため、反射信号の往復遅延時間は、マンホールの長さ及び信号速度に比例して変化する。一部の実施形態においては、欠陥の位置をより正確に識別するために、パイプラインの両端における2つの測定値を組み合わせることが可能である。
【0013】
一実施形態において、パイプラインにおける欠陥検出のための方法は、第1パイプライン及び第2パイプラインに電気的に接続された信号生成器により、第1パイプライン及び第2パイプラインにおいて電気信号を生成する工程と、第1パイプライン及び第2パイプラインに電気的に接続されるデータ取得機器により反射信号を取得する工程とを含む。反射信号は、第1パイプライン又は第2パイプラインの欠陥に少なくとも部分的に反射する。当該方法は、反射信号を解析して、欠陥の位置及び欠陥の重大度の少なくとも一方を決定する工程も含む。
【0014】
一態様において、第1パイプライン及び第2パイプラインは、シャントケーブルに接続されている。別の態様において、電気信号は差動電気信号であり、信号生成器は第1パイプラインにおいてハイ信号を生成し、第2パイプラインにおいてロー信号を生成する。
【0015】
一態様において、当該方法は、電気信号の表皮深さ(δ)がパイプラインの壁厚(e)に対応するように電気信号の周波数を調整する工程を含む。別の態様において、当該方法は、欠陥のインピーダンス(Z
D)が第1パイプライン及び第2パイプライン(Z
0)のインピーダンスよりも一桁大きくなるように電気信号の周波数を調整する工程を含む。別の態様において、当該方法は、信号の反射係数(Γ)が以下の式によって制限されるように電気信号の周波数を調整する工程を含む。
【数1】
ここで、β
Γは下限率であり、α
Γは上限率である。
【0016】
一態様において、電気信号は、マンホールの第1端部において生成される第1電気信号であり、反射信号は、マンホールの第1端部において取得される第1反射信号である。さらに、当該方法は、マンホールの第2端部において第1パイプラインと電気的に接続される信号生成器により、第1パイプラインにおいて第2電気信号を生成する工程を含む。マンホールの第2端部は、第1パイプラインに沿った長手方向においてマンホールの第1端部と反対側にある。当該方法は、マンホールの第2端部において第1パイプラインと電気的に接続されるデータ取得機器により、第2反射信号を取得する工程も含む。第2反射信号は、欠陥に少なくとも部分的に反射する。当該方法は、第1反射信号及び第2反射信号を解析して欠陥の位置及び欠陥の重大度のうちの少なくとも一方を決定する工程も含む。
【0017】
一態様において、第1パイプラインは、マンホールの壁と接触する欠陥を含む。別の態様において、反射信号は、第1パイプライン及び第2パイプラインを囲む腐食性電解質環境中を少なくとも部分的に伝搬する。別の態様において、欠陥の位置は、電気信号の生成と反射信号の受信との間の往復遅延に基づいて決定される。
【0018】
一実施形態において、パイプラインの欠陥を検出する方法は、第1パイプライン及び第2パイプラインと電気的に接続される信号生成器により第1パイプラインにおいて第1電気信号を生成する工程と、第1パイプライン及び第2パイプラインと電気的に接続されるデータ取得機器により第1反射信号を取得する工程とを含む。反射信号は、第1パイプライン又は第2パイプラインの欠陥に少なくとも部分的に反射する。当該方法は、信号生成器により、第2パイプラインにおいて第2電気信号を生成する工程と、データ取得機器により第2反射信号(反射信号は、少なくとも部分的に欠陥に反射する)を取得する工程と、第1反射信号及び第2反射信号を解析して欠陥の位置及び欠陥の重大度のうち少なくとも一方を決定する工程とを含む。
【0019】
