IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 川上産業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-コンクリート封緘養生用シート 図1
  • 特許-コンクリート封緘養生用シート 図2
  • 特許-コンクリート封緘養生用シート 図3
  • 特許-コンクリート封緘養生用シート 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-02
(45)【発行日】2022-09-12
(54)【発明の名称】コンクリート封緘養生用シート
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20220905BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20220905BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20220905BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220905BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20220905BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20220905BHJP
   B28B 11/24 20060101ALI20220905BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20220905BHJP
【FI】
E04G21/02 104
C08L67/02 ZBP
C08L67/04
B32B27/00 M
B32B27/36
B32B5/18 101
B28B11/24
C08L101/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021133380
(22)【出願日】2021-08-18
【審査請求日】2021-08-18
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000199979
【氏名又は名称】川上産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森島 敏之
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-152565(JP,A)
【文献】特許第5961567(JP,B2)
【文献】特許第5350825(JP,B2)
【文献】特開2004-161802(JP,A)
【文献】特許第6097107(JP,B2)
【文献】特許第4060872(JP,B2)
【文献】特開2015-227597(JP,A)
【文献】特許第4052512(JP,B2)
【文献】特許第4839020(JP,B2)
【文献】特開2005-163476(JP,A)
【文献】特開2019-173547(JP,A)
【文献】特開2016-216574(JP,A)
【文献】特許第6523644(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/02
E04G 21/24-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打設されたコンクリートを封緘養生するために、コンクリートの表面に敷設して使用されるコンクリート封緘養生用シートであって、
不透水性のシート本体と粘着剤層とを備え、
前記シート本体の一方の主面側に前記粘着層のみが積層され、
前記シート本体の全体が、コンクリートからの水分の散逸を抑制し得る不透水性のシートに成形可能であり、かつ、海洋でも生分解可能な生分解性樹脂を用いて成形されていることを特徴とするコンクリート封緘養生用シート。
【請求項2】
前記生分解性樹脂が、3-ヒドロキシブチレート-3ヒドロキシヘキサネート共重合体又はポリブチレンサクシネート系共重合体である請求項1に記載のコンクリート封緘養生用シート。
【請求項3】
前記シート本体が気泡シートからなる請求項1又は2に記載のコンクリート封緘養生用シート。
【請求項4】
前記シート本体が着色されている請求項1~3のいずれか一項に記載のコンクリート封緘養生用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打設されたコンクリートを封緘養生するために、コンクリートの表面に敷設して使用されるコンクリート封緘養生用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
土木構造物や建築構造物などの施工現場において、コンクリートを打設してコンクリート構造物を構築するに際しては、コンクリートの主要材料であるセメントの水和反応が十分に発揮されるように、打設されたコンクリートを養生することが求められる。例えば、コンクリートの品質を管理するにあたり、試験体を用意して強度試験を行うと、試験体を水中で養生した場合には、試験体を気中に放置した場合に比べて、15~30パーセントほど強度が高くなることが知られている。
【0003】
また、コンクリートを養生するには、例えば、型枠を取り外した後に、コンクリートの表面に養生シートを敷設して、コンクリートから水分が散逸しない状態で養生(封緘養生)することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-255670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、養生シートを敷設してコンクリートを養生する場合には、養生が完了した時点で、養生シートを撤去しなければならず、その作業に多くの労力が必要となる。さらに、撤去された養生シートは、産業廃棄物として、運送する手間や費用をかけて処分する必要もある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、打設されたコンクリートを養生するに際し、養生後の撤去作業を必要としないコンクリート封緘養生用シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るコンクリート封緘養生用シートは、打設されたコンクリートを封緘養生するために、コンクリートの表面に敷設して使用されるコンクリート封緘養生用シートであって、不透水性のシート本体と粘着剤層とを備え、前記シート本体の一方の主面側に前記粘着層のみが積層され、前記シート本体の全体が、コンクリートからの水分の散逸を抑制し得る不透水性のシートに成形可能であり、かつ、海洋でも生分解可能な生分解性樹脂を用いて成形されている構成としてある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コンクリートの封緘養生完了後にシートを撤去する労力や、撤去されたシートを廃棄処分するための手間と費用を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るコンクリート封緘養生用シートの概略を示す説明図である。
