(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】プロテウス属細菌由来ナノ小胞及びその用途
(51)【国際特許分類】
A61K 35/741 20150101AFI20220905BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220905BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220905BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20220905BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220905BHJP
A61K 8/99 20170101ALI20220905BHJP
【FI】
A61K35/741
A61P35/00
A61P29/00
A23L33/135
A61Q19/00
A61K8/99
(21)【出願番号】P 2021015089
(22)【出願日】2021-02-02
(62)【分割の表示】P 2019569842の分割
【原出願日】2018-06-25
【審査請求日】2021-02-17
(31)【優先権主張番号】10-2017-0083047
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0072307
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516348577
【氏名又は名称】エムディー ヘルスケア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MD HEALTHCARE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ユン-クン
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】Cell, (2016), 167, [6], p.1469-1480
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/741
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)
由来小胞を有効成分として含む、胃癌、大腸癌、肝癌、胆道癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、リンパ腫、脳腫瘍
及び炎症よりなる群より選ばれる一つ以上の病気の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記小胞は、平均直径が10~200nmであることを特徴とする、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記小胞は、
プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)から自然的又は人工的に分泌されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)
由来小胞を有効成分として含む、胃癌、大腸癌、肝癌、胆道癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、リンパ腫、脳腫瘍
及び炎症よりなる群より選ばれる一つ以上の病気の予防又は治療用吸入剤組成物。
【請求項5】
前記小胞は、
プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)から自然的又は人工的に分泌されることを特徴とする、請求項
4に記載の吸入剤組成物。
【請求項6】
プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)
由来小胞を有効成分として含む、胃癌、大腸癌、肝癌、胆道癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、リンパ腫、脳腫瘍
及び炎症よりなる群から選ばれた一つ以上の病気の予防又は改善用組成物。
【請求項7】
前記組成物は、食品組成物又は化粧料組成物であることを特徴とする、請求項
6に記載の組成物。
【請求項8】
前記小胞は、
プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)から自然的又は人工的に分泌されることを特徴とする、請求項
6又は
7に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテウス属細菌由来ナノ小胞及びその用途に関し、より具体的に、プロテウス属細菌に由来するナノ小胞を利用した慢性炎症を特徴とする癌、心血管疾患、代謝疾患、神経-精神疾患、アレルギー-呼吸器疾患、及び炎症性腸疾患の診断方法、及び前記小胞を含む予防又は治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
21世紀に入って過去伝染病と認識された急性感染性疾患の重要性が減少するようになる反面、人間とマイクロバイオームとの不調和により発生する免疫機能の異常を伴った慢性疾患が生活の質と人間の寿命を決定する主な疾患に疾病のパターンが変わった。21世紀の難治性慢性疾患は、生活方式の変化に伴って原因因子に反復的な露出による免疫機能の異常により発生する慢性炎症反応を特徴とするが、ここで、癌、心血管疾患、代謝疾患、神経-精神疾患、アレルギー-呼吸器疾患、及び炎症性腸疾患などが国民保健に大きい問題になっている。
【0003】
細菌に由来する原因因子に対する免疫反応には、インターロイキン-17(interleukin-17)サイトカインの分泌を特徴とするTh17(T helper 17)免疫反応が重要であり、細菌性因子によるインターロイキン-6(interleukin-6、以下IL-6という)の分泌のような先天免疫反応がTh17細胞への分化に重要な役割を担当する。また、細菌性原因因子に露出時に炎症が発生するが、この過程で腫瘍壊死因子-アルファ(tumer necrosis factor-α、以下TNF-αという)のような炎症性媒介体が分泌されて、癌、心血管疾患、代謝疾患、神経-精神疾患、アレルギー-呼吸器疾患、及び炎症性腸疾患などが発生すると知られている。
【0004】
人体に共生する微生物は100兆に達し、ヒト細胞より10倍多く、微生物の遺伝子数はヒト遺伝子数の100倍を超えることが知られている。人体に共生する真正細菌(bacteria)及び古細菌(archaea)は、他の細胞への遺伝子、タンパク質などの情報を交換するためにナノメートルサイズの小胞(vesicle)を分泌する。粘膜は、200ナノメートル(nm)サイズ以上の粒子は通過できない物理的な防御膜を形成して、粘膜に共生する細菌である場合には、粘膜を通過しない。しかし細菌由来小胞は、サイズが100ナノメートルサイズ以下であるので、比較的自由に粘膜を介して上皮細胞に吸収されて炎症反応を誘導し、また、リンパ管を介して人体に吸収される。人体に共生する細菌から局所的に分泌された細菌由来小胞は、粘膜の上皮細胞に吸収されて局所炎症反応を誘導し、人体に吸収される。病原性細菌由来小胞は、血液を介して各臓器に分布して吸収された臓器で炎症反応を増加させて病気を悪化させる。
【0005】
プロテウス属(genus Proteus)細菌は、嫌気性グラム陰性桿菌であって、尿酸分解酵素(urease)を介して尿素(urea)をアンモニアに変えるが、尿から尿素をアンモニアに変えて尿をアルカリ化させる。前記細菌のうちプロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)菌は、病原性細菌と知られており、ヒトにおいてプロテウス属細菌感染の90%を占める。前記プロテウス属細菌は、ヒトの消化器官に共生すると共に、土壌と水などの環境にも広く棲息するものと知られている。
【0006】
一方、バシラス属細菌や乳酸菌由来の細胞外小胞体を利用して病気を治療する発明は公開されているが(KR10-1862507,KR10-1726488)、現在までプロテウス属細菌が細胞外に小胞を分泌するという事実が報告されていないし、特に癌、心血管疾患、代謝疾患、神経-精神疾患、アレルギー-呼吸器疾患、及び炎症性腸疾患などの疾患に対する診断及び治療に応用した事例は報告されたことがない。
【0007】
そこで、本発明では、プロテウス属細菌由来小胞が正常ヒトに比べて癌、心血管疾患、代謝疾患、神経-精神疾患、アレルギー-呼吸器疾患、及び炎症性腸疾患患者の臨床サンプルに有意に減少していることを確認して病気を診断することができることを確認した。また、プロテウス細菌培養液から分離した小胞を癌、心血管疾患、代謝疾患、神経-精神疾患、アレルギー-呼吸器疾患、及び炎症性腸疾患の予防又は治療用組成物として利用することができることを確認した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、上記のような従来の問題点を解決するために鋭意研究した結果、メタゲノム分析を通して正常ヒトに比べて胃癌、大腸癌、肝癌、胆道癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、リンパ腫、及び脳腫瘍などの癌; 心筋梗塞、心筋病症、心房細動、異型狭心症、及び脳卒中などの心血管疾患; 糖尿病などの代謝疾患;パーキンソン病、うつ病などの神経-精神疾患; アトピー皮膚炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患(Chronic obstructive pulmonary disease,COPD)などのアレルギー-呼吸器疾患;過敏性腸症候群、炎症性腸炎などの炎症性腸疾患の患者由来サンプルでプロテウス属細菌由来小胞の含量が有意に減少していることを確認した。