別の実施形態において、パイプラインの欠陥を検出する方法は、第1パイプライン及び第2パイプラインと電気的に接続される信号生成器により第1パイプラインにおいて第1電気信号を生成する工程を含む。第1パイプライン及び第2パイプラインは腐食性電解質環境を介して電気的に接続される。当該方法は、第1パイプライン及び第2パイプラインと電気的に接続されるデータ取得機器により第1反射信号を取得する工程をさらに含む。反射信号は、第1パイプライン又は第2パイプラインの欠陥に少なくとも部分的に反射する。当該方法は、信号生成器により、第2パイプラインにおいて第2電気信号を生成する工程、及びデータ取得機器により第2反射信号を取得する工程も含む。反射信号は、少なくとも部分的に欠陥に反射する。当該方法は、第1反射信号及び第2反射信号を解析して欠陥の位置及び欠陥の重大度のうち少なくとも一方を決定する工程も含む。
【0020】
一実施形態において、パイプラインの欠陥を検出するためのシステムは、第1パイプライン及び第2パイプラインと電気的に接続される信号生成器、及び第1パイプライン及び第2パイプラインと電気的に接続されるデータ取得機器を備える。信号生成器は、第1パイプライン及び第2パイプラインにおいて差動信号を生成するように構成される。データ取得機器は、第1パイプラインにおいて反射信号を受信するように構成される。反射信号は、第1パイプライン又は第2パイプラインにおいて少なくとも部分的に欠陥に反射される。
【0021】
一態様において、第1パイプライン及び第2パイプラインは、シャントケーブルに接続される。別の態様において、シャントケーブルは、調整可能なインピーダンスを有する。
【0022】
一態様において、第1パイプライン及び第2パイプラインは、少なくとも部分的に埋設される。別の態様において、第1パイプライン及び第2パイプラインは、少なくとも部分的にマンホール内にある。別の態様において、信号生成器は、少なくとも1つの差動ケーブルにより、第1パイプライン及び第2パイプラインと接続される。別の態様において、システムは、信号生成器を差動ケーブルと接続するためのスイッチを備える。
【0023】
一態様において、データ取得機器は、少なくとも1つの差動ケーブルにより第1パイプライン及び第2パイプラインと接続される。別の態様において、データ取得機器は、オシロスコープ、アナログ-デジタル(A/D)変換器、及びスペクトル分析器からなる群より選択される。
【0024】
一態様において、電気信号の表皮深さ(δ)は、パイプラインの壁厚(e)に対応する。別の態様において、欠陥のインピーダンス(ZD)は、第1パイプライン及び第2パイプラインのインピーダンス(Z0)よりも一桁大きい。
【0025】
一態様において、欠陥は、マンホールの壁と接触する。別の態様において、欠陥は、脱離、剥離、及び腐食領域のうちの1つである。
【0026】
<詳細な説明>
例示的な実施形態を図示し説明したが、本発明の技術の精神及び範囲から逸脱しない限り様々な変更が可能であることを理解されたい。
【0027】
図1は、本開示の技術の実施形態に係る信号伝搬の概略図である。動作中、発せられた信号ESは、パイプライン1に沿って伝搬する。そのような信号の例がI
1である。パイプラインの例として、石油、ガス、水、化学物質、加圧空気等を輸送するための金属パイプが挙げられる。これらのパイプラインは、部分的又は完全に土壌に埋設され、又は水域に沈められる。
【0028】
欠陥10(例えば、パイプコーティングの劣化、パイプコーティングの脱離又は剥離、パイプパイプコーティングの腐食等)に到達すると、信号I1は、部分的にIRとして反射し、部分的にITMとしてパイプライン1に送られ、部分的にITSとして周囲の土壌中に送られる。反射信号IRは発信源に戻り、信号ITMはパイプライン1に沿って進み続け、パイプライン2を通して戻る信号RSとして戻る。パイプライン1及び2は、シャントケーブル(不図示)で接続して経路を閉じることができる。
【0029】
図2、
図3、及び
図3Aは、本開示の技術の実施形態に係る欠陥検出の概略図である。これらの図において、パイプライン1及び2は、左から右に延びる。一部の実施形態において、パイプライン1は、検査中であってもよく、一般的には、平行なパイプライン2が信号の帰還経路を提供する。パイプライン1及び2は、シャントケーブル3と電気的に接続することができる。一部の実施形態において、マンホール100及び200は、パイプライン1及び2へのアクセスを可能にする。例示される実施形態において、マンホール100及び200は、距離Lだけ離れている。