図2】本発明の実施形態に係るコンクリート封緘養生用シートの変形例の概略を示す説明図である。
図3図2に示すコンクリート封緘養生用シートの変形例が備えるシート本体の一例を示す説明図である。
図4図2に示すコンクリート封緘養生用シートの変形例が備えるシート本体の他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1に示すように、養生シート1は、打設されたコンクリートを養生するために、コンクリート打設面4に敷設して使用されるものであり、シート本体2と、シート本体2の一方の主面側に積層される粘着剤層3とを備えている。
【0012】
なお、図1は、本実施形態に係るコンクリート封緘養生用シートについて、その断面の概略を示す説明図であり、図1には、養生シート1が敷設される打設面4を含むコンクリートの断面を併せて示している。
【0013】
シート本体2は、コンクリートからの水分の散逸を抑制し得る不透水性のシートに成形可能であるとともに、海洋にあっても、微生物の作用によって、最終的に水と二酸化炭素とに生分解可能な生分解性樹脂を用いて成形される。
【0014】
不透水性のシートに成形可能であり、かつ、海洋でも生分解可能な生分解性樹脂としては、3-ヒドロキシブチレート-3ヒドロキシヘキサネート共重合体、ポリブチレンサクシネート系共重合体などを用いるのが好ましい。3-ヒドロキシブチレート-3ヒドロキシヘキサネート共重合体(例えば、株式会社カネカ製;PHBH)は、植物由来のバイオマス原料から微生物発酵プロセスによって製造することができ、バイオマス度が高い材料であるため、石油由来の材料の使用を低減又は避ける上でも好ましい
【0015】
また、このような生分解性樹脂を用いてシート本体2を成形するにあたっては、シート本体2、ひいては養生シート1を着色する目的で、天然無機顔料又は植物などから抽出された非化学合成の染料を添加することもできる。例えば、熱を吸収し難い白色などに養生シート1を着色することで、特に、夏場の日光によるコンクリートの表面温度の好ましからざる上昇を抑制することができる。一方、冬場にあっては、熱を吸収し易い黒色などに養生シート1を着色することで、養生時の保温性を高めて、コンクリート内部との温度差に起因するクラックなどの発生を抑制することもできる。
【0016】
本実施形態において、シート本体2の具体的な形態は、シート全体が上記生分解性樹脂を用いて成形されていれば、特に限定されない。例えば、中空状に膨出する多数の突起20が形成されたキャップフィルム21と、突起20内に空気を封入するバックフィルム22とが積層された二層構造の気泡シート(図2及び図3参照)、又はキャップフィルム21に形成された突起20の頂面側にライナーフィルム23がさらに積層された三層構造の気泡シート(図4参照)とすることができる。
シート本体2が、このような気泡シートからなるように構成することで、養生シート1に断熱性を付与することができ、これによって、養生時の保温性を高めることができる。
【0017】
なお、図2は、図1と同様にして、本実施形態に係るコンクリート養生用シートの変形例を示す説明図であり、図3は、二層構造の気泡シートの一例を斜視して示す説明図であり、図4は、三層構造の気泡シートの一例を斜視して示す説明図である。
【0018】
また、シート本体2が、このような気泡シートからなるように構成する場合には、二層構造の気泡シートであれば、バックフィルム22側に粘着剤層3を積層するのが好ましい。三層構造の気泡シートであれば、バックフィルム22側又はライナーフィルム23側のいずれか一方に粘着剤層3を積層するのが好ましい。
【0019】
粘着剤層3は、養生シート1をコンクリート打設面4に敷設する際に、コンクリート打設面4に養生シート1が貼着されるようにして、養生シート1の脱落を防ぐために設けられる。このため、粘着剤層3を形成する粘着剤としては、コンクリートに対する貼着性を考慮して適宜選択することができる。例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸オクチルなどのモノマー成分を単独で又は二種以上組み合わせて重合してなるアクリル系ポリマーをベースポリマーとして、これにエポキシ基を2個以上含有するポリエポキサイド化合物系架橋剤を添加してなるアクリル系粘着剤を用いることができる。
【0020】
このような本実施形態によれば、養生シート1が備えるシート本体2が、海洋でも生分解可能な生分解性樹脂を用いて成形されているため、コンクリートの養生が完了しても、養生シート1をコンクリートから撤去する必要がなく、そのままコンクリート打設面4に貼着させておくことにより、微生物の作用によって最終的に水と二酸化炭素とに分解され、海洋に流出してしまった場合であっても、近年、環境問題として深刻化しているマイクロプラスチックによる海洋汚染を引き起こすこともない。
【0021】
その結果、養生完了後に養生シート1を撤去する労力や、撤去された養生シートを廃棄処分するための手間と費用を削減することができる。特に、ダムなどの施工現場では、場所が山間部の奥地であることが多いことから、養生シート1の撤去作業を不要とすることで、工期の短縮や施工費用の削減に大きく貢献することが期待できる。
また、コンクリートの表面に養生シート1を貼着するために、足場を組む必要がある現場では、養生シート1の撤去作業を不要とすることで、コンクリートを養生するために養生シート1を貼着した後、すぐに足場を取り外すことができる。
また、ケーソンなどのようにコンクリートを養生した後に、現場海域に沈めて海底に設置又は埋設されるようなコンクリート構造物の場合には、養生シートを撤去することなく、コンクリート構造物と一緒に現場海域に沈めてしまうこともできる。
【0022】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0023】
1 養生シート
2 シート本体
20 突起
21 キャップフィルム
22 バックフィルム
23 ライナーフィルム
3 粘着剤層
4 コンクリート打設面
【要約】
【課題】打設されたコンクリートを養生するに際し、養生後の撤去作業を必要としないコンクリート封緘養生用シートを提供する。
【解決手段】打設されたコンクリートを封緘養生するために、コンクリートの表面4に敷設して使用され、シート本体2と、シート本体2の一方の主面側に積層される粘着剤層3とを備える養生シート1において、海洋でも生分解可能な生分解性樹脂を用いてシート本体2を成形する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4