【0009】
また、プロテウス属細菌に属するプロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)菌から小胞を分離して炎症細胞に処理したとき、病原性小胞によるTNF-αの分泌を顕著に抑制すること、及び、マウス癌疾患モデルで抗癌効能を評価した結果、プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)由来小胞を経口で投与した場合、癌の発生が顕著に抑制されることを確認したことから、これらに基づいて本発明を完成した。
【0010】
よって、本発明は、胃癌、大腸癌、肝癌、胆道癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、リンパ腫、脳腫瘍、慢性閉塞性肺疾患、アトピー皮膚炎、過敏性腸症候群、炎症性腸炎、喘息、心筋梗塞、心筋病症、異型狭心症、心房細動、脳卒中、糖尿病、パーキンソン病及びうつ病からなる群より選ばれる一つ以上の病気の診断のための情報提供方法を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、プロテウス属細菌由来小胞を有効成分として含む、胃癌、大腸癌、肝癌、胆道癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、リンパ腫、脳腫瘍、慢性閉塞性肺疾患、アトピー皮膚炎、過敏性腸症候群、炎症性腸炎、喘息、心筋梗塞、心筋病症、異型狭心症、心房細動、脳卒中、糖尿病、パーキンソン病及びうつ病からなる群より選ばれる一つ以上の病気の予防、治療、及び/又は改善用組成物を提供することを目的とする。
【0012】
しかしながら、本発明が達成しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は、下記の記載から当業者に明確に理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記のような本発明の目的を達成するために、本発明は、下記の段階を含む、癌、心血管疾患、代謝疾患、神経-精神疾患、アレルギー-呼吸器疾患、及び炎症性腸疾患からなる群より選ばれる一つ以上の病気の診断のための情報提供方法を提供する:
(a)正常ヒト及び被検者サンプルから分離した小胞からDNAを抽出する段階;
(b)前記抽出したDNAに対して16S rDNAに存在する遺伝子配列に基づいて製作したプライマーペアを利用してPCR(Polymerase Chain Reaction)を行ってそれぞれのPCR産物を収得する段階;及び
(c)前記PCR産物の定量分析を通して正常ヒトに比べてプロテウス属細菌由来小胞の含量が低い場合、癌、心血管疾患、代謝疾患、神経-精神疾患、アレルギー-呼吸器疾患、及び炎症性腸疾患からなる群より選ばれる一つ以上の病気と判定する段階。
【0014】
また、本発明は、下記の段階を含む、癌、心血管疾患、代謝疾患、神経-精神疾患、アレルギー-呼吸器疾患、及び炎症性腸疾患からなる群より選ばれる一つ以上の病気の診断方法を提供する:
(a)正常ヒト及び被検者サンプルから分離した小胞からDNAを抽出する段階;
(b)前記抽出したDNAに対して16S rDNAに存在する遺伝子配列に基づいて製作したプライマーペアを利用してPCRを行ってそれぞれのPCR産物を収得する段階;及び
(c)前記PCR産物の定量分析を通して正常ヒトに比べてプロテウス属細菌由来小胞の含量が低い場合、癌、心血管疾患、代謝疾患、神経-精神疾患、アレルギー-呼吸器疾患、及び炎症性腸疾患からなる群より選ばれる一つ以上の病気と判定する段階。
【0015】
本発明のさらに他の具現例において前記段階(a)でサンプルは、血液、尿、又は便であり得る。
【0016】
また、本発明は、プロテウス属細菌由来小胞を有効成分として含む、癌、心血管疾患、代謝疾患、神経-精神疾患、アレルギー-呼吸器疾患、及び炎症性腸疾患からなる群より選ばれる一つ以上の病気の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0017】
また、本発明は、プロテウス属細菌由来小胞を有効成分として含む、癌、心血管疾患、代謝疾患、神経-精神疾患、アレルギー-呼吸器疾患、及び炎症性腸疾患からなる群より選ばれる一つ以上の病気の予防又は治療用吸入剤組成物を提供する。
【0018】
また、本発明は、プロテウス属細菌由来小胞を有効成分として含む、癌、心血管疾患、代謝疾患、神経-精神疾患、アレルギー-呼吸器疾患、及び炎症性腸疾患からなる群より選ばれる一つ以上の病気の予防又は改善用組成物を提供する。
【0019】
本発明の一具現例において、前記病気の予防又は改善用組成物は、食品組成物又は化粧料組成物であり得る。
【0020】
本発明の他の具現例において、前記食品組成物は、健康機能性食品組成物であり得る。
【0021】
また、本発明は、プロテウス属細菌由来小胞を有効成分として含む薬学的組成物を個体に投与する段階を含む、癌、心血管疾患、代謝疾患、神経-精神疾患、アレルギー-呼吸器疾患、及び炎症性腸疾患からなる群より選ばれる一つ以上の病気の予防又は治療方法を提供する。
また、本発明は、プロテウス属細菌由来小胞の、癌、心血管疾患、代謝疾患、神経-精神疾患、アレルギー-呼吸器疾患、及び炎症性腸疾患からなる群より選ばれる一つ以上の病気の予防又は治療のため使用を提供する。
【0022】
本発明の一具現例において、前記癌は、胃癌、大腸癌、肝癌、胆道癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、リンパ腫、又は脳腫瘍であり得る。
【0023】
本発明の他の具現例において、前記心血管疾患は、心筋梗塞、心筋病症、心房細動、異型狭心症、又は脳卒中であり得る。
【0024】
本発明のさらに他の具現例において、前記代謝疾患は、糖尿病であり得る。
【0025】
本発明のさらに他の具現例で、前記神経-精神疾患は、パーキンソン病又はうつ病であり得る。
【0026】
本発明のさらに他の具現例において、前記アレルギー-呼吸器疾患は、アトピー皮膚炎、喘息、又は慢性閉塞性肺疾患であり得る。
【0027】
本発明のさらに他の具現例において、前記炎症性腸疾患は、過敏性腸症候群、又は炎症性腸炎であり得る。
【0028】
本発明のさらに他の具現例において、前記小胞は、平均直径が10~200nmであり得る。
【0029】
本発明のさらに他の具現例において、前記小胞は、プロテウス属細菌から自然的に又は人工的に分泌されるものであり得る。
【0030】
本発明のさらに他の具現例において、前記プロテウス属細菌由来小胞は、プロテウスミラビリスから分泌されるものであり得る。
【発明の効果】
【0031】
本発明者らは、腸内細菌である場合には体内に吸収されないけれど、細菌由来小胞である場合には、上皮細胞を介して体内に吸収されて、全身的に分布し、腎臓、肝、肺を介して体外に排泄されることを確認し、患者の血液、尿、又は便などに存在する細菌由来小胞メタゲノム分析を通して胃癌、大腸癌、肝癌、胆道癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、リンパ腫、脳腫瘍などの癌、心筋梗塞、心筋病症、心房細動、異型狭心症、脳卒中などの心血管疾患、糖尿病などの代謝疾患、パーキンソン病、うつ病などの神経-精神疾患、アトピー皮膚炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などのアレルギー-呼吸器疾患、過敏性腸症候群、炎症性腸炎などの炎症性腸疾患患者の血液、尿、又は便に存在するプロテウス属細菌由来小胞が正常ヒトに比べて有意に減少していることを確認した。また、プロテウス属細菌の一種であるプロテウスミラビリスを体外で培養して小胞を分離して、体外で炎症細胞に投与したとき、病原性小胞による炎症媒介体の分泌を有意に抑制し、前記小胞をマウスに経口で投与したとき、癌の発生が有意に抑制されることを観察したところ、本発明によるプロテウス属細菌由来小胞は、胃癌、大腸癌、肝癌、胆道癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、リンパ腫、脳腫瘍などの癌; 心筋梗塞、心筋病症、心房細動、異型狭心症、脳卒中などの心血管疾患; 糖尿病などの代謝疾患、パーキンソン病、うつ病などの神経-精神疾患; アトピー皮膚炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患などのアレルギー-呼吸器疾患; 過敏性腸症候群、炎症性腸炎などの炎症性腸疾患に対する診断方法、及び食品、吸入剤、化粧品、あるいは薬物などの予防用、治療用、及び/又は改善用組成物に有用に利用され得るものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1a】
図1aは、マウスに細菌と細菌由来小胞(EV)を口腔で投与した後、時間別に細菌と小胞の分布様相を撮影した写真である。
【
図1b】
図1bは、マウスに細菌と細菌由来小胞(EV)を口腔で投与した後12時間目に、血液、腎臓、肝、及び様々な臓器を摘出して、細菌と小胞の体内分布様相を評価した図である。
【
図2】