【0030】
一部の実施形態において、信号生成器52(「波形生成器」とも称される)、データ取得機器51(例えば、オシロスコープ、アナログ-デジタル(A/D)変換器、スペクトル分析器等)、及びインピーダンス整合ネットワーク(IMN)53がマンホール100内に配置される。信号生成器52、データ取得機器51、及びIMN53は、集合的に「信号生成・取得機器」と称される。別の実施形態において、信号生成・取得機器は、マンホール200内又は地上にあってもよい。動作中、信号生成器52は、パイプライン1に沿って伝搬する信号を生成する。戻ってくる信号は、データ取得機器51により取得することができる。一部の実施形態において、IMN53は、パイプライン1及び2に接続されて、機器とパイプラインとの間でインピーダンスを整合させる。一部の実施形態において、システムは、IMN53が無い状態で動作する。例えば、信号生成器52をパイプライン1及び2に接続して、パイプラインにおいて差動信号を生成することができ、データ取得機器51をパイプライン1及び2に接続して反射信号を取得することができる。
【0031】
反射信号の解析は、反射測定と称されることもある。信号が時間領域において解析される場合、反射測定法は、時間領域反射測定法と称され、信号が周波数領域において解析される場合、反射測定法は周波数領域反射測定法と称される。
【0032】
一部の実施形態においては、パイプが比較的密集しているため、パイプラインに沿った土壌(腐食性電解質環境)の特性変化は、両方のパイプラインに同様に影響を与える。したがって、長手方向における一対のパイプラインにおいて、パイプラインの役割を信号の伝達と帰還との間で切り替え、そしてプロファイルを比較することにより、土壌特性の変化の影響を最小限に抑制し、又は少なくとも低減することができる。さらに、信号伝達パイプラインにおいて反射が発生するため、本発明の技術は、パイプラインに沿った欠陥によりどのパイプラインが影響を受けるかを決定することもできる。
【0033】
一部の実施形態において、信号は、シャントケーブル3を介して第1パイプライン1から第2パイプライン2に伝搬する。一部の実施形態において、信号生成器52は、第1パイプラインを通り、パイプラインを囲む腐食性電解質環境を介して第1パイプラインから第2パイプラインに移動し、そして第2パイプライン2(送信信号)又は第1パイプライン1(反射信号)を通ってデータ取得機器51に戻る信号を生成することができる。取得信号を解析して、欠陥の位置及び/又は重大度を判断することができる。
【0034】
一部の実施形態において、信号生成器52は、複数のスキャンのために第1パイプライン1において電気信号を生成し、取得機器51は、反射信号及び/又は送信信号を取得することができる。次に、1つ又は複数の第2スキャンに対して逆の操作が実行され、反射電気信号及び/又は送信電気信号が取得される。第1及び第2スキャンの取得信号は、欠陥の位置及び/又は重大度を決定するために比較することができる。
【0035】
図2のシステム1000では、信号生成器52により信号がパイプライン1に発せられる。信号は、パイプライン1を通って伝搬し、信号の送信部分はシャントケーブル3(例えば、銅又はアルミニウムの棒)及びパイプライン2を通ってデータ取得機器51に戻る。
【0036】
図3のシステム2000においても、信号生成器52により信号がパイプライン1に発せられる。システム2000は、土壌電極54(例えば、土壌への接地)、及びインピーダンスZ
0を有するカスタマイズ可能な特性負荷4(例えば、インピーダンスが調整可能なシャントケーブル)を備える。一部の実施形態において、インピーダンスZ
0は(例えば、可変キャパシタンス又はインダクタンスを用いて)調整可能であってもよい。
【0037】
図3Aのシステム3000において、信号は、差動スイッチ61を介してパイプライン1及び2に到達する。スイッチは、例えば、平衡差動BNCケーブル62等の差動ケーブルによって、信号生成及び取得機器と接続することができる。差動ケーブル62は、例えば、ハイ信号をパイプライン1へと送り、ロー信号をパイプライン2へと送ることにより、差動信号をパイプライン1及び2に送ることができる。
【0038】
図4及び
図5は、本開示の技術の実施形態に係る試験信号のグラフである。両グラフにおいて、横軸は時間を示し、縦軸はボルト単位の振幅Eを示す。別の実施形態において、信号の振幅は、例えば、アンペア単位の電流として表される場合がある。試験信号は、例えば、信号生成器53によって生成することができる。
【0039】
図4は、時間幅Δtにおいて比較的一定の電圧Eを有するステップ信号を示す。
図5は、一連のステップ信号を示す。例えば、信号は時間幅Δt
1において比較的一定の電圧Eを有し、その後時間幅Δt
2-Δt
1において電圧E-ΔE
1を有し、その後時間幅Δt
3-Δt
2-Δt
1において電圧E-ΔE
1-ΔE
2を有する。
図4のステップ信号の反射率Γは、以下に対応することが示される。
【数2】
ここで、ZLは負荷のインピーダンス、Z0は特性インピーダンスである。
【数3】
である場合、信号は、短絡する。一般に、信号伝搬速度vは、以下の式で表すことができる。
【数4】
ここで、2Lは、信号が通過する長さ(例えば、試験されるパイプラインについての長さLと、帰還経路のパイプラインの長さLの和)であり、Δtは、信号の往復に要する時間である。一部の実施形態において、
図4に示す信号が、
図2に示すシステムで用いられる。
【0040】
図5に示す信号について、反射率は、以下の式で表すことができる。
【数5】
ここで、ZDiは、パイプラインに沿った欠陥のインピーダンスに対応する。2本のパイプを囲む土壌のバルク誘電率は、以下の通りであることが示される。
【数6】
【0041】
実際には、μを透磁率、εを誘電率(又は誘電定数)とすると、鉄の化合物を除く実質全ての媒体において、lc=με且つμ=μ
0である。さらに、ほとんどの実際の用途において土壌の誘電定数はε
water(水の誘電率)によって支配されるため、土壌の抵抗率は、土壌の含水量から決定することができる。例えば、
図5に示す信号を
図3に示すシステムに用いて、土壌の含水量及び抵抗率を決定することができる。
【0042】
図6は、本開示の技術の実施形態に係る欠陥検出のための方法のフロー
図6000である。図示された方法において、ブロック610は入力(例えば、データ入力又はアクティビティ)に対応する。このような入力の例として、パイプラインの特性、現場経験、現場修理、又はインピーダンスZ
0の推定が挙げられる。ブロック620は、例えば、あるZ
0値が欠陥インピーダンスZ
Dと一致又は不一致かどうかを宣言するためのユーザによる選択を表す。ブロック630は、計算を表し、例えば、Z
Dの推定値、所望のZ
0th、又は周波数の選択を表す。
【0043】
ブロック640は、現場での試験結果(例えば、測定結果)を表す。現場での試験結果の例として、実効インピーダンスZ0 eff及び等価実効インピーダンスZ0 eq effの測定値が挙げられる。ブロック650は、本方法により得られた結果、例えば、欠陥の位置の特定及び欠陥の特性評価を表す。欠陥の特性評価の例として、欠陥の重大度、及び欠陥のタイプ(腐食、剥離等)が挙げられる。
【0044】
伝送路モデル
図7及び
図8は、本開示の技術の実施形態に係る伝送路モデルの概略図である。これらの伝送路モデルは、パイプに沿って伝搬する信号の動作を表す。
図7は、配置された要素であるC(キャパシタンス)、L(インダクタンス)、R(抵抗)、及びG(コンダクタンス)を含む伝送路モデルを示す。図示された伝送路モデルには、Z
D(欠陥のインピーダンス又は欠陥インピーダンス)も含まれる。
【0045】