図2は、胃癌患者及び正常ヒトの便、血液、及び尿に存在する細菌由来小胞メタゲノム分析を実施した後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図3】
図3は、大腸癌患者及び正常ヒトの便及び尿に存在する細菌由来小胞メタゲノム分析を実施した後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図4】
図4は、肝癌、胆道癌、膵臓癌患者及び正常ヒトの血液に存在する細菌由来小胞メタゲノム分析を実施した後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図5】
図5は、肺癌患者及び正常ヒトの血液に存在する細菌由来小胞メタゲノム分析を実施した後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図6】
図6は、乳癌、卵巣癌患者及び正常ヒトの尿に存在する細菌由来小胞メタゲノム分析を実施した後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図7】
図7は、膀胱癌患者及び正常ヒトの血液及び尿に存在する細菌由来小胞メタゲノム分析を実施した後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図8】
図8は、前立腺癌患者及び正常ヒトの尿に存在する細菌由来小胞メタゲノム分析を実施した後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図9】
図9は、リンパ腫、脳腫瘍患者及び正常ヒトの血液に存在する細菌由来小胞メタゲノム分析を実施した後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図10】
図10は、糖尿病患者及び正常ヒトの血液に存在する細菌由来小胞メタゲノム分析を実施した後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図11】
図11は、心筋梗塞、心筋病症、心房細動、異型狭心症患者及び正常ヒトの血液に存在する細菌由来小胞メタゲノム分析を実施した後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図12】
図12は、脳卒中患者及び正常ヒトの血液に存在する細菌由来小胞メタゲノム分析を実施した後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図13】
図13は、パーキンソン病、うつ病患者及び正常ヒトの尿に存在する細菌由来小胞メタゲノム分析を実施した後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図14】
図14は、アトピー皮膚炎患者及び正常ヒトの血液に存在する細菌由来小胞メタゲノム分析を実施した後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図15】
図15は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者及び正常ヒトの血液に存在する細菌由来小胞メタゲノム分析を実施した後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図16】
図16は、過敏性腸症候群、炎症性腸炎(IBD)患者及び正常ヒトの便に存在する細菌由来小胞メタゲノム分析を実施した後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図17a】
図17aは、プロテウスミラビリスを体外で培養した後、培養液から小胞を分離して電子顕微鏡で小胞の形状を観察した結果である。
【
図17b】
図17bは、プロテウスミラビリス培養液から分離した小胞のサイズを動的光散乱法で測定した結果である。
【
図18a-b】
図18a及び
図18bは、プロテウスミラビリス由来小胞の抗炎症効果を評価するために、病原性小胞である大腸菌小胞(E.coli EV)の処理前にプロテウス菌由来小胞を前処理して、大腸菌小胞による炎症媒介体であるIL-6の分泌(
図18a)及びTNF-αの分泌(
図18b)に及ぼす影響を評価した結果である。
【
図19】
図19は、プロテウスミラビリス由来小胞の抗炎症効果に対する様々な菌株に由来した小胞の影響を比較するために、病原性小胞である大腸菌小胞(E.coli EV)の処理前に様々なヒトから分離したプロテウスミラビリス(PMR)由来小胞を前処理して、大腸菌小胞によるTNF-αの分泌に及ぼす影響を評価した結果である(NC:陰性対照群(negative control);PC:陽性対照群(positive control);L.プランタルム(plantarum):ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum))。
【
図20】
図20は、プロテウスミラビリス由来小胞の抗炎症効果に対する熱処理又は酸処理の影響を評価するために、病原性小胞である大腸菌小胞(E.coli EV)の処理前に熱処理又は酸処理したプロテウスミラビリス(PMR)由来小胞を前処理して、大腸菌小胞によるTNF-αの分泌に及ぼす影響を評価した結果である(NC:陰性対照群(negative control);PC:陽性対照群(positive control);L.プランタルム(plantarum):ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum))。
【
図21a】
図21aは、プロテウスミラビリス由来小胞の抗癌効能を評価するために、プロテウスミラビリス由来小胞をマウスに投与したプロトコルである。
【
図21b】
図21bは、プロテウスミラビリス由来小胞をマウス経口で投与して、癌細胞による腫瘍発生に及ぼす影響を評価した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、プロテウス属細菌由来小胞及びその用途に関する。
【0034】
本発明者らは、メタゲノム分析を通して正常ヒトに比べて胃癌、大腸癌、肝癌、胆道癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、リンパ腫、脳腫瘍などの癌、心筋梗塞、心筋病症、異型狭心症、心房細動、脳卒中などの心血管疾患、糖尿病などの代謝疾患、パーキンソン病、うつ病などの神経-精神疾患、アトピー皮膚炎、喘息又は慢性閉塞性肺疾患などのアレルギー-呼吸器疾患、過敏性腸症候群又は炎症性腸炎などの炎症性腸疾患患者由来サンプルでプロテウス属細菌由来小胞の含量が顕著に減少していることを確認したところ、これに基づいて本発明を完成した。
【0035】
これより、本発明は、下記の段階を含む、胃癌、大腸癌、肝癌、胆道癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、リンパ腫、脳腫瘍、慢性閉塞性肺疾患、アトピー皮膚炎、過敏性腸症候群、炎症性腸炎、喘息、心筋梗塞、心筋病症、異型狭心症、心房細動、脳卒中、糖尿病、パーキンソン病及びうつ病からなる群より選ばれる一つ以上の病気の診断のための情報提供方法を提供する。
(a)正常ヒト及び被検者サンプルから分離した小胞からDNAを抽出する段階;
(b)前記抽出したDNAに対して16S rDNAに存在する遺伝子配列に基づいて製作したプライマーペアを利用してPCRを行ってそれぞれのPCR産物を収得する段階;及び
(c)前記PCR産物の定量分析を通して正常ヒトに比べてプロテウス属細菌由来小胞の含量が低い場合、胃癌、大腸癌、肝癌、胆道癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、リンパ腫、脳腫瘍、慢性閉塞性肺疾患、アトピー皮膚炎、過敏性腸症候群、炎症性腸炎、喘息、心筋梗塞、心筋病症、異型狭心症、心房細動、脳卒中、糖尿病、パーキンソン病及びうつ病からなる群より選ばれる一つ以上の病気と判定する段階。
【0036】
本発明において使用される用語「診断」とは、広い意味では、患者の病の実態をすべての面にわたって判断することを意味する。判断の内容は、病名、病因、病型、軽重、病床の詳細な様態、合併症の有無、及び予後などである。本発明において診断は、癌、心血管疾患、代謝疾患、神経-精神疾患、アレルギー-呼吸器疾患、又は炎症性腸疾患の発病の有無及び疾患の水準などを判断することである。
【0037】
本発明の診断対象の病気である「癌(cancer)」は、周囲組織に浸潤しつつ速く成長し、身体の各部位に広がったり転移して生命を威嚇する悪性腫瘍(malignant tumor)を意味する。身体を構成する最も小さい単位である細胞(cell)は、正常には細胞自らの調節機能により分裂及び成長し、寿命が終わったり損傷すれば自ら死滅して全般的な数の均衡を維持するが、様々な原因によりこのような細胞自らの調節機能に問題が生ずれば、正常には死滅しなければならない非正常細胞が過多増殖することになり、周囲組織及び臓器に侵入して腫瘍塊を形成し、既存の構造を破壊したり変形させることになる。本発明において、癌は、好ましくは胃癌、大腸癌、肝癌、胆道癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、リンパ腫又は脳腫瘍であり得るが、これに制限されるものではない。
【0038】
本発明において使用される用語「心血管疾患(cardiovascular disease)」は、哺乳動物の心血管系に病気が発生することを意味し、例えば、心筋梗塞、心筋病症、狭心症、不整脈などの心臓疾患;血管炎;痴呆、脳卒中などの脳血管疾患などを含み、本発明において、心血管疾患は、好ましくは心筋梗塞、心筋病症、異型狭心症、心房細動、又は脳卒中を含むが、これに制限されるものではない。