図8は、特性インピーダンスZ0及び欠陥インピーダンスZDを含む圧縮伝送路モデルである。反射率Γは、以下の式で表される。
【数7】
【0046】
wを角周波数(2πf)とすると、特性インピーダンスZ0は、以下に対応する。
【数8】
【0047】
パイプライン欠陥
図9及び
図10は、本開示の技術の実施形態に係るパイプライン欠陥の概略図である。
図9の概略図は、検査中のパイプライン1、及び信号の帰還経路であるパイプライン2を示す。現場の状況によっては、欠陥10により土壌への電気経路が作り出される場合がある。そのような欠陥の例は、剥離であるが、他の欠陥によっても、信号が少なくとも部分的に土壌に入るような電気経路が作り出される場合がある。
【0048】
図10の概略図も、パイプライン1及び2を示す。一部の実施形態において、欠陥の構成又はタイプにより、帰還経路のパイプライン2が、パイプライン1及び土壌を通る信号の帰還経路となる。
【0049】
信号伝搬
図11及び
図12は、本開示の技術の実施形態に係る信号伝搬の概略図である。
図11は入力信号V
1を示しており、入力信号V
1は、欠陥10に到達すると、信号源(例えば、信号生成器)に向かって信号V
Rとして部分的に反射する。信号はまた、パイプライン1を通して送信信号V
TMとして、また周囲の土壌を通して送信信号V
TSとして伝播し続ける。
図12は、類似のシナリオを示しており、電流Iは信号を表す。
【0050】
インピーダンス整合
図13及び
図14は、本開示の技術の実施形態に係るパイプラインのインピーダンスのグラフである。少なくとも一部の実施形態において、信号の帰還導波路として第2パイプラインを使用することにより、土壌内の不規則性に係る問題を排除する。例えば、土壌の抵抗は、一般にパイプラインに沿って変化する。土壌が信号の帰還経路として使用されると、土壌内の電流分布の複雑で確率論的な性質に起因して、土壌を古典的な伝送路の帰還分岐としてモデル化することが困難になる。しかし、パイプライン2を帰還経路として用いると、調査対象のパイプラインの欠陥(例えば、コーティングの欠陥)から漏れる電流の総量を、パイプラインループを流れる電流のうちある程度の割合内に抑えることができ、土壌特性の重要性が下がる。一部の実施形態において、パラメータα(上限率)及びβ(下限率)は、土壌に漏れる電流量が好ましい範囲内であることを保証するように事前に設定することができる。これらのパラメータは、以下のように規定できる。
【数9】
【数10】
【0051】
理論に束縛されるものではないが、α
1の値を制限することにより欠陥の位置の精度が向上し、β
1の値を制限することにより欠陥の特性評価(例えば、欠陥のタイプ及び/又は規模の特性評価)の精度が向上すると考えられる。その結果、反射係数についての類似の範囲は以下のように定義できる。
【数11】
又は
【数12】
【0052】
近似により、上述の範囲は以下のように簡略化できる。
【数13】
【0053】
一部の実施形態において、以下のように値の設定を行うことができる。
【数14】
ここで、Nは、パイプライン上の欠陥の数を表す。結果として、以下となる。
【数15】
【0054】
一部の実施形態において、上述の不等式は、少なくとも一桁の差に対応するものと解釈することができる。例えば、αΓ≪1は、αΓが0.1未満であると解釈することができる。他の実施形態においては、比較値が少なくとも2桁異なる場合があり、例えば、Γ≪1は、Γが0.01未満であることを示す。別の実施形態においては、値の間で他の比較が可能である。
【0055】
インピーダンス整合における周波数の役割
一部の実施形態において、信号の周波数を、特性インピーダンスZ0の制御パラメータとして、したがって、反射係数Γとして用いる。このような制御は、少なくとも部分的には、パイプラインの金属(例えば、鋼)で発生する表皮効果により可能となるものである。一部の実施形態においては、以下に説明するように、Z0及びZDの値は、βΓ及びαΓを介した信号周波数fの選択と組み合わせることができる。
【0056】
【0057】
Kを定数、Rを抵抗とすると、表皮効果により、以下であることが分かる。
【数17】
したがって、以下となる。
【数18】
【0058】
表皮深さを表す式により、
【数19】
である。ここで、
ρ=導体の抵抗率
ω=電流の角周波数=2π×周波数
【数20】
μ
r=導体の比透磁率
μ
0=自由空間の透磁率
【数21】
ε
r=材料の比誘電率
ε
0=自由空間の誘電率
である。
【0059】
w<<ρwの場合、以下の式のようになる。
【数22】
【0060】
ただし、
【数23】
であるため、以下の式のようになる。
【数24】
【0061】
図13は、Z
0とδに係る上述の式を用いて得られた特性インピーダンスZ
0のグラフである。横軸は周波数fの対数を示す。縦軸は、特性インピーダンスZ
0の絶対値を示す。一部の実施形態において、表皮深さ(δ)は通常パイプの壁厚(e)に対応する。これは、パイプに利用可能な材料が信号の伝播に完全に利用され、これにより、信号の不要な減衰が制限されるからである。値w
cは、表皮深さがパイプの壁厚に対応するような角周波数である。一部の実施形態において、表皮深さは、例えば、±5%、又は±10%の変動内で、パイプの壁厚に対応し得る。
【0062】
図14は、本開示の技術の実施形態に係るパイプラインのインピーダンスのグラフである。横軸は、周波数の対数を示す。縦軸は、特性インピーダンスZ
0の実部、虚部、及び絶対値を示す。一部の実施形態において、|Z
O|の範囲は、パイプライン内の大きな剥離(「大きなホリデー」とも称される)から小さな剥離に至る欠陥に対応する。
【0063】
以下のパラメータを用いて、サンプル事例のシミュレーションを行った。
パイプの直径:3インチ
パイプの厚さ:4mm
パイプの材質:炭素鋼
パイプライン間の距離:1m間隔
パイプラインのコーティング:20ミルのコールタール
物性値は以下の通りである。
【数25】
【0064】
Z
0の値を、上術のパラメータ及び材料特性を用いて計算した。結果を
図14のグラフ及び下の表1に示した。
【0065】
表1:周波数の関数としての特性インピーダンスZ0
【表1】
【0066】
したがって、w≧w
cの場合、
【数26】
であり、w≦w
cの場合、
【数27】
である。
【0067】
上述のパラメータ及び特性について、以下が分かっている。
【数28】
【0068】
したがって、
図14のグラフの対数横軸において、周波数の下限は100Hzであり、上述のシミュレーションにおけるw
cにあたる。周波数の上限は25MHzであり、これは、一部の実施形態における、標準的な生成器の最大周波数である。
【0069】
一部の実施形態において、別の最適化の改良により、本発明の技術の適用に係る精度及び範囲が向上し得る。例えば、欠陥の位置の特定及び特性評価のプロセスは分離することができる。その結果、それぞれβよりも低く、αよりも高い反射係数が使用され得る。ただし、分離により、試験時間が長くなる可能性がある。さらに、本発明の技術は、インピーダンスを土壌電極に追加できるため、(最小周波数においてZOが許容する「自然な」範囲と比較して)より大きな欠陥に適応できる可能性がある。一般に、情報ワークフローの取り扱いに係り、試験チームと修理チームのバランスを取るために、経済的な事項を考慮する場合がある。
【0070】
欠陥の位置の決定
図15A及び15Bは、本開示の技術の実施形態に係る欠陥検出の概略図である。
図15Aは、パイプライン1に沿って伝搬しループ2を介してデータ取得機器51に戻る信号を生成する信号生成器52を示す。しかし、同等の鏡像ループ1も作成される。これは、パイプライン1,2が信号生成及び取得機器51,52から両側に延びているためである。したがって、実際には、パイプライン1,2の1つのセクションは、別のセクションから分離されていない。その結果、一部の実施形態においては、信号生成及び取得機器51,52のどちら側で欠陥が発生したかを知ることができない。
【0071】