【0039】
本発明において使用される用語「代謝疾患(metabolic disease)」は、哺乳動物の体内で代謝障害により様々な臓器に合併症が発生する疾患を意味し、例えば、高脂血症、糖尿などの代謝障害、及びその合併症などを含み、本発明において、代謝疾患は、好ましくは糖尿病を含むが、これに制限されるものではない。
【0040】
本発明において使用される用語「神経-精神疾患(neuropsychiatric disease)」は、哺乳動物の神経系統及び脳に発生する疾患を意味し、例えば、パーキンソン病、痴呆などの脳疾患;うつ病、強迫障害、精神分裂病(スキゾフレニア)などの精神疾患などを含み、本発明において、神経-精神疾患は、好ましくはパーキンソン病、うつ病を含むが、これに制限されるものではない。
【0041】
本発明において使用される用語「アレルギー疾患(allergic disease)」は、哺乳動物でアレルギー機序により発生する疾患を意味し、例えば、皮膚のアトピー皮膚炎、呼吸器系のアレルギー鼻炎、喘息などを含み、本発明において、アレルギー疾患は、好ましくはアトピー皮膚炎、喘息を含むが、これに制限されるものではない。
【0042】
本発明において使用される用語「呼吸器疾患(respiratory disease)」は、哺乳動物の呼吸器系に発生する疾患を意味し、例えば、鼻炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患などを含み、本発明において、呼吸器疾患は、好ましくは喘息、慢性閉塞性肺疾患を含むが、これに制限されるものではない。
【0043】
本発明の用語「炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease)」は、腸に発生する原因不明の慢性的な炎症を意味するものであって、広い意味では、細菌性、ウイルス性、アメーバ性、結核性腸炎などの感染性腸炎と虚血性腸疾患、放射線腸炎などすべての腸において発生する炎症性疾患を全部含むことができる。本発明において、炎症性腸疾患は、好ましくは過敏性腸症候群、炎症性腸炎を含むが、これに制限されるものではない。
【0044】
本発明において使用される用語「ナノ小胞(Nanovesicle)」又は「小胞(Vesicle)」とは、多様な細菌から分泌されるナノサイズの膜よりなる構造物を意味する。グラム陰性菌(gram-negative bacteria)由来小胞、又は外膜小胞体(outer membrane vesicles,OMVs)は、内毒素(lipopolysaccharide)だけでなく、毒性タンパク質及び細菌DNAとRNA、及び様々な代謝産物も有しており、グラム陽性菌(gram-positive bacteria)由来小胞は、タンパク質と核酸の他にも細菌の細胞壁構成成分であるペプチドグリカン(peptidoglycan)とリポタイコ酸(lipoteichoic acid)も有している。本発明において、ナノ小胞あるいは小胞は、プロテウス属細菌から自然的に分泌されたり又は人工的に生産するものであって、10~200nmの平均直径を有している。
【0045】
前記小胞は、プロテウス属細菌を含む培養液を遠心分離、超高速遠心分離、押出、超音波分解、細胞溶解、均質化、冷凍-解凍、電気穿孔、機械的分解、化学物質処理、フィルターによる濾過、ゲル濾過クロマトグラフィー、フリーフロー電気泳動、及び毛細管電気泳動からなる群より選ばれる一つ以上の方法を使用して分離することができる。また、不純物の除去のための洗浄、収得された小胞の濃縮などの過程をさらに含むことができる。
【0046】
本発明において使用される用語「メタゲノム(metagenome)」とは、「群遺伝体」とも言い、土、動物の腸など孤立した地域内のすべてのウイルス、細菌、かびなどを含む遺伝体の総体を意味するものであって、主に培養にならない微生物を分析するために、配列分析器を使用して一度に多くの微生物を同定することを説明する遺伝体の概念に使用される。特に、メタゲノムは、一種のゲノム又は遺伝体をいうものではなく、一つの環境単位のすべての種の遺伝体であって、一種の混合遺伝体をいう。これは、オミックス(Omics)的に生物学が発展する過程で一種を定義するとき、機能的に既存の一種だけでなく、多様な種が互いに相互作用して完全な種を作るという観点から出た用語である。技術的には、速い配列分析法を利用して、種に関係なく、すべてのDNA、RNAを分析して、一つの環境内でのすべての種を同定し、相互作用、代謝作用を解明する技法の対象である。
【0047】
本発明において、前記サンプルは、血液、尿、又は便であり得るが、これに制限されるものではない。
【0048】
本発明の他の様態として、本発明は、プロテウス属細菌由来小胞を有効成分として含む、胃癌、大腸癌、肝癌、胆道癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、リンパ腫、脳腫瘍、慢性閉塞性肺疾患、アトピー皮膚炎、過敏性腸症候群、炎症性腸炎、喘息、心筋梗塞、心筋病症、異型狭心症、心房細動、脳卒中、糖尿病、パーキンソン病及びうつ病からなる群より選ばれる一つ以上の病気の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0049】
本発明のさらに他の様態として、本発明は、プロテウス属細菌由来小胞を有効成分として含む、胃癌、大腸癌、肝癌、胆道癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、リンパ腫、脳腫瘍、慢性閉塞性肺疾患、アトピー皮膚炎、過敏性腸症候群、炎症性腸炎、喘息、心筋梗塞、心筋病症、異型狭心症、心房細動、脳卒中、糖尿病、パーキンソン病及びうつ病からなる群より選ばれる一つ以上の病気の予防又は治療用吸入剤組成物を提供する。
【0050】
本発明のさらに他の様態として、本発明は、プロテウス属細菌由来小胞を有効成分として含む、胃癌、大腸癌、肝癌、胆道癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、リンパ腫、脳腫瘍、慢性閉塞性肺疾患、アトピー皮膚炎、過敏性腸症候群、炎症性腸炎、喘息、心筋梗塞、心筋病症、異型狭心症、心房細動、脳卒中、糖尿病、パーキンソン病及びうつ病からなる群より選ばれる一つ以上の病気の予防又は改善用組成物を提供する。前記組成物は、食品組成物及び化粧料組成物を含む。
【0051】
本発明において使用される用語「予防」とは、本発明による薬学的組成物の投与により癌、心血管疾患、代謝疾患、神経-精神疾患、アレルギー-呼吸器疾患、及び炎症性腸疾患を抑制させたり発病を遅延させるすべての行為を意味する。
【0052】
本発明において使用される用語「治療」とは、本発明による薬学的組成物の投与により癌、心血管疾患、代謝疾患、神経-精神疾患、アレルギー-呼吸器疾患、及び炎症性腸疾患に対する症状が好転したり有利に変更されるすべての行為を意味する。
【0053】
本発明において使用される用語「改善」とは、治療される状態と関連したパラメーター、例えば症状の程度を少なくとも減少させるすべての行為を意味する。
【0054】
本発明の一実施例では、細菌及び細菌由来小胞をマウス経口で投与して細菌及び小胞の体内吸収、分布、及び排泄様相を評価して、細菌である場合には、腸粘膜を介して吸収されないのに対して、小胞は、投与5分以内に吸収されて全身的に分布し、腎臓、肝などを介して排泄されることを確認した(実施例1参照)。
【0055】
本発明の他の実施例では、胃癌、大腸癌、肝癌、胆道癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、リンパ腫、脳腫瘍患者、及び前記癌患者に年齢をマッチングした正常対照群の血液、尿、又は便から分離した小胞を利用して細菌メタゲノム分析を実施した。その結果、正常ヒトサンプルに比べて、胃癌、大腸癌、肝癌、胆道癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、リンパ腫、脳腫瘍患者のサンプルにプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(実施例3参照)。
【0056】
本発明のさらに他の実施例では、糖尿病、心筋梗塞、心筋病症、心房細動、異型狭心症、及び脳卒中患者、及び前記患者の年齢をマッチングした正常ヒトのサンプルから分離した小胞を利用して細菌メタゲノム分析を実施した。その結果、正常ヒトサンプルに比べて、糖尿病、心筋梗塞、心筋病症、異型狭心症、心房細動、及び脳卒中患者のサンプルにプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(実施例4参照)。
【0057】
本発明のさらに他の実施例では、パーキンソン病及びうつ病患者、及び前記患者の年齢をマッチングした正常ヒトのサンプルから分離した小胞を利用して細菌メタゲノム分析を実施した。その結果、正常ヒトのサンプルに比べて、パーキンソン病及びうつ病患者のサンプルにプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(実施例5参照)。
【0058】
本発明のさらに他の実施例では、アトピー皮膚炎、喘息、及び慢性閉塞性肺疾患患者、及び前記患者の年齢及び性別をマッチングした正常ヒトのサンプルから分離した小胞を利用して細菌メタゲノム分析を実施した。その結果、正常ヒトのサンプルに比べて、アトピー皮膚炎、喘息、及び慢性閉塞性肺疾患患者のサンプルにプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(実施例6参照)。