図15Bは、次の位置における信号生成及び取得機器51,52を示す。ここでも、信号は、ループ2とループ3の2つのループで生成される。一部の実施形態においては、パイプラインに沿って所定の距離だけずれた複数の測定に基づいて欠陥の位置を決定できる。例えば、ポイントA,B,C間の測定がループ1及びループ2で実行され、ループ2及びループ3でのポイントB,C,D間の測定と比較される。このような測定の実施形態については、以下の
図16から19を参照して説明する。
【0072】
図16及び
図17は、本開示の技術の実施形態に係る欠陥検出の概略図である。一部の実施形態において、マンホール100の両側で2セットの測定が実行される。
図16は北端で実行される測定を示し、
図17は南端で実行される測定を示す。どちらの場合も、欠陥10は信号反射を引き起こす可能性があるが、
図18から
図20を参照して以下に説明するように、2つの測定ポイント間の距離Dpにより、異なる信号反射が生じる。
【0073】
図18及び
図19は、本開示の技術の実施形態に係る欠陥検出のグラフである。グラフの水平軸は、パイプラインに沿った信号源からの距離をメートル単位で表す。縦軸は、信号強度をボルト単位で表す。グラフの縦線は、パイプラインにおける欠陥の位置に対応する。
【0074】
図18のグラフは、マンホールの南端から実行された測定値(
図17)に対応し、
図19のグラフは、マンホールの北端から実行された測定値(
図16)に対応する。グラフを分析して、その設定に固有のプローブポイントからの欠陥の距離を示すことができる。例えば、欠陥を示している部分について
図18及び
図19を分析すると、
図18の欠陥の位置は約33メートルであり、マンホール100の長さDpが5メートルであることから、
図19の欠陥の位置は約38メートルである。これは、欠陥10がマンホール100の中心から35.5メートル離れていることを意味する。
【0075】
さらに、
図18及び
図19のプロファイルの比較は、欠陥が存在する側を決定するうえでも役立つ。つまり、仮想鏡像欠陥を排除できる。例えば、欠陥10はマンホール100の南端により近く、マンホールの北端からより遠いため、実際の(非仮想)欠陥10は、マンホール100の南側にある。
【0076】
図20は、本開示の技術の実施形態に係る欠陥検出のグラフである。横軸は測定ポイント(つまり、電子機器を収容するマンホール)からの距離を表し、縦軸は信号の強度を表す。図示された反射測定プロファイルは、信号が伝搬する媒体に関する情報を提供する。具体的には、正の反射は、土壌からコンクリート及び空気への移行といった、媒体の誘電率の低下を意味する。これらの反射は、隣接するマンホールが別のマンホールのプローブポイントからどのように見えるかを示し得る。
【0077】
一部の実施形態において、信号強度の変化は、信号速度の推定値を確認したり、速度を較正するのに役立つ場合がある。例えば、マンホールの(パイプラインを接続するシャントケーブル3を用いない)反射測定における特徴が、隣接するマンホールのプローブポイントから分かる場合がある。図示した例においては、2つのマンホールは174m離れている。これらのマンホールの幅が6mであるとすると、土壌/コンクリート/空気の境界による反射が見られる予測距離は、168mである。これを、
図20のグラフで測定された距離164mと比較できる。したがって、用いる信号速度は、パイプラインのセクションにおいて約4メートル以内で正確であり、誤差は4%未満である。
【0078】
パイプラインとコンクリート壁との間に位置する欠陥
図21及び
図22は、本開示の技術の実施形態に係る欠陥検出の概略図である。一部の実施形態において、壁110に対するパイプラインの絶縁の完全性を、
図21及び
図22に示した機構を用いて評価できる。一部の実施形態において、壁110は、コンクリート壁である。一部の実施形態において、
図21は未較正の機構に対応し、
図22は較正済みの機構に対応する。較正された機構は、既知のインピーダンスを有するシャントケーブル3を備える。厚さTwは、マンホールのコンクリート壁の厚さを表し、距離Dwは、コンクリート壁110からシャントケーブル3の位置までの距離を表す。
【0079】
マンホール100の端壁に絶縁が不完全な部分が含まれている場合(例えば、パイプラインから端壁110を通って地面への電気経路がある場合)、パイプと壁との間の界面において、インピーダンスの局所的な変化により信号反射が発生する。したがって、信号反射測定は、端壁内のパイプラインのコーティング及び/又は絶縁の評価に用いることができる。一部の実施形態において、これらの反射プロファイルは、較正されていない機構(「未較正機構」とも称される)及び較正済みの機構で取得することができる。
図23及び
図24を参照して、異なる様々な反射率プロファイルについて以下に説明する。
【0080】
図23及び
図24は、本開示の技術の実施形態に係る欠陥検出のグラフである。
図23は、パイプラインとマンホールの壁との間の損傷のない絶縁に対応する。
図24は、パイプラインとマンホールの壁との間の損傷した(低下した)絶縁に対応する。両方のグラフにおいて、横軸は信号源からの距離に対応し、縦軸は信号の強度をボルトで表している。
【0081】
図23の損傷のない絶縁の場合、信号がマンホール100の端壁110(例えば、コンクリート壁)を通って伝搬するとき、電流はほとんど失われない。その結果、マンホールのコンクリートと周囲の土壌との境界は、未較正の機構においてシャープな反射を引き起こす。シャープな反射は、約5.5mの距離に対応している。
【0082】
図23の損傷のない絶縁においては、較正済みの機構にシャント3が存在する場合、シャント3もシャープな反射を引き起こすが、未較正の機構の場合よりも信号源に近くなる。
図23の反射間の見かけの距離は、(Lb-Tw-Dw)に依存する。一部の実施形態において、これら2つのプロファイル間の差である、「較正反射」とラベル付けされた曲線はシャープであり、シャントが導入された場所を比較的正確に示すことができる。
【0083】
さらに、2つの「較正反射」プロファイルの差は、
図24において低下した(損傷した)絶縁を示している。例えば、絶縁が低下した場合、シャントの有無の影響は、コンクリート壁からの信号漏れにより低減される。その結果、
図24のグラフでは、較正反射が鈍くみえる。一部の実施形態において、コンクリートを含む異なる材料間でのコーティングによる絶縁の評価は、
図24のような較正反射曲線の形状、及びこれらの曲線と
図23のような損傷のない絶縁の参照曲線との比較に基づいて、行うことができる。
【0084】
上述の技術の多くの実施形態は、コンピュータで実行可能な、又はコントローラで実行可能な命令の形式を取ることができ、当該命令は、非一時的メモリに格納され、プログラム可能なコンピュータ又はコントローラによって実行されるルーチンを含む。関連技術の当業者は、本技術が上述した以外のコンピュータ/コントローラシステム上で実施され得ることを理解するであろう。本技術は、上述のコンピュータで実行可能な命令の1つ以上を実行するように特別にプログラム、構成、又は構築された専用コンピュータ、特定用途向け集積回路(ASIC)、コントローラ、又はデータプロセッサで実現できる。多くの実施形態において、本明細書で説明される任意のロジック又はアルゴリズムは、ソフトウェア又はハードウェア、又はソフトウェア及びハードウェアを組み合わせて実装することができる。
【0085】
上述のように、本技術の特定の実施形態を例示目的で本明細書に記載したが、本開示から逸脱しない範囲で様々な変更が可能であることが理解されるであろう。さらに、特定の実施形態に係る様々な利点及び特徴をそれらの実施形態の文脈で上述したが、他の実施形態もそのような利点及び/又は特徴を示す可能性があり、一方で、全ての実施形態が、本技術の範囲内において必ずしもそのような利点及び/又は特徴を示すとは限らない。したがって、本開示は、本明細書に明示的に示されていない又は説明されていない他の実施形態を包含し得る。