【0059】
本発明のさらに他の実施例では、過敏性腸症候群及び炎症性腸炎患者、及び前記患者の年齢をマッチングした正常ヒトのサンプルから分離した小胞を利用して細菌メタゲノム分析を実施した。その結果、正常ヒトのサンプルに比べて、過敏性腸症候群及び炎症性腸炎患者のサンプルにプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(実施例7参照)。
【0060】
本発明のさらに他の実施例では、前記実施例の結果を基にプロテウス属細菌に属するプロテウスミラビリス種細菌由来小胞の特性を分析するためにさらに研究した結果、前記小胞は、平均直径が200nmより小さく、好ましくは41.40±5.03nmのサイズの円形であることを確認した(実施例8参照)。
【0061】
本発明のさらに他の実施例では、プロテウスミラビリス菌株を培養してこれから分泌された小胞が抗炎症効果を示すかを評価したが、様々なヒトから分離したプロテウスミラビリス菌株を培養した後、多様な濃度のプロテウスミラビリス由来小胞を大食細胞に処理した後、炎症疾患、代謝疾患、及び癌の原因因子である大腸菌由来小胞を処理して炎症媒介体の分泌を評価した結果、プロテウスミラビリスの由来と関係なく、プロテウスミラビリス由来小胞がいずれも大腸菌由来小胞によるTNF-αの分泌を効率的に抑制することを確認した(実施例9参照)。
【0062】
本発明のさらに他の実施例では、プロテウスミラビリスの抗炎症効果を示す有効物質が小胞に含まれた低分子化合物又はタンパク質であるかを評価するために、プロテウスミラビリス由来小胞に熱処理又は酸処理をした。その後、大食細胞に大腸菌由来小胞を処理する前に熱処理又は酸処理した小胞を投与してTNF-αの分泌に及ぼす影響を評価した結果、熱処理又は酸処理したプロテウスミラビリス由来小胞がいずれも大腸菌由来小胞によるTNF-αの分泌を効率的に抑制することを確認した(実施例10参照)。
【0063】
本発明のさらに他の実施例では、プロテウスミラビリス菌株を培養してこれから分泌された小胞が抗癌治療効果を示すかを評価するために、癌細胞株を皮下で注射して癌疾患モデルを作製し、前記プロテウスミラビリス由来小胞を癌細胞株の処理4日前からマウスに経口で投与した後、20日間癌組織のサイズを測定した結果、前記小胞を投与した場合に、対照群に比べて癌組織のサイズが顕著に減少していることを確認した(実施例11参照)。
【0064】
本発明による薬学的組成物は、プロテウス属細菌由来小胞を有効成分として含み、薬学的に許容可能な担体を含むことができる。前記薬学的に許容可能な担体は、製剤時に通常的に利用されるものであって、食塩水、滅菌水、リンガー液、緩衝食塩水、シクロデキストリン、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール、リポソームなどを含むが、これに限定されず、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液など他の通常の添加剤をさらに含むことができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤、潤滑剤などを付加的に添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒、又は錠剤に製剤化することができる。適合な薬学的に許容される担体及び製剤化に関しては、レミントンの文献に開示されている方法を利用して各成分によって好適に製剤化することができる。本発明の薬学的組成物は、剤形に特別な制限はないが注射剤、吸入剤、皮膚外用剤、又は経口摂取剤などに製剤化することができる。
【0065】
本発明の薬学的組成物は、目的とする方法によって経口投与したり非経口投与(例えば、静脈内、皮下、皮膚、鼻腔、気道に適用)することができ、投与量は、患者の状態及び体重、病気の程度、薬物形態、投与経路及び時間によって異なるが、当業者により適切に選択され得る。
【0066】
本発明による組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において、「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な恩恵/リスクの割合で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量水準は、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時使用される薬物を含む要素及びその他医学分野によく知られた要素に応じて決定され得る。本発明による組成物は、個別治療剤として投与したり他の治療剤と併用して投与することができ、従来の治療剤とは順次に又は同時に投与され得、単一又は多重投与され得る。上記した要素を全部考慮して副作用なしに最小限の量で最大効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは、当業者によって容易に決定され得る。
【0067】
具体的に、本発明による組成物の有効量は、患者の年齢、性別、体重に応じて変わることができ、一般的には、体重1kg当たり0.001~150mg、好ましくは0.01~100mgを毎日又は隔日投与したり、1日1~3回に分けて投与することができる。しかしながら、投与経路、肥満の重症度、性別、体重、年齢などに応じて増減することができるので、前記投与量がいかなる方法でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0068】
本発明の食品組成物において有効成分を食品にそのまま添加したり他の食品又は食品成分と共に使用することができ、通常の方法によって適切に使用することができる。有効成分の混合量は、その使用目的(予防又は改善用)に応じて適合に決定され得る。一般的に、食品又は飲料の製造時に本発明の組成物は、原料に対して15重量%以下、好ましくは10重量%以下の量で添加される。しかしながら、健康及び衛生を目的としたり又は健康調節を目的とする長期間の摂取の場合には、前記量は、前記範囲以下であり得る。
【0069】
本発明の食品組成物は、指示された割合で必須成分として前記有効成分を含有することの他に、他の成分には特別な制限がなく、通常の飲料のように様々な香味剤又は天然炭水化物などを追加成分として含有することができる。上述した天然炭水化物の例は、モノサッカライド、例えば、グルコース、フルクトースなど;ジサッカライド、例えばマルトース、スクロースなど;及びポリサッカライド、例えばデキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールである。上述したもの以外の香味剤として天然香味剤(ソーマチン、ステビア抽出物(例えばレバウジオシドA、グリチルリチンなど)及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を有利に使用することができる。前記天然炭水化物の比率は、当業者の選択に応じて適切に決定され得る。
【0070】
前記の他に本発明の食品組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、ミネラル(電解質)、合成風味剤及び天然風味剤などの風味剤、着色剤及び増進剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含有することができる。このような成分は、独立して、又は組み合わせて使用することができる。このような添加剤の比率も、当業者により適切に選択され得る。
【0071】
本発明の前記化粧料組成物は、プロテウス属細菌由来小胞だけでなく、化粧料組成物に通常的に利用される成分を含むことができ、例えば抗酸化剤、安定化剤、溶解化剤、ビタミン、顔料、及び香料のような通常の補助剤、そして担体を含むことができる。
【0072】
また、本発明の組成物は、プロテウス属細菌由来小胞以外に、プロテウス属細菌由来小胞と反応して皮膚保護効果を損傷させない限度で従来から使用されてきた有機紫外線遮断剤を混合して使用することもできる。前記有機紫外線遮断剤としては、グリセリルPABA、ドロメトリゾールトリシロキサン、ドロメトリゾール、ジガロイルトリオレエート、フェニルジベンズイミダゾールテトラスルホン酸、イスコトリジノール(DIETHYLHEXYL BUTAMIDOTRIAZONE)、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート、DEA-メトキシシンナメート、ローソンとジヒドロキシアセトンの混合物、メチレンビス-ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、4-メチルベンジリデンカンファ、メチルアントラニレート、ベンゾフェノン-3(オキシベンゾン)、ベンゾフェノン-4、ベンゾフェノン-8(ジオキシベンゾン)、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、シノキサート、エチルジヒドロキシプロピルPABA、オクトクリレン、エチルヘキシルジメチルPABA、エチルヘキシルメトキシシンナメート、エチルヘキシルサリシレート、エチルヘキシルトリアゾン、イソアミル-p-メトキシシンナメート、ポリシリコン-15(マロン酸ジメチコジエチルベンザル)、テレフタリデンジカンファスルホン酸及びその塩類、TEA-サリシレート及びアミノ安息香酸(PABA)からなる群より選ばれる1種以上を使用することができる。
【0073】
本発明の化粧料組成物を添加できる製品としては、例えば、収れん化粧水、柔軟化粧水、栄養化粧水、各種クリーム、エッセンス、パック、ファンデーションなどのような化粧品類とクレンジング、洗顔剤、石鹸、トリートメント、美容液などがある。本発明の化粧料組成物の具体的な剤形としては、スキンローション、スキンソフトナー、スキントナー、アストリンゼント、ローション、ミルクローション、モイスチャーローション、栄養ローション、マッサージクリーム、栄養クリーム、モイスチャークリーム、ハンドクリーム、エッセンス、栄養エッセンス、パック、石鹸、シャンプー、クレジングフォーム、クレジングローション、クレンジングクリーム、ボディーローション、ボディークレンザー、乳液、リップスティック、メイクアップベース、ファンデーション、プレスパウダー、ルーズパウダー、アイシャドウなどの剤形を含む。
【0074】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明のプロテウス属細菌由来小胞の含量は、組成物の総重量に対して0.00001~30重量%であり、好ましくは0.5~20%であり、より好ましくは1.0~10重量%である。
【0075】
本発明の吸入剤組成物において有効成分を吸入剤にそのまま添加したり他の成分と共に使用することができ、通常の方法により適切に使用することができる。有効成分の混合量は、その使用目的(予防又は治療用)により適切に決定され得る。
【0076】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかしながら、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【実施例】
【0077】
[実施例1.腸内細菌及び細菌由来小胞の体内吸収、分布、及び排泄様相分析]
腸内細菌と細菌由来小胞が胃腸管を介して全身的に吸収されるかを評価するために次のような方法で実験を行った。マウスの胃腸に蛍光で標識した腸内細菌と腸内細菌由来小胞をそれぞれ50μgの用量で、胃腸管で投与し、0分、5分、3時間、6時間、12時間後に蛍光を測定した。
【0078】
マウス全体イメージを観察した結果、
図1aに示されたように、細菌の場合には、全身的に吸収されないが、細菌由来小胞の場合には、投与後5分に全身的に吸収され、投与後3時間には、膀胱に蛍光が強く観察され、小胞が泌尿器系に排泄されるとことが分かった。また、小胞は、投与12時間まで体内に存在することが分かった(
図1a参照)。
【0079】
腸内細菌と腸内細菌由来小胞が全身的に吸収された後、様々な臓器に浸潤された様相を評価するために、蛍光で標識した50μgの細菌と細菌由来小胞を前記の方法のように投与した後、投与12時間後に血液、心臓、肝、腎臓、脾臓、脂肪、筋肉を摘出した。
【0080】
摘出した組織で蛍光を観察した結果、
図1bに示されたように、細菌由来小胞は血液、心臓、肺、肝、腎臓、脾臓、脂肪、筋肉に分布したが、細菌は吸収されないことが分かった(
図1b参照)。
【0081】
[実施例2.臨床サンプルで細菌由来小胞メタゲノム分析]
血液、尿、便などの臨床サンプルをまず10mlチューブに入れ、遠心分離法(3,500×g、10min、4℃)で浮遊物を沈め、上澄液だけを新しい10mlチューブに移した。0.22μmフィルターを使用して細菌及び異物を除去した後、セントリプレップチューブ(centrifugal filters 50kD)に移して1500×g、4℃で15分間遠心分離した。50kDより小さい物質は捨て、10mlまで濃縮させた。再び0.22μmフィルターを使用してバクテリア及び異物を除去した後、タイプ90tiローターで150,000×g、4℃で3時間の間超高速遠心分離方法を使用して上澄液を捨て、固まったペレット(pellet)をPBS(phosphate buffered saline)で溶かした。
【0082】
前記方法で分離した小胞100μlを100℃でボイルして、内部のDNAを脂質外に出るようにし、その後、氷上で5分間冷ました後、残った浮遊物を除去するために、10,000×g、4℃で30分間遠心分離し、上澄液だけを集めた。そして、ナノドロップ
(Nanodrop)を利用してDNA量を定量した。その後、前記抽出されたDNAに細菌由来DNAが存在するかを確認するために、下記表1に示した16s rDNAプライマー(primer)でPCRを行って、前記抽出された遺伝子に細菌由来遺伝子が存在することを確認した。
【0083】
【0084】
前記方法で抽出したDNAを前記の16S rDNAプライマーを使用して増幅をした後、シーケンシングを行い(Illumina MiSeq sequencer)、結果をスタンダードフログラムフォーマット(Standard Flowgram Format,SFF)ファイルで出力し、GS FLXソフトウェア(v2.9)を利用してSFFファイルをシークエンスファイル(.fasta)とヌクレオチドクオリティースコア(nucleotide quality score)ファイルに変換した後、リードの信用度評価を確認し、ウィンドウ(20bps)平均ベースコールアキュラシ(base call accuracy)が99%未満(Phred score<20)である部分を除去した。Operational Taxonomy Unit(OTU)分析のためには、UCLUSTとUSEARCHを利用してシークエンス類似度によってクラスタリングを行った。属(genus)は94%、科(family)は90%、目(order)は85%、綱(class)は80%、門(phylum)は75%シークエンス類似度を基準としてクラスタリングをし、各運営分類単位の門(phylum)、綱(class)、目(order)、科(family)、属(genus)レベルの分類を行い、BLASTNとGreenGenesの16S RNAシークエンスデータベース(108,453シークエンス)を利用して属水準で97%以上のシークエンス類似度を有する細菌をプロファイリングした(QIIME)。
【0085】
[実施例3.癌患者の臨床サンプルで細菌由来小胞メタゲノム分析]
実施例2の方法で胃癌患者55人の便と正常対照群99人の便を対象に、便内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの便に比べて胃癌患者の便にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs胃癌患者:1.1% vs 0.05%、p<0.001)(
図2参照)。
【0086】
また、胃癌患者67人の血液と正常対照群198人の血液を対象に、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて胃癌患者の血液にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs胃癌患者:1.3% vs 0.2%、p=<0.001)(
図2参照)。
【0087】
また、胃癌患者61人の尿と正常対照群120人の尿を対象に、尿内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの尿に比べて胃癌患者の尿にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs胃癌患者:1.8% vs 0.1%、p<0.0001)(
図2参照)。
【0088】
また、実施例2の方法で大腸癌患者38人の便と正常対照群55人の便を対象に、便内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの便に比べて大腸癌患者の便にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs大腸癌患者:1.2% vs 0.05%、p<0.001)(
図3参照)。
【0089】
また、大腸癌患者38人の尿と性別と年齢をマッチングした正常対照群38人の尿を対象に、尿内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの尿に比べて大腸癌患者の便にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs大腸癌患者:1.3% vs 0.06%、p<0.001)(
図3参照)。
【0090】
また、実施例2の方法で肝癌患者94人の血液と正常対照群152人の血液を対象に、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて肝癌患者の血液にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs肝癌患者:0.7% vs 0.01%、p<0.001)(
図4参照)。
【0091】
また、胆道癌患者84人の血液と正常対照群132人の血液を対象に、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて胆道癌患者の血液にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs胆道癌患者:0.7% vs 0.06%、p<0.001)(
図4参照)。
【0092】
また、膵臓癌患者191人の血液と正常対照群291人の血液を対象に、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて膵臓癌患者の血液にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs膵臓癌患者:0.7% vs 0.06%、p<0.001)(
図4参照)。
【0093】
また、実施例2の方法で肺癌患者318人の血液と正常対照群234人の血液を対象に、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて肺癌患者の血液にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs肺癌患者:0.7% vs 0.1%、p<0.001)(
図5参照)。
【0094】
また、実施例2の方法で乳癌患者127人の尿と正常対照群220人の尿を対象に、尿内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの尿に比べて乳癌患者の尿にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs乳癌患者:1.4% vs 0.3%、p<0.001)(
図6参照)。
【0095】
また、卵巣癌患者136人の尿と正常対照群136人の尿を対象に、尿内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの尿に比べて卵巣癌患者の尿にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs卵巣癌患者:1.1% vs 0.1%、p<0.001)(
図6参照)。
【0096】
また、実施例2の方法で膀胱癌患者96人の血液と正常対照群184人の血液を対象に、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて膀胱癌患者の血液にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs膀胱癌患者:0.8% vs 0.1%、p<0.001)(
図7参照)。
【0097】
また、膀胱癌患者95人の尿と正常対照群157人の尿を対象に、尿内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの尿に比べて膀胱癌患者の尿にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs膀胱癌患者:1.9% vs 0.1%、p<0.000001)(
図7参照)。
【0098】
また、実施例2の方法で前立腺癌患者53人の尿と正常対照群159人の尿を対象に、尿内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの尿に比べて前立腺癌患者の尿にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs前立腺癌患者:1.1% vs 0.09%、p<0.000001)(
図8参照)。
【0099】
また、実施例2の方法でリンパ腫患者93人の血液と正常対照群109人の血液を対象に、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べてリンパ腫患者の血液にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvsリンパ腫患者:0.09% vs 0.00%、p<0.001)(
図9参照)。
【0100】
また、脳腫瘍患者84人の血液と正常対照群92人の血液を対象に、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて脳腫瘍患者の血液にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs脳腫瘍患者:0.09% vs 0.01%、p<0.01)(
図9参照)。
【0101】
[実施例4.糖尿病及び心血管疾患患者の臨床サンプルで細菌由来小胞メタゲノム分析]
実施例2の方法で糖尿病患者73人の血液と正常対照群146人の血液を対象に、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて糖尿病患者の血液にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs糖尿病患者:0.4% vs 0.01%、p<0.01)(
図10参照)。
【0102】
また、実施例2の方法で心筋梗塞患者57人の血液と正常対照群163人の血液を対象に、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて心筋梗塞患者の血液にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs心筋梗塞患者:0.4% vs 0.07%、p<0.01)(
図11参照)。
【0103】
また、心筋病症患者72人の血液と正常対照群163人の血液を対象に、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて心筋病症患者の血液にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs心筋病症患者:0.4% vs 0.08%、p<0.01)(
図11参照)。
【0104】
また、心房細動患者69人の血液と正常対照群103人の血液を対象に、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて心房細動患者の血液にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs心房細動患者:0.1% vs 0.01%、p<0.01)(
図11参照)。
【0105】
また、異型狭心症患者32人の血液と正常対照群32人の血液を対象に、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて異型狭心症患者の血液にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs異型狭心症患者:0.6% vs 0.1%、p<0.05)(
図11参照)。
【0106】
また、脳卒中患者87人の血液と正常対照群92人の血液を対象に、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて脳卒中患者の血液にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs脳卒中患者:0.3% vs 0.00%、p<0.05)(
図12参照)。
【0107】
[実施例5.神経精神疾患患者の臨床サンプルで細菌由来小胞メタゲノム分析]
実施例2の方法でパーキンソン病患者39人の尿と正常対照群79人の尿を対象に、尿内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの尿に比べてパーキンソン病患者の尿にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvsパーキンソン病患者:0.6% vs 0.02%、p<0.0001)(
図13参照)。
【0108】
また、実施例2の方法でうつ病患者20人の尿と正常対照群20人の尿を対象に、尿内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの尿に比べてうつ病患者の尿にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvsうつ病患者:1.7% vs 0.06%、p<0.01)(
図13参照)。
【0109】
[実施例6.アレルギー及び呼吸器疾患患者の臨床サンプルで細菌由来小胞メタゲノム分析]
実施例2の方法でアトピー皮膚炎患者27人の血液と正常対照群138人の血液を対象に、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べてアトピー皮膚炎患者の血液にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvsアトピー皮膚炎患者:2.0% vs 0.06%、p<0.00001)(
図14参照)。
【0110】
また、実施例2の方法で喘息患者291人、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者207人、及び正常対照群291人の血液を対象に、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて喘息患者及び慢性閉塞性肺疾患患者の血液にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs喘息患者:0.7% vs 0.08%、p<0.01;正常ヒトvs慢性閉塞性肺疾患患者:0.7% vs 0.07%、p<0.01)(
図15参照)。
【0111】
[実施例7.炎症性腸疾患患者の臨床サンプルで細菌由来小胞メタゲノム分析]
実施例2の方法で過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome,IBS)患者57人の便と正常対照群58人の便を対象に、便内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの便に比べて過敏性腸症候群患者の便にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs過敏性腸症候群患者:1.9% vs 0.00%、p<0.00001)(
図16参照)。
【0112】
また、実施例2の方法で炎症性腸炎(inflammatory bowel disease,IBD)患者91人及び正常対照群99人の便を対象に、便内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム分析を行った後、プロテウス属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの便に比べて炎症性腸炎患者の便にプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(正常ヒトvs炎症性腸炎患者:1.9% vs 0.00%、p<0.00001)(
図16参照)。
【0113】
[実施例8.プロテウスミラビリス培養液から小胞の分離及び特性分析]
前記実施例2~7の結果を基に、プロテウス属細菌由来小胞の機能を評価するために、プロテウス属細菌の一つのプロテウスミラビリス菌株を培養した後、その小胞を分離して特性を分析した。
【0114】
様々なヒトの臨床サンプルから分離したプロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)菌株を37℃嫌気性チャンバーで吸光度(OD600)が1.0~1.5になるまでブレーンハートインフュージョン(brain heart infusion,BHI)培地で培養した後、 継代培養(sub-culture)した。以後、菌株が含まれていない培地の上澄液を回収して10,000g、4℃で15分間遠心分離し、0.45μmフィルターに濾過した後、濾過した上澄液を100kDaホロー(hollow)フィルターメンブレーンでクイックスタンドベンチトップシステム(QuixStand benchtop system,GE Healthcare,UK)を利用して200ml体積で濃縮した。以後、濃縮させた上澄液を再び0.22μmフィルターでフィルタリングした。以後、BCAアッセイ(assay)を利用してタンパク質を定量し、得られた小胞に対して下記実験を実施し、前記方法によって培養したプロテウスミラビリスの培養液から小胞を分離した後、電子顕微鏡を用いて形状とサイズを評価した。
【0115】
その結果、
図17aに示されるように、プロテウスミラビリス培養液から分離した小胞の形状は、球形であり、サイズは、200nmより小さいことを観察し、
図17bに示した動的光散乱法の測定結果を用いて前記小胞のサイズは、37.8±13.5nmであることを確認した。
【0116】
[実施例9.プロテウスミラビリス由来小胞の抗炎症効果]
プロテウスミラビリス由来小胞が炎症細胞で炎症媒介体の分泌に対する影響を調べてみるために、マウス大食細胞株であるRaw 264.7細胞にプロテウスミラビリス菌株から分離した小胞(P.mirabilis EV)を多様な濃度(0.1、1、10 μg/ml)で処理した後、病原性小胞である大腸菌由来小胞(E.coli EV)を処理して炎症媒介体(IL-6,TNF-αなど)の分泌量を測定した。
【0117】
より具体的に、Raw 264.7細胞を1×105個ずつ24-ウェル細胞培養プレートに分注した後、24時間の間DMEM(Dulbeco’s Modified Eagle’s Media)完全培地で培養させた。以後、培養上澄液を1.5mlチューブに集めて3,000gで5分間遠心分離して上澄液を集めて4℃に保管した後、エライザ(ELISA)分析を進めた。
【0118】
エライザ分析のために、キャプチャー抗体をPBS(phosphate buffered saline)に希釈させて96ウェルポリスチレン(96 well polystyrene)プレートに作用濃度に合うように50μlずつ分注した後、4℃で一晩中(overnight)反応させた。以後、PBST(0.05% tween-20が入っているPBS)溶液100μlで2回ずつ洗った後、RD(1% bovin serum albumin(BSA)が入っているPBST)溶液100μlを分注して常温で1時間の間ブロッキング(blocking)した後、再びPBST 100μlで2回洗った後、サンプル及びスタンダードを濃度に合うように50μlずつ分注して常温で2時間の間反応させた。再びPBST 100μlで2回洗った後、検出抗体をRDに希釈させて作用濃度に合うように50μlずつ分注して常温で2時間の間反応させた。再びPBST 100μlで2回洗った後、ストレプトアビジン-HRP(Streptavidin-horseradish peroxidaseをRDに1/200で希釈させて50μlずつ分注して常温で30分間反応させた。最後に、PBST 100μlで3回洗った後、TMB(3,3,5,5-tetramethylbenzidine)基質と0.04%過酸化水素水を1:1で混合した溶液50μlを分注した後、発色を待って5分から20分後に発色が進行されたとき、1M硫酸溶液を50μlずつ分注して反応を中止し、シナジー社のHTマルチ-ディテクションマイクロプレートリーダー(Synergy(登録商標)HT multi-detection microplate reader)を利用して(BioTek,USA)450nmで吸光度を測定した。
【0119】
その結果、プロテウスミラビリス由来小胞を前処理した場合、大腸菌由来小胞によるIL-6及びTNF-αの分泌が顕著に抑制されることを確認した(
図18a及び
図18b参照)。
【0120】
また、プロテウスミラビリス由来小胞の抗炎症効果にプロテウスミラビリスの亜型の影響を評価するために、様々なヒトから分離した5種類のプロテウスミラビリス分離菌株由来小胞(PMR201,PMR202,PMR203,PMR204,PMR205)を多様な濃度で12時間の間前処理し、病原性小胞である大腸菌由来小胞1μg/mlを12時間処理した。培養上澄液を1.5mlチューブに集めて3000gで5分間遠心分離して上澄液を集めて4℃に保管した後、エライザを行った。
【0121】
その結果、プロテウスミラビリス分離菌株由来小胞を前処理した場合、プロテウスミラビリス標準菌株由来小胞(PMR101)と同様に、大腸菌由来小胞によるTNF-αの分泌を顕著に抑制することを確認した(
図19参照)。特に有用微生物対照群であるラクトバチルス プランタルム(Lactobacillus plantarum)由来小胞よりプロテウスミラビリス由来小胞の前処理によるTNF-αの分泌抑制効果が大きいことを確認した(
図19参照)。
【0122】
これは、大腸菌由来小胞のような病原性小胞により誘導される炎症反応をプロテウスミラビリス分離菌株由来小胞が亜型に関係なく炎症反応を効率的に抑制することができることを意味する。
【0123】
[実施例10.プロテウスミラビリス由来小胞の抗炎症作用に熱又は酸処理の効果]
前記実施例9を通じてプロテウスミラビリス標準菌株及び分離菌株由来小胞の抗炎症効果を確認し、ひいては、前記小胞の安定性及び有効物質の特性を具体的に調べてみようとした。このために、100℃で10分間ボイルや10分間酸処理(pH2.0)をした3種のプロテウスミラビリス由来小胞(PMR101,PMR202,PMR205)を大食細胞(Raw 264.7)に前処理して、抗炎症効果を評価した。
【0124】
その結果、小胞を100℃でボイルしたり酸処理したりしても、プロテウスミラビリス由来小胞の抗炎症効果が維持されることを確認した(
図20参照)。これは、プロテウスミラビリス由来小胞が高い温度と酸に安定していることを意味し、また、プロテウスミラビリス由来小胞で抗炎症効果を示すことは、タンパク質成分でないことを意味する。
【0125】
[実施例11.プロテウスミラビリス由来小胞の抗癌効果]
前記実施例を通じて正常ヒトに比べて癌患者の臨床サンプルにプロテウス属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認したところ、ひいては、前記小胞の抗癌効果を具体的に調べてみようとした。このために、
図21aに示されたように、プロテウスミラビリス由来小胞を6週齢のC57BL/6雄性マウスに経口で投与して、投与4日目に癌細胞株(CT26 cell)を皮下で注射して癌モデルを作った。癌細胞株を投与した後、20日目まで癌組織の大きさを測定して、癌の治療効果を評価した。その結果、生理食塩水の経口投与群に比べて前記小胞を経口で投与したマウスにおいて癌組織のサイズが顕著に減少した(
図21b参照)。
【0126】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形が可能であることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明によるプロテウス属細菌由来小胞は、胃癌、大腸癌、肝癌、胆道癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、リンパ腫、脳腫瘍などの癌、心筋梗塞、心筋病症、心房細動、異型狭心症、脳卒中などの心血管疾患、糖尿病などの代謝疾患、パーキンソン病、うつ病などの神経-精神疾患、アトピー皮膚炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患などのアレルギー-呼吸器疾患、過敏性腸症候群、炎症性腸炎などの炎症性腸疾患のように多様な病気の診断方法に利用され得るので、経済的であり、食品、吸入剤、化粧品、あるいは薬物などの予防用、治療用、及び/又は改善用組成物など多様な範囲に適用されるものと期待されるので、医療、機能性食品、化粧品産業のように多様な産業分野において有用に利用され得る。
【配列表】